(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主軸に取り付けられた電極とテーブルに取り付けられたワークとの間にパルス電圧を印加して前記ワークを放電加工する放電加工機において、凹部を含むワークを製造するための方法であって、
前記放電加工機は、ワークを加工する電極及びワークを測定する第1の測定子を把持する把持部、並びに、回転装置を有する主軸と、前記主軸に対して相対移動可能に設けられ、導電性を有し、前記第1の測定子を成形する成形材と、前記第1の測定子と前記ワークとの間の接触を検知することによって、前記ワークを測定する制御装置と、前記第1の測定子の成形の場合には、前記把持部に取り付けられた材料と前記成形材との間にパルス電圧を印加し、前記ワークの加工の場合には、前記把持部に取り付けられた前記電極と前記ワークとの間にパルス電圧を印加する電源と、を備え、
当該方法は、
前記主軸の前記把持部に取り付けられた材料と、前記主軸に対して相対移動する成形材と、の間にパルス電圧を印加することによって、前記第1の測定子を成形することと、
前記電極によって、前記ワークに凹部を形成することと、
前記第1の測定子の先端を前記ワークの前記凹部の底に接触させることによって、前記凹部の前記底の位置を測定することと、
を含む、ワークを製造するための方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、放電加工によって成形された微細形状(例えば、微細溝などの凹部等)の加工精度を確認する場合、例えば、ワークを加工機から取り外して、別の測定器によって微細形状を測定する場合がある。また、例えば、測定によってワークの再加工が必要だと判断された場合には、ワークを加工機に再度取り付ける必要がある。しかしながら、ワークを同じ位置に再度取り付けることは困難であり得る。
【0006】
本発明は、上記のような課題を考慮して、ワークの微細形状を測定することができる放電加工機を提供することを目的とする。また、本願は、そのような放電加工機で使用される測定子にも関連する。さらに、本願は、そのような放電加工機で実施可能なワークの製造方法にも関連する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、主軸に取り付けられた電極とテーブルに取り付けられたワークとの間にパルス電圧を印加してワークを放電加工する放電加工機において、ワークを加工する電極及びワークを測定する第1の測定子を把持する把持部、並びに、回転装置を有する主軸と、主軸に対して相対移動可能に設けられ、導電性を有し、第1の測定子を成形する成形材と、第1の測定子とワークとの間の接触を検知することによって、ワークを測定する制御装置と、第1の測定子の成形の場合には、把持部に取り付けられた材料と成形材との間にパルス電圧を印加し、ワークの加工の場合には、把持部に取り付けられた電極とワークとの間にパルス電圧を印加する電源と、を備える放電加工機である。
【0008】
本開示の一態様に係る放電加工機によれば、把持部に取り付けられた材料と成形材との間にパルス電圧を印加することによって、放電加工機上で第1の測定子が成形される。このような放電加工によれば、微細な測定子を成形することが可能である。また、この第1の測定子を主軸の把持部に取り付けて、第1の測定子とワークとの間の接触を検知することによって、放電加工機からワークを取り外すことなく、放電加工機上でワークを測定することができる。したがって、放電加工機からワークを取り外すことなく、ワークの微細形状を測定することができる。
【0009】
制御装置は、回転する主軸の把持部に取り付けられた材料と、主軸に対して相対移動する成形材と、の間にパルス電圧を印加することによって、丸棒形状の第1の測定子を成形することと、電極によって、ワークに凹部を形成することと、第1の測定子を丸棒形状の中心軸線に沿って移動させて、丸棒形状の先端をワークの凹部の底に接触させることによって、凹部の底の位置を測定することと、を実行するように構成されていてもよい。この場合、第1の測定子は、ワークに形成される凹部の底を測定する。この場合、第1の測定子はワークに対して半径方向から接触する必要はなく、したがって、単純な丸棒形状であることができる。よって、第1の測定子を容易に成形することができ、かつ、第1の測定子を微細な凹部にも挿入することができる。
【0010】
放電加工機は、第1の測定子よりも太い第2の測定子を更に備えてもよく、制御装置は、第1の測定子が成形された後に、第1の測定子の長さと第2の測定子の長さとの間の差を測定することと、第2の測定子によってワークの基準を測定することと、凹部の底の測定された位置、ワークの測定された基準、及び、第1の測定子の長さと第2の測定子の長さとの間の測定された差を用いて、凹部の深さを求めることと、を実行するように構成されていてもよい。この場合、より太い第2の測定子を用いて、半径方向を含む様々な方向からワークの基準を測定することができる。
