特許第6765337号(P6765337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765337
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20200928BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20200928BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08L71/02
   C08K5/49
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-77338(P2017-77338)
(22)【出願日】2017年4月10日
(65)【公開番号】特開2018-90762(P2018-90762A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2020年1月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-235661(P2016-235661)
(32)【優先日】2016年12月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】冨田 恵介
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−121292(JP,A)
【文献】 特表2008−505220(JP,A)
【文献】 特開2015−093914(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103435997(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08K 5/49−5/5399
C08L 71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、JIS K1557−5に準拠して測定されるpHが7.0未満であるポリアルキレングリコール(B)を0.1〜4質量部及びリン系安定剤(C)を0.005〜0.5質量部含有することを特徴とする光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
ポリアルキレングリコール(B)のpHが3.0以上7.0未満の範囲にある請求項1に記載の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアルキレングリコール(B)がプロピレングリコール単位を有するポリアルキレングリコールである請求項1又は2に記載の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
ポリアルキレングリコール(B)がテトラメチレングリコール単位を有するポリアルキレングリコールである請求項1又は2に記載の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
pHが3.0以上7.0未満の範囲になるよう塩酸又はリン酸で調整されたポリアルキレングリコール(B)を、ポリカーボネート樹脂(A)に配合することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
pHが7.0以上であるポリアルキレングリコールを、pH3.0以上7.0未満の範囲に調整したポリアルキレングリコール(B)を用いる請求項5に記載の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物に関し、詳しくは、良好な色相を有し、成形時の割れの問題が改善された、光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、携帯電話等に使用される液晶表示装置には、その薄型化、軽量化、省力化、高精細化の要求に対応するために、面状光源装置が組み込まれている。そして、この面状光源装置には、入光する光を液晶表示側に均一かつ効率的に導く役割を果たす目的で平板形状等の導光板が備えられている。
【0003】
このような導光板は、熱可塑性樹脂の射出成形によって得られる。従来、導光板はポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂材料から成形されてきたが、最近では、より鮮明な画像を映し出す表示装置が求められ、光源近傍で発生する熱によって機器装置内が高温化する傾向にあるため、より耐熱性の高いポリカーボネート樹脂材料に置き換えられつつある。
【0004】
ポリカーボネート樹脂は、機械的性質、熱的性質、電気的性質、耐候性に優れるが、光線透過率は、PMMA等に比べて低いことから、ポリカーボネート樹脂製の導光板と光源とから面光源体を構成した場合、輝度が低いという問題がある。また最近では導光板の入光部と入光部から離れた場所の色度差を少なくすることが求められているが、ポリカーボネート樹脂はPMMA樹脂と比べて黄変しやすいという問題がある。
【0005】
特許文献1には、アクリル樹脂及び脂環式エポキシを添加することにより光線透過率および輝度を向上させる方法、特許文献2には、ポリカーボネート樹脂末端を変性し導光板への凹凸部の転写性を上げることにより輝度を向上させる方法、特許文献3には、脂肪族セグメントを有するコポリエステルカーボネートを導入して上記の転写性を向上させることにより輝度を向上させる方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法は、アクリル樹脂の添加により色相は良好になるが白濁するために光線透過率及び輝度を上げることができず、脂環式エポキシを添加することにより、透過率が向上する可能性はあるが、色相の改善効果は認められない。特許文献2及び特許文献3の場合、流動性や転写性の改善効果は期待できるものの、耐熱性が低下するという欠点がある。
【0007】
一方、ポリエチレングリコール又はポリ(2−メチル)エチレングリコール等をポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂に配合することが特許文献4、特許文献5等で知られている。そして、本出願人は、特許文献6にて、式:X−О−[CH(−R)−CH−O]−Y(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基)で表わされるポリエチレングリコール又はポリ(2−アルキル)エチレングリコールを配合することにより、透過率や色相を改良する提案を行った。
【0008】
しかし、特に最近、スマートフォンやタブレット型端末等の各種携帯端末においては、薄肉化や大型薄肉化が著しいスピードで進行しており、このようなハイエンド向けの導光板等においてはその要求スペックはますます高度化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−158364号公報
