特許第6765300号(P6765300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6765300手術中に記録された生体信号のノイズ混入を防止するシステムと方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765300
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】手術中に記録された生体信号のノイズ混入を防止するシステムと方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0484 20060101AFI20200928BHJP
   A61B 5/0476 20060101ALI20200928BHJP
   A61B 5/0402 20060101ALI20200928BHJP
   A61B 5/0488 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   A61B5/04 320M
   A61B5/04 320B
   A61B5/04 310M
   A61B5/04 330
【請求項の数】12
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-517301(P2016-517301)
(86)(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公表番号】特表2016-537038(P2016-537038A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】US2014058494
(87)【国際公開番号】WO2015048822
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2017年8月29日
【審判番号】不服2019-9831(P2019-9831/J1)
【審判請求日】2019年7月25日
(31)【優先権主張番号】61/884,525
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514280846
【氏名又は名称】セーフオプ サージカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マホン キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】ラベル カート エイチ
【合議体】
【審判長】 三崎 仁
【審判官】 渡戸 正義
【審判官】 磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−519646(JP,A)
【文献】 実開昭59−193403(JP,U)
【文献】 実開昭59−22106(JP,U)
【文献】 特開平6−277189(JP,A)
【文献】 特開2010−104586(JP,A)
【文献】 特開平4−253843(JP,A)
【文献】 実開昭51−154986(JP,U)
【文献】 特開2003−131668(JP,A)
【文献】 特開2005−73223(JP,A)
【文献】 特開2009−71387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/00-5/05
H03G1/00-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末梢神経を刺激して1つ以上の検出信号を記録する、少なくとも1つのデータプロセッサと、命令を記憶した少なくとも1つのメモリとを備える誘発電位検出装置を含む増幅システムであって、
誘発電位検出装置は、誘発電位検出装置に接続された第一の信号経路と第二の信号経路を含み、各信号経路が検出信号のための入力を有し、検出信号は標的信号と高周波干渉を含んでおり、
第一の信号経路は、標的信号を増幅するように構成され、順番に、ローパスフィルタと、増幅器と、アナログ−デジタル変換器と、マイクロプロセッサと、を含み、
第二の信号経路は、高周波干渉を検出するように構成され、高周波検出器に電気的に接続されたバンドパスフィルタまたはハイパスフィルタと、比較器と、デジタル−アナログ変換器と、第一の信号経路のマイクロプロセッサと、を含み、
比較器は、第一のレッグから入る第一の信号と第二のレッグから入る第二の信号の信号サイズを比較するように構成され、比較器の第一のレッグは高周波検出器からの出力に電気的に接続され、第二のレッグはデジタル−アナログ変換器を介してマイクロプロセッサからの出力に電気的に接続され、
マイクロプロセッサは比較器からの出力に電気的に接続され
比較器は、第一の信号と第二の信号の大きさを比較して、第一の信号が第二の信号より大きい時に、高周波干渉が検出されたことを示す警告信号を出力し、
マイクロプロセッサは、警告信号を比較器から受信するとデータ取得を一時的に中断するとともに、当該警告信号を受けて信号の増幅を一時的に中断する中断信号を増幅器に送るように構成される、
ことを特徴とする増幅システム。
【請求項2】
請求項1に記載の増幅システムにおいて、
第二の信号は、ユーザインタフェースを介してマイクロプロセッサと対話する使用者により設定される閾値信号であることを特徴とする増幅システム。
【請求項3】
請求項1に記載の増幅システムにおいて、
マイクロプロセッサを増幅器に電気的に接続する制御線をさらに含み、制御線は、高周波干渉が検出されると中断信号を増幅器に送信するように構成されることを特徴とする増幅システム。
【請求項4】
請求項1に記載の増幅システムにおいて、
比較器とマイクロプロセッサとの間に位置付けられる1つまたは複数のローパスフィルタをさらに含むことを特徴とする増幅システム。
【請求項5】
請求項1に記載の増幅システムにおいて、
第二の信号経路のバンドパスフィルタは、関心対象の周波数バンドを通過させ、その一方で、関心対象の周波数バンドの外の信号を排除するように構成された1つまたは複数のインダクタ、コンデンサ、またはこれらの組合せを含むことを特徴とする増幅システム。
【請求項6】
請求項5に記載の増幅システムにおいて、
関心対象の周波数バンドは200kHz〜6MHzであることを特徴とする増幅システム。
【請求項7】
請求項1に記載の増幅システムにおいて、
高周波検出器は、超高速ダイオードと、アースに接続されたコンデンサと、アースに接続された並列シャント抵抗器を含むことを特徴とする増幅システム。
【請求項8】
生体信号モニタリング機器内の増幅システムにより実行される方法において、
ユーザインタフェースを介して使用者から閾値レベルの入力を受信するステップと、
第一の検出信号を第一の信号線に沿って受信するステップであって、第一の検出信号が標的の生体信号と高周波ノイズを含み、標的の生体信号は末梢神経を刺激したことによる応答である誘発電位であるようなステップと、
第一の検出信号をフィルタ処理して、第一の検出信号の中の高周波ノイズを低減化させるステップと、
高周波ノイズが低減化された第一の検出信号を増幅して、生体信号の振幅を増大させるステップと、
振幅が増大された第一の検出信号を、マイクロプロセッサによるデータ取得のためにアナログからデジタルに変換するステップと、
第二の検出信号を第二の信号線に沿って受信するステップであって、第二の検出信号が標的の生体信号と高周波ノイズを含むようなステップと、
第二の信号線に設けられた比較器が、第二の検出信号を閾値レベルと比較して、第二の検出信号と閾値レベルのどちらがより大きいかを判断するステップと、
比較器により第二の検出信号が閾値レベルより大きいことが検出されたときに、比較器により警告信号を出力するステップと、
警告信号を受信したマイクロプロセッサが第一の検出信号の取得を中断するステップと、
警告信号を受けて、増幅器に動作を一時的に中断させる中断信号をマイクロプロセッサが制御線に沿って第一の信号線内の増幅器に送信するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項に記載の方法において、
第一の検出信号の取得を中断するためステップは、マイクプロセッサによるデジタルデータの取得と保存を中断するステップを含み、デジタルデータは第一の信号線のアナログ−デジタル変換器から受信され、デジタルデータはデジタル化された第一の検出信号であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項に記載の方法において、
増幅器は約5〜約60秒間、動作を中断することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項に記載の方法において、
増幅器は、第二の検出信号が閾値レベルより大きいことが検出されなくなるまで、またはその後に所定の時間が経過するまで動作を中断することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項に記載の方法において、
増幅器は中断信号の送信が停止するまで動作を中断することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2013年9月30日に出願された、「手術中のSSEP信号のノイズ混入を防止する手段(MEANS OF PREVENTING CONTAMINATION OF SSEP SIGNALS DURING SURGERY)」と題する米国仮特許出願第61/884,525号の利益を請求するものであり、同仮出願の開示の全体を参照によって本願に援用することを明記する。
