【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム、COI拠点「感性とデジタル製造を直結し、生活者の創造性を拡張するファブ地球社会創造拠点」委託研究開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記形状取得手段は、前記立体物の前記形状を表すデータとして前記立体物の少なくとも一部における3次元形状を特定可能な画像を取得することを特徴とする請求項1または2に記載の立体物製造装置。
前記品質情報生成手段は、前記形状取得手段によって取得された前記立体物の積層部分の形状を表すデータと、前記3次元形状データとを比較した結果に基づいて、前記品質情報を生成することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の立体物製造装置。
前記品質情報生成手段は、前記形状取得手段によって取得された前記立体物の積層部分の形状を表すデータに基づいて、当該立体物の積層部分を表すボクセルデータを生成し、生成した当該ボクセルデータを、前記立体物造形手段が当該立体物の積層部分を造形するために使用したボクセルデータと比較した結果に基づいて、前記品質情報を生成することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の立体物製造装置。
前記形状取得手段は、複数方向から平面画像を撮像することにより前記立体物の積層部分の形状を表すデータとして複数の画像を取得し、取得した画像を合成することにより、前記立体物の形状を示す3次元画像を生成することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の立体物製造装置。
前記形状取得手段は、レーザによって前記立体物を走査することにより、前記立体物の形状を取得する3次元レーザスキャナを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の立体物製造装置。
前記形状取得手段は、X線発生器とX線検出器とを備え、CT画像を撮像するCTスキャナを含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の立体物製造装置。
前記形状取得手段は、前記立体物に接触する接触子によって前記立体物の積層部分の形状を表すデータを取得する形状測定装置を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の立体物製造装置。
前記立体物造形手段は、前記立体物の積層部分の品質が基準よりも低下した場合、前記立体物の積層を停止することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の立体物製造装置。
前記品質情報生成手段は、前記立体物の積層部分の前記品質情報に基づいて、当該積層部分以降の前記立体物を造形するためのデータを補正することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の立体物製造装置。
前記品質情報生成手段は、前記立体物の積層部分の前記品質情報に基づいて、造形を継続した場合に発生する可能性のあるエラーを予測することを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の立体物製造装置。
前記立体物の前記品質情報には、当該立体物の高さの誤差、当該立体物の幅の誤差、当該立体物に発生している捩れの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の立体物製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
[第1実施形態]
[構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る立体物製造装置1のハードウェア構成を示す模式図である。
図1に示すように、立体物製造装置1は、データ処理部10と、立体物造形部20とを備えている。
データ処理部10は、PC(Personal Computer)や組み込み型のマイコン等の情報処理装置によって構成される。本実施形態においては、データ処理部10をPCによって構成するものとする。
【0010】
データ処理部10は、立体物の設計データであるCAD(Computer Aided Dsign)データから、立体物造形部20における3Dプリンタヘッドのツールパスを表すスライスデータを生成する。また、データ処理部10は、造形中の立体物における積層部分の形状を取得し、当該立体物の品質を示すデータを生成する。なお、本実施形態における立体物製造装置1では、造形材料に加え、立体物に組み込まれる回路を形成するための金属材料や電子部品等、造形材料以外のものが積層されて立体物が製造される。以下、これら造形材料及び造形材料以外の積層物を総称して、「積層要素」と呼ぶ。
【0011】
具体的には、データ処理部10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、入力部14と、出力部15と、記憶部16と、通信部17と、を備えている。
【0012】
CPU11は、ROM12または記憶部16に記憶されたプログラムに従って各種の処理を実行する。
ROM12は、立体物製造装置1を制御するための各種プログラムを記憶する。
RAM13には、CPU11が各種の処理を実行するためのデータ等が記憶される。
【0013】
入力部14は、キーボードあるいはマウス等のポインティングデバイスによって構成され、ユーザの指示操作に応じて各種情報を入力する。
出力部15は、ディスプレイやスピーカによって構成され、CPU11の制御に従って、情報の表示や音声の出力を行う。
記憶部16は、ハードディスク等の記憶装置によって構成され、立体物製造装置1で使用される各種データやプログラムを記憶する。
