【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明の脱血導管アセンブリは、心臓に装着して前記心臓内の血液を前記心臓から補助人工心臓ポンプに導くために用いる脱血導管アセンブリであって、多孔性素材からなる脱血導管と、前記脱血導管の一方の端部に取り付けられたカフとからなり、前記脱血導管の外周面には第1の気体不透過性素材層が形成されていることを特徴とする。
【0010】
すなわち、本発明の脱血導管アセンブリは、脱血導管と、当該脱血導管の一方の端部に取り付けられたカフとを備える一方において、従来備えていたインフローカニューレ(カニューレチップ)を備えないものである。従って、本発明の脱血導管アセンブリには、インフローカニューレ(カニューレチップ)が存在しない。
【0011】
このため、本発明の脱血導管アセンブリによれば、インフローカニューレが存在しないことから、心臓内の血流が極めて弱い患者の心臓に脱血導管アセンブリが装着された場合に、インフローカニューレの根元の部分で血栓が発生するという事態、手術又は術後心臓縮小などにより脱血導管アセンブリが心臓に対して斜めに装着された状態となった場合に、インフローカニューレと心筋とが近接又は接触している部分で血栓が発生するという事態、及び、心腔内が負圧(1気圧未満)になった場合であっても、血流30が弱くなってインフローカニューレ920の根元の部分で血栓32が発生したり、インフローカニューレ920と心筋26とが近接又は接触している部分で血栓32が発生したりするという事態が発生することがなくなり、上記した3つの課題を解決することが可能となる。
【0012】
なお、本発明の脱血導管アセンブリには、上記したように、インフローカニューレが存在しないが、特許文献1に記載の脱血導管アセンブリ900の場合と同様に、脱血導管アセンブリを心臓に適正に装着可能であること、及び、本発明の脱血導管アセンブリを心臓に装着することに起因して、手術により心臓に設けられた開口が手術後に徐々に狭くなるという事態の発生を防止可能であることが本発明の発明者らの試験(後述する試験例参照。)により確認されている。
【0013】
また、本発明の脱血導管アセンブリによれば、脱血導管が多孔性素材からなることから、脱血導管(脱血導管アセンブリ)を使用する過程において多孔性素材からなる脱血導管の内周面に血栓がアンカリングされて疑似内膜(犠牲内膜)が形成されるとともに、心臓に近い部位(心臓から2〜3cm以内の部位)には内皮細胞が安定して定着する結果、血栓発生の問題が軽減された脱血導管アセンブリとなる。
【0014】
また、本発明の脱血導管アセンブリによれば、脱血導管の外周面には第1の気体不透過性素材層が形成されていることから、多孔性素材からなる脱血導管を用いるにもかかわらず、脱血導管の内部が負圧(1気圧未満)になったときにも脱血導管内への空気の巻き込みを防止することができる。
【0015】
なお、本明細書において、脱血導管(及び脱血導管アセンブリ)とは、心臓に装着して心臓内の血液を心臓から補助人工心臓ポンプに導くために用いる医療部品である。また、カフとは、脱血導管アセンブリを心臓に装着するための部材である。また、インフローカニューレとは、人工血管の先端部に取り付けて用いる部材であって心臓内部に突出する部分を有する部材のことである。
【0016】
[2]本発明の脱血導管アセンブリにおいては、前記脱血導管は、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製の人工血管からなることが好ましい。
【0017】
本態様の脱血導管アセンブリによれば、脱血導管が柔軟性に優れた、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(以下、ePTFEという。)製の人工血管からなることから、脱血導管アセンブリを容易に補助人工心臓ポンプに接続することができる。また、本態様の脱血導管アセンブリによれば、脱血導管が柔軟性に優れた、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製の人工血管からなることから、人体への負担を軽くすることができる。また、本態様の脱血導管アセンブリによれば、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製の人工血管からなることから、血液適合性及び抗血栓性に優れた脱血導管アセンブリとなる。
