特許第6765670号(P6765670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765670
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】運搬台車および制動装置
(51)【国際特許分類】
   B62B 5/04 20060101AFI20200928BHJP
【FI】
   B62B5/04 C
   B62B5/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-171059(P2016-171059)
(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公開番号】特開2018-34726(P2018-34726A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】597144484
【氏名又は名称】ジー・オー・ピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117857
【弁理士】
【氏名又は名称】南林 薫
(72)【発明者】
【氏名】千田 豊治
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−298157(JP,A)
【文献】 特開2011−168182(JP,A)
【文献】 特開2013−124040(JP,A)
【文献】 特開2015−157514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬物を積載する台車本体部と、
前記台車本体部に取り付けられ、走行面を走行する走行部と、
前記台車本体部に対して着脱自在に取り付けられ、使用者の操作に応じて運搬台車を制動させる制動部と、を備える運搬台車であって、
前記台車本体部は、
複数のフレーム部と、
前記複数のフレーム部を結合するコーナ部材と、を有し、
前記制動部は、前記コーナ部材に着脱自在に取り付けられることを特徴とする運搬台車。
【請求項2】
前記制動部は、
前記走行部から離れて位置する操作部と、
前記操作部を回動自在に支持する回動支持部と、を有し、
前記回動支持部は、前記台車本体部に着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の運搬台車。
【請求項3】
前記制動部は、
使用者の操作に応じて前記走行面または前記走行部に接する摩擦部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の運搬台車。
【請求項4】
運搬物を積載する台車本体部を備える運搬台車を、使用者の操作に応じて制動させるための制動装置であって、
記台車本体部が有する、複数のフレーム部と、前記複数のフレーム部を結合するコーナ部材とのうち前記コーナ部材に対して着脱自在に取り付けられる着脱部を有することを特徴とする制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬台車および制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、制動機能を備えた運搬台車が知られている。特許文献1の手押し運搬車のブレーキ装置は、ブレーキシューが常時車輪に圧接しており、ハンドルに組み付けられたブレーキハンドルを上昇させることで棒線が引き上げられてブレーキシューが車輪から離れることで車輪が自在に転動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−31560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の手押し運搬車のブレーキ装置はハンドルを有することから運搬車を保管したり搬送したりする場合に嵩張ってしまうという問題がある。
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、運搬台車を保管したり搬送したりする場合に省スペース化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の運搬台車は、運搬物を積載する台車本体部と、前記台車本体部に取り付けられ、走行面を走行する走行部と、前記台車本体部に対して着脱自在に取り付けられ、使用者の操作に応じて運搬台車を制動させる制動部と、を備える運搬台車であって、前記台車本体部は、複数のフレーム部と、前記複数のフレーム部を結合するコーナ部材と、を有し、前記制動部は、前記コーナ部材に着脱自在に取り付けられることを特徴とする
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、運搬台車を保管したり搬送したりする場合に省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の運搬台車の構成を示す斜視図である。
図2】運搬台車の平面図である。
図3】運搬台車の底面図である。
図4】キャスターの分解斜視図である。
図5】キャスターの断面図である。
図6】運搬台車の側面図である。
図7】運搬台車の背面図である。
図8】運搬台車を前側に走行させている状態を示す側面図である。
図9】運搬台車を制動させている状態を示す側面図である。
図10】第2の実施形態の運搬台車の構成を示す斜視図である。
図11】第3の実施形態の運搬台車の構成を示す斜視図である。
図12】運搬台車の側面図である。
図13】運搬台車の背面図である。
図14】運搬台車を制動させている状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態に係る運搬台車および制動装置について図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
図1は運搬台車1の構成を示す斜視図である。図2は運搬台車1の平面図である。図3は運搬台車1の底面図である。各図では、運搬台車1の進行方向を前後方向として、前側をFr、後側をRr、右側をR、左側をLで示している。ただし、本実施形態の運搬台車1は、前側に限られず、前後左右を含め任意の方向に走行することができる。