【特許文献2】特開2001−208917号公報
【特許文献3】特開2001−215336号公報
【特許文献4】特開平1−22959号公報
【特許文献5】特開平9−227785号公報
【特許文献6】特許第4069364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記したようなポリアルキレングリコールを配合したポリカーボネート樹脂組成物は、特にハイエンド向けの導光板等の薄肉成形品を成形する場合、射出成形の際に成形温度を高くする必要があり、その結果成形品が割れやすくなるという問題があることが、本発明者により見いだされた。
本発明の課題(目的)は、良好な色相を有し、かつ成形時の割れの問題が改善された光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、ポリアルキレングリコールのpH値により上記した成形品割れの発生率が変化することを見出し、ポリアルキレングリコールとして酸性のポリアルキレングリコールを使用し、さらにリン系安定剤を特定量配合したポリカーボネート樹脂組成物が、優れた色相を有しながら成形時の割れ発生が顕著に低下することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0012】
[1]ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、JIS K1557−5に準拠して測定されるpHが7.0未満であるポリアルキレングリコール(B)を0.1〜4質量部及びリン系安定剤(C)を0.005〜0.5質量部含有することを特徴とする光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物。
[2]ポリアルキレングリコール(B)のpHが3.0以上7.0未満の範囲にある上記[1]に記載の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物。
[3]ポリアルキレングリコール(B)がプロピレングリコール単位を有するポリアルキレングリコールである上記[1]又は[2]に記載の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物。
[4]ポリアルキレングリコール(B)がテトラメチレングリコール単位を有するポリアルキレングリコールである上記[1]又は[2]に記載の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物。
[5]pHが3.0以上7.0未満の範囲になるよう塩酸又はリン酸で調整されたポリアルキレングリコール(B)を、ポリカーボネート樹脂(A)に配合することを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
[6]pHが7.0以上であるポリアルキレングリコールを、pH3.0以上7.0未満の範囲に調整したポリアルキレングリコール(B)を用いる上記[5]に記載の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物は、良好な色相を有し、成形時の割れの問題が改善され、また、優れた流動性や高い光線透過率を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。
なお、本明細書において、「〜」とは、特に断りがない場合、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0015】
本発明の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、JIS K1557−5に準拠して測定されるpHが7.0未満であるポリアルキレングリコール(B)を0.1〜4質量部及びリン系安定剤(C)を0.005〜0.5質量部含有することを特徴とする。
以下、本発明の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物を構成する各成分等につき、詳細に説明する。
【0016】
[ポリカーボネート樹脂(A)]
ポリカーボネート樹脂は、式:−[−O−X−O−C(=O)−]−で示される炭酸結合を有する基本構造の重合体である。式中、Xは一般には炭化水素であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
【0017】
また、ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、いずれを用いることもできる。中でも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0018】
ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限はないが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなるポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしてもよい。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いてもよい。またポリカーボネート重合体は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このようなポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
【0019】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、
1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
【0020】
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
【0021】
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
【0022】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0023】
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
【0024】
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
【0025】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
【0026】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
【0027】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