通信部17は、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等の通信ケーブルや、インターネット等の通信ネットワークを介して他の装置との通信を行う。
【0014】
立体物造形部20は、熱溶解積層(FDM:Fused Deposition Modeling)方式あるいは光造形方式の3Dプリンタによって構成される。本実施形態においては、立体物造形部20は、熱溶解積層方式の3Dプリンタであるものとする。
具体的には、立体物造形部20は、基台部21と、天板部22と、上下動軸23a〜23cと、アーム24a〜24cと、ヘッド駆動部221と、3Dプリンタヘッド222と、撮像部223と、台座224と、台座駆動部225とを備えている。
【0015】
本実施形態における立体物造形部20は、基台部21から天板部22に向けて垂直に起立する3つの上下動軸23a〜23cに沿って、3Dプリンタヘッド222を支持するアーム24a〜24cが上下動することにより、立体物を積層造形するデルタ型の3Dプリンタである。また、立体物造形部20は、データ処理部10によって生成された制御データに基づいて、ヘッド駆動部221の制御の下、3Dプリンタヘッド222から造形材料を吐出し、造形物を出力(立体物を製造)する。さらに、立体物造形部20は、天板部22に台座224の方向を撮像する撮像部223を備えており、画像取得制御部52(後述)の制御に従って、造形材料が1層積層される毎等、所定のタイミングで、台座224に造形された立体物の積層部分の画像を撮像部223によって取得する。なお、立体物造形部20において、台座224は台座駆動部225によって水平面に対する傾きや垂直方向の位置等が調整される。即ち、立体物造形部20においては、撮像部223が、造形中の立体物における積層部分を複数の方向から撮像することが可能となっている。
立体物造形部20の構成については、以下の機能的構成の説明において詳述する。
【0016】
[立体物製造装置1の機能的構成]
次に、立体物製造装置1の機能的構成について説明する。
図2は、立体物製造装置1の機能的構成を示すブロック図である。
図2に示すように、立体物製造装置1において、データ処理部10は、CPU11の機能として、造形データ取得部111と、画像取得制御部112と、積層制御部113と、台座制御部114と、造形物評価部115とを備え、記憶部16において、造形データ記憶部71と、品質データ記憶部72とが形成される。また、立体物造形部20は、上述したように、ヘッド駆動部221と、3Dプリンタヘッド222と、撮像部223と、台座224と、台座駆動部225とを備えている。
【0017】
造形データ記憶部71には、立体物製造装置1において製造される立体物を造形するためのデータ(CADデータ)が記憶される。本実施形態において、立体物を造形するためのデータ(CADデータ)には、立体物に組み込まれる電子部品や回路の配置データを含めることができる。
【0018】
品質データ記憶部72は、立体物製造装置1において製造される立体物の品質を示すデータが記憶される。品質データ記憶部72に記憶された立体物の品質を示すデータは、立体物の出荷時等に、立体物に埋め込まれるRFID(Radio Frequency Identifier)や立体物の付属品であるリムーバブルメディア等に記憶され、立体物と共に提供される。即ち、立体物の品質を示すデータは、製造された立体物の鑑定書あるいは品質保証書として利用することができる。
【0019】
造形データ取得部111は、立体物製造装置1において作成されたCADデータあるいは不図示のネットワーク等を介して他の装置から送信されたCADデータを取得し、造形データ記憶部71に記憶する。また、造形データ取得部111は、取得したCADデータに基づいて、サーフェス(立体物の表面)を多角形メッシュで近似するSTL形式のデータ(立体物の造形データであるSTLデータ)を生成する。さらに、造形データ取得部111は、生成したSTLデータに基づいて、3Dプリンタヘッド222のツールパスを表すスライスデータを生成する。このとき、造形データ取得部111は、スライスデータとして、造形される立体物の内部構造を表すボクセルモデルを生成する。
【0020】
本実施形態において、造形データ取得部111によってスライスデータを生成する場合、立体物の製造者等が意図するタイミングで、積層部分の撮像を指示するコマンドを付加することが可能となっている。即ち、スライスデータにおいて、立体物を製造するために3Dプリンタヘッド222によって積層要素を積層するツールパスを表すデータ列に、撮像部223によって積層部分の画像を撮像するためのデータ(コマンド)を任意に配置することが可能となっている。撮像部223によって積層部分の画像を撮像するためのデータ(コマンド)は、立体物の製造者が、製造時に品質を確認したいと考える立体物の部分について、該当するスライスデータの位置に配置すること等が可能である。
【0021】
画像取得制御部112は、立体物の造形中に、当該立体物の積層部分の画像を撮像部223によって取得する。このとき、画像取得制御部112は、台座制御部114に対し、台座224の水平方向に対する傾きや垂直方向の位置等を変化させる指示を出力し、立体物の積層部分を複数の方向から撮像した画像を取得する。そして、画像取得制御部112は、取得した立体物の積層部分における撮像画像(積層部分の形状を表すデータ)を立体物の積層部分を識別する情報(例えば、CADデータにおける位置を表す情報等)と対応付けて、品質データ記憶部72に記憶する。このように取得された撮像画像(多視点の平面画像)を3次元画像として合成することにより、立体物の積層部分における3次元形状を取得することができる。
【0022】
また、本実施形態において、画像取得制御部112が立体物の積層部分の画像を撮像部223によって取得するタイミング(画像取得タイミング)は、(1)スライスデータにおいて画像を撮像するためのデータ(コマンド)が配置されている場合、(2)積層要素の所定層毎(例えば、1層毎あるいは3層毎等)、あるいは、(3)画像取得制御部112が立体物の形状を解析し、形状が複雑な部分が積層されたと判定したタイミング、等とすることができる。
