【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例及び参考例、比較例によりさらに具体的に説明する。
<シリマリンとセルロースの共粉砕物の製造例>
<実施例>
1.シリマリンとセルロースの共粉砕物の製造
シリマリンとして市販のシリマリン原末である「シリマリンETG」(インデナ社製、フラボノリグナン65質量%含有)及び結晶セルロース末「セオラス」(旭化成株式会社製)を用いてシリマリンとセルロースの共粉砕物を調製した。
またシリマリンとセルロースの共粉砕物の製造装置としてホソカワミクロン株式会社製乾式複合化装置「ノビルタNOB−MINI」を使用した。「ノビルタNOB−MINI」は、水平円筒状の混合容器内で、ブレードを有するロータが周速40m/s以上の高速で回転して、衝撃・圧縮・せん断の力が粒子個々に均一に作用するように設計されている。回転数と運転時間の調節により、微粒子化と複合化を同時に進行させることが可能な装置である。本体ケーシングは水冷ジャケット構造になっており、高いエネルギーを加えても品温の上昇を抑制できる。この装置に「シリマリンETG」と「セオラス」の混合物20gを投入し、装置の使用マニュアルに従い、水冷ジャケット温度20℃で0.2kWの条件で2分間運転し、衝撃・圧縮・せん断を繰り返し、約19gのシリマリンとセルロースの共粉砕物を回収した。
なおシリマリン及び結晶セルロースの混合比は、実施例1、実施例2、実施例3でそれぞれ、98:2、90:10、80:20とした。
【0019】
2.シリマリン/結晶セルロース共粉砕物の嵩密度
実施例1〜3の嵩密度を常法により測定した。測定結果を下記の表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
<参考例>
1.参考例の調製
参考例として上記の「シリマリンETG」をホソカワミクロン株式会社製乾式複合化装置「ノビルタNOB−MINI」を用いて粉砕処理を行った後、得られたシリマリン粉砕物及び結晶セルロース「セオラス」を物理混合したものを調製し、参考例した。なおシリマリンと結晶セルロースの混合比は質量比で、98:2とした。粉砕処理は、この装置に「シリマリンETG」20gを投入し、装置の使用マニュアルにしたがって、水冷ジャケット温度20℃で0.2kWの条件で2分間運転し、衝撃・圧縮・せん断を繰り返し、約19gのシリマリン粉砕物を回収した。
【0022】
2.参考例の嵩密度
参考例の嵩密度を常法により測定した。測定結果を下記の表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
<比較例>
1.比較例の調製
比較例1〜3として上記の「シリマリンETG」、及び比較例4〜6として「シリマリンETG」を株式会社奈良機械製作所製粉砕機「スーパークリーンミル」を用いて微粉砕した後、16メッシュのふるいを用いて分級した粉末(以下、シリマリンのピンミル粉砕物と略す)、参考例として「シリマリンETG」を上記「ノビルタNOB−MINI」を用いて微粉砕した粉末をそれぞれ結晶セルロース「セオラス」と物理混合したものを調製した。なおシリマリンと結晶セルロースの混合比は、比較例1及び比較例4、比較例2及び比較例5、比較例3及び比較例6でそれぞれ、98:2、90:10、80:20とした。
【0025】
2.比較例の嵩密度
比較例の嵩密度を常法により測定した。測定結果を下記の表3に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
<粉体特性>
1.外観
実施例1〜3のシリマリンとセルロースの共粉砕物、参考例のシリマリン粉砕物及び結晶セルロースの物理混合物、比較例1〜3のシリマリン及び結晶セルロースの物理混合物、比較例4〜6のシリマリンのピンミル粉砕物及び結晶セルロースの物理混合物の外観を観察した。それぞれ黄白色の粉末であり、実施例1〜3及び参考例、比較例4〜6は、比較例1〜3と比べて、より白みが増していた。さらに実施例1〜3及び参考例は、比較例4〜6と比べて、さらに白みが増していた。シリマリンは黄色の粉末であるが、シリマリン粒子が微細になるほど薄くなることが考えられる。このことから、実施例1〜3及び参考例は、比較例1〜6と比べて、より微細な構造を形成して、粉末の白みが増したと予想される。
【0028】
2.構造評価(走査型電子顕微鏡観察)
実施例1のシリマリンとセルロースの共粉砕物、参考例で使用したシリマリンの粉砕物、実施例及び参考例、比較例で使用した結晶セルロース、比較例4〜6で使用したシリマリンのピンミル粉砕物の観察結果を
図1〜4にそれぞれ示す。尚、測定は走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−3400)を使用した。
図1より、実施例1のシリマリンとセルロースの共粉砕物は、棒状の小片と粒子の凝集物であることが確認された。棒状の小片は、
図2のシリマリンの粉砕物では確認されなかった。一方、
図3の結晶セルロースでは、棒状の小片が確認されたことから、
図1の棒状の小片は結晶セルロースであることがわかる。この棒状の小片及び粒子の凝集物の拡大画像(
図1c及びd)より、それぞれ微細粒子が付着(凝集)している様子が確認された。似たような微細粒子は、
