(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記孔は、孔壁を有し、前記導電層は、複数の前記孔の孔壁表面にも位置し、且つ、前記絶縁層の少なくとも1つの表面に位置する前記導電層と、前記孔壁表面に位置する前記導電層とは、一部又は全部で互いに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の集電体。
前記集電体は、前記導電層における前記絶縁層に向かう表面に設けられる第2保護層をさらに備え、前記第2保護層は、金属保護層、金属酸化物保護層又は導電性カーボン保護層であり、前記導電性カーボンは、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、グラフェンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の集電体。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、具体的な実施例を参照しながら、本発明についてさらに説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するためのものではないと理解されるべきである。
【0016】
本発明に係る実施例は集電体に関し、前記集電体は絶縁層と導電層とを備え、前記導電層は前記絶縁層の少なくとも1つの表面に位置し、前記集電体は、前記導電層における前記絶縁層から離間する表面に設けられる第1保護層をさらに備え、前記第1保護層は金属保護層であり、前記集電体には、前記絶縁層と前記導電層と前記第1保護層とを貫通する複数の孔が設けられている。
【0017】
従来の金属集電体(例えば、銅箔の負極集電体又はアルミニウム箔の正極集電体)に比べ、本発明に係る集電体は重量が小さいため、電池の重量エネルギー密度を効果的に改善して、軽量の集電体を得ることができる。本発明に係る軽量の集電体は、良好な機械的強度と導電性も有することにより、当該集電体が良好な机械安定性、動作安定性及び使用寿命を有することを保証するとともに、良好な倍率性能も有する。一方で、本発明に係る集電体における保護層により、導電層の機械的強度を向上させて、導電層が破壊され、又は酸化や腐食などの現象が生じることを防止して、集電体の導電性、長期間にわたる信頼性と使用寿命を著しく改善することができる。さらに、上記集電体に前記絶縁層と前記導電層とを貫通する複数の孔が設けられていることにより、導電層での応力のリリースが容易になり、導電層と絶縁層との間の結合力を著しく改善することができ、電解液も通過しやすくなり、当該集電体の極シートの電解液濡れ性を改善し、さらに極シート及び電池の分極を減少させ、高倍率充放電性能、サイクル寿命などの電池の電気化学性能を改善することができる。また、集電体に設けられた複数の孔により、集電体の重量をさらに軽くして、電池の重量エネルギー密度を向上させることができる。
【0018】
好ましくは、導電層は複数の孔の孔壁表面にも位置し、且つ孔壁表面に導電層が設けられるそれぞれの孔には、導電層は前記孔壁表面の一部又は全部に位置する。好ましくは、前記絶縁層の少なくとも1つの表面に位置する前記導電層と、前記孔壁表面に位置する前記導電層とは、一部又は全部で互いに接続されている。好ましくは、前記導電層は前記絶縁層の上表面と下表面に位置し、前記絶縁層の上表面と下表面に位置する導電層と、前記孔壁表面に位置する前記導電層とは、一部又は全部で互いに接続されている。好ましくは、導電層は絶縁層の少なくとも1つの表面に位置するだけではなく、複数の孔の孔壁表面にも位置するため、導電層は絶縁層の少なくとも1つの表面及び複数の孔から絶縁層をしっかり「掴み」、絶縁層と導電層との結合は平面方向におけるものだけではなく、深さ方向におけるものもあり、導電層と絶縁層と結合力を強くして、当該集電体の長期間にわたる信頼性と使用寿命を改善することができる。当該集電体では、絶縁層が導電しないため、導電性が当該複合集電体の「短所」となり、導電層が絶縁層の少なくとも1つの表面及び複数の孔の孔壁表面に位置するようにすることにより、集電体において立体的、且つ多点的な導電ネットワークを形成することができ、当該複合集電体の導電性を大きく改善し、極シートと電池の分極を小さくし、電池の高倍率充放電性能、サイクル寿命などの電気化学性能を改善することができる。なお、このような特殊な開孔設計により、絶縁層の2つの表面での導電層における電子が「合流」することが可能となり、2つの導電層にそれぞれ電流端子を引き出す必要のある設計を使用することを回避することができる。
【0019】
理解できるように、前記複数の孔の孔壁表面に位置する導電層と、絶縁層の少なくとも1つの表面に位置する導電層とは、厚さが同じであってもよく、又は異なってもよく、材料が同じであってもよく、又は異なってもよい。前記孔壁表面に前記導電層が設けられるそれぞれの前記孔において、前記導電層は前記孔壁表面の一部又は全部に位置し、好ましくは、孔壁表面の全部に位置する。好ましくは、前記絶縁層の少なくとも1つの表面に位置する前記導電層と、前記孔壁表面に位置する前記導電層とは、互いに接続されている。
【0020】
孔の孔径は0.001mm〜3mmであり、この範囲では、孔は、安全の改善、分極の改善の効果が優れるとともに、加工が容易であり、シート破断の現象が発生し難い。
【0021】
