(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フレキシブル回路は、フレキシブル金属基板と、前記フレキシブル金属基板上に配置された誘電ポリマー層と、前記誘電ポリマー層上に配置された複数の導電性トレースとを含み、前記方法は、
前記誘電ポリマー層の表面を前記大気プラズマで処理し、前記大気プラズマが前記誘電ポリマー層の表面を機能化するステップと、
前記複数の導電性トレースと、前記複数の導電性トレースのそれぞれに近接する前記誘電ポリマー層の機能化された前記表面の部分とを被覆する誘電ポリマーコーティングを形成するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記フレキシブル回路は、フレキシブル金属基板と、前記金属基板上に配置された誘電ポリマー層と、シード層と、前記シード層上に配置された複数の導電性トレースとを含み、前記方法は、
前記誘電ポリマー層の反対の側の前記フレキシブル金属基板を貫通して少なくとも1つ
の開口部を形成するステップと、
前記少なくとも1つの開口部を介して前記誘電ポリマー層をエッチングして、前記複数の導電性トレースのうちの1つの前記シード層の表面の部分を露出させるステップと、
前記シード層の表面の露出された前記部分を前記大気プラズマで処理するステップとをさらに含み、前記大気プラズマは、前記シード層の表面の露出された前記部分から汚染物を除去して、前記導電性トレースへの電気的接続部の形成を可能にする、請求項1に記載の方法。
前記フレキシブル回路はウェブ処理によって形成され、前記フレキシブル回路が前記大気プラズマを通って移動するときに、前記フレキシブル回路の表面が前記大気プラズマで処理される、請求項1に記載の方法。
前記酸素プラズマは大気酸素プラズマであり、該大気酸素プラズマは、電極と前記フレキシブル回路の表面との間に酸素の流れを導入することと、前記電極と前記フレキシブル回路との間で電圧を発生させて、前記酸素からプラズマを生成することとによって形成される、請求項12に記載の方法。
前記フレキシブル回路はウェブ処理によって形成され、前記フレキシブル回路が前記イオンビームを通って移動するときに、前記フレキシブル回路の表面が前記イオンビームで処理される、請求項9に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、種々の変形及び代替形態に適するが、特定の実施形態が図面に例として示され、以下に詳細に記載される。しかしながら、この意図は、記載される特定の実施形態に本発明を限定するものではない。それだけでなく、本発明では、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内に該当するすべての変形、同等物、及び代替物を含むことが意図されている。
【0020】
以下に記載される実施形態は、フレキシブル回路製造におけるプラズマ洗浄及び処理プロセス、並びにそれらの使用を開示する。一部の実施形態では、フレキシブル回路は、特許文献1及び特許文献2のいずれかのサスペンションなどのハードディスクドライブサスペンションのフレクシャであり、これらはともに、そのそれぞれの開示の全体が言及によって本明細書に組み込まれる。
【0021】
図1は、一部の実施形態において、大気プラズマ(大気圧プラズマとも呼ばれる)によって処理されるフレキシブル回路を含むウェブの概略断面図を示す。
図1は、大気プラズマシステム12を通って移動するウェブ10を示す。ウェブ10は、フレキシブル回路40(
図2〜
図11)又はフレキシブル回路122(
図13〜
図18)などの複数のフレキシブル回路(
図1には図示せず)を含む。ウェブ10は、特定のプラズマ洗浄又は処理に適した大気プラズマ内での滞留時間を得るために必要な任意の速度で大気プラズマシステム12を通って移動することができ、低速では任意の所定のフレキシブル回路に対して滞留時間が長くなり、プラズマ洗浄又は処理が長くなる。大気プラズマシステム12は、第1電極14、第2電極16、並びにガスポート18及び20を含む。第1電極14は、大気プラズマシステム12にわたってウェブ10を支持する、及び/又はウェブ10を推進させるための、ウェブ10が近接してその上を移動するプレート又はウェブ10と物理的に接触するローラであってよい。第2電極16は、ウェブ10から遠位に配置される。一部の実施形態では、第2電極16は、ウェブ10から約0.04インチ離れて配置される。
【0022】
ガスポート18は、第2電極16を貫通し、第2電極とウェブ10との間の空間にガス流を供給する。ガスポート20は、第2電極16から分離されており、第2電極とウェブ10との間の空間にガス流を供給するように向けられる。