【0009】
運搬台車1は、台車本体部20、走行部30、制動装置としての制動部60を備えている。
まず、台車本体部20について説明する。
台車本体部20は、複数のフレーム部等が連結して構成され、平面視で見て左右方向よりも前後方向に長く、一対の長辺と一対の短辺からなる矩形状である。図2および図3に示すように、台車本体部20は、前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21d、コーナ部材22、補強フレーム部(補強部)25a,25b,25c、載置板29等を有している。
【0010】
前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21dは、例えばアルミニウム合金製の角状の中空状パイプ等を用いることができる。また、コーナ部材22は、例えば押出し成形により形成されるアルミニウム合金製である。コーナ部材22は、上方に開口する挿入孔23と、下方を閉塞するストッパ部24とを有する。コーナ部材22の挿入孔23には、制動部60の後述する回動支持部61が挿入可能である。また、コーナ部材22の挿入孔23には、手押部材80が挿入可能である。挿入孔23に挿入された手押部材80の下端はストッパ部24によって支持される。手押部材80は、例えば、鉄製またはアルミニウム合金製で断面円形の直線状のパイプ、いわゆる単管パイプが適用できる。ここでは、前側のコーナ部材22に手押部材80が挿入され、後側のコーナ部材22に回動支持部61が挿入されている。
【0011】
前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、および、左側フレーム部21dは、コーナ部材22により4つの角部で結合されることで、矩形状の四方のフレーム枠を構成する。フレーム枠内は複数の補強フレーム部25a,25b,25cが前後左右方向に付き合わされ、リベット、ボルト、溶接等で接合されることで補強される。補強フレーム部25a,25b,25cは、例えばアルミニウム合金製の角状の中空状パイプや断面凹凸状のプレート等を用いることができる。ここでは、前後方向に長尺な2本の補強フレーム部25a,25bに対して左右方向に短尺な12本の補強フレーム部25cを接合することで、平面視で見て前後方向に3列、左右方向に4列に区分けされた複数の矩形状の空間26が形成される。
また、台車本体部20は、取付部材としての取付板27A,27Bを有する。取付板27A,27Bは、台車本体部20の下面にキャスター31A,31Bを取り付ける。具体的に、取付板27Aは、前側かつ左右方向両側の空間26および後側かつ左右両側の空間26を下側から閉塞するように、各フレーム部や各補強フレーム部にリベットやボルトを介して結合される。取付板27Aは、矩形状の角が切り欠かれた例えばアルミニウム合金製の金属板である。一方、取付板27Bは、前後方向の中央かつ左右方向の両側の空間26を下側から閉塞するように、各フレーム部や各補強フレーム部にリベットやボルトを介して結合される。取付板27Bは、矩形状の隣接する角が切り欠かれた例えばアルミニウム合金製の金属板である。
載置板29は、複数の空間26のうち取付板27A,27Bによって閉塞されていない空間26の上部に取り付けられる。載置板29は運搬物を積載するための平面状の板である。載置板29は、各フレーム部や各補強フレーム部にリベットやボルトを介して結合される。なお、載置板29が上部に位置していない空間26には、取付板27A,27Bをそれぞれ底面とする凹部が形成される。
【0012】
走行部30は、台車本体部20および運搬物の荷重を支持しながら走行面を走行する。走行部30は、複数のキャスター31A,31Bを有している。図3に示すように、走行部30は、台車本体部20の4隅に配置される4つのキャスター31Aと、前後方向の中央であって左右に離れて配置される2つのキャスター31Bとの6つのキャスターを有する。キャスター31Aは取付板27Aを介して台車本体部20に取り付けられる。キャスター31Aは台車本体部20の下面の4隅に配置されるので、運搬台車1を安定した状態で走行させることができる。また、キャスター31Bは取付板27Bを介して台車本体部20に取り付けられる。キャスター31Bは台車本体部20の前後方向の中央で左右に離れて配置されるので、運搬物が載置板29に偏って積載されても、運搬台車1が傾くことなく走行することができる。
キャスター31A,31Bは、鉛直軸である旋回軸Cの軸線回りに旋回可能である。また、キャスター31Aは、使用者の操作に応じてストッパを作用させたり、ストッパを解除したりすることができるストッパ付キャスターである。一方、キャスター31Bは、ストッパなしキャスターである。
【0013】
ここで、キャスター31Aについて図4および図5を参照して説明する。図4はキャスター31Aの分解斜視図である。図5はキャスター31Aの断面図である。
本実施形態のキャスター31Aは、車輪32、支持部36、旋回部38、ストッパペダル46等を有している。
車輪32は、内部にベアリングが内蔵されたホイール部33と、ホイール部33の外周に嵌め込まれたタイヤ部34とを有する。
【0014】
支持部36は、車軸35を介して車輪32を回転自在に支持する。支持部36は、車輪32を支持するフォーク部材37と、ストッパペダル46を揺動自在に支持するペダル保持部材43とを有する。
フォーク部材37は、例えば鋼板をプレス成形することによって形成される。フォーク部材37は、車輪32の両側にそれぞれ位置する一対の側壁37aと、一対の側壁37aを車輪32の上側で連結させた円形の天板37bとで一体的に形成される。一対の側壁37aにはそれぞれ車軸35が挿通される車軸孔37cと、ペダル保持部材43を支持するための軸孔37dが形成される。天板37bは旋回部38によって、旋回可能に保持される。天板37bの中央にはキャスター31Aの旋回軸Cと同軸上に挿通孔37eが形成される(図5を参照)。
【0015】
旋回部38は、旋回軸Cの軸回りに支持部36(具体的にはフォーク部材37の天板37b)を旋回可能に保持する。旋回部38は、上皿部材39、下皿部材40、ベアリング41、ベアリング42を有する。図5に示すように、フォーク部材37の天板37bには、上面にベアリング41、下面にベアリング42を安定して配置できるように旋回軸Cを中心に環状の収容溝が形成される。
