特許第6765257号(P6765257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6765257ポリイソシアネート組成物、水性塗料組成物、硬化塗膜及び塗装物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765257
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】ポリイソシアネート組成物、水性塗料組成物、硬化塗膜及び塗装物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/28 20060101AFI20200928BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20200928BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20200928BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20200928BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20200928BHJP
【FI】
   C08G18/28 015
   C09D175/04
   C08G18/00 C
   C09D5/02
   C09D7/40
【請求項の数】5
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-165921(P2016-165921)
(22)【出願日】2016年8月26日
(65)【公開番号】特開2018-30972(P2018-30972A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】竹野 和孝
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/125769(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/28
C08G 18/00
C09D 5/02
C09D 7/40
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートと、下記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールアルキルエーテルとの反応により得られる変性ポリイソシアネート、及び、酸性リン酸エステルを含む、ポリイソシアネート組成物であって、
平均イソシアネート官能基数が、1.8以上4.0以下であり、前記変性ポリイソシアネートにおける前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分を、前記ポリイソシアネート組成物の総量に対して、10質量%以上18質量%以下含み、前記酸性リン酸エステルの含有量が5質量ppm以上95質量ppm以下である、ポリイソシアネート組成物。
【化1】
(式(1)中、Rは炭素原子数1から4のアルキレン基であり、Rは炭素数1から4のアルキル基である。nの平均数は5.0以上20.0以下である。)
【請求項2】
前記変性ポリイソシアネートにおいて、前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分の分子量分布の分散比が、1.05以上2.00以下である、請求項1に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物と、水性ポリオールと、増粘剤とを含む、水性塗料組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の水性塗料組成物を硬化した硬化塗膜。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化塗膜を含む塗装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート組成物、水性塗料組成物、硬化塗膜及び塗装物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、溶剤系塗料として利用されている二液ウレタンコーティング組成物には水系化が望まれている。しかし、二液ウレタンコーティング組成物において、硬化剤として用いられるポリイソシアネートは、水に分散しにくく、水と反応しやすく、その反応により二酸化炭素を発生する。そのため、乳化性を有し、水分散状態でもイソシアネート基と水との反応が抑えられるポリイソシアネートの開発が進められている。
例えば、特許文献1には、ポリイソシアネート化合物とエチレンオキシド単位を含むポリエーテルとを反応させた反応物を含む、水に分散可能なポリイソシアネート混合物が開示されている。また、特許文献2には、ノニオン性親水成分とポリイソシアネートを反応させた水性ポリイソシアネートに、特定量の酸性物質を加えた安定化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−222150号公報
【特許文献2】特開2000−336134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水系の二液ウレタンコーティング組成物は、例えば、家具及び建材、住宅用の木工、スポーツフロア、住宅及び学校施設の木床、に塗装される。それらの用途では、現場塗装されることも多く、高温下で置かれることもしばしばある。また、現場では二液を混合した後に濾過する事もなく塗装される。そのため、貯蔵中に粘度上昇や色度低下がなく、塗膜表面にブツが発生しないポリイソシアネート組成物が求められている。
特許文献1で開示するポリイソシアネート組成物においては、貯蔵中の粘度上昇や色度低下の課題がある。また、特許文献2で開示するポリイソシアネート組成物においては、塗膜表面にブツが発生しやすい課題がある。
そこで、本発明は、水分散安定性が良好で、かつ、貯蔵中に粘度上昇や色度低下がなく、塗膜表面のブツが少ない塗膜が得られるポリイソシアネート組成物、このポリイソシアネート組成物を含む水性塗料組成物、その硬化塗膜及び塗装物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ポリイソシアネートと、特定構造を有するポリアルキレングリコールアルキルエーテルとの反応により得られる特定の変性ポリイソシアネート、及び、酸性リン酸エステルとを含み、特定範囲のイソシアネート平均官能基数である、ポリイソシアネート組成物が、貯蔵時の粘度上昇と色度低下がなく、低撹拌力で撹拌した際の良好な塗膜の外観と、良好な塗膜の耐水性と、塗膜表面のブツが少ない塗膜を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は下記の通りである。
[1]
ポリイソシアネートと、下記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールアルキルエーテルとの反応により得られる変性ポリイソシアネート、及び、酸性リン酸エステルを含む、ポリイソシアネート組成物であって、平均イソシアネート官能基数が、1.8以上4.0以下であり、前記変性ポリイソシアネートにおける前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分を、前記ポリイソシアネート組成物の総量に対して、10質量%以上18質量%以下含み、前記酸性リン酸エステルの含有量が5質量ppm以上95質量ppm以下である、ポリイソシアネート組成物。
【化1】
(式(1)中、Rは炭素原子数1から4のアルキレン基であり、Rは炭素数1から4のアルキル基である。nの平均数は5.0以上20.0以下である。)
[2]
前記変性ポリイソシアネートにおいて、前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分の分子量分布の分散比が、1.05以上2.00以下である、[1]に記載のポリイソシアネート組成物。
[3]
[1]又は[2]に記載のポリイソシアネート組成物と、水性ポリオールと、増粘剤とを含む、水性塗料組成物。
[4]
[3]に記載の水性塗料組成物を硬化した硬化塗膜。
[5]
[4]に記載の硬化塗膜を含む塗装物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水分散安定性が良好で、かつ、貯蔵中に粘度上昇や色度低下がなく、塗膜表面のブツが少ない塗膜が得られるポリイソシアネート組成物、このポリイソシアネート組成物を含む水性塗料組成物、その硬化塗膜及び塗装物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の本実施形態に限定するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0009】
本明細書において、酸性リン酸エステルの含有量の単位である「ppm」は、質量について100万分のいくら、すなわち、1kgあたりに含まれるmg数(mg/kg)と等価であり、「質量ppm」とも表しうる。
本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、1つ以上のイソシアネート基(−NCO)を有するモノマーが複数結合した重合体をいう。
本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシ基(−OH)を有する化合物をいう。
【0010】
〔ポリイソシアネート組成物〕
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネートと、一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールアルキルエーテルと、の反応により得られる変性ポリイソシアネート、及び、酸性リン酸エステルを含む。
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、上記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルと反応していない上記ポリイソシアネート(以下、「未反応ポリイソシアネート」とも示す。)、及び上記ポリイソシアネートと反応していないポリアルキレングリコールアルキルエーテル(以下、「未反応ポリアルキレングリコールアルキルエーテル」とも示す。)を含んでもよい。また、後述する本実施形態のポリイソシアネート組成物の各種物性又は特性は、特に言及のない限り、上記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとの反応により得られる変性ポリイソシアネート(以下、単に「変性ポリイソシアネート」とも示す。)と、未反応ポリイソシアネートとを含んだ状態をも示す特性である。
また、本実施形態のポリイソシアネート組成物において、未反応ポリイソシアネートと変性ポリイソシアネートとの割合は、液体クロマトグラフィーにより測定して求めることができる。
【0011】
また、上記ポリイソシアネート組成物は、平均イソシアネート官能基数が、1.8以上4.0以下である。さらに、該ポリイソシアネート組成物の総量(100質量%)に対して、上記変性ポリイソシアネートにおける上記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分を、10質量%以上18質量%以下含む。
【0012】
以下、本実施形態のポリイソシアネート組成物を構成する各成分について説明する。
【0013】
<変性ポリイソシアネート>
本実施形態に用いる変性ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートと、一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールアルキルエーテルとの反応により得られる。
変性ポリイソシアネートを得るために用いる、ポリイソシアネートと、一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールアルキルエーテルについて説明する。
【0014】
≪ポリイソシアネート≫
本実施形態に用いるポリイソシアネートとしては、以下のものに限定されないが、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及び芳香族ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート化合物、これらジイソシアネート化合物から誘導されるポリイソシアネート化合物が挙げられる。本実施形態に用いるポリイソシアネートは、工業的に入手しやすいという観点から、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び芳香族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一種のジイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0015】
脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものに限定されないが、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、エチル(2,6−ジイソシアナト)ヘキサノエート、1,6−ジイソシアナトヘキサン(以下、「HDI」とも記す。)、1,9−ジイソシアナトノナン、1,12−ジイソシアナトドデカン、及び2,2,4−又は2,4,4−トリメチル−1、6−ジイソシアナトヘキサンが挙げられる。
【0016】
脂環族ジイソシアネートとしては、以下のものに限定されないが、例えば、1,3−又は1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「水添XDI」とも記す。)、1,3−又は1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、3,5,5−トリメチル1−イソシアナト−3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「IPDI」とも記す。)、4−4’−ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタン(以下、「水添MDI」とも記す。)、及び2,5−又は2,6−ジイソシアナトメチルノルボルナンが挙げられる。
【0017】
芳香族ジイソシアネートとしては、以下のものに限定されないが、例えば、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
これらの中でも、HDI、IPDI、水添XDI、及び水添MDIが、黄変しにくい傾向にあるため、より好ましい。
【0018】
