(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765420
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】柔軟な靴のソール構造
(51)【国際特許分類】
A43B 13/14 20060101AFI20200928BHJP
【FI】
A43B13/14 A
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-512486(P2018-512486)
(86)(22)【出願日】2016年5月18日
(65)【公表番号】特表2018-516727(P2018-516727A)
(43)【公表日】2018年6月28日
(86)【国際出願番号】EP2016061149
(87)【国際公開番号】WO2016184920
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2019年2月8日
(31)【優先権主張番号】00702/15
(32)【優先日】2015年5月20日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】517405943
【氏名又は名称】オン クローズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】On Clouds GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト、オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ハイツ、イルマリン
【審査官】
粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
独国実用新案第202014003016(DE,U1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0259748(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0144695(US,A1)
【文献】
特開平08−280406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/00−13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟弾性ミッドソール(20)を有する柔軟な靴のソール構造であって、
前記軟弾性ミッドソール(20)は、歩行時、地面に少なくとも部分的に接触し、溝形エレメント(21)を有し、前記溝形エレメント(21)は側面が開口した平底を備え、
前記ミッドソールの長手方向に対して横方向に方向付けられており、地面に向かって下方に突出しており、
前記ミッドソール(20)はエッジストリップ(23)を有し、前記エッジストリップ(23)は各前記溝形エレメント(21)を繋ぎ、前記溝形エレメント内の溝の断面を狭め、前記溝形エレメントの前記側面開口(24)の高さを決定し、
複数の所定折畳切欠(25)は前記溝形エレメント(21)の外側に面するフェース側に水平方向に設けられており、
歩行時、垂直及び/又は長手方向に作用する力に応じて、前記溝形エレメント(21)は前記エッジストリップ(23)部内の、前記溝形エレメント(21)の前記側面開口(24)が閉じるまで前記垂直及び/又は長手方向に変形され得る、柔軟な靴のソール構造であって、
前記所定折畳切欠(25)は前記溝形エレメントの前記側面開口(24)の高さとほぼ同じ垂直幅を有し、それぞれ前記溝形エレメントの前記側面開口(24)と整列していることを特徴とする、
柔軟な靴のソール構造。
【請求項2】
前記所定折畳切欠(25)は2.0〜8.0mm、及び/又はその垂直幅の3分の1に対応する深さを有することを特徴とする、請求項1に記載のソール構造。
【請求項3】
縦スロット(22)はかかと部から指球部へと延びており、前記ミッドソール(20)を内側部分と周辺部分とに分割していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のソール構造。
【請求項4】
