特許第6765260号(P6765260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6765260過給機付内燃機関のブローバイガス処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765260
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】過給機付内燃機関のブローバイガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20200928BHJP
   F01M 13/04 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   F01M13/00 M
   F01M13/00 E
   F01M13/00 F
   F01M13/00 G
   F01M13/00 J
   F01M13/04 E
   F01M13/04 F
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-172369(P2016-172369)
(22)【出願日】2016年9月5日
(65)【公開番号】特開2018-40252(P2018-40252A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】株式会社マーレ フィルターシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】野中 敦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】望月 映元
(72)【発明者】
【氏名】飯島 晃
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴之
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−111422(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102009032835(DE,A1)
【文献】 特開2015−102021(JP,A)
【文献】 特開2015−140679(JP,A)
【文献】 特開2016−000963(JP,A)
【文献】 特開2000−154711(JP,A)
【文献】 実開昭59−071910(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
F01M 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路のスロットル弁上流側に過給機を備えた内燃機関において、
上記吸気通路の上記過給機の上流側に一端が接続され、かつ他端が上記内燃機関のクランクケース内に連通した新気導入通路と、
上記吸気通路の上記過給機の上流側に設けられたベンチュリ部に一端が接続され、かつ他端が上記クランクケース内に連通したブローバイガス通路と、
上記新気導入通路に介装され、上記クランクケース側から上記吸気通路側へ向かう方向の流れを阻止する第1の逆止弁と、
上記ブローバイガス通路に介装され、上記吸気通路側から上記クランクケース側へ向かう方向の流れを阻止する第2の逆止弁と、
を備え
過給域においては上記新気導入通路の上記一端と上記ブローバイガス通路の上記一端との間の圧力差によって新気が上記クランクケース内に導入されかつブローバイガスが上記吸気通路へと流れる、過給機付内燃機関のブローバイガス処理装置。
【請求項2】
上記新気導入通路は、上記内燃機関のシリンダヘッドカバーに接続され、シリンダヘッドカバー内部の空間を介して上記クランクケース内に連通している、ことを特徴とする請求項1に記載の過給機付内燃機関のブローバイガス処理装置。
【請求項3】
上記ブローバイガス通路は、上記内燃機関のシリンダヘッドカバーに接続され、該シリンダヘッドカバー内部に設けられたオイルミストセパレータを介して上記クランクケース内に連通している、ことを特徴とする請求項1に記載の過給機付内燃機関のブローバイガス処理装置。
【請求項4】
上記ブローバイガス通路は、シリンダブロック側部に設けられたオイルミストセパレータを介して上記クランクケース内に連通している、ことを特徴とする請求項1または2に記載の過給機付内燃機関のブローバイガス処理装置。
【請求項5】
上記スロットル弁の下流側に一端が接続され、かつ他端が上記クランクケース内に連通した第2のブローバイガス通路と、
この第2のブローバイガス通路に介装され、前後圧力差によって開度が変化する流量制御弁と、
