特許第6765270号(P6765270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765270
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 13/02 20060101AFI20200928BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   B60K13/02 C
   B60K11/04 J
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-193555(P2016-193555)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-52411(P2018-52411A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】吉羽 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】三田 雅英
(72)【発明者】
【氏名】中野 真介
(72)【発明者】
【氏名】賚 奈穂美
(72)【発明者】
【氏名】小島 良太
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−102056(JP,U)
【文献】 特開2013−203175(JP,A)
【文献】 特開2008−248873(JP,A)
【文献】 実開平07−001388(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 13/02
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内燃機関に外気を取り入れる吸気ダクトの上流側に位置して外気の吸入口を開閉可能な吸気調節弁と、
車両の衝突又は衝突の前兆を検出可能な衝突検出手段と、
該衝突検出手段により前記車両の衝突又は衝突の前兆が検出された場合に、前記吸気調節弁を閉鎖させる制御部とを備え、
前記吸気ダクトは、内部圧力が所定の負圧値より低い場合に潰れる脆弱部を有し、
前記吸気調節弁は、車両の前面に配設されたフロントグリルのグリル開口を開閉可能な可動シャッタの一部であり、
前記可動シャッタは、前記吸気調節弁を構成する第1シャッタと、該第1シャッタの下方に位置して車両の走行状態に応じて開閉制御される第2シャッタとを備え、
前記第1シャッタは、前記車体の衝突又は衝突の前兆が検出されていない状態で、常に開放位置にあることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
前記吸気ダクトは、車両前方に配置されて衝突荷重により脱落可能な前方部材の下方に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の吸気装置。
【請求項3】
前記吸気ダクトは、前記前方部材の後方側に配置されたことを特徴とする請求項2に記載の吸気装置。
【請求項4】
前記前方部材は、車両のヘッドランプであることを特徴とする請求項2又は3に記載の内燃機関の吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気装置に関し、特に、車両衝突時における歩行者保護のための内燃機関の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のエンジン(内燃機関)に空気を導入するための吸気装置では、車両前方に配置されたエンジンルーム内に、外気を取り入れる吸気口からエンジンに外気を導入する吸気ダクトが配置されている(例えば、特許文献1)。吸気ダクトの上流側に位置する吸気口は、内燃機関の吸気作用により吸気ダクト内の負圧が過大になって潰れが生じることのないように、常時、開口した状態にある。
【0003】
一方、エンジンルームの周辺に配置される車両の構成部材(車両の前方部材)は、歩行者との衝突時において、歩行者への障害値を低減して歩行者保護性能を向上するために、衝突荷重によって破壊されやすい構造にすることが望まれている。
【0004】
例えば、特許文献2では、車両の前方に配置されるヘッドランプに、衝突荷重により破壊される脆弱部を設けた構造が記載されている。
【0005】
また、特許文献3では、エンジンルーム内に配置されるストラットタワーバーの本体を衝突時に脱落させる構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−058399号公報