上皿部材39は、例えば鋼板をプレス成形することによって形成される。上皿部材39は、天板37bよりもやや大きな円形に形成され、中央には旋回軸Cと同軸上に挿通孔39aが形成される。また、上皿部材39は、下面にベアリング41を安定して配置するために環状の収容溝39bが形成される。このように、環状の収容溝39bを形成することによって、逆に上皿部材39の上面には旋回軸Cを中心とした環状に沿って、断面視で円弧状の突出部39cが形成される。
【0016】
下皿部材40は、例えば鋼板をプレス成形することによって形成される。下皿部材40は、天板37bよりも小さな円形に形成され、中央には旋回軸Cと同軸上に挿通孔40aが形成される。また、下皿部材40は、上面にベアリング42を安定して配置するために環状の収容溝40bが形成される。
ここで、上皿部材39と下皿部材40とは、挿通孔39aおよび挿通孔40aの近辺で両者が相対的に回転しないように一体的に結合されている。したがって、フォーク部材37の天板37bは、上皿部材39および下皿部材40に対して、ベアリング41,42を介して旋回軸Cを中心に旋回可能である。
【0017】
図4に戻り、ペダル保持部材43は、例えば鋼板をプレス成形することによって形成される。ペダル保持部材43は、車輪32の両側にそれぞれ位置する一対の側壁43aと、一対の側壁43aを上側で連結した連結板43bとで一体的に形成される。一対の側壁43aは、連結板43bから二股状の第1支持部43cと第2支持部43dとが異なる方向に向かって延出して形成される。第1支持部43cの先端側には、フォーク部材37の車軸孔37cと連通し、車軸35が挿通される軸孔43eが形成される。一方、第2支持部43dの先端側には、フォーク部材37の軸孔37dと連通し、軸部材44が挿通される軸孔43fが形成される。
また、側壁43aの上部であって、連結板43bに近接した位置には、ストッパペダル46を揺動可能に支持するための支持孔43gが形成される。また、側壁43aの支持孔43gの下側には、略前後方向に長い長孔43hが形成される。
ペダル保持部材43が車軸35および軸部材44を介してフォーク部材37により支持された状態では、連結板43bは後部に向かうにしたがって下側に傾斜する。
【0018】
また、ペダル保持部材43は、軸孔43fを挿通する軸部材44を介して付勢部材としての板バネ45を支持している。板バネ45は、例えばステンレス鋼板をプレス成形することによって形成される。板バネ45は、軸部材44が挿通される支持孔45aと、支持孔45aからそれぞれ異なる方向に延出する一端部45bおよび他端部45cとが形成される。他端部45cの先端側には、一部が上方向に突出する突出部45dが板幅方向に沿って形成される。
【0019】
ストッパペダル46は、例えば鋼板をプレス成形することによって形成される。ストッパペダル46は、ペダル本体46aと、ペダル本体46aから一体で延出する操作片46bとを有する。ペダル本体46aは、車輪32の両側にそれぞれ位置する一対の側壁46cと、一対の側壁46cを上部で連結した連結板46dとで一体的に形成される。進行方向に沿ってキャスター31Aを見た場合に、ストッパペダル46は車輪32と重なり合う位置に配置される。ストッパペダル46は連結板46dをペダル保持部材43の連結板43bと重なるようにして、ペダル保持部材43内に位置させることができる。また、側壁43aの前部かつ上部には、ペダル保持部材43の支持孔43gと連通し、軸部材47が挿通される揺動孔46eが形成される。したがって、ストッパペダル46は軸部材47を中心にしてペダル保持部材43に対して上下に揺動可能である。また、側壁46cの揺動孔46eの下側には、ペダル保持部材43の長孔43hと連通し、軸部材48が挿通される軸孔46fが形成される。ストッパペダル46が上下に揺動する場合には軸部材48も連動してペダル保持部材43の長孔43h内を移動する。なお、軸部材48は、板バネ45の他端部45cの上面に常に接している。操作片46bは、略板状であって、使用者の足等でストッパペダル46の上下の揺動が操作される。操作片46bは、ペダル本体46aの連結板46dの後部から斜めに延出して形成される。操作片46bには、使用者が一目で認識できるように色が施されている。
【0020】
ここで、キャスター31Aについて、ストッパを解除している状態からストッパを掛ける状態までの各部材の動作について説明する。
図5に示すように、ストッパを解除した状態では、ストッパペダル46は軸部材47を中心として上昇した位置にある。ここでは、板バネ45の一端部45bが天板37bに対して接し、他端部45cが板バネ45自身の付勢力によって軸部材48のみに接している。すなわち、車輪32は何れの部材にも接触していないために、車輪32が自由に回転できる、ストッパが解除された状態である。
【0021】
一方、使用者が足でストッパペダル46の操作片46bを下側に踏み込むように操作することで、ストッパペダル46は板バネ45の付勢および各部材間の摩擦力に抗して軸部材47を中心に下側に向かって揺動する。このとき、ストッパペダル46の移動に伴って軸部材48は板バネ45の突出部45dに向かって長孔43h内を移動する。
軸部材48が、板バネ45の突出部45dの頂点を乗り越えるほど長孔43h内を移動することで、板バネ45は軸部材48によって車輪32側に向かって押し込まれる。したがって、板バネ45の下面が車輪32の外周面を強固に押圧するために、車輪32が回転できない、ストッパが掛けられた状態となる。また、軸部材48は板バネ45の突出部45dの頂点を乗り越えた状態で保持される。
ここでは、キャスター31Aについて説明したが、キャスター31Bはキャスター31Aのうちストッパに関する部材が省略された構成である。具体的には、キャスター31Bは、キャスター31Aから、ペダル保持部材43、軸部材44、板バネ45、ストッパペダル46、および、軸部材48を省略した構成である。したがって、キャスター31Bは、キャスター31Aと同様にフォーク部材37の天板37bを介して旋回軸Cを中心に旋回可能であるが、ストッパを掛けることができない。
