(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引込み線の現用・非現用を確認する際、作業者は引込み先を訪問するが、引込み先が留守である場合は引込み線の使用状況が確認できないという問題があった。
【0006】
また、引込み線の現用・非現用の判定には、引込み先と通信センタのそれぞれに作業者を必要としていた。そのため、引込み線の現用・非現用の判定に際して、作業者間の時間調整等が必要となり、負担が大きいという問題があった。
【0007】
引込み線の電気諸量を検出するための検出装置を引込み線に非接触で取り付けて、現場で引込み線の現用・非現用を判定する方法が考えられている。
【0008】
しかしながら、引込み線は、電柱から利用者宅に架け渡されている通信線であり、高所に存在しているため、高所での作業が必要であった。高所での作業を不要とし、検出装置を引込み線に容易に取り付けることが望まれている。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、引込み線の使用状況を効率良く判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るプローブは、引込み線の電気諸量を検出するためのプローブであって、操作棒と、前記操作棒の先端に取り付けられ、前記引込み線を挟み込んで前記電気諸量を検出する検出部を収納し、先端方向に開口するように軸を中心として開閉可能に組み合わされた第1筐体および第2筐体と、前記第1筐体および第2筐体を閉じる方向に付勢する弾性部材と、引っ張ることで前記弾性部材の付勢方向と逆方向に力を加えるワイヤと、を備え、前記検出部は、前記引込み線に電流を印加する電流印加部と、前記引込み線に流れる電流を検出する電流検出部と、前記引込み線にかかる電圧を検出する電圧検出部とを
有し、前電流印加部と前記電流検出部とは所定の間隔離れており、前記電流印加部と前記電流検出部との間に電磁波遮蔽シートを備えることを特徴とする。
【0011】
上記プローブにおいて、前記第1筐体および第2筐体の両端面の上部に前記引込み線を選り分けるための選分部を備えることを特徴とする。
【0012】
上記プローブにおいて、前記操作棒に対する前記第1筐体および第2筐体の取り付け角度を調節可能な角度調節部を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るプローブは、引込み線の電気諸量を検出するためのプローブであって、操作棒と、前記操作棒の先端に固定された第1軸と、前記操作棒の先端に取り付けられ、前記引込み線を挟み込んで前記電気諸量を検出する検出部を収納し、先端方向に開口するように前記第1軸を中心として開閉可能に組み合わされた第1筐体および第2筐体と、前記第1軸に近づく方向および離れる方向に可動で、
前記第1軸と平行に配置された第2軸と、前記第1軸と前記第2軸とを少なくとも2箇所で連結し、
前記第2軸を前記第1軸に近づける方向に付勢する複数の弾性部材と、前記第2軸の前記弾性部材の近くに取り付けられ、引っ張ることで前記弾性部材の付勢方向と逆方向に力を加えるワイヤと、
を備え、前記第1軸を中心として開閉可能に組み合わされた前記第1筐体および第2筐体の前記引込み線を通す両端面は、前記第1軸と前記第2軸を含む4箇所で可動部材を連結したマジックハンド構造であって、前記第1軸によって可動に連結された可動部材のうち、一方の可動部材が前記第1筐体の端面であり、他方の可動部材が前記第2筐体の端面であって、前記第2軸が前記第1軸に近づいて前記マジックハンド構造が縮んだときに前記第1筐体と前記第2筐体が閉じ、前記第2軸が前記第1軸から離れて前記マジックハンド構造が伸びたときに前記第1筐体と前記第2筐体が開くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、引込み線の使用状況を効率良く判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態におけるプローブを備えた判定装置1の構成を示す外観図である。
【0018】
図1に示す判定装置1は、プローブ10、操作棒20、および操作端末30を備える。判定装置1は、プローブ10で判定対象の引込み線を挟み込んで引込み線の電気諸量を検出し、検出した電気諸量に基づいて引込み線が現用線であるか非現用線であるかを判定する装置である。
【0019】
プローブ10は、引込み線をクランプするためにバネにより開閉する構造である。作業者がプローブ10に取り付けられた操作ワイヤ18を下方向に引っ張ることで、プローブ10の上面が開き、操作ワイヤ18を緩めるとバネの力でプローブ10が閉じる。