【0011】
本開示の他の態様は、主軸に取り付けられた電極とテーブルに取り付けられたワークとの間にパルス電圧を印加してワークを放電加工する放電加工機において使用される測定子であって、主軸の把持部に取り付けられた材料と、主軸に対して相対移動する導電性を有する成形材と、の間にパルス電圧を印加することによって成形された、測定子である。このような測定子は、上記のように、放電加工機上で作製されることができ、また、微細であることができる。したがって、このような測定子によれば、上記のように、放電加工機からワークを取り外すことなく、ワークの微細形状を測定することができる。
【0012】
本開示の更に他の態様は、主軸に取り付けられた電極とテーブルに取り付けられたワークとの間にパルス電圧を印加してワークを放電加工する放電加工機において、凹部を含むワークを製造するための方法であって、放電加工機は、ワークを加工する電極及びワークを測定する第1の測定子を把持する把持部、並びに、回転装置を有する主軸と、主軸に対して相対移動可能に設けられ、導電性を有し、第1の測定子を成形する成形材と、第1の測定子とワークとの間の接触を検知することによって、ワークを測定する制御装置と、第1の測定子の成形の場合には、把持部に取り付けられた材料と成形材との間にパルス電圧を印加し、ワークの加工の場合には、把持部に取り付けられた電極とワークとの間にパルス電圧を印加する電源と、を備え、当該方法は、主軸の把持部に取り付けられた材料と、主軸に対して相対移動する成形材と、の間にパルス電圧を印加することによって、第1の測定子を成形することと、電極によって、ワークに凹部を形成することと、第1の測定子の先端をワークの凹部の底に接触させることによって、凹部の底の位置を測定することと、を含む、ワークを製造するための方法である。本態様に係るワークの製造方法によれば、上記と同様に、放電加工機からワークを取り外すことなく、ワークに形成された微細な凹部をより簡単に測定することができる。したがって、ワークの製造中に、凹部の加工精度を確認することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、放電加工機上でワークの微細形状を測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る放電加工機、測定子及びワークの製造方法を説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺は変更されている場合がある。
【0016】
図1は、実施形態に係る放電加工機100を示す概略図である。放電加工機(以下、単に加工機とも称され得る)100は、主軸1に取り付けられた電極11と、テーブル2に取り付けられたワークWとの間にパルス電圧を印加して、ワークWを加工するように構成されている。加工機100は、電極11とワークWとの間に放電現象を発生させることによって、電極11の形状をワークWに転写させるように構成されている。このような加工機100は、形彫放電加工機であることができる。加工機100は、主軸1と、テーブル2と、制御装置3と、電源4と、電極交換装置5と、を備えている。加工機100は、不図示の他の構成要素を更に備えていてもよい(例えば、加工槽及び主軸1の支持機構等)。
【0017】
主軸1は、ホルダ(把持部)12と、回転装置13と、を有している。ホルダ12は、電極11を把持するように構成されている。例えば、電極交換装置5のマガジン51に、複数の電極11が保管されていてもよく、ホルダ12は、複数の電極11のなかから選択された電極を保持してもよい。また、ホルダ12は、第1の測定子14と、第2の測定子15と、を把持するように構成されている。
【0018】
第1の測定子14は、放電加工機100上で成形される(詳しくは、後述)。第1の測定子14は、例えばタングステン等の導電材料から作製されることができる。例えば、第1の測定子14は、複数の電極11のなかから選択された電極を、成形材6を用いて放電加工によって成形する(例えば、細くする)ことによって作製される。代替的に、第1の測定子14は、電極11としては使用されていない部材を、成形材6を用いて放電加工によって成形することによって作製されてもよい。第2の測定子15は、例えば、放電加工機で使用可能な商業的に入手可能な測定子であってもよい。例えば、第2の測定子15は、加工機100によって加工されないように非導電性の材料を含んでもよい。第1の測定子14と第2の測定子15とは、互いに異なる形状を有することができる。第1の測定子14及び第2の測定子15は、マガジン51に保管される。