【0002】
本技術は一般に、電気生理学の分野に関する。特に、この技術は、生体信号の記録および/または処理中にノイズをフィルタで除去する機器、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
手術中に誘発電位を抽出し、追跡することは、神経損傷の可能性をモニタするための確立された方法である。例えば、従来の術中神経生理学的モニタリング(Interoperative Neurophysiologica Monitoryg)(IONM)システムを使って手術中の患者を電気的に刺激し、その結果の体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potentials)(SSEP)をモニタすることは、脳、脊髄、および末梢神経機能の変化を特定できる、受け入れられた有益な臨床手順である。従来のIONMシステムは一般に、重篤な神経損傷のリスクが比較的高い場合、例えば脳脊髄外科術中に使用される。神経系の機能の変化を早期に正確に特定することにより、神経系構造に対する長期にわたるダメージの発生を極少化できる可能性がある。
【0004】
同様に、改良された神経生理学的モニタ機器と方法が開発されており、これはその他の手術中に刺激を与えて患者の誘発電位をモニタすることにより、体位性損傷を特定し、防止するために使用できる。このような機器と方法は、ジョンソンら(Johnson et al.)の米国特許第8,731,654号に記載されており、その開示の全体を参照によって本願に援用する。体位性損傷は、末梢神経構造に過剰な張力または圧力が加えられることに起因する損傷である。それは、手術中に患者がとる体位が原因となりうる。体位性損傷の兆候には、例えば体の一部のしびれ、チクチク感、または脱力等の感覚が含まれていてもよい。手術中、患者は一般に全身麻酔下におかれ、体位による影響の通常の前兆に気付かないか、またはそれに対して反応できない。その結果、患者は外科的処置が行われる間中、障害の原因となる体位のままにされることがある。体位性外傷が継続することにより、1つまたは複数の末梢神経に長期に及ぶ、さらには永久的な損傷をきたす可能性がある。
【0005】
術中神経生理学的モニタリングは一般に、患者の体に電気刺激を送り、それに応答して体が生成する信号を記録する特殊なコンピューティングデバイスを使って実行される。あるいは、刺激を必要としない自発信号が記録されてもよい。特殊なコンピューティングデバイスは一般に、記録された信号のある処理を実行し、医療従事者が処理済み信号の変化をモニタしてもよい。
【0006】
モニタを有効にするために、ノイズと干渉を極少化するべきである。ノイズと干渉の低減化は、標的信号が例えば誘発電位のように非常に小さい場合に特に問題となるが、これは、誘発電位が小さいため、わずかなノイズが存在するだけでも信号対ノイズ比を大幅に低下させる可能性があるからである。例えばSSEP等の誘発電位は、1マイクロボルトまたはそれ未満という小さい振幅の、小さい生体電気信号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第8,731,654号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0224570号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2013/0245424号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
処理済み生体信号の中に存在するランダムノイズを低減化させるための技術が開発されてきた。残念ながら、現在の技術は不十分である。現在の技術を使用した時に処理済み信号に残る干渉は、処理済み信号の大きなひずみを生じさせる可能性がある。したがって、処理済み信号中の干渉をさらに低減化または除去できる、改良された信号取得および/または処理システムおよび技術に対するニーズがある。
【0009】
所望の生体信号の確実な取得と表示を可能にする、改良された術中電気生理学的モニタリング機器および方法に対する高いニーズがある。刺激に応答して患者の体が生成する生体信号に正確かつ精密にマッチする波形を取得し、表示できる医療機器に対するニーズがある。処理済み信号中の電気手術機械に起因する電気干渉の存在を排除し、または実質的に排除する信号処理装置および方法に対するニーズがある。本明細書で提供する実施形態は、これらのニーズの1つまたは複数に対応できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に記載されている実施形態は一般に、手術中に検出される誘発電位信号および/またはその他の生体信号を取得し、分離する、改良された機器、コンポーネント、システム、および方法に関する。各種の実施形態は、記録された信号を、電気手術機械からの干渉が低減化または排除される一方で標的の生体信号は保持されるように処理する機器、システム、および方法に関する。
【0011】
本開示の1つの態様は、対象者の体内の神経機能における変化を検出する方法に関する。この方法は、本明細書に記載されている機器、装置、およびシステムのいずれでも利用できる。この方法は、1つまたは複数の生体信号、例えば誘発電位を生体信号検出機器の入力として患者から受信するステップを含むことができる。この方法は、処理済みの信号に混入する電子干渉または背景ノイズが最小限である処理済み信号を取得するステップをさらに含むことができ、このような処理済み信号は、高周波電子干渉または背景ノイズが存在する時に受信された検出信号を削減、ブロック、無視、または度外視することによって取得される。この方法は、異なる期間に受信された少なくとも2つの処理済み信号を比較するステップと、少なくとも2つの処理済み信号の比較に基づいて生体信号の変化を特定するステップと、をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、生体信号は末梢神経からの誘発電位とすることができる。いくつかの実施形態において、この方法は、医療処置中または対象者に意識がない時の、体位性のものを含むがこれに限定されない神経損傷を、少なくとも2つの処理済み信号間で観察される変化に基づいて検出するステップをさらに含むことができる。
【0012】
本開示の他の態様は、生体信号モニタリング機器内の増幅システムにより実行される方法に関する。各種の実施形態において、この方法は、ユーザインタフェースを介して使用者から閾値レベルの入力を受信するステップと、第一の信号線に沿って第一の検出信号を受信するステップであって、第一の検出信号が標的の生体信号と高周波ノイズを含むようなステップと、第一の検出信号をフィルタ処理して、第一の検出信号内の高周波ノイズを低減化させるステップと、第一の検出信号を増幅して、生体信号の振幅を増大させるステップと、第一の検出信号を、マイクロプロセッサによるデータ取得のためにアナログからデジタルに変換するステップと、第二の検出信号を第二の信号線に沿って受信するステップであって、第二の検出信号が標的の生体信号と高周波ノイズを含むようなステップと、第二の検出信号を閾値レベルと比較して、第二の検出信号と閾値レベルのどちらがより大きいかを判断するステップと、第二の検出信号が閾値レベルより大きいことが検出されたところで、第一の検出信号の取得を中断するための1つまたは複数のステップを実行するステップと、を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、ひずみのある信号の取得を中断するために実行される1つまたは複数のステップは、マイクプロセッサによるデジタルデータの取得及び保存を中断するステップを含み、デジタルデータは第一の信号線のアナログ−デジタル変換器から受信され、デジタルデータはデジタル化された第一の検出信号である。それに加えて、またはその代わりに、いくつか実施形態において、ひずみのある信号の取得を中断するために実行される1つまたは複数のステップは、中断信号を制御線に沿って第一の信号線内の増幅器に送信するステップを含み、中断信号は増幅器に動作を一時的に中断させる。いくつかのこのような実施形態において、増幅器は約5〜約60秒間、動作を中断する。他の実施形態において、増幅器は、第二の検出信号が閾値レベルより大きいことが検出されなくなるまで、またはその後に所定の時間が経過するまで動作を中断する。他の実施形態において、増幅器は中断信号の送信が停止するまで動作を中断する。
【0014】
本開示の他の態様は、命令を記憶した非一時的コンピュータ読取可能媒体に関する。いくつかの実施形態において、命令は、実行されると、プロセッサにある方法、例えば上述の方法のある実施形態を実行させる。
【0015】
本開示の他の態様は、標的の誘発電位またはその他の生体信号を、記録された信号中に存在する高周波ノイズから分離するための自動化された機器に関する。いくつかの実施形態において、この機器は非一時的コンピュータ読取可能媒体、例えば上記の、または本開示の他の箇所に記載されているコンピュータラ読取能媒体を含む。いくつかの実施形態において、この機器は、非一時的コンピュータ読取可能媒体上に記憶された命令を実行するように構成されたプロセッサと、記録電極に連結されるように構成された信号入力と、処理済みデータをユーザインタフェースに送信するように構成されたデータ出力と、をさらに含む。
【0016】