【0028】
これらの中ではビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0029】
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーの例を挙げると、
エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、デカン−1,10−ジオール等のアルカンジオール類;
【0030】
シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタン−1,3−ジオール等のシクロアルカンジオール類;
【0031】
エチレングリコール、2,2’−オキシジエタノール(即ち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
【0032】
1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6−ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4’−ビフェニルジメタノール、4,4’−ビフェニルジエタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
【0033】
1,2−エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2−エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−エポキシシクロヘキサン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、2,3−エポキシノルボルナン、1,3−エポキシプロパン等の環状エーテル類;等が挙げられる。
【0034】
ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0035】
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
【0036】
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【0037】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
【0038】
ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、粘度平均分子量(Mv)で、10000〜18000であることが好ましく、より好ましくは10500以上、さらに好ましくは11000以上、特に好ましくは11500以上、最も好ましくは12000以上であり、より好ましくは17500以下、さらに好ましくは17000以下、特に好ましくは16500以下である。粘度平均分子量を上記範囲の下限値以上とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、粘度平均分子量を上記範囲の上限値以下とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて薄肉成形加工を容易に行えるようになる。
なお、ポリカーボネート樹脂(A)は、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0039】
なお、本発明においてポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量Mvは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度η(単位dl/g)を求め、以下のSchnellの粘度式から算出される値を意味する。
η=1.23×10−4Mv0.83
また、極限粘度ηは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度ηspを測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
【0040】
ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂単独(ポリカーボネート樹脂単独とは、ポリカーボネート樹脂の1種のみを含む態様に限定されず、例えば、モノマー組成や分子量が互いに異なる複数種のポリカーボネート樹脂を含む態様を含む意味で用いる。)で用いてもよく、ポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂とのアロイ(混合物)とを組み合わせて用いてもよい。さらに、例えば、難燃性や耐衝撃性をさらに高める目的で、ポリカーボネート樹脂を、シロキサン構造を有するオリゴマー又はポリマーとの共重合体;熱酸化安定性や難燃性をさらに向上させる目的でリン原子を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーとの共重合体;熱酸化安定性を向上させる目的で、ジヒドロキシアントラキノン構造を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーとの共重合体;光学的性質を改良するためにポリスチレン等のオレフィン系構造を有するオリゴマー又はポリマーとの共重合体;耐薬品性を向上させる目的でポリエステル樹脂オリゴマー又はポリマーとの共重合体;等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体として構成してもよい。
【0041】
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量(Mv)は、通常1500以上、好ましくは2000以上であり、また、通常9500以下、好ましくは9000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
【0042】
さらにポリカーボネート樹脂は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
【0043】
[ポリアルキレングリコール化合物(B)]
本発明の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物は、JIS K1557−5に準拠して測定されるpHが7.0未満であるポリアルキレングリコール(B)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.1〜4質量部含有する。
【0044】
ポリアルキレングリコールは、通常、環状エーテル及び/又はジオールの重合、共重合によって触媒の存在下で製造されており、触媒としては、フルオロスルホン酸、発煙硫酸など超強酸、パーフルオロスルホン酸樹脂、ゼオライト、ヘテロポリ酸等の酸触媒、もしくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド等のアルカリ触媒が使用される。製造直後のポリアルキレングリコールは、通常そのpH値は例えば7〜8程度である。