をさらに備える、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の過給機付内燃機関のブローバイガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関のクランクケース内に漏れ出たブローバイガスを吸気系に戻すようにしたブローバイガス処理装置に関し、特に、吸気系に過給機を備えた過給機付内燃機関のブローバイガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガソリン機関においては、クランクケース内に漏れ出たブローバイガスによって潤滑油の劣化が促進される問題があり、従来から、クランクケース内へ新気を導入するとともにクランクケース内からブローバイガスを取り出して吸気系へ戻すようにしたブローバイガス処理装置が用いられている。
【0003】
このブローバイガス処理装置は、一般に、吸気系のスロットル弁上流側と機関本体の例えばシリンダヘッドとの間に新気通路が設けられているとともに、吸気系のスロットル弁下流側とクランクケースとの間にブローバイガス通路が設けられており、かつこのブローバイガス通路に、スロットル弁下流側の負圧に応じて開度が変化する流量制御弁(いわゆるPCVバルブ)を備えた構成となっている。このものでは、高負荷領域を除く通常の運転条件下では、スロットル弁下流側の吸気系に十分な負圧が発生するので、上記新気通路からシリンダヘッド内を経由してクランクケース内へ新気が導入され、かつこの新気に押し出されるような形で、ブローバイガスがブローバイガス通路を介してスロットル弁下流側の吸気系に戻り、燃焼室に導かれる。
【0004】
このような一般的なブローバイガス処理装置の場合、吸気通路のスロットル弁の上流に過給機を備えた過給機付内燃機関にあっては、過給域では、スロットル弁下流も正圧となることから、ブローバイガスの処理を行うことができない。
【0005】
特許文献1は、過給域でのブローバイガスの処理を図った過給機付内燃機関のブローバイガス処理装置を開示している。この装置は、吸気通路のスロットル弁下流側と過給機上流側との間にバイパス通路を備えるとともに、このバイパス通路に、スロットル弁下流側から過給機上流側へと戻る吸気流を作動流体とするエゼクタポンプが設けられている。そして、シリンダヘッドカバーにPCVバルブを介して接続されたPCV通路の先端が、このエゼクタポンプの吸入ポートに接続されている。従って、過給域では、正圧となったスロットル弁下流側からバイパス通路を通して吸気の一部が過給機上流側へと還流し、この流れによって、エゼクタポンプの作用により、ブローバイガスが吸引される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/021456号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような構成では、過給した吸気の一部がブローバイガスの吸引のために過給機上流側に還流されるため、過給機の効率が低下して燃料消費率悪化の要因になるとともに、吸気温度が不必要に上昇する。また、エゼクタポンプが必要であることから、構成が複雑となる。
【0008】
本発明は、エゼクタポンプや過給吸気の還流を用いない過給機付内燃機関のブローバイガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る過給機付内燃機関のブローバイガス処理装置は、
吸気通路のスロットル弁上流側に過給機を備えた内燃機関において、
上記吸気通路の上記過給機の上流側に一端が接続され、かつ他端が上記内燃機関のクランクケース内に連通した新気導入通路と、
上記吸気通路の上記過給機の上流側に設けられたベンチュリ部に一端が接続され、かつ他端が上記クランクケース内に連通したブローバイガス通路と、
上記新気導入通路に介装され、上記クランクケース側から上記吸気通路側へ向かう方向の流れを阻止する第1の逆止弁と、
上記ブローバイガス通路に介装され、上記吸気通路側から上記クランクケース側へ向かう方向の流れを阻止する第2の逆止弁と、
を備えて構成されている。
【0010】
新気導入通路の一端およびブローバイガス通路の一端は、いずれも吸気通路の過給機上流側に接続されているが、ブローバイガス通路の一端は、吸気通路に設けられたベンチュリ部に接続されている。そのため、過給域において吸気が高速で流れると、ベンチュリ部での圧力低下作用によって、ブローバイガス通路の一端に作用する圧力は、新気導入通路の一端に作用する圧力よりも相対的に低くなる。
【0011】
従って、過給域においては、両者の圧力差により、新気導入通路を介して吸気通路からクランクケース内に新気が導入され、これと並行して、ブローバイガス通路を介してクランクケース内から吸気通路へとブローバイガスが取り出される。このブローバイガスは、最終的に、吸気とともに燃焼室へ導入される。
【0012】
