(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ワイヤにおける前記鋼製外皮の板厚t(mm)と、前記ワイヤの直径D(mm)との比t/Dが0.15〜0.30である請求項1または2に記載の溶接用フラックス入り
シームレスワイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1では、鉄粉に所定量の滑剤を配合するとともに鉄粉の粒度を所定値以下に規定することでフラックスの流動性を良好にし、管内のフラックスの凹凸に起因する管外皮肉厚の変動を抑制することで、圧延または伸線時の断線の防止が図られている。
【0007】
図1に、シームレスワイヤの製造方法の概要図を示す。
まず、本製造方法では、帯鋼1を用意し(
図1(a)参照)、これを成型して鞘状とする(
図1(b)参照)。つづいて、鞘状の帯鋼1の内側にフラックス2を充填し(
図1(c)参照)、エッジ部をつきあわせてシーム3を形成する(
図1(d)参照)。そして、シーム3を溶接してパイプ4を形成し(
図1(e)参照)、これを伸線して縮径することで、鋼製外皮6にフラックス2が充填されてなるシームレスワイヤ7が製造される(
図1(f)参照)。
【0008】
ここで、縮径前のパイプ4の内部にはフラックス2が充填されているが、
図1(e)に示されるように内部には空間部5が存在する。また、空間部5以外に、粉体からなるフラックス2内にも空隙が存在する。そして、伸線による縮径とともに空間部5は減少していき、最終製品としてのシームレスワイヤ7においては空間部5がほぼ無くなる。
【0009】
本発明者等は、シームレスワイヤ製造の場合には、縮径の過程において、ワイヤ進行方向と逆方向へ空気が流れていくこと、すなわち、逆流空気が発生することを見出した。そして、この逆流空気によって鋼製外皮内側のフラックスが乱れる結果、ワイヤ断面積に占めるフラックス断面積のばらつきが大きくなり、ワイヤ断線の原因となることをつきとめた。
【0010】
特許文献1では、このような逆流空気に起因するワイヤ断面積に占めるフラックス断面積のばらつきという、シームレスワイヤ特有の課題については何ら考慮されておらず、ワイヤの断線抑制効果は限定的であると考えられる。
【0011】
そこで、本発明は、逆流空気に起因するワイヤ断面積に占めるフラックス断面積のばらつきが抑制され、断線の発生が防止された溶接用フラックス入りシームレスワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行い、上述の逆流空気を減少させるために、鋼製外皮内側においてフラックスが充填されていない空間を可能な限り減らすことを検討した。具体的には、ワイヤに通常用いられるフラックスよりもFeの含有量を多くすることにより、ワイヤ断面積に対するフラックスの占有面積を大きくし、フラックスが充填されていない空間を減らすことで、逆流空気の量を減少させることに想到し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、鋼製外皮中にフラックスが充填されてなる溶接用フラックス入りシームレスワイヤであって、
ワイヤ全質量あたりの前記フラックス中のFe量が2〜15質量%であり、
フラックス充填率が10〜30質量%であり、
ワイヤ全質量あたりの前記フラックス中のFe量(質量%)をXとし、前記フラックス充填率(%)をYとしたときに、下記式(1)
Y>−2X+19 (1)
の関係を満足する溶接用フラックス入りシームレスワイヤに関する。
【0014】
上記溶接用フラックス入りシームレスワイヤは、外径が0.8mm以上8.0mm以下であってもよい。
【0015】
また、上記溶接用フラックス入りシームレスワイヤにおいて、ワイヤにおける鋼製外皮の板厚t(mm)と、ワイヤの直径D(mm)との比t/Dは、0.15〜0.30であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
