(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態によるリハビリテーション装置について図面を参照して説明する。
【0012】
<用語の定義>
以下の説明では、運動機能が麻痺した身体の一部のことを「麻痺部」とする。
また、静止画像と動画像を総称して「画像」とする。
また、麻痺部と同一の部位のことを「対象部位」とする。
また、静止した状態の対象部位を含む画像を観察し、麻痺部を動かすことを想起することを「運動想起」とする。
また、静止した状態の対象部位が動く動画像を観察し、その体験や記憶を有する患者が、再度その静止した状態の対象部位を含む画像を観察し、麻痺部を動かすことを想起することを「運動観察想起」とする。
また、脳活動の下に運動指令を伝達する神経細胞の経路のことを「運動経路」とする。
また、麻痺部を動かすことを想起することにより、脳から出された運動指令が運動経路を伝達することを「運動指令が伝達する」とする。
また、外力を用いた麻痺部を動かす動作の補助を「アシスト」とする。
また、噛みしめた時に歯と歯の間にかかる圧力のことを「咀嚼圧」とする。
また、脳波の時系列データをフーリエ変換あるいはウェーブレット変換することで、脳波に含まれる周波数帯域を解析したデータを「スペクトル」とし、スペクトルにおける所定の周波数帯域(例えば、8〜13[Hz(ヘルツ)])における信号成分の大きさを「スペクトル強度」とする。
【0013】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態によるリハビリテーション装置の構成のイメージを示すイメージ図である。
本実施形態によるリハビリテーション装置の駆動部3は、麻痺部に装着して用いられる。
図1の例では、麻痺部は左側の手指である。
被訓練者1(患者)の頭部に、脳波信号(以下、脳波とも称する。)を取得する脳波電極22が取付けられる。なお、
図1の例では、計測部2に、被訓練者1の口腔に取付けられている咀嚼センサ21が接続されているが、本実施形態では用いない。咀嚼センサ21を用いた訓練については、第2の実施形態で説明する。
【0014】
被訓練者1が視認できる場所に、提示部4が設置される。
提示部4は、静止した状態の対象部位、すなわち静止した状態の健常な左手、を含む画像を表示する。静止した状態の対象部位を含む画像とは、少なくとも対象部位が含まれる画像であって、その対象部位が静止した状態であればよく、静止画像であっても、動画像を一時停止したものであっても、対象部位が静止した状態が継続して表示される動画像であってもよい。
このとき、提示部4は、上述した対象部位の静止画像とは異なる画像として、被訓練者1に対して運動想起を促すことが可能な画像に表示してもよい。ここでいう運動想起を促すことが可能な画像とは、何らかの物体が静止した状態又は動く状態を示す画像であって、その表示された物体に対して被訓練者1が触れようとする運動想起を促すことが可能な画像である。より具体的には、物体が例えばボールである場合、被訓練者1に対し、このボールを掴もうとする運動想起を促すことが可能である。また、このボールが一方から他方に向かって動く状態を示す動画像である場合、被訓練者1に対し、このボールの移動を停止させる(あるいはボールを受け取る)ような運動想起を促すことが可能である。また例えば、物体が子猫であって被訓練者1が猫に興味がある場合、被訓練者1に対して、子猫に触れようとする(撫でようとする)運動想起を促すことが可能である。
そして、提示部4に表示された画像を被訓練者1に視認させ、麻痺部を動かすことを想起するように被訓練者1を促す。
制御部5は、上記画像を視認させる前後の脳波を継続的に取得し、時間の経過に伴う脳波のスペクトル強度に基づいて、駆動部3のアシスト動作を制御する。制御部5は、駆動部3に、アシスト動作をさせるか否かを被訓練者1の脳波を構成する信号に含まれる所定の周波数帯域のスペクトル強度の変化に基づいて判定する。
制御部5は、判定結果が、所定の周波数帯域のスペクトル強度が予め定めた閾値以下であると判定した場合、駆動部3に、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をした旨の通知をすることで、アシスト動作をさせる。
駆動部3は、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をした旨の通知を制御部5から受けた場合に、麻痺部に対してアシスト動作をする。例えば、駆動部3は、外力を用いて、麻痺部である左手を握ったり開いたりするような手の動作を行わせる。
このとき、制御部5は、提示部4に動画像を表示させる。この動画像は、提示部4がすでに表示している対象部位が、静止した状態から動く状態に切り替わる動画像であって、駆動部3のアシスト動作により動かされる被訓練者1の左手の動きと同様の動きを示す動画像である。
また、このとき、制御部5は、提示部4に表示させる動画像が示す左手の動きと、駆動部3が行うアシスト動作の動きとを、同期させることが好ましい。これにより、視覚による刺激と動作による刺激とを連動し、効果的なリハビリテーションが可能となる。
【0015】
なお、上述した提示部4に表示させる画像は、動画像を一時停止して対象部位が静止した状態で表示させた後に、この動画像の一時停止を解除して対象部位が静止した状態から動く状態に切り替わる動画像であってもよいし、対象部位の静止画像を表示した後に対象部位が動く動画像に切替えて表示するものであってもよい。
【0016】
操作インターフェース部8は、リハビリテーション装置を用いた訓練プログラムの実施状況に関する情報を出力する。また、操作インターフェース部8は、訓練プログラムの実施にあたり必要となる情報の入力を受け付ける。
操作インターフェース部8に出力される訓練プログラムの実施状況に関する情報は、被訓練者1によって視認されてもよいし、被訓練者1に訓練を実施させる者によって視認されてもよい。
また、訓練プログラムの実施にあたり必要となる情報の入力は、被訓練者1によって行われてもよいし、訓練を実施させる者によって行われてもよい。
なお、この操作インターフェース部8の入力を受け付ける機能が、提示部4に設けられている場合には、操作インターフェース部8を設けなくてもよい。
【0017】
このように、本実施形態においては、対象部位が静止している状態を示す画像を提示部4に表示し、この画像を被訓練者1に視認させることにより、被訓練者1の運動想起を促し易くすることができる。
一般に、脳は表示された画像に現実味(リアリティ)があるほど、自身が実際に体を動かしているかのような錯覚を起こしやすい。提示部4に被訓練者1の麻痺部である左手が静止した状態の画像を表示させ、それを被訓練者1が視認し、自身の手であるような錯覚を起こせば、静止した状態の対象部位の画像を視認しないで左手を動かそうとする場合よりも、運動指令が伝達しやすくなる。
【0018】
また、制御部5は、麻痺部の動作に対し駆動部3によってアシスト動作をさせるとともに、提示部4に表示していた対象部位の画像を、静止した状態から動く状態に切り替えて表示することで、被訓練者1の脳に運動感覚のフィードバックのみならず、視覚のフィードバックを与えることができる。
運動指令の伝達に基づいて、麻痺部の運動と運動の状態の視認とを被訓練者1に対して繰り返し行なわせることで、運動経路の再構築が進み、その運動経路が強固に確立されることが期待できる。
【0019】
また、提示部4は、静止した状態の対象部位と共に対象部位とは異なるボール等の物体が示されている画像を表示することが好ましい。静止した状態の対象部位のみが示されている画像を視認する場合より、被訓練者1の左手を動かそうとする意思が強まり、運動指令が伝達しやすくなる場合がある。
【0020】
このように、本実施形態にかかるリハビリテーション装置を用いることで、被訓練者1の麻痺部に対する運動指令が伝達しやすくなり、運動経路の再構築が進み、その運動経路が強固に確立されることが期待できる。特に、手指は、脚部や腕部に比べて繊細な動きが求められる。そのため麻痺部が手指である場合、効果的なリハビリテーションを行なうことは、麻痺部が脚部や腕部である場合に比べて困難である。本実施形態にかかるリハビリテーション装置を用いることで、麻痺部が手指であったとしても、運動機能を回復させることが期待できる。
【0021】
