特許第6765281号(P6765281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765281
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】椅子用背凭れ、及び、椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/40 20060101AFI20200928BHJP
【FI】
   A47C7/40
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-207283(P2016-207283)
(22)【出願日】2016年10月21日
(65)【公開番号】特開2018-64905(P2018-64905A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】益永 浩
【審査官】 松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−024752(JP,A)
【文献】 特開2010−194083(JP,A)
【文献】 特開2010−094300(JP,A)
【文献】 特開2013−103065(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/196630(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/40−7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者の背中を通して入力される荷重を受ける背凭れ本体と、
前記背凭れ本体に連結されて前記背凭れ本体を支持する背凭れ支持体と、を備え、
前記背凭れ本体と前記背凭れ支持体のうちの一方の部材である第1部材には、係止用突部が設けられ、
前記背凭れ本体と前記背凭れ支持体のうちの他方の部材である第2部材には、前記係止用突部が嵌入される凹部が設けられ、
前記係止用突部は、
第1大径部と、
前記第1大径部に隣接して設けられ前記第1大径部よりも外径の小さい小径部と、
前記小径部に隣接して設けられ前記小径部よりも外径の大きい第2大径部と、を有し、
前記第2部材には、前記凹部の内側において、前記第1大径部と前記第2大径部の相互に対向する軸方向の端面に当接し、かつ前記小径部の外周面に対して径方向に弾性変位可能に当接する抜け規制部が支持され
前記抜け規制部は、前記第2部材と別体の部材によって構成されるとともに、前記第2部材に係止固定される係止固定部を有していることを特徴とする椅子用背凭れ。
【請求項2】
前記抜け規制部は、前記係止固定部に連設され前記小径部の外周面に複数方向から弾接する弾性部材を備えていることを特徴とする請求項に記載の椅子用背凭れ。
【請求項3】
前記弾性部材は係止爪から成り、
前記係止爪は、前記第1大径部と前記第2大径部の相互に対向する端面の間の離間距離に略等しい略一定の板厚を有し、該板厚方向を前記係止用突部の突出方向と合致させて前記第1大径部の端面と前記第2大径部の端面とに当接することを特徴とする請求項に記載の椅子用背凭れ。
【請求項4】
前記係止爪は、前記係止固定部から相互に略平行になるように一対延設され、
各前記係止爪には、前記小径部の外周面に弾接する円弧面が設けられていることを特徴とする請求項に記載の椅子用背凭れ。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の椅子用背凭れを備えていることを特徴とする椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子用背凭れ、及び、それを備えた椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
着座者の背部の荷重を支持する背凭れを備えた椅子がある。事務用等として用いられる椅子は、着座者の背中が接触する部分に柔軟性やフィット感を求められるとともに、大きな荷重を確実に受け止めることができる堅牢性も求められる。このような要望に対応するため、着座者の背中を通して入力される荷重を直接受ける背凭れ本体と、背凭れ本体を背部から支持する背凭れ支持部を別体部材によって構成した椅子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の椅子用背凭れは、背凭れ支持体の前側下端が、支持体である座の下方の支基に連結されるとともに、背凭れ支持体の後側上部の前面側に背凭れ本体が支持されている。背凭れ支持体の後側上部の前面には、先端部が前方に突出する凸軸が設けられており、背凭れ本体の背凭れ枠の後部には、凸軸の先端部が挿入されて連結される軸筒部材が埋設されている。筒軸部材は、凸軸の先端部が挿入されて連結された状態で背凭れ枠の嵌合孔内に固定されている。