本開示のその他の態様は増幅システムに関する。各種の実施形態において、増幅システムは、第一の信号経路と第二の信号経路を含み、各信号経路は検出信号のための入力を有し、検出信号は標的信号と高周波干渉を含む。第一の信号経路は、標的信号を増幅するように構成される。各種の実施形態において、第一の信号経路は少なくとも、ローパスフィルタと、増幅器と、アナログ−デジタル変換器と、マイクロプロセッサと、を含む。各種の実施形態において、ローパスフィルタの出力は増幅器に電気的に接続され、増幅器の出力はアナログ−デジタル変換器(ADC)に電気的に連結され、ACDの出力はマイクロプロセッサに電気的に接続される。第二の信号経路は、高周波干渉を検出するように構成される。各種の実施形態において、第二の信号経路は少なくとも、高周波検出器に電気的に接続されたバンドパスフィルタまたはハイパスフィルタと、比較器と、デジタル−アナログ変換器と、第一の信号経路のマイクロプロセッサと、を含む。各種の実施形態の比較器は、第一のレッグから入る第一の信号と第二のレッグから入る第二の信号の信号サイズを比較するように構成され、比較器の第一のレッグは高周波検出器からの出力に電気的に接続され、第二のレッグはデジタル−アナログ変換器を介してマイクロプロセッサからの出力に電気的に接続される。各種の実施形態において、マイクロプロセッサは比較器からの出力に電気的に接続され、第一の信号が第二の信号より大きい時に、検出信号内の高周波干渉の存在を検出するように構成される。
【0017】
増幅システムのいくつかの実施形態において、第二の信号は、ユーザインタフェースを介してマイクロプロセッサと対話する使用者により設定される閾値信号である。
【0018】
いくつかの実施形態において、増幅システムは、高周波干渉が検出されると信号の増幅を一時的に中断するように構成される。それに加えて、またはその代わりに、いくつかの実施形態において、増幅システムは、高周波干渉が検出されるとデータ取得を一時的に中断するように構成される。いくつかの実施形態において、増幅システムはさらに、マイクロプロセッサを第一の信号経路の増幅器に電気的に接続する制御線を含み、制御線は、高周波干渉が検出されると中断信号を増幅器に送信するように構成される。
【0019】
いくつかの実施形態において、増幅システムは、比較器とマイクロプロセッサとの間に位置付けられる1つまたは複数のローパスフィルタをさらに含む。いくつかの実施形態において、第二の信号経路のバンドパスフィルタは1つまたは複数のインダクタ、コンデンサ、またはこれらの組合せで構成されるか、またはそれを含み、これは関心対象の周波数バンドを通過させ、その一方で、関心対象の周波数バンドの外の信号を排除するように構成される。いくつかのこのような実施形態において、関心対象の周波数バンドは200kHz〜6MHzである。
【0020】
増幅システムのいくつかの実施形態において、高周波検出器は、超高速ダイオードと、アースに接続されたコンデンサと、アースに接続された並列シャント抵抗器で構成されるか、またはそれらを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、標的信号は生体信号である。少なくともいくつかのこのような実施形態において、生体信号は誘発電位である。
【0022】
本開示のまた別の態様は、ひずみのない誘発電位を記録するシステムに関する。各種の実施形態において、このシステムは、刺激電極に直接または間接に接続されて、電気刺激を身体に送るように動作可能な信号出力と、記録電極に直接または間接に接続されて、検出信号を受信するように動作可能な信号入力であって、検出信号は高周波干渉と、電気刺激に応答して身体の神経系により生成される誘発電位と、を含むような信号入力と、信号入力に連結された処理回路と、を含む。各種の実施形態において、処理回路は、記録された信号を処理し、分析するように構成されたマイクロプロセッサと、増幅システムと、を含む。増幅システムは、誘発電位を増幅するように構成された第一の信号経路と、高周波干渉を検出するように構成された第二の信号経路と、を含む。各種の実施形態において、第一の信号経路と第二の信号経路はどちらもマイクロプロセッサに接続され、マイクロプロセッサはさらに、検出信号内の高周波干渉が検出されると、第一の信号経路からのデータ取得を中断し、第一の信号経路の増幅器内の増幅を中断するように構成される。
【0023】
システムのいくつかの実施形態において、第一の信号経路は、ローパスフィルタと、増幅器と、アナログ−デジタル変換器と、マイクロプロセッサのみ、または少なくともこれらを含む。いくつかの実施形態において、第二の信号経路は、バンドパスフィルタと、高周波検出器と、比較器と、1つまた複数のローパスフィルタと、デジタル−アナログ変換器と、マイクロプロセッサと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】神経機能をモニタするためのシステムの1つの実施形態の機能ブロック図である。
図2】先行技術において知られている増幅システムのブロック図である。
図3】本開示の原理にしたがって構成された増幅システムの1つの実施形態のブロック図である。
図4】本発明の原理にしたがって構成された増幅システムの他の実施形態のブロック図である。
図5図4の増幅システム内にある高周波検出器の1つの実施形態の回路図である。
図6】本発明の原理にしたがって実行される方法の1つの実施形態のフローチャートである。
図7】本明細書に記載されているシステムとコンポーネントの特定の実施形態に関連して、これと共に、および/またはその代わりに使用できるコンピュータシステムの1つの実施形態の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の詳細な説明においては、本開示の一部をなす添付の図面を参照する。図面に示され、説明文に記載されている実施形態は例示であり、限定的ではない。本明細書中で使用されるかぎり、「例示的」という用語は、「一例または実例としての役割を果たす」ことを意味し、必ずしも、他の実施形態より好ましい、または有利であると解釈されるべきではない。他の実施形態を利用してもよく、また本明細書において提示されている主旨の本質または範囲から逸脱することなく変更を加えてもよい。本開示の態様は、本明細書中で説明され、図示されているように、様々な構成で配置、結合、および設計でき、これらはすべて想定され、本開示の一部をなすことを明記する。
【0026】
定義
別段の定義がなされていないかぎり、本明細書中で使用されている各専門用語または科学用語は、本開示が属する分野の当業者により一般的に理解されているものと同じ意味を有する。後述の特許請求の範囲と本明細書において提供されている開示にしたがって、以下の用語は、特に別段の明確なことわりがないかぎり、以下の意味で定義される。
【0027】
「約」または「略」という用語は、数値または範囲(例えば、圧力または寸法)の前で使用されている場合、(+)または(−)5%、1%、または0.1%の範囲のばらつきがありうることを示す。
【0028】
「実質的に」という用語は、電気的干渉を実質的に排除するという文脈で用いられている場合、検出信号内にある干渉の少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%除去することを意味するものとする。
【0029】
明細書と特許請求の範囲において使用されているかぎり、単数形の冠詞(a、an、th)は、文脈上、明白に他の解釈が必要な場合を除き、単数形と複数形の両方を含む。例えば、「誘発電位(an evoked potential)」という用語は、複数の誘発電位を含んでいてもよく、これを含むことが想定される。時として、特許請求の範囲と開示は「複数の」、「1つまたは複数の」、または「少なくとも1つの」という用語を含んでいるかもしれないが、かかる用語が使用されていなくても、特定の実施形態については複数形が着想されないことを意味するものではなく、そのように意味すると解釈するべきではない。
【0030】
本明細書中で使用されているかぎり、「〜を含む(comprising、comprises)」という用語は、機器、システム、および方法が、明記されている要素を含み、そのほかにも他の要素を含んでいてもよいことを意味するものとする。「基本的に〜からなる(consisting essentially of)」とは、機器、システム、および方法が、明記されている要素を含み、明記された目的のための組合せにとって本質的重要性を有する他の要素を排除することを意味する。それゆえ、基本的に本明細書で定義されている要素からなる機器または方法は、特許請求されている発明の基本的および新規な特徴に実質的な影響を与えない他の材料またはステップを排除しない。「〜からなる(consisting of)」とは、機器、システム、および方法が、明記されている要素を含み、些末な、または重要でない要素またはステップにすぎないものは排除することを意味するものとする。これらのつなぎ言葉の各々により定義される実施形態は、本開示の範囲内に含まれる。
【0031】
「生体信号(biosignal、biological signal)」とは、生体から発生するあらゆる検出可能な波形、例えば誘発電位、EEG、EMG、またはECG等を指すものとする。
【0032】
「誘発電位」とは、身体の一部に刺激を与えた結果として生じた、神経系から記録されるあらゆる電位を意味するものする。誘発電位には、例えば体性感覚誘発電位(SSEP)、視覚誘発電位(VEP)、運動誘発電位(MEP)、および聴覚脳幹誘発電位(BAEP)が含まれる。
【0033】
「体性感覚誘発電位」とは、「SSEP」または「SEP」としても知られ、本明細書では「SSEP」ともいうが、末梢神経の電気刺激に応答して神経系により生成される電気信号を指すものとする。
【0034】