図1の大気プラズマシステム12は、ガスポート18とガスポート20との両方を含むが、一部の実施形態では、大気プラズマシステム12はガスポート18又はガスポート20のみを含むことができる。
【0023】
運転中、ウェブ10が大気プラズマシステム12を通って移動するとき、ガスポート18及び/又はガスポート20は、第2電極16とウェブ10との間にガス流22を導入する。
図1に示され実施形態において、第2電極16は交流電圧源24に電気的に接続され、第2電極16に交流電圧を供給する一方で、第1電極14は接地26に電気的に接続される。一部の実施形態において、ウェブ10も、第1電極14との接触によって接地26に電気的に接続される。このように第1電極14と第2電極16との間に生じる電位電圧差は、ウェブ10と第2電極16との間でガスをイオン化し、大気プラズマ28を生成するのに十分なものである。大気プラズマ28内において、ガスから反応種が生成されることができる。一部の反応種は、電子を奪い取ることで生成され、正荷電を帯びた反応性イオンを得ることができる。一部の実施形態では、大気プラズマ28は、第1電極14と比較して正電圧であって、電場を生成し、該電場は、電荷を帯びた反応性イオンをウェブ10に向けて加速させて、そこに含まれるフレキシブル回路を洗浄及び/又は処理することができる。
【0024】
大気プラズマ28内のイオンのイオン衝撃エネルギーは、例えば、第2電極16に印加される電力及びガス流22の流量の関数であり得る。一部の実施形態において、イオンのイオン衝撃エネルギーは、約1電子ボルト(eV)〜約100eVの範囲であり得、電力は約1,000ワット〜約4,000ワットの範囲であり得、ガス流量は約10リットル/分〜約20リットル/分の範囲であり得る。
【0025】
図1に示す実施形態において、交流電圧源24が第2電極16に交流電圧を供給するように構成され、第1電極14が接地26に電気的に接続されているが、他の実施形態では、交流電圧源24は、第1電極14と第2電極16との間に交流電圧を供給するように構成されてもよい。
【0026】
図1に示す実施形態において、ガスは、実質的に、2原子形態の酸素30(O
2)からなる。実質的に酸素30からなるとは、チャンバに供給されるガスが、プラズマ洗浄又は処理の有効性に重大な影響を及ぼさない水蒸気、窒素、二酸化炭素などの無視できる量の不純物を含み得る純酸素であることを意味する。電子32は、ウェブ10と第2電極16との間の空間に入ると、酸素30から分離され、大気プラズマ28を生成する。大気プラズマ28は、2原子イオン34、単原子イオン36、及び単原子酸素38を含む多くの反応種を包含する。大気プラズマ28は、第1電極14と比較して正電圧であって、電場を生成し、該電場は、正2原子イオン34と単原子イオン36とをウェブ10に向けて加速させて、ウェブ10上を通過して移動するフレキシブル回路を洗浄及び/又は処理する。
【0027】
ウェブ10は、真空チャンバ又はエアロックのポンプダウン及びベントによる遅延なく、大気プラズマシステム12を通って容易に移動することができる。しかしながら、大気プラズマシステム12は大気圧で圧力容器なく作動するので、通常は重大でない量の周囲の大気が、例えばウェブに沿って保持される境界層として、プラズマに入ることがある。こうして、チャンバに向けられるガス流は実質的に酸素からなり得るが、大気プラズマ28自体は、検出可能な量の大気ガスを含み得る。
【0028】
図1の実施形態は、実質的に酸素からなるガスを用いて示されるが、他の実施形態では、任意の適切な組み合わせ及び比である、酸素、窒素、水素、任意の貴ガス、又は任意のハロゲンの混合物を含むガスを使用できることが理解される。
【0029】
図2は、一部の実施形態による、誘電ポリマー層における少なくとも1つの開口部を示すフレキシブル回路の部分の断面図である。
図2は、金属基板42と、誘電ポリマー層44と、開口部46とを含むフレキシブル回路40を示す。金属基板42はフレキシブル金属基板であってもよい。例えばフレキシブル回路40がフレクシャである一部の実施形態では、金属基板42はステンレス鋼であってもよい。他のフレクシャの実施形態では、金属基板42は、銅、リン青銅、又はニチノールなどの他のタイプの金属であってもよい。誘電ポリマー層44は、ポリイミドなどの任意の適切で硬化可能なポリマーから作製され得る。誘電ポリマー層44は、金属基板42の表面48上に配置される。開口部46は、誘電ポリマー層44を貫通して表面48の部分を露出させる、誘電ポリマー層44の開口部である。開口部46は、誘電ポリマー層44上に形成された導電性トレース(
