(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記装置本体部は、メガネ型であって、当該取り込む部分として生体信号を処理する生体信号処理部を有し、当該弾性支持部の接続された箇所から前記生体信号処理部まで生体信号を伝える本体導電路を備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の生体信号取得装置。
前記装置本体部はメガネ型であって、当該生体信号を取り込む部分は、前記装置本体部の左右のつるに相当する位置にそれぞれ設けられており、2つの当該取り込む部分の重量が略同等に設定されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の生体信号取得装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
[生体信号取得装置]
図1は、本発明による生体信号取得装置の一実施形態を示す模式図である。
【0023】
図1(A)及び
図1(B)には、本発明による生体信号取得装置の一実施形態としての筋電センサ付メガネ1が示されている。ここで、両図はそれぞれ、筋電センサ付メガネ1の斜視図及び上面図となっている。
【0024】
筋電センサ付メガネ1は、生体(例えば人であるユーザ)の頭部に取り付けて、生体信号を取得可能なメガネ型の装置である。この取得される生体信号は、本実施形態において、顔面内部位の動き又は表情に係る動きに起因して発生する電気信号であり、「筋電信号」や当該動きによって発生する「電極ズレに起因する(ノイズ)信号」等を含む。ここで、顔面内部位の動き又は表情に係る動きとしては、例えば1つの好適例として、(微笑に係る)口角上げ、噛み締め(若しくは食い縛り)、咀嚼、及び瞬目(瞬き動作)のうちの少なくとも1つを設定することができる。
【0025】
この筋電センサ付メガネ1は、
(A)生体信号を取り込む部分(
図1(A)及び(B)では信号処理ボックス18)を有する装置本体部としての「フレーム部11」と、
(B)頭部の皮膚に接触する位置であって「フレーム部11」の重量の少なくとも一部を受け止め可能な位置に配された、生体信号を受信するための少なくとも1つの電極部としての「プラス電極パッド141」及び「マイナス電極パッド142」と、
(C1)「プラス電極パッド141」及び「マイナス電極パッド142」を介して受信された生体信号を当該取り込む部分(信号処理ボックス18)へ伝えるための導電路を備えた「弾性支持部12」であって、
(C2)「フレーム部11」と「プラス電極パッド141」及び「マイナス電極パッド142」とを、弾性をもって接続する少なくとも1つ(
図1(A)及び(B)では2つ)の「弾性支持部12」と
を有することを特徴としている。
【0026】
このように、筋電センサ付メガネ1では、「プラス電極パッド141」及び「マイナス電極パッド142」といった「電極部」が、生体信号を受信する手段としてだけではなく、装置本体部を支持する手段としても機能している。また、「弾性支持部12」は、弾性をもってこれら「電極部」と装置本体部とを接続している。その結果、例えば装着された頭部が大きく動いたとしても、これらの「電極部」を、「弾性支持部12」という弾性部位を介して伝わる装置本体部の重量をもって、頭部の皮膚の所定位置近傍に安定して接触させ続けることが可能となる。ここで、1つの装着例を説明する。ヒトの頬骨は顔の正面から見ると横に張り出しているが、「電極部」を、例えばこの頬骨の最も幅広の箇所より若干上方の皮膚に当接させれば、左右の「電極部」の間隔が頬骨の最大幅よりも狭くなっていて頬骨上部の広がった部分に引っ掛かることになるので、これにより、筋電センサ付メガネ1が安定して支持される。
【0027】
さらに、顔面の動きがあっても、「弾性支持部12」の弾性と筋電センサ付メガネ1の重量によって、「電極部」のズレが生じにくく、また、顔面の動きにより「電極部」が上方に浮くようにずれた際にも、ずれたままにならず元の位置へ回復する。これにより、筋電センサ付メガネ1は、取得対象となる生体信号を安定して(安定的に)検出することができるのである。例えば、本筋電センサ付メガネ1によれば、電極ズレによって生じる(ノイズ)信号を、所定の動作に関連する生体信号の1つとして安定的に且つ確実に検出することも可能となる。この場合の1つの好適例として、頭部での動作のうち、「口角上げ」や「食い縛り」は、取得された筋電信号の周波数成分の差異から判定・分析され、「咀嚼」や「瞬目」は、この「電極ズレに起因する(ノイズ)信号」の発生パターンと「食い縛り」の筋電信号に基づいて判定・分析処理されてもよい。
【0028】
また、筋電センサ付メガネ1では、「電極部」から装置本体部へ生体信号を取り込むための導電路(導電路191及び192)を用いることで、「電極部」で受信された生体信号を、当該取り込む部分(信号処理ボックス18)へ安定して確実に取り込むことを可能にする。すなわち、導電路は、例えば左右の信号処理ボックス18と各「電極部」との間をつなぐ安定した電気的伝送路として機能する。なお、「電極部」で受信された生体信号を伝搬させるこのような導電路としては、外的ノイズの混入を軽減させるべく、シールド線を採用することも好ましい。
【0029】
さらに、筋電センサ付メガネ1は、
図1(A)及び(B)に示すように、
(D)鼻の上部近傍に接触する位置に配され、生体信号受信の際のグランド(GND)電極又はノイズキャンセル用電極を備えた鼻パッド電極部143
を更に有することも好ましい。ここで、ノイズキャンセル用電極は、商用電源等に起因するコモンモードノイズを低減させるDRL(Driven Right Leg)電極とすることができる。
【0030】