【特許文献2】特開2000−315410号公報
【特許文献3】特開2006−007912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エンジンルーム内に配置された吸気装置は、エンジン駆動時に生じる所要の負圧に耐え得る剛性が必要であり、衝突時においても破壊されにくい構造となっていた。従って、吸気装置の近隣の車両前方部材に関しては、衝突時に脱落や破壊させるためのスペースを確保することが困難であった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、衝突時に歩行者に作用する反力を低減して障害値を低減することができる内燃機関の吸気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る内燃機関の吸気装置は、車両の内燃機関に外気を取り入れる吸気ダクトの上流側に位置して外気の吸入口を開閉可能な吸気調節弁と、車両の衝突又は衝突の前兆を検出可能な衝突検出手段と、該衝突検出手段により前記車両の衝突又は衝突の前兆が検出された場合に、前記吸気調節弁を閉鎖させる制御部とを備え、前記吸気ダクトは、内部圧力が所定の負圧値より低い場合に潰れる脆弱部を有し、前記吸気調節弁は、車両の前面に配設されたフロントグリルのグリル開口を開閉可能な可動シャッタの一部であり、前記可動シャッタは、前記吸気調節弁を構成する第1シャッタと、該第1シャッタの下方に位置して車両の走行状態に応じて開閉制御される第2シャッタとを備え、前記第1シャッタは、前記車体の衝突又は衝突の前兆が検出されていない状態で、常に開放位置にあることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【0010】
この構成によれば、衝突検出手段により衝突又は衝突の前兆が検出された場合に、吸気ダクトの上流側に位置する吸気調節弁が閉鎖されるので、内燃機関による吸気作用によって吸気ダクト内の負圧が高く(すなわち、負圧値が低く)なる。この高い負圧により吸気ダクトが潰れるか又は潰れやすい状態となる。これにより、衝突が生じた際に、吸気ダクトが占めている車両内スペースが小さくなる、又は小さくなりやすい状態が確保されるので、吸気ダクトの近傍にある前方部材が脱落したり破壊されたりするためのスペースが確保される。その結果、前方部材の変形容易性や脱落容易性などが向上して歩行者に作用する反力を低減することができ、歩行者衝突時の障害値を低減することができる。
また、この構成によれば、衝突又は衝突の前兆が検出されて吸気調節弁が閉鎖されて吸気ダクト内が所定の負圧値より低くなった場合に、吸気ダクトの脆弱部を確実に潰すことができる。また、吸気ダクトの上方に衝突衝撃による脱落する前方部材が配置された場合には、吸気ダクトを確実に潰すことで前方部材の脱落ストロークをより確実に確保することができる。
また、この構成によれば、開閉可能なグリルシャッタの一部を吸気ダクトの吸気調節弁として用いることができるので、コストの増加を抑えながら、衝突安全性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明は、前記吸気装置において、前記吸気ダクトは、車両前方に配置されて衝突荷重により脱落可能な前方部材の下方に配置されたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、衝突衝撃により前方部材が脱落した際に、前方部材の下方にある吸気ダクトを負圧で潰して前方部材の脱落ストロークを確保したり、負圧によって潰れやすくなった吸気ダクトを前方部材により潰して破壊することで衝突荷重を吸収したりすることができる。これにより、衝突が生じた際に歩行者に作用する反力を低減して、障害値を低減することができる。
【0013】
また、本発明は、前記吸気装置において、前記吸気ダクトは、前記前方部材の後方側に配置されたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、前方からの衝突によって後方へ移動する前方部材に対し、該前方部材の後方への移動ストロークを大きく確保することが可能となる。
【0015】
また、本発明は、前記吸気装置において、前記前方部材は、車両のヘッドランプであることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、比較的壊れにくいヘッドランプにおいて、衝突による破壊のみならず脱落させることで、歩行者に作用する反力を大きく低減することができる。また、ヘッドランプの下方に配置された吸気ダクトを負圧により潰すことでヘッドランプの脱落ストロークを確保することができ、障害値をより確実に低減させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る内燃機関の吸気装置によれば、衝突時に歩行者に作用する反力を低減して障害値を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態である内燃機関の吸気装置を示す図であって、車両前部の断面図。