通常、各ワイヤ成分の比率には制約があるため、鋼製外皮とフラックスの質量比を自由に変更することはできない。そこで、本発明では、フラックス中のFeの含有量を多くして、ワイヤ全質量中のFeとFe以外の成分の比率を同じにしつつ、フラックス充填率を増加させることにより、ワイヤ断面に占めるフラックス断面積を大きくし、パイプ内部の空間を減少させている。これにより、逆流空気の量が減少し、ワイヤ断面に占めるフラックス断面積のばらつきが抑制される。また、Feはフラックス中に含有されうる成分の中で、相対的に高比重である。本発明では、フラックス中のFeの含有量が多く、フラックス自体の比重が高められているため、該フラックスは逆流空気の影響を受けにくくなり、ワイヤ断面に占めるフラックス断面積のばらつきがさらに抑制される。このようにして、逆流空気に起因する、ワイヤ断面に占めるフラックス断面積のばらつきを抑制することにより、縮径過程の断線を有効に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本明細書において、質量を基準とする百分率(質量%)は、重量を基準とする百分率(重量%)と同義である。
【0019】
本実施形態の溶接用フラックス入りシームレスワイヤは、鋼製外皮中にフラックスが充填されてなる溶接用フラックス入りシームレスワイヤであって、
ワイヤ全質量あたりの前記フラックス中のFe量が2〜15質量%であり、
フラックス充填率が10〜30質量%であり、
ワイヤ全質量あたりの前記フラックス中のFe量(質量%)をXとし、前記フラックス充填率(質量%)をYとしたときに、下記式(1)
Y>−2X+19 (1)
の関係を満足するものである。
【0020】
本実施形態のシームレスワイヤにおいて、ワイヤ全質量あたりのフラックス中のFe量は2〜15質量%である。
Feはフラックス中に含有されうる成分の中で相対的に比重の高い成分であるため、フラックス中のFe量が多いほど、フラックス自体の比重が高められることとなる。その結果、フラックスが逆流空気の影響を受けにくくなるため、ワイヤ断面に占めるフラックス断面積のばらつきが抑制され、縮径過程の断線が防止される。この効果を十分に得るために、本実施形態のシームレスワイヤでは、ワイヤ全質量あたりのフラックス中のFe量を2質量%以上とし、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは3質量%以上とする。なお、Feの比重は7.8であり、また、フラックス中に含有されうるその他の成分のうちのいくつかの成分の比重として、例えば、Tiの比重は4.5、Alの比重は2.7、Mnの比重は7.4、Niの比重は8.9である。
一方、ワイヤ全質量あたりのフラックス中のFe量が15質量%より大きい場合、フラックス充填量が過大となる結果、鋼製外皮の厚みが小さくなり、断線を生じやすくなる。したがって、本実施形態のシームレスワイヤでは、ワイヤ全質量あたりのフラックス中のFe量を15質量%以下、好ましくは14質量%以下、より好ましくは13質量%以下とする。
なお、ワイヤ全質量とは、鋼製外皮の全質量とフラックスの全質量の総和である。
また、本明細書において、フラックス中のFeとは、フラックスに含有されるFe単体に加えて、Fe−SiやFe−Mn等の、Feを含有する合金成分中のFeをも包含するものとする。
【0021】
本実施形態のシームレスワイヤは、ワイヤ全質量あたりのフラックス中のFe量が上記範囲内であれば、ルチル系フラックス入りワイヤ、メタル系フラックス入りワイヤ、フッ化物系フラックス入りワイヤ等のいずれの種類のワイヤであってもよく、また、その他の成分組成は特に限定されず、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、適宜選択できる。
【0022】
例えば、ある一態様に係るフラックス入りワイヤ(以下、一態様に係るフラックス入りワイヤともいう)に含有されうる成分について、以下に例示するが、含有されうる成分及びそれらの含有量は、以下に限定されるものではない。なお、以下の各成分量は、ワイヤ全質量あたりの質量%表示での含有量である。
【0023】
一態様に係るフラックス入りワイヤにおいて、TiO
2、SiO
2、ZrO
2、Al
2O
3、Na
2O、K
2Oなどの酸化物は、スラグ剤およびアーク安定剤の主成分である。
