特許第6765415号(P6765415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765415
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20200928BHJP
【FI】
   A61M25/09 516
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-502520(P2018-502520)
(86)(22)【出願日】2016年11月11日
(86)【国際出願番号】JP2016083565
(87)【国際公開番号】WO2017149843
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2019年9月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-38380(P2016-38380)
(32)【優先日】2016年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】藤木 常生
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05372144(US,A)
【文献】 国際公開第2014/162393(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するワイヤ本体と、
前記ワイヤ本体の外周で、かつ、その長手方向の途中に設けられ、管状をなす管状部と、
前記管状部の先端部および基端部のうちの少なくとも一方の端部を、前記ワイヤ本体の中心軸に対して回転可能に内側から支持する支持部と、を備え
前記ワイヤ本体は、外径が一定の外径一定部を有し、
前記支持部は、前記管状部の先端部を支持する先端側支持部と、前記管状部の基端部を支持する基端側支持部とを有し、
前記基端側支持部は、外径が一定の外径一定部と、テーパ状のテーパ部とを有する筒状の部材で構成されており、
前記ワイヤ本体の前記外径一定部は、前記基端側支持部の中に挿通されていることを特徴とするガイドワイヤ。
【請求項2】
前記支持部は、当該ガイドワイヤに外力を付与しない自然状態において、前記管状部の内周部と前記ワイヤ本体の外周部とが離間した状態で支持する請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
前記支持部は、前記ワイヤ本体に固定されている請求項1または2に記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記管状部は、線材が螺旋状に巻回されてなるコイルで構成され、
前記先端側支持部は、筒状をなし、
前記支持部の外周部には、前記線材が挿入される螺旋状の溝が設けられている請求項3に記載のガイドワイヤ。
【請求項5】
前記ワイヤ本体の先端外周部で、かつ、前記管状部よりも先端側に設けられた先端コイルと、前記先端コイルの基端部を前記ワイヤ本体に固定する固定部とを有し、
前記先端側支持部は、前記固定部と一体的に形成されている請求項3または4に記載のガイドワイヤ。
【請求項6】
前記先端側支持部は、筒状をなし、
前記支持部は、前記ワイヤ本体に対して、前記ワイヤ本体の中心軸回りに回転可能に構成されている請求項1または2に記載のガイドワイヤ。
【請求項7】
前記支持部と前記管状部とは、固定されている請求項6に記載のガイドワイヤ。
【請求項8】
前記ワイヤ本体の先端外周部で、かつ、前記管状部よりも先端側に設けられた先端コイルを有し、
前記先端側支持部は、筒状をなし、
前記支持部の内径は、前記先端コイルの外径よりも小さい請求項6または7に記載のガイドワイヤ。
【請求項9】
前記テーパ部の外径は、前記管状部とは遠ざかる方向に向って漸減している請求項ないし8のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。
【請求項10】
前記管状部の前記ワイヤ本体の長手方向の移動を規制する規制部を有している請求項1ないし9のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ガイドワイヤは、外科的手術が困難な部位の治療、または人体への低侵襲を目的とした治療や、心臓血管造影などの検査に用いられるカテーテルを誘導するのに使用される。例えばPCI(Percutaneous Coronary Intervetion:経皮的冠状動脈インターベンション)を行なう際、X線透視下で、ガイドワイヤの先端をバルーンカテーテルの先端より突出させた状態で、バルーンカテーテルと共に目的部位である冠状動脈の狭窄部付近まで挿入され、バルーンカテーテルの先端部を血管狭窄部付近まで誘導する。
【0003】