上記のジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートとして、以下のものに限定されないが、例えば、2つのイソシアネート基を環化二量化して得られるウレトジオン構造を有するポリイソシアネート化合物、3つのイソシアネート基を環化三量化して得られるイソシアヌレート構造、イミノオキサジアジンジオン構造を有するポリイソシアネート化合物、3つのイソシアネート基と1つの水分子とを反応させて得られるビウレット構造を有するポリイソシアネート化合物、2つのイソシアネート基と1分子の二酸化炭素とを反応させて得られるオキサダイアジントリオン構造を有するポリイソシアネート化合物、1つのイソシアネート基と1つの水酸基を反応させて得られるウレタン基を複数有するポリイソシアネート化合物、2つのイソシアネート基と1つの水酸基を反応させて得られるアロファネート構造を有するポリイソシアネート化合物、1つのイソシアネート基と1つのカルボキシル基を反応させて得られるアシル尿素基を有するポリイソシアネート化合物、及び1つのイソシアネート基と1つの1級又は2級アミンを反応させて得られる尿素構造を有するポリイソシアネート化合物が挙げられる。また、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナートメチルオクタン、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナト−ヘキサノエート等の脂肪族トリイソシアネートも挙げられる。なお、ここでいう「ポリイソシアネート化合物」とは、ジイソシアネート以外の化合物(例えば、アルコール、水、アミン)と反応して得られたポリイソシアネートを含む化合物を意味する。
また、これらのポリイソシアネートは、水酸基を有するスルホン酸アミン塩、水酸基及びノニオン性親水基を有するビニル重合体等によって変性されていてもよい。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0019】
≪ポリアルキレングリコールアルキルエーテル≫
本実施形態に用いるポリアルキレングリコールアルキルエーテルは、下記一般式(1)で表される構造を有する。
【0020】
【化2】
(式(1)中、Rは炭素原子数1から4のアルキレン基であり、Rは炭素数1から4のアルキル基である。nの平均数は5.0以上20.0以下である。)
【0021】
上記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルは、単一成分ではなく、重合度であるn(以下、「重合度n」又は単に「n」とも示す。)の数が異なる物質の集合体である。そのため、重合度nは、その平均値で表す。また、上記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルは、単一成分ではなく、分子量分布を持っているため、その分子量分布を表すために分散比を用いる。
【0022】
本実施形態において、この分子量分布の分散比は、液体クロマトグラフィーにより分離された後に質量分析により測定されて得られる、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルのマススペクトルにおいて、質量電荷比(m/z)から求めた分子量と、イオンの相対強度とを用いて、以下のように計算される。なお、これにより、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、単に「GPC」とも示す。)により測定が困難な試料(例えば、本実施形態のポリイソシアネート組成物中のポリアルキレングリコールアルキルエーテル)であっても、分子量分布の分散比を求めることができる。また、ここでいう「ポリアルキレングリコールアルキルエーテル」は、本実施形態のポリイソシアネート組成物の原料として用いられるポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリイソシアネート組成物中の未反応ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、又はポリイソシアネート組成物中の変性ポリイソシアネートのポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分、のいずれであってもよい。
分子量分布の分散比=B/A
A=ΣM/ΣI
B=ΣM/ΣM
(Mは各成分の質量電荷比(m/z)から求めた分子量、Iは各成分のイオンの相対強度を示す。)
【0023】
一般的に、重合度nの平均数を中心として一山の分布をもっているポリアルキレングリコールアルキルエーテルにおいては、分子量分布の分散比は1.00以上1.05未満である。
【0024】
本実施形態に用いる変性ポリイソシアネートにおいて、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分の分子量分布の分散比は、水分散安定性と塗膜外観の観点から、1.05以上2.00以下であることが好ましく、より好ましくは1.06以上1.50以下であり、さらに好ましくは1.08以上1.45以下であり、よりさらに好ましくは1.10以上1.40以下である。分子量分布の分散比が1.05以上2.00以下であると、塗膜外観と分散安定性により優れる傾向にある。これは、水和層を厚く形成し、粒子どうしの距離を保つ成分と、水分子との相互作用を低くする成分とが適度に混在することで粘度上昇を抑制し、塗膜外観を良好にしつつ粒子を安定に分散させることができると推察される。また、分子量分布の分散比が1.05以上2.00以下であることで、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの含有率が小さい状態でも粘度上昇の抑制と水分散安定性を両立させることが可能となり、塗膜の耐ワイン性により優れる傾向にある。
【0025】
変性ポリイソシアネートの、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分の分子量分布の分散比を上記範囲に制御する方法として、例えば、分子量分布の分散比が1.05以上2.00以下のポリアルキレングリコールアルキルエーテルを用いるか、nの平均数が異なるものを2種以上組み合わせて調整する方法が挙げられる。また、分子量分布の分散比は、実施例中に記載する方法により測定する。
【0026】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルのRは、親水性付与の観点から、炭素原子数1から4のアルキレン基である。より親水性が付与できる観点から、炭素原子数2のエチレン基であることが好ましい。また、親水性付与の観点から、Rは炭素原子数1から4のアルキル基である。より親水性が付与できる観点から、炭素原子数1のメチル基であることが好ましい。
【0027】
さらに、nの平均数は、水分散性と水分散安定性と塗膜外観との観点から、5.0以上であり、5.2以上であることが好ましく、5.4以上であることがより好ましく、6.0以上であることがさらに好ましい。
【0028】
nの平均数が5.0以上であると、乳化力が増すため分散性が向上し、容易に分散することができる。そのため、主剤への分散性がより向上し、塗膜の外観がより優れる。
また、nの平均数は、水分散性と、塗膜外観の観点から、20.0以下であり、15.0以下であることが好ましく、14.0以下であることがより好ましく、11.0以下であることがさらに好ましく、9.4以下であることがよりさらに好ましい。
【0029】
nの平均数が20.0以下であると、ゲル化等の過度の粘度上昇をより防ぐことができ、容易に分散することができる。そのため、主剤への分散性がより向上し、塗膜の外観がより優れる。
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとしては、以下のものに限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール(モノ)メチルエーテル、ポリ(エチレン、プロピレン)グリコール(モノ)メチルエーテル、及びポリエチレングリコール(モノ)エチルエーテルが挙げられる。親水性付与の観点から、ポリエチレングリコール(モノ)メチルエーテルが好ましい。
【0030】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが有する水酸基の数は、ポリイソシアネート組成物の粘度を低くする観点から、好ましくは1つである。
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルは、その中にアルキレンオキサイド繰り返し単位−(RO)−を含む。ポリアルキレングリコールアルキルエーテルのnの平均数は5.0以上20.0以下でありさえすればよく、その範囲内で異なるアルキレンオキサイド繰り返し単位の数であってもよい。アルキレンオキサイド繰り返し単位の平均数(以下、「平均アルキレンオキサイド繰返単位数」とも示す。)、すなわちnの平均数は、水分散性と、水分散安定性と、塗膜外観の観点から、5.0以上であり、5.2以上であることが好ましく、5.4以上であることがより好ましく、6.0以上であることがさらに好ましい。
【0031】
nの平均数が5.0以上であると、乳化力が増すため分散性が向上し、容易に分散することができる。そのため、主剤への分散性がより向上し、塗膜の外観がより優れる。
また、nの平均数は、水分散性と、塗膜外観の観点から、20.0以下であり、15.0以下であることが好ましく、14.0以下であることがより好ましく、11.0以下であることがさらに好ましく、9.4以下であることがよりさらに好ましい。
nの平均数が20.0以下であると、ゲル化等の過度の粘度上昇をより防ぐことができ、容易に分散することができる。そのため、主剤への分散性がより向上し、塗膜の外観がより優れる。
【0032】
本実施形態のポリイソシアネート組成物中のポリアルキレングリコールアルキルエーテルの重合度nの平均数とは、変性ポリイソシアネートの、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分の重合度nの平均数である。重合度nの平均数は、実施例中に記載する方法により測定する。
【0033】
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルにおいて、上述した分子量分布の分散比を1.05以上2.00以下に調整するために、nの平均数が異なるポリアルキレングリコールアルキルエーテルを2種以上組み合わせてもよい。組み合わせる例として、例えば、第一の成分としてnの平均数が3.0以上10.0以下の群と、第二の成分としてnの平均数が6.0以上22.0以下の群の中から、それぞれ一種以上を組み合わせる方法が挙げられる。ただし、組み合わせるものはそれぞれ異なる平均数のものである。
【0034】
ポリイソシアネート組成物中において、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが変性された割合(変性率)は、原料のポリイソイソシアネートのイソシアネート基100当量に対して、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが変性された割合である。変性率は、1.0%以上30%以下であることが好ましく、3.0%以上25%以下であることがより好ましく、5.0%以上20%以下であることがさらに好ましい。変性率が1.0%以上であることで、界面張力が下がるため、水分散性を示すようになり、変性率が30%以下であることで、架橋に使用されるイソシアネート基が多くなり、架橋性が良好となる傾向にある。
【0035】
変性率を上記範囲に制御する方法としては、以下のものに限定されないが、例えば、上記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとポリイソシアネートとの配合比を調整する方法が挙げられる。また、変性率は、実施例中に記載する方法により測定する。
ポリイソシアネート組成物の総量(100質量%)に対して、変性ポリイソシアネートのポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分は、水分散性と、水分散安定性との観点から、10質量%以上であり、11質量%以上であることが好ましく、13質量%以上であることがより好ましい。変性ポリイソシアネートのポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分が10質量%以上であることで、水和層が形成させるため、分散性が向上する。
【0036】
また、イソシアネート基の保持率と塗膜物性との観点から、18質量%以下であり、17.5質量%以下であることが好ましく、17質量%以下であることがより好ましい。変性ポリイソシアネートのポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分が18質量%以下であることで、水とイソシアネート基との接触が少なくなるため、イソシアネート基の保持率が高く、塗膜物性(硬度、耐溶剤性、耐水性)が向上する。イソシアネート基の保持率は、実施例中に記載する方法により測定する。
【0037】
ポリイソシアネートと上記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとを反応させる方法として、以下のものに限定されないが、例えば、ポリイソシアネートが有する末端イソシアネート基と、上記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが有する水酸基とを反応させる方法が挙げられる。
【0038】
本実施形態のポリイソシアネート組成物のイソシアネート基含有率は、不揮発分が実質的に100質量%である状態で、10質量%以下以上24質量%以下であることが好ましく、11質量%以上23質量%以下であることがより好ましく、12質量%以上21質量%以下がさらに好ましい。イソシアネート基含有率が10質量%以上24質量%以下であることで、架橋に使用されるイソシアネート基が多くなり、ポリイソシアネート分子の硬化中における分子の動きやすさが良好となるため、架橋性が良好となり、塗膜物性が向上する傾向にある。ここでいうイソシアネート基は、未反応ポリイソシアネートが有するイソシアネート基と変性ポリイソシアネートが有するイソシアネート基を併せたものをいう。
【0039】
イソシアネート基含有率を上記範囲に制御する方法としては、以下のものに限定されないが、例えば、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとポリイソシアネートとの配合比を調整する方法が挙げられる。また、イソシアネート基含有率は、実施例中に記載する方法により測定する。
【0040】
本実施形態のポリイソシアネート組成物中の変性ポリイソシアネートと未反応ポリイソシアネートとを含むポリイソシアネートの数平均分子量は、水分散安定性と主剤への分散性との観点から、450以上1200以下であることが好ましく、500以上1100以下であることがより好ましく、550以上1000以下であることがさらに好ましい。ポリイソシアネートの数平均分子量が450以上1200以下であることで、架橋に使用される三量体成分が多くなり、ポリイソシアネート分子の硬化中における分子の動きやすさが良好となるため、架橋性が良好となり、塗膜物性が向上する傾向にある。
【0041】