ここで、酸化物の含有量が少ないと、全姿勢溶接においてビード形成が困難になるとともにアーク安定性が劣化しスパッタ量が増加する。したがって、酸化物の含有量は2%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましい。一方、酸化物の含有量が多すぎると、スラグ巻込みなどの欠陥が発生しやすくなるとともに、溶接金属中の酸素量が増加してじん性が低下する場合がある。したがって、酸化物の含有量は8%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましい。
【0024】
一態様に係るフラックス入りワイヤにおいて、C、Si、Mn、Al、Mg、Ti、Bなどの脱酸元素は、脱酸効果ならびに溶接金属組織の微細化効果により溶接金属の強度向上およびじん性向上に有効な元素である。
ここで、脱酸元素の含有量が少ないと、溶接金属の強度が不足したり、じん性が劣化したりする場合がある。したがって、脱酸元素の含有量は1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましい。一方、脱酸元素の含有量が多いと強度過多および焼入れ性過多により溶接金属のじん性が低下する場合がある。したがって、脱酸元素の含有量は5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましい。
なお、これら脱酸元素は、金属、合金、鋼製外皮などから添加され、その添加される形態は特に限定されるものではない。また、これら脱酸元素について規定する値は上記TiO
2などの酸化物に含まれるTi等は含まないものとする。
【0025】
一態様に係るフラックス入りワイヤにおいて、Ni、Cu、Cr、Mg、Coなどの合金元素は、強度やじん性を向上させるのに有効な元素であり、要求される強度やじん性に応じて適宜添加される。
ここで、合金元素の含有量が多いと焼き入れ性が過剰となり、じん性が劣化したり、低温割れ感受性が高まることによる溶接金属に割れが発生する場合がある。したがって、合金元素の含有量は10%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましい。
なお、これら合金元素は、金属、合金、鋼製外皮などから添加され、その添加される形態は特に限定されるものではない。
【0026】
一態様に係るフラックス入りワイヤにおいて、フッ素化合物は、アーク雰囲気中のH分圧を下げ、溶接金属の拡散性水素量を低減する効果のある化合物である。また、溶接中に発生するヒュームを増加させる化合物でもある。フッ素化合物は、NaF、K
2SiF
6、LiF、CaF、BaF
2、MgF
2などが挙げられる。フッ素化合物の含有量が、フッ素換算値の合計で0.01%以上であれば、溶接金属の拡散性水素量が低下する。より好ましくは0.05%以上である。一方、フッ素化合物の含有量が、フッ素換算値の合計で0.50%を超えるとヒューム量が過剰となるため、0.50%以下が好ましく、0.40%以下がより好ましい。
【0027】
なお、一態様に係るフラックス入りワイヤの残部は、Fe及び不可避的不純物である。
【0028】
また、本実施形態のシームレスワイヤにおけるフラックスは、マイカやタルク等の滑剤を含有していてもよいが、フラックス中の水分量の増加を抑制するとの観点からは、滑剤を実質的に含有しないことが好ましい。また、滑剤を実質的に含有しない場合には、焼結工程を省略することができ、製造コストを抑制できる点でも有利である。なお、「滑剤を実質的に含有しない」とは、フラックス全質量あたり、0.01質量%以下の少量の滑剤であれば含有が許容されることを意味する。本実施形態のシームレスワイヤは、フラックスは滑剤を実質的に含有しなくても、断線を有効に防止することができる。
【0029】