【0045】
本発明においては、JIS K1557−5に準拠して測定されるpHが7.0未満であるポリアルキレングリコール(B)を使用する。市販のポリアルキレングリコールやポリアルキレンオキシドのpH値は、製品の種類、製品の保存状態や保存期間によっても異なるが、通常は7.0或いはそれ以上のものが多いが、pH値が7.0未満のポリアルキレングリコール(B)を配合することにより、成形時の割れの問題が大きく改善されることが見いだされた。
上述したように、市販のポリアルキレングリコールのpH値は、製品の種類や保存状態、保存期間によって異なり、また保存状態や期間によっては、分解或いは劣化等によりpH値が変化することもある。
【0046】
本発明に用いるポリアルキレングリコールは、JIS K1557−5に準拠して測定されるpHが7.0未満のポリアルキレングリコール(B)である。なお、本発明において、pH値は、JIS K1557−5(2007)の6.4.3〜6.4.4に記載の方法に準拠して測定される値である。
ポリアルキレングリコール(B)のpH値は、好ましくは6.9以下、より好ましくは6.8以下、さらに好ましくは6.7以下、特に6.6以下であることが好ましく、また、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.5以上、さらに好ましくは4.0以上、中でも4.2以上、特に4.3以上であることが好ましい。
【0047】
ポリアルキレングリコール(B)としては、pH値が7.0未満のものであれば特に制限はないが、pHが7.0以上であるポリアルキレングリコールを、7.0未満、好ましくはpH3.0以上7.0未満に調整したポリアルキレングリコール(B)を用いることが好ましい。また、製造時にpHを調整して7.0未満、好ましくはpH3.0以上7.0未満に調整したポリアルキレングリコール使用してもよく、市販されている各種のポリアルキレングリコールのpH値を測定管理してpH値が7.0未満、好ましくはpH3.0以上7.0未満であるものを使用することも好ましい。
pHが7.0以上であるポリアルキレングリコールを、7.0未満に調整するには、各種のpH調整法で可能であるが、例えば、ポリアルキレングリコールを溶液(例えば2−プロパノールと水の混合溶液)に溶解させ、塩酸を所定量加えてpHを調整した後、溶液を減圧して溶媒を除去し、さらに乾燥させることにより、pHが調整されたポリアルキレングリコールを得ることができる。
【0048】
ポリアルキレングリコール自体には制限はなく、各種のポリアルキレングリコールが使用でき、例えば、下記一般式(1)で表される分岐型ポリアルキレングリコール又は下記一般式(2)で表される直鎖型ポリアルキレングリコールが好ましいものとして挙げられる。なお、下記一般式(1)で表される分岐型ポリアルキレングリコール又は下記一般式(2)で表される直鎖型ポリアルキレングリコールは、他の共重合成分との共重合体であってもよいが、単独重合体であることが好ましい。
【0049】
【化1】
(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示し、XおよびYは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜23の脂肪族アシル基、炭素数1〜23のアルキル基、炭素数6〜22のアリール基又は炭素数7〜23のアラルキル基を示し、mは10〜400の整数を示す。)
上記一般式(1)で表される分岐型ポリアルキレングリコールは、一種のRからなる単独重合体でも、また異なるRからなる共重合体であってもよい。
【0050】
【化2】
(式中、X及びYは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数2〜23の脂肪族アシル基、炭素数1〜23のアルキル基、炭素数6〜22のアリール基又は炭素数7〜23のアラルキル基を示し、pは2〜6の整数、rは6〜100の整数を示す。)
上記一般式(2)で表される直鎖型ポリアルキレングリコールは、一種のpからなる単独重合体でも、また異なるpからなる共重合体であってもよい。
【0051】
分岐型ポリアルキレングリコールとしては、一般式(1)中、X、Yが水素原子で、Rがメチル基である(2−メチル)エチレングリコール(別称:プロピレングリコール)やエチル基である(2−エチル)エチレングリコール(別称:ブチレングリコール)が好ましい。
【0052】
直鎖型ポリアルキレングリコールとしては、一般式(2)中のX及びYが水素原子で、pが2であるポリエチレングリコール、pが3であるポリトリメチレングリコール、pが4であるポリテトラメチレングリコール、pが5であるポリペンタメチレングリコール、pが6であるポリヘキサメチレングリコールが好ましく挙げられ、より好ましくはポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールである。
【0053】
ポリアルキレングリコールとしては、下記一般式(3)で表される直鎖アルキレンエーテル単位(P1)と下記一般式(4−1)〜(4−4)で表される単位から選ばれる分岐アルキレンエーテル単位(P2)を有するポリアルキレングリコール共重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0054】
【化3】
(式(3)中、pは2〜6の整数を示す。)
一般式(3)で表される直鎖アルキレンエーテル単位としては、一種のpからなる単独の単位でも、また異なるpからなる複数の単位が混合していてもよい。
【0055】
【化4】
(式(4−1)〜(4−4)中、R〜R10は各々独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、それぞれの式(4−1)〜(4−4)において、R〜R10の少なくとも1つは炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0056】
上記一般式(3)で示される直鎖アルキレンエーテル単位(P1)としては、それをグリコールとして記載すると、pが2であるエチレングリコール、pが3であるトリメチレングリコール、pが4であるテトラメチレングリコール、pが5のペンタメチレングリコール、pが6のヘキサメチレングリコールが挙げられ、これらが混合していてもよく、好ましくはトリメチレングリコール、テトラメチレングリコールであり、テトラメチレングリコールが特に好ましい。
【0057】
トリメチレングリコールは、工業的にはエチレンオキシドのヒドロホルミル化により3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを得、これを水添する方法、又はアクロレインを水和して得た3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドをNi触媒で水素化する方法で製造される。また、最近ではバイオ法により、グリセリン、グルコース、澱粉等を微生物に還元させてトリメチレングリコールを製造することも行われている。