【0004】
筒軸部材には、凸軸の先端部が挿入される軸孔が形成され、軸孔の周壁と凸軸とは抜け止めピンによって抜け規制されている。また、凸軸には、抜け止めピンが嵌入される係止孔が形成されているが、その係止孔は、孔の軸方向の両側部分から中央部に向かってテーパ状に肉抜きされている。このため、凸軸は、筒軸部材に係止された抜け止めピンに対して傾動可能とされており、背凭れ本体は、この仕組みによって背凭れ支持体に対して若干の傾動を許容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5543117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の椅子用背凭れは、背凭れ支持体に突設された凸軸が背凭れ枠の後部に嵌入された状態において、凸軸からの背凭れ枠(背凭れ本体)の抜けを抜け止めピンによって規制されている。この椅子用背凭れの場合、抜け止めピンによって背凭れ本体の抜けを規制できるようになるものの、背凭れ本体に荷重受け面に沿う方向の荷重が入力されたときに、抜け規制ピンの軸線方向と略直交する方向にせん断応力が作用することがある。このため、抜け規制ピンの強度を高める等して部材耐久性を高めるための対策が必要となる。
【0007】
そこで本発明は、背凭れ支持体からの背凭れ本体の抜けを規制でき、かつ、構成部材に大きなせん断応力が作用するのを抑制することができる椅子用背凭れ、及び、椅子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る椅子用背凭れは、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る椅子用背凭れは、着座者の背中を通して入力される荷重を受ける背凭れ本体と、前記背凭れ本体に連結されて前記背凭れ本体を支持する背凭れ支持体と、を備え、前記背凭れ本体と前記背凭れ支持体のうちの一方の部材である第1部材には、係止用突部が設けられ、前記背凭れ本体と前記背凭れ支持体のうちの他方の部材である第2部材には、前記係止用突部が嵌入される凹部が設けられ、前記係止用突部は、第1大径部と、前記第1大径部に隣接して設けられ前記第1大径部よりも外径の小さい小径部と、前記小径部に隣接して設けられ前記小径部よりも外径の大きい第2大径部と、を有し、前記第2部材には、前記凹部の内側において、前記第1大径部と前記第2大径部の相互に対向する軸方向の端面に当接し、かつ前記小径部の外周面に対して径方向に弾性変位可能に当接する抜け規制部が支持され、前記抜け規制部は、前記第2部材と別体の部材によって構成されるとともに、前記第2部材に係止固定される係止固定部を有していることを特徴とする。
【0009】
上記の構成により、第1部材の係止用突部が第2部材の凹部に嵌入された状態において、凹部の内側で、抜け規制部が係止用突部の第1大径部と第2大径部の相互に対向する軸方向の端面に当接することにより、係止用突部からの凹部の抜けを規制される。これにより、背凭れ支持体からの背凭れ本体の抜けが規制される。また、凹部の内側で、抜け規制部が係止用突部の小径部の外周面に径方向に弾性変位可能に当接することにより、第1部材と第2部材の間に係止用突部の突出方向と交差する方向の荷重が入力されたときに、抜け規制部が係止用突部の径方向に沿う方向に弾性変位し、その間に緩衝作用をもって入力荷重を受け止めるようになる。これにより、抜け規制部やその他の部材にせん断応力が作用しにくくなる。
【0010】
この場合、抜け規制部が第2部材と別体の部材によって構成されているため、第1部材側の係止用突部を第2部材の凹部に嵌入した後に、凹部内に配置された係止用突部の小径部の位置を確認しつつ、抜け規制部を係止用突部に容易に、かつ、適切に係合させることができる。このため、この構成を採用することにより、椅子用背凭れの組立作業性をより高めることができる。
【0011】
前記抜け規制部は、前記係止固定部に連設され前記小径部の外周面に複数方向から弾接する弾性部材を備えた構成であっても良い。
この場合、係止固定部を手で保持しつつ、弾性部材を小径部に対して弾性変形させながら凹部に押し込むことで、抜け規制部を係止用突部に容易に係合させることができる。
【0012】
前記弾性部材は係止爪から成り、前記係止爪は、前記第1大径部と前記第2大径部の相互に対向する端面の間の離間距離に略等しい略一定の板厚を有し、該板厚方向を前記係止用突部の突出方向と合致させて前記第1大径部の端面と前記第2大径部の端面とに当接するようにしても良い。
