特許第6765691号(P6765691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6765691
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】筒状包帯
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/00 20060101AFI20200928BHJP
   A41B 11/00 20060101ALI20200928BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20200928BHJP
   A41D 13/08 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   A61F13/00 355P
   A41B11/00 A
   A41D13/05 143
   A41D13/08
【請求項の数】1
【全頁数】59
(21)【出願番号】特願2019-73950(P2019-73950)
(22)【出願日】2019年4月9日
【審査請求日】2019年10月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514258878
【氏名又は名称】株式会社トレステック
(74)【代理人】
【識別番号】110000615
【氏名又は名称】特許業務法人 Vesta国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 敏哉
【審査官】 冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−25732(JP,U)
【文献】 実開昭56−34814(JP,U)
【文献】 特開2004−254731(JP,A)
【文献】 実公昭3−8231(JP,Y1)
【文献】 特開昭54−15389(JP,A)
【文献】 実開昭62−46612(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B11/00−11/14
A41D13/00−13/12
A61F13/00−13/10
A63B71/08−71/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕の長さまたは脚の長さに形成した筒状の筒状編地と、
前記腕の長さまたは脚の長さの長さとした前記筒状編地の一端には、前記筒状編地の外周囲の長さを短くして、前記筒状編地の筒を樋状に編み込んだ樋状編地とを具備する筒状包帯にあって、
前記樋状編地は、前記筒状編地の上部の端部から前記樋状編地の周囲長を形成する編目列の目数を変化させてU字状またはV字状に切り欠いて突出させたことを特徴とする筒状包帯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の一部を圧迫可能とする装着具であって、筒状の下肢用サポータ、スリーブ、靴下、タイツ、肘用サポータ、手、手首用サポータ等として外部から圧迫力(弾性力)を加える包帯等に使用される筒状包帯に関するもので、特に、静脈還流障害やリンパ浮腫等の疾患の予防、治療に好適な筒状包帯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、医療分野において、下肢等の静脈瘤、静脈血栓症といった静脈還流障害やリンパ浮腫等の疾患の予防や治療に、患部領域に装着して当該領域に圧迫力を加える包帯状の圧迫部材や、長手方向に段階的に圧迫圧(弾性圧力)が弱くなるように設計されている弾性ストッキング等を使用した圧迫法が有効であるとされている。特に、リンパ浮腫の疾患では治療に有効な薬剤や外科的手術がなく、現状は、その療養が主に圧迫法といった理学的療法に委ねられている。なお、リンパ浮腫とは、リンパ節やリンパ管が何らかの原因によって圧迫、狭窄、閉塞されたためにリンパが滞り、組織、細胞の間隙に水分(タンパク質やリンパ球等が含まれる)が過剰に溜まった状態をいう。
【0003】
巻くタイプの包帯状の圧迫部材によれば、装着者の装着部位への巻き重ねにより装着者を選択せず装着者の装着部位の形状に対応した圧迫を可能とするものの、専門的な技術力なしでは、患部の状態に応じ患部領域に適切な圧迫力に調節することができない。不適切な圧力を加えた場合、かえって逆の効果が生じて症状が悪化するという可能性もある。このため、熟練者や医師・看護師に任せることなく適切に装着することは困難に近い。
【0004】
これに対し、筒状に形成された圧迫部材、例えば、予め段階的に、下肢用であれば足首部から大腿部側へと向かって、着圧が弱くなるように設計された弾性ストッキングや、スリーブ、筒状包帯等によれば、熟練者でなくともずり落ちない装着が可能であり、圧迫力の調節を必要としない。