このような治療に用いられるガイドワイヤとしては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。このガイドワイヤは、可撓性を有するワイヤ本体(コアワイヤー)と、ワイヤ本体の先端部に固定された一次コイルと、一次コイルの基端側に設けられ、ワイヤ本体の外周を覆うように設置された二次コイルと、を有している。この二次コイルは、ワイヤ本体および一次コイルとは、非固定的に設けられている。このため、二次コイルは、ワイヤ本体および一次コイルに対して、独立して回転することができる。よって、例えば、血管狭窄部等において二次コイルが挟まれたとしても、ワイヤ本体および先端コイルを回転操作することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のガイドワイヤでは、ワイヤ本体と二次コイルとは離間しており、それらの間には間隙が形成されている。このため、ワイヤ本体と二次コイルとの間で軸ずれが生じることがある。すなわち、ワイヤ本体と二次コイルとが、不本意に径方向にずれることがある。このずれの程度によっては、操作性が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】2002−143320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、急峻に湾曲した血管内または血管狭窄部内でも優れた操作性を発揮することができるガイドワイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(10)の本発明により達成される。
(1) 可撓性を有するワイヤ本体と、
前記ワイヤ本体の外周で、かつ、その長手方向の途中に設けられ、管状をなす管状部と、
前記管状部の先端部および基端部のうちの少なくとも一方の端部を、前記ワイヤ本体の中心軸に対して回転可能に内側から支持する支持部と、を備え
前記ワイヤ本体は、外径が一定の外径一定部を有し、
前記支持部は、前記管状部の先端部を支持する先端側支持部と、前記管状部の基端部を支持する基端側支持部とを有し、
前記基端側支持部は、外径が一定の外径一定部と、テーパ状のテーパ部とを有する筒状の部材で構成されており、
前記ワイヤ本体の前記外径一定部は、前記基端側支持部の中に挿通されていることを特徴とするガイドワイヤ。
【0008】
(2) 前記支持部は、当該ガイドワイヤに外力を付与しない自然状態において、前記管状部の内周部と前記ワイヤ本体の外周部とが離間した状態で支持する上記(1)に記載のガイドワイヤ。
【0009】
(3) 前記支持部は、前記ワイヤ本体に固定されている上記(1)または(2)に記載のガイドワイヤ。
【0010】
(4) 前記管状部は、線材が螺旋状に巻回されてなるコイルで構成され、
前記先端側支持部は、筒状をなし、
前記支持部の外周部には、前記線材が挿入される螺旋状の溝が設けられている上記(3)に記載のガイドワイヤ。
【0011】
(5) 前記ワイヤ本体の先端外周部で、かつ、前記管状部よりも先端側に設けられた先端コイルと、前記先端コイルの基端部を前記ワイヤ本体に固定する固定部とを有し、
前記先端側支持部は、前記固定部と一体的に形成されている上記(3)または(4)に記載のガイドワイヤ。
【0012】
(6) 前記先端側支持部は、筒状をなし、
前記支持部は、前記ワイヤ本体に対して、前記ワイヤ本体の中心軸回りに回転可能に構成されている上記(1)または(2)に記載のガイドワイヤ。
【0013】
(7) 前記支持部と前記管状部とは、固定されている上記(6)に記載のガイドワイヤ。
【0014】
(8) 前記ワイヤ本体の先端外周部で、かつ、前記管状部よりも先端側に設けられた先端コイルを有し、
前記先端側支持部は、筒状をなし、
前記支持部の内径は、前記先端コイルの外径よりも小さい上記(6)または(7)に記載のガイドワイヤ。
【0015】
(9) 前記テーパ部の外径は、前記管状部とは遠ざかる方向に向って漸減している上記()ないし(8)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【0016】
(10) 前記管状部の前記ワイヤ本体の長手方向の移動を規制する規制部を有している上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、管状部がワイヤ本体に対して回転可能に構成されているため、例えば、狭窄部位にて管状部が挟まれたとしても、ワイヤ本体の回転操作を行うことができる。
【0018】
特に、管状部を支持する支持部を有しているため、管状部とワイヤ本体との間に軸ずれが生じたりするのを防止することができる。すなわち、管状部とワイヤ本体との位置関係を規制することができる。その結果、管状部とワイヤ本体とが不本意に径方向にずれるのを防止することができる。
以上より、本発明のガイドワイヤは、操作性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明のガイドワイヤの第1実施形態を示す縦断面図(概略側面図)である。
図2図2は、図1に示す管状部および支持部の拡大断面図である。
図3図3は、本発明のガイドワイヤの第2実施形態の管状部および支持部を示す拡大側面図(一部断面図)である。
図4図4は、本発明のガイドワイヤの第2実施形態の管状部および支持部を示す拡大側面図(一部断面図)である。
図5図5は、本発明のガイドワイヤの第3実施形態の管状部および支持部を示す拡大側面図(一部断面図)である。
図6図6は、本発明のガイドワイヤの第4実施形態の管状部および支持部を示す拡大断面図である。
図7図7は、本発明のガイドワイヤの第5実施形態の管状部および支持部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のガイドワイヤを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明のガイドワイヤの第1実施形態を示す縦断面図(概略側面図)である。図2は、図1に示す管状部および支持部の拡大断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1および図2中の長軸方向に対して右側を「基端」、左側を「先端」と言い、上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図1および図2では、理解を容易にするため、ガイドワイヤの長さ方向を短縮し、ガイドワイヤの径方向(太さ方向)を誇張して模式的に図示しており、長さ方向と径方向の比率は、実際とは異なる(図3以後も同じ)。また、本発明のガイドワイヤは、例えば、血管の管壁間距離が減少した部分である血管狭窄部や血管が急峻に屈曲した部位等で優れた操作性を発揮するが、以下、本発明のガイドワイヤが血管狭窄部内に位置している場合について代表的に説明する。