【0019】
図2(a)は、ワークWの一例を示す斜視図であり、加工後のワークWの形状を示している。
図2(b)は、
図2(a)中のb−b線に沿った拡大矢視断面図である。
図2(a)を参照して、この例では、ワークWは、電子機器(例えば、スマートフォン等)用の端子の製造に用いられる型である。ワークWは、加工機100によって成形される複数の微細形状pを含んでいる。例えば、微細形状pは、凹部(例えば、溝又は段部等)であることができる。例えば、本実施形態では、微細形状pは微細溝である。
【0020】
図2(b)を参照して、例えば、微細溝pは、深さd1(例えば、0.3mm)及び幅d2(例えば、約0.12mm)を含むことができる。このようなワークWの測定に対して、上記の第1の測定子14及び第2の測定子15を用いることができる。例えば、第2の測定子15が、ワークWの基準(ワークWのテーブル2上における位置)の測定に使用され、第1の測定子14が、微細溝pの深さd1の測定に使用される。したがって、第2の測定子15の太さは幅d2よりも大きくてもよい一方で(例えば、球の直径約1mm)、第1の測定子14の太さは幅d2よりも小さい必要がある(例えば、直径約0.08mm)(つまり、第1の測定子14は、第2の測定子15よりも細い)。また、第1の測定子14の長さは、深さd1よりも大きい必要がある一方で、折れないように比較的短い必要もある。対照的に、第2の測定子15は第1の測定子14よりも太いので、第2の測定子15の長さは比較的長くてもよい。したがって、第1の測定子14は、第2の測定子15よりも短い。第2の測定子15は、X方向、Y方向及びZ方向の各方向からワークWに接触するのに適したように、球状の先端部を有していてもよい。例えば、第2の測定子15の寸法(例えば、長さ及び球の直径等)は、記憶装置32に保存されていてもよい。第1の測定子14は、深さd1の測定のためにZ方向のみからワークWに接触することが意図されているので、単純な棒形状(例えば、丸棒形状)の先端部を有していてもよい。他の実施形態では、第1の測定子14は、棒形状でなくてもよい。この場合、成形材6に所望の形状を付与することによって、第1の測定子14に当該形状を転写することができる。
【0021】
図1を参照して、回転装置13は、回転軸線Osを中心にしてホルダ12を回転させるように構成されている。回転装置13は、例えば、サーボモータ等の構成要素を含むことができる。回転装置13の回転は、NC装置によって制御されることができる。加工機100では、回転軸線Osに対して平行な方向がZ方向(上下方向)である。Z方向に対して垂直な平行のうち、主軸1の支持機構とテーブル2とが対向する方向がY方向(前後方向)である。Z方向及びY方向に対して垂直な方向が、X方向(左右方向)である。
【0022】
テーブル2は、ワークWを支持するように構成されている。例えば、ワークWは、テーブル2上に着脱可能に固定されたバイス21を介して、テーブル2上に固定されることができる。主軸1とテーブル2とは、X,Y及びZ軸方向において、相互に相対的に移動するように構成されている。例えば、本実施形態では、テーブル2が固定され、主軸1が、各方向の駆動装置によって、X,Y及びZ軸方向に移動されるように構成されている。代替的に、テーブル2が、X,Y及びZ軸方向のうちの少なくとも1つの方向に移動するように構成されていてもよい。各方向の駆動装置は、例えば、直動ガイド、ボールねじ及び/又はサーボモータ等の構成要素を含むことができる。X,Y及びZ軸方向の移動は、NC装置によって制御されることができる。テーブル2の上方の空間は、加工槽(不図示)によって囲われることができ、ワークW又は第1の測定子14が成形されるとき(詳しくは後述)には、加工部位が加工液に浸される。
【0023】
加工機100は、テーブル2上に、成形材6と、測定基準7と、を更に備えている。例えば、成形材6は、テーブル2上に着脱可能に固定された冶具61を介して、テーブル2上に固定されることができる。成形材6は、テーブル2が主軸1に対して相対移動可能であることから、同様に、主軸1に対して相対移動可能である。成形材6は、導電性を有しており、成形材6と、把持部12によって支持された材料(例えば、電極11)と、の間に放電現象を生じさせることによって、第1の測定子14を成形するように構成されている。例えば、このような成形材6は、第1の測定子14の材料よりも放電現象による減少が遅い材料(例えば、銅タングステン)で作製されてもよい。例えば、成形材6は、平板形状を有してもよい。