【0023】
また、画像取得制御部112は、立体物の造形後に、当該立体物全体の画像を撮像部223によって取得する。このとき、画像取得制御部112は、台座制御部114に対し、台座224の水平方向に対する傾きや垂直方向の位置等を変化させる指示を出力し、立体物全体を複数の方向から撮像した画像を取得する。画像取得制御部112は、取得した立体物全体の画像(立体物全体の形状を表すデータ)を、立体物を識別する情報と対応付けて、品質データ記憶部72に記憶する。このように取得された撮像画像(多視点の平面画像)を3次元画像として合成することにより、立体物全体における3次元形状を取得することができる。
【0024】
積層制御部113は、造形データ取得部111によって生成されたスライスデータに基づいて、3Dプリンタヘッド222を駆動し、立体物を製造するための積層要素の積層を制御する。本実施形態においては、上述したように、積層要素として、造形材料に加え、立体物に組み込まれる回路を形成するための金属材料や電子部品等、造形材料以外のものが積層されて立体物が製造される。そのため、立体物造形部20には、積層される積層要素に対応した複数のノズルを3Dプリンタヘッド222に備えたり、3Dプリンタヘッド222に加えて部品のピックアンドプレース機構を備えたりすることができ、積層制御部113は、スライスデータに基づいて、これらの動作を制御し、立体物の積層要素を逐次積層する。
【0025】
また、積層制御部113は、画像取得制御部112によって、立体物の積層部分の画像が取得される場合、立体物の積層を一時停止し、画像取得制御部112による画像取得を妨げない位置に3Dプリンタヘッド222を退避させる。
さらに、積層制御部113は、造形物評価部115から積層を停止させる指示が入力された場合、製造中の立体物の積層を停止する。
台座制御部114は、画像取得制御部112の指示に応じて、台座駆動部225を制御することにより台座224の水平方向に対する傾きや垂直方向の位置等を変化させる。
【0026】
造形物評価部115は、画像取得制御部112によって取得された撮像画像に基づいて、製造対象の立体物の積層部分毎及び立体物全体について品質を評価し、評価結果を品質データ記憶部72に記憶する。具体的には、造形物評価部115は、製造対象の立体物の積層部分を評価するための部分評価処理を実行する。即ち、部分評価処理において、造形物評価部115は、画像取得制御部112によって取得された多視点の平面画像である撮像画像を、3次元画像として合成する。また、造形物評価部115は、合成した3次元画像をボクセルモデルに変換し、造形データ取得部111によって生成された同一の積層部分のボクセルモデルと比較する。そして、造形物評価部115は、同一の積層部分について、3次元画像から変換されたボクセルモデルと、造形データ取得部111によって生成されたボクセルモデル(CADデータから生成されたボクセルモデル)との一致度合いが基準とする条件(部分評価条件)よりも低い場合、造形される立体物の品質が基準を満たしていないと判定する。本実施形態においては、造形物評価部115は、部分評価処理において、造形される立体物の品質が基準を満たしていないと判定した場合、エラー停止処理として、積層制御部113に対して、製造中の立体物の積層を停止させる指示を出力すると共に、出力部15のディスプレイに、立体物の品質が基準を満たしていない旨のメッセージを表示する。なお、このとき、造形物評価部115が出力部15のスピーカから警報音やエラーである旨の音声メッセージを出力することとしてもよい。なお、この部分評価処理の結果は、品質データ記憶部72に記憶される。
【0027】
図3は、積層部分に欠損箇所が発生している状態を示す模式図であり、
図3(A)はCADデータから生成されたボクセルモデルを示す図、
図3(B)は積層部分の3次元画像から変換されたボクセルモデルを示す図である。
立体物の設計においては、
図3(A)のように積層されることが予定されているところ、
図3(B)においては、積層部分に欠損等が生じており、部分評価処理によって、このような欠損箇所の発生度合いに応じた評価結果(欠損箇所となったボクセルの全体に対する割合等)が取得される。
このように積層部分毎に品質を評価することで、明らかに品質を満たさない造形物の造形が継続されることを防止することができる。
【0028】
また、造形物評価部115は、造形が完了した立体物全体を評価するための全体評価処理を実行する。全体評価処理は、積層部分毎に品質を評価したのみでは、全体を積層した場合に立体物に表れる品質(プラスチック素材(ABS樹脂等)であれば造形後に収縮する、あるいは、反る等の形状変化が起きるといったように、高さが設計値よりも低くなる、幅が設計値よりも大きくなる、積層部分が捩れて積層される等)を評価できないため、立体物全体としてのこれらの品質を評価するために実行される。即ち、造形物評価部115は、立体物全体を撮像対象として画像取得制御部112によって取得された多視点の平面画像である撮像画像を、3次元画像として合成する。また、造形物評価部115は、立体物全体の3次元画像を造形データ取得部111によって取得されたCADデータと比較する。このとき、造形物評価部115は、立体物全体の3次元画像及びCADデータを、比較のための所定のデータ形式(例えば、CADデータからボクセルモデルが生成されるまでのいずれかのデータ形式あるいは比較用の他のデータ形式等)に変換した後に比較することができる。そして、造形物評価部115は、立体物全体について、合成された3次元画像と、造形データ取得部111によって取得されたCADデータとの一致度合いが基準とする条件(全体評価条件)よりも低い場合、造形された立体物の品質が基準を満たしていないと判定する。本実施形態においては、造形物評価部115は、全体評価処理において、造形された立体物の品質が基準を満たしていないと判定した場合、エラー表示処理として、出力部15のディスプレイに、立体物の品質が基準を満たしていない旨のメッセージを表示する。なお、このとき、造形物評価部115が出力部15のスピーカから警報音やエラーである旨の音声メッセージを出力することとしてもよい。なお、この全体評価処理の結果は、品質データ記憶部72に記憶される。