前記絶縁層の表面に位置する導電層の全表面に基づき、孔の面積比率は0.1%〜30%であり、この範囲では、孔は、安全の改善、分極の改善の効果が優れるとともに、加工が容易であり、シート破断の現象が発生し難い。
【0022】
隣り合う2つの孔の間隔は0.2mm〜5mmである。前記間隔は等間隔分布、又は前記範囲内での複数種の間隔分布であってもよい。等間隔分布であることが好ましい。
【0023】
孔の形状は平行四辺形、略平行四辺形、円形状、略円形状、楕円形状、略楕円形状のうちの1種であってもよい。導電層における絶縁層から離間する面(即ち、導電層の上表面)に設けられる保護層は第1保護層である。第1保護層の材料は金属であり、具体的に、金属は、ニッケル、クロム、ニッケル基合金(例えば、ニッケル−クロム合金)、銅基合金(例えば、銅-ニッケル合金)のうちの少なくとも1種であることが好ましい。ここで、ニッケル−クロム合金は金属ニッケルと金属クロムで形成された合金であり、好ましくは、ニッケル元素とクロム元素のモル比は1:99〜99:1である。金属材質の第1保護層により、導電層の機械的強度と耐食性を改善させるだけではなく、極シートの分極を低下させることもできる。特に、本発明に係る実施例における集電体が負極集電体であるとき、当該金属の第1保護層が良好な導電性を有するため、それに接触する電極活物質層に電子をより良く提供することができ、電極活物質層における分極を低下し、電池の電気化学性能を改善し、リチウム析出などの現象の発生を防止することができる。
【0024】
好ましくは、前記集電体は第2保護層をさらに備える。導電層における絶縁層に向かう面(即ち、導電層の下表面)に設けられる保護層は第2保護層である。前記第2保護層は金属保護層、金属酸化物の保護層又は導電性カーボン保護層であり、前記金属は、ニッケル、クロム、ニッケル基合金、銅基合金のうちの少なくとも1種であることが好ましく、前記金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケルのうちの少なくとも1種であることが好ましく、前記導電性カーボンは、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、グラフェンのうちの少なくとも1種であることが好ましく、前記第2保護層は金属保護層であることが好ましい。
【0025】
第2保護層は第1保護層とともに完全な支持構造を構成して導電層を保護することができ、導電層に対して保護作用をより良く発揮して、導電層が酸化、腐食又は破壊されることを防止することができる。また、第2保護層により、絶縁層と導電層の結合力を向上させることもでき、集電体の機械的強度を向上させる。
【0026】
金属材質が良好な導電性、機械的強度及び耐腐食性能を有するため、金属材質の第2保護層により導電層の機械的強度と耐食性をさらに改善可能であるだけではなく、極シートの分極を低下させることができる。
【0027】
特に、本発明に係る実施例における集電体が負極集電体であるとき、金属が良好な導電性を有するため、金属の第1保護層と金属の第2保護層は、それに接触する電極活物質層に電子をより良く提供することにより、電極活物質層における分極を低下し、電池の電気化学性能を改善し、リチウム析出などの現象の発生を防止することができる。
【0028】
さらに、好ましくは、前記第1保護層の厚さはD3であり、D3はD3≦0.1D2、且つ1nm≦D3≦200nmを満たし、好ましくは、10nm≦D3≦50nmを満たし、前記第2保護層の厚さはD3´であり、D3´はD3´≦0.1D2、且つ1nm≦D3´≦200nmを満たし、好ましくは、10nm≦D3´≦50nmを満たす。
【0029】
さらに、好ましくは、第1保護層の厚さは第2保護層の厚さよりも大きく、即ち、導電層における絶縁層から離間する面に設けられる保護層の厚さは、導電層における絶縁層に向かう面に設けられた保護層の厚さよりも大きい。
【0030】
第2保護層の厚さで導電層を十分に保護することが可能である場合、第2保護層の厚さをできる限り小さくすることにより、電池の重量エネルギー密度を向上させることができる。
【0031】
さらに、好ましくは、第2保護層の厚さD3´と第1保護層の厚さD3との比率関係は、0.5D3≦D3´≦0.8D3である。第2保護層の厚さが大きくなると、電池の安全性に対する改善作用が限られ、かえって電池の重量エネルギー密度に影響を与える。
【0032】
[絶縁層]
本発明に係る実施例における集電体では、絶縁層は主に導電層を支持・保護する作用を発揮し、その厚さはD1であり、D1は1μm≦D1≦20μmを満たし、この範囲での絶縁層はより良い加工性を有するだけではなく、当該集電体が用いられた電池の体積エネルギー密度を低下させることもない。
【0033】
ここで、絶縁層の厚さD1の上限は20μm、15μm、12μm、10μm、8μmであってもよく、絶縁層の厚さD1の下限は1μm、1.5μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmであってもよく、絶縁層の厚さD1の範囲は上限又は下限の任意の数値で構成することができる。好ましくは、2μm≦D1≦10μmであり、より好ましくは、2μm≦D1≦6μmである。
【0034】
好ましくは、絶縁層の材料は、有機ポリマー絶縁材料、無機絶縁材料、複合材料から選ばれる1種である。さらに好ましくは、複合材料は有機ポリマー絶縁材料と無機絶縁材料で構成される。
【0035】