図6の導電性トレース56a)と金属基板42との間の電気的接続部を確立するために使用され得る。一部の実施形態では、誘電ポリマー層44は、表面48上に画像形成可能な(photoimageable)ポリイミド前駆体を堆積し、続いて、フォトマスクを介してポリイミド前駆体を露光することと、開口部46を形成するように現像することとを含む、当該技術分野で周知のフォトリソグラフィープロセスを行って形成されるとよい。開口部46が形成されると、ポリイミド前駆体が硬化してポリイミドを形成する。
【0030】
図2に示すように、開口部46は、表面48の露出された部分上に汚染物50を含み得る。汚染物50は、例えば、フォトリソグラフィープロセス後に残るポリイミド前駆体の残留物、又は表面48上に堆積するポリイミド硬化の副生成物を含み得る。汚染物50は、除去されなければ、誘電ポリマー層44上に形成された導電性トレース(
図5の導電性トレース56a)と金属基板42との間の電気的接続部の抵抗性を増大させ得ることが分かっている。したがって、開口部46が形成された後、金属基板42の表面48の露出された部分は、
図1に関して上述された大気プラズマ28で処理されて、汚染物50の少なくとも一部を除去する。
【0031】
一部の実施形態では、汚染物50を除去するための大気プラズマ28による処理は、約2,000ワットの電力、且つ実質的に酸素からなる約15リットル/分のガス流量で、大気プラズマ28内におけるフレキシブル回路40の、約5秒の滞留時間を伴って行われ得る。エネルギー及び露出時間を制限することにより、誘電ポリマー層44を損傷することなく汚染物50を除去することができる。
【0032】
図3は、
図2に関して上述された実施形態における、大気プラズマ28による処理有りと無しの、グラウンド形体(ground feature)の誘電体開口サイズの関数としての欠陥グラウンド形体率のグラフである。グラウンド形体は、誘電ポリマー層44上に形成された導電性トレースと金属基板42との間の電気的接続部である。
図3に示されるように、大気プラズマ28の使用により、グラウンド形体の欠陥の比率が大きく減少し、20ミクロン〜70ミクロンの範囲の開口部46サイズでそうなる。
【0033】
図4は、一部の実施形態において、
図2に関して上述された処理の後の付加的な処理を示すフレキシブル回路40の部分の断面図である。
図4は、汚染物50を除去するために、表面48の露出された部分が大気プラズマ28で処理された後に、誘電体層44と金属基板42の表面48の露出された部分との上に堆積されたシード層52を示す。汚染物50が除去されると、シード層52は、金属基板42との低抵抗性の電気的接続部を形成することができる。シード層52は、例えば、誘電体層44と金属基板42の表面48の露出された部分との上にクロム層をスパッタ堆積し、続いてクロム層上に銅層をスパッタ堆積することによって、形成されることができる。
【0034】
図5は、一部の実施形態において、
図4について上述された処理の後の付加的な処理を示すフレキシブル回路40の部分の断面図である。
図5は、シード層52上に形成された、パターン化フォトレジスト層54を示す。パターン化フォトレジスト層54は、当該技術分野で既知のフォトリソグラフィー技術によって形成されることができる。
【0035】
図6は、一部の実施形態において、
図5について上述された処理の後の付加的な処理を示すフレキシブル回路40の部分の断面図である。
図6は、シード層52上の複数の導電性トレース56a、56bの形成を示す。複数の導電性トレース56a、56bは、パターン化フォトレジスト層54に被覆されていないシード層52の部分上に、銅などの導電性金属を電気めっきすることによって形成されることができる。パターン化フォトレジスト層54は、シード層52上に導電性金属が堆積することを阻止する。例示を容易にするために2つの導電性トレース56a及び56bのみが示されているが、実施形態は2つより多い導電性トレースを含んでもよいということが理解される。
【0036】
図7は、一部の実施形態において、
図6について上述された処理の後の付加的な処理を示すフレキシブル回路40の部分の断面図である。
図7は、パターン化フォトレジスト層54を除去し、且つシード層52の部分を除去した後の、フレキシブル回路40を示す。パターン化フォトレジスト層54は、当該技術分野で既知である多数の化学的フォトレジストはく離剤のいずれかによって除去されることができる。パターン化フォトレジスト層54が除去されてシード層52の部分が露出された後、シード層52の露出された部分は、当該技術分野で既知である化学エッチング剤によってエッチング除去されて、誘電ポリマー層44の部分が露出される。
【0037】