図2】車両前部の要部を示す一部を省略した斜視図。
図3】吸気装置及び可動シャッタ装置の制御機構を示すブロック図。
図4】車両前部の断面図であって、吸気装置の吸気調節弁を閉鎖した状態を示す図。
図5】車両前部の要部を示す斜視図であって、ヘッドランプの脱落状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態である内燃機関の吸気装置10を示す図であって、車両前部の断面図であり、図2は車両前部の要部を示す一部を省略した斜視図、図3は吸気装置10及び可動シャッタ装置40の制御機構を示すブロック図である。なお、図1及び図4では車両1の左前輪Tを仮想線で示しており、図2及び図5では、要部である吸気ダクト14とヘッドランプ50との位置関係を示すために、車体の一部を省略している。
【0025】
車両1は、前部に吸気装置10が配置されるエンジンルーム2を有し、エンジンルーム2は、上方がフード3によって開閉可能に閉蓋される。吸気装置10は、外気導入路11と、吸気調節弁である第1シャッタ12と、エアクリーナ13と、吸気ダクト14とを備えるとともに、衝突検出手段15と、制御部であるECU(電子制御ユニット)16と、第1シャッタ12を駆動するアクチュエータ17とを備える。
【0026】
車両前部は、さらに、バンパ20、フロントグリル30、ラジエータ26及びコンデンサ27等によって構成される。フロントグリル30には、グリル開口32を実質的に開閉可能な第1可動シャッタ装置40Aが設けられる。また、車幅方向においてフロントグリル30を挟んだ左右両端部には、それぞれヘッドランプ(車室よりも前方に配置される前方部材)50が配置される。なお、図1及び図2では車両の左側に配置されたヘッドランプ50を示している。
【0027】
バンパ20は、バンパ上部21と、バンパ上部21の下方に配置されるバンパ下部22とを備える。バンパ上部21及びバンパ下部22は、それぞれ、車両後方側が開口した略U字状の縦断面を有し、車幅方向に延在する板状の部材によって形成される。バンパ上部21の後方には、車幅方向に延在して図示しない車体フレームに支持されたバンパビーム23が配置され、バンパビーム23の前面側に樹脂製のバンパフェイス21aが取り付けられる。バンパ下部22は、上下方向の高さ寸法が、バンパ上部21の上下方向寸法より小さく、かつ前端がバンパ上部21の前端より車体後方に位置し、軽衝突時にはバンパ下部22より前方に突出するバンパ上部21によって衝撃荷重が吸収される。バンパ上部21とバンパ下部24との間には、下部開口部となるエア導入口24が形成される。エア導入口24には、これを実質的に開閉可能な第2可動シャッタ装置40Bが設けられる
【0028】
ラジエータ26は、エンジンの冷却水を、走行風との熱交換によって冷却するものであり、エンジンルーム2内に配置され、冷却水が通過するチューブの周囲に多数のフィンを配置して構成される。コンデンサ27は、図示していないエアコンディショナの気相冷媒を、走行風との熱交換によって冷却し、凝縮させて液相とするものであり、ラジエータ26の前方に配置される。ラジエータ26の下方には、閉断面を有して車両の幅方向に延在するラジエータパネルロア28が配置される。
【0029】
フロントグリル30は、バンパ上部21とフード3の前端3aとの間に配設され、上下方向に並ぶ複数のグリル開口部を有し、各グリル開口部は空気を導入するグリル開口32を有する。
【0030】
グリル開口32に設けられる第1可動シャッタ装置40A及びエア導入口24に設けられる第2可動シャッタ装置40Bは、それぞれ、筐体41,46と、可動シャッタ42,47と、可動シャッタ42,47を駆動させるアクチュエータ17とを備える。
【0031】
筐体41,46のそれぞれは、グリル開口32及びエア導入口24のそれぞれに連通する空気流通路を形成しており、この空気流通路に可動シャッタ42,47が配設される。可動シャッタ42,47は、それぞれ、筐体41,46内に上下方向に間隔をあけて配置された複数の支持軸43,48と、該支持軸43,48によって回転可能に支持された複数の羽根部材44,49とを備える。
【0032】