【0018】
[3]本発明の脱血導管アセンブリにおいては、前記脱血導管は、ポリエステル織布製の人工血管からなることも好ましい。
【0019】
本態様の脱血導管アセンブリによれば、脱血導管が柔軟性に優れた、ポリエステル織布製の人工血管からなることから、脱血導管アセンブリを容易に補助人工心臓ポンプに接続することができる。また、本態様の脱血導管アセンブリによれば、脱血導管が柔軟性に優れた、ポリエステル織布製の人工血管からなることから、人体への負担を軽くすることができる。また、本態様の脱血導管アセンブリによれば、ポリエステル織布製の人工血管からなることから、血液適合性及び抗血栓性に優れた脱血導管アセンブリとなる。
【0020】
[4]本発明の脱血導管アセンブリにおいては、前記カフは、ポリテトラフルオロエチレン製不織布(以下、PTFE製不織布という。)からなることが好ましい。
【0021】
本態様の脱血導管アセンブリは、カフが、PTFE製不織布からなることから、心臓組織との生体親和性に優れた脱血導管アセンブリとなる。また、本態様の脱血導管アセンブリによれば、カフが、PTFE製不織布からなることから、カフの柔軟性が高く、脱血導管アセンブリを心臓に装着する際に行う手術の自由度が高くなる。また、患者の心臓の形状・構造に相応しい形状の脱血導管アセンブリを実現できる。また、手術の際に、縫合糸によりプレジェット、心臓、カフにそれぞれ糸掛けを行った後、縫合糸を縛ることにより、手術により心臓に設けられた開口の断面(例えばパンチング切断面)をカフが覆うような形状の脱血導管アセンブリを実現できる(後述する
図4(d)〜
図4(f)参照。)。なお、本態様の脱血導管アセンブリにおいて、カフは、PTFE製不織布からなるものに限定されるものではなく、ポリエステル製不織布その他のものであってもよい。
【0022】
なお、本態様の脱血導管アセンブリを心臓に装着する際に行う手術には、PTFE製のモノフィラメント縫合糸、PTFE製のマルチフィラメント縫合糸、ポリエステル製のマルチフィラメント縫合糸などを用いることができる。なかでも、ポリエステル製のマルチフィラメント縫合糸を用いることが好ましい。
【0023】
[5]本発明の脱血導管アセンブリにおいては、前記第1の気体不透過性素材層は、ポリウレタン層又はポリカーボネート系ウレタン層からなることが好ましい。
【0024】
本態様の脱血導管アセンブリによれば、第1の気体不透過性素材層が、ポリウレタン層又はポリカーボネート系ウレタン層からなることから、優れた気体不透過性能が得られ、その結果、優れた空気巻き込み性能が得られる。また、第1の気体不透過性素材層が、ポリウレタン層又はポリカーボネート系ウレタン層からなることから、生体に悪影響を与えることがない。
【0025】
この場合、ポリウレタン層又はポリカーボネート系ウレタン層の厚さは、0.05mm〜0.5mmの範囲内にあることが好ましい。当該厚さが0.05mmよりも薄い場合には、気体不透過性能が低くなって十分な空気巻き込み防止効果が得られない場合があるからであり、当該厚さが0.5mmよりも厚い場合には、脱血導管の柔軟性が低下して、脱血導管アセンブリを補助人工心臓ポンプへ接続する際の作業性が低下したり、人体への負担が重くなったりするからである。これらの観点からは、ポリウレタン層又はポリカーボネート系ウレタン層の厚さは、0.1mm〜0.4mmの範囲内にあることが好ましく、0.15mm〜0.25mmの範囲内にあることがより一層好ましい。
【0026】
[6]本発明の脱血導管アセンブリにおいては、前記カフの前記脱血導管側の面における少なくとも内周側所定領域には第2の気体不透過性素材層が形成されていることが好ましい。
【0027】
本態様の脱血導管アセンブリによれば、カフの脱血導管側の面における少なくとも内周側所定領域には第2の気体不透過性素材層が形成されていることから(後述する
図4(e)参照。)、本態様の脱血導管アセンブリを心臓に装着した場合に、カフを介して心臓内部から空気が巻き込まれる事態を極力抑制することができる。
【0028】
[7]本発明の脱血導管アセンブリにおいては、前記第1の気体不透過性素材層と、前記第2の気体不透過性素材層とは連続して形成されていることが好ましい。
【0029】
本態様の脱血導管アセンブリによれば、第1の気体不透過性素材層と、第2の気体不透過性素材層とが連続して形成されていることから、本態様の脱血導管アセンブリを心臓に装着した場合に、カフを介して心臓内部から空気が巻き込まれる事態を極力抑制することができる。