当業者であればわかるように、本明細書で開示されている多くの実施形態は、説明を簡素化するために、SSEPの検出と分離に関して説明されているが、各種の実施形態はまた、MEP、VEP、その他の誘発電位、および/またはその他の生体信号を検出してよい。
【0035】
システムの概要
本明細書で提供されている各種の実施形態は、高周波干渉によるひずみのない、誘発電位等の生体信号を検出し、記録するための改良されたシステム、コンポーネント、および方法に関する。図1は、本開示の1つの実施形態による誘発電位を自動的に検出するためのシステム100のブロック図を示す。以下により詳しく説明するように、システム100は、システムが高周波干渉のないクリーンな誘発電位を取得する能力を大幅に向上させる回路および/またはその他のコンポーネントを含んでいてもよい。図の実施形態において、システム100は、患者101に接続されていてもよく、1つまたは複数の記録電極112と、1つまたは複数の刺激電極122と、誘発電位検出装置(EPDD)140と、表示ユニット160と、を含むがこれらに限定されない。刺激および記録電極は各々、神経系構造、例えば脳、脊髄、または神経等の上方に、その付近に、それと接触して、および/またはその周囲に位置付けられる。電極は、針電極、面電極、カフ電極、または他のあらゆる適当な種類の電極であってもよい。
【0036】
各種の実施形態において、EPDD 140は、記録電極112と刺激電極122に、複数のケーブル130を介して電気的に接続されている。各種の実施形態のEPDD 140はコンピュータ、例えば図7に関してより詳しく説明されるコンピュータの一部を形成し、それに接続され、および/またはそれを含む。図7の説明の中で述べられているように、特殊なコンピューティングデバイスは、プロセッサとメモリを含み、プログラムされた命令を記憶する。命令は、プロセッサにより実行された時に、デバイスに、(1)刺激(電流または電圧の形態)を刺激電極に供給し、(2)受信された検出信号を記録電極で記録させる。
【0037】
各種の実施形態において、刺激電極122はEPDD 140に組み込まれ、EPDD 140に接続され、EPDD 140に直接もしくは間接に取り付け可能であってもよい。例示的実施形態によれば、EPDD 140は、刺激電極122を介して1つまたは複数の末梢神経を逐次的に刺激し、その間に記録電極112を介してSSEPを記録する。ある例示的実施形態によれば、EPDD 140は、刺激電極122に接続されるように動作可能な出力を含む。各種の実施形態の記録電極112は、EPDD 140に組み込まれ、EPDD 140に接続され、またはEPDD 140に直接または間接に取り付け可能である。ある例示的実施形態によれば、EPDD 140は、EPDD 140を記録電極112に接続するように動作可能な入力を含む。
【0038】
特殊なコンピューティングデバイスは、記録された信号を処理し、処理済み信号を示すデータを表示のために表示ユニット160に送信する。すると、医療従事者はディスプレイで処理済み信号の変化をモニタしてもよい。各種の実施形態において、EPDD 140は、リンク150を介して表示ユニット160に電気的、電子的、および/または機械的に接続される。いくつかの実施形態において、リンク150は内部配線または外部ケーブルである。いくつかの実施形態において、リンク150は無線通信リンクである。例えば、いくつかの実施形態において、EPDD 140は、Bluetooth(登録商標)もしくはその他の高周波信号を介して、または近距離無線通信もしくはセルラ信号を介して表示ユニット160に無線接続される。
【0039】
ある例示的実施形態によれば、システム100は、SSEPをモニタするように構成される。1つのこのような実施形態において、刺激電極122は、患者101の腕または脚の、例えば尺骨神経、正中神経、腓骨神経、および/または後脛骨神経等の末梢神経構造の上方に装着されるように構成される。いくつかの実施形態において、刺激電極122は、患者の手首および/または足首に装着して、電極が尺骨神経および/または後脛骨神経の上方に、その上に、それに隣接して、またはその付近に配置されるように意図される。
【0040】
いくつかの実施形態の記録電極112は、胴体、脊椎、首、および/または頭に装着さるように構成される。いくつかの実施形態において、記録電極112は以下の箇所、すなわち頭蓋、頸椎、額、左右の鎖骨付近の神経点、および左右の膝のすぐ上の膝窩、または記録可能なその他の神経伝達点に設置されることが意図される。
【0041】
ある例示的実施形態によれば、EPDD140は、患者の四肢の一部またはすべてに配置された刺激電極122に電気パルスを送ることによって、患者の末梢神経に電気刺激を加える。刺激を繰り返すことによって、患者の神経系の応答がSSEPの形で抽出され、これは末梢神経まで移動し、脊髄後索を通り、脳に到達する。正しい機器を使用することにより、SSEPを検出でき、誘発電位の変化をモニタして、神経系の変化を評価できる。ある例示的実施形態において、EPDD 140は記録電極112を使って患者により生成される、SSEPを含む信号を検出する。いくつかの実施形態のEPDD 140は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組合せを含み、検出信号を選択的に記録し、処理して、有意義な信号を表示するように生成する。有意義なデータを生成し、表示するために、記録された信号は干渉、例えば電気手術機械に起因する干渉を含まない、または実質的に含まないものであるべきである。
【0042】
序論
従来、先行技術の誘発電位モニタリングシステムにより記録された信号には、標的信号(例えば、誘発電位)と、EEG信号を含むランダム背景ノイズが含まれている。手術中の様々な時点で、記録された信号にはまた、手術中に使用される電気器具またはその他の機械に起因するランダムでない高周波電気干渉が含まれるかもしれない。記録された信号内の干渉は信号を大きくひずませ、それによって、たとえ処理しても、標的の誘発電位を正確に表すものではなくなる。
【0043】
したがって、処理信号を最も有意義なものとし、モニタリングを最も有効にするためには、記録および/または処理された信号に有意なノイズや干渉がない、または実質的にないことが有利であろう。これは誘発電位について特に問題となるが、なぜなら誘発電位が小さいために、わずかなノイズの存在でも信号対ノイズ比を大幅に低下させうるからである。誘発電位、例えばSSEPは小さい生体電気信号であり、その振幅はわずか1マイクロボルトまたはそれ未満である。これと比較して、他の多くの記録された生体信号、例えばEEG、EMG、およびECGの振幅ははるかに大きい傾向がある。一般的なEEGは通常、10マイクロボルトまたはそれ以上であり、EMGは1ミリボルトまたはそれ以上、ECG信号は数百ミリボルトでありうる。これらのその他の生体信号の相対的な大きさは、このような信号の取得とモニタが、標準的な外科治療にはるかに容易に組み込み可能であったことを意味している。これに対して、誘発電位の臨床的有用性に関わらず、小さいサイズ故に、その(誘発電位の)使用は技術者および/または神経科医が立ち会う正当な理由のある専門的な手術に限定されてきた。
【0044】
その小さいサイズにより、既存の先行技術の手法によって誘発電位を高い信頼性で記録することは困難であり、電気干渉を確実に極小化するには実践的専門知識を持つ人物が必要となる。生体信号が小さいほど、記録のノイズ混入を制限することが重要となる。ノイズは、他の電気信号がモニタリングシステムの記録回路によって受信されて、その中に結合されると発生する。この混入ノイズは取得回路に沿ったどの地点においても起こる可能性があり、これには例えば患者の体内、電極部位、増幅前の信号を搬送するケーブル、および信号増幅器のある場所が含まれる。
【0045】
電気的ノイズの多い環境、例えば手術室における誘発電位を記録するために、外科技術士は現在、様々な技術を使って誘発電位の信号対ノイズ比を高めている。
【0046】
例えば、多くが1954年にドーソン(Dawson)が開発した信号平均化技術を採用している。この信号平均化技術は、タイムロック刺激トリガスイープを平均化することによって信号対ノイズ比を高める。ドーソンの信号平均化技術は、以下の事実に依存している。すなわち、誘発電位の波形は各刺激後に(神経系の健全性と機能性における変化がなければ)一定の潜時(時間遅れ)をおいて現れる。これに対して、ほとんどのノイズはランダムであり、最終的には連続的な刺激の後にゼロに近いレベルに平均化される。信号平均化技術は例えば、処理済み信号中の脳波図(EEG)のノイズの影響を軽減させることにおいて有益である。EEGは、大脳皮質の外側層における活動から生じる比較的ランダムな信号である。したがって、背景ノイズから誘発電位波形を抽出するために、外科技術士は一般に、連続するタイムロックで(時間間隔で)刺激を与えるIONMシステムを使用する。所定の時間間隔で(タイムロックされた)記録時点が定められた複数の刺激がまとめて平均化される。例えば、IONMシステムは、末梢神経を2〜5Hzの周波数で刺激してもよく、100〜500回の刺激が送られたところで、波形を取得し、平均化した上で分析する。
【0047】
残念ながら、手術室では、すべての電気干渉がランダムであるとはかぎらず、一部の干渉は非常に大きく、信号平均化または現在利用可能な他のフィルタ処理技術では除去できない。特に、実質的な量の干渉が電気手術器具によって生成されるかもしれない。最も一般的な干渉は、手術室内で組織の切除と焼灼のために使用されるRFナイフまたはBovieとも呼ばれる電気手術器(ESU)から生じる。ESUが動作可能になる(スイッチが入る)と、一般に大量の非常に高周波数成分の干渉が関心対象の生体信号に混入する。この干渉は非ランダムであることが多く、非常に大きいため、システムは、直近のスイープを他のタイムロックされたスイープで平均化する通常の方法を使ってこの干渉を取り除くことができない。
