特許第6765629号(P6765629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイソー株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765629
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】アクリルゴム、およびそのゴム架橋物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/10 20060101AFI20200928BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   C08F220/10
   C08L33/04
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-249294(P2015-249294)
(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-114958(P2017-114958A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(72)【発明者】
【氏名】矢野 倫之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 涼
(72)【発明者】
【氏名】松尾 孝
【審査官】 尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04238577(US,A)
【文献】 特開昭55−052336(JP,A)
【文献】 特開昭53−102946(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101372607(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数1〜3のアルキル基または炭素数2〜3のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位10〜98.9重量%、(B)炭素数4〜8のアルキル基または炭素数4〜8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位0〜88.9重量%、(C)フマル酸、イタコン酸から選択されるジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのジエステルであるエチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルから誘導される構成単位1〜30重量%、(D)架橋基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導される構成単位を含有することを特徴とするアクリルゴム。
【請求項2】
(D)架橋基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導される構成単位0.1〜20重量を含有することを特徴とする請求項に記載のアクリルゴム。
【請求項3】
(C)フマル酸、イタコン酸から選択されるジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのジエステルであるエチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルから誘導される構成単位が、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジn−ブチル、フマル酸ジイソブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジn−ブチルから選択されるエチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルから誘導される構成単位である請求項1又は2に記載のアクリルゴム。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のアクリルゴムに架橋剤を添加してなることを特徴とするアクリルゴム組成物。
【請求項5】
請求項4で得られるアクリルゴム組成物を架橋させたことを特徴とするアクリルゴム架橋物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴムに係わり、さらに詳しくはロール加工性などの加工性に優れ、耐熱、耐酸性に優れた架橋物を与えることができるアクリルゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とするゴムであり、耐久性に関する諸物性に優れた材料として知られ、エンジンガスケット、オイルホース、エアホース、Oリングなどの工業用ゴムや自動車用ゴムとして広汎に用いられている。
【0003】
しかしながら、近年の自動車の高性能化に伴い、さらに優秀な耐熱性、耐酸性等の高耐久性が求められるようになってきた。
【0004】
耐熱性や耐酸性を上げるための方策として、活性な架橋点を有する架橋性モノマーが通常1〜5重量%程度共重合されている。架橋性モノマーとしては、一般的に2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルクロロアセテートなどの塩素系モノマーや、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ系モノマーが使用されている。
【0005】
また、架橋性モノマーとしては、上記以外のものも検討されており、たとえば特許文献1ではジフルオロメチレン基を有する(メタ)アクリレートモノマーの脱フッ化水素反応により二重結合を生成させて架橋させることが提案されている。また、特許文献2ではフマル酸モノシクロヘキシルなどの脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステルを用いたアクリルゴムが開示されている。
【0006】
しかしながら、自動車関連の分野などに用いられるゴム部品には、さらなる耐熱性、耐酸性が求められており、より品質の高いアクリルゴムが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−139828号公報
【特許文献2】特開2004−18567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、本発明の課題はロール加工性に優れ、耐熱性、耐酸性に優れた架橋物を与えることができるアクリルゴムを提供することを目的とする。また、本発明はこのようなアクリルゴムに内部架橋剤を添加してなる架橋性アクリルゴム組成物、およびこの架橋性アクリルゴム組成物を架橋してなるアクリルゴム架橋物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は種々検討の結果、(A)炭素数が少ないアルキル基またはアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位、(B)炭素数が多いアルキル基またはアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位、および(C)エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルから構成される単位とを、所定割合で含有するアクリルゴムにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0010】
本発明の態様は次のとおりである。
項1.
(A)炭素数1〜3のアルキル基または炭素数2〜3のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位10〜98.9重量%、(B)炭素数4〜8のアルキル基または炭素数4〜8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位0〜88.9重量%、(C)エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルから誘導される構成単位1〜30重量%を含有するアクリルゴムである。
項2.
エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルがフマル酸、イタコン酸のジエステルである項1のアクリルゴムである。
項3.
さらに、活性基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導される構成単位を有することを特徴とする項1または2のアクリルゴムである。
項4.
(D)活性基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導される構成単位0.1〜20重量部を含有する項3のアクリルゴムである。
項5.
項1〜4のいずれかに記載のアクリルゴムに架橋剤を添加してなる架橋性アクリルゴム組成物である。
項6.