数平均分子量を上記範囲に制御する方法としては、以下のものに限定されないが、例えば、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとポリイソシアネートとの配合比を調整する方法が挙げられる。また、ポリイソシアネートの数平均分子量は、実施例中に記載する方法により測定する。
【0042】
本実施形態の変性ポリイソシアネートと未反応ポリイソシアネートとを含むポリイソシアネートのイソシアネート官能基の平均数(以下、「平均イソシアネート官能基数」とも示す。)は、1.8以上4.0以下であり、塗膜の架橋性の観点から、1.8以上であり、2.3以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましい。
【0043】
平均イソシアネート官能基数が1.8以上であることで、ポリイソシアネート分子の硬化中における分子の動きやすさが良好となるため、塗膜の架橋性が良好となる。
また、イソシアネート基の保持率の観点から、4.0以下であり、3.6以下であることが好ましく、3.4以下であることがより好ましい。
平均イソシアネート官能基数が4.0以下であることで、水とイソシアネート基との接触が少なくなるため、イソシアネート基の保持率が高くなる。
平均イソシアネート官能基数を上記範囲に制御する方法として、以下のものに限定されないが、例えば、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとポリイソシアネートとの配合比を調整する方法が挙げられる。また、平均イソシアネート官能基数は、実施例中に記載する方法により測定する。
【0044】
<酸性リン酸エステル>
本実施のポリイソシアネート組成物は、酸性リン酸エステルを含む。酸性リン酸エステルとしては、以下のものに限定されないが、例えば、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルピロホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2−-エチルヘキシルアシッドホスフェート、アルキル(C12、C14、C16、C18)アシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェートなどが挙げられる。
【0045】
酸性リン酸エステルの含有量は、ポリイソシアネート組成物に対して下限は5質量ppm以上であり、好ましくは10質量ppm以上、より好ましくは15質量ppm以上含む。また、上限は95質量ppm以下であり、好ましくは92質量ppm以下、より好ましくは90質量ppm以下含む。含有量が上記範囲であると、ポリイソシアネート組成物の貯蔵時における色度変化と粘度変化を良好にすることができ、塗膜形成時のブツを防ぐことができる。
【0046】
また、酸性リン酸エステルの含有量は、変性ポリイソシアネート100質量部に対し、0.010質量部未満であることが好ましく、0.095質量部以下がより好ましく、0.092質量部以下が特に好ましい。
含有量が上記範囲であると、ポリイソシアネート組成物の貯蔵時における色度変化と粘度変化を良好にすることができ、塗膜形成時のブツを防ぐことができる。
【0047】
ポリイソシアネート組成物の不揮発分は、加熱前の質量に対する加熱後の質量の比率(%)であり、10%以上100%以下であることが好ましく、50%以上100%以下であることがより好ましい。不揮発分が10%以上であることで、ポリイソシアネート組成物の粘度が低くなるため、取扱いやすくなる傾向にあり、不揮発分が100%以下であることで、有機溶剤使用量を減少させることができるため、環境問題が改善される傾向にある。
不揮発分を上記範囲に制御する方法としては、以下のものに限定されないが、例えば、ポリイソシアネート組成物と溶剤との配合比を調整する方法が挙げられる。不揮発分は、実施例中に記載する方法により測定する。
【0048】
本実施形態のポリイソシアネート組成物の水分散粒子径は、水分散安定性と、塗膜の外観との観点から、30nm以上であることが好ましく、40nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。
水分散粒子径が30nm以上であることで、主剤中の樹脂が形成する粒子間に配置しやすく、また粒子内に取り込まれやすくなるため、架橋が均一に行われ、塗膜物性(外観、硬度、耐溶剤、耐水性)が向上する傾向にある。
また、水分散安定性と、塗膜の外観との観点から、水分散粒子径が200nm以下であることが好ましく、190nm以下であることがより好ましく、180nm以下であることがさらに好ましい。
【0049】
水分散粒子径が200nm以下であることで、主剤中の樹脂が形成する粒子間に配置しやすく、また粒子内に取り込まれやすくなるため、架橋が均一に行われ、塗膜物性(外観、硬度、耐溶剤、耐水性)が向上する傾向にある。
水分散粒子径を上記範囲に制御する方法としては、以下のものに限定されないが、例えば、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとポリイソシアネートとの配合比を調整する方法が挙げられる。また、水分散粒子径は、実施例中に記載する方法により測定する。
【0050】
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、上述した変性ポリイソシアネート、酸性リン酸エステル及び未反応ポリイソシアネート以外に他の成分を含んでいてもよい。他の成分として、例えば、溶剤、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤、及び界面活性剤が挙げられる。
【0051】
酸化防止剤は、フェノール系化合物であることが、低撹拌力で撹拌した際の塗膜外観向上の観点、及び塗膜黄変防止の観点から好ましい。フェノール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチル−フェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−s−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ3’5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−ジおよびトリ−チオビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ3’,5’−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、カルシウム(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルモノエチルホスフォネート)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス[2[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]イソシアネート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のヒンダードフェノール系化合物;ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、2−t−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、プロピルガレート、オクチルガレート、ラウリルガレート、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、2,2’−ジメチレン−ビス−(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス[2−t−ブチル−4−メチル−6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタラート、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、アルキル化ビスフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、及びブチル酸,3,3−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチレンエステルが挙げられる。
【0052】
上記の中でも、ヒンダードフェノール系化合物であることが、低撹拌力で撹拌した際の塗膜外観をより向上させる観点からより好ましい。また、ヒンダードフェノール系化合物の中でも、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチル−フェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、及び2,6−ジ−t−ブチル−4−s−ブチルフェノールからなる群より選ばれる1種以上を含むことがさらに好ましい。
【0053】
ポリイソシアネート組成物がヒンダードフェノール系化合物を含む場合においては、低撹拌時の塗膜外観をより良好にする観点から、該ポリイソシアネート組成物の総量(100質量%)に対して、0.001質量%以上0.1質量%以下含むことが好ましく、0.003質量%以上0.08質量%以下含むことがより好ましく、0.005質量%以上0.05質量%以下含むことがさらに好ましい。
【0054】
ヒンダードフェノール系化合物の含有量が0.001質量%以上であると、塗膜の平滑性が高まり、低撹拌時の塗膜外観がより優れる傾向にある。ヒンダードフェノール系化合物の含有量が0.1質量%以下であると、塗膜形成時のブリードアウトを防ぐことができ、低撹拌時の塗膜外観がより優れる傾向にある。ヒンダードフェノール系化合物の含有量は、実施例中に記載する方法により測定する。
【0055】
溶剤の含有量は、ポリイソシアネート組成物の総量(100質量%)に対して、0質量%以上90質量%以下であることが好ましく、0質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。また、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤、界面活性剤は、ポリイソシアネート組成物の総量(100質量%)に対して、0質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0056】
〔水性塗料組成物〕
本実施形態の水性塗料組成物は、上述のポリイソシアネート組成物と水性ポリオールと増粘剤とを含む。
本実施形態の水性塗料組成物における水性ポリオールとしては、以下のものに限定されないが、水を主成分とし、場合によっては少量の有機溶剤を含有する媒体中に、分散もしくは乳化された水性ポリオールが用いられる。前記水性ポリオールの組成、ガラス転移温度、粒子径、分子量、並びにヒドロキシル基濃度などの設計は、用途や目的によって様々であり、数多くの製品が市販されている。組成に関しては、アクリル系、ポリエステル系、及びポリウレタン系などのものを用いることができる。場合によってはそれらが複合したものも用いることができる。
【0057】
前記水性ポリオールのガラス転移温度は、硬化樹脂組成物の用途や目的によって様々であり、限定されないが、一般に、弾性塗料など柔軟性が必要な用途では低い値に、硬質塗料など硬さが必要な用途では高い値に設定されるが、通常は−50℃から80℃程度である。
前記水性ポリオールの粒子径は、分散安定性や粘度及び形成される硬化塗膜の各種性能の観点から、通常は平均粒子径として、おおよそ50nm以上400nm以下に設定される。
【0058】
前記水性ポリオールのヒドロキシル基濃度は、用途や目的から適宜設定されるものであるが、ポリオール中のヒドロキシル基の重量%として、通常は0.5%以上5%以下程度である。
【0059】
アクリル系ポリオールは、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物を共重合させることにより得られる。重合は一般的な溶液重合あるいは乳化重合によって行なわれ、分子量の調節にはメルカプタン類などの連鎖移動剤が用いられる。乳化重合による場合は水に乳化したポリオールが直接得られるが、溶液重合による場合は、重合の後で行なわれる水分散化に必要な量のカルボキシル基含有モノマーを共重合させることが必要である。重合終了後にそのカルボキシル基をアンモニアやアミンなどの塩基性化合物で中和し、水を加えることによってポリオールの水分散体を得ることができる。好ましくはその後に蒸留により溶液重合時に用いた有機溶剤を除去する。ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチルなどが挙げられる。好ましくは、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルである。上記単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、などのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリルなどのメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミドなどの不飽和アミド;メタクリル酸グリシジルなどのグリシジル基含有単量体;スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチルなどのビニル系単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの加水分解性シリル基含有単量体などが挙げられる。市販されている水性アクリルポリオールとしては、Setaqua6510、Setaqua6511、Setaqua6515、Setaqua6516、Setaqua6520、Setaqua6522(Nuplex Resin社製)、Macrynal VSM2521w、Macrynal VSM6299w、Macrynal SM6810、Macrynal SM6825、Macrynal SM6826w(Allnex Belgium SA/NV社製)などが挙げられる。
【0060】
ポリエステル系ポリオールは、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのカルボン酸の群から選ばれた二塩基酸の単独又は混合物、及び必要に応じてスルホン酸塩含有のポリカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリンなどの群から選ばれた多価アルコールなどの単独又は混合物との縮合反応や、例えば多価アルコールを用いたε−カプロラクトンの開環重合により得られる。分子量の調節は重合度の調節により行なわれる。重合終了後にポリオール中のカルボキシル基をアンモニアやアミンなどの塩基性化合物で中和するなどし、水を加えることによってポリオールの水分散体を得ることができる。重合や水分散化に際して有機溶剤を用いる場合、好ましくは水分散した後に蒸留により有機溶剤を除去する。
【0061】