前記溝形エレメント(21)の厚さは前記かかと部から前記指球部へと減少し、及び/又は、少なくとも最後部の前記溝形エレメント(21)の厚さが前記周辺側よりも前記内側の方が厚いことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のソール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弾性ミッドソールを有する柔軟な靴のソール構造に関する。前記軟弾性ミッドソールは、歩行時、地面に少なくとも部分的に接触し、溝形エレメントを有する。該溝形エレメントは側面が開口した平底を備え、ミッドソールの長手方向に対して横方向に方向付けられており、地面に向かって下方に突出している。上記ミッドソールは、また、エッジストリップを有する。該エッジストリップは、各溝形エレメントを繋ぎ、溝形エレメント内の溝の断面を狭め、溝形エレメントの側面開口の高さを決定する。水平の所定折畳切欠が溝形エレメントの外側に面するフェース側に設けられている。歩行時、垂直及び/又は長手方向に作用する力に応じて、上記溝形エレメントはエッジストリップ部内の、溝形エレメントの側面開口が閉じるまで垂直及び/又は長手方向に変形され得る。
【背景技術】
【0002】
この種のソール構造は独国実用新案第202014003016(U1)号明細書から周知である。周知のソール構造においては、歩行の際に作用する力に応じて溝形エレメントの側面開口が閉じると、溝底部とエッジストリップの下面との接触が起こる。これにより溝形エレメントの変形は実質的に停止し、次の一歩の蹴り出しのための頑丈な固定表面(solid standing surface)を形成する。また、摩擦は、水平に滑動する能力、即ち、表面が互いに接して互いに反対に長手方向に滑動する能力を妨げ、浮揚効果(floating effect)を相殺する。
【0003】
この所望の効果を実現するためには、溝形エレメントがせん断により平らになり、その際に平らな溝底部がエッジストリップの下面に対して平らになると有利である。この変形挙動は所定折畳切欠によって促進されるべきであり、周知のソール構造においては、所定折畳切欠は複数の水平フルートによって形成されている。複数の水平フルートは互いに重なって配され、溝形エレメントの側面開口の高さ及びエッジストリップ部内の両方に均等に分配されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、初めに述べた種類のソール構造の更なる機能的改良を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、
第1の発明のソール構造によって達成される。
第1の発明によるソール構造では、所定折畳切欠は、溝形エレメントの側面開口の高さに対応する垂直幅を有し、それぞれ溝形エレメントの側面開口と整列していることを特徴とする。
【0006】
上記所定折畳切欠は広い幅を有して具現化され、かつ溝形エレメントの側面開口と整列して配置されていることから、本発明による所定折畳切欠にはより大きく際だった、局所集中作用があり、したがって、その変形には、周知のソール構造のより広い面積にわたる複数のフルートで可能なものに比べて、より顕著な案内性(guiding)がある。
【0007】
周知のソール構造のフルートは、事実、溝形エレメントの変形の促進もするものの、本発明とは対照的に、溝形エレメントの高さにわたって均一に分配される変形を促進する。この変形はアコーディオンのベローに類似する。より斜めの応力に曝されたとき、主に溝形エレメントの側腹部のみが圧縮され、その平底の変形をもたらし、膨らみを形成する。本発明による実施形態では、単にわずかに斜めの応力であっても、溝形エレメントは膨らみを形成することなくその平底形状をほぼ維持しながらせん断する傾向がある。
【0008】
前記所定折畳切欠は、2.0〜8.0mm、好ましくはその垂直幅の3分の1に対応する深さを有し得る。
【0009】
ソール構造の他の好適な実施形態は
第2〜第5の発明に開示されるが、これら実施形態は好ましくは周知のソール構造にも既に存在している。
【0010】
ミッドソールは射出成形によって一体構造で効率的に形成することができる。
図面の簡単な説明
【0011】
以下、図面を参照して本発明の例示的実施形態を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明によるソール構造を有する右足靴を後部斜めから見た斜視側面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す靴において、参照符号10は、足を収めるアッパーを示し、参照符号20は、本発明によるソール構造の軟弾性ミッドソールを示す。アウトソールをほとんど排除することによって、ミッドソール20の一部は地面に直接接触する。
図1ではソール構造のミッドソール20のみを見ることができる。
【0014】
靴の長手方向において、ミッドソール20は長手方向に対して横方向に延びる複数の溝形エレメントを有し、複数の溝形エレメントは互いにほぼ同一の幅であり、ほぼ均等な状態に分配されている。