【0029】
立体物造形部20のヘッド駆動部221は、造形データ取得部111によって生成されたボクセルモデルに基づいて、3Dプリンタヘッド222の移動と、ノズルからの造形材料の吐出量とを制御する。
3Dプリンタヘッド222は、上下動軸23a〜23cに沿って上下方向に移動可能な3つのアームに支持され、ヘッド駆動部221の制御に従って、ノズルから造形材料を吐出する。
【0030】
撮像部223は、デジタルカメラ等の撮像装置によって構成され、天板部22に台座224の方向を撮像可能に設置されている。そして、撮像部223は、造形されている立体物の積層部分や造形が完了した立体物全体の画像(ここでは、平面画像とする)を撮像する。なお、立体物を異なる方向から撮像可能なように、撮像部223を複数備えておくこととしてもよい。
台座224は、立体物が積層造形される台座となる。また、台座224は、台座駆動部225によって、水平面に対する傾きや水平面内における回転、及び、垂直方向の位置が調整される。
【0031】
台座駆動部225は、基台部21と台座224との間に設置され、雲台機構によって台座224を支持している。また、台座駆動部225は、基台部21に対して台座224を垂直方向に移動させる伸縮機構を備えている。そして、台座駆動部225は、雲台機構及び伸縮機構を駆動するアクチュエータを備え、台座制御部116から入力される駆動指令信号に従って、台座224の水平面に対する傾きや水平面内における回転、及び、垂直方向の位置を調整する。
【0032】
[動作]
次に、立体物製造装置1の動作を説明する。
[立体物製造処理]
図4は、立体物製造装置1が実行する立体物製造処理の流れを説明するフローチャートである。
立体物製造処理は、立体物製造装置1において、立体物の製造を指示する操作が行われることに対応して開始される。
【0033】
ステップS1において、造形データ取得部111は、製造対象の立体物のCADデータを取得する。これに対応して、造形データ取得部111において、当該CADデータに基づいて、造形される立体物の内部構造を表すボクセルモデルが生成される。なお、このとき、造形データ取得部111は、製造対象の立体物のCADデータからSTL形式のデータを生成し、さらに、3Dプリンタヘッド222のツールパスを表すスライスデータとして、ボクセルモデルを生成する。
【0034】
ステップS2において、画像取得制御部112は、立体物製造処理において立体物の積層部分の画像を取得する条件(画像取得条件)の判定を行う。例えば、画像取得制御部112は、立体物の積層部分を撮像部223によって取得するタイミングとして、(1)スライスデータにおいて画像を撮像するためのデータ(コマンド)が配置されている場合に画像を取得する、(2)積層要素の所定層毎(例えば、1層毎あるいは3層毎等)に画像を取得する、(3)画像取得制御部112が立体物の形状を解析し、形状が複雑な部分が積層されたと判定したタイミングで画像を取得する、等のいずれの画像取得条件が設定されているかを判定する。なお、これらの画像取得条件のいずれを設定するかについては、立体物製造処理の開始に先立ち、ユーザが予め設定することが可能である。また、このとき、これらの画像取得条件のうちのいずれか1つ、または、複数を設定することが可能である。本実施形態においては、(2)積層要素の所定層毎(ここでは1層毎とする)に画像を取得する、という画像取得条件が設定されているものとする。
【0035】
ステップS3において、積層制御部113は、造形データ取得部111によって生成されたスライスデータ(ボクセルモデル)に基づいて、3Dプリンタヘッド222を駆動し、1層分の積層要素を積層する。
【0036】
ステップS4において、画像取得制御部112は、立体物の積層部分の画像を撮像部223によって取得するタイミング(画像取得タイミング)であるか否かの判定を行う。
画像取得タイミングである場合、ステップS4においてYESと判定されて、処理はステップS5に移行する。
一方、画像取得タイミングでない場合、ステップS4においてNOと判定されて、処理はステップS10に移行する。
【0037】
ステップS5において、画像取得制御部112は、立体物の積層部分の画像を撮像部223によって取得する。このとき、画像取得制御部112は、台座制御部114に対し、台座224の水平方向に対する傾きや垂直方向の位置等を変化させる指示を出力し、立体物の積層部分を複数の方向から撮像した画像を取得する。本実施形態においては、画像取得制御部112は、台座224の水平方向に対する傾きを変化させ、少なくとも2方向から撮像した立体物の積層部分の画像を取得するものとする。
【0038】
ステップS6において、画像取得制御部112は、ステップS5において取得した立体物の積層部分の画像を、当該立体物の積層部分を識別する情報(CADデータにおける位置を表す情報等)と対応付けて、品質データ記憶部72に記憶する。
ステップS7において、造形物評価部115は、製造対象の立体物の積層部分を評価するための部分評価処理を実行する。
【0039】
ステップS8において、造形物評価部54は、部分評価処理の結果が造形される立体物の品質が基準を満たしていることを示しているか否かの判定を行う。
部分評価処理の結果が造形される立体物の品質が基準を満たしていることを示すものである場合、ステップS8においてYESと判定されて、処理はステップS10に移行する。
一方、部分評価処理の結果が造形される立体物の品質が基準を満たしていることを示すものでない場合、ステップS8においてNOと判定されて、処理はステップS9に移行する。
【0040】
ステップS9において、造形物評価部54は、エラー停止処理を行い、立体物の積層を停止させると共に、立体物の品質が基準を満たしていない旨のメッセージを表示する。
ステップS9の後、立体物製造処理は終了する。
【0041】
