(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765623
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】壁材で遮水シートを保護した貯留槽
(51)【国際特許分類】
E03F 1/00 20060101AFI20200928BHJP
E03B 11/14 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
E03F1/00 A
E03B11/14
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-55462(P2016-55462)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-166297(P2017-166297A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
【審査官】
佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−287337(JP,A)
【文献】
特開2015−224450(JP,A)
【文献】
特開2008−133598(JP,A)
【文献】
特開2009−167681(JP,A)
【文献】
特開2005−023589(JP,A)
【文献】
特開平09−041470(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0255921(US,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0033529(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00
E03B 11/14
E03B 3/02
E03B 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に帯水材を複数配列し貯留空間を形成し、当該貯留空間を遮水シートで包んだ貯留槽において、当該貯留槽の周側面部の遮水シートの外側に遮水シートを保護するため、ひも状の熱硬化性樹脂で表面に突起物がない外観板状に構成された材料を壁材として配置し、当該壁材に貯留槽のオーバーフローを流入させる壁材で遮水シートを保護した貯留槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯水材を配列しそれをシートで包んだ雨水流出抑制施設に関する。
【背景技術】
【0002】
最近温暖化の影響で従来の予測を超える雨量が経験されるようになってきている。そのため雨水流出抑制施設の重要性が認められるようになった。かかる流出抑制施設の中で、貯留と浸透を兼ね備えた貯留兼浸透槽あるいは貯留槽からのオーバーフローを直接地中に浸透させる方法がある。例えば貯留浸透兼用槽としては特開H09-041470、特開2008-133598があり、前者は槽を上下に分け上部を浸透槽、下部を貯留槽としている。また後者は槽の中心部を貯留槽としその周囲を浸透槽としている。また貯留槽のオーバーフローを浸透させる方法には特開2009-287337がある。
本願は帯水材を配列し貯留空間を形成し、その貯留空間を遮水シートで覆った貯留槽からのオーバーフローを浸透させる簡単で安価な方法を提供することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開H09-041470
【特許文献2】特開2008-133598
【特許文献3】特開2009-287337
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、樹脂製あるいは金属性などのブロックを帯水材として地中に配列し貯留空間を形成し、その貯留空間を遮水シートで覆った貯留槽からのオーバーフローを地中に浸透させるための新規な貯留槽の提案にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、地下に帯水材を複数配列し貯留空間を形成し、当該貯留空間を遮水シートで包んだ貯留槽において、当該貯留槽の周側面部の遮水シートの外側に遮水シートを保護するため、ひも状の熱硬化性樹脂で表面に突起物がない外観板状に構成された材料を壁材として配置し、当該壁材に貯留槽のオーバーフローを流入させる壁材で遮水シートを保護した貯留槽である。従来のテーブル状の帯水材を用いる貯留槽は壁材の外側に遮水シートを配設したが、遮水シートの保護と浸透機能を与えるため、前記材料で構成された壁材を遮水シートの外側に配置し、壁材に透水機能を付与した。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、帯水材を配列して得られた貯留空間を区画する壁材と遮水シートの順番を換え、壁材に通水機能と浸透機能を付与したため以下の効果がある。
1.従来の壁材が浸透用の機能を合わせ有することになる。
2.直接貯留槽からのオーバーフローを浸透させる場合は、浸透が不均一となり槽の基礎を乱す可能性がある。しかし本願の壁材で遮水シートを保護した貯留槽では、浸透が壁材面から起こり、通常の浸透槽からの浸透と同じとなる。
3.通常の貯留槽ではオーバーフローあるいはオリフィスなどを介し適量他の排水路などに流出させる必要があるが、そのための付帯施設が必要なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】は、本発明の壁材で遮水シートを保護した貯留槽の概念断面図である。
【
図2】は、本発明に使用するテーブル状の帯水材の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図により詳細に説明する。
図1に示す通り、本発明は、帯水材を配列した貯留空間を遮水シートで覆い貯留槽とし、その側周面に壁材を配設している。壁材はひも状の熱硬化性樹脂で表面に突起物がない外観板状に構成され、全体が通水可能とされ、表面および底面から流出可能となっている。さらに、貯留槽からのオーバーフローは壁材に流入するようになっている。また従来どおり貯留槽の上面・底面は保護シートとして透水シートが配設されている。また、貯留槽及び壁材を包むように保護シートとして透水シートが配設されている。
【0009】
図2は、テーブル状の帯水材の概念図である。図に示すように、平盤部に開口する4本の脚部からなる。平盤部には貯留する雨水等の流通が速やかになされるよう孔部が設けられている。なお、運搬貯蔵の便のため脚部にはテーパーが施さされ入れ子状に積み重ね可能となっている。通常の使用条件では
図2bに示すように脚部を対向させた状態に組み合わせたユニットとして使用する場合が多い。
【0010】
図3は、従来の貯留槽の概念図である。テーブル状の帯水材を配列した貯留空間の側周面に壁材を配設して、その外側を遮水シートで覆っている。本形状の帯水材は、配列したとき最外周部に大きな開口部が生じるため壁材で塞ぐことが必要となる。
さらに遮水シートの外側に保護シートを配設し、遮水シートが砕石の角、木の根などにより破損されることを防いでいる。オリフィスますなどの付帯設備を設け、許容される範囲で貯留槽中の雨水を排水溝などに流出させている。
【0011】
上述したように本願壁材で遮水シートを保護した貯留槽と従来の貯留槽の差異は壁材と遮水シートの順番が異なっている。従来の貯留槽から直接オーバーフローを浸透させると不均一な浸透となり槽の基礎を乱す可能性があり槽の破壊にも起こりえるのである。しかし、本願壁材で遮水シートを保護した貯留槽は、浸透が壁の壁面あるいは底面からの浸透となり、通常の浸透槽と同じ浸透となり、槽の基礎を乱す可能性はなくなる効果も期待できるのである。
【0012】
図4は、本願発明に用いる壁材の概念図を示している。壁材はひも状の熱硬化性の樹脂を不規則に且つ外観板状で表面に突起の存在しないよう成形したものから形成される。モヤシロン、もやいドーレーンマットなどの商標で市販されている。その他
図6に示す壁材も使用可能である。
【0013】
図1では、壁材は一つとして表現してあるが、上下の通水性を満たせば、複数の部材で持って壁材とすることはなんら問題がない。
【0014】
図4は、本願壁材で遮水シートを保護した貯留槽に使用可能な帯水材の例である。
【産業上の利用可能性】
【0015】
図1に示すように、雨水の流出抑制施設として利用可能である。
【符号の説明】
【0016】
1 貯留槽
2 壁材
3 帯水材
4 遮水シート
5 透水シート
6 オーバーフロー管