【0048】
術中神経生理学的モニタリングまたはその他の電気生理学的モニタリングを有効にするために、ESU由来の干渉を関心対象の信号に混入しないようにすることが望ましい。ESU由来の干渉を無視する現在の手段には大きな欠点がある。例えば、現在、ESU由来の干渉を関心対象の信号に混入しないようにするための最も一般的な方法は、神経モニタリングの専門家が実行する精神的な処理(mental process)であり、これは表示された信号をシステム内のアナログ−デジタル変換器(ADC)の正または負の最大値と比較する。特に、この分野の多くの専門家は単純に、信号には、それが特定の閾値、例えばシステムのADCの正または負の最大値の95%以内に入れば、ESUからのノイズが混入したと仮定し、その信号を拒絶または無視する。
【0049】
このような方式には感度と特異度が欠けている。低レベルのESU干渉は拒絶されず、依然として信号内に残り、これらの低レベルのESU干渉を捕捉する程度までフィルタレベルを下げると、通常の誘発電位信号も拒絶され、良好なSSEP波形を得るのに、より時間がかかることになりうる。他の専門家は、ESUの使用後のある時間枠内で観察された波形の変化を精神的に無視する。また別の技術者は、ESUの使用中には信号取得を手動でオフにする。これは、ESUは手術中に組織の切除と焼灼のために頻繁に使用されるため、面倒な工程となり得、この工程の結果として、信号取得がオフとされる時間が長すぎ、信号取得がオフモードの時間中に発生する、神経系機能の変化を見落としかねない。
【0050】
信号からESU干渉を除去する別の方法は、患者から発せられる信号の周波数成分を見ることである。ESU干渉の出力周波数は200kHz〜6MHzの間である。これは、周波数が10kHz未満の関心対象の生体信号とは大きく異なる。しかしながら、一般的な誘発電位モニタには、ESU由来の干渉と同等に高い周波数を有する信号を別に検出する能力がない。なぜなら信号経路内にローパスハードウェアフィルタがあるからである。これらのシステムは、このような高周波数成分を見るように意図されていない。一般的な関心対象信号を考え、このシステムは一般に、周波数成分が10kHzより実質的に高い信号を見るための手段がない。
【0051】
ESU干渉の「フィルタリング」のための、上記のような人間の判断に基づく方式は、エラーが発生しやすく、精度と正確さに欠ける。これに加えて、IONM機器がより多くの手術で使用されるようになると、すべての手術に立ち会うには、神経モニタリングの専門家が足りなくなるであろう。この理由またはその他の理由から、より自動化されたIONM装置が、もし有効であるならば、望ましい。しかしながら、自動化IONM装置の開発は、一部に、改良された干渉拒絶方式に対するニーズによって限定される。人間の判断に基づかない信号フィルタ処理方法に対するニーズがある。したがって、IONM機器の自動化を促進し、表示される誘発電位波形の正確さと精度を向上させるために、改良された生体信号分離技術が求められる。
【0052】
したがって、本明細書において提供されている各種の実施形態のEPDD 140は、回路と、プロセッサと、その中に命令が記憶されたメモリと、を含み、これらが共同で機能して、ESU由来の干渉を含めたランダムノイズと非ランダム電気干渉の取得を防止し、患者の誘発電位を表す処理済み波形表現を生成する。各種の実施形態のシステム100は、信号フィルタリングの感度と特異度を改善するための1つまたは複数の特徴を含んでいてもよい。各種の例示的な特徴を以下に説明する。
【0053】
記録された信号中のノイズを極少化する方法およびコンポーネント
各種の実施形態において、専門化されたシステム100は、処理済み信号内のランダムノイズの存在を低減化させるための、ドーソンが開発した周知の信号平均化技術を実行するようにプログラムできる。
【0054】
それに加えて、またはその代わりに、本明細書において開示されているシステムの各種の実施形態(例えば、図のシステム100)は、記録された信号内のノイズ混入を自動的に管理し、極少化することにより、信頼性の高いデータを自動的に生成する1つまたは複数の方法または手段を含む。具体的には、各種の実施形態において、システム(例えば、システム100)は、多くのノイズを発生させる装置、例えばESUが動作中であるか否かを自動的に検出するように構成される。いくつかの実施形態において、システムは、ESUの動作中にデータ取得を一時的に中断し、および/またはすべての受信信号を発信しない。ESUは、高周波(RF)発生器からESUの先端に電気エネルギーを供給することによって組織を切除し、焼灼する。それゆえ、システム100のある例示的実施形態において、EPDD 140は、付近の電気手術機械、例えばESUから発せられる高周波を受け取るように構成されたRF受信機を含む。いくつかの実施形態において、RF受信機は、EPDD 140内の増幅システムの中に含められる。いくつかの実施形態において、高周波RF信号の閾値レヘルがEPDD 140のRF受信機によって検出されると、システムは信号取得または信号処理を中断する。
【0055】
高周波ノイズを発生する装置、例えばESUまたはその他の電気手術器具が動作中であることを検出し、データ取得を一時的に中断するために、本明細書において提供されている各種の実施形態は、一般的な誘発電位増幅システムに別の信号経路を追加することを含む。
【0056】
従来の誘発電位増幅システムが参照用として図2に示されている。このような増幅システムは、少なくともいくつかの既存のIONMシステムの中に設置されている。増幅システム内で、標的信号と高周波干渉を含む検出信号がローパスフィルタに入る。ある閾値、例えば10kHzより低い信号周波数だけが通過できる。信号のうち、通過した部分が引き続き増幅器へと送られ、そこで信号の振幅が、例えば100倍、1000倍、または1000倍に増幅される。この増幅された信号はデジタル信号に変換されて、マイクロプロセッサへと伝達され、さらに信号処理および/または分析が行われる。問題点として、ノイズには、ESUのような一般的な高周波機器から発せられたものであっても、周波数の変動がある。したがって、ローパスフィルタではすべてのノイズを検出信号から除去するのに不十分であり、その結果、ノイズが増幅器に入る。誘発電位の振幅は1ミリボルトと小さいが、電気手術器具からのノイズの振幅はそれよりはるかに大きい傾向がある。その結果、増幅器に入るノイズは、増幅器をすぐに飽和させ、マイクロプロセッサを通る信号にひずみを生じさせる。
【0057】
本開示の原理にしたがって構成された、改良された誘発電位増幅システムの1つの実施形態が図3に示されている。図3のブロック図は、誘発電位増幅システム内に存在する各種の機能的または構造的コンポーネントを示している。図の増幅システムは、検出信号のフィルタ処理と増幅を目的として、図1の誘発電位検出機器(EPDD)140の中に含められても、またはそれに接続されてもよい。図の実施形態と、本明細書において説明されているその他の実施形態はしばしば、改良された「誘発電位増幅システム」と呼ばれるが、当業者であればわかるように、本明細書で説明されている改良された増幅システムは、あらゆる所望の生体信号をフィルタ処理し、増幅するために使用されてもよい。
【0058】
図3の増幅システムでは、パワースプリッタ(図示せず)および代替的な信号経路が、関心対象の信号を高周波数干渉から分離するために提供される。少なくともいくつかの実施形態のパワースプリッタは、低出力信号、例えば0.1〜100ミリボルトの範囲の信号を一次パス(図3では上側の経路として示す)に送る。このような信号は、主として、標的信号(例えば、誘発電位)からなる。より高出力の信号(すなわち、より大きい振幅の信号)は、代替経路(図3では下側経路として示す)に送られる。下側経路は、高周波数ノイズの検出を可能にするように構成される。例えば、下側経路は、マイクロプロセッサに電気的に接続された比較器を含む。比較器は、下側経路の信号の中の高周波混入レベルを使用者がマイクロプロセッサを介して設定した閾値レベルと比較する。下側経路の信号が閾値レベルより大きいと、比較器は信号を接続されたマイクロプロセッサに出力する。前記信号は警告として機能し、マイクロプロセッサに対し、高周波干渉が存在することを警告する。高周波ノイズが検出されると、マイクロプロセッサは制御線を介して一次経路の増幅器に中断信号を送る。中断信号は、増幅器に動作を一時的に中断させる。このようなシステムは、一次経路の増幅器が、電気手術器具が手術中に使用されるたびに飽和するのを防止する。
【0059】
図3の回路は従来のIONMシステム内に存在する誘発電位増幅システムの改良型であるものの、それがすべての状況において望ましいとはかぎらない。誘発電位信号が非常に小さいため、記録信号を分割するためのパワースプリッタ等の追加の回路が第一増幅ステージに向かう信号線上にあると、増幅さたれた信号の品質が低下する。その代わりに、患者までの代替信号線(図4に示され、それに関して説明されている)が好ましい。
【0060】
図4は、好ましい誘発電位増幅システムの1つの実施形態の各種の機能的および/または構造的コンポーネントのブロック図を提供する。上記の図3と同様に、本明細書に記載されている増幅システムは、いずれの所望の生体信号の増幅のために使用されてもよい。図のコンポーネントは、例えば図1の誘発電位検出装置(EPDD)140の回路内に含められて、検出信号のフィルタ処理と増幅を行ってもよい。
