特許第6765250号(P6765250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765250
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20200928BHJP
【FI】
   B25J19/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-150197(P2016-150197)
(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公開番号】特開2018-15872(P2018-15872A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(74)【代理人】
【識別番号】100160668
【弁理士】
【氏名又は名称】美馬 保彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 英樹
(72)【発明者】
【氏名】南 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】星島 耕太
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−249287(JP,A)
【文献】 特開平08−197463(JP,A)
【文献】 特開平03−121791(JP,A)
【文献】 特開2015−080841(JP,A)
【文献】 特開平02−100892(JP,A)
【文献】 特開2013−111710(JP,A)
【文献】 特開2008−221357(JP,A)
【文献】 特開平04−201193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に一端が枢着された第1アームおよび第2アームと、前記第1アームおよび前記第2アームの他端に枢動自在に連接された第3アームと、を有する平行リンク機構と、
前記第1アームの他端において、前記第1アームに対して前記第3アームが配置される側を一方側とし、前記第1アームの他方側に配置されるように、前記平行リンク機構に対して枢動自在に連接された第4アームと、
前記基台から前記第1アームに沿って前記第4アームまで配設された、可撓性を有した配管または配線と、を備えた産業用ロボットであって、
前記第1アームは、前記第3アームの関節シャフトを受ける受け部により、前記第3アームを軸支しており、
前記第1アームの前記受け部の周縁部には、前記第1アームの前記一方側から前記他方側に、前記配管または配線を案内する案内部が形成されており、
前記配線または配管は、前記案内部を介して、前記第1アームの前記一方側から前記他方側に配設されており、
前記第1アームの一方側において、前記配線または配管は、前記第3アームの前記関節シャフトの周りに沿って前記第1アームの前記受け部に配設され、
前記案内部は、前記配線または配管を案内する案内溝であり、
前記第1アームと前記第4アームとの相対的な枢動により、前記第1アームと前記第4アームとが第1の位置にある状態で、前記案内溝は、前記第4アームの一部に覆われることにより、前記第1アームの一方側から他方側に、前記配線または配管を案内する案内孔を形成し、
前記第1アームと前記第4アームとが前記第1の位置とは異なる第2の位置にある状態で、前記案内溝は、前記第4アームから露出していることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記第1アームの他方側において、前記配線または配管は、前記第1アームと前記第4アームの枢動により、前記第1アームと前記第4アームとの間で、前記配線または配管が伸び切らないように屈曲した屈曲部を有しており、
前記屈曲部は、前記第1アームおよび前記第4アームにより区画された収容空間に収容されていることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記収容空間において、前記第1アームおよび前記第4アームには、前記第1アームおよび前記第4アームが対向する位置に、前記配線または配管を収容する収容溝が形成されていることを特徴とする請求項に記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記第1アームまたは前記第4アームには、前記収容空間を覆うように、カバーが着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項またはに記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基台に枢着されたリンク機構と、該リンク機構に枢動自在に連接されたアームと、該アームから基台まで配設された配管または配線と、を少なくとも備えた産業用ロボットに関する。