また、操作インターフェース部8が訓練の状況を表示することより、被訓練者1が自分で訓練の状況を確認しながら訓練を行うことが可能となり、訓練を加速させることが期待できる。
【0022】
次に、
図2および
図3を用いて、本実施形態におけるリハビリテーション装置の構成を説明する。
図2は、本実施形態におけるリハビリテーション装置の機能を表すブロック図である。
図3は、脳波を構成する信号の所定の周波数帯域におけるスペクトル強度の時間の経過に伴う変化の一例を示す図である。
【0023】
図2に示される本実施形態のリハビリテーション装置は、計測部2、駆動部3、提示部4、制御部5、記憶部6、および操作インターフェース部8が、データを交換するための共通の経路であるバス10を介して接続される。例えば、制御部5は、データ通知先(例えば、計測部2)のアドレスを付した送信データをバス10に送信することにより、図示しない送信回路により、データ通知先である計測部2に送信データが送信され、制御部5と計測部2の間で情報が伝達される。
【0024】
計測部2は、脳波計20と咀嚼センサ21を含んで構成される。脳波計20は、頭部に接触される脳波電極が外部に接続されており、脳波に対応した脳波信号を、この脳波電極を介して取得することで、脳波を計測する。この脳波の計測方法は特に限定されるものではなく、例えば、非接触型の脳波センサや磁気センサを用いて脳波を計測するようにしてもよい。なお、
図2には、咀嚼圧を計測する咀嚼センサ21が示されているが、咀嚼センサ21は後述する他の実施形態で用いるため、本実施形態では説明しない。
【0025】
また、脳波計20は、脳波信号に基づいて所定の周波数帯域のスペクトル強度を得て、
その得られたスペクトル強度を制御部5に通知する。
【0026】
脳波電極は、リハビリテーションを簡易かつ積極的に行う観点から、簡易に装着でき、かつ安全であるものが望ましい。脳波電極は、例えば、頭部に装着するキャップであって、キャップの一部に電極を設置することができるものが好適である。被訓練者1にキャップを装着させるとそのキャップに設置された電極が頭部の一部と接触する。こうすることで、脳波電極は、は、キャップを装着している被訓練者1の脳波を、その電極から検出される脳波信号として取得することができる。
【0027】
駆動部3は、外力を用いてアシスト動作をする。このアシスト動作が行われることにより、麻痺部を動かす動作がアシストされる。駆動部3は、制御部5からの制御に基づいて駆動する。
駆動部3は、例えば、骨格を表す棒状の部分と、関節を表す屈伸可能な部分と、関節をつなぐ筋肉を表す伸縮可能な部分とが、麻痺部の形状および機能に合わせた機構に組み合わされて構成される。駆動部3は、アシスト動作をすることができればよく、特に特定の製品等に限定せず、任意の装置を用いることができる。
【0028】
提示部4は、人の感覚に対し提示を行う。提示をする対象となる感覚は、少なくとも視覚、聴覚、嗅覚のうちいずれか1つである。ここでいう提示とは、提示対象の感覚に対して働きかけを行なうことである。
本実施形態の提示部4は、例えば表示装置であり、人の視覚に対し画像の表示を行う。この提示部4は、被訓練者1が視認できる位置に設置され、制御部5からの制御に基づき、画像を表示する。
なお、提示部4は、視覚に対する提示の他に、聴覚、嗅覚等に働きかけを行う装置、例えば、音響出力装置(スピーカ)、香炉(アロマディフューザ)等のいずれか、または両方を含んでもよい。
【0029】
制御部5は、本実施形態にかかるリハビリテーション装置の各ブロックの制御を行う。
制御部5は、脳波計20から測定結果を取得し、その測定結果に含まれたスペクトル強度に基づいて、脳波に生じる変化が、運動指令を伝達させようとした場合に生じる所定の変化であるか否かを判定する。
【0030】
一般に、脳波は、例えば、0.5〜30[Hz]までの周波数の信号波が混在した信号として検出される。また、脳の運動野においては、覚醒時であって安静にしている場合には脳波を構成する周波数のうち、8〜13[Hz]の周波数帯域における信号成分が、他の周波数帯域と比較して多く検出される。そして、運動指令の伝達がなされた場合、この8〜13[Hz]の周波数帯域のスペクトル強度が一時的に低下(減少)する現象が知られている。
【0031】
この現象を利用し、制御部5は、脳波にこの特有の変化が発生した場合、すなわち、8〜13[Hz]の周波数帯域のスペクトル強度が基準値以下となった場合に、脳波に生じる変化が、運動指令を伝達させようとした場合に生じる所定の変化であると判定する。この基準値は、予め定められる値である。
【0032】
図3は、時間の経過に伴う脳波の変化を示すグラフである。
図3のグラフは、横軸に時間軸を示し、縦軸に周波数を示し、その時刻におけるその周波数のスペクトル強度を明度(明るさ加減)で表現している。
図3では、時刻4.5〜6.0[sec](秒)付近において、8〜13[Hz]の周波数帯域のスペクトル強度が低下した様子が示されている。スペクトル強度が基準値以下となった時刻は、運動指令が伝達された時刻に対応する。
【0033】
次に、
図2に戻って説明する。
制御部5は、脳波に生じる変化が、運動指令を伝達させようとした場合に生じる所定の変化であると判断した場合に、駆動部3を駆動させることで、被訓練者1の麻痺部を動かす動作に対するアシスト動作をさせる。制御部5は、駆動部3にアシスト動作をさせることにより、被訓練者1に運動指令の伝達に対するフィードバックとしての運動感覚を与える。
また、制御部5は、提示部4に表示させる動画像に同期させて駆動部3にアシスト動作をさせてもよい。この場合の提示部4に表示させる動画像とは、駆動部3のアシスト動作により動かされる麻痺部の動きと同様の動きを示す動画像である。なお、動画像と駆動部3のアシスト動作とを同期させる処理については後で説明する。
【0034】
制御部5は、提示部4に、静止した状態の対象部位を含む画像を表示させる。
この静止した状態の対象部位を含む画像は、被訓練者1に自身の麻痺部の動くイメージを想起し易くさせるために用いられる画像である。静止した状態の対象部位を含む画像は、例えば、拘縮や弛緩のみられない健常者の手指の静止画像、或いは被訓練者1自身の手指の静止画像である。
【0035】
制御部5は、被訓練者1の個々の麻痺の程度や性別等の属性に基づいて、静止した状態の対象部位を含む画像を選択する。制御部5は、好ましくは男女、および左側右側等の属性に応じてそれぞれ静止した状態の対象部位を含む画像を選択する。
また、この静止した状態の対象部位を含む画像は、撮像画像であってもよいし、CG(Computer Graphics)等を用いて作成した画像であってもよい。
【0036】
さらに、制御部5は、所定の条件下において、提示部4に動画像を表示させる。
この動画像は、静止した状態の対象部位を含む画像に示される対象部位が動作する状態を示す動画像であって、麻痺部を動かす動作例として用いられる動画像である。
この動画像は、静止した状態の対象部位を含む画像が動画像であった場合に、その動画像再生開始からの経過時間が特定の時間における画像、例えば10秒の動画像である場合には5秒目に表示された画像であってもよいし、静止した状態の対象部位を含む画像とは異なる動画像であってもよい。
【0037】
制御部5は、提示部4に表示させる画像に、前記対象部位とは異なる物体を、前記対象部位とともに存在(重畳)させてもよい。
この物体とは、被訓練者1から自身の麻痺部の運動想起をより引き出すような物体であって、例えば、ボールや子猫等であって、掴むあるいは撫でる等、人間の手の動作を連想させる物体である。
【0038】
制御部5は、提示部4に表示させる画像に含める物体を、被訓練者1の個々の趣味や趣向に基づいて、或いは被訓練者1の訓練状況に基づいて、選択してもよい。例えば、制御部5は、物体として「ボール」を選択して提示部4によって表示したが、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定されなかった場合、「ボール」以外の物体、例えば「子猫」を提示部4に表示させる画像に含める物体として選択する。
【0039】
制御部5は、被訓練者1に訓練プログラムを実行させるために必要な情報を、記憶部6から読み込んで取得する。また、制御部5は、被訓練者1に訓練プログラムを実行させて得られた情報を記憶部6に書き込んで記憶させる。
【0040】