【0022】
図1に示すガイドワイヤ1は、カテーテル(内視鏡も含む)の内腔に挿入して用いられるカテーテル用ガイドワイヤであって、先端側に配置された第1ワイヤ2と、第1ワイヤ2の基端側に配置された第2ワイヤ3とを接合(接続)してなる可撓性を有するワイヤ本体11と、ワイヤ本体11の先端部に固定部材42、43によって固定されたコイル41を有する先端部材4と、コイル41の基端側で、かつ、ワイヤ本体11の外周に設けられたコイル5(管状部材)と、支持部7と、を備えている。ガイドワイヤ1の全長は、特に限定されないが、200〜5000mm程度であるのが好ましい。また、ガイドワイヤ1の外径は、特に限定されないが、通常、0.2〜1.2mm程度であるのが好ましい。
【0023】
第1ワイヤ2は、柔軟性または弾性を有する線材(芯材)で構成されている。第1ワイヤ2の長さは、特に限定されないが、20〜1000mm程度であるのが好ましい。
【0024】
本実施形態では、第1ワイヤ2は、その外径が一定である部分(外径一定部)と、外径が先端方向へ向かって漸減しているテーパ状の部分(外径漸減部)(テーパ部)とを有する。図示の構成では、第1ワイヤ2は、基端側から先端側に向って順に、外径一定部25と、テーパ部(基端側テーパ部)24と、外径一定部25より外径が小さい外径一定部23と、テーパ部(先端側テーパ部)22と、最先端部21とを有している。
【0025】
前記テーパ部22、24を有することにより、第1ワイヤ2の剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)を先端方向に向かって徐々に減少させることができ、その結果、ガイドワイヤ1は、先端部に良好な柔軟性を得て、血管等の生体管腔(体腔)への追従性、安全性が向上すると共に、折れ曲がり等も防止することができる。
【0026】
テーパ部22、24のテーパ角度(外径の減少率)は、それぞれ、ワイヤ本体11の長手方向(以下、単に「長手方向」と言う)に沿って一定でも、長手方向に沿って変化する部位があってもよい。例えば、テーパ角度(外径の減少率)が比較的大きい箇所と比較的小さい箇所とが複数回交互に繰り返して形成されているようなものでもよい。
【0027】
最先端部21は、例えば、外径一定部23より外径が小さい外径一定部とすることができる。
【0028】
また、最先端部21は、例えば、平板状(リボン状)をなし、所望の形状に変形(リシェイプ:形状付け)させて用いることができるように構成してもよい。一般に、ガイドワイヤでは、誘導するカテーテル等の先端部を血管形状に対応させたり、血管分岐に円滑に誘導したりするために、医師がガイドワイヤの先端部を予め所望の形状に曲げて使用することがあり、このようにガイドワイヤの先端部を所望の形状に曲げることをリシェイプと言う。そして、この最先端部21を設けることにより、リシェイプを容易かつ確実に行うことができ、ガイドワイヤ1を生体内に挿入する際の操作性が格段に向上する。
【0029】
最先端部21の長さは、特に限定されないが、5〜200mm程度であるのが好ましく、10〜150mm程度であるのがより好ましい。
【0030】
第1ワイヤ2の構成材料(素材)は、特に限定されず、例えば、Ni−Ti系合金、ステンレス鋼などの各種金属材料を使用することができるが、擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む。)であるのが好ましい。より好ましくは超弾性合金である。超弾性合金は、比較的柔軟であるとともに復元性があり、曲がり癖が付き難いので、第1ワイヤ2を超弾性合金で構成することにより、ガイドワイヤ1は、その先端側の部分に十分な柔軟性と曲げに対する復元性が得られ、複雑に湾曲・屈曲する血管に対する追従性が向上し、より優れた操作性が得られるとともに、第1ワイヤ2が湾曲・屈曲変形を繰り返しても、第1ワイヤ2の復元性により曲がり癖が付かないので、ガイドワイヤ1の使用中に第1ワイヤ2に曲がり癖が付くことによる操作性の低下を防止することができる。
【0031】
第1ワイヤ2の基端(外径一定部25の基端)には、第2ワイヤ3の先端が接合(接続)されている。第2ワイヤ3は、剛性が高い線材(芯材)で構成されている。第2ワイヤ3の長さは、特に限定されないが、20〜4800mm程度であるのが好ましく、1400〜3000mm程度であるのがより好ましい。
【0032】
前記第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との接合方法は、特に限定されず、例えば、溶接やろう付けや、種々の方法を用いることができるが、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とは溶接により接合されているのが好ましい。
【0033】