【0030】
[8]本発明の脱血導管アセンブリにおいては、前記第2の気体不透過性素材層は、前記脱血導管の外周面から少なくとも2mmの領域に形成されていることが好ましい。
【0031】
本態様の脱血導管アセンブリによれば、第2の気体不透過性素材層が、脱血導管の外周面から少なくとも2mmの領域(後述する
図2(c)の符号Aで示す領域)に形成されていることから、本態様の脱血導管アセンブリを心臓に装着した場合に、カフを介して心臓内部から空気が巻き込まれる際の経路を極力狭くすることができる。
【0032】
[9]本発明の脱血導管アセンブリにおいては、前記第2の気体不透過性素材層は、前記カフの外周から少なくとも2mmの領域には形成されていないことが好ましい。
【0033】
本態様の脱血導管アセンブリによれば、第2の気体不透過性素材層が、カフの外周から少なくとも2mmの領域(後述する
図2(c)の符号Bで示す領域)には形成されていないことから、本態様の脱血導管アセンブリを心臓に装着した場合に、カフの脱血導管側の面においても生体組織がカフに浸潤して、カフと生体とが良好に癒着するようになる。
【0034】
[10]本発明の脱血導管アセンブリにおいては、前記第2の気体不透過性素材層は、ポリウレタン層又はポリカーボネート系ウレタン層からなることが好ましい。
【0035】
本態様の脱血導管アセンブリによれば、第2の気体不透過性素材層が、ポリウレタン層又はポリカーボネート系ウレタン層からなることから、優れた気体不透過性能が得られ、その結果、優れた空気巻き込み防止性能が得られる。また、第2の気体不透過性素材層が、ポリウレタン層又はポリカーボネート系ウレタン層からなることから、生体に悪影響を与えることがない。
【0036】
なお、第2の気体不透過性素材層の場合も、ポリウレタン層又はポリカーボネート系ウレタン層の厚さは、0.05mm〜0.5mmの範囲内にあることが好ましい。当該厚さが0.05mmよりも薄い場合には、気体不透過性能が低くなって十分な空気巻き込み防止効果が得られない場合があるからであり、当該厚さが0.5mmよりも厚い場合には、カフの柔軟性が低下して、脱血導管アセンブリを心臓へ装着する際の作業性が低下したり、手術により心臓に設けられた開口の断面(例えばパンチング切断面)をカフが覆った状態を実現し難くなる場合があるからである。これらの観点からは、ポリウレタン層又はポリカーボネート系ウレタン層の厚さは、0.1mm〜0.4mmの範囲内にあることが好ましく、0.15mm〜0.25mmの範囲内にあることがより一層好ましい。
【0037】
[11]本発明の脱血導管アセンブリにおいては、前記カフは、前記脱血導管に縫い付けられていることが好ましい。
【0038】
本態様の脱血導管アセンブリによれば、カフが脱血導管に縫い付けられていることから、カフと脱血導管との柔軟な接続が実現できるため、患者の心臓の形状・構造に相応しい形状の脱血導管アセンブリを実現できる。
【0039】
なお、本態様の脱血導管アセンブリにおいては、カフを脱血導管に縫い付ける際には、PTFE製のモノフィラメント縫合糸、PTFE製のマルチフィラメント縫合糸、ポリエステル製のマルチフィラメント縫合糸などを用いることができる。なかでも、ポリエステル製のマルチフィラメント縫合糸を用いることが好ましい。また、本態様の脱血導管アセンブリにおいては、カフを脱血導管に縫い付けた後、接着剤を用いてカフを脱血導管にさらに強固に取り付けることとしてもよい。
【0040】
本発明の脱血導管アセンブリにおいては、前記カフの直径方向に沿った幅Wが5mm〜16mmの範囲内にあることが好ましい。
【0041】
本態様の脱血導管アセンブリにおいて、上記幅Wを5mm〜16mmの範囲内とした理由は以下の通りである。すなわち、上記幅Wが5mmよりも狭い場合には、脱血導管アセンブリを心臓に装着したときカフの幅が狭すぎて、心臓に設けられた開口の断面(パンチ面)をカフで十分に覆うことができなかったり(後述する
図4(d)及び
図4(e)参照。
図4(d)及び
図4(e)ではパンチ面がカフで十分に覆われている。)、心臓とカフとの間でスパイラル状に糸掛けを行う作業が行えなかったりする場合があるからである(後述する
図4(e)参照。