この場合、抜け規制部の係止爪の板厚が略一定に形成され、その係止爪が板厚方向を係止用突部の突出方向と合致させて、第1大径部の端面と第2大径部の端面とに当接するため、係止爪を第1大径部と第2大径部の端面間に容易に嵌入することができるうえ、係止爪の前記端面間に介在される部分の容積を大きくできることから、係止用突部の突出方向に沿って作用する荷重を有利に受け止めることができる。
【0013】
前記係止爪は、前記係止固定部から相互に略平行になるように一対延設され、各前記係止爪には、前記小径部の外周面に弾接する円弧面が設けられるようにしても良い。
この場合、一対の係止爪に形成された円弧面により、小径部の外周面に作用する多様な方向の荷重を、緩衝作用をもって受け止めることができる。
【0014】
本発明に係る椅子は、前記いずれかの椅子用背凭れを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第2部材の凹部の内側で、第1部材側の係止用突部の第1大径部と第2大径部の相互に対向する軸方向の端面に抜け規制部が当接することにより、背凭れ支持体からの背凭れ本体の抜けを規制することができる。さらに、本願発明によれば、第2部材の凹部の内側で、第1部材側の抜け規制部が係止用突部の小径部の外周面に径方向に弾性変位可能に当接することにより、第1部材と第2部材の間に係止用突部の突出方向と交差する方向の荷重が入力されたときに、抜け規制部やその他の部材にせん断応力が作用するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る椅子を側方から見た斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る椅子を後方(背凭れ側)から見た斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る椅子を左下前方から見た斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る椅子の背凭れの骨格部の一部を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る背凭れの骨格部の図4のV部の拡大図である。
図6】本発明の一実施形態に係る背凭れの骨格部の図4のVI−VI線に沿う断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る背凭れの骨格部の分解斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係る背凭れの骨格部の図4のV部の分解斜視図である。
図9】本発明の一実施形態に係る背凭れの骨格部の図4のIX部の分解斜視図である。
図10】本発明の一実施形態に係る背凭れの骨格部の図4のX−X線に沿う断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る背凭れの骨格部の図4のXI−XI線に沿う断面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る背凭れの骨格部の図4のXII−XII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係る椅子100を側方から見た斜視図である。図2は、椅子100を後方(背凭れ側)から見た斜視図である。
以下の説明においては、説明の便宜上、座体4に正規姿勢で着座した着座者が前を向く方向を「前方」と称し、その反対方向を「後方」と称する。また、以下の説明における上下、左右の向きは、着座者が座体4に正規姿勢で着座したときの着座者を中心とした向きと合致する向きを意味するものとする。また、椅子100の左右方向については、適宜、椅子幅方向と称する。なお、図中の適所には、前方を指す矢印FRと、上方を指す矢印UPと、左側方を指す矢印LHが記されていている。
【0018】
図1図2に示すように、椅子100は、床面F上に設置される脚部1と、脚部1の上部に設置されるボックス状の支基2と、支基2の上部に取り付けられた座受部材3と、座受部材3の上部に前後方向に位置調整可能に支持された座体4と、支基2の両側部に枢支されて支基2内の不図示のリクライニング機構により傾動し得る側面視略L字状の背凭れ支持体70と、背凭れ支持体70の上部の前面側に取り付けられた背凭れ本体71と、背凭れ支持体70の下部側の前縁部に取り付けられ、着座者の肘先が載せ置かれる左右一対の肘掛け74と、を備えている。背凭れ支持体70と背凭れ本体71とは、着座者の背部の荷重を支持する背凭れ7(椅子用背凭れ)を構成している。
【0019】
