特許第6765277号(P6765277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765277
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20200928BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20200928BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20200928BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   H01M10/052
   H01M4/525
   H01M4/505
   H01M2/16 P
   H01M2/16 M
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-204121(P2016-204121)
(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公開番号】特開2018-67407(P2018-67407A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高濱 信子
(72)【発明者】
【氏名】笠井 誉子
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/093246(WO,A1)
【文献】 特開2013−235810(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0013169(US,A1)
【文献】 特開2007−273123(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0231700(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0322587(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 2/14−2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式LiNiMnCoを有する正極材料と、不織布基材に無機粒子が担持されてなるセパレータを含むリチウムイオン電池であり、該正極材料においてx+y+z=1且つ、x≧0.3であり、且つ該不織布基材の構成繊維としてアラミド繊維を含み、アラミド繊維の含有量が不織布基材の1〜10質量%であることを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池(以下、「電池」と略記する場合がある)の用途が携帯電子機器から車載用途や定地用電源用途へと拡大するに伴い、リチウムイオン電池の高エネルギー密度化の要望が高まっている。ニッケル系の正極材料は容量密度が高く、このような高エネルギー密度化要望に適した材料ではあるが、一方で、充電状態での熱安定性が低く、安全性に劣るといった課題や、充放電に伴う電極の体積変化が大きく、セパレータの膨張・圧縮が繰り返されることでセパレータが劣化し、電池寿命が短くなるといった課題もあり、ニッケル比率の高い正極材料の、車載用途や定地用電源用途に適した大型リチウムイオン電池での実用化は進んでいないのが現状である。
【0003】
従来、リチウムイオン電池用セパレータ(以下、「セパレータ」と略記する場合がある)としては、貫通した微細孔を有するポリオレフィン多孔フィルムが用いられてきた。ポリオレフィン多孔フィルムのセパレータは、リチウムイオン電池が異常を起こして発熱した場合に、ポリオレフィンが溶融して貫通した微細孔が閉塞し、電池の内部抵抗を高めることで、電池の温度上昇が抑制される。しかし、外熱によって温度が上昇した場合や、温度上昇により電池内部で化学反応が起きた場合には、多孔フィルムが収縮して内部短絡が起こり、発火・破裂等の重大な事象に至ることがある。また、電池の充放電に伴う発熱環境下で、電極の収縮・膨張に伴うセパレータの膨張・圧縮が繰り返されることで、一部熱可塑化したポリオレフィンの劣化が起こり、電池寿命が短くなるといった課題があった。
【0004】
このようにな課題に対し、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の耐熱性の高い繊維を含む不織布に無機粒子を担持してなるセパレータが提案されている(例えば特許文献1〜4参照)。PET等の耐熱性の高い繊維では、電池の充放電に伴う発熱による繊維の一部熱可塑化が発生しにくく、膨張・圧縮が繰り返されても劣化が発生しにくいという利点がある。また、繊維の耐熱性に無機粒子の耐熱性が加わるため、耐熱性に優れ、このような不織布に無機粒子を担持してなるセパレータを使用した電池は安全性に優れるという利点がある。一方で正極材料のニッケル比率をさらに高めた場合には、電極の収縮・膨張が激しくなり、セパレータの過剰な体積変化が繰り返されることで、熱可塑化の起こりにくいPET等の繊維であっても、繰り返しの使用のうちには繊維形状が復元しにくくなり、電極−セパレータ界面の密着性が低下することで局所的な電解液枯渇等が発生し、十分な電池のサイクル寿命が得られにくくなる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−294437号公報
【特許文献2】特表2011−505663号公報
【特許文献3】特表2005−536658号公報