【0020】
プローブ10は、電流印加部、電流検出部、および電圧検出部を含む検出部を収納する。電流印加部は引込み線にコモンモード電流を印加し、電流検出部は引込み線に流れる電流を検出し、電圧検出部は引込み線にかかる電圧を検出する。プローブ10の詳細については後述する。
【0021】
作業者が地上から高所の引込み線にプローブ10をクランプさせるため、プローブ10は長尺の操作棒20の先端に取り付けられる。
【0022】
操作棒20は、持ち運びや取り扱いの観点から、伸縮可能であることが望ましい。操作棒20は、6m程度まで伸ばせるとよい。
【0023】
操作棒20は、操作ワイヤ18を通すためのワイヤガイド21を備えてもよい。操作ワイヤ18をワイヤガイド21に通すことにより、操作ワイヤ18をプローブ10の真下方向に引っ張れるので、プローブ10をスムースに開閉できる。
【0024】
プローブ10で引込み線をクランプする際、作業者は、操作棒20を引込み線の高さにまで伸ばし、プローブ10を引込み線の下方に近づける。操作棒20を伸ばす際は、操作棒20の底部を地面に置き、垂直に立てた状態で操作棒20を伸ばす。作業者は、操作ワイヤ18を引っ張ってプローブ10の上面を開き、引込み線の下方からプローブ10の開口部分に引込み線を入れ、操作ワイヤ18を緩めて、引込み線をプローブ10でクランプする。操作ワイヤ18を緩めた状態でプローブ10が閉じるので、引込み線をクランプした後は、操作ワイヤ18を引っ張っておく必要がなく、片手で操作棒20を支えながら、もう一方の手で操作端末30を操作できる。
【0025】
操作棒20は、操作端末30を固定するためのホルダ22を備えてもよい。また、操作棒20の最下部に、操作棒20を地面に立たせるための脚23を備えてもよい。
【0026】
操作端末30は、判定処理を行う本体装置である。引込み線をプローブ10でクランプした後、操作端末30を操作し、判定処理を開始する。操作端末30は、プローブ10の検出部に信号ケーブル31で接続される。操作端末30は、引込み線に印加する信号の送出およびプローブ10で検出した電流および電圧の測定を行うアナログ回路、検出した電流および電圧に基づいて引込み線の現用・非現用を判定するコンピュータ、および電力を供給するための電池電源を備える。操作端末30は、判定処理の開始を指示するための操作パネル、および判定結果を表示するための表示ランプを備える。操作パネルとして、例えば、電源ボタンおよび判定処理を開始するためのスタートボタンを備えてもよい。表示ランプとして、例えば、判別結果を示す判定結果ランプ、判別中であることを示す判定中ランプ、およびプローブ10のクランプ不良を示すクランプ不良ランプを備えてもよい。
【0027】
引込み線をクランプ後、判定処理を開始するとき、作業者は操作端末30のスタートボタンを操作する。判定装置1の判定処理中は、判定中ランプが点灯する。判定処理が完了すると、判定中ランプが消灯し、判定結果に応じて現用または非現用を示す判定結果ランプが点灯する。
【0028】
引込み線をクランプ後、判定処理の前に、プローブ10に電流を流してクランプ状態をチェックしてもよい。プローブ10が完全に閉じていない場合は送出電流が正常に流れないので、送出電流が正常に流れていないことを検出した場合、操作端末30はクランプ不良ランプを点灯させる。
【0029】
プローブ10と操作棒20とを着脱可能とし、操作棒20に引込み線の撤去作業に用いる治具を取り付け可能としてもよい。これにより、判定装置1による判定作業と引込み線の撤去作業を1本の操作棒20で行うことができる。
【0030】
次に、本実施形態のプローブ10について説明する。
【0031】
図2は、本実施形態のプローブ10の構成を示す斜視図である。
図2は、プローブ10が開いた状態である。
【0032】
プローブ10は、筐体14,16を軸15Aを中心として回転可能に組み合わせ、筐体14,16内に、電流印加部11、電圧検出部12、および電流検出部13(以下、「検出部」と称する)を収納する。具体的には、筐体14,16の両端面(引込み線を通す面)を4つの軸15A〜15Dで部材を連結したマジックハンド構造とし、筐体14,16の両端面の間に検出部を収納する。筐体14,16は、マジックハンド構造が縮んだときに閉じ、伸びたときに開く構造とする。つまり、上下に並んだ軸15Aと軸15Dとが近づいた状態で筐体14,16が閉じ、軸15Aと軸15Dとが離れた状態で筐体14,16が開く構造とする。
【0033】