一部の実施形態では、シード層52をエッチング除去した後、誘電ポリマー層44の表面の露出された部分62上に、導電性汚染物60が残り得る。導電性汚染物60は、例えば、化学的エッチングによって完全に除去されなかったシード層52の残留物を含み得る。残留物は、別の導電性金属64の無電解めっき(
図6)などの後続の処理時に、導電性トレース56a及び56bなどの近接する導電性トレース同士の間の抵抗を直接的に低下させるには不十分なものであるとしても、導電性トレース56aと56bとの間で、導電性構造物又はストリンガーの成長のための核生成部分として作用し得るということが分かっている。そうした導電性ストリンガーは、導電性トレース56aと56bとの間の抵抗を著しく低下させ、フレキシブル回路40の性能に悪影響を与え得る。このように、一部の実施形態において、シード層52がエッチング除去された後、誘電ポリマー層44の表面の露出された部分62は、ガスに酸素を含む、
図1に関して上述された大気プラズマ28で処理される。いずれの理論にも束縛されることを望まないが、残留物は、大気プラズマ28によって酸化され、酸化されると導電性ストリンガーの成長のための核生成部分として適さないと考えられる。
【0038】
一部の実施形態では、導電性汚染物60を除去するための大気プラズマ28による処理は、約3,000ワットの電力、且つ実質的に酸素からなる約15リットル/分のガス流量で、大気プラズマ28内におけるフレキシブル回路40の、約27秒の滞留時間を伴って、行われ得る。本明細書に記載の一部の他の大気プラズマプロセスと比較して、エネルギー及び露出時間の増加は、導電性汚染物60を十分に酸化するために必要であり得る。
【0039】
一部の実施形態では、ガスは、50%を超える、60%を超える、70%を超える、90%を超える、若しくは99%を超える酸素、又は任意の前述のパーセンテージの任意のパーセンテージを超えるもの含むことができる。すべてのガスパーセンテージは、流れ22(
図1)によって供給される総ガス流量のパーセンテージである。一部の実施形態では、ガスは実質的に酸素からなる。実質的に酸素からなるガスを含む大気プラズマ28は、50%酸素と50%アルゴンとの混合物を含むガスよりも、導電性ストリンガーのその後の成長を防止する上でより効果的であることが分かっている。
【0040】
図8は、一部の実施形態において、
図7について上述された処理の後の付加的な処理を示すフレキシブル回路40の部分の断面図である。
図8は、導電性トレース56a、56b上への別の導電性金属64の無電解堆積後のフレキシブル回路40を示す。導電性金属64の堆積後、誘電ポリマー層44の表面の露出された部分62は、ガスに酸素を含む
図1に関して上述された大気プラズマ28で処理されることができる。一部の実施形態では、ガスは実質的に酸素からなる。この処理は、イオン化された酸素原子が誘電ポリマー層44の炭素鎖を切断して、切断された鎖の末端で炭素ラジカルを生成するので、露出された部分62を機能化する。イオン化された酸素原子は炭素ラジカルと結合し、露出された部分62にさらなる酸素原子を組み込む。これらのさらなる酸素原子は、後に誘電ポリマー層44の表面の露出された部分62に堆積されるポリマー鎖のための結合部位として利用可能である。
【0041】
一部の実施形態では、誘電ポリマー層44の表面の露出された部分62を機能化するための大気プラズマ28による処理は、約2,000ワットの電力、且つ約15リットル/分のガス流量で、大気プラズマ28内におけるフレキシブル回路40の、約5秒の滞留時間を伴って、行われ得る。エネルギー及び露出時間を制限することにより、誘電ポリマー層44を損傷することなく表面を機能化することができる。
【0042】
図9は、一部の実施形態において、
図8について上述された処理の後の付加的な処理を示すフレキシブル回路40の部分の断面図である。誘電ポリマー層44の表面の露出された部分62を機能化した後、誘電ポリマーコーティング66が、導電性トレース56a、56bと、導電性トレース56a、56bに近接する露出された部分62の少なくとも一部との上に形成されて、カバーコートを形成する。誘電ポリマーコーティング66は、ポリイミドなどの任意の適切な硬化性ポリマーから作製されることができる。一部の実施形態では、誘電ポリマーコーティング66は、導電性トレース56a、56b及び露出された部分62上に画像形成可能な(photoimageable)ポリイミド前駆体を堆積し、続いて、フォトマスクを介してポリイミド前駆体を露光することと、誘電ポリマーコーティング66を形成するように現像することとを含む、当該技術分野で周知のフォトリソグラフィープロセスを行って形成されるとよい。誘電ポリマーコーティング66が形成されると、ポリイミド前駆体は硬化されて、ポリイミドを形成し、誘電ポリマーコーティング66を誘電ポリマー層44に熱接着する。