【0002】
従来から、部材の溶接・搬送等に、多関節を有した産業用ロボットが利用されている。産業用ロボットは、基台に枢着されたリンク機構を備えており、そのリンク機構には、ロボットの腕部に相当するアームが、枢動自在に連接されている。
【0003】
ここで、リンク機構に連接されたアームには、リンク機構からアーム側における電力の供給、制御信号等の送受信、または潤滑剤の供給などを行うべく、基台から配線または配管が配設されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、リンク機構およびアームから離間するように、配線または配管を宙に浮かせて、アームから基台まで配線または配管を配設した産業用ロボットが提案されている。しかしながら、配線または配管を宙に浮かせた場合には、配線の位置が安定せず、宙に浮かせた配線または配管が、動作するリンク機構および枢動するアームを遮ることがある。これにより、リンク機構およびアームの可動範囲が制約を受けることがあった。
【0005】
このような点を鑑みて、例えば、特許文献2〜4に記載の技術では、リンク機構を構成するアーム同士を連接する関節シャフトに、アーム同士の回転軸に沿って中空部を形成し、この中空部に、配線または配管を挿通している。中空部に挿通された配線または配管は、基台に枢着されたアームに沿って基台まで配設されている。
【0006】
このようにして、関節シャフトの中空部に、配管または配線を挿通することにより、配線または配管が、リンク機構の動作により相対的に枢動するアームを遮ることを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許2797421号公報
【特許文献2】特許4232795号公報
【特許文献3】特開2005−66718号公報
【特許文献4】特開平8−197463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2〜4に示すように、関節シャフトの中空部に、配線を挿通した場合、リンク機構の動作によりアーム同士は相対的に枢動するため、関節シャフトの内部で配線が、繰り返し捩じれてしまう。ここで、関節シャフトの配線が挿通される区間は、配線が捩じれる区間であり、この区間は、配線のねじれが許容される長さよりも極めて短いことが多い。このため、関節シャフト内で配線に作用する負荷は想定以上に大きくなる。また、産業用ロボットの小型化に伴い、関節シャフトの軸長も短くなることがあり、配線が挿通される区間はより短くなる傾向にあり、このような現象はより顕著なものとなる。
【0009】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、産業用ロボットの動作時に、配設された配線または配管に、捩じれによる過大な負荷が作用することを回避することができる産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を鑑みて、本発明に係る産業用ロボットは、基台に一端が枢着された第1アームおよび第2アームと、前記第1アームおよび前記第2アームの他端に枢動自在に連接された第3アームと、を有する平行リンク機構と、前記第1アームの他端において、前記第1アームに対して前記第3アームが配置される側を一方側とし、前記第1アームの他方側に配置されるように、前記平行リンク機構に対して枢動自在に連接された第4アームと、前記基台から前記第1アームに沿って前記第4アームまで配設された、可撓性を有した配管または配線と、を備えた産業用ロボットであって、前記第1アームは、前記第3アームの関節シャフトを受ける受け部により、前記第3アームを軸支しており、前記第1アームの前記受け部の周縁部には、前記第1アームの前記一方側から前記他方側に、前記配管または配線を案内する案内部が形成されており、前記配線または配管は、前記案内部を介して、前記第1アームの前記一方側から前記他方側に配設されており、前記第1アームの一方側において、前記配線または配管は、前記第3アームの前記関節シャフトの周りに沿って前記第1アームの前記受け部に配設されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第1アームの受け部の周縁部に形成された案内部を介して、第1アームの一方側から他方側に、配線または配管が案内されるので、第1アームおよび第3アームの相対的な枢動により、配管または配線が局所的に捩じれることはない。
【0012】
また、第1アームの一方側において、配線または配管は、第3アームの関節シャフトの周りに沿って第1アームの受け部に配設されている。これにより、第1アームおよび第3アームの相対的な枢動により、第1アームの一方側において、配線または配管は、第3アームに機械的に干渉し難い。
【0013】