図4(e)では当該箇所でスパイラル状に正しく糸掛けが行われている。)。一方、上記幅Wが16mmよりも広い場合には、脱血導管アセンブリを心臓に装着したときカフの幅が広すぎて、患者の身体に不要な負担をかけてしまう場合があるからである。この観点から言えば、患者の心臓のサイズにもよるが、上記幅Wは7mm以上であることが好ましく、8mm以上であることがより一層好ましい。また、上記幅Wは15mm以下であることが好ましく、14mm以下であることがより一層好ましい。
【0042】
本態様の脱血導管アセンブリにおいて、カフの直径方向に沿った幅Wとは、カフの直径D1からカフの開口の直径D2を減じた寸法を2で除した寸法のことである(後述する
図2(a)参照。)。
【0043】
本態様の脱血導管アセンブリにおいては、前記脱血導管アセンブリは、前記心臓の左心室心尖部又はその近傍に装着して前記心臓の左心室内の血液を補助人工心臓ポンプに導くために用いる脱血導管アセンブリであることが好ましい。本態様の脱血導管アセンブリによれば、効率良く心臓を補助できる補助人工心臓システムに好適に用いることができる。
【0044】
[12]本発明の脱血導管アセンブリにおいては、少なくとも前記脱血導管の一方の端部には、環状の補強部材が配設されていることが好ましい。
【0045】
ところで、本態様の脱血導管アセンブリにおいては、インフローカニューレが存在しないため、手術により心臓に設けられた開口が手術後に徐々に狭くなるという事態が発生するのではないかと考えられる。しかしながら、本態様の脱血導管アセンブリによれば、脱血導管の一方の端部には環状の補強部材が配設されていることから、手術により心臓に設けられた開口が手術後に徐々に狭くなるという事態の発生を防止できる。
【0046】
環状の補強部材は、人工血管の強度を補うために人工血管の一方の端部に配設された環状又はコイル状の部材である。環状の補強部材としては、例えば、長手方向に沿って人工血管の外周部に溶着されて用いられる従来より公知の螺旋状の補強リング(補助PTFEヘリックスということもある)を好適に用いることができる。但し、これに限定されるものではなく、上記した従来より公知の螺旋状の補強リングとは別の部材を用いることもできる。例えば、人工血管の一方の端部における外周部又は内周部に配設された環状又は螺旋状の補強リング、カフの内周部に埋め込まれた環状又は螺旋状の補強リングを例示することもできる。なお、環状の補強部材は、断面形状が円であってもよいし、長円であってもよいし、四角形その他の多角形であってもよいし、その他の形状であってもよい。また、環状の補強部材は、ベルト状のものであってもよい。環状の補強部材は、人工血管の外周部又は内周部に溶着されていてもよい。
【0047】
脱血導管の外周面には、上記した第1の気体不透過性素材層を介して、血液適合性及び抗血栓性を有する材料(例えば、MPCポリマー)がコーティングされていてもよい。
【0048】
[13]本発明の脱血導管アセンブリにおいては、前記脱血導管の他方の端部には、補助人工心臓ポンプに接続するための接続リングが配設されていることが好ましい。
【0049】
本態様の脱血導管アセンブリは、人工血管の他方の端部に補助人工心臓ポンプに接続するための接続リングが配設されていることから、補助人工心臓ポンプとの接続作業性に優れた脱血導管アセンブリとなる。
【0050】
[14]本発明の脱血導管アセンブリは、心臓に装着して前記心臓内の血液を前記心臓から補助人工心臓ポンプに導くために用いる脱血導管アセンブリであって、多孔性素材からなる脱血導管と、前記脱血導管の一方の端部に配設されたインフローカニューレと、前記インフローカニューレの外周所定位置に配設されたカフとからなり、前記脱血導管の外周面には気体不透過性素材層が形成されていることを特徴とする。
【0051】
本発明の脱血導管アセンブリの効果のうち、脱血導管が多孔性素材からなることに基づく効果、及び、脱血導管の外周面に第1の気体不透過性素材層が形成されている効果は、上記した脱血導管アセンブリ、すなわち、インフローカニューレを備える脱血導管アセンブリの場合にも得られる。
【0052】
[15]本発明の補助人工心臓ポンプシステムは、血液導入部及び血液送出部を有する補助人工心臓ポンプと、前記補助人工心臓ポンプの前記血液導入部と心臓とを接続する脱血導管アセンブリと、前記補助人工心臓ポンプの前記血液送出部と大動脈とを接続するアウトフローグラフトとを備える補助人工心臓ポンプシステムであって、前記脱血導管アセンブリは、本発明の脱血導管アセンブリのうち上記(1)〜(13)のいずれかにの脱血導管アセンブリであることを特徴とする。
【0053】
