(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765453
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】乱流設置体を有する蒸気発生パイプ
(51)【国際特許分類】
F22B 37/12 20060101AFI20200928BHJP
F22B 37/10 20060101ALI20200928BHJP
F22B 37/18 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
F22B37/12
F22B37/10 Z
F22B37/18
【請求項の数】3
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2018-564915(P2018-564915)
(86)(22)【出願日】2017年4月19日
(65)【公表番号】特表2019-520541(P2019-520541A)
(43)【公表日】2019年7月18日
(86)【国際出願番号】EP2017059227
(87)【国際公開番号】WO2018007036
(87)【国際公開日】20180111
【審査請求日】2019年1月10日
(31)【優先権主張番号】102016212416.1
(32)【優先日】2016年7月7日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517298149
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ブリュックナー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・エファート
【審査官】
岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−518610(JP,A)
【文献】
再公表特許第2003/095923(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/12
F22B 37/10
F22B 37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置体(3)を有する蒸気発生パイプ(2)を製造する方法であって、パイプ内側(4)に蒸気発生パイプ(1)の長手方向に延在する隆起部(5)を有する蒸気発生パイプ(1)が作られ、設置体(3)が前記蒸気発生パイプ(1)の前記隆起部(5)に溶接され、前記設置体(3)は、らせん形状であり、かつ多数の接触点(6)で前記隆起部(5)に溶接されることを特徴とする、設置体(3)を有する蒸気発生パイプ(2)を製造する方法。
【請求項2】
隆起部(5)を有する前記蒸気発生パイプ(1)が冷間引き抜きによって作られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記隆起部(5)がスタンプを使用してエンボス加工される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は
、設置体を有する蒸気発生パイプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気発生器の蒸発器加熱面には滑らかなパイプまたは内部リブ付きパイプが使用される。内部リブ付きパイプを使用することは、蒸発器の低い全負荷質量密度(例えば、BENSON低質量流束設計)、高い熱流密度および膜沸騰の危険性(例えばドラム型ボイラ)、通常の負荷運転(例えば、スパイラルパイプを備えた蒸発器の最小負荷)における流れ層の回避といった様々な理由から必要である。
【0003】
パイプの内部リブは、従来技術による冷間延伸プロセスによって製造される。現状の知識によれば、内部リブ付きパイプは、クロム含有量が最大5%の材料でのみ製造可能である。蒸気パラメータの更なる増加の結果として、例えばより高いクロム合金鋼からなる内部リブ付きパイプを使用する必要がある場合、現在利用可能な製造プロセスを使用して内部リブ付きパイプを一貫して良好な品質で製造することができない。
【0004】
既にある特許出願では、冷間引抜き内部リブを設置体で置き換えることが提案されている。例えば、平滑な蒸発器パイプ内にらせん状設置体を製造して組み付けることは、特許文献1に開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、蒸気発生パイプの製造方法が開示されており、設置体が鋳型シャフトの溝に固定され、設置体とともに鋳型シャフトが蒸気発生パイプに挿入され、鋳型シャフト上の設置体の固定が解放され、鋳型シャフトは、蒸気発生パイプから再び取り外される。
【0006】
最後に、特許文献3は、らせん状設置体を蒸気発生パイプの内壁に固定するための抵抗スポット溶接装置を特許請求しており、パイプと設置体との間の接続部を作製するための抵抗スポット溶接方法の適用を開示している。
【0007】
しかし、抵抗スポット溶接装置で達成される溶接結果の品質の広範囲のばらつきがあることは明らかである。設置体は剛性が高く、鋳型シャフトがパイプから抜かれるとすぐにパイプの内壁に密着される。しかし、パイプの壁との接触は、パイプおよび設置体の公差のため、すべての場所で確実に行われない。溶接ランスの電極は、溶接電流が印加される前に、設置体の電線を油圧シリンダを介してパイプの内壁に圧入するが、設置体とパイプの内側の間の導電性接触面は、溶接電極のみで正確に製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2011/151135号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第2390567号明細書
【特許文献3】独国特許第10 2012 219 898号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、
設置体を有する蒸気発生パイプ
の製造方法を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、設置体を有する蒸気発生パイプの製造するための方法によって達成され、蒸気発生パイプの内面の長手方向に延在する隆起部を有する蒸気発生パイプが製造され、設置体は、蒸気発生パイプの隆起部に溶接される。
【0011】
本発明は、十分に良好な品質の溶接が再現可能な方法で製造できるように、溶接電極に正確に設置体とパイプの内壁との間に接触面が存在することが必要であるという知見に基づいている。したがって、本発明によれば、らせん状設置体の導入に先立ってパイプの内壁に比較的小さな隆起部が形成され、設置体の溶接がこの隆起部に正確に生じることが提案されている。
【0012】
この隆起部は、電極による局部接触圧力が作用し、溶接中に電流が流れる定位置を生じさせる。
【0013】
蒸気発生パイプのクロム含有量は
一般的に5%を超える。蒸気パラメータが比較的大きい蒸気発生器用の蒸気発生パイプの場合、クロム含有量が5%を超える鋼を使用する必要がある。対応する信頼性の高い生産プロセスは分かっていないので、隆起部のあるパイプを提供するための追加的な努力が必要とされる。
【0014】
隆起部は、蒸気発生パイプに対して半径方向に1mm未満の大きさである。したがって、隆起部は比較的小さく維持され、製造公差を補うだけでよい。
【0015】
ここで、隆起部を有する蒸気発生パイプが冷間引き抜き法により製造されることが好都合であり得る。工業規模でのプロセスでは、内側の特定の形状を、半製品の製造プロセスで大幅にコスト重視の方法で統合することが可能である。
【0016】
あるいは、スタンプ、特に水圧スタンプを使用して隆起部をエンボス加工することが好都合である。
【0017】
両方の場合において、10分の数ミリメートルの大きさの隆起部が容易に製造またはエンボス加工され得、溶接が蒸気発生パイプに十分な強度で実現され得る。
【0018】
本発明の有利な実施形態では、設置体はらせん形であり、複数の点で隆起部に溶接される。このようにして、比較的大きな蒸気パラメータであっても、内部リブ付き蒸気発生パイプを製造することが可能である。
【0019】
本発明は、図面に基づいて例としてより詳細に議論される。図面では、それぞれの場合において、模式的であり縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】らせん形の設置体を有す
る蒸気発生パイプを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、
図2に示されているらせん形状の設置体3を有する蒸気発生パイプ2を製造するための蒸気発生パイプ1を模式的かつ例として示す。
【0022】
図1の蒸気発生パイプ1の内側4には、蒸気発生パイプ1の軸方向、具体的には
図2に示すように、らせん状の設置体3が配置される領域全体にわたって隆起部5が延在する。設置体3は、複数の接点6で隆起部5に溶接される。
【0023】
図3は、本発明による製造方法の個々の工程を概略的に示す。ステップAでは、蒸気発生パイプの長手方向にパイプ内面に延在する隆起部を有する蒸気発生パイプ1が、例えば冷間引き抜き法により製造される。こうして
図1の物体が形成される。次に、ステップBにおいて設置体3が導入され、その後、ステップCにおいて蒸気発生パイプ1の隆起部5に溶接され、その結果、設置体3を有する蒸気発生パイプ2が形成される。
図2に示すらせん状設置体3は複数の巻線を有するので、らせん状設置体3と隆起部5との間の複数の接触点6において溶接される。
【符号の説明】
【0024】
1,2 蒸気発生パイプ
3 設置体
4 内側
5 隆起部
6 接触点