脚部1は、キャスタ11A付きの多岐脚11と、多岐脚11の中央部より起立し昇降機構であるガススプリング(不図示)を内蔵する脚柱12と、を有している。
脚柱12の下部を構成する外筒13は、多岐脚11に回転不能に嵌合して支持されている。脚柱12の上部を構成する内筒14は、上端部に支基2を固定して支持するとともに、下部が外筒13に水平方向で回転可能に支持されている。
支基2には、脚柱12の昇降調整機構と背凭れ7のリクライニング機構が内蔵されている。
【0020】
図3は、一部の部品を取り去った椅子100を座体4の左下前方から見た図である。
図3に示すように、座受部材3は、左右両側の前部領域と後部領域とが前アーム60fと後アーム60rを介して支基2の上部に揺動可能に連結されている。前アーム60fは、支基2の前端部から上方に向かって湾曲しつつ椅子幅方向外側に延出し、下端側が椅子幅方向に沿う軸線を中心として支基2の前部に回動可能に支持されている。後アーム60rは、下端部が背凭れ支持体70の後述する前向き腕部72bに一体に結合され、前向き腕部72bから上方に向かって湾曲しつつ椅子幅方向外側に延出している。背凭れ支持体70の前向き腕部72bの前端部は支基2内の後部寄りのリクライニング機構の軸に連結されている。このため、後アーム60rは、リクライニング機構の操作に応じて椅子幅方向に沿う軸回りに傾動する。
【0021】
座受部材3は、前アーム60fと後アーム60rの各上端部に回動可能に連結されている。したがって、座受部材3は、前アーム60f、後アーム60r、及び、支基2とともに平行リンク機構を構成し、背凭れ支持体70の傾動動作に連動して前後方向に変位するようになっている。
【0022】
座体4は、着座荷重を受け止める硬質樹脂製の座シェル40(荷重支持部材)と、座シェル40の上部に配置された不図示のクッション部材と、クッション部材と座シェル40の上方と周域とを覆う表皮部材41と、を備えている。
【0023】
背凭れ支持体70は、その主要部がアルミニウム合金等の金属材料から成り、椅子幅方向に離間して配置された左右一対の主フレーム72と、椅子幅方向に延出して主フレーム72の上端部同士を連結する連結フレーム73と、を備えている。左右の主フレーム72は、側面視が略L字状に形成されており、座体4の後部下方位置から上方に起立する起立部72aと、起立部72aの下端から湾曲しつつ前方に延びる前向き腕部72bと、を有している。前向き腕部72bの前端部は、前述のように支基2に設けられたリクライニング機構の軸に結合されている。また、左右の主フレーム72の起立部72aは、上方に向かうにつれて両者の離間幅が次第に広がるように椅子幅方向外側に傾斜している。
なお、本実施形態においては、主フレーム72と連結フレーム73のうちの一方が背凭れ支持体70の第1フレームを構成し、主フレーム72と連結フレーム73のうちの他方が背凭れ支持体70の第2フレームを構成している。
【0024】
背凭れ本体71は、樹脂製の背凭れ枠75と、背凭れ枠75に張設されて着座者の背中からの入力荷重を直接受ける張材76と、を有している。背凭れ枠75は、図2に示すように、左右の枠辺75sの離間幅が下方に向かって次第に窄まり、かつ、左右の枠辺75sの上端部同士が椅子幅方向に延出する上部側の枠辺75uによって連結される逆三角形状の正面視形状に形成されている。背凭れ枠75の左右の各枠辺75sには、上部寄り領域から後方側に向かって突出する上部連結アーム69uと、下部寄り領域から後方側に向かって突出する下部連結アーム69lと、が延設されている。上部連結アーム69uは、背凭れ支持体70の上部領域に連結され、下部連結アーム69lは、背凭れ支持体70の下部領域に連結されている。
【0025】
図4は、背凭れ7の骨格部の一部(ほぼ右半分)を左前部上方側から見た図であり、図5は、図4のV部を拡大して示した図である。図6は、図4のVI−VI線に沿う断面を示す図であり、図7は、背凭れ7の骨格部の一部を分解して右後部上方側から見た図である。また、図8は、背凭れ7の骨格部を一部分解した図4のV部の拡大図である。
これらの図に示すように、連結フレーム73の左右両端部には、短軸円柱状のボス部17がそれぞれ設けられている。左右の各ボス部17は、椅子100が組み立てられた状態において、その軸心が椅子幅方向を向くように形成されている。ボス部17には、前方側に開口するように凹形状部18が形成されている。凹形状部18は、相互に対向する一対の側壁18a,18bを有している。側壁18a,18bは、ボス部17の軸方向の一端側と他端側に配置されている。凹形状部18の椅子幅方向外側に位置される側の側壁18aには、連結部材であるボルト19の頭部19aが収容される凹状座20と、凹状座20の底部において側壁18aを椅子幅方向に貫通するねじ孔21と、が形成されている。