各羽根部材44,49は、略水平に延在する開放位置(図1参照)において、各羽根部材44,49の間に開口を形成して筐体31,36の空気流通路を開放し、空気の導入が可能な状態とする。一方、該開放位置から支持軸43,48を中心に回動して略垂直に延在する閉鎖位置では、筐体31,36の空気流通路を閉鎖して空気の導入を実質的に遮断する。
【0033】
フロントグリル30において、上方側に位置する上部グリル開口部34は、吸気装置10の外気導入路11の一部を形成している。また、第1可動シャッタ装置40Aの可動シャッタ42のうち、上部グリル開口部34を開閉可能な第1シャッタ12は、吸気装置10において吸気量を調節する吸気調節弁を構成しており、第1シャッタ12より下方に位置する複数の第2シャッタ45とは別に開閉制御が可能である。
【0034】
上部グリル開口部34から導入された外気は、吸気装置10を経てエンジンへ供給される。また、上部グリル開口部34より下方に位置するグリル開口32(すなわち、第2シャッタ45により開閉されるグリル開口32)及びエア導入口24から導入された外気は、エンジンルーム2内へ導入される。
【0035】
ヘッドランプ50は、内部にLED(Light-emitting diode),HID(High Intensity Discharge lamp)等の光源が収容されるハウジングと、ハウジングの前面部に配設されるアウタレンズとを備える。ハウジングは、例えばPP樹脂等によって形成されており、アウタレンズは、例えばポリカーボネート樹脂等の透明な材料によって形成される。ヘッドランプ50は、図示していないボルトやナット等の固定具を用いて車体に取り付けられる。この固定具は、歩行者衝突時に作用する衝突荷重によって外れる或いは破断するように構成されており、これにより、歩行者衝突時にヘッドランプ50が脱落可能となっている。
【0036】
吸気装置10の外気導入路11は、外気をエアクリーナ13へ導入させる通路であり、本実施形態では、外気導入路11の上流側の端部が、上部グリル開口部34によって構成されている。外気導入路11の内部には、外気導入路11を開放及び閉鎖可能な吸気調節弁が配設されており、本実施形態では既述のとおり、吸気調節弁1として第1シャッタ12を用いている。
【0037】
外気導入路11の下流端部は、エアクリーナ13のエア流入口に接続される。エアクリーナ13の内部には図示していないクリーナエレメントが収容されており、外気がクリーナエレメントを通過する際に塵埃等が除去される。
【0038】
吸気ダクト14は、外気を内燃機関であるエンジンへ流通させる通路であり、上流端部がエアクリーナ13のエア排出口に接続される。吸気ダクト14の下流側には図示しない過給機が接続される。吸気ダクト14は、樹脂製であって、すくなくとも一部に脆弱部14aを有する。脆弱部14aは、吸気ダクト14の内部圧力が所定の負圧値より低い場合に潰れるように構成された部位であり、本実施形態では、蛇腹状に形成された脆弱部14aを有する。吸気ダクト14は、設置状態において車両1左側のヘッドランプ50の下方に位置しており、さらに、ヘッドランプ50の下方後方側に配置されることが好ましい。なお、吸気ダクト14は、少なくとも脆弱部14aを含む吸気ダクト14の一部が、ヘッドランプ50の下方に位置していればよい。
【0039】
衝突検出手段15は、車両1の周辺の歩行者や障害物、他車両の位置や自車両に対する相対速度を検出して、衝突や衝突の前兆(すなわち、衝突を回避することが困難な状態)を検出可能なものである。このような衝突検出手段15としては、例えば、車両に搭載したステレオカメラやミリ波レーダ等を用いることができる。
【0040】
ECU16は、例えばCPU等の情報処理手段、RAMやROM等の記憶手段、入出力インターフェイス等を有して構成され、衝突検出手段15、車両状態検出手段61及びアクチュエータ17と接続されている。ECU16は、衝突検出手段15の検出結果に基づいてアクチュエータ17を作動させ、アクチュエータ17の駆動力により第1シャッタ12を開放位置又は閉鎖位置へ移動させる。また、ECU16は、走行状態検出手段61の検出結果に基づいてアクチュエータ17を作動させて、第2シャッタ45及び第2可動シャッタ装置40Bの可動シャッタ47を開放位置又は閉鎖位置へ移動させる。
【0041】
車両状態検出手段61としては、例えば、車両の走行状態を検出可能な車速センサ等を用いることができる。車速センサを用いることにより、例えば、車速が所定の閾値よりも高い高速走行の場合に第2シャッタ45を閉鎖位置とし、所定の閾値以下の低速走行の場合に第2シャッタ45を開放位置とするように開閉制御することができる。なお、第2シャッタ45と可動シャッタ47とは、同一条件かつ同じタイミングで開閉制御してもよいし、互いに異なる条件や異なるタイミングで開閉制御する構成としてもよい。