【特許文献4】国際公開第2013/176276号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ニッケル比率の高い正極材料を含む、高エネルギー密度を有するリチウムイオン電池に関し、安全性が高く、電池のサイクル寿命に優れるリチウムイオン電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究した結果、課題を解決できるリチウムイオン電池を発明するに至った。即ち、組成式LiNiMnCoを有する正極材料と、不織布基材に無機粒子が担持されてなるセパレータを含むリチウムイオン電池であり、該正極材料においてx+y+z=1且つ、x≧0.3であり、且つ該不織布基材の構成繊維としてアラミド繊維を含み、アラミド繊維の含有量が不織布基材の1〜10質量%であることを特徴とするリチウムイオン電池である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ニッケル比率の高い正極材料を含む、高エネルギー密度を有するリチウムイオン電池において、該リチウムイオン電池の安全性が高く、電池のサイクル寿命に優れるという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のリチウムイオン電池は、組成式LiNiMnCoを有する正極材料と、不織布基材に無機粒子が担持されてなるセパレータを含むリチウムイオン電池であり、該正極材料においてx+y+z=1且つ、x≧0.3であり、且つ該不織布基材の構成繊維としてアラミド繊維を含む。
【0010】
本発明における正極材料として組成式LiNiMnCoを有する活物質を含み、該正極材料においてx+y+z=1且つ、x≧0.3である。電池の高エネルギー密度化のためには、好ましくはx≧0.5であるが、ニッケル比率が上がると、電池のサイクル寿命が低下しやすくなるため、x≦0.95であることが好ましい。なお、y≧0、z≧0である。
【0011】
本発明において、リチウムイオン電池用セパレータは、不織布基材に無機粒子が担持されてなり、該不織布基材の構成繊維としてアラミド繊維を含む。
【0012】
本発明において、不織布基材に含まれるアラミド繊維の含有量としては、不織布基材の1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜8質量%である。アラミド繊維の含有量を1質量%以上とすることで、耐圧縮復元性が良好となり、電池のサイクル寿命を良好としやすい。また、アラミド繊維の含有量を10質量%以下とすることで、不織布基材の強度やポア径といった性能バランスの調整が容易となりやすい。
【0013】
本発明において、不織布基材には、アラミド以外の繊維を含有させることができ、その構成材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びそれらの誘導体、半芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルなどのポリエステル、ポリオレフィン、アクリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、脂肪族ポリケトン、芳香族ポリケトン、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリ(パラ−フェニレンベンゾビスチアゾール)、ポリ(パラ−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン及びポリ塩化ビニルなどの樹脂;セルロースなどが挙げられる。該不織布基材には、これらのアラミド以外の繊維の2種以上を併用していても構わない。耐熱性に優れるポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0014】
本発明において、不織布基材としては、湿式抄造法によって製造される湿式不織布であることが好ましい。湿式抄造法は、繊維を水に分散して均一な抄造用スラリーとし、この抄造スラリーを抄紙機で漉きあげて湿式不織布を製作する。抄紙機としては、円網抄紙機、長網抄紙機、傾斜型抄紙機、傾斜短網抄紙機、これらの複合機が挙げられる。抄造用スラリーには、繊維の他に必要に応じて、分散剤、増粘剤、消泡剤などを適宜添加することができ、0.001〜5質量%程度の固形分濃度に抄造用スラリーを調製する。この抄造用スラリーをさらに所定濃度に希釈して抄紙し、乾燥する。湿式不織布を製造する工程において、必要に応じて水流交絡処理を施しても良い。抄紙して得られた湿式不織布には、必要に応じて、カレンダー処理、熱カレンダー処理、熱処理などが施される。
【0015】
本発明において、不織布基材の目付は、好ましくは4〜30g/mであり、より好ましくは5〜20g/mである。目付が4g/m以上であることで、不織布基材としての均一性を得やすくなり、また、30g/m以下であることで、リチウムイオン電池用セパレータに適した厚みとなる。なお、目付はJIS P 8124に規定された方法に基づく坪量を意味する。
【0016】
本発明に用いることができる無機粒子としては、カオリン、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、非晶質シリカ、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。これらを単独で用いても、2種以上併用して用いてもよい。なかでも熱安定性の点から、アルミナ、ベーマイト又は水酸化マグネシウムが好ましく用いられる。無機粒子は1種のみを使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。また、熱安定性の点から本発明のセパレータに含有される無機粒子は、セパレータの全固形分中の30〜70質量%であるのが好ましい。
【0017】
本発明に用いる無機粒子の粒径としては0.02〜10.0μmが好ましく用いられ、より好ましくは0.1〜7.5μmである。粒径0.02μm以上とすることで、無機粒子を不織布基材に担持させる際に使用する塗液の安定性が高くなりやすく、また、粒径10.0μm以下とすることで平坦な塗面が得られやすくなる。なお、ここで言う平均粒子径とはレーザー回折散乱法により測定される平均粒子径(D50)を指す。
【0018】
本発明において、無機粒子が不織布基材に担持される際に、バインダを使用してもよい。バインダとしては、ラテックス高分子が好ましく用いられる。具体例としては、例えばスチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン等のラテックス高分子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明においてはセパレータのハイレート特性及び無機粒子層強度の点から、無機粒子とバインダの総量に対するバインダ量は、固形分基準で2〜15質量%とするのが好ましい。
【0019】