本発明の補助人工心臓ポンプシステムによれば、本発明の脱血導管アセンブリのうち上記(1)〜(13)のいずれかに記載の脱血導管アセンブリを備えることから、従来の脱血導管アセンブリにおいてインフローカニューレ(カニューレチップ)が存在することに起因して発生していた上記3つの課題を解決可能な補助人工心臓ポンプシステムとなる。
【0054】
また、本発明の補助人工心臓ポンプシステムによれば、脱血導管が多孔性素材からなることから、補助人工心臓ポンプシステムを使用する過程において多孔性素材からなる脱血導管の内周面に血栓がアンカリングされるとともにその部分に少なくとも疑似内膜(犠牲内膜)が形成され、また、心臓に近い部位(心臓から2〜3cm以内の部位)には内皮細胞が安定して定着する結果、血栓発生の問題が軽減された補助人工心臓ポンプシステムとなる。
【0055】
また、本発明の補助人工心臓ポンプシステムによれば、脱血導管の外周面には第1の気体不透過性素材層が形成されていることから、多孔性素材からなる脱血導管を用いるにもかかわらず、脱血導管の内部が負圧(1気圧未満)になったときにも空気の巻き込みを防止することができる。
【0056】
本発明の補助人工心臓ポンプシステムにおいては、前記脱血導管アセンブリは、上記[13]に記載の脱血導管アセンブリであることがより好ましい。これらの脱血導管アセンブリには補助人工心臓ポンプに接続するための接続リングが配設されていることから、脱血導管アセンブリと補助人工心臓ポンプとがより一層適切に接続された補助人工心臓ポンプシステムを実現できるからである。
【0057】
[16]本発明の脱血導管アセンブリの心臓への装着方法は、人工血管からなる脱血導管と、前記脱血導管の一方の端部に取り付けられたカフとからなる脱血導管アセンブリを準備する第1工程と、心臓の所定部位に開口を開ける第2工程と、前記心臓の外側において前記開口を取り囲む位置に配置した複数のプレジェットのそれぞれについて、両端に針を付けた縫合糸のそれぞれの針を前記プレジェットの表面から前記心臓の心筋を貫通して前記心臓の内側まで通すことにより前記心臓に糸掛けを行う第3工程と、前記縫合糸のそれぞれについて、前記各針を前記開口を通して前記心臓の外側に取り出すともに、前記各針を前記脱血導管アセンブリの前記カフに通して前記カフへの糸掛けを行う第4工程と、前記各縫合糸を縛ることにより前記脱血導管の面(つら)と前記心臓の内壁面とが面一(つらいち)となった状態で前記脱血導管アセンブリを前記心臓に装着する第5工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0058】
本発明の脱血導管アセンブリの心臓への装着方法によれば、本発明の脱血導管アセンブリを適正に心臓に装着することが可能となり、従来の脱血導管アセンブリにおいてインフローカニューレ(カニューレチップ)が存在することに起因して発生していた上記3つの課題を解決可能な補助人工心臓ポンプシステムを実現することができる。
【0059】
[17]本発明の脱血導管アセンブリの心臓への装着方法においては、前記第5工程において、前記脱血導管が前記心臓の内壁面から前記心臓の内部側に突出しない状態で前記脱血導管アセンブリを前記心臓に装着することが好ましい。
【0060】
本態様の脱血導管アセンブリの心臓への装着方法によれば、従来の脱血導管アセンブリにおいてインフローカニューレ(カニューレチップ)が存在することに起因して発生していた上記3つの課題を解決可能な補助人工心臓ポンプシステムを実現することができる。
【0061】
[18]本発明の脱血導管アセンブリの心臓への装着方法において、前記第5工程においては、前記開口のパンチング切断面を前記カフが覆うような状態で前記脱血導管アセンブリを前記心臓に装着することが好ましい。
【0062】
本態様の脱血導管アセンブリによれば、従来の脱血導管アセンブリにおいてインフローカニューレ(カニューレチップ)が存在することに起因して発生していた上記3つの課題を解決可能な補助人工心臓ポンプシステムを実現することができる。
【0063】
[19]本発明の脱血導管アセンブリの心臓への装着方法においては、前記第5工程の後に、前記開口を取り囲む領域内において、前記縫合糸とは別の縫合糸を用いて前記カフと前記心臓との間でスパイラル状に糸掛けを行って、前記脱血導管アセンブリの前記心臓への装着をより強固なものにする第6工程をさらに含むことが好ましい。
【0064】
本態様の脱血導管アセンブリによれば、脱血導管アセンブリの心臓への装着をより強固なものにすることができる。