ステップS10において、積層制御部113は、立体物の積層が全て終了したか否かの判定を行う。
立体物の積層が全て終了した場合、ステップS10においてYESと判定されて、処理はステップS11に移行する。
一方、立体物の積層が全て終了していない場合、ステップS10においてNOと判定されて、処理はステップS3に移行する。
【0042】
ステップS11において、画像取得制御部112は、立体物全体の画像を撮像部223によって取得する。本実施形態においては、画像取得制御部112は、台座224の水平方向に対する傾きを変化させ、少なくとも2方向から撮像した立体物全体の画像を取得するものとする。
【0043】
ステップS12において、画像取得制御部112は、ステップS11において取得した立体物全体の画像を、当該立体物を識別する情報と対応付けて、品質データ記憶部72に記憶する。
ステップS13において、造形物評価部115は、造形が完了した立体物全体を評価するための全体評価処理を実行する。
【0044】
ステップS14において、造形物評価部54は、全体評価処理の結果が造形された立体物の品質が基準を満たしていることを示しているか否かの判定を行う。
全体評価処理の結果が造形された立体物の品質が基準を満たしていることを示している場合、ステップS14においてYESと判定されて、立体物製造処理は終了する。なお、このとき、品質の基準を満たす立体物の製造が完了した旨のメッセージを表示することとしてもよい。
一方、全体評価処理の結果が造形された立体物の品質が基準を満たしていることを示していない場合、ステップS14においてNOと判定されて、処理はステップS15に移行する。
【0045】
ステップS15において、造形物評価部54は、エラー表示処理を行い、出力部15のディスプレイに、立体物の品質が基準を満たしていない旨のメッセージを表示する。
ステップS15の後、立体物製造処理は終了する。
造形処理が実行された結果、立体物の積層部分を識別する情報(CADデータにおける位置を表す情報等)と対応付けられた積層部分の画像のデータ、立体物を識別する情報と対応付けられた立体物全体の画像のデータ、部分評価処理の結果、及び、全体評価処理の結果が、当該立体物の品質を示すデータとして取得される。
【0046】
[部分評価処理]
次に、立体物製造処理のステップS7で実行される部分評価処理について説明する。
図5は、立体物製造処理のステップS7で実行される部分評価処理の流れを説明するフローチャートである。
【0047】
ステップS21において、造形物評価部115は、評価対象となる積層部分について、品質データ記憶部72から多視点の平面画像である撮像画像を読み出す。
ステップS22において、造形物評価部115は、多視点の平面画像である撮像画像を、3次元画像として合成する。
ステップS23において、造形物評価部115は、合成した3次元画像をボクセルモデルに変換する。
【0048】
ステップS24において、造形物評価部115は、ステップS23において変換されたボクセルモデルと、造形データ取得部111によって生成された同一の積層部分のボクセルモデルとを比較する。
ステップS25において、造形物評価部115は、評価対象となる積層部分について、3次元画像から変換されたボクセルモデルと、造形データ取得部111によって生成されたボクセルモデルとの一致度合いが基準とする条件(部分評価条件)を満たしているか否かを判定する。具体的には、評価対象となる積層部分について、3次元画像から変換されたボクセルモデルと、造形データ取得部111によって生成されたボクセルモデルとの一致度合いが部分評価条件よりも低い場合、造形される立体物の品質が基準を満たしていないと判定され、部分評価条件以上である場合、造形される立体物の品質が基準を満たしていると判定される。
【0049】
ステップS26において、造形物評価部115は、ステップS25における判定結果を部分評価処理の結果として、品質データ記憶部72に記憶する。
ステップS26の後、処理は立体物製造処理に戻る。
【0050】
[全体評価処理]
次に、立体物製造処理のステップS13で実行される全体評価処理について説明する。
図6は、立体物製造処理のステップS13で実行される全体評価処理の流れを説明するフローチャートである。
【0051】
ステップS31において、造形物評価部115は、立体物全体について、品質データ記憶部72から多視点の平面画像である撮像画像を読み出す。
ステップS32において、造形物評価部115は、多視点の平面画像である撮像画像を、3次元画像として合成する。
ステップS33において、造形物評価部115は、立体物全体について、合成された3次元画像と、造形データ取得部111によって取得されたCADデータとを比較する。
【0052】
ステップS34において、造形物評価部115は、立体物全体について、合成された3次元画像と、造形データ取得部111によって取得されたCADデータとの一致度合いが基準とする条件(全体評価条件)を満たしているか否かを判定する。具体的には、立体物全体について、合成された3次元画像と、造形データ取得部111によって取得されたCADデータとの一致度合いが全体評価条件よりも低い場合、造形された立体物の品質が基準を満たしていないと判定され、全体評価条件以上である場合、造形された立体物の品質が基準を満たしていると判定される。
ステップS35において、造形物評価部115は、ステップS34における判定結果を全体評価処理の結果として、品質データ記憶部72に記憶する。
ステップS35の後、処理は立体物製造処理に戻る。
【0053】
これらの処理により、立体物の造形時に、立体物の積層部分の多視点の平面画像が取得され、3次元画像として合成される。そして、CADデータから変換された当該積層部分のボクセルモデルと、合成された3次元画像から変換されたボクセルモデルとが比較され、立体物(積層部分)の品質を示すデータが取得される。
これにより、製造される立体物の積層部分毎に、リアルタイムに品質を評価することが可能となる。
【0054】