また、この鼻パッド電極部143と、対となるもう1つのパッドとをもって、通常のメガネのいわゆる2つの鼻パッドとして機能させることも好ましい。さらに、このもう1つのパッドを共に鼻パッド電極部143としてもよい。さらに、鼻パッド電極部143(及び対となるもう1つのパッド)は、クリングス箱部121’を介し弾性支持部12’によってフレーム部11に接続されていることも好ましい。ここで、弾性支持部12’は「弾性支持部12」と同様の構造・機能を有するものとすることができる。
【0031】
なお、変更態様として、GND電極又はノイズキャンセル用電極としての機能を、後述するようにモダン部15に持たせることもできる。この場合、鼻パッド電極部143及びもう1つのパッドを省略し、鼻パッドレスとすることも可能となる。ちなみに、このような鼻パッドレスの構造は、「プラス電極パッド141」及び「マイナス電極パッド142」によってフレーム部11が支持されている故に採用され得るのである。また、このように鼻パッドレスとすることによって、本筋電センサ付メガネ1の装着感を軽くし向上させることも可能となる。また、更なる変更態様として、モダン部15の電極と鼻パッド電極部143とを電気的に導通させ、それら複数の電極をGND電極として機能させることも可能である。
【0032】
同じく
図1(A)及び(B)によれば、筋電センサ付メガネ1は、さらに、
(E)位置調整部13
を有し、また、フレーム部11は、
(F)モダン部15
を有するが、これらの構成要素に関しては、のちに
図2(A)を用いて詳細に説明する。
【0033】
また、重要な構成要素である上記(B)の「プラス電極パッド141」及び「マイナス電極パッド142」は、「弾性支持部12」、位置調整部13及び導電路192を介して信号処理ボックス18へ電気的に接続されており、それぞれメガネにおける右のつる(テンプル)部分及び左のテンプル部分に接続する形で1つずつ設けられている。このうち、「プラス電極パッド141」は、生体信号受信の際の検出電極又はプラス電極として機能し、一方、「マイナス電極パッド142」は、生体信号受信の際のリファレンス電極又はマイナス電極として機能する。生体信号は、これら「プラス電極パッド141」と「マイナス電極パッド142」との間の電位差として検出・取得されることになる。
【0034】
なお当然に、「プラス電極パッド141」及び「マイナス電極パッド142」がそれぞれ左のテンプル部分及び右のテンプル部分に接続する入れ替わった形であっても構わない。いずれにしても、「プラス電極パッド141」及び「マイナス電極パッド142」を左右に分けて配置することによって、左右2つの筋肉活動を捉えることができる。顔表情「笑み」を作る筋肉活動は一般に、左右のいずれか一方ではなく両方で同時に発生する。そのため、1チャンネルを構成する1組の電極を左右のいずれか一方のみに配置するよりも、1組をなす電極の各々を左右に分けて配置する方が、左右の筋肉活動の全体を捉えることになるので結局、より安定した大きな筋電信号を得ることができるのである。また、このように左右の電極を離隔させておくことによって、例えば左右の眼球運動や歯の食い縛り(噛み締め)等の頭部内の筋肉活動に起因する様々な筋電信号や、さらには口の開閉や咀嚼に伴って生じる皮膚表面の凹凸を原因とする皮膚と電極との間の接触抵抗の変化等の種々の信号を、より確実に捉えることも可能となるのである。
【0035】
ちなみに、以上に説明した電極パッド141及び142のように、生体信号の検出のためには、検出とリファレンスの2つの電極が最低限必要となる。ただし、2つ以上の電極(例えば検出電極、リファレンス電極及びGND電極)を載せた1つの電極部(例えば電極パッド)を用いて生体信号を取得することも可能である。
【0036】
また、同じく重要な構成要素である「弾性支持部12」は、本実施形態において2つ設けられており、それぞれ「プラス電極パッド141」及び「マイナス電極パッド142」
を、こめかみより下側の皮膚の位置であって、顔を正面から見た際の頬骨における最も幅広の個所より少し上の皮膚の位置へ弾性をもって押し当て(当接させ)、これにより筋電センサ付メガネ1を支持する支持構造として機能している。また、「プラス電極パッド141」及び「マイナス電極パッド142」のいずれも、頬上部からこめかみを介し耳の付け根までの範囲内のいずれかの位置で皮膚に接触することができるように、この「弾性支持部12」は、位置調整部13によってフレーム部11(
図1(A)及び(B)ではテンプル部分)に接続されている。ちなみに、このような皮膚上の電極パッドの接触位置は、後に
図4〜6を用いて詳細に説明するように、良好な生体信号を取得するのに好適な位置となっている。
【0037】
また、「弾性支持部12」は本実施形態において、「プラス電極パッド141」及び「マイナス電極パッド142」のいずれをもクリングス箱部121を介して支持し、フレーム部11に接続している。このようにクリングス箱部121を介することによって、「プラス電極パッド141」及び「マイナス電極パッド142」のいずれもが、その向きを所定範囲内で自在に変化させ得るようになる。その結果、これらの電極パッドにおける皮膚との接触面が十分に確保され、生体信号を安定して確実に受信することができるのである。
【0038】
さらに、「弾性支持部12」は、チタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)、銅(Cu)、これらのうちの少なくとも1つを含む合金、又はステンレス合金等の金属アレルギーを比較的引き起こしにくい金属材で構成されており、この弾性支持部本体が弾性を備えた導電路となっていることも好ましい。または、「弾性支持部12」は、電極パッド(141又は142)とフレーム部11の導電部分(例えば位置調整部13)とを電気的に接続するケーブルを備えていてもよい。この場合、弾性支持部本体がパイプ状であって、このパイプ内にケーブルを収納することも好ましい。これにより、ケーブルの大部分が露出しないので不意の外力による破損を回避することができ外観も良好となる。また、パイプ状の弾性支持部本体が金属製であれば、導電路としてのケーブルを収めるパイプ状部分をGNDと導通させることによって、外的ノイズをシールドする効果も奏される。