第2ワイヤ3は、第1ワイヤ2と異なる材料で構成されており、特に、第1ワイヤ2の構成材料より弾性率(ヤング率(縦弾性係数)、剛性率(横弾性係数)、体積弾性率)が大きい材料で構成されているのが好ましい。これにより、第2ワイヤ3に適度な剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)が得られ、ガイドワイヤ1がいわゆるコシの強いものとなって押し込み性およびトルク伝達性が向上し、より優れた操作性が得られる。
【0034】
第2ワイヤ3の構成材料(素材)は、第1ワイヤ2と異なるものであれば特に限定されず、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F、SUS302等のSUS全品種)、ピアノ線、コバルト系合金、擬弾性合金などの各種金属材料を使用することができるが、ステンレス鋼またはコバルト系合金であるのが好ましく、ステンレス鋼であるのがより好ましい。第2ワイヤ3をステンレス鋼またはコバルト系合金で構成することにより、ガイドワイヤ1は、より優れた押し込み性およびトルク伝達性が得られる。
【0035】
なお、本実施形態では、ワイヤ本体11は、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とを接合したものであるが、これに限らず、例えば、1本の連続した線材で構成されていてもよい。
【0036】
図1に示すように、ワイヤ本体11の先端部外周、すなわち、第1ワイヤ2の最先端部21、テーパ部22の先端部の外周には、外径および内径が一定であるコイル41が設置されている。このコイル41は、線材40を螺旋状に巻回してなる部材であり、ワイヤ本体11の先端部、すなわち、第1ワイヤ2の最先端部21と、テーパ部22の基端部を除く部分とを覆うように設置されている。また、第1ワイヤ2は、コイル41の内側のほぼ中心部に非接触で挿通されている。
【0037】
コイル41の長さ(ワイヤ本体11の長手方向の長さ)は、5〜500mmが好ましく、10〜300mmがより好ましい。また、コイル41の内径(ワイヤ本体11の周方向の内径)は0.1〜0.95mmが好ましく、0.2〜0.7mmがより好ましい。
【0038】
このようなコイル41は、金属材料で構成されているのが好ましい。コイル41を構成する金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、超弾性合金、コバルト系合金や、金、白金、タングステン等の貴金属またはこれらを含む合金(例えば白金−イリジウム合金)等が挙げられる。特に、貴金属のようなX線不透過材料で構成した場合には、ガイドワイヤ1にX線造影性が付与され、X線透視下で先端部の位置を確認しつつ生体内に挿入することができ、好ましい。また、コイル41は、その先端側と基端側とを異なる材料で構成してもよい。例えば、先端側をX線不透過材料のコイル、基端側をX線を比較的透過する材料(ステンレス鋼など)のコイルにて各々構成してもよい。
【0039】
コイル41の先端部および基端部は、それぞれ、固定部材42および固定部材43により第1ワイヤ2に固定されている。固定部材42は、最先端部21に設けられている。また、固定部材43は、テーパ部22に設けられている。
【0040】
これら固定部材42、43は、半田(ろう材)または樹脂材料で構成されている。なお、固定部材42および固定部材43は、半田に限らず、接着剤でもよい。また、コイル41の固定方法は、固定部材によるものに限らず、例えば、溶接でもよい。また、血管等の体腔の内壁の損傷を防止するために、固定部材42の先端面は、丸みを帯びているのが好ましい。
【0041】
このようなコイル41が設置されていることにより、ガイドワイヤ1の先端部において適度の柔軟性が得られ、また、第1ワイヤ2は、コイル41に覆われて、例えば血管との接触面積が少ないので、摺動抵抗を低減することができ、よって、ガイドワイヤ1の操作性がより向上する。
【0042】
コイル41の基端側で、かつ、ワイヤ本体11の外周には、コイル5が設けられている。
【0043】
コイル5は、線材50が巻回されてなる部材であり、テーパ部22の基端部、外径一定部23を覆うように設けられている。また、線材50は、ガイドワイヤ1の長手方向に沿って隣り合う部分同士が互いに接触する、いわゆる、「密」巻きになっている。
【0044】
また、コイル5は、その長手方向の全長にわたってワイヤ本体11に対して非固定的に設けられており、先端部材4(コイル41および固定部材43)に対しても非固定的に設けられている。これにより、コイル5は、その長手方向の全長にわたって、ワイヤ本体11およびコイル41に対して独立して回転することができる。
【0045】
コイル5の長さは、コイル41の長さよりも長いのが好ましい。具体的には、コイル5の長さは、10〜500mmが好ましく、50〜300mmがより好ましい。また、コイル5の長さは、ワイヤ本体11の長さの0.3〜30%が好ましく、1.5〜15%がより好ましい。これにより、ガイドワイヤ1では、できる限りコイル5で血管狭窄部100を受けることができる。なお、コイル5は、ガイドワイヤ1の使用時においては、血管等の生体管腔中に挿入された状態となる。
【0046】
また、コイル5の内径および外径は、コイル41と同等であるのが好ましい。特に、コイル5の外径がコイル41の外径と同等であることにより、ガイドワイヤ1全体で見たとき、その外周に段差が形成されるのを防止または抑制することができる。よって、例えば、カテーテル等の他の医療器具や血管に引っ掛かるのを防止することができる。
【0047】