【0058】
上記一般式(4−1)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(2−メチル)エチレングリコール、(2−エチル)エチレングリコール、(2,2−ジメチル)エチレングリコールなどが挙げられ、これらが混合していてもよく、好ましくは(2−メチル)エチレングリコール、(2−エチル)エチレングリコールである。
【0059】
上記一般式(4−2)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(2−メチル)トリメチレングリコール、(3−メチル)トリメチレングリコール、(2−エチル)トリメチレングリコール、(3−エチル)トリエチレングリコール、(2,2−ジメチル)トリメチレングリコール、(2,2−メチルエチル)トリメチレングリコール、(2,2−ジエチル)トリメチレングリコール(即ち、ネオペンチルグリコール)、(3,3−ジメチル)トリメチレングリコール、(3,3−メチルエチル)トリメチレングリコール、(3,3−ジエチル)トリメチレングリコールなどが挙げられ、これらが混合していてもよい。
【0060】
上記一般式(4−3)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(3−メチル)テトラメチレングリコール、(4−メチル)テトラメチレングリコール、(3−エチル)テトラメチレングリコール、(4−エチル)テトラメチレングリコール、(3,3−ジメチル)テトラメチレングリコール、(3,3−メチルエチル)テトラメチレングリコール、(3,3−ジエチル)テトラメチレングリコール、(4,4−ジメチル)テトラメチレングリコール、(4,4−メチルエチル)テトラメチレングリコール、(4,4−ジエチル)テトラメチレングリコールなどが挙げられ、これらが混合していてもよく、(3−メチル)テトラメチレングリコールが好ましい。
【0061】
上記一般式(4−4)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(3−メチル)ペンタメチレングリコール、(4−メチル)ペンタメチレングリコール、(5−メチル)ペンタメチレングリコール、(3−エチル)ペンタメチレングリコール、(4−エチル)ペンタメチレングリコール、(5−エチル)ペンタメチレングリコール、(3,3−ジメチル)ペンタメチレングリコール、(3,3−メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(3,3−ジエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4−ジメチル)ペンタメチレングリコール、(4,4−メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4−ジエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5−ジメチル)ペンタメチレングリコール、(5,5−メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5−ジエチル)ペンタメチレングリコールなどが挙げられ、これらが混合していてもよい。
【0062】
以上、分岐アルキレンエーテル単位を構成する一般式(4−1)〜(4−4)で表される単位を、便宜的にグリコールを例として記載したが、これらグリコールに限らず、これらのアルキレンオキシドや、これらのポリエーテル形成性誘導体であってもよい。
【0063】
ポリアルキレングリコール共重合体として好ましいものを挙げると、テトラメチレンエーテル単位と前記一般式(4−3)で表される単位からなる共重合体が好ましく、特にテトラメチレンエーテル単位と3−メチルテトラメチレンエーテル単位からなる共重合体がより好ましい。また、テトラメチレンエーテル単位と前記一般式(4−1)で表される単位からなる共重合体も好ましく、特にテトラメチレンエーテル単位と2−メチルエチレンエーテル単位からなる共重合体、及びテトラメチレンエーテル単位と2−エチルエチレンエーテル単位からなる共重合体がより好ましい。さらに、テトラメチレンエーテル単位と前記一般式(4−2)からなる共重合体も好ましく、2,2−ジメチルトリメチレンエーテル単位、即ちネオペンチルグリコールエーテル単位からなる共重合体も好ましい。
【0064】
ポリアルキレングリコール共重合体は、ランダム共重合体やブロック共重合体であってもよい。
【0065】
ポリアルキレングリコール共重合体の前記一般式(3)で表される直鎖アルキレンエーテル単位(P1)と前記一般式(4−1)〜(4−4)で表される分岐アルキレンエーテル単位(P2)の共重合比率は、(P1)/(P2)のモル比で、好ましくは95/5〜5/95であり、より好ましくは93/7〜40/60であり、更に好ましくは90/10〜65/35であり、直鎖アルキレンエーテル単位(P1)がリッチであることがより好ましい。
なお、モル分率は、H−NMR測定装置を用い、重水素化クロロホルムを溶媒として測定される。
【0066】
上記した中でも、特に好ましいポリアルキレングリコールとしては、ポリトリメチレングリコール、ポリ(2−メチル)エチレングリコール、ポリ(2−エチル)エチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の単独重合体、ポリテトラメチレングリコール−ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール−ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール−ポリ(2−メチル)エチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール−ポリ(3−メチル)テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール−ポリ(2−エチル)エチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール−ポリネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール−ポリトリメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリ(2−メチル)エチレングリコール等の共重合体等が挙げられる。
【0067】
また、ポリアルキレングリコールとしては、その片末端あるいは両末端がカルボン酸またはアルコールで封鎖されていてもその性能発現に影響はなく、エステル化物またはエーテル化物を同様に使用することができ、従って、一般式(1)、(2)中のX及び/又はYは炭素数2〜23の脂肪族アシル基、炭素数1〜23のアルキル基、炭素数6〜22のアリール基又は炭素数7〜23のアラルキル基であってもよい。