制御部5は、被訓練者1の識別情報を、記憶部6から読み込んで取得する。被訓練者1の識別情報とは、例えば、被訓練者1を識別する情報である。この識別情報を用いて、被訓練者データベースを参照することで、個々の麻痺の程度や性別等の情報、あるいは個々の趣味や趣向の情報を含む属性情報を得ることができる。この被訓練者データベースは、リハビリテーション装置内にあってもよいし、外部にあってもよい。
制御部5は、記憶部6に、被訓練者1の訓練状況情報を書き込んで記憶させる。
訓練状況情報とは、現在実施している訓練プログラムの種別、脳波判定しきい値、画像に含める物体の有無、判定結果等の情報、あるいは過去に実施した訓練プログラムの履歴等の情報である。
なお、脳波判定しきい値については、後で説明する。
【0041】
また、制御部5は、記憶部6に、静止した状態の対象部位の複数の画像、対象部位が動作する状態を示す動画像、およびこれらの画像に含める物体の画像等のデータを予め書き込んで記憶部6に記憶させる。そして、制御部5は、被訓練者1の識別情報や訓練状況情報等に基づいて、提示部4に表示させる画像を選択する。
【0042】
なお、制御部5は、操作インターフェース部8に、被訓練者1の訓練の状況として、脳波の波形やスペクトル強度を、例えば時系列のグラフとして表示させてもよい。また、制御部5は、操作インターフェース部8に、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定した場合にその旨を表示させてもよい。
【0043】
また、制御部5は、記憶部6に記憶させる被訓練者1の識別情報を、記憶部6に記憶させる代わりに或いは記憶部6に記憶させると共に、操作インターフェース部8から被訓練者1等に入力させることによって取得してもよい。
また、制御部5は、記憶部6に記憶させる被訓練者1の訓練状況を、記憶部6に記憶させる代わりに或いは記憶部6に記憶させると共に、操作インターフェース部8に表示させてもよい。
【0044】
記憶部6は、制御部5の制御に基づいて、訓練プログラムを実行させるために必要な情報を、内部の記憶領域に記憶させる。
記憶部6は、訓練情報領域60および表示情報領域64の記憶領域を含んで構成される。
訓練情報領域60は、被訓練者1の識別情報、および被訓練者1の訓練状況情報等を記憶する記憶領域である。
表示情報領域64は、複数の静止した状態の対象部位の画像、対象部位が動作する状態を示す動画像、およびこれらの画像に含める物体の画像等、提示部4が提示する画像のデータを記憶する記憶領域である。
【0045】
操作インターフェース部8は、入力部80および出力部81を備える。入力部80は、例えば、入力装置であり、外部操作入力を受付け、制御部5にその外部操作入力が示す情報を通知する。出力部81は、例えば表示装置であり、制御部5の制御に基づき、外部に対し、訓練の状況等を示す画面を表示する。また、操作インターフェース部8として、ノート型のPC(Personal Computer)を用いる場合、PCのキーボードが入力部80に相当し、PCのディスプレイが出力部81に相当する。この場合、PC内の計算処理部(中央処理装置)に制御部5の処理をさせてもよいが、このような処理は、本発明の必須の構成要素ではないため、詳細な説明を省略する。
【0046】
また、操作インターフェース部8として、タッチパネルを用いることが好ましい。これにより、入力装置と表示装置の機能の双方を単一のデバイスで実現できるため、スペースの省力化、低コスト化が可能となる。
また、操作インターフェース部8には、タブレット型PC、スマートフォン、ウェアラブル端末といったデバイスを用いることが好ましい。これにより、操作インターフェース部8と、制御部5と、記憶部6の機能を単一のデバイスで実現できるため、スペースの省略可、低コスト化の観点で、さらに好ましい。なお、これらのデバイスを用いる場合、提示部4の機能も含ませることができる。
【0047】
図4は、リハビリテーションの内容である訓練プログラムを被訓練者1に実施させる場合のリハビリテーション装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0048】
訓練プログラムは、例えば、(1)運動想起プログラム、(2)運動観察想起プログラム、および(3)咀嚼プログラム、の3種類のプログラムで構成される。リハビリテーション装置は、被訓練者1の麻痺の程度や過去の訓練の実績に応じて、被訓練者1に実施させる訓練プログラムを選択する。なお、(3)咀嚼プログラムについては、後述する第2の実施形態で説明する。
【0049】
まず、上記複数の訓練プログラムのいずれかを実施させる場合の前提事項を述べる。
提示部4は、被訓練者1の麻痺部である左手と目の間に設置される。すなわち、被訓練者1から見ると、自身の左側の前腕は、提示部4の陰に隠されて、視認できなくなる。そして、被訓練者1は、自身の左側の前腕があるべき位置に、提示部4が提示する左手の画像を見ることになる。提示部4が提示する左手の画像は、左側の前腕から先の部分であり、提示部4が提示する左手の画像が、あたかも被訓練者自身の左手であるかのように表示される位置に、提示部4が配置されているものとする。
【0050】
なお、本実施態様において麻痺部が左手である場合を一例として説明しているが、麻痺部が右手である場合も適宜調整の上、実施可能である。
また、提示部4として、頭部に装着するディスプレイ装置であるヘッドマウントディスプレイが用いられる場合、提示部4は、被訓練者1の頭部に被訓練者1の目を覆うようにして装着され、被訓練者1に対し、対象部位の画像を表示する。
【0051】
次に、上述したリハビリテーション装置の動作について説明する。
リハビリテーション装置の動作を開始するにあたり、被訓練者1の頭部には、脳波を測定するための脳波電極が装着され、さらに、被訓練者1の麻痺部には、駆動部3が装着される。
制御部5は、訓練情報領域60内に記憶された、或いは操作インターフェース部8を介して外部から入力された、被訓練者1の識別番号取得する(ステップS1)。
【0052】
制御部5は、この被訓練者1の識別番号に関連づけて訓練情報領域60に記憶された被訓練者1の識別情報、および被訓練者1の訓練状況情報を読み出して取得する。
制御部5は、この識別情報および訓練状況情報に基づいて、被訓練者1に実施させる訓練プログラムを選択して設定する(ステップS2)。
【0053】
制御部5は、被訓練者1の訓練状況情報が、被訓練者1に過去の訓練履歴がなく初めて訓練プログラムを実施することを表す情報である場合、被訓練者1に実施させる訓練プログラムを、例えば、(1)運動想起プログラムに設定することが好ましい。これは、(1)運動想起プログラムが、(2)運動観察想起プログラムや(3)咀嚼プログラムと比較して麻痺の程度が軽度である被訓練者1に対して設定されているためである。
制御部5は、被訓練者1の訓練状況情報に過去の訓練プログラムを実施した履歴がある場合、原則として前回実施の訓練プログラムと同じ訓練プログラムに設定する。また、制御部5は、被訓練者1の訓練状況情報がある場合であって、前回訓練プログラム実施終了時以降に、実施訓練プログラムの指定がされた場合、その指定された訓練プログラムに設定する。
【0054】
制御部5は、訓練情報領域60に記録された被訓練者1の訓練状況情報に基づいて、脳波判定しきい値を設定する(ステップS3)。
脳波判定しきい値は、被訓練者1から運動指令が伝達されたか否かを判定するための、しきい値である。すなわち、制御部5は、訓練プログラム実施中の被訓練者1のスペクトル強度と脳波判定しきい値を比較し、スペクトル強度が脳波判定しきい値以下となった場合に、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定する。
【0055】
ここで、脳波判定しきい値について説明する。
脳波判定しきい値は、以下の(1)式で表されるスペクトル強度の割合Rに基づいて設定される。
【0057】
上記(1)式において、Aは被訓練者1の運動を想起した時における所定の周波数帯域のスペクトル強度を表し、Sは被訓練者1の安静時の所定の周波数帯域のスペクトル強度を表す。
すなわち、スペクトル強度の割合Rは、被訓練者1の所定の周波数帯域についての、安静時のスペクトル強度Sに対する運動想起時のスペクトル強度Aである。