ポリウレタン系ポリオールとしては、一般にポリウレタンディスパージョンと言われるものが用いられ、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、水添メチレンジフェニルジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物とポリエステルジオールやポリカーボネートジオールなどとの反応によるプレポリマー化反応を、ジメチロールプロピオン酸などのカルボキシル基含有ジールの必要量の存在下で行ない、カルボキシル基を三級アミンなどで中和した後、水を加えることにより水分散化させ、その後速やかにエチレンジアミンやイソホロンジアミンなどのジアミン化合物などを加えて鎖伸長を行なうことにより得ることができる。分子量の調節はプレポリマー化反応時のイソシアネート基とヒドロキシル基の比率や鎖伸長の条件によって行なわれる。プレポリマー化反応に際して有機溶剤を用いる場合、好ましくは鎖伸長した後に蒸留により有機溶剤を除去する。なお、ポリウレタンディスパージョンは、それ自体が強靭なポリオールであるため、本実施形態における水系2成分型硬化樹脂用の主剤としては、所定量のヒドロキシル基を導入させたものに加え、ヒドロキシル基を有しないか、有する場合でもヒドロキシル基含有量が小さなものも用いることができる。
これらのポリオール類の中では、アクリル系ポリオールが好ましい。また、必要に応じて、他のアクリル系ポリオール、メラミン系硬化剤、ポリエステル系ポリオール、ポリウレタン系ポリオール等の水性ポリオールを併用することができる。
【0062】
これらの水性ポリオール類は、水に乳化、分散又は溶解することが好ましい。そのために、水性ポリオールに含まれるカルボキシル基、スルホン基等を中和することができる。
カルボキシル基、スルホン基等を中和するための中和剤として、以下のものに限定されないが、例えば、アンモニア、水溶性アミノ化合物であるモノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリンから選択される1種以上を用いることができる。中和剤としては、第三級アミンであるトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンが好ましい。
【0063】
本実施形態の水性塗料組成物は、増粘剤を含む。増粘剤を含むことで、タレ防止性を付与することができる。増粘剤の種類は、特に限定されず、アクリル系増粘剤、アクリル系会合型増粘剤、ポリウレタン系増粘剤などを用いることができる。アクリル系増粘剤としては、Viscoatex46、Viscoatex730、Thixol53L(アルケマ社製)、アクリル系会合型増粘剤としては、Rheotech2000、Rheotech2800、Rheotech3800、Rheotech4800(アルケマ社製)、ポリウレタン系会合型増粘剤としては、Coapur6050、Coapur975W、Coapur830W、Coapur3025、Coapur2025、CoapurSX71、CoapurSX22(アルケマ社製)、BYK−420、BYK−425、BYK−428(BYK社製)などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、複数を併用して用いてもよい。
【0064】
増粘剤は、水性塗料組成物中に含まれる水性ポリオールとポリイソシアネート組成物の樹脂分100質量%に対し、0.1〜6.0質量%用いることが好ましい。0.1質量%以上であることで、タレ防止性を付与でき、6.0質量%以下であることで、水性塗料組成物の安定性を保持でき、塗膜の耐水性を付与できる。
【0065】
本実施形態の水性塗料組成物に、表面張力調整剤を用いることは、塗膜外観性を付与する上で好ましい。表面張力調整剤の種類は、特に限定されず、シリコン系、アクリル系などを用いることができる。表面張力調整剤は、水性ポリオールの樹脂分に対して0.05質量%〜5質量%用いることが好ましい。0.05質量%以上であることで、塗膜外観性を付与でき、5質量%以下であることで、塗膜の耐水性を付与できる。
【0066】
シリコン系では、BYK−302、BYK−307、BYK−325、BYK−331、BYK−333、BYK−342、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYK−378、BYK−3455(BYK社製)、Tego wet KL245、Tego wet 250、Tego wet 260、Tego wet 265、Tego wet 270、Tego wet 280(Evonic Tego Chemie社製)が挙げられる。アクリル系では、BYK−381、BYK−3441(BYK社製)などが挙げられる。これらは単独でも構わないし、複数を併用しても構わない。
【0067】
本実施形態の水性塗料組成物に、消泡剤を用いることは、水性塗料組成物の泡の発生を防止する上で好ましい。消泡剤の種類は、特に限定されず、例えば、BYK−011、BYK−012、BYK−014、BYK−015、BYK−017、BYK−018、BYK−019、BYK−021、BYK−022、BYK−023、BYK−024、BYK−025、BYK−028、BYK−038、BYK−044、BYK−093、BYK−094、BYK−1610、BYK−1615、BYK−1650、BYK−1710、BYK−1711、BYK−1730、BYK−1740、BYK−1770、BYK−1780、BYK−1785、BYK−1798(BYK社製)などを用いることができる。これらは単独でも構わないし、複数を併用しても構わない。消泡剤は、水性ポリオールの樹脂分に対して0.05質量%〜5質量%用いることが好ましい。0.05質量%以上であることで、消泡性を付与でき、5質量%以下であることで、ハジキを防止できる。
【0068】
さらに、一般的に塗料に加えられる無機顔料、有機顔料、体質顔料、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、防錆顔料、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、皮張り防止剤、分散剤、充填剤、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、例えばヒンダードアミンなどの光安定剤、静電防止剤又は帯電調整剤、沈降防止剤を組み合わせてもよい。塗料への分散性を良くするために、さらに界面活性剤を添加してもよいし、塗料の保存安定性を良くするために、さらに酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤を添加してもよい。
本実施形態における水性塗料組成物は、イソシアネート基の水との反応を考慮し、イソシアネート基とヒドロキシル基の比率はイソシアネート基過剰の条件で行なうことが好ましく、通常、ヒドロキシル基に対するイソシアネート基のモル比率は1.1倍から1.5倍に設定される。
【0069】
本実施の形態の水性塗料組成物は、例えば、建築用塗料、木工用塗料、自動車用塗料、自動車補修用塗料、プラスチック用塗料、粘着剤、接着剤、建材、家庭用水系塗料、その他コーティング剤、シーリング剤、インキ、注型材、エラストマー、フォーム、プラスチック原料、繊維処理剤に使用することができる。
上記の中でも、建築用塗料又は木工用塗料に特に好適に用いることができる。
【0070】
〔硬化塗膜および塗装物〕
本実施形態の硬化塗膜及び塗装物は、上述の水性塗料組成物を基材上で硬化させて得られる。
本実施形態に硬化塗膜及び塗装物は、水性塗料組成物をスプレー塗装、ローラー塗装、カーテンフロー塗装、エアーナイフ塗装、グラビア塗装、ハケ塗りなどの一般的な方法で基材に塗布することで塗膜を形成することができる。基材に塗布された水性塗料組成物の乾燥は、自然乾燥により行なうことができるし、温風や赤外線などによる加熱乾燥も可能である。
本実施形態の硬化塗膜及び塗装物に用いる基材としては、以下のものに限定されないが、例えば、軟鋼、SUS、アルミなどの金属、ブナベニヤなどの木材、ガラス、石、セラミック材料、コンクリート、硬質及び可撓性プラスチック、繊維製品、皮革製品、紙が挙げられる。場合により、水性塗料組成物を塗布する前に通常のプライマーを塗布しても良い。プライマーとしては、以下のものに限定されないが、例えば木工用では、セルバ30サンジングシーラー(関西ペイント製)、BONDEX SCHNELLSCHLEIFGRUND(PPG Coatings Danmrk A/S製)などが挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。実施例及び比較例における、ポリイソシアネート組成物の物性は、以下のとおり測定した。なお、特に明記しない場合は、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0072】
(物性1)イソシアネート基含有率
ポリイソシアネート組成物を試料として、イソシアネート基含有率の測定は、JIS K7301−1995(熱硬化性ウレタンエラストマー用トリレンジイソシアネート型プレポリマー試験方法)に記載の方法に従って実施した。以下に、より具体的なイソシアネート基含有率の測定方法を示す。
(1)試料1gを200mL三角フラスコに採取し、該フラスコにトルエン20mLを添加し、試料を溶解させた。
(2)その後、上記フラスコに2.0Nのジ−n−ブチルアミン・トルエン溶液20mLを添加し、15分間静置した。
(3)上記フラスコに2−プロパノール70mLを添加し、溶解させて溶液を得た。
(4)上記(3)で得られた溶液について、1mol/L塩酸を用いて滴定を行い、試料滴定量を求めた。
(5)試料を添加しない場合にも、上記(1)〜(3)と同様の方法で測定を実施し、ブランク滴定量を求めた。
上記で求めた試料滴定量及びブランク滴定量から、イソシアネート基含有率を以下の計算方法により算出した。
イソシアネート基含有率(質量%)=(ブランク滴定量−試料滴定量)×42/[試料質量(g)×1,000]×100%。
【0073】
(物性2)ポリイソシアネートの数平均分子量
ポリイソシアネート組成物を試料として、ポリイソシアネート組成物中の変性ポリイソシアネートと未反応ポリイソシアネートとを含むポリイソシアネートの数平均分子量は、以下の装置及び条件を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によりポリスチレン基準の数平均分子量を測定した。
装置:東ソー(株)製 HLC−8120GPC(商品名)
カラム:東ソー(株)製 TSKgelSuperH1000(商品名)×1本、TSKgelSuperH2000(商品名)×1本、TSKgelSuperH3000(商品名)×1本、
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0074】
(物性3)平均イソシアネート官能基数
ポリイソシアネート組成物を試料として、平均イソシアネート官能基数は、ポリイソシアネート1分子が統計的に有するイソシアネート官能基の数であり、(物性2)で測定したポリイソシアネートの数平均分子量と(物性1)で測定したイソシアネート基含有率とから以下のとおり算出した。
平均官能基数=ポリイソシアネートの数平均分子量×イソシアネート基含有率(質量%)/100%/42
【0075】
(物性4)不揮発分
ポリイソシアネート組成物を試料として、溶剤希釈をした場合には、アルミニウム製カップの質量を精秤し、試料約1gを入れて、加熱乾燥前のカップ質量を精秤した。上記試料を入れたカップを105℃の乾燥機中で3時間加熱した。上記加熱後のカップを室温まで冷却した後、再度カップの質量を精秤した。試料中の乾燥残分の質量%を不揮発分とした。不揮発分の計算方法は以下のとおりである。なお、溶剤希釈なしの場合には、不揮発分は実質的に100%であるとして扱った。
不揮発分(質量%)=(加熱乾燥後のカップ質量−アルミニウム製カップ質量)/(加熱乾燥前のカップ質量−アルミニウム製カップ質量)×100%。
【0076】
(物性5)ポリイソシアネートの水分散粒子径
ポリイソシアネート組成物を試料として、ポリイソシアネート組成物中の変性ポリイソシアネートと未反応ポリイソシアネートとを含むポリイソシアネートの水分散粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置を用いて積算分布曲線より、50%径(d50)の値を測定した。
装置:日機装株式会社製 マイクロトラック ナノトラック UPA−EX150
粒子透過性:透過
粒子形状:非球形
粒子屈折率:1.81
溶媒屈折率:1.33
解析範囲:0.95nmから6540nm
サンプル測定時間:120秒
バックグラウンド測定時間:120秒
【0077】
(物性6)ポリイソシアネート組成物中のポリアルキレングリコールアルキルエーテルのnの平均数
ポリイソシアネート組成物を試料として、nの平均数は、以下の装置及び条件を用いてプロトン核磁気共鳴(NMR)により求めた。ここでは、アルキレン基に対応する相対強度の積分値とアルキル基に対応する相対強度の積分値を対応させることにより、ポリイソシアネート組成物中のポリアルキレングリコールアルキルエーテルのnの平均数を求めた。
NMR装置:Bruker Biospin Avance600(商品名)
観測核:
周波数:600MHz
溶媒:CDCl
積算回数:256回
【0078】
(物性7)原料ポリアルキレングリコールアルキルエーテルのnの平均数
原料のポリアルキレングリコールアルキルエーテルを試料として、nの平均数は、下記の水酸基価から算出した。
水酸基価の測定は、JIS K 0070−1992(化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法)及び、JIS K 1557−1(プラスチック−ポリウレタン原料ポリオール試験方法−第1部:水酸基価の求め方)に記載の方法に従って実施した。
上記で求めた水酸基価から、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの分子量を求め、その値を用いてnの平均数を以下の計算方法により算出した。
nの平均数=(ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの分子量−アルキル基の分子量−水酸基の分子量)/(アルキレンオキサイドの分子量)
ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの分子量=56.1×1000/[水酸基価(mgKOH/g)]
例えば、使用したポリアルキレングリコールアルキルエーテルがポリエチレングリコール(モノ)メチルエーテルだった場合、以下のように求められる。
nの平均数=(ポリエチレングリコール(モノ)メチルエーテルの分子量−メチル基の分子量(15)−水酸基の分子量(17))/(エチレンオキサイドの分子量(44))
【0079】
(物性8)ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが変性された割合(変性率)
ポリイソシアネート組成物を試料として、変性率は、原料のポリイソイソシアネートのイソシアネート基100当量に対して、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが変性された割合であり、液体クロマトグラフィー(LC)の220nmにおける、未変性イソシアヌレート3量体、1変性イソシアヌレート3量体、2変性イソシアヌレート3量体、及び3変性イソシアヌレート3量体のピーク面積比から求めた。用いた装置及び条件は以下のとおりである。