【0024】
測定基準7は、テーブル2上の原点を定義するために使用されることができる。測定基準7は、テーブル2上に着脱可能に固定されることができる。例えば、測定基準7は、商業的に入手可能な芯出し球であってもよい。例えば、測定基準7は、球状の先端部を有することができ、球の中心がテーブル2上の原点として定義されることができる。球の半径及びNC装置の座標系における球の中心の位置(測定基準7の位置)は、例えば、制御装置3の記憶装置32に予め記憶されることができる。
【0025】
制御装置3は、加工機100の構成要素と無線で又は有線で通信可能に接続されており、これら構成要素を制御するように構成されている。例えば、制御装置3は、上記のNC装置を含んでもよい。また、例えば、制御装置3は、電極交換装置5等の機械構成要素を制御するための機械制御装置を含んでもよい。例えば、制御装置3は、CPU等のプロセッサ31と、ハードディスクドライブ等の記憶装置32と、表示装置33(例えば、液晶ディスプレイ及び/又タッチパネル)と、を有することができる。例えば、プロセッサ31は、記憶装置32に記憶されたプログラムにしたがって、以下に示される動作を実行してもよい。また、例えば、制御装置3は、ROM(read only memory)、RAM(random access memory)、及び/又は、入力装置(例えば、マウス、キーボード及び/又タッチパネル)等の他の構成要素を更に備えることができ、制御装置3の構成要素は、バス(不図示)等を介して互いに接続されることができる。制御装置3は、他の構成要素を更に備えていてもよい。例えば、制御装置3は、コンピュータ、サーバー、又は、タブレット等であることができる。
【0026】
電源4は、制御装置3と無線で又は有線で通信可能に接続されており、制御装置3からの指令に基づいて、動作するように構成されている。例えば、電源4は、第1の測定子14の成形の場合には、ホルダ12に取り付けられた材料と、成形材6との間に第1のパルス電圧V1を印加する。また、電源4は、ワークWの加工の場合には、ホルダ12に取り付けられた電極11と、ワークWとの間に第2のパルス電圧V2を印加する。また、電源4は、第1の測定子14又は第2の測定子15を用いて測定が行われる場合には、ホルダ12に取り付けられた第1の測定子14又は第2の測定子15と、ワークW又は測定基準7との間に第3のパルス電圧V3を印加する。第3のパルス電圧V3は、放電加工が実質的に行われないように、第1のパルス電圧V1及び第2のパルス電圧V2よりも小さい。
【0027】
電極交換装置5は、ホルダ12に取り付けられる電極11、第1の測定子14、及び、第2の測定子15を交換するように構成されている。例えば、電極交換装置5は、マガジン51を有している。電極交換装置5は、他の構成要素を更に有してもよい(例えば、アーム等)。マガジン51は、複数の電極11、第1の測定子14、及び、第2の測定子15を保管するように構成されている。電極交換装置5の動作は、例えば、機械制御装置によって制御されることができる。
【0028】
続いて、加工機100の動作について説明する。
【0029】
図3は、実施形態に係るワークの製造方法を示すフローチャートである。例えば、
図3に示される各動作は、ワークWをテーブル2に取り付けた後に、オペレータによって指令が制御装置3に入力されたときに開始されることができる。制御装置3のプロセッサ31は、第2の測定子15を用いて、測定基準7を測定するように加工機100を制御する(ステップS100)。具体的には、
図1を参照して、プロセッサ31は、第2の測定子15をホルダ12に取り付けるように電極交換装置5を制御し、続いて、第2の測定子15を測定基準7に近づけるように、主軸1のX方向、Y方向及びZ方向の駆動装置の少なくとも1つを制御する。例えば、測定基準7の位置は、記憶装置32に予め記憶されていてもよく、プロセッサ31は、記憶されている位置に向けて第2の測定子15を移動させてもよい。また、プロセッサ31は、第2の測定子15と測定基準7との間に第3のパルス電圧V3を印加するように、電源4を制御する。プロセッサ31は、第2の測定子15と測定基準7とが接触して第2の測定子15と測定基準7との間の導通が検知された場合に、測定基準7が測定されたと判断することができる。例えば、プロセッサ31は、測定された測定基準7の球の中心の位置(NC装置の座標系における位置)を、テーブル2上の原点として定義することができる。
【0030】
図3を参照して、続いて、プロセッサ31は、第2の測定子15を用いて、ワークWの基準(ワークWの位置)を測定するように加工機100を制御する(ステップS102)。具体的には、