項5で得られるアクリルゴム組成物を架橋させてなるアクリルゴム架橋物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアクリルゴムによれば、ロール加工性などの加工性に優れ、常態物性、および耐熱性および耐酸性などの諸物性に優れたアクリルゴムを提供することができる。また、本発明のアクリルゴムは、電子写真機器や自動車用途等の当該諸物性が要求される各種ゴム部材やゴム製品に応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
はじめに本発明におけるアクリルゴムについて説明する。
アクリルゴムは、アクリル酸アルキルおよび/またはアクリル酸アルコキシアルキルを主成分とするエラストマー状重合体である。
【0013】
本発明のアクリルゴムは、(A)炭素数1〜3のアルキル基または炭素数2〜3のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位10〜98.9重量%、(B)炭素数4〜8のアルキル基または炭素数4〜8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位0〜88.9重量%、(C)エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルから誘導される構成単位1〜30重量%を含有するアクリルゴムである。
【0014】
炭素数1〜3のアルキル基または炭素数2〜3のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、特に(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチルが好ましい。
【0015】
炭素数4〜8のアルキル基または炭素数4〜8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチル等を挙げることができる。これらは、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、特に(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチルが好ましい。
【0016】
エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルとしては、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、2−ペンテン二酸、アセチレンジカルボン酸等のジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのジエステルが挙げられる。
【0017】
エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルの具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジn−ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジシクロヘキシル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジn−ブチル、シトラコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、シトラコン酸ジプロピル、シトラコン酸ジn−ブチル、メサコン酸ジメチル、メサコン酸ジエチル、メサコン酸ジプロピル、メサコン酸ジn−ブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジn−ブチル、イタコン酸ジシクロヘキシル、2−ペンテン二酸ジメチル、2−ペンテン二酸ジエチル、2−ペンテン二酸ジプロピル、2−ペンテン二酸ジn−ブチル、アセチレンジカルボン酸ジメチル、アセチレンジカルボン酸ジエチル、アセチレンジカルボン酸ジプロピル、アセチレンジカルボン酸ジn−ブチル、アセチレンジカルボン酸ジシクロヘキシルなどが挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、特にフマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジn−ブチル、フマル酸ジイソブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジn−ブチルが好ましい。
【0018】
本発明のアクリルゴム中における構成単位(A)の含有割合は、全構成単位中の10〜98.9重量%であり、好ましくは15〜98重量%であり、より好ましくは20〜97.5重量%である。構成単位(A)の含有割合が低すぎると、アクリルゴムの粘着性、特に架橋性ゴム組成物とした場合の粘着性が高くなりロール加工性が低下する。一方、含有割合が高くなりすぎると耐寒性が低下してしまう。
【0019】
本発明のアクリルゴム中における構成単位(B)の含有割合は、全構成単位中の0〜88.9重量%であり、好ましくは0〜75重量%であり、より好ましくは0〜65重量%である。構成単位(B)の含有割合が高くなりすぎるとロール加工性が低下してしまう。
【0020】
本発明のアクリルゴム中における構成単位(C)の含有割合は、全構成単位中の1〜30重量%であり、好ましくは1.5〜25重量%であり、より好ましくは2〜20重量%である。構成単位(C)の含有割合が低すぎると、構成単位(C)の効力が十分得られず、耐酸性が向上しない。一方、含有割合が高くなりすぎると耐油性および耐寒性が低下してしまう。
【0021】
本発明のアクリルゴムは、上記構成単位(A)〜(C)以外に、架橋基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導される構成単位(D)を含有することが好ましい。該架橋基は、特に限定するものではないが、例えば、2−クロロエチルビニルエーテル、2−クロロエチルアクリレート、ビニルベンジルクロライド、ビニルクロロアセテート、アリルクロロアセテートなどの活性塩素基を有するもの、また、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2−ペンテン酸、桂皮酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどのエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルなどのカルボン酸基を有するもの、また、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を有するものが挙げられる。
【0022】
これらの化合物の中でも、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルが特に好ましい。エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルとしては、炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのモノエステルが挙げられる。