【0026】
また、左右の主フレーム72の起立部72aの各上端には、連結フレーム73の左右の対応する凹形状部18の内側に挿入されて配置される凸形状部22が形成されている。凸形状部22は、起立部72aの上端面の椅子幅方向外側寄り位置から上方に突出している。凸形状部22は、凹形状部18の一対の側壁18a,18bの離間幅よりも幅が狭く形成されており、幅方向が側壁18a,18bの内面に対向するように、一対の側壁18a,18bの間に配置されるようになっている。凸形状部22は、実際には、幅方向の一端面を凹形状部18の一方の側壁18aに当接させた状態で凹形状部18内に配置され、その状態で凸形状部22の幅方向の他端面と凹形状部18の他方の側壁18bとの間に所定幅の空間部S(図7図8参照)が確保されるようになっている。また、凸形状部22には、幅方向に貫通するねじ孔23が形成されている。
【0027】
また、背凭れ枠75の上部に延設された上部連結アーム69uの先端部には、主フレーム72と連結フレーム73の連結部に連結される所定幅の延出片24が延設されている。延出片24は、上部連結アーム69uの先端部のうちの椅子幅方向内側に偏った位置に延設されている。延出片24には、椅子幅方向に貫通する挿通孔25が形成されている。延出片24は、凹形状部18の他方の側壁18bと凸形状部22の間の空間部Sに挿入される。
【0028】
連結フレーム73の凹形状部18と、主フレーム72の凸形状部22と、背凭れ枠75の延出片24とは、連結部材であるボルト19によって連結されている。
ボルト19は、前述した頭部19aと、軸方向の一端が頭部19aに連設された第1軸部19bと、軸方向の一端が第1軸部19bの軸方向の他端に連設された第2軸部19cと、を有している。第1軸部19bと第2軸部19cは同軸に形成されており、第1軸部19bは、第2軸部19cよりも大径に形成されている。第1軸部19bの外周面には、凹形状部18の一方の側壁のねじ孔21と、凸形状部22のねじ孔23とに跨って螺合される雄ねじが形成されている。これに対し、第2軸部19cの外周面には雄ねじが形成されておらず、延出片24の挿通孔25に対して隙間を持って挿通されるようになっている。
【0029】
背凭れ本体71の上部は、背凭れ支持体70の左右の各主フレーム72と連結フレーム73に対して以下のようにして組み付けられる。
【0030】
最初に、連結フレーム73の凹形状部18の内側に左右の対応する主フレーム72の凸形状部22を挿入し、その状態で凹形状部18の一方の側壁18aのねじ孔21と、凸形状部22のねじ孔23にボルト19の第1軸部19bを螺合する。このとき、ボルト19の第2軸部19cがねじ孔21,23に先に挿入されて、その状態でボルト19を締め込んでいくと、ボルト19の第2軸部19cの先端が凸形状部22のねじ孔23から突出する前に、第1軸部19bの雄ねじ部分が凹形状部18の一方の側壁18aと凸形状部22とに跨って螺合される。これにより、一方の側壁18aと凸形状部22の軸方向の相対位置が固定されるとともに、凹形状部18の他方の側壁18bと凸形状部22の間に所定幅の空間部Sが確保される。
【0031】
次に、背凭れ本体71側の対応する延出片24を、上記の凹形状部18の他方の側壁18bと凸形状部22の間にできた空間部Sの内側に挿入する。この状態において、延出片24の挿通孔25を凸形状部22のねじ孔23と位置合わせし、ボルト19の締め込みを再開する。こうして、ボルト19が締め込まれると、ボルト19の第2軸部19cが凸形状部22から次第に突出し、延出片24の挿通孔25に挿通されるようになる。こうしてボルト19が完全に締め込まれると、背凭れ本体71側の延出片24がボルト19の第2軸部19cによって回動可能に保持される。この結果、背凭れ本体71の上部は、背凭れ支持体70の主フレーム72と連結フレーム73の連結部に組み付けられることになる。
【0032】
図9は、背凭れの骨格部を図4のIX部に対応する部分を分解して左上部前方側から見た図であり、図10は、図4のX−X線に沿う断面を示す図である。また、図11は、図4のXI−XI線に沿う断面を示す図であり、図12は、図4のXII−XII線に沿う断面を示す図である。
これらの図に示すように、下部連結アーム69lが連結される左右の主フレーム72(起立部72a)の下部領域には、その前面から前方に膨出する略長方体状の係止ブロック27が固定されている。係止ブロック27には、その前面から前方に突出する嵌合ピン28が締結固定されている。係止ブロック27と嵌合ピン28はアルミニウム合金等の金属材料によって形成されている。本実施形態においては、係止ブロック27と嵌合ピン28が係止用突部を構成している。
【0033】