図1を参照して、プロセッサ31は、第2の測定子15をワークWに近づけるように、主軸1のX方向、Y方向及びZ方向の駆動装置の少なくとも1つを制御する。例えば、ワークWの基準は、オペレータによってワークW上の1つ又は複数の任意の点に予め定められてもよい。また、例えば、ワークWの基準の位置(計算上の位置)は、オペレータによって制御装置3に予め入力されてもよく、プロセッサ31は、入力された位置に向けて第2の測定子15を移動させてもよい。また、プロセッサ31は、第2の測定子15とワークWとの間に第3のパルス電圧V3を印加するように、電源4を制御する。プロセッサ31は、第2の測定子15とワークWとが接触して第2の測定子15とワークWとの間の導通が検知された場合に、ワークWが測定されたと判断することができる。例えば、プロセッサ31は、ステップS100において測定された測定基準7の位置と、ステップS102において測定されたワークWの位置(NC装置の座標系における位置)と、に基づいて、テーブル2上におけるワークWの位置を定義することができる。
【0031】
図3を参照して、続いて、プロセッサ31は、第1の測定子14を成形するように加工機100を制御する(ステップS104)。
図1を参照して、例えば、プロセッサ31は、複数の電極11の中から選択された電極をホルダ12に取り付けるように、電極交換装置5を制御することができる。続いて、プロセッサ31は、選択された電極11を成形材6の表面(例えば、YZ平面に対して平行な表面)に沿ってもしくは向かって移動させるように、主軸1のX方向、Y方向及びZ方向の駆動装置の少なくとも1つを制御する。電極11が成形材6に沿ってもしくは向かって移動する際に、プロセッサ31は、電極11を回転するように回転装置13を制御する。また、プロセッサ31は、選択された電極11と成形材6との間に第1のパルス電圧V1を印加するように、電源4を制御する。回転する電極11と成形材6とが互いに相対的に移動される間に、電極11が放電加工によって細くされ、これによって、第1の測定子14が成形される。例えば、電極11と成形材6との間の移動は、往復式に複数回繰り返されてもよい。また、この複数回の往復のセットが、複数工程繰り返されてもよい。
【0032】
図4は、
図1中の制御装置3の表示装置33に示される画面の一例であり、第1の測定子14を成形する際に用いられる画像を示す。第1の測定子14を成形する際(ステップS104)に、例えば、オペレータは、項目i1〜i5のみを最低限入力する必要がある。例えば、i1は、プログラム番号である。第1の測定子14を成形するためのプログラムの番号(例えば、
図4では9020)がi1に入力されると、項目i1よりも下の他の項目が表示される。なお、第1の測定子14を成形するためのプログラムは、既存の電極11から微細な電極を成形するためにも使用することができる。i2,i3は、それぞれX方向及びY方向におけるプログラム開始位置であり、材料となる電極11と成形材6は接触しておらず、電極11の成形材6における初期の位置を示す。i4は目標成形長さであり、オペレータは、目標成形長さi3を入力することによって、放電加工によって細くされる部分の長さを設定することができる。例えば、目標成形長さi3に材料(電極11)のホルダ12からの突出長さよりも小さい値を入力することによって、先端が細く根元が太い第1の測定子14を作製することができる。このような第1の測定子14は、曲げに対してより高い抵抗を有する。i5は目標仕上り径であり、オペレータは、目標仕上り径i5を入力することによって、放電加工によって細くされる部分の直径を設定することができる。オペレータは、上記の項目i1〜i5を入力するのみで、第1の測定子14を成形することができる。
【0033】
項目i6〜i10は、任意に入力されてもよい。例えば、項目i6は、上記の電極11と成形材6との間の移動の最終工程における、往復の回数である。例えば、オペレータは、項目i6により多い回数を入力することによって、加工精度を向上させることができる。項目i7は、成形材6への電極11のアプローチ方向である(例えば、
図1において、X方向において正方向又は負方向)。
図4を参照して、項目i8,i9は、それぞれ電極11の中心位置のシフト量及び電極11の成形長さのシフト量である。例えば、ステップS104を実施した後に第1の測定子14が所望の寸法に成形されなかった場合には、オペレータは、項目i8及び/又は項目i9を入力してステップS104を再度実施することによって、第1の測定子14を修正することができる。項目i10は、電極11の回転数である。
【0034】
図3を参照して、続いて、プロセッサ31は、第1の測定子14と第2の測定子15との間の長さの差を測定するように加工機100を制御する(ステップS106)。具体的には、