さらに、第1アームの一方側に第3アームを連接し、第1アームの他方側に第4アームを連接することにより、第1アームを挟んで、第3アームと第4アームとが配置された状態となる。この配置状態と、上述した配線または配管の配設状態により、産業用ロボットの動作時に、第1アームに対して枢動する第3アームと第4アームと、配線または配管が挟み込まれることを回避することができる。
【0014】
ここで、第1アームの周縁部に形成された案内部は、第1アームの一方側から他方側に配線または配管を案内することができるのであれば、その形状および構造は特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記案内部は、前記配線または配管を案内する案内溝であり、前記第1アームと前記第4アームとの相対的な枢動により、前記第1アームと前記第4アームとが第1の位置にある状態で、前記案内溝は、前記第4アームの一部に覆われることにより、前記第1アームの一方側から他方側に、前記配線または配管を案内する案内孔を形成し、前記第1アームと前記第4アームとが前記第1の位置とは異なる第2の位置にある状態で、前記案内溝は、前記第4アームから露出している。
【0015】
この態様によれば、第1の位置では、案内部である案内溝は、第4アームの一部に覆われて案内孔を形成するため、この案内孔に配線または配管を安定的に保持することができる。一方、第2の位置では、案内部である案内溝は、第4アームの一部に覆われることなく、露出しているので、配線または配管を、案内部である案内溝に簡単に取付けることができる。
【0016】
ここで、第1アームの他方側において、配線または配管が第3アームおよび第4アームの動作範囲に配置されていなければ、配線または配管の配設状態は、特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記第1アームの他方側において、前記配線または配管は、前記第1アームと前記第4アームの枢動により、前記第1アームと前記第4アームとの間で、前記配線または配管が伸び切らないように屈曲した屈曲部を有しており、前記屈曲部は、前記第1アームおよび前記第4アームにより区画された収容空間に収容されている。
【0017】
この態様によれば、第1アームの他方側において、配線または配管は、屈曲部を形成しているので、第1アームと第4アームの枢動により、配線または配管が伸び切ることはない。したがって、第1アームおよび第4アームの相対的な枢動により、配線または配管に作用する負荷を、屈曲部で吸収することができる。
【0018】
さらに、配線または配管の屈曲部は、第1アームおよび第4アームにより区画された収容空間に収容されるので、第3アームは、収容空間から隔離することができる。これにより、第1および第4アームの相対的な枢動により、配線の屈曲部の位置またはその形状が変化したとしても、屈曲部を収容空間内に収めつつ、屈曲部が第3アームに機械的に干渉することを回避することができる。
【0019】
ここで、第1アームの他方側において、第1アームおよび第4アームにより、配線または配管の屈曲部を収容する収容空間を区画することができるのであれば、収容空間の形状は特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記収容空間において、前記第1アームおよび前記第4アームには、前記第1アームおよび前記第4アームが対向する位置に、前記配線または配管を収容する収容溝が形成されている。
【0020】
この態様によれば、第1アームおよび第4アームが対向する位置に、収容溝が形成されているので、収容空間内において、第1アームの収容溝と第4アームの収容溝に沿って、配管または配線を収容することができる。さらに、第1アームの収容溝と第4アームの収容溝との間において、これらの収容溝に収容した配管または配線の間に、U字状に屈曲させた屈曲部を形成することができる。このようにして、配線または配管を取り付ける際には収容空間内において、シンプルな形状の屈曲部を簡単に成形することができる。さらに、収容溝により屈曲部まで配線または配管を案内することができるので、産業用ロボットの動作によらず、屈曲部の形状を保持し易く、配線または配管の形状を安定させることができる。
【0021】
さらに、収容空間を設けたより好ましい態様としては、前記第1アームまたは第4アームには、前記収容空間を覆うように、カバーが着脱自在に取り付けられている。
【0022】
この態様によれば、配線または配管を収容空間に配設する際には、カバーを取り外した状態で、収容空間に配線または配管を屈曲させた屈曲部を簡単に成形し、これを収容することができる。屈曲部を収容空間に収容した後には、第1アームまたは第4アームにカバーを取り付けて、産業用ロボットの動作時に、収容空間から屈曲部が飛び出すことを防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、産業用ロボットの動作時に、配設された配線または配管に、捩じれによる過大な負荷が作用することを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る産業用ロボットの模式的斜視図である。