【0022】
なお、キャスター31A,31Bを取付板27A,27Bに結合する場合には、取付板27A,27Bの略中央に形成された挿通孔にボルトを挿通させた後、取付板27A,27Bの挿通孔、上皿部材39の挿通孔39a、天板37bの挿通孔37e、下皿部材40の挿通孔40aの順に挿通させ、フォーク部材37内でナットを螺合させることで結合する。
また、キャスター31Aが取付板27Aを介して台車本体部20に取り付けられた状態では、図2に示す平面視において、後側の2つのキャスター31Aのストッパペダル46が台車本体部20の後端から露出する。したがって、使用者は容易にストッパを掛けたり解除したりする操作を行うことができる。
【0023】
次に、制動部60について図1図6図7を参照して説明する。
図6は運搬台車1の側面図である。図7は運搬台車1を後側から見た背面図である。
制動部60は、運搬台車1の走行方向に対して台車本体部20の後側に着脱自在に取付けられる。制動部60は、使用者の操作によって走行面と接することで走行面との間で摩擦が生じ、運搬台車1を制動する。制動部60は、回動支持部61と、回動部66と、摩擦部71と、操作部73とを有する。
【0024】
回動支持部61は、摩擦部71および操作部73を回動部66を介して回動自在に支持する。本実施形態の回動支持部61は、第1の回動支持部材62aと、第2の回動支持部材62bとを有する。第1の回動支持部材62aと第2の回動支持部材62bとは、左右対称な同一構造であるため、ここでは、第1の回動支持部材62aを中心に説明する。
第1の回動支持部材62aは、例えば鉄製またはアルミニウム合金製等であって断面円形のパイプ状の部材である。第1の回動支持部材62aは、下端がコーナ部材22の挿入孔23に挿入可能である。第1の回動支持部材62aを挿入孔23に挿入することで、第1の回動支持部材62aはコーナ部材22のストッパ部24によって支持される。このとき、第1の回動支持部材62aは、挿入孔23の内周面に接することから、挿入孔23との間でガタ付きが少ない状態で立設する。すなわち、第1の回動支持部材62aの下端は、台車本体部20に対して着脱自在に取り付けるための着脱部として機能する。
【0025】
また、第1の回動支持部材62aは、下側であって下端から所定の高さの位置に軸支部材63がボルト等で固定されている。軸支部材63は、第1の回動支持部材62aから後側に向かって延出する。軸支部材63は、例えば鉄製またはアルミニウム合金製等の板状の部材を湾曲して形成される。軸支部材63は、回動部66を左右方向に沿った軸線回りに回動自在に支持する。
また、第1の回動支持部材62aには、軸支部材63よりも高い位置であって第1の回動支持部材62aの右側の外周面にガイド部材64がボルト等で固定されている。ガイド部材64は、前後方向に沿って開口する図示しないガイド孔を有する。ガイド部材64は、例えば鉄製またはアルミニウム合金製等の板状の部材を折り曲げて形成される。ガイド部材64は、回動部66の後述する被ガイド部材70をガイド孔によりガイドすることで回動部66が左右に振れることなく円滑に回動させる。
また、第1の回動支持部材62aには、上端よりも低い位置であって後側の外周面に当接部65がボルトや接着剤等で固定されている。当接部65は、例えばゴムや合成樹脂等で形成される。当接部65は、回動部66が第1の回動支持部材62aに向かって回動されたときに回動部66を当接させて衝撃を緩和させたり、回動部66が当接した状態から滑らないように保持したりする。
【0026】
回動部66は、使用者による操作部73を介した操作に応じて回動支持部61を介して回動する。本実施形態の回動部66は、第1の回動部材67aと、第2の回動部材67bとを有する。第1の回動部材67aと第2の回動部材67bとは、左右対称な同一構造であるため、ここでは、第1の回動部材67aを中心に説明する。
第1の回動部材67aは、例えば鉄製またはアルミニウム合金製等であって断面円形のパイプ状の部材である。ここでは、第1の回動部材67aは、第1の回動支持部材62aと長さが異なる同一の部材を用いることができる。
【0027】
また、第1の回動部材67aには、下端にブラケット部材68がボルト等で固定されている。ブラケット部材68は、第1の回動部材67aの下端から後側かつ下側に向かって延出する。ブラケット部材68は、例えば鉄製またはアルミニウム合金製等の板状の部材をコ字状に折り曲げて形成される。ブラケット部材68は、摩擦部71を第1の回動部材67aに取り付ける。
また、第1の回動部材67aは、下側であって下端から所定の高さの位置に回動軸69が固定される。回動軸69は、第1の回動部材67aを左右方向に貫通して、軸支部材63によって両端が支持される。したがって、第1の回動部材67aは、回動軸69および軸支部材63を介して、第1の回動支持部材62aに対して回動可能である。
また、第1の回動部材67aには、回動軸69よりも高い位置に被ガイド部材70がボルト等で固定されている。被ガイド部材70は、第1の回動部材67aの右側の外周面から前側に向かって延出し、ガイド部材64のガイド孔に挿入される。被ガイド部材70は、例えば鉄製またはアルミニウム合金製等で板状に形成される。図6に示す側面視において、被ガイド部材70は回動軸69を中心とする円と略同一の曲率半径になるように湾曲している。
【0028】
摩擦部71は、回動部66の回動によって走行面と接する。本実施形態の摩擦部71は、第1の摩擦部材72aと、第2の摩擦部材72bとを有する。第1の摩擦部材72aと第2の摩擦部材72bとは、同一構造であるため、ここでは、第1の摩擦部材72aを中心に説明する。
本実施形態の第1の摩擦部材72aは円柱状であって、軸線が左右方向に沿った状態になるようにブラケット部材68の下端に固定される。また、第1の摩擦部材72aは、下側がブラケット部材68の下端から露出されており、露出された外周面が走行面と接地する摩擦面として機能する。第1の摩擦部材72aはブラケット部材68に対して回転できないように固定されているので、第1の摩擦部材72aが走行面と接したときは回転することなく摩擦面と走行面との間で摩擦が生じる。第1の摩擦部材72aは、コンクリート等の走行面との間で摩擦が生じやすい材質、例えばウレタンゴム等で形成される。