図1を参照して、プロセッサ31は、成形された第1の測定子14を測定基準7に近づけるように、主軸1のX方向、Y方向及びZ方向の駆動装置の少なくとも1つを制御する。また、プロセッサ31は、第1の測定子14と測定基準7との間に第3のパルス電圧V3を印加するように、電源4を制御する。プロセッサ31は、第1の測定子14と測定基準7とが接触して第1の測定子14と測定基準7との間の導通が検知された場合に、測定基準7が測定されたと判断することができる。例えば、プロセッサ31は、ステップS100において第2の測定子15によって測定基準7が検知されたときの主軸1のZ方向位置と、ステップS106において第1の測定子14によって測定基準7が検知されたときの主軸1のZ方向位置と、の差を求めることによって、第1の測定子14と第2の測定子15との間の長さの差を算出することができる。
【0035】
図3を参照して、続いて、プロセッサ31は、ワークWを加工するように加工機100を制御する(ステップS108)。具体的には、
図1を参照して、プロセッサ31は、複数の電極11の中から選択された電極をホルダ12に取り付けるように電極交換装置5を制御し、続いて、ワークWに所望の微細溝pを含む形状が成形されるように、主軸1のX方向、Y方向及びZ方向の駆動装置の少なくとも1つを制御する。電極11がワークWに対して移動する際に、プロセッサ31は、電極11を回転するように回転装置13を制御してもよい。また、プロセッサ31は、電極11とワークWとの間に第2のパルス電圧V2を印加するように、電源4を制御する。電極11とワークWとが互いに相対的に移動される間に、ワークWに所望の微細溝pを含む形状が成形され、これによって、ワークWが製造される。
【0036】
図3を参照して、続いて、プロセッサ31は、成形された微細溝pの近傍(例えば、上方の位置)に第1の測定子14を移動するように加工機100を制御する(ステップS110)。具体的には、
図1を参照して、プロセッサ31は、第1の測定子14をホルダ12に取り付けるように電極交換装置5を制御し、続いて、微細溝pの近傍に第1の測定子14を移動するように、主軸1のX方向、Y方向及びZ方向の駆動装置の少なくとも1つを制御する。例えば、微細溝pの近傍の位置は、オペレータによって予め制御装置3に入力されてもよい。
【0037】
図3を参照して、続いて、プロセッサ31は、第1の測定子14がワークWの微細溝pの底を測定するように、加工機100を制御する(ステップS112)。具体的には、
図1を参照して、プロセッサ31は、第1の測定子14を丸棒形状の中心軸線(主軸1の回転軸線Os)に沿って移動させて、丸棒形状の先端をワークWの微細溝pの底の狭いエリアに接触させるように、主軸1のZ方向の駆動装置を制御する。また、プロセッサ31は、第1の測定子14とワークWとの間に第3のパルス電圧V3を印加するように、電源4を制御する。プロセッサ31は、第1の測定子14とワークWとが接触して第1の測定子14とワークWとの間の導通が検知された場合に、微細溝pの底が測定されたと判断することができる。
【0038】
図3を参照して、続いて、プロセッサ31は、測定結果を記憶装置32に保存し(ステップS114)、一連の動作を終了する。例えば、プロセッサ31は、ステップS112で測定された微細溝pの底の位置、ステップS102において測定されたワークWの基準の位置、及び、ステップS106において測定された第1の測定子14の長さと第2の測定子15の長さとの間の差を用いて、微細溝pの深さを求めることができる。例えば、微細溝pの深さが所望の値と異なる場合、プロセッサ31は、ステップS108〜S112を繰り返すことによって、ワークWを加工機100から取り外すことなく、ワークWを再加工することができる。プロセッサは、これらの測定結果(微細溝pの底の位置、ワークWの基準の位置、第1の測定子14の長さと第2の測定子15の長さとの間の差、及び、微細溝pの深さのうちの少なくとも1つ)を、記憶装置32に保存する。
【0039】
以上のような実施形態に係る加工機100によれば、ホルダ12に取り付けられた材料と、成形材6との間に第1のパルス電圧V1を印加することによって、加工機100上でワークWを測定するための第1の測定子14が成形される。このような放電加工によれば、微細な測定子14を成形することが可能である。また、この第1の測定子14をホルダ12に取り付けて、第1の測定子14とワークWとの間の接触を検知することによって、加工機100上でワークWを測定することができる。したがって、加工機100からワークWを取り外すことなく、ワークWの微細溝pを測定することができる。
【0040】