図2cのシリマリンの粉砕物でも確認されるため、この微細粒子はシリマリンであることがわかる。
従って、実施例1のシリマリンとセルロースの共粉砕物は、シリマリン粒子の表面にシリマリン微小粒子が付着した凝集物とシリマリン微小粒子のみから成る凝集物、結晶セルロース粒子表面にシリマリン微小粒子が付着した凝集物(複合化物)から形成されていることがわかる。
図2より、参考例で使用したシリマリンの粉砕物は、数百μm程度の球状粒子であることが確認された。球状粒子を拡大すると、微細粒子が付着している様子が確認された(
図2c)。球状の粒子は、粒子と微細粒子の複合物であることがわかる。
図4より、比較例4〜6で使用したシリマリンのピンミル粉砕物は、百μm以下の角ばった粒子であることが確認された。角ばった粒子を拡大すると、微小粒子の付着が少ない滑らかな表面をしていることがわかる(
図4c)。
以上により、実施例1のシリマリンとセルロースの共粉砕物は、参考例で使用したシリマリンの粉砕物及び比較例4〜6で使用したシリマリンのピンミル粉砕物とは異なる微細構造を有していることが確認された。
【0029】
3. 構造評価(画像解析)
実施例1のシリマリンとセルロースの共粉砕物に含まれるシリマリン微小粒子の粒子径を定方向最大径により評価した。定方向最大径は、走査型電子顕微鏡により得られた画像中の粒子200個について、画像解析・計測ソフトウエア(三谷商事株式会社製、Win ROOF)を使用して測定した。測定結果を下記の表4に示す。
【0030】
【表4】
【0031】
以上により、実施例1のシリマリンとセルロースの共粉砕物は、定方向最大平均径0.9μmの微小粒子からなる凝集体であり、極めて微細な構造体を形成していた。さらに、それらのシリマリン微小粒子は、ピンミル粉砕されたシリマリン粒子よりも、極めて微細に粉砕されていることがわかる。
【0032】
<シリマリン含有錠剤の製造例>
1.打錠成型性評価
実施例1〜3のシリマリンとセルロースの共粉砕物、参考例のシリマリン粉砕物及び結晶セルロースの物理混合物、比較例1〜3のシリマリン及び結晶セルロースの物理混合物、比較例4〜6のシリマリンのピンミル粉砕物及び結晶セルロースの物理混合物について、賦形剤を添加・混合後、打錠末とした。次に各打錠末を単発打錠機(岡田精工株式会社製)により、錠剤形状8mm、錠剤重量200mg、錠剤硬度7kgfの錠剤に打錠成型した。表5に、各打錠末の処方及び錠剤物性(錠剤硬度7kgfを満たす打錠圧kgf)示す。
尚、各打錠末はシリマリンの含有量が40質量%となるように賦形剤を配合した。賦形剤は、崩壊剤としてエフメルト、滑沢剤としてステアリン酸カルシウム、その他賦形剤として、結晶セルロースを使用した。また、錠剤の硬度は硬度測定機(岡田精工株式会社製)を用いて測定した。錠剤の硬度は、流通時の欠けや割れ等を考量して、7kgfとした。
【0033】
【表5】
【0034】
処方1〜3では、錠剤硬度7kgfを満たすのに必要な打錠圧は400kgf〜450kgfであり、処方4では、錠剤硬度7kgfを満たすのに必要な打錠圧は500kgfであった。一方、処方5及び6では、いずれの打錠圧においても錠剤硬度7kgfを満たす錠剤は得られなかった。また、処方7〜10では、錠剤硬度7kgfを満たすのに必要な打錠圧は700kgf〜1000kgfであり、処方10のシリマリンのピンミル粉砕物と結晶セルロースの物理混合物を含む打錠末で、最も低い打錠圧700kgfで錠剤硬度7kgf錠剤が得られた。
【0035】
この結果から処方1〜3のシリマリンとセルロースの共粉砕物を含む打錠末は、優れた打錠適性を示し、また、キャッピングの生じにくいとされる低い打錠圧での成型が可能であることがわかった。さらに、処方1〜3のシリマリンとセルロースの共粉砕物を含む打錠末は、結晶セルロースの増減にかかわらず、同程度の低い打錠圧で、目的の硬度を満たす錠剤の成型が可能であることが確認された。これは、シリマリンとセルロースの共粉砕物が圧縮成型性に極めて優れた微細構造を形成しているためであると考えられる。
【0036】
2.製剤設計に基づく製造例と評価
実施例1のシリマリンとセルロースの共粉砕物に、シリマリン含量が40質量%又は80質量%になるように、賦形剤を添加・混合後、打錠末とした。次に各打錠末を単発打錠機(岡田精工株式会社製)により、錠剤形状8mm、錠剤重量200mg、錠剤硬度7kgfの錠剤に打錠成型を行い、崩壊時間を測定した。表6に、各打錠末の処方及び賦形剤、錠剤物性(錠剤硬度7kgfを満たす打錠圧kgf)示す。尚、崩壊時間は日本薬局方に従い、試験に使用した錠剤は錠剤硬度7kgfの物性のものを使用した。
【0037】
【表6】
【0038】
表6より、処方1及び処方11の錠剤では、錠剤硬度7kgfを満たすのに必要な打錠圧は両処方で400kgfであり、錠剤の崩壊時間は、処方1で60秒、処方11で120秒であった。この結果から、シリマリンを40質量%又は80質量%配合した錠剤の製造が打錠障害の生じにくいとされる低打圧で製造可能であり、それらの錠剤は適切な錠剤物性を示した。
【0039】
従って、本発明のシリマリン及びセルロースの共粉砕物を錠剤中に配合することにより、1錠あたりのシリマリン含有量を40質量%〜80質量%含むシリマリン高含有錠剤を提供することができる。