【0029】
操作部73は、運搬台車1を制動させたいときに使用者が操作する。操作部73は、例えば鉄製またはアルミニウム合金製等であって断面円形のパイプ状の部材である。操作部73は、走行部30や台車本体部20よりも上側に離れて位置する。具体的には、操作部73は、回動部66の上側であって、第1の回動部材67aの後側上端と第2の回動部材67bの後側上端とに亘って左右に架け渡された状態でボルト等で固定される。したがって、操作部73を操作することで、第1の回動部材67aと第2の回動部材67bとを連動させることができる。また、本実施形態の操作部73は、長手方向、すなわち左右方向の長さが台車本体部20の短辺の長さと略同一の長さである。したがって、操作部73を固定している第1の回動部材67aおよび第2の回動部材67bの左右の間隔も、台車本体部20の短辺の長さと略同一の長さである。より具体的には、第1の回動部材67aおよび第2の回動部材67bの左右の間隔は、台車本体部20の後側の2つのコーナ部材22の間隔と同一である。したがって、第1の回動部材67aを回動自在に支持する第1の回動支持部材62a、および、第2の回動部材67bを回動自在に支持する第2の回動支持部材62bの左右の間隔も後側の2つのコーナ部材22の間隔と同一である。同様に、第1の回動部材67aに固定される第1の摩擦部材72a、および、第2の回動部材67bに固定される第2の摩擦部材72bの左右の間隔も後側の2つのコーナ部材22間の間隔と同一である。
【0030】
使用者が制動部60を台車本体部20に取り付ける場合には、第1の回動支持部材62aの下端と第2の回動支持部材62bの下端とをそれぞれ、後側に配置された2つのコーナ部材22の挿入孔23に挿入することで取り付けることができる。一方、第1の回動支持部材62aと第2の回動支持部材62bをそれぞれコーナ部材22の挿入孔23から引き抜くことで、制動部60を台車本体部20から取り外すことができる。したがって、使用者は必要に応じて制動部60を台車本体部20に対して着脱させることができる。
【0031】
次に、台車本体部20に対して制動部60を取り付けたときの位置関係について図6および図7を参照して説明する。なお、図6および図7では、回動部66が鉛直状態としている。
図6の側面図に示すように、制動部60のうち回動部66、摩擦部71および操作部73は台車本体部20から後側に離れて位置する。したがって、回動部66の回動支点となる回動軸69も台車本体部20から後側に離れて位置する。また、摩擦部71は、回動軸69よりも後側に位置する。このように、制動部60のうち回動部66、摩擦部71および操作部73が台車本体部20から後側に離れていることで、台車本体部20に積載された運搬物と干渉せず、積載量の減少を防止することができる。なお、回動部66が鉛直状態では、摩擦部71は走行面から上側に離れている。したがって、図6の状態で、運搬台車1を走行させても摩擦部71と走行面との間に摩擦が生じることがないために運搬台車1は制動しない。
【0032】
また、図6の側面図に示すように、摩擦部71の摩擦面から回動軸69までの鉛直方向の距離をL1とし、回動軸69から操作部73までの鉛直方向の距離をL2とすると、L1<L2の関係である。このように、L2をL1よりも大きくすることで、梃子の原理により操作部73に操作した力を摩擦部71に大きく作用させることができる。一方、L2を長くしすぎると操作部73に対する操作がし難い。したがって、L1:L2の関係は、例えば1:2〜1:3であることが好ましい。なお、操作部73に対して容易に操作するためには、走行面から操作部73までの鉛直方向の距離は、例えば800mm〜1200mmであることが好ましい。
また、回動支持部61の上端は、回動部66の上端あるいは操作部73の上端よりも鉛直方向に高く位置している。ここで、回動部66の上端あるいは操作部73の上端から回動支持部61の上端までの鉛直方向の距離をL3とすると、L3は例えば100mm〜200mmであることが好ましい。このように、回動支持部61の上端を、回動部66の上端あるいは操作部73の上端よりも鉛直方向に高くすることで、使用者は回動支持部61の上端を持つことができる。したがって、使用者は操作部73を操作しないときには回動支持部61を手押部材として用いることができ、回動支持部61を手で持って運搬台車1を走行させることができる。
【0033】
また、図7の背面図に示すように、第1の摩擦部材72aおよび第2の摩擦部材72bは、左右に離れた位置であって、台車本体部20の左右方向の幅に収まっている。したがって、運搬台車1が幅方向に大きくなることがない上に、左右に離した第1の摩擦部材72aおよび第2の摩擦部材72bによって安定して運搬台車1を制動させることができる。
また、第1の摩擦部材72aは右側のキャスター31Aよりも右側であって、台車本体部20の右端と重なる位置に配置される。また、第2の摩擦部材72bは左側のキャスター31Aよりも左側であって、台車本体部20の左端と重なる位置に配置される。このように、第1の摩擦部材72aおよび第2の摩擦部材72bが、キャスター31Aと重なり合わず、左右のキャスター31Aからそれぞれ左右に離れているために、使用者は第1の摩擦部材72aおよび第2の摩擦部材72bに干渉されずにキャスター31Aのストッパペダル46を容易に踏み込むことができる。
【0034】
次に、制動部60による具体的な動作について図8および図9を参照して説明する。
図8は運搬台車1を前側に走行させている状態を示す側面図である。
運搬台車1を前側に向かって走行させる場合、使用者は操作部73に手を掛けた状態で前側に向かって押すように操作する。操作部73が押されることで、操作部73を固定している回動部66は上端が回動軸69を中心にして前側に向かって回動する(図8に示す矢印方向A1を参照)。回動部66の上端は回動支持部61に固定された当接部65に当接する。
同時に、回動部66の下端にブラケット部材68を介して固定された摩擦部71は、回動軸69を中心にして走行面から離れる方向に向かって回動する(図8に示す矢印方向A2を参照)。したがって、摩擦部71と走行面との間に摩擦が生じない。