嵌合ピン28は、係止ブロック27に形成されたねじ穴27aに締め込まれて固定されるねじ軸29と、ねじ軸29に連設され係止ブロック27よりも前方に突出する係止用頭部30と、を備えている。係止用頭部30は、ねじ軸29に同軸に連設されるとともにねじ軸29よりも大径の第1大径部30Aと、第1大径部30Aに同軸に連設されるともに第1大径部30Aよりも小径の小径部30Bと、小径部30Bに同軸に連設されるとともに第1大径部30Aと同径の第2大径部30Cと、を有している。小径部30Bは、嵌合ピン28の軸方向において、第1大径部30Aと第2大径部30Cの間に配置されている。
【0034】
これに対し、下部連結アーム69lの先端面には、背凭れ支持体70側の係止ブロック27が嵌合される第1凹部31と、嵌合ピン28の係止用頭部30が嵌合される第2凹部32と、が連続して形成されている。第2凹部32には、嵌合ピン28の第1大径部30Aが嵌入される第1嵌入部32aと、嵌合ピン28の第2大径部30Cが嵌入される第2嵌入部32cが同軸に形成されている。
本実施形態の場合、背凭れ支持体70側の係止用突部が嵌入される凹部は、第1凹部31と第2凹部32とによって構成されている。
【0035】
また、第2凹部32の内部のうちの、第1嵌入部32aと第2嵌入部32cの間の領域(嵌合ピン28の小径部30Bが挿入配置される領域)には、略矩形状の拡張空間35が設けられている。拡張空間35は、第2凹部32に挿入された嵌合ピン28の小径部30Bと、第1大径部30Aと第2大径部30Cの相互に対向する端面の周域とを取り囲むように形成されている。第2凹部32には、拡張空間35を下部連結アーム69lの椅子幅方向内側の側面に開口する側方開口36が連設されている。側方開口36の周縁部には、段差状に窪んだ係止凹部36aが設けられている。
【0036】
下部連結アーム69lの側方開口36には、第2凹部32に嵌入された嵌合ピン28の抜けを規制するための樹脂製の抜け規制部材50(抜け規制部)が挿入されるようになっている。
抜け規制部材50は、側方開口36の周縁の係止凹部36aに嵌合状態で係止される遮蔽壁51(係止固定部)と、遮蔽壁51から略直交方向に延出する一対の係止爪52A,52Bと、を有している。係止爪52A,52Bは、嵌合ピン28の第1大径部30Aと第2大径部30Cの相互に対向する端面間の離間距離に略等しい一定厚みの板状に形成され、かつ、相互に略平行になるように近接して配置されている。係止爪52A,52Bの相互に近接する側縁部には、嵌合ピン28の小径部30Bの外周面に弾接する円弧面52A−1,52B−1が形成されている。なお、拡張空間35の周壁は、拡張空間35に挿入された係止爪52A,52Bとの間に隙間が確保されるようになっている。
【0037】
抜け規制部材50は、下部連結アーム69lを主フレーム72に組み付けるときに、以下のようにして嵌合ピン28に係止される。
即ち、下部連結アーム69lの組付け時には、下部連結アーム69lの先端面の第1凹部31と第2凹部32に対して主フレーム72側の対応する係止ブロック27と嵌合ピン28を嵌入する。このとき、嵌合ピン28の第1大径部30Aと第2大径部30Cは、それぞれ第2凹部32内の第1嵌入部32aと第2嵌入部32cに嵌入され、小径部30Bは、第2凹部32内の拡張空間35内に配置される。
【0038】
次に、この状態から下部連結アーム69lの側方開口36から抜け規制部材50の一対の係止爪52A,52Bを拡張空間35に挿入し、係止爪52A,52Bの円弧面52A−1,52B−1を小径部30Bの外周面に弾接させるとともに、円弧面52A−1,52B−1の縁部を、第1大径部30Aと第2大径部30Cの相互に対向する端面に当接させる。これにより、第2凹部32からの嵌合ピン28の抜けが係止爪52A,52Bによって規制される。抜け規制部材50は、遮蔽壁51が側方開口36の係止凹部36aに嵌合されることにより、下部連結アーム69lに係止固定される。
こうして抜け規制部材50の係止爪52A,52Bが嵌合ピン28に係止されると、背凭れ本体71が荷重受け面に沿う方向に変位する等して、下部連結アーム69lが嵌合ピン28に対して軸直交方向に変位することがあっても、係止爪52A,52Bが小径部30Bの外周面に当接して弾性変位することにより、入力荷重を緩衝しつつ受け止めることができる。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る背凭れ7は、背凭れ支持体70の主フレーム72の前部に係止ブロック27と嵌合ピン28が突設され、背凭れ本体71の下部連結アーム69lに設けられた第1凹部31と第2凹部32とに、係止ブロック27と嵌合ピン28が嵌合されている。そして、嵌合ピン28には、第1大径部30A及び第2大径部30Cと、これらの間に設けられ第1大径部30A及び第2大径部30Cよりも外径の小さい小径部30Bと、が設けられており、下部連結アーム69lに係止された抜け規制部材50が、第2凹部32の内側で、嵌合ピン28の第1大径部30Aと第2大径部30Cの相互に対向する端面に当接し、かつ小径部30Bの外周面に弾性変位可能に当接している。