ここで、有機ポリマー絶縁材料は、ポリアミド(Polyamide、PAと略称する)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate、PETと略称する)、ポリイミド(Polyimide、PIと略称する)、ポリエチレン(Polyethylene、PEと略称する)、ポリプロピレン(Polypropylene、PPと略称する)、ポリスチレン(Polystyrene、PSと略称する)、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chloride、PVCと略称する)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(Acrylonitrile butadiene styrene copolymers、ABSと略称する)、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylene terephthalat、PBTと略称する)、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド(Poly−p−phenylene terephthamide、PPAと略称する)、エポキシ樹脂(epoxy resin)、ポリホルムアルデヒド(Polyformaldehyde、POMと略称する)、フェノール樹脂(Phenol−formaldehyde resin)、ポリプロピレンエチレン(PPEと略称する)、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFEと略称する)、シリコーンゴム(Silicone rubber)、ポリビニリデンフルオライド(Polyvinylidenefluoride、PVDFと略称する)、ポリカーボネート(Polycarbonate、PCと略称する)、アラミド、ポリジホルミルフェニレンジアミン(poly diformyl phenylene diamine)、セルロース及びその誘導体、澱粉及びその誘導体、タンパク質及びその誘導体、ポリビニルアルコール及びその架橋物、ポリエチレングリコール及びその架橋物から選ばれる少なくとも1種である。
【0036】
ここで、無機絶縁材料は、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、炭化珪素(SiC)、シリカ(SiO
2)のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0037】
ここで、複合材料は、エポキシ樹脂ガラス繊維強化複合材料、ポリエステル樹脂ガラス繊維強化複合材料のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0038】
好ましくは、絶縁層の材料は、有機ポリマー絶縁材料から選ばれるものである。一般的に、絶縁層の密度が金属よりも小さいため、本発明の集電体は、電池の安全性を向上させるとともに、電池の重量エネルギー密度を向上させることもできる。そして、絶縁層がその表面に位置する導電層に対して良好な載置及び保護の作用を発揮することができるため、従来の集電体でよく発生する極シートの断裂現象が発生し難しい。
【0039】
本発明に係る上記の集電体に前記絶縁層と前記導電層と前記第1保護層とを貫通する複数の孔を設けるために、ある方法、例えばレーザ光による開孔で絶縁層に複数の孔の構造を形成する必要がある。レーザ法を用いて高分子材料又は高分子複合材料に対して処理を行うとき、粘着が生じやすく、また、切断の効率が低い。レーザ出力を大きくすると、導電層が焦げて、そして絶縁層が溶融する不具合が発生する。
【0040】
そのため、好ましくは、前記絶縁層の光透過率Tは0≦T≦98%を満たし、好ましくは、15%≦T≦95%を満たし、より好ましくは、15%≦T≦90%を満たす。上記光透過率を満たすことにより、レーザエネルギーに対する絶縁層の吸収率を向上させることができ、レーザ光で切断処理を行うとき、高い加工性及び加工効率を有し、特に、低出力のレーザ光で切断処理を行うとき、高い加工性及び加工効率を有する。上述したレーザ光で切断処理を行うときのレーザ出力は、例えば100W以下である。
【0041】
絶縁層に光透過率を調整するための着色剤を添加するとともに、着色剤の含有量を調整制御することにより、絶縁層の光透過率を調整することができる。
着色剤により、絶縁層が一定の程度の黒色、青色又は赤色を現すようにすることができるが、これに限定されず、例えば、絶縁層がある程度の黄色、緑色又は紫色などを現すようにしてもよい。
【0042】
着色剤は、無機顔料及び有機顔料のうちの1種又は複数種であってもよい。
【0043】
無機顔料は、例えば、カーボンブラック、コバルトブルー、群青、酸化鉄、カドミウムレッド、クロムオレンジ、モリブデンオレンジ、カドミウムイエロー、クロムイエロー、ニッケルチタンイエロー、チタンホワイト、リトポン及び亜鉛白のうちの1種又は複数種である。
【0044】
有機顔料はフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、アントラキノン系顔料、インディゴ系顔料及金属錯体顔料のうちの1種又は複数種であってもよい。例として、有機顔料はプラスチック赤GR、プラスチック紫RL、ハンザイエローG、パーマネントイエロー、ラバースカーレット(Rubber Scarlet)LC、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーンのうちの1種又は複数種であってもよい。