【0039】
この「弾性支持部12」は、また、フレーム部11における自らの接続された箇所近傍(
図1(A)及び(B)ではテンプル部分)の弾性率よりも低い弾性率を有することも好ましい。このような弾性率の設定によって、実際に、頭部内の筋肉が様々に動く状況においても、皮膚(肌)に対する電極パッドの当接の具合が、それに合わせて安定し、ずれても直ちに元の位置に復帰することが確認されている。例えば、口角上げの筋肉が収縮することによってその周囲の皮膚は隆起するが、この際、電極の当接した位置の皮膚も隆起することがある。このような場合でも「弾性支持部12」は、この隆起による皮膚位置の変動分を、自らが有する弾性をもって変形することにより吸収し、各電極部を皮膚に安定して当接させるのである。
【0040】
ちなみに、このような弾性率調整の一例として、金属部(導電路)を芯とした樹脂製のフレーム部11に対し、「弾性支持部12」を、比較的細い径の金属材(例えば径0.8mm程度のチタン線材)で形成してもよい。この場合、この「弾性支持部12」は、いわゆるテンプル部分よりも柔らかくなっているので、装置装着の際、皮膚を極度に締め付けて圧迫してしまうことなく適度に曲がり、これによりフィッティングの程度を向上させる。
【0041】
なお、「弾性支持部12」の形状は当然に、
図1(A)及び(B)に示されたものに限定されるものではなく、例えば一部迂回するように伸長した形状や、らせん状等、種々の形状にすることができる。
【0042】
同じく
図1(A)及び(B)に示すように、生体信号を取り込む部分としての信号処理ボックス18は、本実施形態として、処理部駆動用の電池(
図8)及び生体信号処理部180(
図8)を有している。この生体信号処理部180については後に
図8を用いて詳細に説明する。ちなみに、変更態様として、当該取り込む部分としての電池や生体信号処理部180を、ボックスにではなくフレーム部11に内蔵させ、筋電センサ付メガネ1全体を、外観上通常のメガネと大きく変わらないデザインにしてもよい。このような処理部のコンパクト化は、後に
図8を用いて詳述する実施形態の生体信号処理部180を用いることによって可能となっている。
【0043】
また、上述したように、「プラス電極パッド141」及び「マイナス電極パッド142」が頬上部からこめかみを介し耳の付け根までの範囲内の位置で皮膚に接触している場合、取得可能な生体信号は、筋電信号に限定されるものではない。例えば、耳付近の位置から検知可能である眼電位信号や脳波といった生体電位に基づく生体信号の他、生体用電位センサ以外のセンサデバイスが必要となるが体温や発汗に係る信号や脈波等を検出し取得することも可能となっている。
【0044】
また、「プラス電極パッド141」及び「マイナス電極パッド142」や「鼻パッド電極部143」を、通常のメガネで使用されるパッドと互換性のある形状や取り付け構造を有するものとし、筋電センサ付メガネ1を、通常のメガネをベースにして又は改造して作製してもよい。いずれにしても、本実施形態におけるこれらの電極パッドは、通常のメガネのパッドと同じくフレームを支える支持台としての機能と、生体信号を取得する電極部としての機能とを併せ持っているのである。
【0045】
図2は、筋電センサ付メガネ1における信号処理ボックス18近傍の構造の一実施形態を概略的に示す模式図である。
【0046】
図2によれば、信号処理ボックス18の近傍であってフレーム部11の内側に、
(E)弾性支持部12の一端(根元)が固定されたスライダ部131と、スライダ部131をスライド可能な形で保持するガイド部132とを有し、プラス電極パッド141のフレーム部11に対する相対位置を調整可能な位置調整部13
が設けられている。
【0047】
この位置調整部13は、
図2に示したフレーム部11の右側のテンプル部分だけではなく、フレーム部11の左側のテンプル部分にも設けられており、マイナス電極パッド142のフレーム部11に対する相対位置も調整可能となっていることも好ましい。この場合、以下に説明するプラス電極パッド141に係る構成は当然に、マイナス電極パッド142についても採用可能な構成となっている。
【0048】
また、位置調整部13は、プラス電極パッド141の電極から弾性支持部12を介して伝播してきた生体信号を、導電路192を介して信号処理ボックス18へ伝える仲介導電路としても機能する。具体的には例えば、スライダ部131もガイド部132も共に導電性を有する金属で形成されていて、スライダ部131と弾性支持部12とはろう付け等によって電気的に接続される形で結合され、ガイド部132と導電路192とも半田付け等によって電気的に接続される形で結合されていてもよい。なお、導電路192も、外的ノイズの混入を軽減させるべく、シールドされていることも好ましい。
【0049】
なお、変更態様として、プラス電極パッド141の電極と弾性支持部12とを金属材を用いて一体に形成することも可能である。また、更にスライダ部131も含めて一体に形成してもよい。さらに、位置調整部13を用いない形態とはなるが、電極と弾性支持部12との一体物を、導電路192と電気的に接続されたフレーム部11の取り付け金具に取り付ける形態とすることもできる。さらには、電極と弾性支持部12と導電路192とを金属材を用いて一体に形成し、この一体物を、信号処理ボックス18と電気的に接続するようにフレーム部11へ取り付けてもよい。