新気導入通路およびブローバイガス通路はそれぞれ所定の方向への流れのみを許容する逆止弁を備えているので、例えば両者の圧力差が不十分なときの逆流、などが確実に防止される。
【0013】
本発明の好ましい一つの態様では、上記新気導入通路は、上記内燃機関のシリンダヘッドカバーに接続され、シリンダヘッドカバー内部の空間を介して上記クランクケース内に連通している。
【0014】
また本発明の好ましい一つの態様では、上記ブローバイガス通路は、上記シリンダヘッドカバーに接続され、該シリンダヘッドカバー内部に設けられたオイルミストセパレータを介して上記クランクケース内に連通している。
【0015】
他の一つの態様では、上記ブローバイガス通路は、シリンダブロック側部に設けられたオイルミストセパレータを介して上記クランクケース内に連通している。
【0016】
さらに望ましくは、上記スロットル弁の下流側に一端が接続され、かつ他端が上記クランクケース内に連通した第2のブローバイガス通路と、この第2のブローバイガス通路に介装され、前後圧力差によって開度が変化する流量制御弁と、を備えている。
【0017】
この第2のブローバイガス通路によって、非過給域でのブローバイガスの処理が可能である。すなわち、非過給域では、スロットル弁下流側に負圧が生じるので、この負圧によって第2のブローバイガス通路および流量制御弁を介してブローバイガスが吸気通路のスロットル弁下流側へ取り出される。そして、吸気通路の過給機上流側は大気圧に近い圧力となるので、並行して、新気導入通路を介して新気がクランクケース内へ導入される。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、過給域においてもブローバイガスの処理が可能となる。そして、従来のような過給吸気の還流やエゼクタポンプが不要であり、過給機の効率低下等の問題を回避できるとともに、構成が簡素なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明に係る第1実施例のブローバイガス処理装置を備えた過給機付内燃機関の構成説明図。
図2】吸気通路の要部の構成を示す断面説明図。
図3】新気導入通路の先端部の構成の変形例を示す断面説明図。
図4】第1実施例の過給域でのガスの流れを示す説明図。
図5】第1実施例の非過給域でのガスの流れを示す説明図。
図6】第2実施例のブローバイガス処理装置を備えた過給機付内燃機関の構成説明図。
図7】第2実施例の過給域でのガスの流れを示す説明図。
図8】第2実施例の非過給域でのガスの流れを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、この発明を内燃機関1として自動車用ガソリン機関に適用した第1実施例のブローバイガス処理装置の全体的な構成を示す構成説明図である。内燃機関1は、シリンダブロック2と、シリンダヘッド3と、シリンダヘッドカバー4と、オイルパン5と、を備え、シリンダブロック2とオイルパン5とによってクランクケース6が構成されている。ピストン7の周囲の隙間を通して燃焼室からクランクケース6内に漏れた未燃ガス(一部に既燃ガスも含む)が、いわゆるブローバイガスである。
【0022】
シリンダヘッド3には、吸気ポートに連なる吸気通路11と排気ポートに連なる排気通路12とが接続されており、上記吸気通路11に、電動モータ等のアクチュエータにより開度が制御される電子制御スロットル弁13が介装されているとともに、その上流側に、エアクリーナ14が設けられている。そして、上記のスロットル弁13とエアクリーナ14との間に、過給機15が介装されている。一実施例においては、過給機15は、ターボ過給機、詳しくは排気通路12中の排気タービン(図示せず)によって駆動されるコンプレッサである。なお、内燃機関1の出力や電動モータ等によって駆動される機械式過給機を用いることも可能である。吸気通路11の過給機15下流側(スロットル弁13の上流側もしくは下流側)に、過給により高温となった吸気を冷却するインタークーラを備えていてもよい。
【0023】
吸気通路11の過給機15上流側には、新気導入通路21の一端21aが接続されている。新気導入通路21の他端21bは、シリンダヘッドカバー4に接続されている。この新気導入通路21が接続されたシリンダヘッドカバー4内の空間4aは、内燃機関1内部の潤滑油落とし孔やチェーン通路等からなる内部通路22を介してクランクケース6に連通している。
【0024】
また、過給域においてクランクケース6内からブローバイガスを取り出すために、吸気通路11の過給機15上流側に第1ブローバイガス通路23の一端23aが接続されている。第1ブローバイガス通路23の他端23bは、シリンダヘッドカバー4に接続されている。詳しくは、シリンダヘッドカバー4の内部に設けられたオイルミストセパレータ24の出口ポートに接続されている。オイルミストセパレータ24の入口ポートは、ガスポート通路25として、シリンダヘッド3およびシリンダブロック2を通って上下方向に延びる管路状に構成され、クランクケース6に連通している。