コイル5の内周部51には、コイル5とワイヤ本体11との摺動抵抗を低減させる摺動抵抗低減処理が施されていてもよい。本実施形態では、コイル5の内周面に、親水性材料で構成された親水性潤滑層52が被覆されている(図1および図2参照)。これにより、親水性材料が湿潤して潤滑性を生じ、コイル5とワイヤ本体11との摩擦(摺動抵抗)が低減し、摺動性が向上する。
【0048】
親水性材料(親水性潤滑層52の構成材料)としては、例えば、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、グリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミド(PGMA−DMAA)のブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0049】
本実施形態では、親水性潤滑層52は、コイル5の内周部51に設けられているが、ワイヤ本体11の外周部111全体に設けられていてもよい。さらに、コイル5の外周部分にも設けられていてもよい。これにより、ガイドワイヤ1とともに用いられるカテーテルの内壁との摩擦抵抗(摺動抵抗)を低減する。よって、ガイドワイヤ1の摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1の操作性がより良好なものとなる。
【0050】
以上、摺動抵抗低減処理材として親水性材料を用いた例を示したが、本発明ではこれに限定されず、例えば、フッ素系樹脂やケイ素系樹脂等を用いてもよい。フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等が挙げられる。またケイ素系樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂等が挙げられる。さらにはこれらの複合材料を用いてもよい。
【0051】
また、ガイドワイヤ1は、ワイヤ本体11の外周面(外表面)の全部または一部を覆う樹脂被覆層8、9を有している。図示の構成では、ワイヤ本体11の接合部6の外周に樹脂被覆層9が設けられ、それよりも基端側の部分の外周部に樹脂被覆層8が設けられている。
【0052】
この樹脂被覆層8、9は、種々の目的で形成することができるが、その一例として、ガイドワイヤ1の摩擦抵抗(摺動抵抗)を低減し、摺動性を向上させることによってガイドワイヤ1の操作性を向上させることがある。
【0053】
ガイドワイヤ1の摩擦抵抗(摺動抵抗)の低減を図るためには、樹脂被覆層8、9は、以下に述べるような摩擦抵抗を低減し得る材料で構成されているのが好ましい。これにより、ガイドワイヤ1とともに用いられるカテーテルの内壁との摩擦抵抗(摺動抵抗)が低減されて摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1の操作性がより良好なものとなる。また、ガイドワイヤ1の摺動抵抗が低くなることで、ガイドワイヤ1をカテーテル内で移動および/または回転した際に、ガイドワイヤ1のキンク(折れ曲がり)やねじれ、特に、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3の接合部(接合面)6付近におけるキンクやねじれをより確実に防止することができる。
【0054】
樹脂被覆層8、9を構成する材料としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE等)、またはこれらの複合材料が挙げられる。
【0055】
その中でも特に、フッ素系樹脂(またはこれを含む複合材料)を用いた場合には、ガイドワイヤ1とカテーテルの内壁との摩擦抵抗(摺動抵抗)をより効果的に低減し、摺動性を向上させることができ、カテーテル内でのガイドワイヤ1の操作性がより良好なものとなる。また、これにより、ガイドワイヤ1をカテーテル内で移動および/または回転した際に、ガイドワイヤ1のキンク(折れ曲がり)やねじれ、特に溶接部付近におけるキンクやねじれをより確実に防止することができる。
【0056】
また、フッ素系樹脂(またはこれを含む複合材料)を用いた場合には、焼きつけ、吹きつけ等の方法により、樹脂材料を加熱した状態で、ワイヤ本体11への被覆を行うことができる。これにより、ワイヤ本体11と、樹脂被覆層8、9との密着性は特に優れたものとなる。
【0057】
また、樹脂被覆層8、9がシリコーン樹脂(またはこれを含む複合材料)で構成されたものであると、樹脂被覆層8、9を形成する(ワイヤ本体11に被覆する)際に、加熱しなくても、ワイヤ本体11に確実かつ強固に密着した樹脂被覆層8を形成することができる。すなわち、樹脂被覆層8、9をシリコーン樹脂(またはこれを含む複合材料)で構成されたものとする場合、反応硬化型の材料等を用いることができるため、樹脂被覆層8、9の形成を室温にて行うことができる。このように、室温にて樹脂被覆層8、9を形成することにより、簡便にコーティングができるとともに、接合部6における接合強度を十分に維持した状態にてガイドワイヤの操作ができる。
【0058】
樹脂被覆層8、9を構成する材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
樹脂被覆層8、9の厚さは、特に限定されず、樹脂被覆層8、9の形成目的や構成材料、形成方法等を考慮して適宜選択されるが、通常は、樹脂被覆層8、9の厚さ(平均)は、1〜100μm程度であるのが好ましく、1〜30μm程度であるのがより好ましい。樹脂被覆層8、9の厚さが薄すぎると、樹脂被覆層8、9の形成目的が十分に発揮されないことがあり、また、樹脂被覆層8、9の剥離が生じるおそれがある。また、樹脂被覆層8、9の厚さが厚すぎると、ワイヤ本体11の物理的特性に影響を与えるおそれがあり、また樹脂被覆層8、9の剥離が生じるおそれがある。