【0045】
好ましくは、絶縁層の厚さD
1と絶縁層の光透過率Tは以下の関係を満たす。
12μm≦D
1≦30μmであるとき、30%≦T≦80%を満たし、及び/又は、
8μm≦D
1<12μmであるとき、40%≦T≦90%を満たし、及び/又は、
1μm≦D
1<8μmであるとき、50%≦T≦98%を満たす。
【0046】
[導電層]
本発明に係る実施例における集電体では、好ましくは、導電層の厚さがD2であり、D2は30nm≦D2≦3μmを満たし、好ましくは、300nm≦D2≦2μmを満たす。この範囲内での導電層は、導電性が良いであるとともに、電池重量エネルギー密度と体積エネルギー密度を低下させることもない。
【0047】
導電層の材料は、金属導電材料、炭素系導電性材料から選ばれる少なくとも1種であり、金属導電材料は、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、銀、ニッケル-銅合金、アルミニウム-ジルコニウム合金から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、前記炭素系導電性材料は、グラファイト、アセチレンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブのうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0048】
本発明に係る実施例では、導電層の厚さD2の上限は3μm、2.8μm、2.5μm、2.3μm、2μm、1.8μm、1.5μm、1.2μm、1μm、900nmであってもよく、導電層の厚さD2の下限は800nm、700nm、600nm、500nm、450nm、400nm、350nm、300nm、250nm、200nm、150nm、100nm、30nmであってもよく、導電層の厚さD2の範囲は上限又は下限の任意の数値で構成することができる。好ましくは、300nm≦D2≦2μmであり、より好ましくは、500nm≦D2≦1.5μmである。
【0049】
導電層の密度が絶縁層の密度よりも大きいため、導電層の厚さD2が小さいほど、負極集電体の重量を低下させることに有利になり、電池のエネルギー密度を改善することに有利になる。D2が小さすぎると、導電層の導電と集電の効果が悪くなり、電池の内部抵抗、分極及びサイクル寿命などに影響を与える。そのため、導電層の厚さが30nm≦D2≦3μmを満たすとき、導電層により、集電体の重量を効果的に低下し、電池がより良い倍率性能、充放電性能などを有するようにする。好ましくは、300nm≦D2≦2μmを満たし、より好ましくは、500nm≦D2≦1.5μmを満たす。
【0050】
導電層は、気相成長法(vapor deposition)、無電解メッキ(Electroless plating)の少なくとも1種により絶縁層に形成されてもよい。気相成長法として、物理的気相成長法(Physical Vapor Deposition、PVD)が好ましい。物理的気相成長法として、蒸着法、スパッタ法の少なくとも1種が好ましい。蒸着法として、真空蒸着法(vacuum evaporating)、熱蒸着法(Thermal Evaporation Deposition)、電子ビーム蒸着法(electron beam evaporation method、EBEM)の少なくとも1種が好ましい。スパッタ法として、マグネトロンスパッタ法(Magnetron sputtering)が好ましい。
【0051】
導電層は、前記絶縁層の少なくとも1つの表面のみに位置してもよく、複数の孔の孔壁表面に位置してもよく、孔壁表面の全部に位置してもよく、孔壁表面の一部に位置してもよい。前記複数の孔の孔壁表面に位置する導電層は、絶縁層の少なくとも1つの表面に位置する導電層とは、厚さが同じであってもよく、又は異なってもよく、材料も同じであってもよく、又は異なってもよい。好ましくは、前記絶縁層の少なくとも1つの表面に位置する前記導電層は、前記孔壁表面に位置する前記導電層とは互いに接続されている。
【0052】
[保護層]
本発明に係る集電体における導電層は第1保護層を備え、好ましくは、第2保護層をさらに備える。
【0053】
本発明に係る実施例では、導電層の厚さが小さい場合、化学的腐食又は機械的なダメージを受けやすい。従って、保護層により導電層の機械的強度を向上させて、電池の安全性をさらに向上させるとともに、導電層が破壊され、又は酸化、腐食などの現象が発生することを効果的に防止して、集電体の長期間にわたる信頼性と使用寿命を著しく改善することができる。
【0054】
本発明に係る実施例では、説明が便利になるために、保護層が導電層における絶縁層から離間する面(即ち、導電層の上表面)に設けられている場合、それを第1保護層と称し、保護層が導電層における絶縁層に向かう面(即ち、導電層の下表面)に設けられている場合、それを第2保護層と称す。
【0055】
第1保護層は金属の保護層である。金属は、ニッケル、クロム、ニッケル−クロム合金、銅基合金(例えば、ニッケル銅合金)から選ばれる少なくとも1種であり、これは、金属材質の導電性が、金属酸化物又は導電性カーボンの導電性より優れるからである。さらに、好ましくは、金属材質は、金属ニッケル又はニッケル基合金から選ばれてもよく、これは、金属ニッケル又はニッケル基合金の耐食性が良く、且つ硬度が高く、導電性が良いからである。