図2図1に示す産業用ロボットの背面図である。
図3図1に示す産業用ロボットの平行リンク機構の上部近傍を第1アームの一方側から視た拡大斜視図である。
図4図1に示す産業用ロボットの平行リンク機構の上部近傍を背面側から視た拡大斜視図である。
図5図1に示す産業用ロボットのカバーを取り外した状態で、平行リンク機構の上部近傍を第1アームの一方側から視た拡大斜視図である。
図6図1に示す産業用ロボットのカバーを取り外した状態で、平行リンク機構の上部近傍を第1アームの他方側から視た拡大斜視図である。
図7図6に示すA−A線矢視断面図である。
図8図1に示す産業用ロボットの配線の設置方法を説明するための模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態に係る産業用ロボット(以下、ロボットという)を図1図8を参照しながら詳述する。
【0026】
1.ロボット1の全体構成
図1に示すように、ロボット1は、マニピュレータであり、基台10と、基台10に取付けられた平行リンク機構20と、平行リンク機構20に取付けられた手首組立体30とを備えている。
【0027】
1−1.基台10
基台10は、設置面に固定された固定台11と、固定台11に対して、鉛直方向に沿った第1回転軸J1の周りに旋回する旋回台12とを備えている。旋回台12は、固定台11に固定されたモータの出力軸(図示せず)が接続されている。これにより、旋回台12を固定台11に対して第1回転軸J1の周りに旋回させることができる。
【0028】
1−2.平行リンク機構20
平行リンク機構20は、第1〜第3アーム21〜23を備えている。第1アーム21は、ロボット1の前方側、すなわち、手首組立体30側において、基台10の旋回台12に枢着されている。具体的には、第1アーム21の一端(基端部)には、連接部21aが形成されており、連接部21aは基台10の旋回台12に接続されている。これにより、第1アーム21は、第1回転軸J1と直交する第2回転軸J2の周りに、基台10に対して枢動自在(回転自在)となる。
【0029】
第2アーム22は、ロボット1の後方側において、基台10の旋回台12に枢着されている。具体的には、第2アーム22の一端(基端部)には、連接部22aが形成されており、連接部22aは基台10の旋回台12に接続されている。これにより、第2アーム22は、第2回転軸J2と平行となる第3回転軸J3の周りに、基台10に対して枢動自在(回転自在)となる。
【0030】
第3アーム23は、その両端部において、第1アーム21の他端(先端部)および第2アームの他端(先端部)に、枢動自在に連接されている。具体的には、第3アーム23の一端には、後述するように、第1アーム21に連接される連接部に相当する関節シャフト23aが形成されている。関節シャフト23aは、第1アーム21の他端に形成された連接部に相当する受け部21bに収容されている。これにより、第3アーム23は、第2回転軸J2と平行となる第4回転軸J4の周りに、第1アーム21に対して枢動自在(回転自在)となり、第1アーム21により軸支される。
【0031】
一方、第3アーム23の他端には、第2アーム22の他端(先端部)に形成された連接部22bに接続される連接部23bが形成されている。これにより、第3アーム23は、第4回転軸J4と平行となる第5回転軸J5の周りに、第2アーム22に対して枢動自在(回転自在)となる。
【0032】
このように、第2〜第5回転軸J2〜J5は、図2に示すように、水平方向に沿って同じ方向に延在している。本実施形態では、平行リンク機構20を水平方向から見て、第2回転軸J2から第4回転軸J4までの距離と、第3回転軸J3から第5回転軸J5までの距離は、等しくなっている。これにより、平行リンク機構20の動作時に、第1アーム21と第2アーム22とは、平行な位置関係となるように保持される。
【0033】
さらに、図1および図2に示すように、第1アーム21の一端(基端部)には、第2回転軸J2の周りに回転する第1モータ31が接続されており、第1モータ31の出力により、第1アーム21が基台10に対して枢動(回動)する。この第1アーム21の枢動に伴い、第1アーム21に連接された第3アーム23および第3アーム23に連接された第2アーム22がそれぞれ相対的に枢動し、ロボット1の前後方向に、平行リンク機構20を動作させることができる。
【0034】
1−3.手首組立体30
さらに、平行リンク機構20には、手首組立体30が枢動自在に取り付けられている。具体的には、手首組立体30は、第4アーム(アッパーアーム)24を備えており、第4アーム24は、ロボット1の腕部に相当するアーム本体24aと、ロボット1の肘部に相当し、平行リンク機構20に連接された連接部24bとを備えている。