【0061】
図の実施形態において、電気手術器具からの干渉が増幅システムに入るのに、(1)無線周波数電磁波として空中で、(2)伝導信号として、という2つの移動経路がありうる。いくつかの実施形態において、好ましい経路は、患者に容量結合されるシールドなしワイヤに沿ったものである。シールドなしワイヤは空中の電磁波を受信でき、容量結合された線は伝導信号を受信できる。
【0062】
図のように、図4に示されている代替の(例えば、下側の)経路は、バンドパスフィルタまたはハイパスフィルタと、RF検出器と、比較器と、1つまたは複数のローパスフィルタと、マイクロプロセッサと、デジタル−アナログ変換器と、を含む。
【0063】
図の実施形態において、バンドパスフィルタは、信号が、電気手術器具により生成される信号の一般的範囲内にある時のみ通過できるように構成されていてもよい。代替信号線上のバンドパスフィルタは、関心対象の周波数バンドを通過させる一方で、関心対象の周波数バンド外の信号を排除するように構成された1つまたは複数のインダクタ、コンデンサ、またはその組合せで構成されるか、またはこれを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、バンドパスフィルタは、Butterworthフィルタ、Chebyshevフィルタ、Besselフィルタ、または当業者の知る他のいずれの種類のフィルタであってもよい。いくつかの実施形態において、バンドパスフィルはアクティブフィルタであってもよい。少なくともいくつかの実施形態において、関心対象の周波数バンドは、例えば200kHz〜6MHzである。代替的実施形態において、ハイパスフィルタが提供され、これは、ある周波数より高い、例えば200kHzより高い信号を通過させる。
【0064】
各種の実施形態において、代替経路の第一のフィルタを通過した信号は、高周波(RF)検出器に入る。いくつかの非限定的な実施形態において、RF検出器は、図5に示されているように、超高速ダイオード(例えば、Vishay ES07D−GS08)、アースに接続されたコンデンサ、およびアースに接続された並列シャント抵抗器から形成されている。いくつかの実施形態において、RF信号の閾値レベルが検出されると、代替経路の信号は比較器に入る。
【0065】
比較器は、例えば、Texas Instrumentsの差動比較器LM303等のリニア機器であってもよい。比較器は、2つの「レッグ」、すなわち信号源を有し、比較器は2つのレッグからの信号を比較して、どちらの信号がより大きいかと(例えば、どちらの信号の振幅がより大きいか)を特定するように構成される。いくつかの実施形態において、比較器の一方のレッグはRF検出器からの出力に接続される。いくつかの実施形態において、もう一方のレッグはデジタル−アナログ変換器からの出力に電気的に接続され、それ自体はマイクロプロセッサからの出力に接続される。このような実施形態において、第二のレッグは調整可能、例えばソフトウェア内で調整可能である。比較器は、記録された信号の高周波混入レベル(例えば、出力レベル)を使用者がマイクロプロセッサを介して設定した閾値レベル(例えば、閾値出力レベル)と比較する。使用者は、マイクロプロセッサを使って閾値レベルを調整してもよい。代替経路内の記録された信号が使用者の設定する閾値レベルより大きい場合、比較器からの信号出力(ローパスフィルタによりフィルタ処理されているかもしれない)がマイクロプロセッサに対する警告の役割を果たし、マイクロプロセッサに高周波干渉が存在することを警告する。
【0066】
高周波干渉をマイクロプロセッサに警告する信号を受信すると、マイクロプロセッサは、一次経路上のアナログ−デジタル変換器から受信したデータを拒絶してもよい。マイクロプロセッサはまた、制御線に沿って中断信号を一次経路の増幅器に送信してもよく、前記中断信号は、増幅器に動作を一時的に中断させる。このようなステップは、ハードウェアが損傷を受けるのを防止し、ひずみのある信号のデータ取得を回避する。いくつかの実施形態において、増幅器は10秒間にわたって動作を中断してもよい。他の実施形態において、増幅器は5秒間、60秒間、またはそれらの間の何れかの数値だけ動作を中断してもよい。各種の実施形態において、増幅器は、RF検出器からの信号が使用者の設定した閾値レベルより大きいことを比較器が検出しなくなるまで、またはその発生から所定の時間が経過するまで、動作を中断してもよい。いくつかの実施形態において、電気手術器具が使用されなくなると(すなわち、RF検出器からの信号が使用者の設定した閾値レベルより大きくなくなると)、マイクロプロセッサは一次経路の増幅器に中断信号を送信しなくなり、増幅器は自動的に機能を再開する。これは逆スケルチ回路として、またはそれと同様に機能し、高周波成分が代替経路を通じて十分に低いと判断された場合にのみ、信号を一次経路で伝達できるようにする。スケルチ回路は通常、十分に大きい信号だけを通過させる。
【0067】
代替的設計において、比較器の出力は、ソフトウェア介在マイクロプロセッサの代わりに論理回路を使って制御線に直接送ることができる。これは、潜時(時間遅れ)を数マイクロ秒短縮し、システムを干渉からより十分に保護するかもしれない。
【0068】
各種の実施形態において、比較器が感知した高周波成分が高すぎると、マイクロプロセッサはそのデータを拒絶し、増幅器を高周波信号が引き起こす可能性のあるあらゆる悪影響から保護する。マイクロプロセッサは、信号内に入り込んだ高周波干渉のレベルを調整でき、それによって、環境内に常にノイズがあってもシステムを依然として使用できる。システムは、静かな手術室に合わせて調整し、素早く非常にクリーンな信号を取得し、それでもなお、平均数がより高い、ノイズの大きい環境でも動作できる。各種の実施形態において、マイクロプロセッサは、高周波ノイズ(例えば、200kHzより高い周波数のノイズ)を検出すると、取得中のあらゆる平均を拒絶する。電気手術器具からの干渉に加えて、他の種類の干渉もありうるため、本明細書に記載されている周波数ごとのシステムと方法と並行して、すでに確立されているレベル検出方法を実行してもよい。
【0069】
例えば図4の増幅システム等の増幅システムにより実行される1つの方法が図6に示されている。図のように、ブロック602で、いくつかの実施形態において、増幅システムがユーザインタフェースを介して使用者から閾値レベル入力を受信する。ユーザインタフェースは、マイクロプロセッサの一部を構成しても、またはそれに接続されていてもよい。閾値レベルは、例えばESUまたは手術室の中にあるその他の電気機器の既知の出力レベルとマッチするように設定されてもよい。
【0070】
ブロック604で、増幅システムは、第一の信号線に沿って第一の検出信号を受信する。第一の検出信号は、標的生体信号と高周波ノイズを含む。ブロック606で、増幅システムは第一の検出信号をフィルタ処理して、第一の検出信号内の高周波ノイズを低減化させる。このようなフィルタ処理は、例えばローパスフィルタにより実行されてもよい。ブロック608で、増幅システムは第一の検出信号を増幅して、標的生体信号の振幅を大きくする。このような増幅は、増幅器によって行われてもよい。ブロック610で、増幅システムは第一の検出信号を、マイクロプロセッサによるデータ取得のためにアナログからデジタルに変換する。
【0071】
ブロック612で、増幅システムは、患者に容量結合されたシールドなしの第二の信号線に沿って第二の検出信号を受信する。第一の検出信号と同様に、第二の検出信号もまた、標的生体信号と高周波ノイズを含む。ブロック614で、増幅システムが第二の検出信号を閾値レベルと比較して、第二の検出信号と閾値レベルのどちらが大きいか判断する。例えば、第二の検出信号の増幅または出力レベルが閾値レベルと比較される。いくつかの実施形態において、第二の検出信号は、バンドパスフィルタまたはハイパスフィルタを介してフィルタ処理され、RF検出器によって累積され、および/または平均化されてから、閾値レベルと比較される。
【0072】
ブロック616に示されているように、第二の検出信号が閾値レベルより大きいことが検出されると、増幅システムは、第一の検出信号の取得を中断するための1つまたは複数のステップを実行してもよい。例えば、増幅システムは、マイクロプロセッサでのデジタルデータの取得と保存を中断し、および/または中断信号を制御線に沿って第一の信号線内の増幅器に送信してもよく、中断信号は増幅器に動作を一時的に中断させる。いくつかのこのような実施形態において、増幅器は約5〜約60秒間動作を中断する。他の実施形態において、増幅器は、第二の検出信号が閾値レベルより大きいと検出されなくなるまで、または、その後、所定の時間が経過するまで動作を中断する。他の実施形態において、増幅器は、中断信号の送信が停止されるまで動作を中断する。
【0073】