LC装置:Waters社製、UPLC(商品名)、
カラム:Waters社製、ACQUITY UPLC HSS T3 1.8μm C18 内径2.1mm×長さ50mm
流速:0.3mL/min
移動相:A=10mM酢酸アンモニウム水溶液、B=アセトニトリル
グラジェント条件:初期の移動相組成はA/B=98/2で、試料注入後Bの比率を直線的に上昇させ、10分後にA/B=0/100とした。
検出方法:フォトダイオードアレイ検出器、測定波長は220nm
【0080】
(物性9)ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分の含有率
ポリイソシアネート組成物を試料として、ポリイソシアネート組成物中の、変性ポリイソシアネートのポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分の含有率は、(物性1)で測定したイソシアネート基含有率と、(物性6)で求めたポリアルキレングリコールアルキルエーテルのnの平均数から算出されるポリアルキレングリコールアルキルエーテルの分子量と、(物性8)で求めた変性率とから以下のとおり算出した。
含有率(%)=イソシアネート基含有率(質量%)/100%/42/(100−変性率(%))×変性率(%)×ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの分子量×100%
例えば、使用したポリアルキレングリコールアルキルエーテルがポリエチレングリコール(モノ)メチルエーテルだった場合、以下のように求められる。
ポリエチレングリコール(モノ)メチルエーテルの分子量=メチル基の分子量(15)+水酸基の分子量(17)+(エチレンオキサイドの分子量(44)×nの平均数)
【0081】
(物性10)ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの分子量分布の分散比
原料のポリアルキレングリコールアルキルエーテルを試料として、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの分子量分布の分散比(1)を求めた。また、ポリイソシアネート組成物を試料として、未反応のポリアルキレングリコールアルキルエーテルの分子量分布の分散比(2)を求めた。ポリイソシアネート組成物中の変性ポリイソシアネートの、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分の分子量分布の分散比(3)は、分子量分布の分散比(2)と同一であるとした。
原料のポリアルキレングリコールアルキルエーテルを試料としたとき、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの反応性は、分子量に依存せず同等であった。よって、表1に記載の通り、原料として用いた仕込みのポリアルキレングリコールアルキルエーテルの分子量分布の分散比(1)と、ポリイソシアネート組成物中から検出される未反応のポリアルキレングリコールアルキルエーテルの分子量分布の分散比(2)は一致した。このため、ポリイソシアネートと反応して得られた変性ポリイソシアネートの、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する部分の分子量分布の分散比(3)は、分子量分布の分散比(1)及び(2)と同一であると判断した。なお、表1における、分子量分布の分散比(1)及び(2)における差分は、測定誤差の範囲内のものである。
用いた装置及び条件は以下のとおりである。
LC装置:Waters社製、UPLC(商品名)、
カラム:Waters社製、ACQUITY UPLC HSS T3 1.8μm C18 内径2.1mm×長さ50mm
流速:0.3mL/min
移動相:a=10mM酢酸アンモニウム水溶液、b=アセトニトリル
グラジェント条件:初期の移動相組成比はa/b=98/2で、試料注入後bの比率を直線的に上昇させ、10分後にa/b=0/100とした。
検出方法1:フォトダイオードアレイ検出器、測定波長は220nm
検出方法2:質量分析装置、Waters社製、Synapt G2(商品名)
イオン化モード:エレクトロスプレーイオン化、正イオン検出
スキャンレンジ:m/z 100から2000
上記の装置及び条件で測定した。液体クロマトグラフィーにより成分を分離した後に、質量分析で検出される上記ポリアルキレングリコールアルキルエーテル由来のイオンにおいて、質量電荷比(m/z)から求まる分子量と、イオンの相対強度とから、以下の式により分子量分布の分散比を計算した。
分子量分布の分散比=B/A
A=ΣM/ΣI
B=ΣM/ΣM
(Mは各成分の質量電荷比(m/z)から求めた分子量、Iは各成分のイオンの相対強度を示す)
【0082】
(物性11)ヒンダードフェノール系化合物の含有率
ポリイソシアネート組成物を試料として、ポリイソシアネート組成物中のヒンダードフェノール系化合物の含有率は、以下の装置及び条件を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、紫外線(UV)波長280nmで検出されるヒンダードフェノール系化合物のピーク面積から算出した。
装置:東ソー(株)製 HLC−8120GPC(商品名)
カラム:東ソー(株)製 TSKgelSuperH1000(商品名)×1本、TSKgelSuperH2000(商品名)×1本、TSKgelSuperH3000(商品名)×1本、
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差UV計
算出方法:ヒンダードフェノール系化合物が既知の割合で含有されているポリイソシアネートを測定し、ヒンダードフェノール系化合物の面積(mV×秒)で検量線を作成した。その後、実施例及び比較例のポリイソシアネート組成物から検出された面積(mV×秒)からヒンダードフェノール系化合物の含有率を求めた。
【0083】
(物性12)ポリイソシアネート組成物中の酸性リン酸エステルの含有率
まず、20mLサンプル瓶をデジタル天秤に乗せ試料を約2gとトリメチルシリルを約2ml精秤し、酸性リン酸エステルの水酸基とトリメチルシリルを反応させた。次に、クロロホルム約8gを加えた後、蓋をしっかりしてよく混合し、サンプルを調整した。上記調整液を以下の条件で、GC/MS(ガスクロマトグラフィー質量分析)測定により、酸性リン酸エステル化合物の定性を行った。酸性リン酸エステル化合物の定量については、各酸性リン酸エステル化合物のGC感度をリン酸トリス(2−エチルヘキシル)と同じとみなし、定量した。本分析の検出限界は0.05ppmであった。
GC装置:Agilent Technologies 6890
注入口温度:320℃
注入量:1μL
注入法:スプリット法(スプリット比 10:1)
カラム:DB−1(長さ30m、内径0.25mm、液相厚 0.25μm)
カラム温度:40℃(5分保持)→20℃/分昇温→320℃(11分保持)
MS装置:Agilent Technologies 5973MSD
イオン源温度:230℃
インターフェイス温度:300℃
イオン化法:電子イオン化法(EI)
測定法:SCAN法
【0084】
[製造例1]ポリイソシアネート
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた四つ口フラスコの内部を窒素置換し、HDI1000部と2−エチルヘキサノール30部を仕込み、攪拌下80℃で2時間ウレタン化反応を行った。イソシアヌレート化及びアロファネート化触媒としてテトラメチルアンモニウムカプリエートを0.04部添加し、約3時間反応させ、リン酸の固形分85%水溶液0.075部を加えて反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートを得た。
【0085】
[製造例2]ポリイソシアネート
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた四つ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDIを600部、3価アルコールである分子量300のポリカプロラクトン系ポリエステルポリオール(ダイセル化学株式会社製、商品名「プラクセル303」)30部を仕込み、撹拌下反応器内温度を90℃1時間保持しウレタン化反応を行った。その後反応器内温度を60℃に保持し、イソシアヌレート化触媒としてテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が48%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートを得た。
【0086】
[製造例3]ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(2)
1000mLオートクレーブの反応器内を窒素置換した後、メタノール128g(4.0mol)及び水酸化カリウム0.56g(10.0mmol)を仕込んだ。110℃に昇温した後、この温度を保ちながらエチレンオキサイド1056g(24.0mol)を加圧下で2.5時間かけて反応させ、さらに1時間熟成を行った。得られた反応混合物に、85質量%のリン酸1.16g(10.0mmol)を加え中和し、析出したリン酸のカリウム塩を濾過で除き、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:6.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(2)を得た。分散比を測定したところ、1.04であった。
【0087】
[調製例1]ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(3)
エチレンオキサイド繰返単位の平均数:3.0のトリエチレングリコールモノメチルエーテルと、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」)を、質量比で2.1:10.9になるように混合し、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:7.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(3)を得た。分散比を測定したところ、1.06であった。
【0088】
[調製例2]ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4)
エチレンオキサイド繰返単位の平均数:4.2のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG」)と、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」)を、質量比で130:55になるように混合し、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:5.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4)を得た。分散比を測定したところ、1.13であった。
【0089】
[調製例3]ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(5)
エチレンオキサイド繰返単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」)と、平均分子量1000のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本油脂株式会社製、商品名「ユニオックスM−1000(エチレンオキサイド繰返単位の平均数:22)」)を、質量比で5.7:11.3になるように混合し、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:15.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(5)を得た。分散比を測定したところ、1.20であった。
【0090】
[調製例4]ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(6)
エチレンオキサイド繰返単位の平均数:4.2のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG」)と、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」)を、質量比で16:19になるように混合し、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:6.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(6)を得た。分散比を測定したところ、1.11であった。
【0091】
[調製例5]ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(7)
製造例3で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:6.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(2)と、平均分子量550のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本油脂株式会社製、商品名「ユニオックスM−550(エチレンオキサイド繰返単位の平均数:11.8)」)を、質量比で1:2になるように混合し、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(7)を得た。分散比を測定したところ、1.10であった。
【0092】
[調製例6]ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(8)
エチレンオキサイド繰返単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」)と、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:15のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−081」)を、質量比で6.8:11.0になるように混合し、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:12.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(8)を得た。分散比を測定したところ、1.12であった。
【0093】
[調製例7]ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(9)