また、立体物の造形が完了した後、立体物全体の多視点の平面画像が取得され、3次元画像として合成される。そして、立体物全体の3次元画像が造形データ取得部111によって取得されたCADデータと、合成された3次元画像とが比較され、立体物(全体)の品質を示すデータが取得される。
これにより、積層部分毎の評価では表れない一方、製造された立体物全体に表れる品質を評価することが可能となる。
【0055】
このように、本実施形態における立体物製造装置1によれば、立体物の製造と製造される立体物の評価とを一体の装置によって効率的に行うことができる。
また、3Dプリンタによる製造物の品質評価をより適切に行うことが可能となる。
また、同一のCADデータから異なる立体物造形部20(3Dプリンタ)によって立体物を製造し、各製造物について上記評価を行うことにより、立体物造形部20の性能を評価することが可能となる。
【0056】
[変形例1]
上述の実施形態において、造形中の立体物における積層部分の立体的形状を取得する手段として、天板部22に備えられた撮像部223によって立体物の積層部分を複数の方向から撮像し、複数の撮像画像から立体的形状を構成する場合を例に挙げて説明した。即ち、上述の実施形態においては、天板部22に備えられた撮像部223と、台座224の水平方向に対する傾きや垂直方向の位置等を変化させる台座駆動部225とによって、立体物の積層部分の立体的形状を取得する手段を構成するものとした。
これに対し、立体物の積層部分の形状を取得するために、以下のような手段を用いることも可能である。
【0057】
(1)マイクロボロメータ(赤外線サーモグラフィ)
この場合、撮像部223に代えて、赤外線サーモグラフィカメラを天板部22に設置し、赤外線画像を取得することで実現できる。また、赤外線画像の取得時において、台座駆動部225による台座224の駆動は必ずしも必要ない。このように、赤外線サーモグラフィを用いることで、積層部分の輪郭をより明確に取得できる。
【0058】
(2)レーザ距離計(3次元レーザスキャナ)
この場合、撮像部223に代えて、レーザ距離計を天板部22に設置し、レーザによって立体物の積層部分等を走査して得られる画像を取得することで実現できる。また、レーザの走査時において、台座駆動部225による台座224の駆動は必ずしも必要ない。このように、レーザによる走査を行うことで、積層部分表面の正確な立体的形状を直接取得することができる。
【0059】
(3)フラットパネル型等のCTスキャナ
この場合、撮像部223に代えて、X線発生器を天板部22に設置し、フラットパネル型のX線検出器を台座224に設置してCT画像を取得することで実現できる。また、台座駆動部225による台座224の駆動は必ずしも必要ない。このように、CT画像を取得することで、積層部分の内部構造を取得することができる。
【0060】
(4)接触式形状測定装置
この場合、撮像部223に代えて、立体物に接触する接触子(探索針等のプローバー)を天板部22に設置し、接触子を降下させて立体物の積層部分表面に順次接触させ、接触子の接触位置を検出することにより、積層部分の立体的形状を表すデータを取得できる。この接触子は、例えば3Dプリンタヘッド222に設置することができる。また、接触子を立体物の積層部分表面に接触させる際に、台座駆動部225による台座224の駆動は必ずしも必要ない。このように、接触子による接触で積層部分表面の立体的形状を測定することで、簡易に積層部分の立体的形状を取得することができる。
【0061】
また、積層部分の立体的形状を取得するこれらの手段の複数を立体物製造装置1に備えておき、製造物の材料や品質評価の目的等に応じて、これらの手段を切り替えて用いることとしてもよい。例えば、立体物製造装置1の天板部22にツールチェンジャーを備えておき、これらの手段をツールチェンジャーによって切り替えて、積層部分の画像を取得することができる。
これにより、複数の造形材料を用いて立体物を製造する場合や、立体物の品質評価のために、立体物の部分毎に異なる種類の画像データが必要な場合等に、より適切な品質評価を行うことが可能となる。
【0062】
[変形例2]
上述の実施形態においては、立体物製造処理の工程として、立体物製造装置1による立体物の製造と共に、部分評価処理及び全体評価処理を実行するものとして説明したが、これに限られない。
例えば、立体物製造処理においては、立体物の積層部分の多視点の平面画像を取得し、当該立体物の積層部分を識別する情報(CADデータにおける位置を表す情報等)と対応付けると共に、立体物全体の多視点の平面画像を取得し、造形された立体物を識別する情報と対応付ける。この場合、立体物の積層部分及び全体についての多視点の平面画像が当該立体物と対応付けられた状態となり、この立体物の積層部分及び全体についての多視点の平面画像によって構成されるデータが、立体物の品質を示すオリジナルのデータ(以下、「評価用基本データ」と呼ぶ。)となる。評価用基本データを用いる場合、画像データの状態で立体物の積層部分及び全体と、立体物のCADデータとを比較して評価することができると共に、評価用基本データを適宜データ処理した結果(例えば、部分評価処理、全体評価処理あるいはその他の処理の結果)によって評価することが可能となる。
【0063】
そして、立体物製造装置1の運用者(製造者)以外の主体によって、評価用基本データを対象として、部分評価処理及び全体評価処理が実行されることにより、製造物である立体物の品質を評価することができる。
即ち、立体物の評価は、立体物の製造工程と切り離し、独立して行うことが可能であり、この場合、部分評価処理及び全体評価処理は、立体物製造装置1とは異なる情報処理装置等において任意のタイミングで実行されることとなる。なお、この場合に用いられる情報処理装置のハードウェア構成としては、
図1に示すデータ処理部10と同様の構成を採用することができる。
【0064】
図7は、立体物の製造と切り離して部分評価処理及び全体評価処理が行われる場合の処理(品質評価処理)の流れを説明するフローチャートである。