一般に、運動想起に伴って運動指令が伝達された時に、そのスペクトル強度は低下するため、スペクトル強度の割合Rは、運動想起に伴って運動指令が伝達された時のスペクトル強度の低下の割合を示している。以後、脳波判定しきい値について説明する場合においては、脳波判定しきい値を「脳波判定しきい値Th」とも称する。
【0058】
脳波判定しきい値Thは、このスペクトル強度の割合Rに基づいて設定され、例えば、スペクトル強度の割合Rを0.7とした場合、被訓練者1の安静時の所定の周波数帯域のスペクトル強度Sが100である場合に対し、脳波判定しきい値Th(=R×S)は70となる。この場合、運動を想起した時のスペクトル強度が脳波判定しきい値Th(=70)以下になった場合に運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定する。また、運動を想起した時のスペクトル強度が脳波判定しきい値Th(=70)を超えた値である場合に運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしていないと判定する。
【0059】
ここで、一般に、運動想起に伴って運動指令が伝達された時に、そのスペクトル強度は低下することが知られているが、この低下するスペクトル強度の割合Rは、健常者、麻痺を持つ患者にかかわらず、個人差がある。このため、運動命令があった場合に、安静時に対してどの程度、所定の周波数帯域のスペクトル強度が低下するかは、被訓練者1の安静時の所定の周波数帯域のスペクトル強度を基準とすることが望ましい。
【0060】
制御部5は、予め被訓練者1の安静時のスペクトル強度Sを計測しておき、このスペクトル強度Sを基準として、スペクトル強度の割合Rに基づいて、脳波判定しきい値Thを設定する。
制御部5は、被訓練者1の訓練状況情報がない場合、すなわち被訓練者1に過去の訓練履歴がなく初めて訓練を行わせる場合、被訓練者1に実施させる訓練プログラムの脳波判定しきい値Thを、予め定めた割合、例えば、スペクトル強度の割合R(=0.7)に対応させ、脳波判定しきい値Th(=0.7×S)に設定する。
【0061】
なお、脳波判定しきい値を設定する場合、以下の(2)式で表されるスペクトル強度の減衰率R´に基づいて設定しても良い。
【0063】
上記(2)式において、A、Sはそれぞれスペクトル強度の割合Rの(1)式と同様であり、すなわち、スペクトル強度の減衰率R´は安静時のスペクトル強度Sに対する運動想起時のスペクトル強度Aの減衰率である。したがってR´=1−Rの関係が成り立つ。
【0064】
スペクトル強度の減衰率R´に基づいて脳波判定しきい値Th´を設定する場合、減衰率R´を0.3とすると、被訓練者1の安静時の所定の周波数帯域のスペクトル強度Sが100である場合に対し、脳波判定しきい値Th´は30(=R´×S)となる。この場合、運動を想起した時のスペクトル強度の減衰が脳波判定しきい値Th´(=30)以上になった場合に運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定する。また、運動を想起した時のスペクトル強度の減衰が脳波判定しきい値Th´(=30)未満である場合に運動想起に伴い運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしていないと判定する。
【0065】
制御部5は、被訓練者1の訓練状況情報がある場合、原則として前回実施の訓練プログラムと同じ脳波判定しきい値Thに設定する。また、制御部5は、被訓練者1の訓練状況情報がある場合であって、前回訓練プログラム実施終了時以降に、脳波判定しきい値の指定がされた場合、その指定された訓練プログラムに設定する。
【0066】
また、制御部5は、目標を設定する(ステップS3)。
制御部5が設定する目標とは、例えば、設定した訓練プログラムにおいて、連続して5回以上、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたものと制御部5に判定されること等である。
【0067】
制御部5は、設定した訓練プログラムを被訓練者1に実施させる(ステップS4〜S6)。各訓練プログラムが実施する内容については、後で説明する。
【0068】
制御部5は、訓練プログラムが完了した場合、訓練プログラムの実施結果を訓練情報領域60の訓練状況情報に書き込んで記憶させる(ステップS7)。
制御部5は、訓練プログラムを実施した結果として、訓練プログラムの種別、脳波判定しきい値Th、画像に含める物体の有無、判定結果、目標の達成等の情報等を訓練情報領域60に記憶させる。
【0069】
制御部5は、訓練プログラム開始時に設定した目標が達成された場合、次回訓練プログラム実施時に設定すべき脳波判定しきい値Thを指定する。
次回訓練プログラム実施時に設定すべき脳波判定しきい値Thは、今回訓練プログラム開始時に設定した値よりも割合Rが小さい値である。すなわち、脳波判定しきい値Thは、安静時のスペクトル強度Sに対し、より低下した値とする。
例えば、制御部5は、今回の訓練プログラム開始時に脳波判定しきい値Thを0.7×Sに設定し、訓練目標を達成した場合、次回訓練プログラム実施時に脳波判定しきい値Thを0.6×Sに指定する。
【0070】
制御部5は、訓練プログラム開始時に設定した目標が達成された場合であって、次回の訓練プログラム実施時に設定すべき脳波判定しきい値Thがない場合、次回実行すべき訓練プログラムを指定する。この場合、制御部5は、例えば、複数の訓練プログラムのうち麻痺の程度がより軽い場合を対象にした訓練プログラムを選択する。
制御部5は、次回実行すべき訓練プログラムがない、例えば、複数の訓練プログラムのうち麻痺の程度が最も軽い場合を対象にした訓練プログラムについて設定目標が達成された場合、次回実行すべきプログラムとして同一の訓練プログラムのプログラムを指定してもよいし、画像を変更(後述のステップS12)したうえで再度、同一の訓練のプログラムを指定してもよい。
【0071】
麻痺の程度が最も軽い場合を対象にした訓練プログラムの設定目標を達成した場合であっても、本実施形態のリハビリテーション装置は、駆動部3により麻痺部をアシストしているため健常者と同等に日常生活動作が回復したとは限らない。このため、被訓練者1に過度な負荷が生じない範囲で訓練プログラムを継続させることが望ましい。
【0072】
制御部5は、さらに継続して訓練プログラムを実施させるか、または訓練プログラムを終了させるかを判断する(ステップS8)。
制御部5は、訓練プログラムの終了を示す指示が入力されず、かつ、訓練プログラム開始時から所定の実施上限時間が経過していない場合、ステップS2に戻り、継続して訓練プログラム実施をさせる(ステップS8 NO)。
制御部5は、訓練プログラムの終了を示す指示が入力された場合、または訓練プログラム開始時から所定の実施上限時間が経過した場合、訓練プログラムを終了させる(ステップS8 YES)。そして、本フローチャートは終了する。
ここで、実施上限時間は、制御部5により、被訓練者1の訓練の状況や集中力に応じ、または、操作インターフェース部8を介して入力された情報に基づいて設定される。制御部5は、例えば、実施上限時間を5〜30分程度を目安に、被訓練者1の属性情報(例えば、年齢等)および訓練状況情報(例えば、過去の訓練において行った訓練時間等)などに基づいて設定する。
【0073】
図5は、(1)運動想起プログラムを実施する場合の訓練プログラムの流れを示すフローチャートである。
図8は、(2)運動観察想起プログラムを実施する場合の訓練プログラムの流れを示すフローチャートである。
図9は、(3)咀嚼プログラムを実施する場合の訓練プログラムの流れを示すフローチャートである。
図5〜
図9を用いて、本実施形態にかかるリハビリテーション装置を用いて各訓練プログラムを実施する場合にリハビリテーション装置が行う処理の流れを説明する。
【0074】
<(1)運動想起プログラム>
(1)運動想起プログラムの流れについて、
図5を用いて説明する。
(1)運動想起プログラムは、静止した状態の対象部位を含む画像が被訓練者1によって視認され、観察されることにより運動指令が伝達するように試みる訓練である。
【0075】
まず、制御部5は、識別情報に基づいて被訓練者データベースを参照し、被訓練者1の麻痺部の部位や個々の麻痺の程度や性別等の情報、および個々の趣味や趣向等の情報を含む属性情報を取得する。