使用者は操作部73を継続して前側に向かって押すことで、当接部65および回動支持部61を経由して台車本体部20に力が伝達されるために、キャスター31Aおよびキャスター31Bの車輪32が回転して運搬台車1が前側に向かって走行する。
【0035】
図9は前側に走行している運搬台車1を制動させている状態を示す側面図である。
前側に向かって走行している運搬台車1を制動させたい場合、使用者は操作部73に手を掛けた状態で後側に向かって引くように操作する。操作部73が引かれることで、操作部73を固定している回動部66は上端が回動軸69を中心にして後側に向かって回動する(図9に示す矢印B1を参照)。このとき、回動部66に固定された被ガイド部材70がガイド部材64によってガイドされることで円滑に回動する。
同時に、回動部66の下端にブラケット部材68を介して固定された摩擦部71は、回動軸69を中心にして走行面に近づく方向に向かって回動する(図9に示す矢印方向B2を参照)。したがって、摩擦部71の摩擦面が走行面と接して、摩擦面と走行面との間に摩擦が生じることで、運搬台車1は制動されて減速する。
【0036】
また、使用者は操作部73を引く力を強弱させることで制動力を調整することができる。使用者の操作部73を引く力が弱いと、摩擦部71は走行面に対して弱い力で押付けられることから摩擦部71の摩擦面と走行面との摩擦が小さいために、制動力も小さくなる。一方、使用者の操作部73を引く力が強いと、摩擦部71は走行面に強い力で押付けられることから摩擦部71の摩擦面と走行面との摩擦が大きいために、制動力も大きくなる。このように、使用者自身で、容易に制動力を調整することができる。このとき、摩擦部71の摩擦面から回動軸69までの鉛直方向の距離L1と、回動軸69から操作部73までの鉛直方向の距離L2との比が1:2〜1:3である。したがって、摩擦部71の微妙な移動量を操作部73の大きな操作量で調整することができ、容易に制動力を調整することができる。
なお、使用者は制動部60を用いる必要がない場合には、回動部66が不用意に回動して摩擦部71が走行面と接しないように、回動部66を回動支持部61に対して結合しておくことが好ましい。具体的には、図8に示すように、摩擦部71が走行面から離れた状態になるように回動部66と回動支持部61とを近接した状態に保持するように両者を固定バンド75で結合する。
【0037】
このように、本実施形態によれば、制動部60は台車本体部20に対して着脱自在に取り付け可能であるために、使用者は台車本体部20から制動部60を取り外すことで運搬台車1を保管したり搬送したりする場合に省スペース化を図ることができる。特に、制動部60を取り外した状態の運搬台車1では、上側に同じ構成の運搬台車1を容易に積み重ねることができる。具体的には、下側の台車本体部20のうち、取付板27A,27Bを底面とする空間26内にそれぞれ、上側の台車本体部20のキャスター31A,31Bが収容するように積み重ねることができる。したがって、制動部60を取り外した状態の運搬台車1を複数段に積み重ねることができ、更に省スペース化を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、手押部材80および制動部60は何れも台車本体部20のコーナ部材22に対して取り付けられる。すなわち、手押部材80および制動部60を取り付けるための取付部を共通化させている。したがって、台車本体部20側では別途、制動部60を着脱自在に取り付けるための取付部を設ける必要がないために、運搬台車1の構成を簡略化することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、運搬台車1は使用者の操作に応じて走行面と接する摩擦部71を有することから、比較的に簡単な構造で運搬台車1を制動させることができる。
また、本実施形態によれば、摩擦部71は操作部73が運搬台車1の走行方向と逆方向に移動することで回動部66を介して回動され、走行面に向かって移動する。このように、運搬台車1を制動させる場合に、運搬台車1が走行している方向に対して制止させる方向と同一方向に操作部73を操作すればよく、使用者は直感で制動させる操作を行うことができる。
【0040】
<第2の実施形態>
図10(a)は、第2の実施形態の制動部90を有する運搬台車2の一部を示す斜視図である。なお、第1の実施形態と同様の構成は同一符号を付してその説明を省略する。
制動部90は、回動支持部91を有する。本実施形態の回動支持部91は、第1の回動支持部材92aと第2の回動支持部材92bとを有する。第1の回動支持部材92aと第2の回動支持部材92bとは、左右対称な同一構造であるため、ここでは、第1の回動支持部材92aを中心に説明する。
第1の回動支持部材92aは、例えばアルミニウム合金製等であって断面円形のパイプ状の部材であって、第1の実施形態における第1の回動支持部材62aよりも長さが短い部材である。第1の回動支持部材92aの下端を挿入孔23に挿入することで、第1の回動支持部材92aが立設する。このとき、第1の回動支持部材92aの上端は、第1の回動部材67aの上端あるいは操作部73の上端よりも鉛直方向に低く位置している。このように、第1の回動支持部材92aの長さを短くすることで、制動部90全体の大きさを小型化することができる。
【0041】
また、第1の回動支持部材92aは、第1の実施形態の第1の回動支持部材62aよりも小径な断面円形の部材である。第1の回動支持部材92aは、強度を向上させるために内部が十字状に補強されている。また、第1の回動支持部材92aの下端には、ボルトやリベット等で補強部材93が固定される。補強部材93は、第1の回動支持部材92aの強度を補強すると共に、第1の回動支持部材92aをコーナ部材22の挿入孔23に挿入したときに挿入孔23との間でガタ付きを抑制する。補強部材93は、例えばアルミニウム合金製等である。したがって、補強部材93は、台車本体部20に対して着脱自在に取り付けるための着脱部として機能する。
図10(b)は、第1の回動支持部材92aの外周面に補強部材93が結合された状態を示す断面図である。補強部材93は、外周面のうち一部が径方向に向かって突出する複数(ここでは2つ)の膨出部94a,94bを有する。膨出部94a,94bは緩やかな傾斜部95を経て径方向に突出する。
【0042】