【0035】
第4アーム24の連接部24bは、第1アーム21の他端において、第1アーム21に対して第3アーム23が配置される側を一方側としたときに、第1アーム21の他方側に配置されるように、平行リンク機構20に対して枢動自在に連接されている。具体的には、第4アーム24の連接部24bは、第3アーム23に対して、第4回転軸J4の周りに枢動自在に連接されている。本実施形態では、第3アーム23に対する第1アーム21および第4アーム24の回転軸は、第4回転軸J4で同じであるが、必ずしも、これらの回転軸が、同じ回転軸とならなくてもよい。
【0036】
第3アーム23に対する第4アーム24の枢動は、第2モータ32により行われる。第2モータ32は、第4アーム24の連接部24bに固定されており、第2モータ32の出力軸32bは、第4回転軸J4の周りに枢動するように第3アーム23に接続される(たとえば図7参照)。これにより、第3アーム23に対して、第4アーム24を第2モータ32と共に枢動させることができる。
【0037】
第4アーム24のアーム本体24aは、連接部24bに対して第6回転軸J6の周りに回動自在に連接されている。連接部24bには、第3モータ33が固定されており、第3モータ33の出力軸(図示せず)は、第6回転軸J6にアーム本体24aが回動するようにアーム本体24aに接続されている。この第3モータ33の駆動により、アーム本体24aを、連接部24bに対して、第6回転軸J6の周りに回動させることができる。
【0038】
本実施形態では、第6回転軸J6と、第1回転軸J1とは、ロボット1の動作に拘わらず、同一平面状に配置されている。これにより、旋回台12が旋回する中心軸である第1回転軸J1に、第6回転軸J6が交差するので、旋回台12の旋回動作に拘わらず、第4アーム24を安定して動作させることができる。
【0039】
さらに、アーム本体24aの先端には、ロボット1の手首部に相当する一対の把持部24c,24cが形成されており、これらの間に、溶接トーチなどのエンドエフェクタ(図示せず)を支持する支持アーム25が取付けられている。支持アーム25は、アーム本体24aに内蔵されたモータおよび動力伝達ベルト等により、第4アーム24に対して、第7回転軸J7の周りを揺動(回動)するとともに、エンドエフェクタが取付けられる支持アーム25の先端部が第8回転軸J8の周りに回動するように構成されている。
【0040】
ロボット1の手首組立体30には、第4アーム24の連接部24bに設けられた中継コネクタケース65内の配線(電源ケーブル)51を介して、電力が供給される。これにより、各モータに電力が供給され、第6〜第8回転軸の周りの回動動作を実現することができる。
【0041】
本実施形態では、中継コネクタケース65の配線51への電力の供給は、基台10からの電源ケーブル(配線)41を、コネクタ42,52を介して、配線51に接続することにより可能となる。なお、後述するように、配線41は、基台10から第1アーム21に沿って、第4アーム24の中継コネクタケース65まで配設される。
【0042】
2.配線41の配線経路における各アームの構造
以下に、まず、配線41が配設される配線経路における第1アーム21、第3アーム23、および第4アーム24の詳細な構造を以下に詳述し、その後、配線41が配設されている配線経路を説明する。
【0043】
上述したように、本実施形態では、第1アーム21は、第1アーム21の一方側から、第3アーム23の関節シャフト23aを受ける受け部21bにより、軸受68を介して第3アーム23を軸支している(図3および図7等参照)。
【0044】
ここで、関節シャフト23aは、第1アーム21の受け部21bの内部に収容され、第3アーム23が第1アーム21に対して枢動自在であれば、円柱状または円筒状のいずれの形状であってもよい。また、関節シャフト23aは、第3アーム23に対して着脱自在な構造であってもよい。
【0045】
第1アーム21の受け部21bは、第3アーム23の関節シャフト23aを収容する空洞部分を有した略円筒状の部分である。図3および図4に示すように、受け部21bの上縁には、鍔状の周縁部21cが形成されている。周縁部21cには、第1アーム21の一方側から他方側に、配線41を案内する案内部28が形成されている。
【0046】
案内部28は、ロボット1の動作時に配線41が捩じれることなく、第1アーム21の一方側から他方側に案内することができるのであれば、その形状は限定されるものではなく、たとえば、周縁部21cを貫通する貫通孔であってもよい。本実施形態では、案内部28は、第1アーム21の他方側(第4アーム24の連接部24b側)に開口した案内溝の形状を採用している。
【0047】