【0050】
また、位置調整部13の構造も当然に、スライダ部131とガイド部132とを有する上記の構造に限定されるものではない。例えば、スライド部が、フレーム部11のテンプル部分と同様に伸長したレール上を、当該レールをグリップしながらスライドする構造であってもよい。
【0051】
同じく
図2によれば、フレーム部11には、さらに、
(F)電極パッド141(及び
図1の電極パッド142)の皮膚に対するズレに起因して発生する信号を安定して取得するための、少なくとも耳の付け根に当接するモダン部
としての取り付けモダン部151が設けられている。なお、このモダン部として、
図1(A)及び(B)に示したようなフレーム部11のテンプル部分と固着された(又は一体に形成された)モダン部15を用いてもよいが、本実施形態では、フレーム部11のテンプル部分に対し例えばネジによって取り付けられた脱着可能な取り付けモダン部151が採用されている。
【0052】
取り付けモダン部151は、フレーム部11における左右のテンプル部分のそれぞれに取り付けられていて、耳や頭の形に沿うように内側に湾曲させることが可能な皮膚にフィットし易い樹脂等の素材で形成されていて、少なくとも耳の付け根に当接し、ユーザの頭部を挟み込むように装着されることで、筋電センサ付メガネ1の装着状態を安定させる役割を果たす。
【0053】
これにより、取り付けモダン部151は、弾性支持部12による付勢によって電極パッド(141及び142)に不要なズレが生じることのないようにしているのである。さらに、例えば頭部の筋肉の動きによって電極パッドの皮膚に対するズレが発生した際、このズレが不意に若しくは不要に大きくなることを抑え、当該筋肉の動きに対応する信号を安定して再現性良く(即ち確実に且つ同程度に)受信することを可能にしている。なお、このような装着によってもメガネ1が前方にずれてしまう場合、一般のメガネと同様に左右のモダン部151同士を、例えば伸縮バンドでつないで頭部に固定することも可能である。
【0054】
また、取り付けモダン部151は、鼻パッド電極部143(
図1(A)及び(B))に代えて又は合わせて、生体信号受信の際のGND電極又はノイズキャンセル用電極となるモダン電極151aを備えていることも好ましい。このモダン電極151aは、導電路151b及び取り付けネジ部151cを介し、さらにフレーム部11の導電路193を介して信号処理ボックス18に電気的に接続されることができる。また、モダン電極151aも、取り付けモダン部151の本体に合わせて湾曲可能であり、皮膚にフィットし易いようになっていることも好ましい。ここで、モダン電極151aは、導電性が高く金属アレルギーを比較的引き起こしにくい金属材で形成することができ、例えば、金、白金、又はこれらの少なくとも1つを含む合金等を、取り付けモダン部151の接触部位にめっきして形成してもよく、または、チタン、金、白金、銅、これらの少なくとも1つを含む合金、又はステンレス合金等の箔体を、取り付けモダン部151の接触部位に貼付することによって形成してもよい。
【0055】
さらに、変更態様として、(取り付けネジ部151cを含めた)取り付けモダン部151全体を、チタン、金、白金、銅、これらの少なくとも1つを含む合金、又はステンレス合金等の導電性が高く金属アレルギーを比較的引き起こしにくい金属材で形成し、全体をGND電極又はノイズキャンセル用電極としてもよい。これは、GND電極又はノイズキャンセル用電極がフレーム部11と一体化した構造と捉えることもできる。これにより、取り付けモダン部151を湾曲させた際、弾性の差異に起因してモダン部本体と電極との間に隙間が生じてしまうといった問題を解消することができ、さらに、導電路151bのような特別の構造が不要となるのである。
【0056】
さらにまた、取り付けモダン部151において、取り付けネジ部151cの代わりにホゾが設けられ、一方、フレーム部11にこのホゾを受け入れる溝と、受け入れたホゾを固定するネジ止め構造とが設けられていてもよい。
【0057】
次に、プラス電極パッド141やマイナス電極パッド142、さらには鼻パッド電極部143(
図1(A)及び(B))の具体的構造について説明する。これらの電極パッドに係る最も簡易な構造として、電極パッド全体がチタン、金、白金、銅、これらの少なくとも1つを含む合金、又はステンレス合金等の導電性が高く金属アレルギーを比較的引き起こしにくい金属材で一体に形成されたものを用いることができる。さらに、電極パッド全体と弾性指示部12とがこのような金属材で一体に、すなわち1つの金具として形成されていてもよい。以下、さらに好適な電極パッドの他の実施形態について
図3を用いて詳細に説明する。
【0058】
図3は、プラス電極パッド141についての2つの実施形態の構造を概略的に示す模式図である。同図は、電極面に直交する断面による断面図となっている。なお、以下に説明する構造は、マイナス電極パッド142や、鼻パッド電極部143でも採用可能なものとなっている。
【0059】
図3(A)に示した実施形態のプラス電極パッド141は、チタン、金、白金、銅、これらの少なくとも1つを含む合金、又はステンレス合金等の金属製であってピアス型電極構造を備えた電極部である。具体的には、ピアス電極141aの針部を、導電ワッシャ141bを嵌めた上で、樹脂等の絶縁体製のパッド本体141cに設けられた差し込み孔へ挿入し、挿入後の当該針部をピアス留め141dで固定して、この固定部分を被覆シリコン141eで被覆し、被覆した不要部分を除去した構造となっている。
【0060】