【0043】
誘電ポリマーコーティング66と誘電ポリマー層44との間の結合が強いほど、カバーコートは、導電性トレース56a、56bを保護する上で、より耐久性があり効果的なものとなる。機能化された表面のさらなる酸素原子が誘電ポリマーコーティング66のポリマー鎖と結合するので、誘電ポリマー層44の表面の機能化された露出部分62上に誘電ポリマーコーティング66を形成することで、より強い結合が形成される。
【0044】
図8及び
図9に示される実施形態は、導電性金属64の無電解堆積に続く、露出された部分62の機能化、及び誘電ポリマーコーティング66の塗布を示しているが、他の実施形態では、導電性金属64を省略することができる。そうした実施形態では、誘電ポリマーコーティング66は、誘電ポリマー層44の表面の露出された部分62を機能化するために大気プラズマ28で処理した後に、導電性トレース56a、56b上に直接的に形成される。
【0045】
図10は、誘電ポリマーコーティング66を形成する前に、誘電ポリマー層44の表面の露出された部分62を機能化するために、種々の電力及び滞留時間を用いて大気プラズマ28で処理されたサンプルについて、誘電ポリマー層44と誘電ポリマーコーティング66との間の最大せん断力を示すグラフである。
図10に示されるように、大気プラズマ28で処理されたサンプルは、窒素イオンビームによる処理を受けたサンプル(コントロール)と比較して、より大きな剪断力を示す。
【0046】
図11は、一部の実施形態において、
図9について上述された処理の後の付加的な処理を示すフレキシブル回路40の部分の断面図である。
図11は、金属基板42及び誘電体層44を貫通するアクセス孔の形成を示す。金属基板42を貫通する開口部68は、誘電ポリマー層44の反対側(裏側)に形成されることができる。開口部68は、例えば、フレキシブル回路40の裏側にフォトレジストをパターニングした後、金属基板42の材料に適したエッチング剤で金属基板42をエッチングすることによって形成されることができる。例として、金属基板42がステンレス鋼製である場合、適切なエッチング剤は、フォトレジストに強く影響を与えることなくステンレス鋼を溶解する。そうしたエッチング剤は当該技術分野において既知である。金属基板42を貫通する開口部68が形成された後、金属基板42をマスクとして用いて誘電ポリマー層44をエッチングして開口部68を延長し、導電性トレース56bの下にあるシード層52の部分70を露出させることができる。
【0047】
図11に示すように、開口部68は、シード層52の露出された部分70に汚染物72を含み得る。汚染物72は、例えば、誘電ポリマー層44の除去による残留物を含み得る。汚染物72は、除去されなければ、導電性トレース56bへの裏側電気接続部の抵抗性を増大させ得ることが分かっている。このように、開口部68形成後、シード層52の露出された部分70は、
図1に関して上述された大気プラズマ28で処理されて、汚染物72を除去する。
【0048】
一部の実施形態では、汚染物72を除去するための大気プラズマ28による処理は、約3,000ワットの電力、且つ実質的に酸素からなる約15リットル/分のガス流量で、大気プラズマ28内におけるフレキシブル回路40の、約38秒の滞留時間を伴って、行われ得る。
【0049】
図12A及び
図12Bは、一部の実施形態における、イオンビームで処理されるフレキシブル回路を含むウェブの概略断面図を示す。
図12A及び
図12Bは、真空システム112を通って移動するウェブ110を示す。ウェブ110は、フレキシブル回路122(
図13)などの複数のフレキシブル回路を含む。ウェブ110は、所定のイオンビーム処理に適した真空システム112内での滞留時間を得るために必要な任意の速度で真空システム112を通って移動することができる。真空システム112はイオン源114を含む。イオン源114は、ガス116をイオン化して正電荷を帯びたイオン118を含むプラズマを生成し、次いでイオン源114からイオン118を加速させてイオンビーム120を生成する。イオン源114は、引力によって正電荷を帯びたイオン118を加速させるために電源グリッド( a powered grid)を使用するもの、及び反発によって正電荷を帯びたイオン118を加速させるために電源アノード( a powered anode)を使用するものを含む、当技術分野で既知の任意のタイプのイオン源であり得る。
【0050】