なお、樹脂被覆層8、9は、単層でもよく、また、2層以上の積層体でもよい。
【0059】
また、本発明では、ワイヤ本体11の外周面(表面)に、樹脂被覆層8、9の密着性を向上するための処理(粗面加工、化学処理、熱処理等)を施したり、樹脂被覆層8、9の密着性を向上し得る中間層を設けたりすることもできる。
【0060】
さて、ガイドワイヤ1は、コイル5を、ワイヤ本体11に対して、ワイヤ本体11の中心軸O回りに回転可能に内側から支持する支持部7を有している。支持部7は、コイル5の先端部を支持する先端側支持部71と、コイル5の基端部を支持する基端側支持部72とを有している。
【0061】
図1および図2に示すように、先端側支持部71は、固定部材43のコイル41を固定する固定部材本体431から、基端側に突出形成されており、ワイヤ本体11に固定されている。
【0062】
先端側支持部71は、円筒状をなしており、コイル5の先端部に挿入されている。また、先端側支持部71は、コイル5とは非固定的に設けられており、コイル5と当接してコイル5を支持している。
【0063】
また、先端側支持部71の外径は、固定部材本体431の外径よりも小さい。これにより、固定部材本体431と先端側支持部71との間には、段差部(規制部)711が形成されている。
【0064】
基端側支持部72は、先端側支持部71よりも基端側に配置されている。また、基端側支持部72は、ワイヤ本体11の外径一定部23がその中に挿通された筒状の部材で構成されている。この基端側支持部72は、ワイヤ本体11に固定されている。
【0065】
基端側支持部72は、外径が一定の外径一定部721と、テーパ状のテーパ部722とを有している。
【0066】
外径一定部721は、その外径がコイル5の内径と略同等であり、コイル5の基端部に挿入されている。また、外径一定部721は、コイル5とは非固定的に設けられており、コイル5と当接してコイル5を支持している。
【0067】
テーパ部722は、先端側に最大外径を有し、基端側に最少外径を有している。また、テーパ部722は、外径が基端側に向って連続的に漸減している。これにより、テーパ部722とワイヤ本体11との間に急峻な段差が形成されるのを防止することができる。よって、例えば、カテーテル等の他の医療器具や血管に引っ掛かるのを防止することができる。
【0068】
また、テーパ部722の先端の最大外径は、外径一定部721の外径よりも大きい。これにより、外径一定部721とテーパ部722との境界には段差部(規制部)723が形成されている。
【0069】
このような先端側支持部71および基端側支持部72によってコイル5は、その全長にわたって、ワイヤ本体11に対して中心軸O回りに回転可能になっている。これにより、図1に示すように、コイル5が血管狭窄部100に挟まれたとしても、ガイドワイヤ1の基端部を回転操作すると、ワイヤ本体11および先端部材4は、コイル5に対して回転することができる。よって、図1に示すような状態であっても、回転操作を行うことができ、ガイドワイヤ1の先端部の向きを変更したりすることができる。その結果、ガイドワイヤ1は、血管狭窄部100内でも優れた操作性を発揮することができる。
【0070】
なお、前記では、一例として血管狭窄部100内で回転操作を行う場合について説明したが、図示はしないが、急峻に湾曲した血管内であっても同様に回転操作を行うことができ、ガイドワイヤ1は、優れた操作性を発揮することができる。
【0071】
特に、支持部7は、ガイドワイヤ1に外力を付与しない自然状態において、コイル5の内周部51とワイヤ本体11の外周部111とが離間した状態で互いに支持している。これにより、コイル5とワイヤ本体11とが接触したとしても、これらが相対的に回転するのを阻害するのを防止または抑制することができる。
【0072】
さらに、コイル5は、先端側支持部71および基端側支持部72によって、コイル5がワイヤ本体11に対して、その径方向にずれる、すなわち、軸ずれが生じるのが防止されている。これにより、コイル5とワイヤ本体11との径方向の位置関係を規制することができる。よって、ガイドワイヤ1全体で見たとき、コイル5とワイヤ本体11とが径方向にずれることによって段差が形成されるのを防止することができる。その結果、例えば、カテーテル等の他の医療器具や血管に引っ掛かるのを防止することができる。
【0073】
また、コイル5が図1および図2に示す位置よりも先端側に移動する方向に外力が加わったとしても、コイル5の先端部は、先端側支持部71と固定部材本体431との境界に形成された段差部711と当接する。これにより、コイル5が段差部711よりも先端側に移動するのを防止することができる。すなわち、コイル5の先端側への移動を規制することができる。その結果、コイル5が固定部材本体431やコイル41に乗り上げるのを防止することができる。
【0074】
また、前記とは逆に、コイル5が図1および図2に示す位置よりも基端側に移動する方向に外力が加わったとしても、コイル5の基端部は、外径一定部721とテーパ部722との間に形成された段差部723と当接する。これにより、コイル5が段差部723よりも基端側に移動するのを防止することができる。すなわち、コイル5の基端側への移動を規制することができる。その結果、コイル5がワイヤ本体11のテーパ部24や外径一定部25に乗り上げるのを防止することができる。