図7に示すように、品質評価処理が開始されると、情報処理装置は、ステップP1において、立体物の評価用基本データ(立体物の積層部分の多視点の平面画像)に基づいて、部分評価処理を実行する。
また、ステップP2において、情報処理装置は、立体物の評価用基本データ(立体物全体の多視点の平面画像)に基づいて、全体評価処理を実行する。
【0065】
このような処理により、製造物としての立体物について、製造者以外の主体によって、品質(設計との誤差等)を評価することが可能となる。
即ち、第三者による立体物の品質評価を行うことが可能となり、立体物の品質評価に、より高い客観性を持たせることが可能となる。
【0066】
[変形例3]
上述の実施形態において、部分評価処理あるいは全体評価処理等によって得られた立体物の評価結果を、当該立体物製造装置1のキャリブレーションデータとして用いることにより、次回以降の立体物の製造に反映させることができる。
具体的には、1つまたは複数の立体物の評価結果を、当該立体物製造装置1のキャリブレーションデータとして造形処理にフィードバックすることにより、当該立体物製造装置1における造形処理の補正を行う。
【0067】
即ち、立体物製造装置1に入力されたCADデータからボクセルモデルを生成する過程において、当該立体物製造装置1のキャリブレーションデータに基づく補正を行い、補正後のデータに基づいて、立体物を造形することができる。
これにより、立体物製造装置1において製造される立体物の品質をより高めることができる。
【0068】
以上のように構成される立体物製造装置1は、立体物造形部20と、画像取得制御部112によって制御される撮像部223と、造形物評価部115とを備えている。
立体物造形部20は、立体物の形状を表す3次元形状データに基づいて、立体物を構成する積層要素を積層することにより当該立体物を造形する。
撮像部223は、画像取得制御部112の制御によって、立体物造形部20によって造形されている立体物の積層部分の形状(平面形状または3次元形状)を表すデータを取得する。
造形物評価部115は、撮像部223によって取得された立体物の積層部分の形状を表すデータと、当該積層部分に対応する3次元形状データとを対応付けることにより、当該立体物の品質を示す品質情報を生成する。
これにより、製造される立体物の積層部分毎に、品質を評価することが可能となる。
したがって、3Dプリンタによる製造物の品質評価をより適切に行うことが可能となる。
【0069】
撮像部223は、立体物造形部20によって造形された立体物全体の形状を表すデータを取得する。
造形物評価部115は、撮像部223によって取得された立体物全体の形状を表すデータと、当該立体物全体の3次元形状データとを対応付けることにより、品質情報を生成する。
これにより、積層部分毎の評価では表れない一方、製造された立体物全体に表れる品質を評価することが可能となる。
したがって、3Dプリンタによる製造物の品質評価をより適切に行うことが可能となる。
【0070】
撮像部223は、立体物の形状を表すデータとして立体物の少なくとも一部における3次元形状を特定可能な画像を取得する。
これにより、製造されている立体物の3次元形状が取得されるため、より正確な品質を表す品質情報を生成することができる。
【0071】
撮像部223は、立体物造形部20が積層要素を造形する際に、予め設定された取得タイミングとなった場合、積層部分の形状を表すデータを取得する。
これにより、目的に応じて、適切なタイミングで積層部分の形状を表すデータを取得することが可能となる。
【0072】
造形物評価部115は、撮像部223によって取得された立体物の積層部分の形状を表すデータと、3次元形状データとを比較した結果に基づいて、品質情報を生成する。
これにより、設計された立体物と、実際に造形された立体物とを比較し、より正確な品質を表す品質情報を生成することができる。
【0073】
造形物評価部115は、撮像部223によって取得された立体物の積層部分の形状を表すデータに基づいて、当該立体物の積層部分を表すボクセルデータを生成し、生成した当該ボクセルデータを、立体物造形部20が当該立体物の積層部分を造形するために使用したボクセルデータと比較した結果に基づいて、品質情報を生成する。
これにより、立体物の3次元形状を、より容易かつ正確に比較することが可能となる。
【0074】
撮像部223は、複数方向から平面画像を撮像することにより立体物の積層部分の形状を表すデータとして複数の画像を取得し、取得した画像を合成することにより、立体物の形状を示す3次元画像を生成する。
これにより、簡単な構成で3次元画像を取得することが可能となる。
【0075】
立体物製造装置1は、レーザによって立体物を走査することにより、立体物の形状を取得する3次元レーザスキャナを含む。
これにより、積層部分表面の正確な立体的形状を直接取得することができる。
【0076】
立体物製造装置1は、X線発生器とX線検出器とを備え、CT画像を撮像するCTスキャナを含む。
これにより、積層部分の内部構造を取得することができる。
【0077】
立体物製造装置1は、赤外線画像を撮像するサーモグラフィカメラを含む。
これにより、積層部分の輪郭をより明確に取得できる。
【0078】
立体物製造装置1は、立体物に接触する接触子によって立体物の形状を表すデータを取得する形状測定装置を含む。
これにより、簡易に積層部分の立体的形状を取得することができる。
【0079】
立体物造形部20は、立体物の積層部分の品質が基準よりも低下した場合、立体物の積層を停止する。
これにより、品質を満たさない造形物の造形が継続されることを防止することができる。
【0080】
造形物評価部115は、立体物の積層部分の品質情報に基づいて、当該積層部分以降の立体物を造形するためのデータを補正する。
これにより、製造される立体物の品質をより高めることができる。
【0081】
造形物評価部115は、立体物の積層部分の品質情報に基づいて、造形を継続した場合に発生する可能性のあるエラーを予測する。
これにより、品質を満たさない造形物が造形されることを予め把握することが可能となる。
【0082】