エチレンオキサイド繰返単位の平均数:4.2のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG」と、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」を、質量比で12.5:3.5になるように混合し、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:4.8のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(9)を得た。分散比を測定したところ、1.17であった。
【0094】
[調製例8]ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(10)
調製例4で得られたポリエチレングリコールモノメチルエーテル(6)に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を200質量ppm添加し、40℃で2時間撹拌して混合し、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(10)を得た。
【0095】
[調製例9]ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(11)
調製例4で得られたポリエチレングリコールモノメチルエーテル(6)に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を400質量ppm添加し、40℃で2時間撹拌して混合し、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(11)を得た。
【0096】
[調製例10]ポリイソシアネート組成物(3)
市販のポリイソシアネート組成物(旭化成株式会社製、商品名「TPA−100」)に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を500質量ppm添加し、40℃で2時間撹拌して混合し、ポリイソシアネート組成物(3)を得た。
【0097】
[調製例11]ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(12)
エチレンオキサイド繰返単位の平均数:4.2のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG」)と、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」)を、質量比で46:27になるように混合し、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:5.3のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(12)を得た。分散比を測定したところ、1.13であった。
【0098】
[調製例12]ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(13)
エチレンオキサイド繰返単位の平均数:4.2のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG」)と、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」)を、質量比で30:22になるように混合し、エチレンオキサイド繰返単位の平均数:5.5のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(13)を得た。分散比を測定したところ、1.12であった。
【0099】
[実施例1]
市販のポリイソシアネート組成物(旭化成株式会社製、商品名「TKA−100」)87質量部に、調製例1で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:7.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(3)を13質量部、イソデシルアシッド ホスフェートを0.0020質量部添加し、窒素下、120℃で3時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径は180nmであり、イソシアネート基含有率:17.3質量%、数平均分子量:760、平均イソシアネート官能基数:3.1であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は7.1であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.06であった。得られた組成物中の変性率は8.4%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は13.0%と算出された。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、22ppmであった。
【0100】
[実施例2]
市販のポリイソシアネート組成物(旭化成株式会社製、商品名「TPA−100」)84質量部に、調製例2で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:5.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4)16質量部、2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.0060質量部添加し、窒素下、90℃で8時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径は190nmであり、イソシアネート基含有率:16.5質量%、数平均分子量:700、平均イソシアネート官能基数:2.8であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は5.0であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.14であった。得られた組成物中の変性率は14.0%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は16.1%と算出された。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、59ppmであった。
【0101】
[実施例3]
市販のポリイソシアネート組成物(旭化成株式会社製、商品名「24A−100」)83質量部、調製例3で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:15.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(5)17質量部、イソデシルアシッドホスフェートを0.0020質量部添加し、窒素下、90℃で6時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径:80nmであり、イソシアネート基含有率:18.6質量%、数平均分子量:720、平均イソシアネート官能基数:3.2であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は15.0であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.21であった。得られた組成物中の変性率は5.2%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は16.8%と算出された。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、21ppmであった。
【0102】
[実施例4]
製造例1で得られたポリイソシアネート組成物(1)83質量部、調製例4で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:6.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(6)17質量部、2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.0020質量部添加し、窒素下、110℃で3時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径:50nmであり、イソシアネート基含有率:14.8質量%、数平均分子量:670、平均イソシアネート官能基数:2.4であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は6.1であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.11であった。得られた組成物中の変性率は13.9%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は17.1%と算出された。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、19ppmであった。
【0103】
[実施例5]
市販のポリイソシアネート組成物(旭化成株式会社製、商品名「TKA−100」)84質量部に、1,3−ブタンジオール(表中、「1,3−BD」と表記する。)を3質量部添加し、窒素下、80℃2時間撹拌して反応を行った。その後、調製例5で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(7)を13質量部、2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.0060質量部添加し、窒素下、120℃で3時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径は100nmであり、イソシアネート基含有率:14.0質量%、数平均分子量:1070、平均イソシアネート官能基数:3.6であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は9.0であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.10であった。得られた組成物中の変性率は8.4%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は13.1%と算出された。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、61ppmであった。
【0104】
[実施例6]
製造例1で得られたポリイソシアネート組成物(1)90質量部、調製例5で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(7)10質量部、2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.0060質量部添加し、窒素下、110℃で3時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径:160nmであり、イソシアネート基含有率:17.6質量%、数平均分子量:620、平均イソシアネート官能基数:2.6であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は9.1であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.11であった。得られた組成物中の変性率は5.3%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は10.0%と算出された。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、60ppmであった。
【0105】
[実施例7]
市販のHDI系ポリイソシアネート組成物(旭化成株式会社製、商品名「TKA−100」)24.7質量部、市販のIPDI系ポリイソシアネート組成物(エボニックジャパン株式会社製、商品名「T1890/100」)57.5質量部に、調製例6で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:12.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(8)17.8質量部、2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.0060質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を添加し、窒素下、100℃で6時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:72.0%、水分散粒子径:50nmであり、不揮発分を100%として計算したイソシアネート基含有率(溶剤込の状態でイソシアネート基含有率を求め、その値を不揮発分比率で割り、計算した):13.5質量%、数平均分子量:880、平均イソシアネート官能基数:2.8であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は12.0であった。得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.12であった。得られた組成物中の変性率は9.0%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は17.8%と算出された。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、60ppmであった。
【0106】
[実施例8]
市販のポリイソシアネート組成物(旭化成株式会社製、商品名「TPA−100」)26.5質量部、製造例1で得られたポリイソシアネート組成物(1)43.0質量部、数平均分子量6400のポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、商品名「エクセノール840」、表中「Ex840」と表記する。)10.0質量部に、調製例2で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:5.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4)17.2質量部、2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.0060質量部添加し、窒素下、120℃で6時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径:80nmであり、イソシアネート基含有率:12.3質量%、数平均分子量:820、平均イソシアネート官能基数:2.4であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は5.0であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.13であった。得られた組成物中の変性率は19.5%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は17.9%と算出された。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、59ppmであった。