図10(c)は、コーナ部材22の挿入孔23の形状を示す図である。図10(c)には、挿入孔23に挿入される補強部材93を二点鎖線で示している。挿入孔23は、平面101a,101b,101cと、補強部材93の円形の曲率半径と略同一の円弧面101dとにより囲まれている。また、挿入孔23には、膨出部94a,94bの挿入を許容する凹部としての空間102a,102bを有する。したがって、膨出部94a,94bを空間102a,102bに合わせて、第1の回動支持部材92aに結合された補強部材93を挿入することで、制動部90が所定の位置に位置決めされる。
このように、本実施形態によれば、回動支持部91は補強部材93を有することから、回動支持部91の強度を向上させることができる。また、補強部材93により回動支持部91をコーナ部材22の挿入孔23に挿入したときに挿入孔23との間でガタ付きを抑制することができ、操作部73を介した操作が損失なく摩擦部71に伝達される。
【0043】
<第3の実施形態>
図11は、第3の実施形態の制動部110を有する運搬台車3を示す斜視図である。なお、第1の実施形態と同様の構成は同一符号を付してその説明を省略する。
制動部110は、回動支持部111と、回動部116と、摩擦部121と、操作部73とを有する。
回動支持部111は、摩擦部121および操作部73を回動部116を介して回動自在に支持する。本実施形態の回動支持部111は、第1の回動支持部材112aと、第2の回動支持部材112bと、持手部材112cとを有する。第1の回動支持部材112aと第2の回動支持部材112bとは、左右対称な同一構造であるため、ここでは、第1の回動支持部材112aを中心に説明する。第1の回動支持部材112aは、第1の実施形態の第1の回動支持部材62aと略同様の構成である。すなわち、第1の回動支持部材112aは、下端が台車本体部20に対して着脱自在に取り付けるための着脱部として機能する。また、第1の回動支持部材112aは、軸支部材63および当接部65が固定されている。また、第1の回動支持部材112aは、後述する第2の回動部材117aを第1の回動支持部材112a側に付勢する付勢部材としてのスプリング113の一端が接続されている。持手部材112cは、使用者が運搬台車3を走行させるときに手で持つための部材である。持手部材112cは、第1の回動支持部材112aの後側上端と第2の回動支持部材112bの後側上端とに亘って左右に架け渡された状態でボルト等で固定される。
【0044】
回動部116は、使用者による操作部73を介した操作に応じて回動支持部111を介して回動する。本実施形態の回動部116は、第1の回動部材117aと、第2の回動部材117bとを有する。第1の回動部材117aと第2の回動部材117bとは、左右対称な同一構造であるため、ここでは、第1の回動部材117aを中心に説明する。第1の回動部材117aは、第1の実施形態の第1の回動部材67aと略同様の構成である。したがって、第1の回動部材117aは、下側であって下端から所定の高さの位置に回動軸69が固定される。また、第1の回動部材117aには、回動支持部材112aに接続されているスプリング113の他端が接続される。更に、第1の回動部材117aには、下端にブラケット部材118がボルト等で固定されている。ブラケット部材118は、第1の回動部材117aの下端から前側に向かって延出する。ブラケット部材118は、例えば鉄製またはアルミニウム合金製等の板状の一対の部材で形成される。ブラケット部材118は、摩擦部121を第1の回動部材117aに取り付ける。
【0045】
摩擦部121は、回動部116の回動によって走行部30、具体的にはキャスター31Aの車輪32の外周面と接する。本実施形態の摩擦部121は棒状であって、例えば丸鋼や丸パイプ等が用いられる。摩擦部121は、第1の回動部材117aから第2の回動部材117bまでに亘る長さを有する。また、摩擦部121は、軸線が左右方向に沿った状態になるように第1の回動部材117aおよび第2の回動部材117bの各ブラケット部材118を貫通させた状態に固定される。このとき、各ブラケット部材118は摩擦部121を一対の板材でそれぞれ支持することから摩擦部121の自重による撓みを低減した状態で固定することができる。摩擦部121は、左右のブラケット部材118の間であって、かつキャスター31Aの車輪32の外周面と対向する面が、車輪32と接地する摩擦面として機能する。摩擦部121は各ブラケット部材118に対して回転できないように固定されているので、摩擦部121が車輪32と接したときは回転することなく摩擦面と車輪32との間で摩擦が生じる。
【0046】
使用者が制動部110を台車本体部20に着脱する場合には、第1の実施形態と同様に、第1の回動支持部材62aの下端と第2の回動支持部材62bの下端とをそれぞれ、後側に配置された2つのコーナ部材22の挿入孔23に挿入したり、引き抜いたりすることで行う。このとき、制動部110と、走行部30のキャスター31Aとの間ではワイヤ等によって接続されていない構造であるために、使用者は制動部110を台車本体部20に対して容易に着脱することができる。
【0047】
次に、台車本体部20に対して制動部110を取り付けたときの位置関係について図12および図13を参照して説明する。
図12の側面図に示すように、制動部110のうち回動部116および操作部73は台車本体部20から後側に離れて位置する。したがって、回動部116の回動支点となる回動軸69も台車本体部20から後側に離れて位置する。一方、摩擦部121は、回動軸69よりも前側であって、台車本体部20の下側に位置する。すなわち、摩擦部121は、キャスター31Aの車輪32に近接している。更に、摩擦部121はキャスター31Aのうちストッパを掛けた状態および解除した状態の何れの場合であっても、ストッパペダル46と接触しないように、ストッパペダル46(具体的には操作片46b)の下側に位置している。この位置は、車輪32の車軸35よりも低い位置である。したがって、使用者は摩擦部121に干渉されずにキャスター31Aのストッパペダル46を容易に踏み込むことができる。
なお、回動部116が鉛直状態では、摩擦部121は車輪32の外周面から離れている。したがって、図12の状態で、運搬台車3を走行させても摩擦部121と車輪32との間に摩擦が生じることがないために運搬台車3は制動しない。