【0056】
本発明に係る実施例における第2保護層は、金属保護層、金属酸化物保護層又は導電性カーボン保護層から選ばれてもよい。好ましくは、金属はニッケル、クロム、ニッケル−クロム合金、銅基合金(例えば、ニッケル銅合金)から選ばれる少なくとも1種であり、好ましくは、金属酸化物は酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケルから選ばれる少なくとも1種である。好ましくは、導電性カーボンは導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブから選ばれる少なくとも1種である。
【0057】
ここで、ニッケル−クロム合金は金属ニッケルと金属クロムで形成された合金であり、好ましくは、ニッケル元素とクロム元素の質量比は1:99〜99:1である。銅基合金は純銅を基体として1種又は複数種の他の元素を添加して構成された合金である。銅基合金はニッケル銅合金であることが好ましく、好ましくは、ニッケル銅合金において、ニッケル元素と銅元素の質量比は1:99〜99:1である。
【0058】
好ましくは、第2保護層も金属保護層である。
【0059】
本発明に係る実施例における集電体に対する更なる改良として、第1保護層の厚さはD3であり、D3はD3≦0.1D2、且つ1nm≦D3≦200nmを満たし、即ち、厚さは、D2厚さの1/10以下であり、且つ1nm〜200nmの範囲内にあることを満たす。第2保護層の厚さはD3´であり、D3´はD3´≦0.1D2、且つ1nm≦D3´≦200nmを満たす。
【0060】
ここで、保護層の厚さD3、D3´の上限は200nm、180nm、150nm、120nm、100nm、80nm、60nm、55nm、50nm、45nm、40nm、30nm、20nmであってもよく、保護層の厚さD3の下限は1nm、2nm、5nm、8nm、10nm、12nm、15nm、18nmであってもよい。保護層の厚さD3、D3´の範囲は上限又は下限の任意の数値で構成することができる。保護層が薄すぎると、導電層に対する保護作用が限られ、保護層が厚すぎると、電池の重量エネルギー密度と体積エネルギー密度を低下させる。好ましくは、10nm≦D3≦50nmを満たし、10nm≦D3´≦50nmを満たすことが好ましい。
【0061】
保護層が導電層全体を占める厚さについて、D3は1/2000D2≦D3≦1/10D2を満たし、即ち、厚さはD2の1/2000〜1/10であり、より好ましくは、D3は1/1000D2≦D3≦1/10D2を満たす。D3´は1/2000D2≦D3´≦1/10D2を満たし、即ち、厚さはD2の1/2000〜1/10である。より好ましくは、D´3は1/1000D2≦D3´≦1/10D2を満たす。
【0062】
本発明に係る実施例における集電体に対する更なる改良として、第1保護層の厚さが第2保護層の厚さよりも大きいであることが好ましい。好ましくは、D3´とD3との比率関係は0.5D3≦D3´≦0.8D3である。
【0063】
保護層が気相成長法、インサイチュ形成法、塗布法などにより導電層に形成されてもよい。気相成長法として、物理的気相成長法(Physical Vapor Deposition、PVD)が好ましい。物理的気相成長法として、蒸着法、スパッタ法のうちの少なくとも1種が好ましい。蒸着法として、真空蒸着法(vacuum evaporating)、熱蒸着法(Thermal Evaporation Deposition)、電子ビーム蒸着法(electron beam evaporation method、EBEM)のうちの少なくとも1種が好ましい。スパッタ法として、マグネトロンスパッタ法(Magnetron sputtering)が好ましい。インサイチュ形成法として、インサイチュパッシベーション法、即ち、金属の表面に金属酸化物のパッシベーション層をインサイチュ形成する方法が好ましい。塗布法として、ロールプレス塗布、押圧塗布、ブレード塗布、グラビア塗布などのうちの1種が好ましい。
【0064】
第1保護層の厚さと第2保護層の厚さとは、同じであってもよく、又は異なってもよい。
【0065】
保護層は、導電層の1つの表面のみに位置してもよく、導電層の2つの表面に設けられてもよく、保護層は集電体の平面部分のみに設けられてもよく、集電体の平面部分及び複数の孔の孔壁表面にも設けられてもよい。
【0066】
本発明に係る実施例における負極集電体の模式図は、
図1から
図4に示し、本発明に係る実施例における正極集電体の模式図は、
図5に示し、本発明に係る実施例における負極シート模式図は、
図6に示し、本発明に係る実施例における正極シートの模式図は、
図7に示す。
【0067】
図1〜3では、負極集電体20は、負極絶縁層201、第1保護層2031及び負極絶縁層201と第1保護層2031の間に設けられた負極導電層202を備え、即ち、負極導電層202は負極絶縁層201の1つの表面に設けられ、第1保護層2031は、負極導電層202における負極絶縁層201から離間する表面に設けられている。負極集電体20には、複数の孔401が開設され、複数の孔401は、負極絶縁層201、負極導電層202、及び第1保護層203を貫通し、且つ、負極導電層202は複数の孔401の孔壁表面に形成されていない。
【0068】