【0068】
上記エステル化物としては、脂肪酸エステルが挙げられ、直鎖状又は分岐状脂肪酸エステルのいずれも使用でき、脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく不飽和脂肪酸であってもよい。また、一部の水素原子がヒドロキシル基などの置換基で置換されたものも使用できる。
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数1〜23の1価又は2価の脂肪酸、例えば、1価の飽和脂肪酸、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸や、1価の不飽和脂肪酸、具体的には、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸、また炭素数10以上の二価の脂肪酸、具体的には、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸及びデセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸が挙げられる。
これらの脂肪酸は1種又は2種以上組み合せて使用できる。前記脂肪酸には、1つ又は複数のヒドロキシル基を分子内に有する脂肪酸も含まれる。
【0069】
ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、一般式(1)において、Rがメチル基、X及びYが炭素数18の脂肪族アシル基であるポリプロピレングリコールステアレート、Rがメチル基、X及びYが炭素数22の脂肪族アシル基であるポリプロピレングリコールベヘネートが挙げられる。直鎖型ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、ポリアルキレングリコールモノパルミチン酸エステル、ポリアルキレングリコールジパルミチン酸エステル、ポリアルキレングリコールモノステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコールジステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコール(モノパルミチン酸・モノステアリン酸)エステル、ポリアルキレングリコールベヘネート等が挙げられる。
【0070】
ポリアルキレングリコールのアルキルエーテルを構成するアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基等の炭素数1〜23のアルキル基が挙げられ、このようなポリアルキレングリコールとしては、ポリアルキレングリコールのアルキルメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ラウリルエーテル、ステアリルエーテル等が好ましく例示できる。
【0071】
ポリアルキレングリコールのアリールエーテルを構成するアリール基としては、好ましくは炭素数6〜22、より好ましくは炭素数6〜12、さらに好ましくは炭素数6〜10のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基、トリル基等が好ましい。また、末端封止する基は、アラルキル基であってもポリカーボネートと良好な相溶性を示すことから、アリール基と同様の作用を発現でき、アラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜23、より好ましくは炭素数7〜13、さらに好ましくは炭素数7〜11のアラルキル基が好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられ、ベンジル基が特に好ましい。
【0072】
ポリアルキレングリコール(B)の数平均分子量は、500〜5000であることが好ましく、より好ましくは600以上、さらに好ましくは700以上であり、より好ましくは4000以下、さらに好ましくは3000以下、特に好ましくは2000以下である。上記範囲の上限を超えると、相溶性が低下するので好ましくなく、又上記範囲の下限を下回ると成形時にガスが発生しやすいので好ましくない。
なお、ポリアルキレングリコールの数平均分子量はJIS K1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出される数平均分子量である。
【0073】
ポリアルキレングリコール(B)は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0074】
ポリアルキレングリコール(B)の含有量は、前記したようにポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.1〜4質量部含有であるが、好ましくは0.15質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.25質量部以上であり、好ましくは3.5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2.5質量部以下、中でも2質量部以下、とりわけ1.5質量部以下、特に1質量部以下であることが好ましい。
【0075】
[リン系安定剤(C)]
本発明の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物は、リン系安定剤を含有する。リン系安定剤を含有することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の色相がさらに良好なものとなり、そして、さらに耐熱変色性が向上する。
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族又は第2B族金属のリン酸塩;ホスフェート化合物、ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物などが挙げられるが、ホスファイト化合物が特に好ましい。ホスファイト化合物を選択することで、より高い耐変色性と連続生産性を有するポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
【0076】
ここでホスファイト化合物は、一般式:P(OR)で表される3価のリン化合物であり、Rは、1価又は2価の有機基を表す。
このようなホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジホスファイト、6−[3−(3−tert−ブチル−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン等が挙げられる。
【0077】