上述のコンポーネントと方法は、例えば図1の誘発電位検出装置(EPDD)140等、いずれの生体信号モニタリング装置の中に組み込んで、それによって実行することもできる。各種の実施形態において、上述のコンポーネントと方法により、高周波干渉がない、または実質的にないクリーンな処理済み信号が生成される。前述のように、各種の実施形態において、本技術のコンポーネントと方法により、生体信号モニタリング装置は、高周波信号が検出されると自動的にデータ取得と増幅器の動作を中断させる。それゆえ、各種の実施形態において、本技術のコンポーネントと方法により、生体信号モニタリング装置は、ESUまたはその他の電気手術器具が使用されている時には常に、データ取得と増幅器の動作を自動的に中断する。このコンポーネントと方法により、生体信号モニタリング機器は、電気手術器具が使用されなくなると、データ取得と増幅器の動作を自動的に再開することもできる。このような方法で、このコンポーネントと方法は、高周波干渉が処理済み信号に混入しないように保つことができる。したがって、各種の実施形態で生成される処理済み信号は、患者の生体信号を正確かつ精密に表す。クリーンな処理済み信号を生成することにより、本技術による生体信号モニタリング機器は、患者の生体信号の変化をモニタできる。生体信号は、処理済みの生体信号を表示する表示スクリーンを見ている医療従事者によってモニタされてもよく、および/または生体信号モニタリング機器は、生体信号の変化を自動的にモニタしてもよい。いくつかの実施形態において、潜時(時間遅れ)、振幅、および/または形態の変化は、中枢または末梢神経系の損傷の指標となりうる。例えば、その開示全体が参照によって本願に援用されるジョンソンら(Johnson et al.の米国特許第8,731,654号に記載されているように、いくつかの実施形態のモニタリング装置は、患者の誘発電位の変化に基づいて、患者の体内の体位による影響を自動的に特定するように構成され。このような実施形態は、処理済み信号が患者の生体信号を正確かつ精密に表している場合に可能となる。
【0074】
マイクロプロセッサ
好ましい実施形態において、図1のEPDD 140は、プロセッサと、接続された回路と、命令を記憶したメモリと、を含み、これらが共同で動作して、上述のように検出された信号を増幅し、フィルタ処理する。各種の実施形態において、メモリ、プロセッサ、および回路は、特殊なコンピュータのコンポーネントであり、少なくともいくつかのこのような実施形態において、EPDD 140は、前記コンピュータの一部を構成し、そこに有線または無線接続を介して接続され、および/またはそれを含む。これに加えて、いくつかの実施形態において、システム100は、使用者から入力を受け取り、使用者に出力を供給する1つまたは複数のユーザインタフェースを含む。このようなユーザインタフェースは、コンピュータの一部を構成しても、またはコンピュータと電気または無線通信していてもよい。以下に、ある例示的コンピュータのコンポーネントについて説明する。この説明は非限定的であるものとされ、なぜなら、当業者であればわかるように、誘発電位検出機器の中で、これと共に、またはその機器として使用するのに様々なコンピュータアーキテクチャが適当でありうるからである。いくつかの実施形態において、説明されているコンピュータは、図3および/または図4に示されているマイクロプロセッサを構成する。
【0075】
図7は、本明細書で説明されているもののうちいずれのシステムの一部でも構成できるコンピュータシステムの1つの例示的実施形態のブロック図を示す。具体的には、図7はある例示的コンピュータ200を示しており、これは例えば、米国ワシントン州レッドモンドのMICROSOFT(登録商標)Corporationが販売するMICROSOFT(登録商標)WINDOWS(登録商標)NT/98/2000/XP/CE/7/VISTA/RT/8その他、米国カリフォルニア州サンタクララのSUN(登録商標)MicrosystemsのSOLARIS(登録商標)、米国ニューヨーク州アーモンクのIBM(登録商標)CorporationのOS/2、米国カリフォルニア州クパチーノのAPPLE(登録商標)CororationのiOSもしくはMac/OS、またはUNIX(登録商標)(米国カリフォルニア州サンフランシスコのOpen Groupの商標)の各種バージョン、例えばLINUX(登録商標)、HPUX(登録商標)、IBM AIX(登録商標)およびSC0/UNIX(登録商標)、または米国カリフォルニア州マウンテンビューのGoogle(登録商標),Inc.のAndroid(登録商標)を含むいずれのオペレーティングシステムを実行してもよい。このようなオペレーティングシステムは例にすぎず、本明細書で説明されているシステムの実施形態は、いずれの適当なオペレーティングシステムを実行するいずれの適当なコンピュータシステムで実装されてもよい。
【0076】
コンピュータシステム200は、1つまたは複数のプロセッサ、例えばプロセッサ204を含んでいてもよい。プロセッサ204は、通信インフラストラクチャ260(例えば、通信バス、クロスオーババー、またはネットワーク等)に接続されていてもよい。各種のソフトウェアの実施形態は、この例示的なコンピュータシステムに関して説明されているかもしれない。この説明を読めば、当業者にとっては、説明されている方法をどのようにして他のコンピュータシステムおよび/またはアーキテクチャで実装するかが明らかとなるであろう。
【0077】
コンピュータシステム200は、グラフィクス、テキスト、およびその他のデータ等を通信インフラストラクチャ206から表示ユニット230上で表示されるように送信するためのディスプレイインタフェース202を含んでいてもよい。
【0078】
コンピュータシステム200はまた、例えばメインメモリ208と、RAM(random access memory)と、二次メモリ210その他を含んでいてもよいが、これらに限定されない。二次メモリ210は、例えば(これに限定されないが)ハードディスクドライブ212および/または、フロッピー(登録商標)ディスケットドライブ、磁気データドライブ、光ディスクドライブ、磁気光学ディスクドライブ、コンパクトディスクドライブCD−OROM、DVD(digital versatile disk)、WORM(write once read many)デバイス、フラッシュメモリデバイス、その他に代表されるリムーバブルストレージドライブ214を含んでいてもよい。リムーバブルストレージドライブ214は、リムーバブルストレージユニット218からの読取りおよび/またはそこへの書込みを周知の方法で行ってもよい。リムーバブルストレージユニット218は、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、光ディスク、磁気光学ディスク、コンパクトディスク、フラッシュメリデバイスその他であってもよく、これらはリムーバブルストレージドライブ214によって読み取られ、書き込まれてもよい。当然のことながら、リムーバブルストレージユニット218は、その中にコンピュータソフトウェアおよび/またはデータが記憶されているコンピュータ使用可能記憶媒体を含んでいてもよい。
【0079】
代替的な例示的実施形態において、二次メモリ210は、コンピュータプログラムまたはその他の命令をコンピュータシステム200にロードできるようにするためのその他の同様のデバイスを含んでいてもよい。このようなデバイスは、例えばリムーバブルストレージユニット222とインタフェース220を含んでいてもよい。その例には、プログラムカートリッジおよびカートリッジインタフェース(例えば、いくつかのテレビゲーム機において見られるもの等であるが、これに限定されない)、リムーバブルメモリチップ(例えば、EPROM(erasable programmanle read only memory)であるが、これに限定されない)、またはPTOM(programmable read only memory)および関連するソケット、ならびにその他のリムーバブルストレージユニット222とインタフェース220を含んでいてもよく、これによってソフトウェアとデータをリムーバブルストレージユニット222からコンピュータシステム200に伝送できる。
【0080】
コンピュータ200はまた、入力装置216、例えばマウスもしくはデジタイザ等のポインティングデバイス、タッチスクリーン、マイクロフォン、キーボードおよび/またはその他のデータ入力装置を含んでいてもよい。コンピュータ200はまた、出力装置240、例えばディスプレイ230および/またはディスプレイインタフェース202を含んでいてもよい。コンピュータ200は、入力/出力(I/O)装置、例えば通信インタフェース224、ケーブル228、および/または通信パス226等を含んでいてもよい。これらの装置は、ネットワークインタフェースカードとモデムを含んでいてもよいが、これに限定されない。通信インタフェース224により、ソフトウェアとデータをコンピュータシステム200と外部装置との間で伝送できる。通信インタフェース224の例には、例えばモデム、ネットワークインタフェース(例えば、イーサネット(登録商標)カード等)、通信ポート、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)スロットおよびカードその他が含まれる。通信インタフェース224を介して伝送されるソフトウェアとデータは信号228の形態であってもよく、これは通信インタフェース224により受信可能な電子、電磁、光、またはその他の信号であってもよい。これらの信号228は、例えばチャネル等の通信パス226を介して通信インタフェース224に供給されてもよい。このチャネル226は、信号228、例えば伝播信号を搬送してもよく、例えば、ワイヤまたはケーブル、光ファイバ、電話線、セルラリンク、無線周波数(RF)リンクおよびその他の通信チャネル等を使って実装されてもよい。
【0081】
本明細書に記載されている各種の実施形態において、有線ネットワークは、音声およびデータ通信装置を相互に接続するための様々な周知の手段のいずれを含んでいてもよい。本明細書に記載されている各種の実施形態において、無線ネットワークの種類としては、例えば符号分割多重アクセス(CDMA)、スペクトラム拡散無線、直交波周波数分割多重(OFDM)、1G、2G、3G、または4G無線、Bluetooth(登録商標)、IrDA(Infrared Data Association)、SWAP(shared wireles acess protocl)、Wi−Fi(wireless fidelity)、WIMAX、およびその他のIEEE標準802.11適合無線LAN(local area network)、802.16適合WAN(wide area network)、UWB(ultr−wideband)ネットワークその他を含んでいてもよいが、これらに限定されない。