図4では、負極集電体20は、負極絶縁層201、第1保護層2031及び負極絶縁層201と第1保護層2031の間に設けられた負極導電層202を備え、即ち、負極導電層202は負極絶縁層201の1つの表面に設けられ、第1保護層2031は、負極導電層202における負極絶縁層201から離間する表面に設けられている。負極集電体20には、複数の孔401が開設され、複数の孔401は負極絶縁層201、負極導電層202、及び第1保護層2031を貫通し、且つ負極導電層202と第1保護層2031は、いずれも複数の孔401の孔壁表面の一部に位置し、且つ負極絶縁層201に位置する負極導電層202と、孔壁表面に位置する負極導電層202とは、互いに接続されている。
【0069】
図5では、正極集電体10は、正極絶縁層101、正極導電層102、第1保護層1031及び第2保護層1032を備え、正極導電層102は、正極絶縁層101の対向する2つの表面に設けられ、第1保護層1031は、それぞれの正極導電層102における正極絶縁層101から離間する表面に設けられ、第2保護層1032は、それぞれの正極導電層102における正極絶縁層101に向かう表面に設けられている。正極集電体10には、複数の孔201が開設され、複数の孔201は正極絶縁層101、正極導電層102、第1保護層1031、及び第2保護層1032を貫通し、且つ正極導電層102、第1保護層1031及び第2保護層1032は、いずれも複数の孔201の孔壁表面の全部に位置する。
【0070】
本発明に係る実施例における第2態様は、本発明に係る実施例第1態様に係る集電体と集電体の表面に形成される電極活物質層とを備える極シートをさらに提供する。
【0071】
図6は、本発明に係る実施例における負極シートの構造模式図であり、
図6に示すように、負極シート2は、負極集電体20と、負極集電体20の表面に形成される負極活物質層21とを備え、ここで、負極集電体20は、負極絶縁層201、負極導電層202、第1保護層2031及び第2保護層2032を備え、負極導電層202は、負極絶縁層201の対向する2つの表面に設けられ、第1保護層2031は、それぞれの負極導電層202における負極絶縁層201から離間する表面に設けられ、第2保護層2032は、それぞれの負極導電層202における負極絶縁層201に向かう表面に設けられている。負極集電体20には、複数の孔401が開設され、複数の孔401は、負極絶縁層201、負極導電層202、第1保護層2031、第2保護層2032、及び負極活物質層21を貫通し、且つ負極導電層202、第1保護層2031及び第2保護層2032は、いずれも複数の孔401の孔壁表面の全部に位置し、且つ負極絶縁層201に位置する導電層202は、孔壁表面に位置する導電層202とは、互いに接続されている。負極活物質層21は複数の孔401内に充填されている。
【0072】
図7は本発明に係る実施例における正極シートの構造模式図であり、
図7に示すように、正極シート1は正極集電体10と、正極集電体10の表面に形成された正極活物質層11とを備え、ここで、正極集電体10は、正極絶縁層101、正極導電層102、第1保護層1031及び第2保護層1032を備え、正極導電層102は正極絶縁層101の対向する2つの表面に設けられ、第1保護層1031は、それぞれの正極導電層102における正極絶縁層101から離間する表面に設けられ、第2保護層1032は、それぞれの正極導電層102における正極絶縁層101に向かう表面に設けられている。正極集電体10には、複数の孔201が開設され、複数の孔201は、正極絶縁層101、正極導電層102、第1保護層1031、第2保護層1032、及び正極活物質層11を貫通し、且つ正極導電層102、第1保護層1031及び第2保護層1032は、いずれも複数の孔201の孔壁表面の全部に位置する。
【0073】
なお、上記
図1〜7は模式図に過ぎず、図に示す孔の大きさ、形状及び分布形式はいずれも模式的に表したものである。
【0074】
理解できるように、絶縁層の対向する2つの表面にいずれも導電層が設けられている場合、集電体の両面に活物質が塗布されて作製された正極シート 又は負極シートは電気化学デバイスに直接適用することが可能である。絶縁層の1つの表面に導電層が設けられている場合、集電体の片面に活物質が塗布されて作製された負極シートは折り畳まれてから電池に適用することが可能である。
【0075】
好ましくは、電極活物質層は、集電体の少なくとも1つの表面に形成され、且つ前記電極活物質層は、全部又は一部が集電体の前記複数の孔に充填されてもよく、且つ前記集電体の少なくとも1つの表面に形成された電極活物質層と、集電体の前記複数の孔に充填された電極活物質層とは、互いに接続されている。このように、電極活物質層と集電体の結合力がより強くなり、極シートと電池の長期間にわたる信頼性、寿命がより優れる。また、電極活物質層が一定の孔隙率を有するため、このように構成することにより、当該極シートの電解液に対する濡れ性をより良くして、分極をより小さくすることができる。
【0076】
本発明に係る実施例は、正極シート、セパレータ及び負極シートを備える電気化学デバイスをさらに提供する。具体的に、当該電気化学デバイスは巻き取り式又は積層式の電池であってもよく、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウム一次電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池のうちの1種であってもよいが、これに限定されない。