このようなホスファイト化合物の中でも、下記式(5)または(6)で表される芳香族ホスファイト化合物が、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の耐熱変色性が効果的に高まるため、より好ましい。
【0078】
【化5】
(式中、R、R及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数6以上30以下のアリール基を表す。)
【0079】
【化6】
(式中、R及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数6以上30以下のアリール基を表す。)
【0080】
上記式(5)で表されるホスファイト化合物としては、中でもトリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト等が好ましく、中でもトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトがより好ましい。このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、住友化学社製「スミライザーTNP」、城北化学工業社製「JP−351」、ADEKA社製「アデカスタブ2112」、BASF社製「イルガフォス168」、城北化学工業社製「JP−650」等が挙げられる。
【0081】
上記式(6)で表されるホスファイト化合物としては、中でもビス(2,4−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトのようなペンタエリスリトールジホスファイト構造を有するものが特に好ましい。このような、有機ホ スファイト化合物としては、具体的には例えば、アデカ社製「アデカスタブPEP−24G」、「アデカスタブPEP−36」、Doverchemical社製「Doverphos S−9228」等が好ましく挙げられる。
【0082】
ホスファイト化合物の中でも、上記式(6)で表される芳香族ホスファイト化合物が、色相がより優れるため、より好ましい。
なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0083】
リン系安定剤(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.005〜0.5質量部であり、好ましくは0.007質量部以上、より好ましくは0.008質量部以上、特に好ましくは0.01質量部以上であり、また、好ましくは0.4質量以下、より好ましくは0.3質量部以下、さらに好ましくは0.2質量部以下、特には0.1質量部以下である。リン系安定剤(C)の含有量が、0.005質量部未満の場合は、色相、耐熱変色性が不十分となり、0.5質量部を超える場合は、耐熱変色性がかえって悪化するだけでなく、湿熱安定性も低下する。
【0084】
[エポキシ化合物]
本発明の樹脂組成物はエポキシ化合物を含有することも好ましい。エポキシ化合物をポリアルキレングリコール(B)及びリン系安定剤(C)と併せて含有することで耐熱変色性をより向上させることができる。
【0085】
エポキシ化合物としては、1分子中にエポキシ基を1個以上有する化合物が用いられる。具体的には、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、2,3−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4−(3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシル)ブチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチレンオキシド、シクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6’−メチルシロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール−Aグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、ビス−エポキシジシクロペンタジエニルエーテル、ビス−エポキシエチレングリコール、ビス−エポキシシクロヘキシルアジペート、ブタジエンジエポキシド、テトラフェニルエチレンエポキシド、オクチルエポキシタレート、エポキシ化ポリブタジエン、3,4−ジメチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、3,5−ジメチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、3−メチル−5−t−ブチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、オクタデシル−2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N−ブチル−2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシル−2−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N−ブチル−2−イソプロピル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、オクタデシル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2−エチルヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,6−ジメチル−2,3−エポキシシクロヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、3−t−ブチル−4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、ジエチル4,5−エポキシ−シス−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート、ジ−n−ブチル−3−t−ブチル−4,5−エポキシ−シス−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などを好ましく例示することができる。
エポキシ化合物は、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0086】
これらのうち、脂環族エポキシ化合物が好ましく用いられ、特に、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートが好ましい。
【0087】
エポキシ化合物の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.0005〜0.2質量部であり、より好ましくは0.001質量部以上、さらに好ましくは0.003質量部以上、特に好ましくは0.005質量部以上であり、また、より好ましくは0.15質量以下、さらに好ましくは0.1質量部以下、特に好ましくは0.05質量部以下である。