【0023】
エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルの具体例としては、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn−ブチルなどのブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシルなどのブテンジオン酸モノ環状アルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn−ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシルなどのイタコン酸モノエステル;などが挙げられる。この中でも、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノブチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノブチルが好ましい。
【0024】
また、架橋基を有するエチレン性不飽和モノマーは上記の架橋基に限定されるものではなく、架橋基同士が架橋する置換基および/または架橋剤を介して架橋する置換基を有するものであればどのようなエチレン性不飽和モノマーであってもよい。単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルは重合後、架橋剤と反応して架橋構造を形成する。
【0026】
構成単位(D)を含有させる場合における、アクリルゴム中の構成単位(D)の含有割合は、全構成単位中0.1〜20重量%であり、好ましくは0.3〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。構成単位(D)の含有割合が低すぎると、得られたアクリルゴム架橋物の架橋密度が十分でなく、良好な架橋物性が得られなくなる場合がある。一方、含有割合が高すぎると得られるアクリルゴム架橋物の伸びが低下する場合がある。
【0027】
さらに本発明のアクリルゴムは、上記の構成単位(A)〜(D)以外に、これらと共重合可能なその他の単量体構成単位を含有してもよい。その他の構成単位としては、エチレン性不飽和カルボン酸から誘導される構成単位、エチレン性不飽和ニトリルから誘導される構成単位、(メタ)アクリルアミド系モノマーから誘導される構成単位、芳香族ビニル系モノマーから誘導される構成単位、共役ジエン系モノマーから誘導される構成単位、非共役ジエン類から構成される構成単位、その他のオレフィンから誘導される構成単位等が挙げられる。
【0028】
エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等が挙げられる。カルボン酸基は無水カルボン酸基であってもよく、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などの無水カルボン酸から誘導される構成単位であってもよい。
【0029】
エチレン性不飽和ニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリルアミド系モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシエチルアクリルアミド、N−ブトキシエチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−プロピオキシメチルアクリルアミド、N−プロピオキシメチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、エタクリルアミド、クロトンアミド、ケイ皮酸アミド、マレインジアミド、イタコンジアミド、メチルマレインアミド、メチルイタコンアミド、マレインイミド、イタコンイミド等が挙げられる。
【0031】
芳香族ビニル系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、α−フルオロスチレン、p−トリフルオロメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−アミノスチレン、p−ジメチルアミノスチレン、p−アセトキシスチレン、スチレンスルホン酸あるいはその塩、α−ビニルナフタレン、1−ビニルナフタレン−4−スルホン酸あるいはその塩、2−ビニルフルオレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ビニルベンジルクロライド等が挙げられる。
【0032】
共役ジエン系モノマーとしては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,2−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−ネオペンチル−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、クロロプレン、ピぺリレン等が挙げられる。
【0033】
また、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン等の非共役ジエン類;アクリル酸ジシクロペンタジエニル、メタクリル酸ジシクロペンタジエニルメタクリレート、アクリル酸ジシクロペンタジエニルエチル、メタクリル酸ジシクロペンタジエニルエチル等のエステル類等が挙げられる。
【0034】
その他のオレフィン系モノマーとしては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、1,2−ジクロロエチレン、酢酸ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、1,2−ジフルオロエチレン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、1,2−ジブロモエチレン、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0035】
これらの共重合可能なその他の単量体構成単位を含有させる場合には、全構成単位における含有割合は0〜45重量%、好ましくは0〜20重量%である。
【0036】
<アクリルゴムの製造方法>
本発明で用いるアクリルゴムは、それぞれ上記の公知の各種モノマーを重合することにより得ることができる。使用するモノマーはいずれも市販品であってよく、特に制約はない。
【0037】
重合反応の形態としては、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、および溶液重合法のいずれも用いることができるが、重合反応の制御の容易性などの点から、従来公知のアクリルゴムの製造法として一般的に用いられている常圧下での乳化重合法によるのが好ましい。
【0038】
乳化重合による重合の場合には、通常の方法を用いればよく、重合開始剤、乳化剤、連鎖移動剤、重合停止剤等は一般的に使用される従来公知のものが使用できる。