【0077】
ここで、負極シート及び/又は負極シートは上記実施例に係る極シートである。
【0078】
<実施例>
1.特定の光透過率を有する絶縁層の製造
絶縁層材料はPETであり、PETに一定の含有量の着色剤カーボンブラックを添加して、均一に混合する。PETをホットメルト状態で押し出して注ぎかけ、冷間ローラでロール圧延することにより、双方向延伸してから、特定の光透過率を有する絶縁層を得る。
【0079】
2.集電体の製造:
2.1 一定の厚さを有する絶縁層を選択し、絶縁層に孔を開け、そして、真空蒸着の方式で一定の厚さを有する導電層を形成した。これにより、導電層が絶縁層の少なくとも1つの表面及び孔の孔壁表面に堆積する。
2.2 一定の厚さを有する絶縁層を選択し、その表面に、真空蒸着の方式で一定の厚さを有する導電層を形成して、そして、孔を開けた。これにより、前記絶縁層と前記導電層とを貫通する孔を複数形成する。
2.3 一定の厚さを有する絶縁層を選択し、その表面に、真空蒸着の方式で一定の厚さを有する導電層を形成して、そして、孔を開けた。その後、平面表面、孔壁表面又は孔壁表面及び平面表面に導電層を堆積する。
導電層の真空蒸着方式による形成条件は、以下の通りである。表面洗浄処理された絶縁層を真空蒸着チャンバ内に配置し、1600℃〜2000℃という高温で金属蒸発室内における高純度の金属ワイヤを溶融し蒸発させ、蒸発後の金属が真空蒸着チャンバ内の冷却システムを通過し、最後に絶縁層の表面に堆積して、導電層が形成される。
【0080】
3.保護層を有する集電体の製造
3.1 第1保護層の形成
導電層を有する集電体の表面に、気相成長法、インサイチュ形成法または塗布法で導電層における絶縁層から離間する表面に保護層を形成する。
3.2 第2保護層の形成
絶縁層の表面に、気相成長法又は塗布法で保護層を形成し、そして、真空蒸着の方式で、上述した保護層を有する絶縁層の表面に一定の厚さを有する導電層を形成することにより、第2保護層を有する集電体を製造する。なお、これに加え、導電層の上表面に第1保護層をさらに形成してもよい。
【0081】
保護層を形成する前に孔を開けてもよく、保護層を形成した後に、孔を開けてもよい。
【0082】
製造の実施例では、気相成長法として、真空蒸着方式が用いられ、インサイチュ形成法として、インサイチュパッシベーション方式が用いられ、塗布法として、グラビア塗布方式が用いられる。
【0083】
真空蒸着方式の形成条件は以下の通りである。表面洗浄処理されたサンプルを真空蒸着チャンバ内に配置し、1600℃〜2000℃という高温で蒸発室内における保護層材料を溶融し蒸発させ、蒸発後の保護層材料が真空蒸着チャンバ内における冷却システムを通過し、最後にサンプルの表面に堆積して、保護層が形成される。
【0084】
インサイチュパッシベーション法の形成条件は以下の通りである。導電層を高温酸化環境に配置し、温度を160℃〜250℃に制御するとともに、高温環境で酸素ガスの供給を維持し、処理時間を30minとすることにより、金属酸化物類の保護層が形成される。
【0085】
グラビア塗布方式の形成条件は以下の通りである。保護層材料をNMPと撹拌・混合し、そして、サンプルの表面に上記保護層材料のスラリー(固形分の含有量が20〜75%)を塗布し、次に、ググラビアローラーで塗布の厚さを制御し、最後に100〜130℃で乾燥させる。
【0086】
4.極シートの製造
通常の電池塗布プロセスにより、集電体の表面に正極スラリー又は負極スラリーを塗布し、100℃で乾燥させた後、正極シート又は負極シートを得る。
通常の正極シートでは、集電体が厚さ12μmのAl箔片であり、電極活物質層が一定の厚さを有する三元(NCM)材料層である。
通常の負極シートでは、集電体が厚さ8μmのCu箔片であり、電極活物質層が一定の厚さを有するグラファイト材料層である。
【0087】
一部の実施例では、電極活物質層は集電体の平面部分のみに設けられ、一部の実施例では、電極活物質層は集電体の平面部分及び孔に設けられている。
【0088】
製造して得た集電体及びその極シートの具体的なパラメータは表1に示す。極シート1〜極シート8の集電体における絶縁層、導電層、電極活物質のパラメータは表1に示し、ここで、導電層は絶縁層の上表面と下表面に設けられ、導電層の形成方式は真空蒸着方式であり、「表面のみ」とは、集電体に絶縁層及び導電層を貫通する複数の孔が設けられ、且つ導電層が絶縁層の上表面と下表面のみに設けられていることを表し、「表面と孔」とは、集電体に絶縁層及び導電層を貫通する複数の孔が設けられ、且つ導電層が絶縁層の上表面と下表面に設けられているだけではなく、孔の孔壁表面の全部にも設けられ、且つ導電層の孔壁表面に形成された導電層が、絶縁層の表面に形成された導電層と、互いに接続されていることを表し、孔の形状は円形状であり、孔径として、いずれも0.01mmとし、孔の面積比率として、いずれも5%とし、孔と孔との間の間隔として、いずれも0.2mmとし、電極活物質が複数の孔に充填されている。
【0089】
5.電池の製造
通常の電池製造プロセスにより、正極シート(圧密密度:3.4g/cm
3)、PP/PE/PPセパレータ及び負極シート(圧密密度:1.6g/cm
3)を一緒にベアセルに巻き取り、その後に電池ケースに入れ、電解液(EC:EMC体積比が3:7、LiPF
6が1mol/Lである)を注入してから、密封や、化成などの工程を行い、最後にリチウムイオン電池を得た。