【0025】
上記新気導入通路21には、吸気通路11側からシリンダヘッドカバー4側へ向かう新気の流れのみを許容し、逆方向へのブローバイガスの流れを阻止する新気導入通路用逆止弁28が介装されている。一実施例においては、新気導入通路21のシリンダヘッドカバー4への接続部に新気導入通路用逆止弁28が配置されている。
【0026】
上記第1ブローバイガス通路23には、シリンダヘッドカバー4側から吸気通路11側へ向かうブローバイガスの流れのみを許容し、逆方向への新気の流れを阻止するブローバイガス通路用逆止弁29が介装されている。一実施例においては、第1ブローバイガス通路23のシリンダヘッドカバー4(オイルミストセパレータ24)への接続部にブローバイガス通路用逆止弁29が配置されている。
【0027】
また、非過給域においてクランクケース6内からブローバイガスを取り出すために、シリンダヘッドカバー4と吸気通路11との間に、さらに、第2ブローバイガス通路31が設けられている。第2ブローバイガス通路31は、一端が吸気通路11のスロットル弁13下流側に接続されており、他端がシリンダヘッドカバー4におけるオイルミストセパレータ24の出口側に接続されている。この第2ブローバイガス通路31には、吸気通路11側の負圧(詳しくは前後の圧力差)に応じて開度が変化する流量制御弁(いわゆるPCVバルブ)32が介装されている。具体的には、流量制御弁32は、第2ブローバイガス通路31のシリンダヘッドカバー4との接続部に配置されている。
【0028】
図2は、上記新気導入通路21の一端21aおよび第1ブローバイガス通路23の一端23aがそれぞれ接続された吸気通路11の過給機15上流側の構成を示している。図示するように、吸気通路11の中で相対的に上流側の位置に新気導入通路21が接続され、相対的に下流側の位置に第1ブローバイガス通路23が接続されている。ここで、新気導入通路21の一端21aが開口する吸気通路11の部分に比べて、第1ブローバイガス通路23の一端23aが開口する吸気通路11の部分は、相対的に径(換言すれば通路断面積)が縮小したベンチュリ部34として構成されている。つまり、吸気通路11は、上流側から徐々に径が縮小し、最小通路断面積となるベンチュリ部34に第1ブローバイガス通路23が接続されている。なお、吸気通路11は、図示せぬ下流側で再び通路断面積を拡張させた上で過給機15に接続するようにしてもよく、あるいはベンチュリ部34における最小通路断面積を保ったまま過給機15に接続するようにしてもよい。
【0029】
ベンチュリ部34においては、径の縮小に伴って吸気の流速が増大し、圧力が低下する。従って、吸気通路11内を吸気が高速で流れているときに、新気導入通路21の一端21aに作用する圧力と第1ブローバイガス通路23の一端23aに作用する圧力とを比較すると、第1ブローバイガス通路23の一端23aにおける圧力の方が相対的に低くなり、両者間に圧力差が得られる。
【0030】
なお、本発明においては、吸気通路11における新気導入通路21の一端21aの位置が第1ブローバイガス通路23の一端23aの位置よりも下流側であってもよい。但し、新気導入通路21の一端21aが第1ブローバイガス通路23の一端23aよりも下流側に位置していると、第1ブローバイガス通路23から吸気通路11に流れ出たブローバイガスの一部が新気導入通路21に流れ込むことになるので、図示の実施例のように、新気導入通路21の一端21aの方が上流側にあることが望ましい。
【0031】
また、図3に示すように、新気導入通路21の一端21aを、金属管等として吸気通路11の中に突出させ、かつ上流側へ曲げて、吸気通路11の流れに対向して開口するように構成してもよい。このように構成すれば、吸気の流れに伴う動圧が新気導入通路21に作用し、第1ブローバイガス通路23との間での圧力差がより拡大する。
【0032】
図4および図5は、上記の構成におけるガスの流れを説明した説明図である。内燃機関1の過給域においては、過給機15上流側の吸気通路11内を多量の吸気が高速で流れるため、前述したように、新気導入通路21の一端21aと第1ブローバイガス通路23の一端23aとの間に圧力差が生じる。そのため、図4に矢印で示すように、吸気通路11から新気導入通路21を通してシリンダヘッドカバー4側へ新気が流れ、クランクケース6内に導入される。これによってクランクケース6内が換気される。そして、燃焼室からクランクケース6内に流出したブローバイガスは、ガスポート通路25からオイルミストセパレータ24を経て第1ブローバイガス通路23へと流れ、第1ブローバイガス通路23を通して吸気通路11へと流れる。このブローバイガスは、最終的には燃焼室へと戻り、燃焼される。
【0033】