また、制御部5は、被訓練者1の識別情報に基づいて訓練情報領域60を参照し、被訓練者1の過去に実施した訓練プログラムの履歴等の訓練状況情報を取得する(ステップS11)。
【0076】
次に、制御部5は、取得した被訓練者1の属性情報、および訓練状況情報に基づいて、静止した状態の対象部位を含む画像(
図5において、「画像1」と記載)を選択する(ステップS12)。
この時、制御部5は、選択した静止した状態の対象部位を含む画像とともに、この静止した状態の対象部位が動作する様子を示す動画像(
図5において、「画像2」と記載)を選択することが望ましい。
【0077】
また、制御部5は、例えば、属性情報、および訓練状況情報に基づいて、画像に含める物体を選択してもよい。
制御部5は、例えば、属性情報に基づいて、被訓練者1の趣味や趣向に合う物体を選択し、画像に含めて表示させてもよい。また、制御部5は、訓練状況情報に基づいて、過去の訓練において画像に含めて表示させた物体であって、その過去の訓練において運動指令が伝達さなかったものを除外して、画像に含める物体を選択してもよい。
被訓練者1は、例えば、ボール遊びに興味がなく、対象部位である手が静止した状態の画像に「ボール」が含まれる画像から、ボールを掴もうと想起できなかった場合であっても、動物が好きであれば、「子猫」が含まれる画像から、手で子猫を撫でようと想起し運動指令を伝達させる可能性がある。
なお、静止した状態の対象部位を含む画像は、静止画像でも動画像でもよく、静止した状態の対象部位を含む画像に静止した物体が含まれている静止画像でもよいし、静止した状態の対象部位を含む画像に物体が動く動画像が含まれている動画像であってもよい。
【0078】
制御部5は、提示部4に選択した画像を表示させる(ステップS13)。
そして、画像を視認した被訓練者1は、運動想起を試みる。
ここで、本実施形態にかかるリハビリテーション装置は、図示しない音声出力部を備えていてもよく、この場合において、制御部5は、被訓練者1に運動指令の伝達を促す旨のアナウンスや効果音等を、音声出力部から出力させてもよい。なお、音声出力部として、操作インターフェース部8として用いられるPCに内蔵するスピーカ等を利用してもよい。これにより、被訓練者1のモチベーションの低下抑制や、リハビリテーションに対する集中力の向上が期待される。
【0079】
制御部5は、計測部2からスペクトル強度を取得し、スペクトル強度と脳波判定しきい値Thを比較する。制御部5は、スペクトル強度が、脳波判定しきい値Th以下となった場合、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたものと判定する(ステップS14 YES)。
なお、このとき制御部5は、被訓練者1の脳波の変化に基づいて運動指令が伝達したものと判定した旨の表示を、出力部81に画像や音声で出力させてもよい。
【0080】
一方、制御部5は、予め定めた一定時間内に、スペクトル強度が、脳波判定しきい値Th以下とならなかった場合、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたものと判定しない(ステップS14 NO)。
なお、このとき制御部5は、被訓練者1の脳波の変化に基づいて運動指令が伝達したものと判定されなかった旨の表示を、出力部81に画像や音声で出力させてもよい。
【0081】
制御部5は、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定した場合、駆動部3にアシスト動作をさせる(ステップS15)。
駆動部3は、制御部5からの制御信号に基づいて、被訓練者1の麻痺部に対するアシスト動作をする。駆動部3は、例えば、被訓練者1に手を握る動きを行わせる。
制御部5は、駆動部3を駆動させた場合、一定時間が経過したら駆動を停止させてもよいし、被訓練者1の脳波のスペクトル強度が安静時と同等に戻ったら、駆動部3の駆動を停止させてもよい。
【0082】
また、制御部5は、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定した場合、提示部4に動画像(画像2)を表示させ、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定しない場合、提示部4にそのまま静止した状態の対象部位を含む画像(画像1)を表示させる(ステップS15)。
提示部4に表示させる動画像は、駆動部3にアシスト動作をさせる麻痺部の動きと動画像中の対象部位の動きが同じである動画像である。このとき、制御部5は、動画像中の対象部位の動きと、駆動部3にアシスト動作をさせる麻痺部の動きとを同期させる。
【0083】
制御部5は、例えば、駆動部3に手を握る動作を行わせている場合、提示部4にも手を握る動作を示す動画像を表示させる。こうすることで、被訓練者1の脳に運動感覚とともに視覚のフィードバックを与え、運動指令が伝達される運動経路の確立を促す。
【0084】
制御部5は、実施結果を、記憶部6に書き込んで記憶させる(ステップS16)。
制御部5は、実施結果として、実施訓練プログラム、表示した画像、脳波判定しきい値、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定されたか、等の情報を、訓練情報領域60の訓練状況に記憶させる。
【0085】
制御部5は、予め定めた所定の回数だけ訓練が試行されたかを判定する(ステップS17)。訓練が試行された回数である訓練回数が所定の回数に満たない場合には、ステップS13に戻って、同じ脳波判定しきい値Thに対応させて同じプログラムを実施させる(ステップS17 NO)。訓練回数が所定の回数となった場合(ステップS17 YES)、訓練目標が達成されたか否かを判定する(ステップS18)。
【0086】
制御部5は、設定目標として、例えば、運動指令の伝達の検出が連続5回なされること等を設定する。制御部5は、例えば、実施した訓練と、その訓練において運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定したか否か等の結果とを記憶部6に記憶させることにより、設定目標が達成されたか否かを判定する。
また、制御部5は、設定目標として、例えば、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定されない場合の訓練回数の上限を予め設定する。こうすることで、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定されない場合であって、所定の回数の訓練を実施してもなお運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定されない場合は(1)運動想起プログラムを終了させる。
【0087】
制御部5は、訓練回数が設定目標に到達していない場合にはステップS12に戻る。
このとき制御部5は、例えば訓練状況情報に基づいて、今回の訓練において運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしなかったと判定された場合において用いられた画像を除外して、画像に含める物体を選択してもよい。
また、物体の選択をする処理の負荷を軽減するため、直前に選択した静止画像を用いて同じ訓練プログラムを実施させようにして、ステップ13に戻るようにしてもよい。
制御部5は、設定目標が達成された場合、本フローチャートを終了する(ステップS18 YES)。
【0088】
このように、(1)運動想起プログラムにおいては、制御部5は、提示部4に静止した状態の対象部位を表示させることで、被訓練者1の運動想起を促すことができる。
また、制御部5は、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定する場合に、駆動部3にアシスト動作をさせることで、被訓練者1に運動感覚のフィードバックを返すことができる。
さらに、制御部5は、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定する場合に、提示部4に対象部位が動く様子を示す動画像を表示させることで、被訓練者1に視覚のフィードバックを返すことができる。
また、制御部5は、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定する場合に、駆動部3の駆動動作と提示部4の動画像中の対象部位の動きとを同期させることで、被訓練者1に、より現実感のある運動感覚と視覚のフィードバックを返すことができる。