運転中、ウェブ110が真空システム112を通って移動するとき、イオン源114は、イオンビーム120をウェブ110に向かって加速させて、ウェブ110上を通って移動するフレキシブル回路を洗浄及び/又は処理する。平均イオンエネルギーは、上述の大気プラズマ28に関連するイオンエネルギーよりも著しく高い、約500eV〜約1,500eVの範囲であり得る。そうした高エネルギーイオンは、後述するように、フレキシブル回路の製造において有益な処理を行うことができる。イオンビーム120のイオン118のエネルギーは、ウェブ110に所望の処理を施すように制御されることができる。例として、
図12Aに示すように、拡散イオンビーム120は、イオン源114を介してガス流を増大させて、より高い密度のイオン118を生成することによって形成されることができる。より高い密度のイオン118により、イオン180間の衝突が増大し、より低いイオンエネルギーや、より幅広の拡散ビームがもたらされ得る。拡散イオンビーム120は、約500eVから約1,000eV未満の範囲のイオン衝撃エネルギーを有し得る。より高エネルギーのイオンビームを必要とする処理のために、
図12Bに示すように、コリメートイオンビーム120が形成されることができる。コリメートイオンビーム120は、例えば、イオン源114を介してガス流を減少させて、より低い密度のイオン118を生成することによって形成されることができる。より低い密度のイオン118により、イオン118間の衝突が減少し、より高いイオンエネルギーや、幅狭のコリメートビームがもたらされ得る。コリメートイオンビーム120は、約1000eV〜約1500eVほどの範囲のイオン衝撃エネルギーを有し得る。
【0051】
イオンビーム120による洗浄及び/又は処理時に、真空システム112において圧力が維持されることができる。一部の実施形態では、圧力は200mTorr未満であってもよい。一部の実施形態では、圧力は約50mTorr未満であってもよい。
【0052】
図12A及び
図12Bの実施形態は、実質的に、正電荷を帯びたアルゴンイオンからなるイオン118を示すが、他の実施形態では、任意の適切な組み合わせ及び比である、酸素、窒素、水素、又は任意のハロゲンを伴う任意の貴ガスの混合物を含む、他のガスのイオンを使用することができることが理解される。
【0053】
図13は、一部の実施形態における、誘電ポリマー層の少なくとも1つの開口部を示すフレキシブル回路の部分の断面図である。
図13は、金属基板42、誘電ポリマー層44、及び開口部46を含むフレキシブル回路122を示す。金属基板42、誘電ポリマー層44、及び開口部46は、
図2の実施形態について上述されたとおりであり得る。誘電ポリマー層44は、金属基板42の表面48上に配置される。
図13に示すように、開口部46は、
図2に関して上述されるように表面48の露出された部分に汚染物50を含み得る。上述されるように、汚染物50は、除去されなければ、誘電ポリマー層44上に形成された導電性トレースと金属基板42との間の電気的接続部の抵抗性を増大させ得る。このように、開口部46が形成された後、金属基板42の表面48の露出された部分は、
図12A及び
図12Bに関して上述されたイオンビーム120で処理されて、汚染物50を除去することができる。一部の実施形態では、開口部46が形成された後、金属基板42の表面48の露出された部分は、
図2に関して上述した大気プラズマ28で処理され、次いで
図12A及び
図12Bに関して上述されたイオンビーム120で処理されて、汚染物50を除去することができる。
【0054】
一部の実施形態では、金属基板42は、自然酸化物を形成するステンレス鋼などの材料から作製される。表面48の露出された部分をイオンビーム120で処理することにより、自然酸化物が除去及び/又は破壊されることが分かっている。露出された表面48上に、
図4に関して上述されるシード層52などの導電層を、イオンビーム処理後で表面48を酸素に暴露する前に堆積することは、
図14に関して以下に説明されるように、接触抵抗をさらに著しく改善する。これは、例えば、真空システム112にイオン源114と金属スパッタ堆積能力との両方を組み込むことによって行うことができる。
【0055】
一部の実施形態では、汚染物50及び自然酸化物を除去するためのイオンビーム120による処理は、約500eVから約1,500eVの範囲のイオンエネルギーで行うことができる。これらの比較的高い平均イオンエネルギーは、金属−酸化物の結合を効果的に破壊するのに十分なものである。一部の実施形態では、イオンビーム120は、実質的にアルゴンイオンからなり得る。他の実施形態では、イオンビーム120は実質的に窒素イオンからなり得る。さらに他の実施形態では、イオンビーム120は、実質的に、アルゴンイオンと窒素イオンとの混合物からなり得る。
【0056】