【0039】
本発明で用いられる乳化剤は特に限定されず、乳化重合法おいて一般的に用いられるノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤等を使用することができる。ノニオン乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等があげられ、アニオン性乳化剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、脂肪酸塩等があげられ、これらを1種または2種以上用いてもよい。アニオン性乳化剤の代表例としてはドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸トリエタノールアミンが挙げられる。
【0040】
本発明で用いられる乳化剤の使用量は乳化重合法おいて一般的に用いられる量であればよい。具体的には、仕込みのモノマー量に対して、0.01〜10重量%の範囲であり、好ましくは0.03〜7重量%、更に好ましくは0.05〜5重量%である。モノマー成分として、反応性界面活性剤を用いる場合は、乳化剤の添加は必ずしも必要でない。
【0041】
本発明で用いられる重合開始剤は特に限定されず、乳化重合法おいて一般的に用いられる重合開始剤を使用することができる。その具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩に代表される無機系重合開始剤、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、1−ジ−(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)吉草酸n−ブチル、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、
p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等の有機過酸化物系の重合開始剤、ハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、4−4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン、2−2’−アゾビス(プロパン−2−カルボアミジン)2−2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロパンアミド、2−2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}、2−2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)および2−2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロパンアミド}などのアゾ系開始剤等が挙げられる。これら重合開始剤は1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本発明で用いられる重合開始剤の使用量は乳化重合法おいて一般的に用いられる量であればよい。具体的には、仕込みのモノマー量に対して、0.01〜5重量%の範囲であり、好ましくは0.01〜4重量%、更に好ましくは0.02〜3重量%である。
【0043】
また、重合開始剤としての有機過酸化物および無機過酸化物は、還元剤と組み合わせることにより、レドックス系重合開始剤として使用することができる。組み合わせて用いる還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のメタン化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;アスコルビン酸およびその塩;亜硫酸およびチオ硫酸のアルカリ金属塩などの還元性を有する無機塩などが挙げられる。これらの還元剤は単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物100重量部に対して、好ましくは0.0003〜10.0重量部である。
【0044】
連鎖移動剤は、必要に応じて用いることができる。連鎖移動剤の具体例としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、ターピノレン、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いてもよい。これらの連鎖移動剤の量は特に限定されないが、通常、仕込モノマー量100重量部に対して0〜5重量部にて使用される。
【0045】
重合停止剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムなどが挙げられる。重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、通常、全単量体100重量部に対して、0〜2重量部である。
【0046】
さらに上記の方法によって得られた重合体は、必要に応じてpH調整剤として塩基を用いることでpHを調整することができる。塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、無機アンモニウム化合物、有機アミン化合物等が挙げられる。pHの範囲はpH1〜11、好ましくはpH1.5〜10.5、更に好ましくはpH2〜10の範囲である。
【0047】
これ以外にも必要に応じて、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
【0048】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。重合時間および重合温度は特に限定されない。使用する重合開始剤の種類等から適宜選択できるが、一般的に、重合温度は20〜100℃であり、重合時間は0.5〜100時間である。
【0049】
このようにして製造される、本発明で用いるアクリルゴムの分子量範囲は、JIS K 6300に定めるムーニースコーチ試験での100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)表示で、好ましくは10〜100、より好ましくは15〜90、さらに好ましくは20〜80である。
【0050】
<架橋性アクリルゴム組成物>
本発明の架橋性アクリルゴム組成物に用いる架橋剤としては、多価アミン化合物、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、アジリジン化合物、硫黄化合物、塩基性金属酸化物および有機金属ハロゲン化物などのゴムの架橋に通常用いられる従来公知の架橋剤を用いることができる。これらのなかでも、多価アミン化合物が好ましく用いられる。
【0051】