【0107】
[実施例9]
市販のHDI系ポリイソシアネート組成物(旭化成株式会社製、商品名「TKA−100」)59.5質量部、市販のIPDI系ポリイソシアネート組成物(エボニックジャパン株式会社製、商品名「T1890/100」)25.5質量部に、調製例5で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(7)15.0質量部、2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.0060質量部、酢酸ブチル40質量部を添加し、窒素下、100℃で6時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:72.5%、水分散粒子径:80nmであり、不揮発分を100%として計算したイソシアネート基含有率(溶剤込の状態でイソシアネート基含有率を求め、その値を不揮発分比率で割り、計算した):15.5質量%、数平均分子量:810、平均イソシアネート官能基数:3.0であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は9.0であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.09であった。得られた組成物中の変性率は8.7%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は15.1%と算出された。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、62ppmであった。
【0108】
[実施例10]
市販のポリイソシアネート組成物(旭化成株式会社製、商品名「TPA−100」)84質量部に、調製例4で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:6.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(6)16.0質量部、2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.0085質量部添加し、窒素下、120℃で3時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径は140nmであり、イソシアネート基含有率:16.9質量%、数平均分子量:700、平均イソシアネート官能基数:2.8であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は6.0であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.11であった。得られた組成物中の変性率は11.8%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は15.9%と算出された。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、87ppmであった。
【0109】
[実施例11]
調製例4で得られたポリエチレングリコールモノメチルエーテル(6)の代わりに、調製例8で得られたポリエチレングリコールモノメチルエーテル(10)を用いた以外は実施例10と同様に操作し、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径は140nmであり、イソシアネート基含有率:16.9質量%、数平均分子量:700、平均イソシアネート官能基数:2.8であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は6.0であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.11であった。得られた組成物中の変性率は11.8%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は15.9%と算出された。また、BHTの含有率は0.003%であった。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、85ppmであった。
【0110】
[実施例12]
調製例4で得られたポリエチレングリコールモノメチルエーテル(6)の代わりに、調製例9で得られたポリエチレングリコールモノメチルエーテル(11)を用いた以外は実施例10と同様に操作し、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径は140nmであり、イソシアネート基含有率:16.9質量%、数平均分子量:700、平均イソシアネート官能基数:2.8であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は6.0であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.11であった。得られた組成物中の変性率は11.8%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は15.9%と算出された。また、BHTの含有率は0.006%であった。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、86ppmであった。
【0111】
[実施例13]
市販のポリイソシアネート組成物(旭化成株式会社製、商品名「TPA−100」)の代わりに、調製例10で得られたポリイソシアネート組成物(3)を用いた以外は実施例10と同様に操作し、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径は140nmであり、イソシアネート基含有率:16.9質量%、数平均分子量:700、平均イソシアネート官能基数:2.8であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は6.0であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.11であった。得られた組成物中の変性率は11.8%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は15.9%と算出された。また、BHTの含有率は0.04%であった。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、85ppmであった。
【0112】
[実施例14]
市販のポリイソシアネート組成物(旭化成株式会社製、商品名「TPA−100」)84質量部に、調製例4で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:6.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(6)16.0質量部、2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.0085質量部、BHT0.1質量部を添加し、窒素下、120℃で3時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径は140nmであり、イソシアネート基含有率:16.9質量%、数平均分子量:700、平均イソシアネート官能基数:2.8であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は6.0であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.11であった。得られた組成物中の変性率は11.8%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は15.9%と算出された。また、BHTの含有率は0.10%であった。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、84ppmであった。
【0113】
[実施例15]
市販のポリイソシアネート組成物(旭化成株式会社製、商品名「TPA−100」)82.5質量部に、調製例11で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:5.3のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(12)17.5質量部、2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.0060質量部、を添加し、窒素下、120℃で3時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径は150nmであり、イソシアネート基含有率:16.2質量%、数平均分子量:700、平均イソシアネート官能基数:2.7であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は5.2であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.13であった。得られた組成物中の変性率は14.7%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は17.3%と算出された。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、62ppmであった。
【0114】
[実施例16]
市販のポリイソシアネート組成物(旭化成株式会社製、商品名「TPA−100」)83.0質量部に、調製例12で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:5.5のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(13)17.0質量部、2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.0060質量部、を添加し、窒素下、120℃で3時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径は150nmであり、イソシアネート基含有率:16.4質量%、数平均分子量:700、平均イソシアネート官能基数:2.7であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は5.4であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.12であった。得られた組成物中の変性率は13.8%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は16.9%と算出された。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、60ppmであった。
【0115】
[比較例1]
市販のポリイソシアネート組成物(旭化成株式会社製、商品名「TPA−100」)84質量部に、調製例7で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:4.8のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(9)16.0質量部、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート0.0060質量部を添加し、窒素下、90℃で8時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径は250nmであり、イソシアネート基含有率:16.3質量%、数平均分子量:700、平均イソシアネート官能基数:2.7であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は4.8であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.16であった。得られた組成物中の変性率は14.6%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は16.1%と算出された。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、60ppmであった。
【0116】
[比較例2]
製造例2で得られたポリイソシアネート組成物(2)85質量部に、調製例5で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(7)15質量部、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート0.0060質量部酢酸ブチル40質量部を添加し、窒素下、120℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:72.5%、水分散粒子径:500nm以上であり、不揮発分を100%として計算したイソシアネート基含有率(溶剤込の状態でイソシアネート基含有率を求め、その値を不揮発分比率で割り、計算した):14.5質量%、数平均分子量:1300、平均イソシアネート官能基数:4.5であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は8.9であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.10であった。得られた組成物中の変性率は9.2%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は14.8%と算出された。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、62ppmであった。
【0117】
[比較例3]
製造例1で得られたポリイソシアネート組成物(1)91質量部、調製例5で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(7)9質量部、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート0.0060質量部を添加し、窒素下、110℃で3時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径:210nmであり、イソシアネート基含有率:18.0質量%、数平均分子量:620、平均イソシアネート官能基数:2.7であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は9.0であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.11であった。得られた組成物中の変性率は4.6%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は8.8%と算出された。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、62ppmであった。