さらに、制御部5は、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定する場合の脳波判定しきい値Thを、段階的に設定し、運動指令の伝達が微弱な段階から変化を捉えて訓練を繰り返すことで、被訓練者1に、徐々に運動指令の伝達が明確に認識できるように訓練させることができる。
【0089】
また、制御部5は、被訓練者1の訓練状況情報に応じ、提示部4が表示する画像に含める物体を選択することも可能であるため、被訓練者1の運動想起を多様な側面から促すことも可能である。
【0090】
<(2)運動観察想起プログラム>
次に、運動観察想起プログラムの流れを、
図6から
図8を用いて説明する。
図6は「運動観察想起プログラム」について説明するための図である。
図6は、横軸に時間軸を示し、縦軸にスペクトル強度を示し、スペクトル強度の時間の経過に伴う変化を示している。
図6の例では、スペクトル強度は、時刻Aから時刻Bの間で安静時のスペクトル強度を示している。そして時刻Bから低下し始め、時刻Cで最も低下する。そして、スペクトル強度は時刻D(E)で再び安静時のレベルに戻る様子を示している。
(2)運動観察想起プログラムは、上述した(1)運動想起プログラムにおいて、運動指令の伝達を示すスペクトル強度の変化が弱い場合に実施される。
(2)運動観察想起プログラムは、被訓練者1は、静止した状態の対象部位が一定時間経過後に動く画像を事前に視認し、その体験や記憶を有する状態で、再度その静止した状態の対象部位を含む画像を観察することにより運動指令が伝達するように試みる訓練である。
【0091】
ここで(2)運動観察想起プログラムの説明に用いる用語を以下のように定義する。
画像の提示を開始する時刻を「画像提示開始時刻A」とする(
図6の時刻A)。
また、画像を視認した被訓練者1のスペクトル強度に基づいて、所定の変化が確認されるか否かの判定を開始する時刻を「判定開始時刻B」とする(
図6の時刻B)。
また、画像を視認した被訓練者1のスペクトル強度に基づいて、運動指令を伝達させようとする所定の変化のうち、最も大きな変化が確認されるであろうと想定される時刻を、「反応想定時刻C」とする(
図6の時刻C)。
また、「反応想定時刻C」から、予め定めた所定時間である「反応時間X」経過後の時刻を「動作起点時刻D」という(
図6の時刻D)。
また、画像を視認した被訓練者1のスペクトル強度に基づいて、所定の変化が確認されるか否かの判定を終了する時刻を「判定終了時刻E」とする(
図6の時刻E)。
また、「判定開始時刻B」と「判定終了時刻E」との間の時刻を「判定時間Y」とする。
【0092】
図6に示すように「反応時間X」は、「反応時間X」終了時が「動作起点時刻D」となるように設定される。「反応時間X」は、個々の被訓練者1毎に設定される時間であり、「反応想定時刻C」から、被訓練者1の麻痺部が実際に動くまでに要するであろうと予想される時間である。「反応時間X」については、後で詳しく説明する。
また、
図6に示すように「判定時間Y」は、「判定時間Y」の二分の一が経過した時刻が、「反応想定時刻C」となるように設定される。「判定時間Y」の長さは、「反応時間X」に基づいて定められ、例えば、「反応時間X」の0.5倍〜3倍、より好ましくは1倍〜2.5倍の時間である。
【0093】
(2)運動観察想起プログラムで用いる画像においては、被訓練者1へ静止した状態の対象部位が示されている場面が表示され、また表示がされてから所定時間経過後の「動作起点時刻D」に、その静止した状態の対象部位が動く様子を示す画像である。
【0094】
また、静止した状態の対象部位を含む画像(画像1)を提示し、一定時間が経過した後に、その静止した状態の対象部位が動く様子を示す画像(画像2)に切替えて提示してもよい。このような場合も、画像1と画像2とを組み合わせた画像が「動作起点時刻D」を有する画像である、ということができる。なお、この場合、画像1から画像2への切り替えの時刻が「動作起点時刻D」となる。
【0095】
一般に、人が画像を視認するなどして刺激を受けた場合、その刺激を受けてから、運動指令が伝達されて、実際に運動が開始されるまで一定の時間を要することが知られている。すなわち、脳から運動指令を伝達させようとする所定の変化が確認された時刻(「反応想定時刻C」)から、被訓練者1の麻痺部が実際に動くまでには一定の時間(「反応時間X」)を要する。
例えば、人が転がってくるボールを視認し、掴もうとする意思を想起し、掴む動作をする場合、「反応想定時刻C」に、スペクトル強度が最も低下し、そこから「反応時間X」経過後の時刻「動作起点時刻D」に掴む動作が行われる。
【0096】
一方、麻痺がある患者の場合、脳波に所定の変化が発生した場合であっても、その変化が発生したタイミングが、運動指令を伝達させようして発生した変化のタイミングと異なる場合がある。すなわち、麻痺がある患者の場合にあっては、脳波に所定の変化が発生した場合に、その変化が運動指令を伝達させようして発生した変化か否かを見分ける必要がある。リハビリ効果を高めるためには、適切なタイミングで、運動を想起した時のスペクトル強度の低下を生じさせる訓練を行うことが望ましい。
そこで、(2)運動観察想起プログラムでは、脳波に所定の変化が発生し、スペクトル強度が最も低下した時点が「判定時間Y」内であるか否かを判定することによって、被訓練者1が適切なタイミングで運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたか否かを判定する。こうすることで、運動指令を伝達させようして発生したスペクトル強度の低下が、それ以外の理由で発生したスペクトル強度の低下と異なることを判定することが可能となり、誤って判定することを防ぐことができる。
【0097】
「反応時間X」は個人差があるため、予め測定しておくことが好ましい。測定の方法として、例えば、画像の提示によるスペクトル強度の低下と麻痺のない部位の動作開始との関係を用いる方法がある。例えば、被訓練者1に動作の原因となる画像を視認させ、その際のスペクトル強度が最も低下した時刻と麻痺のない部位の動作開始時刻を計測する。そして、スペクトル強度が最も低下した時刻と動作開始時刻との差の時間を「反応時間X」とすることができる。
また、「反応時間X」測定の方法として、例えば、画像を提示した後に、安静時のスペクトル強度から最もスペクトル強度が低下した時刻と、その画像の動作起点時刻との関係を用いる方法がある。例えば、被訓練者1に画像を視認させ、その際のスペクトル強度が最も低下した時刻とその画像中の対象部位が動き出す「動作起点時刻D」との差の時間を「反応時間X」とすることができる。
また、「反応時間X」を予め測定することが困難な場合は、「反応時間X」を0秒〜2秒とし、より好ましくは0秒〜1秒としてもよい。
【0098】
また、「判定時間Y」を長くすれば訓練の難易度は易しくなり、「判定時間Y」を短くすれば訓練の難易度は難しくなる。「反応時間X」を予め測定し、それに基づいて「判定時間Y」を設定することによって、個人の特性に合わせた訓練の条件を設定でき、リハビリの効果をより高めることが期待される。
【0099】
(2)運動観察想起プログラムでは、被訓練者1からの運動指令の伝達を示すスペクトル強度の変化が弱い場合であっても、画像を視認した被訓練者1から運動指令が伝達されると予想される時間「反応想定時刻C」から「動作起点時刻D」を経過した後に、静止した状態の対象部位が動き出す様子を被訓練者1に視認させることにより、適切なタイミングで運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をするように訓練を行う。
【0100】
このため、(2)運動観察想起プログラムでは、まず「画像提示開始時刻A」に静止した状態の対象部位の画像(画像1)が提示され、「動作起点時刻D」に達すると、静止した状態の対象部位が動き出す画像(画像2)が提示される。このとき、静止した状態の対象部位が示されている場面は少なくとも「反応時間X」以上の時間提示されることが好ましい。
【0101】