多価アミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン等の脂肪族多価アミン化合物や、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチル、イソフタル酸ジヒドラジド等の芳香族多価アミン化合物が挙げられる。
【0052】
これらの架橋剤は単独で用いてもよいし、2種類以上の組み合わせで用いてもよい。架橋剤の量は、アクリルゴム100重量部に対してそれぞれ0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0053】
また、本発明の架橋性アクリルゴム組成物は、当該技術分野で通常使用される他の添加剤、例えば滑剤、老化防止剤、光安定化剤、充填剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、顔料、着色剤、架橋促進剤、架橋助剤、架橋遅延剤、帯電防止剤、発泡剤等を任意に配合できる。
【0054】
更に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当該技術分野で通常行われているゴム、エラストマー、樹脂等とのブレンドを行うことも可能である。本発明に用いられるゴムを例示すれば、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム等が挙げられ、また樹脂を例示すれば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、PUR(ポリウレタン)樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)樹脂、EVA(エチレン/酢酸ビニル)樹脂、AS(スチレン/アクリロニトリル)樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂等が挙げられる。
【0055】
上記ゴム、エラストマー及び樹脂の合計配合量は、本発明のアクリルゴム100重量部に対して、50重量部以下、好ましくは10重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。
【0056】
本発明の架橋性アクリルゴム組成物の配合方法としては、従来ポリマー加工の分野において利用されている任意の手段、例えばオープンロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を利用することができる。
【0057】
その配合手順としては、ポリマー加工の分野において行われている通常の手順で行うことができる。例えば、最初にポリマーのみを混練りし、次いで架橋剤、架橋促進剤以外の配合剤を投入したA練りコンパウンドを作成し、その後、架橋剤、架橋促進剤を投入するB練りを行う手順で行うことができる。
【0058】
本発明の組成物は、通常100〜250℃に加熱することで架橋物、すなわちアクリルゴム架橋物とすることができる。架橋時間は温度によって異なるが、0.5〜300分の間で行われるのが普通である。架橋成型は架橋と成型を一体的に行う場合や、先に成型した架橋性アクリルゴム組成物に改めて加熱することで架橋物とする場合のほか、先に加熱して架橋物としたアクリルゴム架橋物を成型のために加工を施す場合のいずれでもよい。架橋成型の具体的な方法としては、金型による圧縮成型、射出成型、スチーム缶、エアーバス、赤外線、あるいはマイクロウェーブによる加熱等任意の方法を用いることができる。
【0059】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上記本発明のアクリルゴムを用いて得られるものであるため、加工時においては、ロール加工性に優れ、かつ、架橋物とした場合における、常態物性および耐熱性、耐酸性に優れるものである。
【0060】
そのため、本発明のアクリルゴム架橋物は、上記特性を活かして、O−リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、メカニカルシール、ウェルヘッドシール、電気・電子機器用シール、空気圧機器用シール、シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板および負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケットとして好適に用いられる。
【0061】
また、本発明におけるアクリルゴム架橋物は、自動車用途に用いられる押し出し成型製品および型架橋製品として、燃料ホース、フィラーネックホース、ベントホース、ベーパーホース、オイルホース等の燃料タンクまわりの燃料油系ホース、ターボエアーホース、エミッションコントロールホース等のエアー系ホース、ラジエターホース、ヒーターホース、ブレーキホース、エアコンホース等の各種ホース類に好適に使用させる。
【実施例】
【0062】
本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例および比較例では、アクリルゴムの製造及び得られたアクリルゴムと架橋剤を混合し、得られた未架橋ゴム組成物およびゴム架橋物の物性を評価した。
【0063】
[実施例1]
(アクリルゴムAの製造)
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200重量部、ドデシル硫酸ナトリウム3重量部、アクリル酸エチル39.7重量部、アクリル酸n−ブチル49重量部、イタコン酸ジn−ブチル10重量部、およびフマル酸モノエチル1.3重量部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続し、重合停止剤を添加して重合を停止した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムAを得た。
【0064】
[実施例2]
(アクリルゴムBの製造)
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、アクリル酸エチル39.7重量部、アクリル酸n−ブチル49重量部、フマル酸ジイソブチル10重量部、およびフマル酸モノエチル1.3重量部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、亜硫酸水素ナトリウム0.18重量部および過硫酸カリウム0.15重量部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続し、重合停止剤を添加して重合を停止した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムBを得た。
【0065】
[実施例3]
(アクリルゴムCの製造)
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200重量部、ドデシル硫酸ナトリウム3重量部、アクリル酸エチル39.2重量部、アクリル酸n−ブチル49.5重量部、フマル酸ジn−ブチル10重量部、およびフマル酸モノエチル1.3重量部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、亜硫酸水素ナトリウム0.18重量部および過硫酸カリウム0.15重量部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続し、重合停止剤を添加して重合を停止した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムCを得た。