【0090】
本発明の実施例で製造されたリチウムイオン電池及び比較例のリチウムイオン電池の詳細構成は、表1に示す。
【0091】
<実験例>
1.電池サイクル寿命のテスト方法
リチウムイオン電池に対して、サイクル寿命テストを行い、具体的なテスト方法は以下の通りである。
【0092】
リチウムイオン電池を25℃と45℃との2種類の温度でそれぞれ充放電し、即ち、1Cの電流で4.2Vに充電してから、1Cの電流で2.8Vに放電して、1サイクル目の放電容量を記録した。その後、電池を1000サイクルだけ1C/1Cの充放電循環させ、1000サイクル目の電池の放電容量を記録して、1000サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除し、1000サイクル目の容量保持率を得た。
【0094】
2.倍率実験
リチウムイオン電池に対して、倍率テストを行い、具体的なテスト方法は以下の通りである。
【0095】
リチウムイオン電池を25℃で大倍率充放電を行い、即ち、まず、1Cの電流で4.2Vに充電してから、4Cの電流で2.8Vに放電して、1サイクル目の放電容量を記録した。当該放電容量を25℃で1C/1Cで充放電した1サイクル目の放電容量で除し、電池の4C倍率性能を得た。
【0096】
3.導電層と絶縁層の結合力のテスト方法
極シートを炭酸ジメチルとフッ化水素酸との混合溶媒に浸漬し、ここで、フッ化水素酸の含有量は0.1wt%であり、そして、真空密封を行い、70℃の恒温箱に数日間保管し、保管完了後、極シートを取り出し、極シートを長手方向に二つ折りにするとともに、2Kgの分銅を二つ折りの箇所に配置して、圧密を10秒間行い、圧密完了後、極シートを伸ばし、折り目に導電層の脱落が生じたかどうかを観察して、脱落が生じ始めたときの保管日数を記録し、テストの結果は表4に示す。
【0097】
4.支持層の光透過率のテスト
LS117光透過率計を用いて、GB2410-80標準に準拠して支持層の光透過率を測定することは以下のステップを含み、まず、光透過率計を起動して、自己校正が行われ、画面にT=100%と表示されると、校正が完了する。その後、支持層のサンプルを探触子と受信機との間に挟み、画面に支持層の光透過率の数値が自動的に表示される。
【0098】
5.集電体切断性能テスト
IPG社製の型番YLP−V2−1−100−100−100のファイバレーザーを用いて、出力を100W、周波数を150kHzと設定し、集電体をレーザーの切断装置に配置して切断を行い、集電体の最大切断可能な速度を測定する。ここで、集電体の最大の切断可能な速度とは、レーザ光で当該集電体を切断して、粘着現象が生じないときに達すことが可能な最大の切断速度を指す。
【0099】
まず、実施例で第1保護層及びオプションとしての第2保護層による技術的効果を説明する。
【0101】
【表2】
ここで、「/」は保護層がないと表し、ニッケル基合金はニッケルとクロムが質量比9:1で形成された合金である。
【0104】
表1と表2からわかるように、本発明に係る正極集電体と負極集電体を用いる場合の重量はいずれも大きく低減された。正極集電体の重量百分率は、通常の正極集電体の30%以下であり、負極集電体の重量百分率は通常の負極集電体の50%以下である。負極シートの重量百分率に比べることによりわかるように、導電層の厚さが1.5μmよりも大きくなると、集電体の重さを低減する効果が限られ、また、集電体全体の厚さも効果的に減少させることもできない。負極集電体3と負極集電体4の厚さが減少されていないが、その重さも著しく減少された。負極集電体1、負極集電体2及び負極集電体5の厚さと重さはいずれも減少されたことにより、電池の体積エネルギー密度と重量エネルギー密度を同時に向上させることができる。
【0105】
表4における結果からわかるように、保護層を含む集電体で製造された電池は、保護層が設けられていない集電体に比べ、容量保持率がさらに向上した。これは、電池の信頼性がより良いことを表す。
【0108】
表5及び表6における結果からわかるように、開孔されていない複合集電体に比べ、孔を有する複合集電体では、導電層と絶縁層の結合力が著しく強くなった。特に、導電層が絶縁層の表面及び複数の孔の孔壁表面に設けられている場合、導電層は絶縁層の少なくとも1つの表面及び複数の孔から絶縁層をしっかり「掴み」、絶縁層と導電層との結合は平面方向におけるもののみではなく、深さ方向におけるものもあり、導電層と絶縁層の結合力を強くして、当該集電体の長期間にわたる信頼性と使用寿命を改善することができる。
【0109】
以下で、実施例を挙げて光透過率が絶縁層のレーザ光加工性に与える影響を説明する。ここで、開孔されていない集電体を用いて説明し、表7を参照する。
【0111】
これによりわかるように、絶縁層の厚さが同じである場合、絶縁層の光透過率を低くすることにより、集電体は、低出力のレーザ光で切断処理を行い、且つ粘着現象が生じない切断速度が明らかに大きくなった。これにより、集電体のレーザ光での切断処理時の切断性能と切断速度を著しく向上させた。
本発明は、好適な実施例により以上のように開示されているが、特許請求の範囲を限定するためではなく、当業者が本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形や変更を実施可能であるので、本発明の保護範囲は、本発明の特許請求の範囲により規定される範囲に準ずるべきである。