新気導入通路21および第1ブローバイガス通路23は、それぞれ逆流を阻止する逆止弁28,29を具備しているので、クランクケース6内の圧力が過渡的に変化しても、逆流を生じることはなく、図4に示した方向の流れのみが生じる。つまり、クランクケース6内の圧力が過渡的に変化しても、新気導入通路21の一端21aでの圧力がクランクケース6内の圧力よりも相対的に高いときに新気の導入がなされ、クランクケース6内の圧力が第1ブローバイガス通路23の一端23aでの圧力よりも相対的に高いときにブローバイガスの排出がなされる。
【0034】
過給域においては、第2ブローバイガス通路31が連通するスロットル弁13下流側の吸気通路11も正圧となるので、第2ブローバイガス通路31を通したブローバイガスの排出はなされない。なお、流量制御弁32の開度が0となるため、第2ブローバイガス通路31を通した新気の流入(つまり逆流)も生じない。
【0035】
一方、内燃機関1の非過給域においては、スロットル弁13下流側の吸気通路11内の圧力が負圧となるため、過給機15上流側の吸気通路11内の圧力との圧力差によって、図5に示すような新気およびブローバイガスの流れが生じる。すなわち、クランクケース6内のブローバイガスは、ガスポート通路25およびオイルミストセパレータ24を経て、第2ブローバイガス通路31を通して吸気通路11のスロットル弁13下流側へと導入される。また同時に、吸気通路11の過給機15上流側から新気が新気導入通路21を通してクランクケース6内に導入され、クランクケース6内が換気される。第2ブローバイガス通路31を流れるブローバイガスの流量は、流量制御弁32によって、該流量制御弁32の前後の圧力差に応じて調整される。なお、非過給域においては、過給機15上流側での吸気通路11内の流速が比較的低いので、第1ブローバイガス通路23の一端23aの圧力低下は比較的弱い。つまり、スロットル弁13下流側の圧力に比較して高い圧力となる。そのため、第1ブローバイガス通路23を通したブローバイガスの流れは、殆ど生じない。
【0036】
このように、上記実施例によれば、過給域において、吸気通路11内の高速吸気流によって生じる新気導入通路21と第1ブローバイガス通路23との間の圧力差を利用して、クランクケース6からのブローバイガスの取り出しならびにクランクケース6内への新気の導入が可能である。従って、いわゆるダウンサイジングターボのように広い運転領域で過給を行うような内燃機関1にあっても、ブローバイガスの処理をより確実に行うことが可能となる。また、新気は過給機15上流側で取り出されるので、従来のエゼクタポンプを利用した装置のように過給吸気を無駄にすることがない。
【0037】
また、上記実施例では、非過給域においても、第2ブローバイガス通路31を利用してブローバイガスの処理が可能である。従って、過給域と非過給域の双方において、ブローバイガスを処理することができる。
【0038】
なお、ブローバイガスの発生量は一般に過給域の方が大となるので、第2ブローバイガス通路31は省略してもよい。
【0039】
次に、図6は、この発明の第2実施例を示している。この第2実施例は、シリンダブロック2の側部にオイルミストセパレータ124を配置したものであり、オイルミストセパレータ124の入口ポートがクランクケース6内に直接に連通している。第1ブローバイガス通路23の端部23bは、オイルミストセパレータ124の出口側にブローバイガス通路用逆止弁29を介して接続されている。同様に、第2ブローバイガス通路31の端部は、流量制御弁32(PCVバルブ)を介してオイルミストセパレータ124の出口側に接続されている。
【0040】
図7は、第2実施例の過給域におけるガスの流れを示している。前述した第1実施例と同様に、過給機15上流側の吸気通路11において生じる圧力差を利用して、新気導入通路21を通してクランクケース6内へ新気が導入され、第1ブローバイガス通路23を通してクランクケース6からブローバイガスが取り出される。
【0041】
図8は非過給域におけるガスの流れを示している。やはり前述した第1実施例と同様に、スロットル弁13下流側での負圧を利用して、第2ブローバイガス通路31を通してクランクケース6からブローバイガスが取り出され、新気導入通路21を通してクランクケース6内へ新気が導入される。
【符号の説明】
【0042】
1…内燃機関
2…シリンダブロック
3…シリンダヘッド
4…シリンダヘッドカバー
6…クランクケース
11…吸気通路
13…スロットル弁
15…過給機
21…新気導入通路
23…第1ブローバイガス通路
24…オイルミストセパレータ
28…新気導入通路用逆止弁
29…ブローバイガス通路用逆止弁
31…第2ブローバイガス通路
32…流量制御弁
124…オイルミストセパレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8