このようにピアス電極141aを利用したプラス電極パッド141では、例えば、導電ワッシャ141bに対して(弾性支持部12に電気的に接続される)導電ケーブル141fを電気的に接続しておく(例えば半田付けしておく)ことによって、ピアス電極141aで受信した生体信号を信号処理ボックス18に確実に伝送することができる。
【0061】
また、変更態様として
図3(B)に示すように、導電ワッシャを用いず、導電ケーブル141fをピアス留め141dに電気的に接続してもよい。ここで、ピアス留め141dは、ピアス電極141aの構成金属と同じ金属製であってこの金属の弾性をもって、同じく金属製のピアス電極141aの針芯を挟み且つ押さえ込んで固定することができる。これにより、導電ケーブル141fとピアス電極141aとが導通することになる。またこのような構造の場合、ピアス留め141dにおける針芯を挟み込む機構を緩めてピアス電極141aを抜き取ることができるので、製造作業や故障時の部品交換作業が容易になるのである。また、ピアス電極141aの針芯に横溝を設け、ピアス留め141dの挟み込む機構がこの横溝を引っ掛けるようにすることで、ピアス電極141aを容易には外れないようにすることも好ましい。
【0062】
[生体信号取得の実施例]
図4は、計測対象である微笑時の口角上げに係る筋電信号を検出するのに適した電極配置を調査するべく行った、筋電センサ付メガネ1を用いた生体信号取得実験における電極配置を説明するための模式図及びテーブルである。
【0063】
図4(A)及び(B)によれば、ユーザの頭部に装着された筋電センサ付メガネ1における電極の位置として、0、左側の1、右側の1、左側の2、右側の2、左側の3、右側の3、左側の4、右側の4、左側のF、右側のF、左側のM、及び右側のM、の計13箇所が特定されている。ここで、0は鼻上部の位置、1はこめかみ位置、2は耳上部の位置、3は耳介後方の位置、4は耳たぶ後方の位置、Fは頬上部の位置、Mは耳前方の位置を示す。
【0064】
また、
図4(C)のテーブルには、上記の電極位置の表示を用いた、電極配置の表示例が示されている。ここで以下、電極配置は、プラス電極、マイナス電極及びGND電極の3種の電極の配置を意味する。同テーブルによれば、例えば、「(+)112」は、
(a)(表示が正値であるから)プラス電極とマイナス電極とが左右に関し互いに反対側となるように(本実施形態ではプラス電極が左側でマイナス電極が右側となるように)配置されており、
(b)(プラス電極の(左側の)位置を示す最初(1番目)の数値又は記号が「1」であることから)プラス電極が「左側の1」、すなわち左側のこめかみ位置に配されており、
(c)(マイナス電極の位置を示す2番目の数値又は記号が「1」であることから)マイナス電極が「プラス電極の反対側(右側)の1」、すなわち右側のこめかみ位置に配されており、
(d)(GND電極の位置を示す3番目の数値又は記号が「2」であることから)GND電極が「プラス電極と同じ側(左側)の2」、すなわち左側の耳上部の位置に配されている
といった電極配置を表している。
【0065】
また、同じく
図4(C)のテーブルに示した「−140」は、(表示が負値であるから)プラス及びマイナス電極が片側(本実施形態では左側)のみに配置されており、プラス電極が左側のこめかみ位置に、マイナス電極が左側の耳たぶ後方の位置に、さらにGND電極が鼻上部の位置に配された電極配置を示している。以下、電極配置については、以上に説明した表示を用いることとする。
【0066】
図5は、筋電センサ付メガネ1を用いた生体信号取得実験における生体信号の検出結果を示すグラフである。また、
図6は、
図5(B)の検出結果をまとめた箱ひげ図(ボックスプロット)である。
【0067】
ここで、本生体信号取得実験では、樹脂製のパッド本体にステンレス製の電極を設けたプラス、マイナス及びGND電極パッドを用いて、30通りの電極配置の下で筋電信号の検出を行い、信号処理ボックス18にNeurosky(ニューロスカイ)社製のセンサモジュールTGAM1を装備して、検出したアナログ信号を処理し、デジタル化された検出信号を、bluetooth(登録商標)を介してパーソナル・コンピュータ(PC)に取り込み、解析を実施した。筋電信号検出の際には、被験者が、無表情→微笑→無表情→微笑→無表情→微笑→無表情の順で顔面の筋肉を動かし、無表情及び微笑での筋電信号検出をそれぞれ3回実施して検出信号を取り込んだ。
【0068】
図5(A)には、検出の際の各電極配置と、微笑時にPCに取り込まれた検出信号における振幅の標準偏差との関係が示されている。また、
図5(B)には、検出の際の各電極配置と、微笑時にPCに取り込まれた検出信号における27〜40Hzの周波数帯でのパワー値との関係が示されている。
【0069】
これら両図によれば、微笑に対応する筋電信号(微笑信号)は、その振幅の標準偏差やパワーにおいて、プラス電極及びマイナス電極の少なくとも一方が、「1:こめかみ位置」、「F:頬上部の位置」及び「M:耳前方の位置」のうちのいずれかである場合に、無表情時に対応して筋電センサに混入する背景ノイズの値を超える十分に大きな値を示していることが分かる。より詳細には、プラス/マイナス電極位置が頬上部位置に近い位置であるほど微笑信号はより大きくなる傾向がみられる。また、この微笑信号は、GND電極の位置の影響をほとんど受けていないことも分かる。
【0070】
さらに、
図5(B)の結果を、プラス電極の位置及びマイナス電極の位置の一方又は両方として採用された電極位置毎に取りまとめたものが、
図6のボックスプロット(箱ひげ図)となる。同図においては、示されたボックス中のラインがデータの中央値(第2四分位数)、ボックスの下辺ラインがデータの第1四分位数、その上辺ラインが第3四分位数、ボックスにつながった下側の縦線の下端が最小値、上側の縦線の上端が最大値を示している。また、黒点は外れ値を示しており、この外れ値が存在する場合、上下の縦線端の示す最大値及び最小値は、この外れ値を除外した場合の値となっている。