【0048】
また、図12の側面図に示すように、摩擦部121から回動軸69までの鉛直方向の距離をL1とし、回動軸69から操作部73までの鉛直方向の距離をL2とし、回動部116の上端あるいは操作部73の上端から回動支持部111の上端までの鉛直方向の距離L3とする。この場合、L1〜L3は、第1の実施形態と同様である。
また、図13の背面図に示すように、第1の回動部材117aおよび第2の回動部材117bは、台車本体部20の左右方向の幅に収まっている。したがって、運搬台車3が幅方向に大きくなることがない。また、摩擦部121は、左右のキャスター31Aの車輪32と重なる位置に配置されている。したがって、摩擦部121は、左右のキャスター31Aの車輪32の両方に対して同時に制動させることができる。
【0049】
次に、制動部110による具体的な動作について図14を参照して説明する。
図14は前側に走行している運搬台車3を制動させている状態を示す側面図である。
前側に向かって走行している運搬台車3を制動させたい場合、使用者は操作部73に手を掛けた状態でスプリング113の付勢に抗して後側に向かって引くように操作する。このとき、使用者は一方の手で操作部73を引き、他方の手で持手部材112cを持っておくことで操作部73を引く操作を安定して行うことができる。操作部73が引かれることで、操作部73を固定している回動部116は上端が回動軸69を中心にして後側に向かって回動する(図14に示す矢印C1を参照)。
同時に、回動部116の下端にブラケット部材118を介して固定された摩擦部121は、回動軸69を中心にして左右のキャスター31Aの車輪32に近づく方向に向かって回動する(図14に示す矢印方向C2を参照)。したがって、摩擦部121の摩擦面が車輪32の外周面と接して、摩擦面と外周面との間に摩擦が生じることで、運搬台車3は制動されて減速する。
なお、使用者は操作部73を引く力を強弱させることで制動力を調整することができる構成は、第1の実施形態と同様である。すなわち、摩擦部121の微妙な移動量を操作部73の大きな操作量で調整することができ、容易に制動力を調整することができる。
【0050】
このように、本実施形態によれば、運搬台車3は使用者の操作に応じて走行部30と接する摩擦部121を有することから、走行面に影響を受けることなく運搬台車3を制動させることができる。
また、本実施形態によれば、制動部110の摩擦部121は、台車本体部20の後側に離れた位置からキャスター31aの車輪32に向かって近接している。したがって、制動部110は、走行部30と接続されていないことから、使用者は制動部110を台車本体部20に対して容易に着脱することができる。
【0051】
以上、本発明を上述した実施形態と共に説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能であり、各実施形態の構成を組み合わせてもよい。
上述した実施形態では、制動部60、90、110をコーナ部材22に挿入することで台車本体部20に着脱させる場合について説明したが、この場合に限られず、制動部60、90、110を異なる方式で着脱させてもよい。例えば、制動部60、90、110を、フレーム部や補強フレーム部に対して着脱させてもよく、台車本体部20側から突出する突出部を回動支持部61、91、111の各回動支持部材内(パイプ内)に挿入すること等で着脱させてもよい。
上述した実施形態では、制動部60、90、110および台車本体部20の少なくとも何れかは、制動部60、90、110が台車本体部20から取り外しできないようにロック機構を設けてもよい。ロック機構は、ワンタッチでロックできる機能であることが好ましい。
【0052】
また、上述した実施形態では、運搬台車1,2,3が6つのキャスター31A,31Bを有する場合について説明したが、この場合に限られず、少なくとも4隅のキャスター31Aを有していればよい。また、上述した実施形態では、台車本体部20が載置板29を有する場合について説明したが、この場合に限られず、載置板29を省略してもよい。また、上述した実施形態では、前側の2つのコーナ部材22に手押部材80を挿入する場合について説明したが、挿入しなくてもよい。
【0053】
また、第1の実施形態では、第1の摩擦部材72aおよび第2の摩擦部材72bが円柱状である場合について説明したが、この場合に限られず、走行面と広い面積で接することができる形状であればよい。但し、走行面に凹凸があることを想定する場合には摩擦面は平面ではなく円弧面であることが好ましい。
また、第3の実施形態では、摩擦部121が中実円形の棒状である場合について説明したが、この場合に限られず、車輪32と広い面積で接することができる形状であってもよい。
【0054】
また、第3の実施形態では、第1の回動支持部材112aの下端と第2の回動支持部材112bの下端とをそれぞれ、後側に配置された2つのコーナ部材22の挿入孔23に挿入することで、制動部110を台車本体部20に取り付ける場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、第1の回動支持部材112aの下端と第2の回動支持部材112bの下端とにそれぞれ、第2の実施形態と同様に補強部材93を固定して、補強部材93を介してコーナ部材22の挿入孔23に挿入してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1〜3:運搬台車 20:台車本体部 22:コーナ部材 23:挿入孔 30:走行部 31A,31B:キャスター 60:制動部 73:操作部 61:回動支持部 62a:第1の回動支持部材 62b:第2の回動支持部材 66:回動部 67a:第1の回動部材 67b:第2の回動部材 71:摩擦部 72a:第1の摩擦部材 72b:第2の摩擦部材 90:制動部 91:回動支持部 93:補強部材 110:制動部 111:回動支持部 112a:第1の回動支持部材 112b:第2の回動支持部材 112c:持手部材 116:回動部 117a:第1の回動部材 117b:第2の回動部材 121:摩擦部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14