電流印加部11、電圧検出部12、および電流検出部13は、それぞれが筐体14側と筐体16側とに2分割されて収納される。筐体14,16の動きに合わせて、2分割された電流印加部11、電圧検出部12、および電流検出部13は一体となって動く。つまり、筐体14,16が開くと検出部も開き、筐体14,16が閉じると検出部も閉じる。
【0034】
軸15Aと軸15Dとをバネ17で連結する。バネ17が縮む力により、軸15Aと軸15Dとが引き寄せられて筐体14,16が閉じた状態となる。バネ17は、プローブ10の両端面近くの2箇所に取り付ける。
【0035】
軸15Dに、操作ワイヤ18を取り付ける。操作ワイヤ18を下方向(バネ17を伸ばす方向)に引くと、軸15Aと軸15Dとの間隔が開き、筐体14,16が開いた状態となる。操作ワイヤ18は、軸15Dのバネ17の近くの2箇所に取り付けるとよい。
【0036】
筐体14,16の幅(引込み線を取り付ける方向)は、電流印加部11と電流検出部13とが電磁誘導など相互干渉しないように配置できる幅広の大きさとする。例えば、電流印加部11と電流検出部13の間隔が15cm程度となる大きさとする。電流印加部11を一方の端面(引込み線を通す端面)に寄せて配置し、電流検出部13を他方の端面に寄せて配置する。
【0037】
プローブ10を引込み線にクランプする際、電流印加部11側を引込み先に向け、電流検出部13側を通信センタビル側に向ける。プローブ10をクランプする方向が明確となるように、電流印加部11側の端面を白色、電流検出部13側の端面を青色にするとよい。
【0038】
電流印加部11は、コイルを巻いた分割コアで構成できる。巻かれたコイルに交流電流を流すことにより、電磁結合作用で電流印加部11に挟み込まれた引込み線に非接触で試験用の電流を流すことができる。
【0039】
電流検出部13は、電流印加部11とは別に設けた分割コアである。引込み線に流れる交流のコモンモード電流を分割コアに電磁結合させて非接触で電流を検出する。
【0040】
電圧検出部12は、電流印加部11と電流検出部13との間に配置する。電圧検出部12は、引込み線の外皮を2つの導電性スポンジで挟み込んで密着接触させる構成であり、引込み線の内部導体に発生する電圧を導電性スポンジに静電結合させて電圧を検出する。
【0041】
電流印加部11および電流検出部13を構成する分割コアと、電圧検出部12を構成する2つの導電性スポンジは、筐体14,16の開閉に同期し、一体となって開閉して引込み線を挟み込む。
【0042】
電流印加部11と電流検出部13との間に、電磁誘導対策として、高透磁率磁性シートまたは銅シートなどの電磁波を遮蔽する部材を備えてもよい。例えば、電流印加部11の電流検出部13側の側面に、電流印加部11の側面と同程度の大きさの電磁波遮蔽シートを貼り付ける。これにより、電流印加部11と電流検出部13とを近接して配置しても、より確実に判定精度を確保することができる。
【0043】
筐体14,16の両端面は、上部に開口面から外側に広がる凸部14A,16Aを備えるとよい。引込み線が複数存在する場合に、作業者は操作棒20を操り、筐体14,16を開いた状態で凸部14A,16Aのいずれかを複数の引込み線の間に挿入し、判定対象の引込み線を選り分けて、判定対象の引込み線を挟み込む。あるいは筐体14,16を閉じた状態で、凸部14A,16Aを複数の引込み線の間に挿入した後、筐体14,16を開いて引込み線を選り分けてもよい。
【0044】
筐体14,16の両端面は、筐体14,16が閉じた状態で引込み線を通す穴となる穴部14B,16Bを備える。
【0045】
筐体14,16の下部の中央付近に、プローブ10を操作棒20に取り付けるための接続部19を備える。具体的には、接続部19は、軸15Aを固定して把持するとともに、軸15Dを上下可動で把持する。
【0046】
接続部19の下部は、プローブ10の取り付け角度を調節可能な角度調節部19Aを備える。引込み線は、高い電柱から利用者宅に架け渡されている通信線であり、地面に対して傾斜していることがある。角度調節部19Aによりプローブ10の角度を引込み線の傾斜に合わせることで、作業者は、操作棒20を地面に対して垂直に立てて作業することができる。
【0047】
角度調節部19Aの先端を操作棒20に挿入してプローブ10を操作棒20に取り付ける。プローブ10を操作棒20に取り付ける際、操作ワイヤ18を操作棒20のワイヤガイド21に通す。また、プローブ10と操作端末30とを信号ケーブル31で接続し、操作端末30を操作棒20のホルダ22に載せる。
【0048】
次に、判定装置1を使用する環境について説明する。
【0049】
図3は、本判定装置1が使用される環境の具体例を示す図である。
図3では、電流印加部11を印加用プローブ、電圧検出部12および電流検出部13を検出用プローブとしてまとめて図示している。