【0088】
[添加剤等]
本発明の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物は、上記した以外のその他の添加剤、例えば、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、顔料、染料、ポリカーボネート樹脂以外の他のポリマー、難燃剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、可塑剤、相溶化剤などの添加剤を含有することができる。これらの添加剤は一種又は二種以上を配合してもよい。
【0089】
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法自体に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(A)、ポリアルキレングリコール(B)及びリン系安定剤(C)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
【0090】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記したポリカーボネート樹脂組成物をペレタイズしたペレットを各種の成形法で成形して各種成形品を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して成形品にすることもできる。
【0091】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、良好な色相と成形時の割れ耐性を有し、流動性に優れ高い光線透過率を示すことから、射出成形法により、光学部品、特に薄肉の光学部品を成形するのに好適に用いられる。射出成形の際の樹脂温度は、特に薄肉の成形品の場合には、一般にポリカーボネート樹脂の射出成形に適用される温度である260〜300℃よりも高い樹脂温度にて成形することが好ましく、305〜400℃の樹脂温度が好ましい。樹脂温度は310℃以上であるのがより好ましく、315℃以上がさらに好ましく、320℃以上が特に好ましく、また390℃以下がより好ましい。従来のポリカーボネート樹脂組成物を用いた場合には、薄肉成形品を成形するために成形時の樹脂温度を高めると、成形品の黄変が生じやすくなるという問題もあったが、本発明の樹脂組成物を使用することで、上記の温度範囲であっても、良好な色相を有する成形品、特に薄肉の光学部品を製造することが可能となる。また、薄肉成形品を成形するためにポリカーボネート樹脂の分子量を下げることも従来から行われているが、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は流動性が良好なので、分子量を下げずとも薄肉成形が可能なので、より強度の高い成形品とすることが可能となる。
なお、樹脂温度は、直接測定することが困難な場合はバレル設定温度として把握される。
【0092】
ここで、薄肉成形品とは、肉厚が通常1mm以下、好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.6mm以下の板状部を有する成形品をいう。ここで、板状部は、平板であっても曲板状になっていてもよく、平坦な表面であっても、表面に凹凸等を有してもよく、また断面は傾斜面を有していたり、楔型断面等であってもよい。
【0093】
光学部品としては、LED、有機EL、白熱電球、蛍光ランプ、陰極管等の光源を直接又は間接に利用する機器・器具の部品が挙げられる。
本発明の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物を用いた光学部品は、液晶バックライトユニットや各種の表示装置、照明装置の分野で好適に使用できる。このような装置の例としては、携帯電話、モバイルノート、ネットブック、スレートPC、タブレットPC、スマートフォン、タブレット型端末等の各種携帯端末、カメラ、時計、ノートパソコン、各種ディスプレイ、照明機器等が挙げられる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例を示して本発明について、更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
以下の実施例及び比較例で使用した原料及び評価方法は次の通りである。
【0095】
【表1】
【0096】
上記表中のポリアルキレングリコール(B1)〜(B3)は、上記の原料ポリアルキレングリコールを以下の酸処理によって得たpH調整品である。
各原料ポリアルキレングリコールを、2−プロパノール:水=10:6(容量比)の混合溶液に溶解したものに、0.01mol/Lの塩酸を必要量加えてpHを調整した。得られた溶液を60℃で減圧処理にて溶媒を除去し、さらに120℃で10時間乾燥させることにより、pHが調整されたポリアルキレングリコールを得た。
【0097】
(実施例1〜7、比較例1〜2)
[樹脂組成物ペレットの製造]
表1に記載した各成分を、以下の表2に記した割合(質量部)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、スクリュー径40mmのベント付単軸押出機(田辺プラスチック機械社製「VS−40」)により、シリンダー温度240℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
【0098】
[色相(YI)の測定]
得られたペレットを120℃で5〜7時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製「EC100SX−2A」)により、樹脂温度340℃、金型温度80℃で、長光路成形品(300mm×7mm×4mm)を成形した。
この長光路成形品について、300mmの光路長でYI(黄変度)の測定を行った。測定には長光路分光透過色計(日本電色工業社製「ASA 1」、C光源、2°視野)を使用した。
【0099】
[成形品割れ発生率(単位:%)]
得られたペレットを120℃で5〜7時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(Sodick社製「HSP100A」)により、樹脂温度380℃、金型温度60℃で、112mm×61mm×0.4mmの成形品を100枚成形した。成形時にクラックの発生した成形品の枚数をカウントし、割れ発生率(%)を算出した。
以上の評価結果を以下の表2に示す。
【0100】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物は、良好な色相と成形時の割れの問題が改善されたポリカーボネート樹脂材料であるので、各種光学部品等に好適に利用することができる。