本発明においては、発明の効果を損ねない範囲で、無機粒子が不織布基材に担持される際に、分散剤、濡れ剤、増粘剤等の各種添加剤を用いることができる。
【0020】
本発明において、無機粒子が不織布基材に担持される方法に特に制限はない。例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、含浸コーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ダイコーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、スプレーコーター等により、無機粒子を含む塗液を塗工し、乾燥することにより、無機粒子を不織布基材に担持させて、無機粒子層を形成することができる。
【0021】
本発明において、無機粒子を含有する無機粒子層の塗工量(絶乾塗工量)としては、5〜30g/mが好ましく、さらに好ましくは10〜20g/mである。塗工量が5g/m以上であることで、不織布基材表面を十分に被覆しやすくなり、微小短絡を防止しやすくなる。また、塗工量が30g/m以下であることで、セパレータの厚み上昇を抑えやすくなる。
【0022】
本発明のリチウムイオン電池用セパレータにおいて、セパレータの坪量は10〜50g/mが好ましく、より好ましくは17〜40g/mである。また、セパレータの厚みは10〜50μmが好ましく、より好ましくは15〜40μmである。セパレータの密度としては0.4〜1.2g/cmが好ましく、より好ましくは0.5〜1.0g/cmである。なお、坪量はJIS P 8124に規定された方法に基づく坪量を意味する。また、密度は坪量を厚みで除した値である。厚みはJIS B 7502に規定された外側マイクロメーターにより測定された値を意味する。
【0023】
本発明におけるリチウムイオン電池の負極活物質としては、黒鉛やコークスなどの炭素材料、金属リチウム、アルミニウム、シリカ、スズ、ニッケル、鉛から選ばれる1種以上の金属とリチウムとの合金、SiO、SnO、Fe、WO、Nb、Li4/3Ti5/3等の金属酸化物、Li0.4CoNなどの窒化物が挙げられる。
【0024】
本発明のリチウムイオン電池の電解液としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、これらの混合溶媒などの有機溶媒にリチウム塩を溶解させた液が挙げられる。リチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウムや四フッ化ホウ酸リチウムが挙げられる。固体電解質としては、ポリエチレングリコールやその誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、ポリシロキサンやその誘導体、ポリフッ化ビニリデンなどのゲル状ポリマーにリチウム塩を溶解させたものが挙げられる。
【0025】
本発明のリチウムイオン電池の正極は正極集電体の上に正極活物質層を設けることにより作製される。負極についても同様に、負極集電体の上に負極活物質層を設けることにより作製される。集電体については、導電性を有するものであれば特に限定されないが、正極については、例えばアルミニウム(Al)などの金属や、Alなどの金属を含む合金、負極については、例えばAlや銅(Cu)などの金属やAlやCuなどの金属を含む合金を挙げることができる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において、%及び部は、特にことわりのない限り、すべて質量基準である。
【0027】
不織布基材Aの作製
繊度0.06dtex(平均繊維径2.4μm)、繊維長3mmの配向結晶化ポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維56部と繊度0.2dtex(平均繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダ用PET系短繊維40.0部とアラミド繊維のパルプ状物(平均繊維長1.7mm、平均繊維径10μm)を高圧ホモジナイザーによりフィブリル化させた1%スラリー400部とを、パルパーにより水中に分散し、濃度1%の均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを湿式抄造法で抄き上げ、130℃のヤンキードライヤーによって乾燥した後、誘電発熱ジャケットロール(金属製熱ロール)及び弾性ロールからなる1ニップ式熱カレンダーを使用して、熱ロール温度100℃、線圧100kN/m、処理速度40m/分の条件で熱カレンダー処理し、坪量10g/m、厚み15μmの不織布基材Aを作製した。
【0028】
不織布基材Bの作製
繊度0.06dtex(平均繊維径2.4μm)、繊維長3mmの配向結晶化ポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維を53部、アラミド繊維のパルプ状物(平均繊維長1.7mm、平均繊維径10μm)を高圧ホモジナイザーによりフィブリル化させた1%スラリーを700部とした以外は、不織布基材Aと同様にして不織布基材Bを作製した。
【0029】
不織布基材Cの作製
アラミド繊維(平均繊維長1.7mm、平均繊維径10μm)を高圧ホモジナイザーによりフィブリル化させた1%スラリー400部の代わりに、繊度0.5dtex(平均繊維径20μm)、繊維長3mmのポリプロピレン系短繊維4部とした以外は、不織布基材Aと同様にして不織布基材Cを作製した。
【0030】
塗液の作製
無機粒子として、平均粒子径2.0μmの水酸化マグネシウム100部を、その1質量%水溶液の25℃における粘度が200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.3%水溶液120部に分散し、よく攪拌して水酸化マグネシウム分散液を作製した。次いで、その1質量%水溶液の25℃における粘度が7000mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.5%水溶液300部を混合、攪拌し、さらに、バインダとして45%スチレン/ブタジエン共重合体のラテックス高分子15部を混合、攪拌して、塗液を作製した。
【0031】
セパレータAの作製
不織布基材Aの片面上に、塗液を絶乾塗工量が10g/mとなるように塗工、乾燥してセパレータAを作製した。