また、(2)運動観察想起プログラムでは、訓練プログラムの実施に先立って、被訓練者1に事前に動画像を視認させることが好ましい。すなわち、被訓練者1は、静止した状態の対象部位が予め定めた所定時刻(ここでは「動作起点時刻D」)後に動き出すことを既に認識し、その経験や記憶を有している状態で(2)運動観察想起プログラムを実施することが好ましい。
【0102】
そして、(2)運動観察想起プログラムでは、被訓練者1のスペクトル強度が脳波判定しきい値Th以下に変化し、かつ、その変化が「動作起点時刻D」の前の「反応想定時刻C」を含む所定時間内、すなわち「判定開始時刻B」から「動作起点時刻D」までの「判定時間Y」の間に発生した場合に、運動指令を伝達させようして脳波が所定の変化をしたと判定する。
【0103】
一方、スペクトル強度が脳波判定しきい値Th以下に変化したが、その変化が「判定時間Y」の間に発生しなかった場合、あるいは、スペクトル強度が脳波判定しきい値Th以下に変化しなかった場合は、運動指令を伝達させようして脳波が所定の変化をしていないと判定する。
【0104】
図7は「運動観察想起プログラム」について説明するための図である。
図7(a)および
図7(b)はともに、横軸に時間軸を示し、縦軸にスペクトル強度を示している。また、
図7は、「反応時間X」が1秒、「判定時間Y」が1.5秒である場合を示し、「判定時間開始時刻B」の0.75秒後が「反応想定時刻C」である場合を示す。
図7(a)のように「判定時間Y」の間に、被訓練者1のスペクトル強度が脳波判定しきい値Th以下に変化した場合は運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定する。
一方、
図7(b)のように「判定時間Y」の間に、被訓練者1のスペクトル強度が脳波判定しきい値Th以下に変化しない場合、運動指令を伝達させようして脳波が所定の変化をしていないと判定する。
【0105】
ここでは、
図8に示す流れについて、
図5の(1)運動想起プログラムと同様な部分については説明を省略し、差異のある部分についてのみ説明する。
(2)運動観察想起プログラムを実施する前提として、事前に、被訓練者1に、画像を視認させる。すなわち、被訓練者1は、静止した状態の対象部位が「動作起点時刻D」後に動き出す様子の画像をすでに認識し、その経験や記憶を有するものとする。
一般に、人は過去の経験や記憶に基づいて想起を行うことが多く、また、過去に経験した事項についてはその事項を想起することが容易であることが知られている。
【0106】
まず、制御部5は、ステップS21から23において、(1)運動想起プログラムのステップS11から13と同様の処理を行う。なお、
図8では(2)運動観察想起プログラムで用いる画像に関し、画像1として、静止した状態の対象部位を含む画像を選択し、画像2として、その静止した状態の対象部位が動く様子が、画像2提示開始直後に示される動画像を選択する場合を示している。すなわち、画像1と画像2の切り替えの時刻が「動作起点時刻D」となっている。したがって、制御部5は、画像1を、例えば、「反応時間X」以上の時間表示した後の「動作起点時刻D」に、画像2に切り替える(図示無し)。
【0107】
次に、制御部5は、提示部4に画像1を表示させた後、「動作起点時刻D」に達するまでの間(ステップS24)、被訓練者1の計測部2からスペクトル強度を取得し、スペクトル強度と脳波判定しきい値Thを比較する。そして、制御部5は、被訓練者1のスペクトル強度が脳波判定しきい値Th以下に変化し、かつ、その変化が「判定時間Y」の間に発生した場合、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定する(ステップS25 YES)。
【0108】
一方、制御部5は、「動作起点時刻D」までの間に、被訓練者1のスペクトル強度が脳波判定しきい値Th以下に変化しない、または、被訓練者1のスペクトル強度が脳波判定しきい値Th以下に変化した場合であっても、その変化が「判定時間Y」の間に発生したものでない場合、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしていないものと判定する(ステップS25 NO)。
【0109】
制御部5は、運動指令が伝達したと判定した場合、「動作起点時刻D」に(1)運動想起プログラムのステップS15同様に駆動部3にアシスト動作をさせる(ステップS26−1)。また、このとき、提示部4に表示させている画像1が「動作起点時刻D」に達し、画像2が提示され、静止した状態の対象部位が「動作起点動き出す様子の画像が、アシスト動作と同期して表示される。
【0110】
一方、制御部5は、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定しない場合、駆動部3を駆動させない。この場合であっても、提示部4に表示させている画像1が「動作起点時刻D」に達すると、画像2が提示され、静止した状態の対象部位が動き出す様子の動画像が表示される(ステップS26−2)。すなわち、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたかの判定いかんに関わらず、提示部4は、静止していた対象部位が動きだす様子を示す画像を表示する。
【0111】
そして、制御部5は、ステップS27から29において、(1)運動想起プログラムのステップS16から18と同様の処理を行う。
【0112】
このように、(2)運動観察想起プログラムは、被訓練者1に事前に訓練に用いる画像を視認させることで、静止した状態の対象部位が動く様子、および動きだすタイミングを強く認識した上で被訓練者1が訓練プログラムを実施することができるので、運動想起し易くすることができる。
【0113】
また、制御部5は、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたか否かの判定を、「判定時間Y」の間に発生したスペクトル強度の変化に制限することで、運動想起をすべきタイミングで、より正確に運動指令を伝達させる訓練を行うことができる。
【0114】
また、制御部5は、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたかの判定いかんに関わらず、提示部4に静止していた対象部位が動きだす様子を示す画像を表示させる。こうすることで、被訓練者1が運動指令の伝達を示すスペクトル強度の変化が弱い場合であっても、被訓練者1に静止していた対象部位が動きだす様子を繰り返し視認させ、対象部位が動くというイメージがより明確となり、麻痺部の動作を強く認識させることができる。
【0115】
なお、(2)運動観察想起プログラムで用いる画像(第三画像)は、「動作起点時刻D」を有していればよく、一の動画像に対象部位の静止画像(第一画像、画像1)を含む場面と対象部位の動画像(第二画像、画像2)を含む場面とを有するものであってもよいし、
図8の画像1と画像2のように複数の画像を組み合わせて構成される画像であってもよい。
【0116】
<第2の実施形態>
第2の実施形態について説明する。
本実施形態の説明においては、第1の実施形態と同様な箇所については説明を省略し、第1の実施形態と異なる箇所についてのみ説明する。
本実施形態における計測部2は、第1の実施形態で用いた脳波を計測する脳波計20の他に、噛みしめた時に歯と歯の間にかかる圧力(以下、咀嚼圧と称する。)の強度を示す強度信号を計測する咀嚼センサ21を含んで構成される。
【0117】
咀嚼センサ21は、人体の口腔内の咀嚼圧を計測するセンサである。咀嚼センサ21は、圧力センサを含んで構成される。咀嚼センサ21は、人体の口腔内の上下の歯と歯の間に挟むように装着され、噛みしめた場合の咀嚼圧を測定する。
咀嚼センサ21は、計測した咀嚼圧を制御部5に通知する。
【0118】
<(3)咀嚼プログラムの処理>
さらに、咀嚼プログラムの流れを、
図9のフローチャートを用いて説明する。
本プログラムは、上述した(1)運動想起プログラム、および(2)運動観察想起プログラムおいて、運動指令の伝達を示す脳波の変化がほぼ生じない場合に実施される。
本フローチャートは、(1)運動想起プログラム、または(2)運動観察想起プログラムと同様である部分については説明を省略し、差異のある部分についてのみ説明する。
ここでは、訓練プログラムを実施するにあたり、被訓練者1は、咀嚼センサ21を自身の歯と歯の間に挟んで装着する。