【0071】
図6によれば、十分に大きなパワーの微笑信号は、「1:こめかみ位置」、「F:頬上部の位置」及び「M:耳前方の位置」のいずれかに係る電極配置によって取得されることが分かる。特に、「F:頬上部の位置」をプラス電極及びマイナス電極の少なくとも一方に含む電極配置によって、最も大きなパワーの微笑信号が取得されている。しかしながら、頭部に装着された筋電センサ付メガネ1において、実際により安定した良好な装着感をもたらす電極配置は、このうち「F:頬上部の位置」から「1:こめかみ位置」までの範囲内に電極を配したものとなる。
【0072】
以上に説明した実験結果から、筋電センサ付メガネ1(
図1(A)及び(B))におけるプラス電極パッド141及びプラス電極パッド142の皮膚への接触位置として、こめかみと頬上部との間の位置が非常に好適であることが理解される。なお当然に、プラス及びマイナス電極の配置として、頬上部位置や耳前方位置を採用することも、高い信号強度を得られる点から好ましいといえる。
【0073】
図7は、電極面に導電ゲル部を配する実施形態を説明するための模式図及びグラフである。
【0074】
図7(A)によれば、クリングス箱部121及び弾性支持部12を介して位置調整部13に接続されたプラス電極パッド141のピアス電極141aの電極面に、導電ゲル部としての導電ゲルシート141gが貼付されている。導電ゲルシート141gは、例えばマトリックスとなるポリマ中に電解質を保持した構造のゲル材で形成されたシートであり、導電性と皮膚に対する適当な粘着性とを有している。
【0075】
乾式電極であるピアス電極141aの電極面、すなわち皮膚に接触する面に、この導電ゲルシート141gを設けて湿式電極を構成することによって、(a)生体信号を皮膚から確実に受信し、さらに、(b)プラス電極パッド141の皮膚に対するズレに起因して発生するノイズを低減させることが可能となる。
【0076】
図7(B)及び(C)にそれぞれ、導電ゲルシート141gを用いない場合及び用いた場合の微笑信号を表した時間対振幅のグラフが示されている。
図7(B)のグラフに示すように、導電ゲルシート141gを用いない(電極面が皮膚に直接接触している)場合、通常、皮膚に対する電極ズレによって生じるバイアス変動に係るノイズが、微笑信号の前後に発生していることが分かる。これに対し、
図7(C)のグラフに示すように、導電ゲルシート141gを用いた場合、ゲルによる粘着力により電極ズレが抑制されて、このようなノイズが概ね完全に除去されていることが理解される。
【0077】
このように、電極ズレに係る不要なノイズを除去することのできる導電ゲルシート141gであるが、ノイズ低減・除去効果を奏する導電ゲル部は、このようにゲルシートの形態に限定されるものではなく、例えば電極面に塗布されたゲル層であってもよい。また、電極面と導電ゲル部との間に、導電ゲル部のズレ防止のための導電性の密着層が形成されていてもよい。さらに、導電ゲルシートを貼り替え可能なシールとし、筋電センサ付メガネ1の使用時に例えば毎回、新たなシートを電極に貼付して使用することも好ましい。また、この場合の更なる好適例として、シートが丸まってシート同士が粘着することのないように不織布等を中間層とし、さらにこの中間層の上下両面にそれぞれ粘着力の異なるゲルシートの層を形成した3層構造の導電ゲルシートを用いてもよい。この際、電極に貼付する側の層に、粘着力のより強いゲルシートを使用することが好ましい。なお、このような貼り替え可能なゲルシートは、両側の粘着面を剥離しやすい樹脂フィルムで保護しておき、さらに、貼付対象の電極の形状に合わせて予め裁断加工されていることも好ましい。
【0078】
[生体信号処理部の構成]
図8は、信号処理ボックス18に含まれる生体信号処理部の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【0079】
図8によれば、筋電センサ付メガネ1における右側のテンプル部分に配置された信号処理ボックス18は、生体信号を取り込む部分(生体信号取り込み部)の一部として電池を内蔵しており、一方、左側のテンプル部分に配置された信号処理ボックス18は、この電池からの供給電力をもって、取得した生体信号の処理を行う生体信号処理部180を含んでいる。
【0080】
また、これら左右の信号処理ボックス18(生体信号取り込み部)のそれぞれの重量、具体的には電池及びそれに付随する回路の重量、並びに生体信号処理部180及びそれに付随する(信号インタフェース185を含む)回路の重量が、略(ほぼ)同等に設定されていることも好ましい。これにより、筋電センサ付メガネ1の重量における左右のバランスをとることができ、偏りのない良好な装着感を実現することができる。ここで、設定重量が略(ほぼ)同等であるとは、所定基準以上に重量バランスがとられていると感じられる装着感を実現する程度に、両重量が近似若しくは一致していることを意味する。なお、この意味からしても当然ではあるが、左右の重量バランスをとるための各信号処理ボックス18への構成要素の割り振りは、上記の形態に限定されるものではない。
【0081】
同じく
図8において、生体信号処理部180は、本実施形態において、信号変換部181と、フィルタ処理部182と、信号判定部183と、信号計数部184とを機能構成部とした信号処理手段である。これらの機能構成部は、生体信号処理部180に搭載されたコンピュータを機能させる生体信号処理プログラムを実行することによって、生体信号処理機能を実現させる。ちなみに、左側の信号処理ボックス18には、生体信号処理部180と合わせて信号インタフェース185が更に設けられていることも好ましい。