【0050】
通信センタビル901および被設置建造物902は、架空ケーブル911と引込み線912によって接続されている。架空ケーブル911および引込み線912は通信用のメタル線であって、例えば、電話線である。架空ケーブル911と引込み線912は、電柱903に取り付けられた接続端子かん904によって接続される。引込み線912は、L型金物905、分線金物906、C型金物907、及び配線クリート908によって固定され、接続端子かん904と保安器909を接続する。保安器909は、地気線913によって、接地棒910に接続されている。
【0051】
通信センタビル901は、通信を管理する施設である。通信センタビル901内には、集線盤914および交換機915などの通信機器が設置される。集線盤914は、架空ケーブル911の各通信線(被設置建造物902のそれぞれに配置された引込み線912につながる)を集線する。集線盤914に集線された通信線のうち、現用の通信線は交換機915に接続され、非現用の通信線は開放された状態である。
【0052】
被設置建造物902は、引込み線912の引込み先の施設であって、例えば、戸建住宅である。L型金物905および分線金物906は、引込み線912を電柱903に固定する金具である。C型金物907は、引込み線912を被設置建造物902に固定する金具である。配線クリート908は、被設置建造物902に引込み線912を固定する、陶器またはエボナイト製の器具である。保安器909は、地気線913を介して接地棒910に接続されることで、雷あるいはサージ電流等による過電圧・過電流から宅内の端末を保護する。
【0053】
現用の引込み線912は、引込み先において電話機などの端末に接続される。非現用の引込み線912の先は、基本的には、端末が接続されないが、端末が接続されたままになっていることもある。
【0054】
次に、判定装置1による引込み線の現用・非現用の判定方法について説明する。
【0055】
判定装置1は、引込み線に信号を印加し、印加した信号と同じ周波数の引込み線に流れる電流と引込み線に係る電圧との比に基づいて引込み線912の使用状況を判定する。
【0056】
引込み線912が現用の場合、引込み線912の先は、通信センタビル901内の交換機915等で終端されているので、引込み線912と大地との間でアースリターン電流が流れやすい。一方、引込み線912が非現用の場合、引込み線912の先は接続端子かん904または通信センタビル901内の集線盤914において開放端となっているので、アースリターン電流が流れにくい。
【0057】
検出されるコモンモード電流およびコモンモード電圧を現用・非現用で比較すると、
図4に示すように、現用の引込み線で検出されるコモンモード電流は非現用の引込み線で検出されるコモンモード電流よりも大きく、現用の引込み線で検出されるコモンモード電圧は非現用の引込み線で検出されるコモンモード電圧よりも小さい。したがって、検出されるコモンモード電圧に対するコモンモード電流の比は、現用の引込み線のほうが非現用の引込み線よりも大きくなる。
【0058】
判定装置1は、引込み線912に信号を印加した状態で引込み線912に流れる電流と引込み線912にかかる電圧を測定し、電圧に対する電流の比を求め、求めた比を予め設定した閾値と比較して引込み線912の使用状況を判定する。比較した結果、求めた比が閾値よりも大きい場合は、引込み線912は現用であると判定する。
【0059】
別の判定方法としては、引込み線912に信号を印加せずに、引込み線912の引込み先に接続されたデジタル通信機器が送出する信号を検知して引込み線912の現用・非現用を判定してもよい。引込み線912に信号を印加する判定方法と組み合わせてもよい。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態によれば、引込み線の電気諸量を検出するためのプローブ10が、操作棒20の先端に取り付けられ、引込み線の下方向から引込み線を挟み込んで電気諸量を検出する検出部を収納し、上方向に開口するように軸15Aを中心として開口可能に組み合わされた筐体14,16と、筐体14,16を閉じる方向に付勢するバネ17と、下方向に引っ張ることでバネ17の付勢方向と逆方向に力を加えることができる操作ワイヤ18とを備えることにより、作業者は、操作ワイヤ18を引っ張ってプローブ10の上面を開いて引込み線を挟み込み、操作ワイヤ18を緩めるだけで、引込み線の電気諸量を測定するための検出部を取り付けることができる。その結果、効率的に引込み線の現用・非現用を判定でき、引込み線の撤去作業の迅速化が期待できる。