図1では、これらエレメントのうち1つのみに参照符号21を付している。
【0015】
エッジストリップ23は溝形エレメント21の外部補強を与える。エッジストリップ23は、非圧縮性であるが弾性的に柔軟なプレート(
図1に不図示)を取り囲む。このプレートは、アッパー10とミッドソール20との間の、エッジストリップ23のほぼ上縁部の高さに、この上縁部と同一平面状に埋め込まれ、これら部品に接続されている。このプレートはわずか約2mmの厚さしか有しないため、エッジストリップ23によって形成される境界の内側にある溝形エレメント21内の溝の上部空間は、エッジストリップ23自体の下にある側面開口24の高さの約2倍である。換言すると、エッジストリップ23はその外側において、溝形エレメント21をその断面を狭めながら繋いでいる。
【0016】
エッジストリップ23によって取り囲まれたプレートはミッドソール20を強固にし、プレートはソール構造の全体的な弾柔軟性(elastic flexibility)を実質的に決定する。むしろ局所的な弾柔軟性はミッドソール20の溝形エレメント21によって決定される。
【0017】
その外側に面するフェース側において、溝形エレメント21にはその前部及び後部側腹部に水平の所定折畳切欠25が設けられている。所定折畳切欠25は、側面開口24の高さにほぼ対応する垂直幅を有し、互いに整列しているだけでなく、側面開口24とも整列しており、それぞれ側面開口24と同じ高さにある。
【0018】
所定折畳切欠25に対応する窪み26はエレメント21の最後部に設けられており、窪み26はかかと部分の周りの一部分に延びている。
【0019】
所定折畳切欠25は2.0〜8.0mmに対応する深さを有するが、深さはその垂直幅の3分の1であることが好ましい。
図1では、所定折畳切欠は丸みのあるものとして示されるが、これらはV字形としても具現化され得る。
【0020】
概して、溝形エレメントの厚さはかかと部から指球部へと減少する。溝形エレメント21の壁厚もまた、同じ外幅を保持しながら、かかと部から指球部へと靴の長手方向に減少する。かかと部において、溝形エレメント21は、また、後部よりも前部の方が幾分厚く、中足部において、溝形エレメント21は前部と後部とがほぼ同じ厚さであり、指球部において、溝形エレメント21は後部よりも前部の方が幾分薄い。
【0021】
溝形エレメント21の底27はそれぞれ、その溝内の頂部及びその下面の両方が平坦なものとして具現化される。エッジストリップ23及び溝の幾分傾斜した側腹部と共に、底27は側面開口24のほぼ台形断面を形成する。
【0022】
靴の長手方向における溝形エレメント21の相互間隔は、その側面開口24が平らになることにより閉じるまでこの方向におけるせん断力によって溝形エレメント21を個々に変形することができるほど十分に大きくなるように選択される。所定折畳切欠25はこの種の変形を極めて容易にし、且つ促進する。
【0023】
靴のトレッドを下から見た
図2で明らかな通り、縦スロット22はミッドソール20内のかかと部から指球部へと靴のほぼ全長にわたって延びており、ミッドソール20を内側部分と周辺部分とに分割している。2つの部分は、靴のかかとにある後部及び靴の爪先にある前部においてのみ互いに接続されている。縦スロット22は、互いに独立して変形することができる溝形エレメント21の周辺側及び内側隣接対を形成する。
【0024】
図2によれば、縦スロット22は元々湾曲しており、かかと部及び中足部においては、溝形エレメント21は周辺側よりも内側の方が狭く、指球部においては、溝形エレメント21は周辺側よりも内側の方が広くなるように配置されている。縦スロットの形状及び位置によって、特に、ソール構造のローリング特性(rolling characteristics)に影響を及ぼすこと及びこの特性を調整することが可能である。
【0025】
溝形エレメント21と縦スロット22との間において下方に開口する凹部は、好ましくはそれぞれ底に向かってわずかに広がり、例えば、凹部に石が詰まるのを妨げ、ソール構造の自己清掃を促す。
【0026】
ソール構造を摩耗から保護するために、最大応力に曝されるかかと部及び指球部の溝形エレメント21に、ゴムなどの硬弾性材料で作られた薄層カバーが設けられており、
図2では、斜めのリブを有して示されるこれらカバーのうちの1つのみが参照符号30で示される。溝形エレメント21の残りの部分においては、ミッドソール20の材料は地面と直接接触に曝される。
【符号の説明】
【0027】
10 アッパー
20 ミッドソール
21 溝形エレメント
22 縦スロット
23 エッジストリップ
24 側面開口
25 所定折畳切欠
27 底
30 カバー