【0082】
いくつかの実施形態は、WLANを含むか、それ以外にこれを参照してもよい。WLANの例には、Home radio frequency(HomeRF)により開発されたSWAP(shared wireless access protocol)、Wi−Fi(wireless fidelity)、WECA(wireless Ethernet compatiblity alliance)が推奨するIEEE 802.11の派生標準が含まれていてもよい。IEEE 802.11無線LAN標準は、各種の無線LAN標準のうちの1つまたは複数に準じる各種の技術を指す。IEEE 802.11適合無線LANは、各種のIEEE 802.11無線LAN標準のうちの1つまたは複数のいずれに適合していてもよく、これには例えば、IEEE標準802.11a、b、d、gまたはn適合無線LANを含み、例えばIEEE標準802.11a、b、d、g、およびn(例えばIEEE 802.11g−2003その他を含むがこれらに限定されない)等が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
本明細書中に記載されているいくつかの実施形態は、本明細書に記載されている動作を実行するための装置および/または機器に関する。このような装置は、所望の目的のために特別に構成されてもよく、あるいは特殊な目的を実行するために機器内に保存されたプログラムによって選択的に作動され、または再構成される汎用機器を含んでいてもよい。
【0084】
1つの例示的実施形態において、EPDD 140は、モニタ、スマートフォン、またはタブレット等、使用者に対して表示するための外部ユーザインタフェースにデータを送信する。通信インタフェース224により、データをコンピュータシステム200と外部ユーザインタフェースとの間で伝送できる。いくつかの実施形態において、通信インタフェース224はUSBポートまたは、外部ユーザインタフェースに接続されたケーブルを受けるように構成されたその他のポートである。他の実施形態において、通信インタフェース224はセルラ、Wi−Fi、もしくはRFアンテナまたはその他の無線通信用インタフェースである。各種の実施形態のアンテナは、送信機と受信機の両方の機能を果たす。
【0085】
本明細書中に記載されているその他の実施形態は、機械読取可能媒体上に記憶された命令に関しており、これはコンピューティングプラットフォームによって読取り、実行され、本明細書中に記載されている動作を実行する。機械読取可能媒体は、機械(例えばコンピュータ)により読取り可能な形態の情報を保存し、または伝送するためのいずれのメカニズムを含んでいてもよい。例えば、例示的な機械読取可能記憶媒体は、ROM(read only memory)、RAM(random access memory)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、磁気光学記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、その上に電気、光、音響、またはその他の形態の伝播信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号その他)を記憶可能なその他の例示的ストレージデバイス、およびその他を含んでいてもよい。コンピュータプログラム(コンピュータ制御ロジックとも呼ばれる)は、オブジェクト指向コンピュータプログラムを含んでいてもよく、メインメモリ208および/または二次メモリ210および/またはリムーバブルストレージユニット214の中に記憶されてもよく、これらはコンピュータプログラム製品とも呼ばれる。このようなコンピュータプログラムは、実行されると、コンピュータシステム200が本技術の特徴を実行できるようにする。特に、コンピュータプログラムは、実行されると、プロセッサ(複数の場合もある)204がある例示的実施形態による誘発電位信号をフィルタにかけ、処理するための方法を提供できるようにすることができる。
【0086】
他の例示的実施形態は、その中に制御ロジック(コンピュータソフトウエア)が記憶されているコンピュータ読取可能媒体を含むコンピュータプログラム製品に関する。制御ロジックは、プロセッサ204により実行されると、プロセッサ204に本明細書に記載されている機能を実行させることができる。他の実施形態において、本明細書に記載されている各種の機能は、例えば、これに限定されないが、特定用途集積回路(ASICS)、各種の回路コンポーネントを備える集積回路板、または1つもしくは複数のステートマシンその他、ハードウェアコンポーネントを使って基本的にハードウェアで実装されてもよい。本明細書に記載されている機能を実行するためのハードウェアステートマシンによる実装は、当業者にとって明らかであろう。いくつかの実施形態において、信号フィルタリング、処理、およびその他の説明されている機能は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアその他のうちのいずれかの1つまたは組合せを使って実装されてもよい。
【0087】
本明細書に記載されているコンピュータプログラム媒体とコンピュータ読取可能媒体は、ソフトウェアをコンピュータシステム200に提供する。ソフトウェアは、所望の結果につながる行為または動作のセルフコンシステントシーケンスを含む。これらには、物理的数量の物理的操作が含まれる。通常、ただし、必ずそうとはかぎらないが、これらの数量は、保存、伝送、結合、比較、およびその他の操作が可能な電気または磁気信号の形態をとる。時として、基本的に一般的慣習の理由から、これらの信号をビット、数値、要素、記号、文字、項、数またはその他として言及することが好都合であることがわかっている。しかしながら、理解するべき点として、これらおよび同様の用語はすべて、適当な物理的数量に関連付けられることになり、これらの数量に付与される便利なラベルにすぎない。
【0088】
特に別段の明確な記載がないかぎり、以下の説明から明らかなように、明細書全体を通じて、「処理」、「コンピューティング」、「計算」、「判断」、またはその他の用語を使用した議論は、コンピュータまたはコンピューティングシステム、または同様の電子的コンピューティングデバイスの動作および/または工程を指し、これはコンピューティングシステムのレジスタおよび/またはメモリの中の、物理的、例えば電子的数量として表現されたデータを操作し、コンピューティングシステムのメモリ、レジスタ、またはその他のこのような情報保存、伝送、または表示装置の中の、物理的数量として同様に表現されるその他のデータに変換する。
【0089】
同様に、「プロセッサ」という用語は、レジスタおよび/またはメモリからの電子データを処理して、レジスタおよび/またはメモリの中に保存できるその他の電子データに変換する機器または機器の一部を指してもよい。「コンピューティングプラットフォーム」は、1つまたは複数のプロセッサを含んでいてもよい。
【0090】
ある例示的実施形態によれば、本明細書に記載されている例示的方法は、プログラムロジックを処理するようになされた例示的な1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって実行されてもよく、これは例示的なコンピュータアクセス可能記憶媒体上に具現化されてもよく、これは、かかるプログラムロジックが例示的な1つまたは複数のプロセッサ上で実行されると、その例示的方法の中に示されているような例示的ステップを実行してもよい。
【0091】
本明細書中に記載されている方法は、本明細書中に記載されている方法を実現するための1つまたは複数のステップまたは動作を含む。方法ステップおよび/または動作は相互に交換されてもよく、それも特許請求の範囲から逸脱しない。換言すれば、ステップまたは動作の特定の順序が明示されていないかぎり、具体的なステップおよび/または動作の順序および/または使用を変更してもよく、これも特許請求の範囲から逸脱しない。
【0092】
当業者であればわかるように、本明細書において開示されている実施形態に関連して説明された各種の例示的な論理ブロック、モジュール、回路、およびアルゴリズムステップは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、またはその両方の組合せにより実装されてもよい。このハードウェアとソフトウェアの互換性を明瞭に例示するために、様々な例示的コンポーネント、ブロック、モジュール、回路、およびステップを概してその機能性に関して上述した。このような機能をハードウェアとソフトウェアのいずれとして実装するかは、具体的な用途とシステム全体に加わる設計上の制約によって決まる。当業者であれば、記載されている機能を各々の具体的な用途のために様々な方法で実行できるが、このような実行の決定は、本開示の範囲からの逸脱の原因になるものとは解釈されるべきでない。
【0093】
以上はいくつかの実施形態の詳細な説明を実例と例示のために含んでいるが、当業者にとっては、これらの実施形態の教示を読めば容易に明らかとなるように、付属の特許請求の範囲の主旨と範囲から逸脱することなく、様々な変更と改変を加えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7