制御部5は、咀嚼センサ21から被訓練者1の咀嚼圧を、計測部2を介して取得する。また、制御部5は、予め、被訓練者1の咀嚼圧の最大値を計測しており、例えば、咀嚼圧最大値の70%程度の値を「咀嚼判定しきい値1」として、記憶部6に記憶させているものとする。また、制御部5は、咀嚼圧最大値の50%程度の値を「咀嚼判定しきい値2」として、記憶部6に記憶させているものとする。
【0119】
次に、この実施形態におけるリハビリテーション装置の動作を説明する。
制御部5は、被訓練者1に、提示部4に表示される静止した状態の対象部位を含む画像を視認させ、手を動かそうとしながら、咀嚼センサ21を噛みしめるように促す(ステップS33)。
制御部5は、被訓練者1が装着した咀嚼センサ21により計測される咀嚼圧を取得する(ステップS34)。そして、制御部5は、咀嚼圧を検知した場合(ステップS34 YES)、検知した咀嚼圧と、記憶部6に記憶させた、咀嚼判定しきい値1とを比較する(ステップS35)。
制御部5は、取得した咀嚼圧の方が、咀嚼判定しきい値1以上である場合、駆動部3にアシスト動作をさせる(ステップS35)。この場合において、制御部5が、駆動部3にアシスト動作をさせる動きは、例えば、手を握らせる等の動きである。
【0120】
なお、制御部5は、駆動部3の駆動に同期させて、提示部4に動画像を表示させてもよい。この場合、動画像を構成する要素となる静止画像と駆動部3の駆動姿勢とを関連付けて記憶させる。例えば、動画像が1秒間あたり36枚の静止画像を連続的に表示することで構成され、5秒間の動画像であった場合、この動画像を構成する36×5(=180)枚の静止画像に画像番号を付す。そして、この番号に対応する駆動部3の駆動姿勢にも同様に姿勢番号を付すことにより、動画像を構成する静止画像と、駆動部3にアシスト動作をさせる際の駆動姿勢とを関連付ける。
そして、制御部5は、駆動部3に駆動させている駆動姿勢を取得し、その駆動番号に対応する動画像を構成する静止画像を指定し、その静止画像から始まる動画像を提示部4に表示させる。
また、制御部5は、提示部4の動画像の表示に同期させて、駆動部3を駆動させてもよい。この場合、制御部5は、提示部4に表示させている動画像の画像番号を取得し、その画像番号に対応する駆動姿勢を指定し、その駆動姿勢から始まる動作を駆動部3に行わせる。
【0121】
また、制御部5は、駆動部3を駆動させた場合、上述した任意の構成である音声出力部による音声ガイダンス等により被訓練者1に、咀嚼センサ21の噛む力を弱めるように促す。そして、制御部5は、被訓練者1が装着した咀嚼センサ21により計測される咀嚼圧を取得し、検知した咀嚼圧と、記憶部6に記憶させた、咀嚼判定しきい値2とを比較する(ステップS36)。
制御部5は、取得した咀嚼圧が、咀嚼判定しきい値2以下である場合、駆動部3を駆動させ、前述した駆動部3が駆動させた動きを解く動きをさせる(ステップS37)。駆動部3が駆動させた動きを解く動きとは、例えば、手を握らせる場合に対し、手を開かせる動きである。
【0122】
制御部5は、ステップS34〜S37までの処理を所定の回数繰り返し、被訓練者1に咀嚼運動とその運動に伴う、手の動作を行わせる(ステップS38)。
制御部5は、(3)咀嚼プログラムを所定の回数実施させた後、その結果を、記憶部6に書き込んで記憶させる(ステップS39)。
制御部5は、(3)咀嚼プログラムを実施時の咀嚼圧、実施回数等の訓練状況に関する情報を、訓練情報領域60の訓練状況に記憶させる。
所定の回数(3)咀嚼プログラムを繰り返し実施した後に、(1)運動想起プログラムまたは(2)運動観察想起プログラムを実施する。こうすることで、(3)咀嚼プログラムを実施した効果の有無を確認する。人体の脳の運動野における口腔と手指とのそれぞれの運動指令を担う位置は近接しており、(3)咀嚼プログラムの実施により手指に対する運動指令が伝達されるようになったとしても、(3)咀嚼プログラムを実施するだけでは、咀嚼運動を想起した場合の脳波の変化と手指の運動指令の伝達に伴う脳波の変化とが混在し区別できないからである。
【0123】
このように、(3)咀嚼プログラムにおいては、制御部5は、咀嚼センサ21から検出する咀嚼圧に基づいて、駆動部3を駆動させ、被訓練者1に手指の運動感覚のフィードバックを与える。
上述の通り、人体の脳の運動野における口腔と手指とのそれぞれの運動指令を担う位置は近接している。また、いわゆる健常者において、運動野の咀嚼運動指令を担う位置の活性化が手指の運動誘発電位を増大させる(作業療法ジャーナル 48(12), 1263―1268, 2014―11)。また、歯を食いしばると、平常時よりも出せる力が強まることが経験的に認められる。
咀嚼の運動をきっかけとした手指の運動指令の伝達を試みることにより、脳の損傷を受けた神経細胞に代わる神経細胞と手指の筋肉との間で運動指令を伝達する運動経路が再構築されることが期待できる。
【0124】
以上説明した実施形態のうち、第1の実施形態において、制御部5は、被訓練者1に対し、一律の画像(例えば、ボールと手の画像)を提示させているが、これに限定されない。制御部5は、被訓練者1に対し、よりリアリティを感じさせるような提示がなされるようにすればよく、被訓練者1の趣味等の傾向を考慮した提示をさせてもよい。
例えば、制御部5は、被訓練者1の麻痺部とその属性に基づいて画像を作成してもよい。制御部5は、被訓練者1の手のサイズ、形状等の属性情報を記憶部6に記憶させておく。そして、制御部5は、これらの属性情報に基づいて、手の画像について画像処理を行い、より被訓練者1本人の手のサイズ、形状に近づけた画像を作成してもよい。
また、例えば、制御部5は、被訓練者1の嗜好等に基づいて画像を作成してもよい。制御部5は、被訓練者1の親しみのある画像(例えば、高齢者であれば孫の写真など)を記憶部6に記憶させておく。そして、制御部5は、これらの画像を、麻痺部を動かそうとする意思を引き出す物体の画像素材として選択し、対象部位の画像素材と合成して、表示してもよい。
【0125】
また、上記第1の実施形態において、制御部5は、運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたか否かの判定に、脳波判定しきい値Thを用いているが、これに限定されない。
制御部5は、例えば、脳波の変化が発生した領域がどこであるか、また健常者が運動指令を伝達させた場合と比較して、脳波の変化が発生した領域が広いか狭いか等を判定項目としてもよい。
健常者による運動指令の伝達が正常になされた場合、脳の運動野の特定な領域において局所的に変化が確認される。これに対し、運動指令の伝達がまだ弱い場合、脳波の変化は、健常者による運動指令の伝達の場合と比較して、脳の運動野の広い領域においてごく小さい変化が確認される。いわば、広く浅いぼんやりとした変化が確認される。この段階で運動指令を伝達させようとして脳波が所定の変化をしたと判定し、運動を行わせることを繰り返すことで、徐々に脳の変化が特定の領域で確認されるようになることが知られている。
この場合、脳波計20は複数の電極を用いて、被訓練者1の頭部の複数の箇所に電極を装着させる。そして、制御部5は、脳の異なる複数の領域からの脳波を取得する。
【0126】
上述した実施形態における制御部5が行う処理をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するための処理プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録された処理プログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介して処理プログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的に処理プログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間の間、処理プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記処理プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されている処理プログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0127】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。