図14は、実施形態において、様々なプラズマ及びイオンビーム処理を受けるフレクシャのグラウンド形体電気抵抗を示すグラフである。
図14は、導電性トレースを形成した後(初期)、誘電ポリマーコーティングを硬化した後(CCC)、及び完成したフレキシャを85℃で85%の湿度の環境に長く暴露した後(85/85)を含む、プロセスの様々な時点におけるサンプルの電気抵抗を示す。対応するイオンを発生させるためにアルゴン、窒素又は酸素ガスを用いて、プラズマ(「MF」と示す)、又は拡散(「dif」と示す)若しくはコリメート(「col」と示す)のイオンビームで、フレクシャを処理した。
図14に示すように、実質的にアルゴンイオンからなるイオンビーム又は実質的に窒素イオンからなるイオンビームで処理されたフレクシャは、酸素イオンを有するプラズマ又はイオンビームで処理されたものよりも著しく低いグラウンド形体抵抗を有していた。いずれの理論にも束縛されることを望まないが、プラズマの低平均イオンエネルギー(100eV未満)は、自然酸化物を除去及び/又は破壊するのに十分なものではなく、一方で、拡散イオンビーム(500eV〜1,000eV)及びコリメートイオンビーム(1,000eV〜1,500eV)の両方の平均イオンエネルギーは、十分なもの以上であると考えられる。酸素イオンを含むイオンビームは十分な平均イオンエネルギーを有する可能性が高く、酸素イオンは酸化物を改質すると考えられ、より高いグラウンド形体抵抗がもたらされる。
【0057】
再び
図13を参照すると、一部の実施形態では、イオンビーム120による処理は、誘電ポリマー層44の表面を改質して表面改質層124を形成することができる。表面改質層124は、
図15に関して以下に説明されるように、導電性トレースのはく離強度を改善することが可能である。表面改質層124は、例えばポリイミドである、誘電ポリマー層44の材料におけるイオンビーム120の作用から形成される低酸素のグラファイト様層であり得る。表面改質層124は、比較的高い平均イオンエネルギーで形成されることができる。一部の実施形態では、表面改質層124を形成するためのイオンビーム120による処理は、約1,000eV〜約1,500eVの範囲のイオンエネルギーで行われることができる。一部の実施形態では、イオンビーム120は、実質的にアルゴンイオンからなり得る。他の実施形態では、イオンビーム120は実質的に窒素イオンからなり得る。さらに他の実施形態では、イオンビーム120は、実質的に、アルゴンイオンと窒素イオンとの混合物からなり得る。
【0058】
図15は、実施形態において、種々のイオンビーム処理に対するはく離強度を示すグラフである。
図15は、導電性トレースを形成した後(初期)、誘電ポリマーコーティングを硬化した後(CCC)、及び完成したフレクシャを85℃で85%の湿度の環境に長く暴露した後(85/85)を含む、プロセスの様々な時点におけるサンプルについて、導電性トレース56a、56bなどのフレクシャの導電性トレースのはく離強度を示す。フレクシャは、アルゴンイオン、窒素イオン又はアルゴンイオンと窒素イオンとの混合物を用いて、拡散(「dif」と示す)又はコリメート(「col」と示す)のイオンビームで処理された。
図15に示されるように、コリメートイオンビームによる処理により、完成したフレクシャを85℃で85%の湿度の環境に長く曝露した(85/85)後で80g/mmより大きいはく離強度を有するフレクシャが製造され、値は100g/mmを超えるものであった。一方で、拡散イオンビームによる処理により、完成したフレクシャを85℃で85%の湿度の環境に長く曝露した(85/85)後で80g/mm未満のはく離強度を有するフレクシャが製造され、値は60g/mmを超えないものであった。いずれの理論にも束縛されることを望まないが、グラファイト様の表面改質層124を形成するために、コリメートビームで生成される1000eV〜1,500eVのより高い平均イオンエネルギーが必要であると考えられる。
【0059】
図16は、一部の実施形態における、
図13に関して上述された処理の後の付加的な処理を示すフレキシブル回路122の部分の断面図である。
図16は、表面を洗浄及び/又は改質するためにイオンビーム120によって処理した後の表面改質層124と金属基板42の表面48の露出された部分との上に堆積されたシード層52を示す。汚染物50及び自然酸化物が除去されると、シード層52は、金属基板42との低抵抗性電気接続部を形成することができる。シード層52は、例えば、表面改質層124と金属基板42の表面48の露出された部分との上にクロム層をスパッタ堆積し、続いてクロム層上に銅層をスパッタ堆積することによって形成されることができる。
【0060】