【0032】
セパレータBの作製
不織布基材Bの片面上に、塗液を絶乾塗工量が10g/mとなるように塗工、乾燥してセパレータBを作製した。
【0033】
セパレータCの作製
不織布基材Cの片面上に、塗液を絶乾塗工量が10g/mとなるように塗工、乾燥してセパレータCを作製した。
【0034】
正極Aの作製
正極活物質として、LiNi1/3Mn1/3Co1/3粉末100部、導電材としてアセチレンブラック3部、グラファイト3部及びポリフッ化ビニリデン4部を混合し、これをNメチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを調製した。このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布して圧延した後、150℃で2時間真空乾燥して、厚さ100μmのリチウムイオン電池用正極Aを作製した。
【0035】
正極Bの作製
正極活物質として、LiNi0.5Mn0.3Co0.2粉末100部、導電材としてアセチレンブラック3部、グラファイト3部及びポリフッ化ビニリデン4部を混合し、これをNメチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを調製した。このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布して圧延した後、150℃で2時間真空乾燥して、厚さ100μmのリチウムイオン電池用正極Bを作製した。
【0036】
正極Cの作製
正極活物質として、LiNi0.6Mn0.2Co0.2粉末100部、導電材としてアセチレンブラック3部、グラファイト3部及びポリフッ化ビニリデン4部を混合し、これをNメチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを調製した。このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布して圧延した後、150℃で2時間真空乾燥して、厚さ100μmのリチウムイオン電池用正極Cを作製した。
【0037】
正極Dの作製
正極活物質として、LiNi0.8Mn0.1Co0.1粉末100部、導電材としてアセチレンブラック3部、グラファイト3部及びポリフッ化ビニリデン4部を混合し、これをNメチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを調製した。このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布して圧延した後、150℃で2時間真空乾燥して、厚さ100μmのリチウムイオン電池用正極Dを作製した。
【0038】
負極の作製
負極活物質として、黒鉛粉末100部を1%カルボキシメチルセルロースナトリウム塩水溶液100部に分散した後、45%スチレン/ブタジエン共重合体のラテックス高分子6部を混合し、これを厚さ8μmの銅箔からなる集電体の両面に塗布して圧延した後、150℃で2時間真空乾燥して、厚さ100μmのリチウムイオン電池用負極を作製した。
【0039】
実施例1
作製したセパレータA、正極A、負極、また、電解液としてはリチウムヘキサフルオロフォスフェートのエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの1/1/1(容量比)混合溶媒溶液(1mol/L)を用い、セパレータAの塗工側の面が負極側となるように積層し、設計容量が100mAhのラミネート型リチウムイオン電池Aを作製した。
【0040】
実施例2
正極として、正極Bを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池Bを作製した。
【0041】
実施例3
正極として、正極Cを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池Cを作製した。
【0042】
実施例4
正極として、正極Dを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池Dを作製した。
【0043】
実施例5
セパレータとして、セパレータB、正極として、正極Dを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池Eを作製した。
【0044】
比較例1
セパレータとして、セパレータCを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池Fを作製した。
【0045】
<評価>
【0046】
[セパレータの耐熱性]
作製した各セパレータから50mm×50mmのシートサンプルを切り出し、シートサンプルのCD(クロスディレクション、横方向)辺をクリップで固定して耐熱ガラス板に挟んで、150℃及び180℃の恒温槽中に1時間ずつ保持した後に取り出してサンプルの幅を測定し、加熱前後での収縮率を算出した。評価は以下に従った。
【0047】
◎:収縮率が2%未満でほとんど収縮は見られない。
○:収縮率が2〜5%で実用上問題ないレベルである。
△:収縮率が5〜8%で局所過熱による収縮がやや懸念される。
×:収縮率が8%超で局所過熱時収縮が懸念される。
【0048】
[サイクル寿命]
作製した各リチウムイオン電池について、55℃条件下で、100mA定電流充電→4.2V定電圧充電→充電電流10mAになったら100mAで定電流放電→2.8Vになったら次のサイクルのシーケンスにて、500サイクルの充放電を行い、[1−(500サイクル目の放電容量/4サイクル目の放電容量)]×100(%)として容量低下率を求めた。評価は以下に従った。
【0049】
◎:容量低下率が10%未満。
○:容量低下率が10〜15%で実用上問題ないレベルである。
△:容量低下率が15〜25%で長期使用時の容量低下が懸念される。
×:容量低下率が25%超で比較的短期での容量低下が懸念される。
【0050】
【表1】
【0051】
表1から明らかなように、実施例1〜5のリチウムイオン電池は、ニッケル比率の高い正極材料を含んでいるが、不織布基材に無機粒子が担持されてなるセパレータにおける不織布基材が構成繊維としてアラミド繊維を含んでいるので、セパレータの耐熱性に優れ、また電池のサイクル寿命に優れる。