立体物の品質情報には、当該立体物の高さの誤差、当該立体物の幅の誤差、当該立体物に発生している捩れの少なくともいずれかを含む。
これにより、積層部分毎の評価には表れ難い立体物全体の品質をより適確に評価することが可能となる。
【0083】
なお、本発明は、本発明の効果を奏する範囲で変形、改良等を適宜行うことができ、上述の実施形態に限定されない。
例えば、上述の実施形態において、立体物製造装置1は3軸のデルタ型3Dプリンタであるものとして説明したが、造形される立体物の画像を撮像することができる構造のものであれば、他の形式の3Dプリンタ(例えば、3Dプリンタヘッドが互いに直交するXYZ軸方向に移動する3軸型の3Dプリンタや、6軸のデルタ型3Dのプリンタ等)によって構成することも可能である。また、立体物製造装置1において用いられる造形材料としては、樹脂、電子部品、回路の配線材料等の他、金属製の立体物を造形する場合には、当該金属材料とすることができる。
【0084】
また、上述の実施形態においては、台座駆動部225によって台座224の水平面に対する傾きや水平面内における回転、及び、垂直方向の位置を調整可能な3軸型の3Dプリンタを例に挙げて説明したが、これに限られない。
即ち、造形される立体物の画像を異なる方向から撮像することができる構成であれば、台座224が固定された構造であっても、撮像部223を所定箇所に複数設置して立体物を撮像したり、撮像部223の位置及び向きを調整可能な機構を備えることにより、撮像部223が移動して向きを変化させながら立体物を撮像したりする構成としてもよい。
【0085】
また、立体物の評価のために立体物と対応付けて提供される評価用のデータは、立体物の製造時に取得された画像のみ(例えば、変形例2の評価用基本データ)であってもよいし、部分評価処理及び全体評価処理の結果を含むものであってもよいし、部分評価処理あるいは全体評価処理の一方のみであってもよい。また、全体評価処理の評価結果として、部分評価処理において取得された積層部分毎の誤差を累積した指標(欠損箇所の合計値や形状の歪みの積分値等)を含めることとしてもよい。さらに、部分評価処理の評価結果として、各積層部分におけるCADデータとの誤差の種類(欠損、不要な造形材料の付着、あるいは、位置ずれ等)を属性データとして付加しておき、より詳細な評価を行うために利用することとしてもよい。
【0086】
また、画像取得のタイミングは、形状が複雑な部分が積層されたと判定したタイミングの他、積層された造形材料の特性(造形材料の柔らかさ等)に基づいて判定することや、立体物の支持構造を解析することにより、支持の強度に基づいて判定すること等が可能である。
また、立体物製造装置1における動作モードとして、造形速度優先のモードと、造形精度優先のモードが存在する場合、画像取得のタイミングをこれらのモードに対応して設定することが可能である。例えば、画像取得のタイミングを積層要素の所定層毎とする場合、造形速度優先のモードであれば積層要素の5層毎、造形精度優先のモードであれば、積層要素の1層毎といった設定とすることができる。
【0087】
また、立体物製造処理において、部分評価処理の結果が造形される立体物の品質が基準を満たしていることを示すものでない場合、ステップS9でエラー停止処理を行うものとしたが、これに限られない。即ち、立体物の品質が基準を満たしている場合であっても、積層部分毎の設計値からの誤差(品質低下の要素)を積算し、造形を継続した場合、立体物の品質が基準を満たさなくなるか否かを予測することにより、エラーを予告することとしてもよい。また、立体物の品質が基準を満たしていることを示すものでない場合であっても、その後の造形によって品質をリカバリできる場合には、造形物評価部115が予定されていた造形のためのデータ(スライスデータ等)を補正することにより、立体物の品質が基準を満たすものになるよう調整することとしてもよい。
【0088】
また、画像取得制御部112による画像取得タイミングとして、スライスデータにおいて画像を撮像するためのデータ(コマンド)が配置されている場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。即ち、画像取得タイミングを示すデータ(コマンド)は、立体物の製造過程において関係する各種データに含めることができる。例えば、立体物を表すCADデータにおいて、設計者が立体物の製造時に品質の確認を要求する位置を指定しておき、その位置の部分の造形が完了したタイミングで、画像取得制御部112が画像を撮像することとしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態及び各変形例を適宜組み合わせて、本発明を実施することが可能である。
上述の実施形態における処理は、ハードウェア及びソフトウェアのいずれにより実行させることも可能である。
即ち、上述の処理を実行できる機能が立体物製造装置1に備えられていればよく、この機能を実現するためにどのような機能構成及びハードウェア構成とするかは上述の例に限定されない。
上述の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにネットワークや記憶媒体からインストールされる。
【0090】
プログラムを記憶する記憶媒体は、装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディア、あるいは、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク、光ディスク、または光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu−ray Disc(登録商標)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini−Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体は、例えば、プログラムが記憶されているROMやハードディスク等で構成される。