【0066】
[実施例4]
(アクリルゴムDの製造)
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200重量部、ドデシル硫酸ナトリウム3重量部、アクリル酸エチル39重量部、アクリル酸n−ブチル50.2重量部、イタコン酸ジn−ブチル7重量部、フマル酸ジエチル2.5重量部、およびフマル酸モノエチル1.3重量部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続し、重合停止剤を添加して重合を停止した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムDを得た。
【0067】
[実施例5]
(アクリルゴムEの製造)
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200重量部、ドデシル硫酸ナトリウム3重量部、アクリル酸エチル40.2重量部、アクリル酸n−ブチル49.5重量部、イタコン酸ジメチル3重量部、フマル酸ジn−ブチル6重量部、およびフマル酸モノエチル1.3重量部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続し、重合停止剤を添加して重合を停止した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムEを得た。
【0068】
[比較例1]
(アクリルゴムFの製造)
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、アクリル酸エチル54重量部、アクリル酸n−ブチル44.7重量部、およびフマル酸モノエチル1.3重量部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続し、重合停止剤を添加して重合を停止した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムFを得た。
【0069】
[比較例2]
(アクリルゴムGの製造)
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200重量部、ドデシル硫酸ナトリウム3重量部、アクリル酸エチル50.2重量部、アクリル酸n−ブチル48.5重量部およびフマル酸モノエチル1.3重量部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、亜硫酸水素ナトリウム0.18重量部および過硫酸カリウム0.15重量部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続し、重合停止剤を添加して重合を停止した。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムGを得た。
【0070】
得られたアクリルゴムのゴム物性を評価するため、未架橋シートおよび二次架橋物を作製し、各種の物性評価を行った。
【0071】
(架橋性ゴム組成物の製造)
上記反応で得られたアクリルゴムをそれぞれ100重量部、カーボンブラック(ASTM D1765による分類;N550)60重量部、ステアリン酸(カーボンブラックの分散剤、軟化剤)2重量部および4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(老化防止剤)2重量部を120℃にてバンバリーで混練し、その後ヘキサメチレンジアミンカーバメイト(脂肪族ジアミン架橋剤)0.6重量部、ジ−o−トリルグアニジン(架橋促進剤)2重量部を加えて、室温にて混練用ロールで混練して、それぞれ架橋性ゴム組成物を調製した。
【0072】
(未架橋ゴムシートの作製)
上記で得られた各ゴム組成物をニーダーおよびオープンロールで混練し、厚さ2〜2.5mmの未架橋性ゴム組成物である未架橋ゴムシートを作製した。
【0073】
(ムーニースコーチ試験)
得られた未架橋ゴムシートを用い、JIS K 6300に定めるムーニースコーチ試験を行った。
【0074】
(二次架橋物の作製)
上記で得られた未架橋ゴムシートを180℃で10分プレス処理し、2mm厚の一次架橋物を得た。さらにこれをエア・オーブンで180℃で3時間加熱し、二次架橋物を得た。
【0075】
(常態物性の試験)
得られた二次架橋物を用い、引張試験および硬さ試験の評価を行った。引張試験はJIS K 6251、硬さ試験はJIS K6253に記載の方法に準じて行った。
【0076】
(耐酸性試験)
上記二次架橋物を2cm角に切り耐酸試験用のサンプルを作製した。また、500mlの水に硫酸を1ml、60%硝酸水溶液を1.5ml、酢酸を300μl添加し、pH1の酸性水溶液を調整した。調整した酸性水溶液50mlに上記サンプルを入れ、オートクレーブ中125℃で216時間保管した後、試験前後の体積変化率および常態物性の評価と同様にして硬さの変化の測定を行った。
【0077】
(耐熱老化試験)
上記二次架橋物を用い185℃の条件下で500時間加熱することによって、耐熱老化させた。耐熱老化後に、常態物性の評価と同様にして引張試験および硬さ試験の評価を行った。
【0078】
各試験方法より得られた実施例および比較例の試験結果を表1に示す。
各表中、tはJIS K6300のムーニースコーチ試験に定めるムーニースコーチ時間、EBはJIS K6251の引張試験に定める伸び、HSはJIS K6253の硬さ試験に定める硬さをそれぞれ意味する。
【0079】
得られた架橋性ゴム組成物を用いた評価の結果を表1に示す。
【表1】
【0080】
表1で示すように、エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルの構成単位を含む実施例1〜5のゴム組成物は、比較例と比較して耐酸性試験の体積変化率(△V)および硬度変化(△HS)が小さくなった。また耐熱老化試験においても、耐熱老化後の伸び変化率(△EB)および硬度変化(△HS)が小さい結果となった。耐熱老化試験においては、特にイタコン酸ジエステルを用いた場合、より向上する結果となった。これらの結果から、本発明のアクリルゴムおよびそのゴム架橋物は、耐酸性、また耐熱老化後の伸び変化率および硬度変化率が向上していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のアクリルゴムは、優れた耐熱性、耐酸性、耐候性、耐オゾン性、耐磨耗性を活かしたゴム製品や樹脂製品の材料として或いは接着剤原料や塗料原料として幅広く用いることが可能である。特に、アクリルゴム架橋物では、燃料系ホースやエアー系ホース、チューブ材料などの自動車用途として極めて有効である。