また、本実施形態のシームレスワイヤにおけるフラックス充填率は、所定の規格により定められるワイヤが満足すべき成分比率を考慮すると、ワイヤ全質量あたりのフラックス中のFe量によって変化するが、本実施形態においては、フラックス充填率を10〜30質量%とする。ここで、ワイヤの縮径過程で発生する逆流空気を減少させ、ワイヤ断面に占めるフラックス断面積のばらつきを抑制するためには、縮径前のパイプ内部の空間が小さい方が好ましい。また、パイプ内部の空間が小さければ、フラックス断面積のばらつきが抑制されるため、得られる溶着金属の性能が安定する。これらの観点より、本実施形態においては、フラックス充填率を10質量%以上とし、好ましくは12質量%以上とし、より好ましくは13.5質量%以上とする。
一方、フラックス充填率を高くしすぎると、鋼製外皮を過度に薄くせざるを得なくなり、断線の発生を招くおそれがある。したがって、本実施形態では、フラックス充填率を30質量%以下とし、好ましくは28質量%以下とし、より好ましくは25質量%以下とする。
なお、フラックス充填率は、鋼製外皮内側に充填されるフラックスの質量を、ワイヤ(鋼製外皮+フラックス)の全質量に対する割合で規定したものである。
【0030】
また、本実施形態のシームレスワイヤにおいては、ワイヤ全質量あたりの前記フラックス中のFe量(質量%)をXとし、前記フラックス充填率(質量%)をYとしたときに、下記式(1)を満足する必要がある。
Y>−2X+19 (1)
【0031】
後述する実施例において実証されるように、上記式(1)を満足するシームレスワイヤであれば、伸線による縮径過程の断線を有効に防止することができる。
【0032】
本実施形態のシームレスワイヤにおける鋼製外皮の組成は、フラックス中におけるFe等の各成分割合を考慮して適宜調整すればよく、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されない。典型的には、所望される特性に応じた添加元素を含有し、残部がFe及び不可避的不純物である。添加元素としては、例えば、C、Si、Mn、P、S、Ni、Mo等が例示される。
【0033】
本実施形態のシームレスワイヤの外径は、特に限定されるものではないが、断線防止の観点から、好ましくは0.8mm以上であり、より好ましくは1.0mm以上である。また、フラックス充填率ばらつき防止の観点からは、好ましくは8mm以下であり、より好ましくは6mm以下であり、さらに好ましくは5mm以下である。
【0034】
また、本実施形態のシームレスワイヤにおいて、ワイヤにおける鋼製外皮の板厚t(mm)と、ワイヤの直径D(mm)との比t/Dは、0.15〜0.30であることが好ましい。t/Dが大きくなるほど、ワイヤ断面におけるフラックス断面積のバラつきをより低減することができる。この観点から、t/Dは0.15以上であることが好ましく、0.17以上であることがより好ましい。一方、t/Dが大きくなりすぎると、フラックス断面積が減少し、鉄の部分が増加しすぎるため、ワイヤ送給性が好ましくなくなる場合があるため、t/Dは0.30以下であることが好ましく、0.28以下であることがより好ましい。
【0035】
なお、ワイヤにおける鋼製外皮の板厚tについて、本実施形態のシームレスワイヤの断面図である
図2を参照して説明する。
図2において、Dはシームレスワイヤ7の直径であり、tは、シームレスワイヤ7の直径Dにおいて、鋼製外皮6が占める両端の2つの領域のそれぞれに相当する長さである。すなわち、ワイヤの直径において、フラックス2が占める領域に相当する長さをsとすると、tは(D−s)/2に相当する長さである。
【0036】
本実施形態のシームレスワイヤは、例えば、
図1に示される製造方法によって製造される。
【0037】
まず、
図1(a)に示されるように、シームレスワイヤの鋼製外皮となる帯鋼1を用意する。つづいて、
図1(b)に示されるように、帯鋼1を鞘状に成形する。成形方法としては、帯鋼を鞘状に成形できる方法であれば特に限定されず、公知の成形方法を適宜適用することができる。
【0038】
つづいて、
図1(c)に示されるように、鞘状に成形された帯鋼1の内側にフラックス2を充填する。その後、
図1(d)に示されるように、帯鋼1のエッジ部をつきあわせてシーム3を形成し、さらに
図1(e)に示されるように、シーム3を溶接してシームレスのパイプ4を形成する。ここで、本実施形態では、ワイヤ全質量あたりのフラックス中のFe量を増加させてフラックス充填率を増加させることで、
図1(e)に示される状態における、パイプ4の内部における空間部5の占める割合を減少させている。