【0082】
このうち、信号変換部181は、筋電センサとして、商用電源等に起因するコモンモードノイズを軽減するDRL回路を有している。このDRL回路は、
(a)プラス電極パッド141と電気的に接続されたプラス(検出用)電極と、
(b)マイナス電極パッド142と電気的に接続されたマイナス(リファレンス)電極と
の電位差の交流成分を、
(c)鼻パッド電極143(又はモダン電極151a(
図2))と電気的に接続されたGND電極
におけるGND電位との差動増幅によって増幅し、このアナログの生体信号を一定のサンプリング周波数でデジタル化する。
【0083】
これにより、例えば、プラスマイナス0.1〜数百μVの範囲の皮膚電位検出が可能となる。また、このデジタル化の条件として、サンプリング周波数が500Hz以上であって量子化10bit以上でアナログ/デジタル(A/D)変換を行うことも好ましい。なお、このような回路構成は、例えば上述したNeurosky社製のTGAM1を利用して実現可能となっている。
【0084】
信号変換部181は、次いで、デジタル化された生体信号に対してウィンドウ分割処理を行う。実際、連続して時系列をなすセンサデータ(筋電センサ出力信号データ)は、リアルタイムに逐次分析することによって、ユーザに対しリアルタイムにフィードバックを行うユーザインタフェースを実現可能とするのである。また、アプリケーションでの利用も容易となる。
【0085】
このウィンドウ分割処理では、センサデータの波形を分析するために、予めウィンドウ分析区間を設け、この分析区間をずらしながら逐次分析を行う。例えば、デジタル化のサンプリング周波数が512Hzである場合、ウィンドウ分析区間を256サンプルとし、時系列センサデータを0.5秒毎(256サンプル毎)に区切りながら、区切った区間毎に、当該区間内のセンサデータの分析を行ってもよい。
【0086】
フィルタ処理部182は、電極パッド(141及び142)の皮膚に対するズレに起因して発生するノイズや、商用電源(国内では50Hz又は60HzのAC電源)等に由来する外来のノイズをフィルタリングする手段である。このフィルタリングとして種々の処理が採用可能であるが、本実施形態では、生体信号に係る周波数と、主ノイズに係る周波数との間に遮断周波数を設定し、主ノイズに係る周波数を含む遮断帯域によるフィルタ処理を、例えば所定時間毎に区分けしたウィンドウ毎の入力信号に施す。このうち、主ノイズは商用電源に起因するノイズとなっている。
【0087】
ここで、判定対象となる生体信号が、口角上げに係る筋肉(大頬骨筋等)に起因する筋電信号である場合、この筋電信号は、この商用電源の周波数未満の周波数(40Hz付近)に係る信号である。この場合、フィルタ処理部182は、遮断周波数が生体信号に係る周波数(例えば40Hz付近)と主ノイズに係る周波数(例えば50Hz)との間となるように「移動区間サンプル数」を設定し、次いで、入力信号に対して単純移動平均(SMA, Simple Moving Average)を用いたフィルタ処理を施すことができる。
【0088】
ここで、SMAフィルタは、周波数成分抽出を可能とするデジタルフィルタであるFIR(Finite Impulse Response)フィルタであって、ローパスフィルタの一種と捉えることができる。具体的には、移動区間(サンプル数)を単位時間区間として、その区間のN倍(Nは自然数)の周期性を持つ信号に対してフィルタ効果を奏し、例えば、商用電源ノイズのみならず、商用電源ノイズの倍数周波数ノイズをもフィルタリングすることを可能にするのである。
【0089】
信号判定部183は、フィルタ処理を施された検出信号から遮断帯域外の周波数に係る信号を特定し、生体信号の発生を判定する信号判定手段である。信号判定部183としては、例えば、
(ア)フィルタ処理を施された検出信号における自己相関係数を算出し、この自己相関係数とラグとの関係に基づいて遮断帯域外の周波数に係る信号を特定し、生体信号の発生を判定する
ものとすることができる。この場合、信号判定部183は、自己相関係数が正から負に移行するラグ位置が、生体信号について予め設定された負移行ラグ位置範囲に含まれる場合、生体信号が発生したと判定してもよい。
【0090】
また、他の実施形態として、信号判定部183は、
(イ1)生体信号の発生の有無に係る1つ又は複数の予め設定された基準状態に該当する検出信号から生成された特徴量によって1つ又は複数の単位空間を設計し、
(イ2)判定対象の検出信号から生成された特徴量に基づいて、判定対象の検出信号における単位空間から離隔した度合いである1つ又は複数の離隔度合いを算出し、
(イ3)算出された離隔度合いに基づいて、判定対象の検出信号における生体信号の発生を判定する
ものであってもよい。
【0091】
この場合具体的に、信号判定部183は、生体信号が発生していない基準状態に係る単位空間からの離隔度合いから、生体信号が発生した状態及び生体信号が発生していない状態を合わせた基準状態に係る単位空間からの離隔度合いと、生体信号が発生した基準状態に係る単位空間からの離隔度合いとを差し引いた量に基づいて、生体信号の発生を判定するものであってもよい。ここで、上記の単位空間及び離隔度合いとして、
(a)MT(Mahalanobis Taguchi)法における単位空間、及びマハラノビス距離から算出される値、
(b)MTA(Mahalanobis-Taguchi Adjoint)法における単位空間、及びマハラノビス距離から算出される値、
(c)T法における単位空間、及び特性値から算出される値、又は
(d)RT(Recognition Taguchi)法における単位空間、及びRT距離から算出される値
を採用することができる。
【0092】
同じく