このため、本実施形態に係る背凭れ7は、抜け規制部材50が第1大径部30Aと第2大径部30Cの端面に当接することにより、背凭れ支持体70の主フレーム72からの下部連結アーム69lの抜けを規制することができるうえ、抜け規制部材50が小径部の外周面に弾性変位可能に当接するため、嵌合ピン28の軸方向と交差する方向の荷重が入力されたときに、抜け規制部材50がその荷重を、緩衝作用をもって受け止め、抜け規制部材50やその他の部位にせん断応力が作用するのを抑制することができる。
【0040】
ところで、第2凹部32の内側で、嵌合ピン28と係合される抜け規制部は下部連結アーム69lと一体に形成することも可能であるが、本発明に係る背凭れ7においては、下部連結アーム69lと別体の抜け規制部材50が設けられ、抜け規制部材50の係止固定部を兼ねる遮蔽壁51が下部連結アーム69lの側方開口36に係止されている。
このため、本実施形態に係る背凭れ7においては、下部連結アーム69lの第2凹部32に嵌合ピン28を嵌合した後に、嵌合ピン28の小径部30Bの位置を、側方開口36を通して目視確認しつつ、抜け規制部材50の係止爪52A,52Bを嵌合ピン28に容易に、かつ、適切に係合させることができる。したがって、この構成を採用した場合には、背凭れ7をより効率組み付けることができる。
【0041】
また、本実施形態に係る背凭れ7においては、抜け規制部材50が、係止固定部である遮蔽壁51に連設され、嵌合ピン28の小径部30Bの外周面に複数方向から弾接する弾性部材である係止爪52A,52Bを備えている。このため、遮蔽壁51を手で保持しつつ、第2凹部32内の小径部30Bに対して係止爪52A,52Bを弾性変形させながら押し込むことで、抜け規制部材50を嵌合ピン28に容易に係合させることができる。
【0042】
特に、本実施形態に係る背凭れ7では、抜け規制部材50の係止爪52A,52Bが、嵌合ピン28の第1大径部30Aと第2大径部30Cの離間距離に等しい略一定の板厚に形成され、その板厚方向を嵌合ピン28の軸方向に合致させて、第1大径部30Aと第2大径部30Cの各端面に当接させるようになっている。このため、係止爪52A,52Bを第1大径部30Aと第2大径部30Cの端面間に容易に嵌入することができ、しかも、係止爪52A,52Bのうちの第1大径部30Aと第2大径部30Cの端面間に介在される部分の容積を大きく確保できることから、嵌合ピン28の軸方向に沿って作用する荷重(背凭れの抜け方向の荷重)を有利に受け止めることができる。
【0043】
さらに、本実施形態に係る背凭れ7の場合、抜け規制部材50の遮蔽壁51から相互に略平行になるように突設された一対の係止爪52A,52Bに、嵌合ピン28の小径部30Bの外周面に弾接する円弧面52A−1,52B−1が設けられているため、円弧面52A−1,52B−1を通して小径部30Bの外周面に作用する多様な方向の荷重を、緩衝作用をもって受け止めることができる。
【0044】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、係止用突部が背凭れ支持体70側に突設され、係止用突部に嵌入される凹部が背凭れ本体71側に設けられているが、逆に、係止用突部を背凭れ本体71側に突設し、凹部を背凭れ支持体70側に設けるようにしても良い。また、上記の実施形態においては、係止用突部の一部(嵌合ピン28)が別体部材として構成されているが、係止用突部全体を背凭れ支持体70や背凭れ本体71に一体に形成するようにしても良い。
また、上記の実施形態においては、背凭れ本体75に張材76が張設されて背凭れ本体71が構成されているが、背凭れ本体は、背凭れシェルの前面にクッション材を配置し、クッション材と背凭れシェルの周域を表皮部材で覆った構成であっても良い。
【符号の説明】
【0045】
7 背凭れ
27 係止ブロック(係止用凸部)
28 嵌合ピン(係止用凸部)
30A 第1大径部
30B 小径部
30C 第2大径部
31 第1凹部(凹部)
32 第2凹部(凹部)
50 抜け規制部材(抜け規制部)
51 遮蔽壁(係止固定部)
52A,52B 係止爪(弾性部材)
52A−1,52B−1 円弧面
70 背凭れ支持体
71 背凭れ本体
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