【0075】
なお、先端側支持部71および基端側支持部72の構成材料としては、特に限定されないが、固定部材42および固定部材43と同様の構成材料であるのが好ましい。これにより、固定部材42および固定部材43を形成する工程において先端側支持部71および基端側支持部72を形成することができる。すなわち、コイル41をワイヤ本体11に固定する工程において、コイル5をワイヤ本体11に支持することができる。よって、ガイドワイヤ1を製造する工程を簡素にすることができる。
【0076】
また、固定部材43は、コイル41を固定する部分と、コイル5に遊嵌されている部分とに分かれていてもよい。これにより、コイル5の回転がより円滑になる。
【0077】
<第2実施形態>
図3および図4は、本発明のガイドワイヤの第2実施形態の管状部および支持部を示す拡大側面図(一部断面図)である。
【0078】
図3および図4に示すように、ガイドワイヤ1Aの支持部7Aでは、先端側支持部71は、溝712を有しており、基端側支持部72は、溝724を有している。
【0079】
溝712は、先端側支持部71の外周部に、中心軸O回りに螺旋状に形成されている。この溝712は、コイル5の線材50の螺旋形状に対応している。溝712には、コイル5の線材50の一部が入り込んでおり、コイル5が回転することにより、線材50が溝712内を摺動し、コイル5が中心軸方向に移動することができる。
【0080】
溝724は、基端側支持部72の外周部に、中心軸O回りに螺旋状に形成されている。また、溝724は、中心軸O方向に隣り合う部分同士が非連通となっている。この溝724は、コイル5の線材50の螺旋形状に対応している。溝724には、コイル5の線材50の一部が入り込んでおり、コイル5が回転することにより、線材50が溝724内を摺動し、コイル5が中心軸O方向に移動することができる。
【0081】
このようなガイドワイヤ1Aでは、コイル5がワイヤ本体11に対して回転し、ワイヤ本体11に対して先端側に移動した状態(図3参照)と、コイル5が前記とは反対側に回転してワイヤ本体11に対して基端側に移動した状態(図4参照)とをとり得る。
【0082】
また、図3に示すように、コイル5がワイヤ本体11に対して最も先端側に移動した状態では、段差部711によって、コイル5は、それ以上先端側に移動するのが規制されている。このとき、コイル5の基端部は、基端側支持部72に支持されている。
【0083】
一方、図4に示すように、コイル5がワイヤ本体11に対して最も基端側に移動した状態では、段差部723によって、コイル5は、それ以上基端側に移動するのが規制されている。このとき、コイル5の先端部は、先端側支持部71に支持されている。
【0084】
このように、ガイドワイヤ1Aでは、コイル5は、ガイドワイヤ1Aにおける長手方向の位置に関わらず、支持部7Aに両端を確実に支持された状態となる。よって、コイル5とワイヤ本体11とに軸ずれが生じるのを防止することができる。
【0085】
特に、ガイドワイヤ1Aでは、コイル5に対して中心軸O方向に移動する方向に力が加わったとしても、コイル5が回転する方向に力が加わらない限りは、コイル5が中心軸O方向に沿って移動するのが防止されている。これにより、コイル5が中心軸O方向に不本意に移動するのを可及的に抑止することができる。
【0086】
<第3実施形態>
図5は、本発明のガイドワイヤの第3実施形態の管状部および支持部を示す拡大側面図(一部断面図)である。
【0087】
ガイドワイヤ1Bの支持部7Bでは、先端側支持部71および基端側支持部72は、それぞれ、ワイヤ本体11に対して回転可能に構成されている。
【0088】
先端側支持部71は、円筒状の部材で構成されている。また、先端側支持部71は、固定部材43とは、別体で構成されている。また、先端側支持部71は、先端部に、コイル5から遠ざかるに方向に向って、すなわち、先端側に向って外径が漸減するテーパ部713を有している。また、先端側支持部71には、コイル5の先端部が埋設されており、固定されている。
【0089】
基端側支持部72は、円筒状の部材で構成されている。また、基端側支持部72は、基端部に、外径が基端側に向って漸減するテーパ部725を有している。また、基端側支持部72には、コイル5の基端部が埋設されており、固定されている。
【0090】
また、支持部7Bは、ワイヤ本体11の外径一定部23の、基端側支持部72の基端側に設けられたリング状の規制部73を有している。この規制部73は、外径一定部に固定されている。これにより、支持部7Bが規制部73よりも基端側に移動することを規制することができる。
【0091】
このようなガイドワイヤ1Bでは、コイル5が中心軸O回りに回転する方向に力が加わったとき、コイル5は、先端側支持部71および基端側支持部72に支持されつつ、ワイヤ本体11に対して先端側支持部71および基端側支持部72とともに回転する。これにより、コイル5は、より安定的に回転することができる。その結果、コイル5とワイヤ本体11とに軸ずれが生じるのをより確実に防止することができる。
【0092】
さらに、テーパ部713およびテーパ部725によって、コイル5がコイル41に乗り上げたり、規制部73に乗り上げたりすることを、さらに確実に防止することができる。
【0093】
なお、図示はしないが、本実施形態では、先端側支持部71および基端側支持部72の内周面に、前記第1実施形態で述べたような摺動抵抗低減処理が施されているのが好ましい。これにより、コイル5は、より円滑に回転することができる。
【0094】