また、加工機100では、制御装置3は、回転する主軸1のホルダ12に取り付けられた材料と、主軸1に対して相対移動する成形材6と、の間に第1のパルス電圧V1を印加することによって、丸棒形状の第1の測定子14を成形することと、電極11によって、ワークWに微細溝pを形成することと、第1の測定子14を丸棒形状の中心軸線に沿って(すなわち、z方向に沿って)移動させて、丸棒形状の先端をワークWの微細溝pの底に接触させることによって、微細溝pの底の位置を測定することと、を実行するように構成されている。したがって、第1の測定子14はワークWに対して半径方向から接触する必要はなく、したがって、単純な丸棒形状であることができる。よって、第1の測定子14を容易に成形することができ、かつ、微細溝pにも容易に挿入することができる。
【0041】
また、加工機100は、第1の測定子14よりも太い第2の測定子15を更に備えており、制御装置3は、第1の測定子14が成形された後に、第1の測定子14の長さと第2の測定子15の長さとの間の差を測定することと、第2の測定子15によってワークWの基準を測定することと、微細溝pの底の測定された位置、ワークWの測定された基準、及び、第1の測定子14の長さと第2の測定子15の長さとの間の測定された差を用いて、微細溝pの深さを求めることと、を実行するように構成されている。したがって、より太い第2の測定子を用いて、半径方向を含む様々な方向からワークWの基準を測定することができ、さらに、より細い第1の測定子を用いて、微細溝pの底を測定することができる。
【0042】
また、実施形態に係る第1の測定子14は、上記のように、加工機100上で作製されることができ、また、微細であることができる。したがって、このような第1の測定子14によれば、上記のように、加工機100からワークWを取り外すことなく、ワークWの微細溝pを測定することができる。また、第1の測定子14は、測定に使用されることが意図されているため、繰り返し使用することができる。
【0043】
また、実施形態に係るワークWの製造方法によれば、上記のように、加工機100からワークWを取り外すことなく、ワークWに形成された微細溝pの深さをより簡単に測定することができる。したがって、ワークWの製造中に、微細溝pの加工精度を確認することができる。
【0044】
放電加工機、測定子及びワークの製造方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解するだろう。また、当業者であれば、上記の動作は、上記の順番で実施される必要はなく、矛盾が生じない限り、他の順番で実施可能であることを理解するだろう。
【0045】
例えば、
図3を参照して、上記の実施形態では、測定基準7の測定(ステップS100)及びワークWの基準の測定(ステップS102)の後に、第1の測定子14の成形(ステップS104)及び第1の測定子14と第2の測定子15との間の長さの差の測定(ステップS106)が実施されている。しかしながら、他の実施形態では、ステップS104及びステップS106は、ステップS100及びステップS102の前に実施されてもよい。また、第1の測定子14は折れない限り繰り返し使用することができるので、微細溝pの測定に使用可能な第1の測定子14が既に作製されている場合には、ステップS104及びステップS106は、省略されてもよい。
【0046】
また、上記の実施形態では、第1の測定子14と第2の測定子15との間の長さの差の測定(ステップS106)は、測定基準7を用いて実施されている。しかしながら、他の実施形態では、例えば、テーブル2上にレーザ測定器又はカメラ等の測定装置を搭載してもよく、第1の測定子14の成形(ステップS104)の後に、この測定装置によって第1の測定子14の長さ及び幅等の寸法を測定してもよい。この場合、測定された第1の測定子14の長さと、既知の第2の測定子15の長さとに基づいて、第1の測定子14と第2の測定子15との間の長さの差を求めることができる。
【解決手段】主軸1に取り付けられた電極11とテーブル2に取り付けられたワークWとの間にパルス電圧を印加してワークWを放電加工する放電加工機100は、ワークWを加工する電極11及びワークWを測定する第1の測定子14を把持する把持部12、並びに、回転装置13を有する主軸1と、主軸1に対して相対移動可能に設けられ、導電性を有し、第1の測定子14を成形する成形材6と、第1の測定子14とワークWとの間の接触を検知することによって、ワークWを測定する制御装置3と、第1の測定子14の成形の場合には、把持部12に取り付けられた材料と成形材6との間にパルス電圧を印加し、ワークWの加工の場合には、把持部12に取り付けられた電極11とワークWとの間にパルス電圧を印加する電源4と、を備える。