【0039】
この状態で伸線による縮径を行うと、空間部5は徐々に減少していき、最終的には
図1(f)に示されるような、空間部5がほぼ無い、鋼製外皮6内側にフラックス2が充填されてなるシームレスワイヤ7が製造される。ここで、縮径の過程において、空間部5に存在する空気はワイヤ進行方向と逆方向へ流れていき、すなわち、逆流空気が発生する。しかしながら、本実施形態では、パイプ4の内部における空間部5の占める割合を低く抑えているため、逆流空気の量を抑制でき、逆流空気に起因するパイプ4内でのフラックス2の乱れを抑制できる。また、Feを多く含有し、高比重のフラックス2を用いているため、該フラックス2は逆流空気の影響を受けにくい。その結果、ワイヤ断面積に占めるフラックス断面積のばらつきが良好に抑制され、縮径過程でのワイヤの断線が有効に防止される。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することが可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0041】
まず、表1に示される成分組成を有し、同じ板厚で、同じ幅の帯鋼を用意し、鞘状に成形した。なお、表1に示される帯鋼成分の残部は、Fe及び不可避的不純物である。
つづいて、鞘状の帯鋼にフラックスを投入した後、帯鋼のエッジ部をつきあわせ、シームを溶接してパイプを形成した。なお、各例においては、フラックスの組成および量をそれぞれ調整した。
さらに、得られたパイプを伸線により直径1.170mmまで縮径して、各例に係るシームレスワイヤを作製した。
各例に係るシームレスワイヤの成分組成は、表2に示される範囲内であった。なお、表2に示されるワイヤ成分の残部は、Fe及び不可避的不純物である。
【0042】
表3に、各例についての、ワイヤ全質量あたりのフラックス中のFe量及びフラックス充填率を示す。ここで、ワイヤ全質量あたりのフラックス中のFe量は、以下のように算出した。
まず、ワイヤ中に充填されたフラックス中のFe量をICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計、SIMADZU社製:ICP9820)により測定した。得られたフラックス中のFe量に対して、(フラックス充填率/100)を乗じることにより、ワイヤ全質量あたりのフラックス中のFe量を算出した。
【0043】
また、ワイヤにおける鋼製外皮の板厚(t、単位:mm)とワイヤの直径(D、単位:mm)とをそれぞれ測定し、また、それらの比(t/D)を算出して、表3にあわせて示した。
【0044】
また、各例について、ワイヤ全質量あたりの前記フラックス中のFe量(質量%)をXとし、前記フラックス充填率(質量%)をYとしたときの、下記式(1)の右辺の値と、下記式(1)を満たすか否かについて、表3にあわせて示した。
Y>−2X+19 (1)
【0045】
また、各例についての、ワイヤ1トンあたりの縮径過程での断線の有無を、表3にあわせて示した。なお、断線回数がゼロであった場合を○、断線回数が1回以上であった場合を×として評価した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
No.1〜No.8のうち、No.1〜No.2及びNo.4〜No.6は実施例であり、No.3、No.7及びNo.8は比較例である。
ワイヤ全質量あたりのフラックス中のFe量が1.4質量%と低く、また式(1)の関係を満たしていないNo.3のシームレスワイヤにおいては、縮径過程で断線が発生した。
また、ワイヤ全質量あたりのフラックス中のFe量が16.0質量%と高いNo.7のシームレスワイヤにおいては、縮径過程で断線が発生した。なお、No.7のシームレスワイヤはt/Dの値も0.146と低かった。
また、フラックス充填率が9.5質量%と低いNo.8のシームレスワイヤにおいても、縮径過程で断線が発生した。なお、No.8のシームレスワイヤはt/Dの値も0.330と高かった。
一方、本発明に規定の範囲内であるNo.1〜No.2及びNo.4〜No.6のシームレスワイヤにおいては、縮径過程での断線は発生しなかった。