<第4実施形態>
図6は、本発明のガイドワイヤの第4実施形態の管状部および支持部を示す拡大断面図である。
【0095】
ガイドワイヤ1Cでは、ワイヤ本体11のテーパ部24と外径一定部25との境界部に溝26が設けられている。溝26は、ワイヤ本体11の周方向に沿って形成されたリング状の溝で構成されている。この溝26内には、コイル5の基端部の線材50が挿入されている。この状態では、コイル5の線材50の挿入されている部分は、溝26の内周部261によって、中心軸O回りに回転可能に支持されている。さらに、この状態では、線材50の挿入されている部分は、溝26の内周部261によって、基端側への移動が規制されている。
【0096】
このように、ガイドワイヤ1Cによれば、ワイヤ本体11の溝26が基端側支持部として機能する。これにより、第1実施形態と同様の効果を発揮することができるとともに、第1実施形態での基端側支持部72の形成を省略することができ、ガイドワイヤ1Cの製造工程を簡素にすることができる。さらに、本実施形態では、コイル5は、基端側への移動が規制されているため、操作性をさらに高めることができる。
【0097】
<第5実施形態>
図7は、本発明のガイドワイヤの第5実施形態の管状部および支持部を示す拡大断面図である。
【0098】
ガイドワイヤ1Dでは、ワイヤ本体11の外径一定部23と、コイル5との間には、コイル74、75が設けられている。
【0099】
コイル74は、コイル5の先端部と外径一定部23との間に設けられている。コイル74は、線材741が中心軸O回りに巻回されてなる部材である。コイル74は、コイル5よりも長さが短く、その外周部がコイル5と固定されている。また、コイル74は、内周部が外径一定部23と当接しており、ワイヤ本体11に対して回転可能に構成されている。
【0100】
コイル75は、コイル5の基端部と外径一定部23との間に設けられている。コイル75は、線材751が中心軸O回りに巻回されてなる部材である。コイル75は、コイル5よりも長さが短く、その外周部が、図示しない接着剤層等を介してコイル5と固定されている。また、コイル75は、内周部が外径一定部23と当接しており、ワイヤ本体11に対して回転可能に構成されている。
【0101】
このようなガイドワイヤ1Dでは、コイル5は、コイル74および75に支持されつつ、コイル74およびコイル75とともにワイヤ本体11に対して回転することができる。よって、前記各実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0102】
なお、コイル74およびコイル75は、コイル5と一体的に形成されてもよい。すなわち、コイル5では、先端部および基端部において、線材50が二重に巻回され、径方向に重なるよう構成してもよい。これにより、ガイドワイヤ1Dの製造工程をさらに簡素にすることができる。
【0103】
以上、本発明のガイドワイヤを、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0104】
なお、各実施形態では、管状部がコイルで構成されている場合について説明したが、本発明ではこれに限定されず、例えば、管状部は、チューブ状の部材や、多数のリングが同心的に配置されて連結された部材で構成されていてもよい。
【0105】
また、前記各実施形態では、各コイルを構成する線材の横断面形状は円形をなしているが、本発明ではこれに限定されず、例えば、半円状や偏平形状等をなしてもよい。
【0106】
また、前記各実施形態では、支持部は、管状部の両端部を支持する構成であったが、本発明ではこれに限定されず、先端部および基端部の少なくとも一方の端部を支持する機能を有していれば、本発明の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明のガイドワイヤは、可撓性を有するワイヤ本体と、前記ワイヤ本体の外周で、かつ、その長手方向の途中に設けられ、管状をなす管状部と、前記管状部の先端部および基端部のうちの少なくとも一方の端部を、前記ワイヤ本体の中心軸に対して回転可能に内側から支持する支持部と、を備え、前記ワイヤ本体は、外径が一定の外径一定部を有し、
前記支持部は、前記管状部の先端部を支持する先端側支持部と、前記管状部の基端部を支持する基端側支持部とを有し、前記基端側支持部は、外径が一定の外径一定部と、テーパ状のテーパ部とを有する筒状の部材で構成されており、前記ワイヤ本体の前記外径一定部は、前記基端側支持部の中に挿通されていることを特徴とする。そのため、管状部がワイヤ本体に対して回転可能に構成されているため、例えば、狭窄部位にて管状部が挟まれたとしても、ワイヤ本体の回転操作を行うことができる。
【符号の説明】
【0108】
1、1A、1B、1C、1D ガイドワイヤ
11 ワイヤ本体
111 外周部
2 第1ワイヤ
21 最先端部
22、24 テーパ部
23、25 外径一定部
26 溝
261 内周部
3 第2ワイヤ
4 先端部材
40 線材
41 コイル
42、43 固定部材
431 固定部材本体
5 コイル
50 線材
51 内周部
52 親水性潤滑層
6 接合部
7、7A、7B 支持部
71 先端側支持部
711 段差部
712 溝
713、722、725 テーパ部
72 基端側支持部
721 外径一定部
723 段差部
724 溝
73 規制部
74、75 コイル
741、751 線材
8、9 樹脂被覆層
100 血管狭窄部
O 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7