図17は、一部の実施形態における、
図16に関して上述された処理の後の付加的な処理を示すフレキシブル回路122の部分の断面図である。
図17は、
図5〜
図7に関して上述されるような導電性トレース56a、56bの形成と、シード層52の露出された部分の除去との後のフレキシブル回路122を示す。上述されるように、表面改質層124は、シード層52と誘電ポリマー層44との間の接着性を向上させるために誘電ポリマー層44とシード層52との間の連結層として作用し、導電性トレース56a、56bのより強いはく離強度が得られると考えらえる(
図15)。
【0061】
図17に示されるように、シード層52をエッチング除去することにより、表面改質層124の部分が露出される。上述されるように、表面改質層124はグラファイト様層であり、いくらか導電性がある。導電性表面改質層124は、導電性トレース56aと56bとの間の抵抗性を著しく低下させ得、フレキシブル回路122の性能に悪影響を与える。このように、一部の実施形態において、シード層52がエッチング除去された後、表面改質層124の露出された部分は、ガスに酸素を含む、
図1に関して上述される大気プラズマ28で処理されることができる。いずれの理論にも束縛されることを望まないが、大気プラズマ28は、表面改質層124の少なくとも一部を除去すること、及び/又は残余の表面改質層124を酸化することが可能であり、表面改質層124を導電性がないようにするということが考えられる。
【0062】
一部の実施形態では、大気プラズマ28用ガスは、50%を超える、60%を超える、70%を超える、90%を超える、若しくは99%を超える酸素、又は任意の前述のパーセンテージの任意のパーセンテージを超えるもの含むことができる。すべてのガスパーセンテージは、流れ22(
図1)によって供給される総ガス流量のパーセンテージである。一部の実施形態では、ガスは実質的に酸素からなる。
【0063】
一部の実施形態では、表面改質層124を除去及び/又は酸化するための大気プラズマ28による処理は、約3,000ワットの電力、且つ実質的に酸素からなる約15リットル/分のガス流量で、大気プラズマ28内におけるフレキシブル回路122の、約27秒の滞留時間を伴って、行われ得る。本明細書に記載の一部の他の大気プラズマプロセスと比較したエネルギー及び露出時間の増大は、表面改質層124を十分に除去及び/又は酸化するために必要であり得る。
【0064】
図18は、一部の実施形態における、
図17に関して上述された処理の後の付加的な処理を示すフレキシブル回路122の部分の断面図である。
図18は、導電性トレース56aと56bとの間から表面改質層124を除去及び/又は酸化した後のフレキシブル回路122を示す。
図18はまた、
図8及び
図9に関して上述されたような、導電性トレース56a、56b上への別の導電性金属64の無電解堆積、誘電ポリマー層44の表面の機能化、及び誘電ポリマーコーティング66の形成後のフレキシブル回路122を示す。
図18はまた、
図11に関して上述されるような、金属基板42及び誘電体層44を貫通する開口部68であるアクセス孔の形成をも示す。
図18に示されるように、開口部68は、シード層52の露出された部分70上に汚染物126を含み得る。汚染物126は、例えば、誘電ポリマー層44や表面改質層124の除去による残留物を含み得る。汚染物126は、除去されなければ、導電性トレース56bへの裏側電気接続部の抵抗性を増大させ得ることが分かっている。このように、開口部68形成後、シード層52の露出された部分70は、
図1に関して上述された大気プラズマ28で処理されて、汚染物126を除去することができる。代替的に、開口部68形成後、シード層52の露出された部分70は、
図12A及び
図12Bに関して上述されたイオンビーム120で処理されて、汚染物126を除去することができる。
【0065】
一部の実施形態では、汚染物126を除去するための大気プラズマ28による処理は、約3,000ワットの電力、且つ実質的に酸素からなる約15リットル/分のガス流量で、大気プラズマ28内におけるフレキシブル回路122の、約38秒の滞留時間を伴って、行われ得る。
【0066】
記載の例示的な実施形態に対して、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変形及び追加を行うことができる。例えば、上述の実施形態は特定の特徴を示すが、本発明の範囲は、異なる組合せの特徴を有する実施形態や、すべての記載された特徴を含まない実施形態も含む。したがって、本発明の範囲は、そのすべての同等形とともに、請求項の範囲内に該当するすべてのそのような代替形、変形及び変化形を包含するように意図される。