案内部28は、第1アーム21および第4アーム24の相対的な枢動により、第1アーム21および第4アーム24が所定の位置(第1の位置)にある状態で、案内孔26を形成する。具体的には、図3に示すように、第1および第4アーム21,24との相対的な枢動により、これらが第1の位置にある状態で、案内部28は、第4アーム24の一部に覆われる。これにより、ロボット1には、第1アーム21の一方側から他方側に、配線41を案内する案内孔26が形成される。本実施形態では、第1の位置は、上述したエンドエフェクタ(図示)の使用時にロボット1が動作する範囲における第1アーム21と第4アーム24との相対的な位置である。
【0048】
一方、図8に示すように、第1アーム21と第4アーム24とが第1の位置とは異なる第2の位置にある状態で、案内部28は、第4アームから露出している。すなわち、案内部28である案内溝の開口は、第4アーム24の連接部24b側に開放されている。本実施形態では、第2の位置は、エンドエフェクタ(図示)の使用時にロボット1が動作する範囲から外れた範囲(例えばロボット1の休止位置)における第1アーム21と第4アーム24との相対的な位置である。
【0049】
図5および図6に示すように、第1アーム21の他方側には、第1アーム21および第4アーム24により、後述する配線41の屈曲部41aを収容する収容空間Sが形成されている。具体的には、収容空間Sは、第1アーム21の鍔状の周縁部21cと、第4アーム24の連接部24bの本体となる筒状の本体部24dと、筒状の本体部24dの周りから立設した第4アーム24の鍔状の周縁部24eと、により囲われ、第3アーム23に対して隔離された空間である。したがって、収容空間Sには、第3アーム23の表面等は露出していない。
【0050】
さらに、図5図7に示すように、収容空間Sにおいて、第1アーム21の周縁部21cおよび第4アーム24の周縁部24eには、これらが対向する位置に、配線41を収容する収容溝21f、24fが形成されている。
【0051】
具体的には、第1アーム21の収容溝21fは、第1アーム21の他方側において、第4回転軸J4の周りに沿って第1アーム21の鍔状の周縁部21cに形成されており、案内部28である案内溝と連続している。一方、第4アーム24の収容溝24fは、第1アーム21と対向する位置において、第1アーム21の収容溝21fと対向するように形成されている。したがって、本実施形態では、第1アーム21の収容溝21fと、第4アーム24の収容溝24fとが、第4回転軸J4の周りに沿って並行して形成されることになる。
【0052】
さらに、本実施形態では、第4アーム24の周縁部24eには、収容空間Sを覆うように、カバー61が着脱自在に取り付けられている。ここで、カバー61は、第4アーム24の周縁部24eに取付けられているが、第1アーム21と第4アーム24との相対的な枢動を妨げすに、収容空間Sを覆うことができるのであれば、第1アーム21の周縁部21cに取付けられてもよい。
【0053】
さらに、本実施形態では、後述するように、配線41を配置する際に、カバー61を外した状態で収容空間Sに配線41の屈曲部41aを成形し易くするために、カバー61を着脱自在としている。しかしながら、屈曲部41aを収容空間Sに簡単に収容することができるのであれば、カバー61は、第4アーム24の周縁部24eまたは第1アーム21の周縁部21cのいずれか一方に一体的に形成されていてもよい。
【0054】
3.配線41とその配線経路について
このように構成されたロボット1に対して、基台10から第1アーム21に沿って、第4アーム24まで、可撓性を有した配線41が配設されている。本実施形態では、配線41は、第1アーム21の一方側において、基台10から第1アーム21に沿って配設された状態で、固定具62により、第1アーム21に固定されている。
【0055】
さらに、第1アーム21に固定された配線41は、第1アーム21の他端(先端部)において、第3アーム23の関節シャフト23aの周りに沿った第1アーム21の筒状の受け部21bに配設されている。本実施形態では、配線41は、第4アーム24が位置するロボット1の前方側に、第3アーム23の関節シャフト23aから離間し、かつ、関節シャフト23aの周りに沿って、受け部21bに配設されている。これにより、第1アーム21および第3アーム23の相対的な枢動により、第1アーム21の一方側において、配線41は、第3アーム23に機械的に干渉し難い。
【0056】
さらに、関節シャフト23aの周りに沿って配設された配線41は、ガイドフック66に係止され、係止された配線41は案内部28により、第1アーム21の一方側から他方側に案内されている。このように配線41は、第1アーム21の周縁部21cに形成された案内部28を介して、第1アーム21の一方側から他方側に案内されるので、第1アーム21および第3アーム23の相対的な枢動により、配線41が局所的に捩じれることはない。
【0057】