図8に示した信号計数部184は、生体信号が発生した回数を計数する計数処理手段である。信号計数部184は、具体的に、
上記(ア)のように生体信号の発生を判定する場合において、生体信号の強度が所定のヒステリシスを示した際に回数のカウントを行ってもよい。または、
上記(イ1)〜(イ3)のように生体信号の発生を判定する場合において、判定対象の検出信号における離隔度合いが所定のヒステリシスを示した際に回数のカウントを行ってもよい。
【0093】
信号インタフェース185は、信号判定部183における生体信号判定結果の情報、又は信号計数部184における生体信号発生回数計数結果の情報を、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)等の無線LANといった無線で、外部の情報処理装置、例えば筋電センサ付メガネ1を装着しているユーザの所持する携帯端末2に送信する。勿論、信号インタフェース185は、USB(Universal Serial Bus)等であって、携帯端末2にケーブルで当該情報を送信するものであってもよい。
【0094】
なお、変更態様として、信号インタフェース185を設けずに又は信号インタフェース185と合わせて、生体信号判定結果の情報や生体信号発生回数計数結果の情報を表示するディスプレイ等の表示部が、筋電センサ付メガネ1に設置されていてもよい。
【0095】
また、更なる他の実施形態として、
図8に示したフィルタ処理部182及び信号判定部183に代えて、本願発明者等が特許文献1に開示された生体信号処理手段を採用することもできる。この生体信号処理手段は具体的に、筋電信号を用いて顔表情「笑み」と「噛み締め」とを識別するものであるが、
(ウ1)検出信号における第1の周波数帯(アーチファクト)のパワー値VLFと、第2の周波数帯(第1の顔表情時)のパワー値LFとを算出するウィンドウ分析手段と、
(ウ2)第1の基準パワーVLFBaseと第2の基準パワーLFBaseとを記憶する基準パワー記憶手段と、
(ウ3)生体信号判定時に、第1のパワーVLFが第1の基準パワーVLFBase以下であり、且つ、第2のパワーLFが第2の基準パワーLFBaseよりも大きい場合に、第1の顔表情時であると判定する顔表情判定手段と
を有している。
【0096】
以上に説明した生体信号処理部(手段)によれば、一般に処理の容易でない微弱な信号である生体信号を、高速フーリエ変換やウェーブレット変換等を利用した大きな計算量を必要とする信号処理を用いずとも、確実に処理することができる。その結果、信号処理の計算量の増大を抑制しつつ、検出対象である生体信号の発生をより精度良く判定することが可能となる。また、処理部のサイズを小さく抑えることができるので、その結果として、信号処理ボックス18をコンパクト化したり、さらには、フレーム部11に内蔵させたりすることも可能となるのである。
【0097】
また特に、筋電センサ付メガネ1は、皮膚に接触した電極パッドから生体信号を受信しているので、電極パッド(の電極)のズレに起因するノイズ信号を、抑制したり又は判定信号として利用すべく安定化したり(再現性を向上させたり)する必要が生じる。これに対し、以上に説明した生体信号処理部(手段)によれば、このようなノイズ信号を、外来ノイズと同様に低減させたり、又は安定化させたりすることが可能となるのである。
【0098】
ちなみに、生体信号を「取り込む部分」としての生体信号処理部180における更なる他の実施形態として、信号判定部183及び信号計数部184を設けず、フィルタ処理された検出信号を、信号インタフェース185を介して外部の情報処理装置、例えば携帯端末2へ送信し、当該装置で信号判定及び計数処理を実施することも可能である。さらに、フィルタ処理部182も構成せずに、信号変換部181でデジタル化された生体信号を、信号インタフェース185を介して外部の情報処理装置、例えば携帯端末2へ送信し、当該装置でフィルタ処理、信号判定処理及び信号計数処理を実施してもよい。
【0099】
以上詳細に説明したように、本発明の生体信号取得装置によれば、電極部が、生体信号を受信する手段としてだけではなく、装置本体部を支持する手段としても機能している。また、弾性支持部12は、弾性をもって電極部と装置本体部とを接続している。その結果、例えば装着された頭部が大きく動いたとしても、これらの電極部を、弾性支持部を介して伝わる装置本体部の重量をもって、頭部の皮膚の所定位置近傍に安定して接触させ続けることが可能となる。これにより、生体信号取得装置は、生体信号を安定して(安定的に)検出することができるのである。
【0100】
さらに、1つの応用例ではあるが、大頬骨筋等の口角上げに係る筋肉に起因する筋電信号を取得対象とし、お笑い電子コンテンツを視聴しているユーザに装着された本生体信号取得装置をもって、ユーザの「笑み」を定量的に計測し、この計測値を、当該コンテンツの1つの評価指標とすることも可能となる。
【0101】
また、本生体信号取得装置によってユーザの口角上げ動作を計測して、この口角上げ動作の発生をトリガとし、ユーザから所定のコマンドが入力されたとして、例えばカメラのシャッタ動作やズーミング等、さらには視聴中コンテンツのお気に入り登録等を実行することもできる。さらに、筋肉の活動状態をユーザにフィードバックし、ユーザによる例えば笑顔を作る練習をサポートすることも可能となる。さらにまた、本生体信号取得装置によって「笑み」の定量計測を定常的に実施して、ユーザが快適な生活を送っているのかどうかの1つの判断指標を提示し、ストレス・コーピングとしてユーザが笑顔となるように誘導するサービスを提供することも可能となる。
【0102】
以上に述べた本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。