【0118】
[比較例4]
市販のポリイソシアネート組成物(旭化成株式会社製、商品名「TPA−100」)84質量部に、調製例4で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:6.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(6)16.0質量部添加し、窒素下、120℃で3時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径は140nmであり、イソシアネート基含有率:16.9質量%、数平均分子量:700、平均イソシアネート官能基数:2.8であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は6.0であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.11であった。得られた組成物中の変性率は11.8%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は15.9%と算出された。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルは検出されなかった。
【0119】
[比較例5]
市販のポリイソシアネート組成物(旭化成株式会社製、商品名「TPA−100」)84質量部に、調製例4で得られたエチレンオキサイド繰返単位の平均数:6.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(6)16.0質量部、2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.0120質量部、BHT0.1質量部を添加し、窒素下、120℃で3時間攪拌して反応を行った。反応終了後、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は、不揮発分:100%、水分散粒子径は140nmであり、イソシアネート基含有率:16.9質量%、数平均分子量:700、平均イソシアネート官能基数:2.8であった。NMRから検出されたエチレンオキサイド繰返単位の平均数は6.0であり、得られた組成物中のポリエチレングリコールモノメチルエーテルの分散比を求めると、1.11であった。得られた組成物中の変性率は11.8%であり、よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は15.9%と算出された。また、BHTの含有率は0.10%であった。また、得られた組成物中の酸性リン酸エステルを求めると、122ppmであった。
【0120】
実施例1〜16、及び比較例1〜5で得られた変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物の評価は、以下のとおり行った。評価結果を表1に示す。
【0121】
(評価1)水分散性
(1)100mLフラスコと、吉野紙との質量を測定した。
(2)変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を、固形分換算で16gとなるように100mLフラスコに採取し、脱イオン水24gを添加した。
(3)プロペラ羽を使用し、200rpmで3分間、100mLフラスコ内の溶液を撹拌した後、(1)で秤量した吉野紙で濾過した。
(4)吉野紙に残った濾過残渣と、100mLフラスコに残った残渣とを合わせて105℃の乾燥機中で1時間加熱し、質量(g)を求めた。
(5)以下の計算方法で、変性ポリイソシアネートを含む組成物が水へ分散した割合を求めた。
水へ分散した割合(質量%)=100%−((4)で求めた残渣を含む100mLフラスコと吉野紙との合計質量(g)−(1)で測定した100mLフラスコと吉野紙との合計質量(g))/((2)で採取した変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物の質量(g)×不揮発分(質量%))×100%
判定方法は以下のとおりとした。
A:80質量%以上
B:60質量%以上80質量%未満
C:60質量%未満
【0122】
(評価2)水分散安定性
200mLフラスコに、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物0.1gと、脱イオン水100gを量り取り、プロペラ羽を使用し、600rpmで5分間、200mLフラスコ内の溶液を撹拌し、水分散液を得た。その後、50mLのガラス瓶に移し替え、分散状態を肉眼で観察した。
判定方法は以下のとおりとした。
A:3時間経過後も変化が見られなかった。
B:3時間経過後にわずかに沈殿又は分離が見られた。
C:3時間以内に沈殿又は分離が見られた。
【0123】
(評価3)イソシアネート基の保持性
100mLフラスコに、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物15gと、脱イオン水45gを量り取り、プロペラ羽を使用し、600rpmで10分間、100mLフラスコ内の溶液を撹拌し、水分散液を得た。この水分散液におけるイソシアネート基の保持率を、以下のように評価した。
イソシアネート基の濃度変化は、日本分光株式会社製FT/IR−4200typeA(商品名)を用いた赤外吸収スペクトル測定(検出器:TGS、積算回数:16回、分解:4cm−1)において、イソシアヌレートの吸収ピーク(波数1686cm−1付近)に対するイソシアネートの吸収ピーク(波数2271cm−1付近)の強度比から算出した。
水分散液作製直後を0時間とし、そのときのイソシアネートの吸収ピーク強度/イソシアヌレートの吸収ピーク強度=Xとし、n時間後のピーク強度比=Xを求め、イソシアネート基の保持率=X/Xを算出し、4時間後の保持率を評価した。判定方法は以下の通りとした。
A:80%以上
C:80%未満
【0124】
(評価4)貯蔵安定性
50mLの耐熱ビンに、ポリイソシアネート組成物40gを入れ、60℃で4週間加熱した。加熱前後のポリイソシアネート組成物のHazen値を評価した。Hazen値は、ロビボンド社のLovibond PFXi−195を用いて測定した。加熱後のポリイソシアネート組成物のHazen値から加熱前のポリイソシアネート組成物のHazen値を差し引いた値を算出し、以下のように判定した。
○:10以下
×:10超
【0125】
【表1】
【0126】
[製造例4(水性エマルジョンの製造)]
反応器として、撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口のセパラブルフラスコを用いた。水675gとエマノールNC(アニオン界面活性剤、35%水溶液、花王株式会社製)4.3gを入れ、80℃に加熱し、開始剤として過硫酸アンモニウム(2%水溶液)8gを入れた。次に、フラスコ内に下記の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間80℃に保った。
2−ヒドロキシメチルメタクリレート 25g(3.5質量%)
アクリル酸 10g(1.4質量%)
アクリルアミド 2g(0.3質量%)
グリシジルメタアクリレート 27g(3.8質量%)
メチルメタアクリレート 353g(49.0質量%)
ブチルアクリレート 293g(40.7質量%)
スチレン 9g(1.3質量%)
水 400g
過硫酸アンモニウム(2%水溶液) 31g
エレミノールJS−2(注1) 38g
エマルゲン920(注2) 9g
(注1)反応性乳化剤、39%水溶液、三洋化成株式会社製
(注2)ノニオン界面活性剤、25%水溶液、花王株式会社
得られた水性エマルジョンは乳白色、不揮発分38%の安定な分散液であり、粒子径は100nmであった。計算から求められた水酸価15.0mgKOH/g、酸価10.8m
gKOH/g、ガラス転移点温度15.7℃であった。
【0127】
[実施例17〜32、比較例6〜10]
実施例1〜16、及び比較例1〜5で得られた変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を用いて、下記のように水性塗料組成物(1)及び(2)及び(3)をそれぞれ作製した。作製した水性塗料組成物(1)は、下記の(評価5)の評価に用い、水性塗料組成物(2)は、下記の(評価6)〜(評価10)の評価に用い、水性塗料組成物(3)は、下記の(評価11)の評価に用いた。
【0128】
[水性塗料組成物(1)の作製]
製造例4で作製した水性エマルジョン40g容器に計り取り、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基とポリオール水分散体中のヒドロキシル基とのモル比が、NCO/OH=1.25になるように、変性ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物を加えて混合物を得た。更に上記混合物に、水性塗料組成物の固形分が38質量%となるように脱イオン水を加え、プロペラ羽を使用し、200rpmで3分間撹拌した。さらに、予め水で10%に希釈したポリウレタン系会合型増粘剤Coapur3025を5g加え、3分間撹拌して水性塗料組成物(1)を作製した。
【0129】
[水性塗料組成物(2)の作製]
200rpmで3分間の撹拌を600rpmで10分間に変更した以外は水性塗料組成物(1)の作製と同様に行い、水性塗料組成物(2)を作製した。
【0130】
[水性塗料組成物(3)の作製]
200mlのポリ容器に、Setaqua6522を34.99g計り取り、ディスパー羽を用いて1000rpmで撹拌した。これに、Setaqua6516を34.99g、消泡剤BYK−024を0.18g、表面張力調整剤BYK−346を0.26g、予め水で10%に希釈したポリウレタン系会合型増粘剤Coapur3025を8.58g加え、5分間撹拌した。さらに、水を6gと、ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基とポリオール水分散体中のヒドロキシル基とのモル比が、NCO/OH=1.25になるように、ポリイソシアネート組成物を加えて5分間撹拌し、水性塗料組成物(3)を得た。
【0131】
(評価5)塗膜の外観
上記の水性塗料組成物(1)を用いて、ガラス板上に、厚さ40μmの塗膜を塗装し、23℃/50%RHの雰囲気下で7日間乾燥させた。得られた塗膜をBYK Garder社製、商品名「haze−gloss version3.40」を用いて、屈折率が1.567の黒色ガラス標準板での測定結果を100グロスユニットとして、20°の光沢値を測定した。なお、塗装に用いたガラス板単体の20°の光沢値は174であった。判定方法は以下のとおりとした。評価結果を表2に示す。
AAA:160以上
AA:150以上160未満
A:130以上150未満
B:100以上130未満
C:100未満
【0132】
(評価6)塗膜の架橋性
上記の水性塗料組成物(2)を用いて、PP板上に、厚さ40μmの塗膜を塗装し、23℃/50%RHの雰囲気下で24時間乾燥させた。得られた塗膜をアセトンに23℃で24時間浸漬させた後に取り出し、塗膜を乾燥させた。塗膜の架橋性を以下の計算方法により算出した。
塗膜の架橋性(%)=(溶解せずに残った塗膜の質量)/(アセトン浸漬前の塗膜の質量)×100%
判定方法は以下のとおりとした。評価結果を表2に示す。
A:85%以上
B:80%以上85%未満
C:80%未満
【0133】
(評価7)塗膜の硬度
上記の水性塗料組成物(2)を用いて、ガラス板上に、厚さ40μmの塗膜を塗装し、23℃/50%RHの雰囲気下で7日間乾燥させた。得られた塗膜をケーニッヒ硬度計(BYK Garder社製、商品名「Pendulum hardness tester」) を用いて測定した。判定方法は以下のとおりとした。ただし、塗膜外観が著しく悪いものは、(評価7)の結果を測定不可とした。評価結果を表2に示す。
A:100以上
C:100未満
【0134】
(評価8)塗膜の耐溶剤性
上記の水性塗料組成物(2)を用いて、ガラス板上に、厚さ40μmの塗膜を塗装し、23℃/50%RHの雰囲気下で7日間乾燥させた。得られた塗膜上にキシレンを1g含ませた直径10mmのコットンボールを10分間置き、表面に残ったキシレンを除いた後の塗膜の様子を観察した。判定方法は以下のとおりとした。ただし、塗膜外観が悪いものは目視評価が不可能のため、測定不可とした。評価結果を表2に示す。
A:透明、凹みなし
B:やや白濁、又はやや凹みあり
C:白濁、又は凹みあり
【0135】
(評価9)塗膜の耐水性
上記の水性塗料組成物(2)を用いて、PP板上に、厚さ40μmの塗膜を塗装し、23℃/50%RHの雰囲気下で7日間乾燥させた。得られた塗膜を40℃の水に4時間浸漬させた後に取り出し、塗膜の様子を観察した。判定方法は以下のとおりとした。ただし、塗膜外観が悪いものは目視評価が不可能のため、測定不可とした。評価結果を表2に示す。
A:変化なし
B:やや白濁が発生
C:白濁が発生、又は塗膜が溶解
【0136】
(評価10)塗膜のブツ
上記の水性塗料組成物(2)を用いて、75mm×100mmのガラス板上に、厚さ40μmの塗膜を塗装し、23℃/50%RHの雰囲気下で7日間乾燥させた。得られた塗膜にブツがあるかを目視で評価した。判定方法は以下のとおりとした。ただし、塗膜外観が著しく悪いものは、(評価10)の結果を測定不可とした。評価結果を表2に示す。
○:ブツが3個以下
×:ブツが4個以上
【0137】
(評価11)耐ワイン性
ブナベニヤ板上に、塗膜厚みが20μmになるようにニトロセルロース系プライマー(BONDEX SCHNELLSCHLEIFGRUND、PPG Coatings Danmrk A/S製)を塗布し、23℃/50%RHで2日間乾燥した。次いで、上記の水性塗料組成物(3)を用いて、塗膜厚みが40μmになるよう塗装し、23℃/50%RHの雰囲気下で7日間乾燥させた。得られた塗膜上に、市販の赤ワイン2gを置き、赤ワインが揮発しないようにカバーをし、23℃で1日放置した。1日後、赤ワインをキムタオルでふき取り、塗膜の外観性を目視評価した。ただし、塗膜外観が著しく悪いものは、結果を評価不可とした。判定方法は以下のとおりとした。評価結果を表2に示す。
A:変化なし
B:やや白濁あるいは赤くなった
C:白濁あるいは赤くなった
【0138】
【表2】
【0139】
上記結果に示した通り、本発明を適用した実施例1〜16のポリイソシアネート組成物は、水分散性が良好で、かつ、貯蔵中に粘度上昇や色度低下がなく、貯蔵安定性が良好であった。また、本発明を適用した実施例1〜16のポリイソシアネート組成物を用いた水性塗料組成物を用いて形成した塗膜は、塗膜表面のブツが少ないことが確認できた。
本発明を適用しない比較例1〜3は、いずれも、水分散性が安定しないものであった。
また、酸性リン酸エステルを含有しない比較例4は、貯蔵安定性が不良であった。さらに、酸性リン酸エステルの含有量が、本発明の範囲外である比較例5は、酸性リン酸エステルの含有量が多すぎたため、凝集物が生じ、形成した塗膜の表面にブツが生じてしまった。