【0042】
次に、吸気装置10を備えた車両1における歩行者衝突時の作用について説明する。
【0043】
衝突検出手段15によって、歩行者に対する衝突又は衝突の前兆が検出されていない通常状態では、図1に示すように、第1シャッタ12は、ECU16により常に開放位置に制御される。
【0044】
車両走行中に、衝突検出手段15が歩行者に対する車両1の衝突又は衝突の前兆を検出し、検出信号がEUC16へ送信されると、ECU16は、アクチュエータ17を作動させて第1可動シャッタ12を閉鎖位置へ移動させる。すると、過給機の吸引作用により、吸気ダクト14は通常状態よりも内部負圧が過大となる過剰負圧状態になる。
【0045】
これにより、吸気ダクト14の内部圧力が所定の負圧値より低くなると、図4に示すように、吸気ダクト14の脆弱部14aが潰れ、脆弱部14aの周辺にはスペースSが形成される。
【0046】
一方、車両1が歩行者と衝突すると、図5に示すように、衝突荷重によりヘッドランプ50が脱落して、下方へ移動する。このとき、ヘッドランプ50の下方に位置する吸気ダクト14の潰れにより、ヘッドランプ50の脱落ストロークは大きく確保される。さらに、吸気ダクト14は、過大な負圧により潰されやすい状態になっていることから、ヘッドランプ50の脱落による荷重やその他の衝突荷重を受けることで、吸気ダクト14をさらに潰したり、破壊したりすることが可能となる。
【0047】
上述した吸気装置10では、衝突検出手段15により衝突又は衝突の前兆が検出された場合に、吸気ダクト14が負圧により潰され、エンジンルーム2内で吸気ダクト14が占めているスペースが小さくなり、その結果、ヘッドランプ50の脱落ストロークを大きく確保することができる。これにより、衝突時に歩行者に作用する反力を低減することができ、歩行者の障害値を低減することができる。
【0048】
特に、ヘッドランプ50は比較的剛性が高く、対人衝突において歩行者と接触しやすい位置に配置されるものの比較的破壊されにくい部材であるが、衝突荷重によって破壊しつつ、さらにヘッドランプ50自体を脱落させることで、歩行者に作用する反力を大きく低減させることが可能である。
【0049】
また、エンジンやラジエータ26、吸気装置10等が配置されるエンジンルーム2は、配置スペースに制限があり、従来の車両構造では、ヘッドランプ40が衝突荷重によってエンジンルーム2内に脱落した場合に、脱落スペースを確保することが困難であったが、上述のように衝突時に吸気装置10の吸気ダクト14を潰すことでエンジンルーム2内のスペースを広く確保することができる。特に、吸気ダクト14に脆弱部14aを設けて、負圧が過大となった場合に、この脆弱部14aを負圧により確実に潰すことで、衝突の際の脱落ストロークを確実に確保することが可能となる。
【0050】
また、吸気ダクト14はヘッドランプ50の後方側に配置されているので、前方からの衝突によりヘッドランプ50が後方へ移動した際にも、移動ストロークを大きく確保することができる。
【0051】
また、上述の吸気装置10では、グリル開口32を開閉可能な可動シャッタ42の一部である第1シャッタ12を吸気ダクト14の吸気調節弁として用いているので、吸気装置10の製造コストの増加を抑えることができる。
【0052】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、本実施形態では、フロントグリル30及び第1可動シャッタ装置40Aの一部を外気導入路11及び吸気調節弁として用いているが、これらを用いることなく、外気導入路及び吸気調節弁を別途設ける構成であっても良い。
【0053】
また、吸気ダクト14は、少なくとも吸気調節弁が閉鎖されることによる過大な負圧により潰れやすくなる構造であればよく、例えば、脆弱部14aを有しておらず、衝突時に脱落したヘッドランプ40の荷重と、内部負圧との2つの作用により潰れたり、破壊されたりする構造であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 車両
2 エンジンルーム
3 フード
10 吸気装置
11 外気導入路
12 第1シャッタ(吸気調節弁)
13 エアクリーナ
14 吸気ダクト
14a 脆弱部
15 衝突検出手段
16 ECU(制御部)
17 アクチュエータ
20 バンパ
26 ラジエータ
30 フロントグリル
40A 第1可動シャッタ装置
40B 第2可動シャッタ装置
42,47 可動シャッタ
45 第2シャッタ
50 ヘッドランプ(前方部材)
図1
図2
図3
図4
図5