ここで、本実施形態では、配線41は、ロボット1の前方側において、関節シャフト23aの周りに沿って、受け部21bに配設されている。しかしながら、例えば、ロボット1の後方側の第1アーム21と第3アーム23との間において、関節シャフト23aの周りに沿って、配線41を受け部21bに配設し、ロボット1の後方側に案内部を設け、配線41を、第1アーム21の一方側から他方側に案内してもよい。
【0058】
ここで、エンドエフェクタ(図示せず)を用いてロボット1が動作する際には、第1アーム21と第4アーム24とが、上述した第1の位置にある状態となる。したがって、図3図6および図7に示すように、案内部28である案内溝は、第4アーム24の一部に覆われて案内孔26を形成するため、この案内孔26に配線41を安定的に保持することができる。
【0059】
一方、案内部28への配線41を取り付ける際、または案内部28から配線41を取り外す際には、図8に示すように、第1アーム21と第4アーム24とを、上述した第2の位置の状態にする。第2の位置では、案内部28である案内溝は、第4アーム24の一部に覆われることなく、第4アーム24側に開放するように露出している。したがって、第4アーム24側から配線41を案内部28に簡単に取り付けることができ、案内部28から配線41を簡単に取り外すことができる。
【0060】
さらに、案内部28により案内された配線41は、第1アーム21の他方側において、U字状に屈曲した屈曲部41aを形成しており、屈曲部41aは、収容空間Sに収容されている。屈曲部41aの両側の配線41のうち、一方側の配線41は、第1アーム21の収容溝21fに収容され、他方側の配線41は、第4アーム24の収容溝24fに収容されている。収容溝21f,24fに収容された配線41は、並行した状態で、第4回転軸J4の周りに沿って、湾曲している。このように、収容空間S内において、配線41は、屈曲部41aを設けることにより、U字状に折り返した形状となっている。さらに、図5に示すように、配線41は、第4アーム24の周縁部24eに形成された貫通孔24gに挿通されている。
【0061】
本実施形態では、U字状に屈曲した屈曲部41aを形成したので、第1アーム21と第4アーム24が相互に枢動した際には、配線41内において屈曲部41aの位置が変化する。これにより、配線41の屈曲部41aが伸び切ることはなく、さらには、配線41が捩じれることなく、第1アーム21と第4アーム24との相対的な枢動により配線41に作用する負荷を、屈曲部41aで吸収することができる。本実施形態では、収容溝21f,24fを設けたので、配線41の屈曲部41aの形状を保持したまま、屈曲部41aの位置を変化させることができる。
【0062】
さらに、収容空間Sは、第1アーム21および第4アーム24により区画され、第3アーム23から隔離されている。このような収容空間Sに、配線41の屈曲部41aが収容される。したがって、第1および第4アーム21,24の相対的な枢動により、配線41の屈曲部41aの位置が変化したとしても、屈曲部41aを収容空間S内に収めつつ、屈曲部41aが第3アームに機械的に干渉することを回避することができる。
【0063】
また、収容空間Sは、図2および図3に示すように、カバー61により覆われているので、第1および第4アーム21,24の相対的な枢動により、配線41の屈曲部41aの位置および形状が変化しても、収容空間Sから飛び出すことはない。
【0064】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0065】
例えば、本実施形態では、収容空間内にU字状の屈曲部を設けたが、第1アームと第4アームの枢動により配線が伸び切らないのであれば、収容空間内において、配線を複数の箇所で屈曲させてもよい。また、本実施形態では、U字状の屈曲部を、上方から下方に向かって第1および第4アームの連接部に巻回するように形成したが、たとえば、U字状の屈曲部を下方から上方に向かって第1および第4アームの連接部に巻回するように形成してもよい。
【0066】
なお、本実施形態では、その一例として、電源ケーブルに相当する配線を例示したが、例えば、の手首組立体を制御する制御用の信号線(配線)、配線を部分的または全体的に通した配管、潤滑油またはグリースを供給する配管などであって、可撓性を有する配線または配管およびこれらの組合せであれば特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
1:ロボット(産業用ロボット)、10:基台、11:固定台、12:旋回台、20:平行リンク機構、21:第1アーム、21b:受け部、21c:周縁部、22:第2アーム、23:第3アーム、23a:関節シャフト、24:第4アーム、26:案内孔、28:案内部、30:手首組立体、41:配線、41a:屈曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8