しかし、従来の医療用の弾性ストッキング等では、特に下肢用として筒状編地の一部を膨らませて(丸みを持たせて)踵形状に対応させたものが存在するも、装着した際に、足首近傍において、殊に、足の踝から甲部にかけて弛みが生じて足の甲部側では皺が発生し、場合によっては、その横皺の切れ目が肌に食い込むことで着圧の集中により還流が阻害されたり、その一方で、リンパ液が滞りやすい(溜まりやすい)踝付近(特に、踝後部)では生地が浮いて着圧が弱かったりと、適切な圧迫がなされておらず着圧が安定しないという問題があった。そこで、着圧が弱くなる踝付近の圧迫を均等にするためにその患部を発泡樹脂(スポンジ)等の緩衝材で覆い、その上に弾性ストッキング等を装着することで、踝付近の着圧を高めているのが実情である。
【0005】
ここで、従来の丸編機による編成では、編み込み糸の張力や編目高さ(度目、編目密度、ループの径)を変更することにより形状にバリエーションを持たせることができるものの、基本的には針目数の変更ができず、所定の針目数で編幅が一定の編成となるため、そのような特性状、寸法形状の表現に限界があり、足首の周囲の寸法形状にフィットさせることは難しい。
即ち、円筒状の針釜を備えた筒編み機によって丸編み編成を行う場合、例えば、踵部を有する下肢用では、まず、針釜を一定方向に回転させ全ての編針を編み立てに寄与させることによって筒状に脚部を編み、続いて、針釜を一定角度の範囲の往復回動運動に変更し一部の編針を編み立てに寄与させることによって踵部を編み立て、再度針釜を一定方向に回転させ全ての編針を編み立てに寄与させることによって筒状に足部を編み立てて、編成される。
【0006】
このような丸編みによる編成では、編み立てに関与させる編針数、編幅が一定に決められて周径が所定範囲に限定されてしまうことで、筒の径が一定で、必然的に脚部と足部が接続される脚部下端と足部上端は同一の編幅で周囲長が一定の範囲に定まってしまい、また、踵部の大きさも所定の範囲に決定されてしまうため、足首の寸法形状に対応した最適な径の設計が困難である。更に、足首側で編成の密度を高めて度詰めによって径小とすると通気性が悪く蒸れやすく、装着が困難であるとの問題もある。
加えて、例えば、脚部から編み始めた場合では踵部を編成する際に針釜の回動角度を順次減少させたのち、再び針釜の回動角度を順次増加させて編み立てが行われ、その後、足部の編成と続く。このとき、踵部の編成において編幅を順次減少させ、次いで編幅を順次増大させる部分的な引返し編みが用いられることで、踵部には編幅(目数)の減少領域と増大領域の編目の減増の接合の境界にゴアラインが形成されるので、そこに皺が生じやすく、編地の延びも妨げられる。
【0007】
よって、丸編みによる編成では、編地が足首正面の足の甲側では弛みやすくなる一方で足首背面の踵側では編地が引き攣られて突っ張る傾向にあり、足の踝部の屈曲形状にも対応した均一な着圧を得るのが困難である。更に、従来の丸編みの弾性ストッキングでは、足首正面に皺ができると着圧が集中するうえ、足首領域では編目密度を高めているため、通気性が悪く、蒸れやすいことで、特にナイロン製のものではアレルギー反応や湿疹を生じさせる可能性もあった。
【0008】
ところで、着圧に関し、特許文献1には、着用によって肌にふれる内側にパイル編みによるパイル等の凸部を、下腿部の前側では上下方向に離間して配置し、また下腿部の後側では上下方向に形成して部分的な着圧部を設けることで、その着圧部による押圧作用によって刺激とマッサージ効果を得てむくみや疲労感を解消しようとする下肢被覆材が開示されている。
また、特許文献2に開示されているように、ニードルベッドを前後に設けた横編機でも、踵部を有する靴下等の編成が可能であることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−219805号公報
【特許文献2】特開平9−296343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1では、押圧作用については脚部のみとされ踝を含んだ足の部位は考慮されておらず、また、部分的な着圧部の配置も脚部の正面側と背面側で相違させ、圧バランスが均一でないことから、その作用効果は部分的であり、装着時に違和感を生じさせる可能性もある。
また、特許文献2で開示されている靴下は、通常、生活用の一般的な靴下であることが想定され、生活用の一般的な靴下では、足首部位の正面側で屈曲を繰り返すことや着脱性を考慮して歪みを設けた設計とされ、足の踝部付近の屈曲形状にも対応して均一な圧迫力を与えることの発想は存在しない。
【0011】
一方、市販品を見てみると、図1に示すように、ロング靴下状の下肢用包帯本体100に対して、サスペンダストッキング101及び腰ベルト103を使用して、下肢用包帯本体100を吊り下げていた。しかし、サスペンダが布製であっても、レースであっても、端部に配設された留め具102の違和感を消すことができなかった。
また、上肢用包帯本体200は、図1に示すように、上肢用包帯本体200に平紐201と平紐202を縫い付け、当該平紐202を肩側で、平紐201を肺側を抱くように平紐201,202を廻すことにより、上肢用包帯本体200の位置を確定し、接続は接着布(マジックテープ(登録商標))203及び接着布(マジックテープ(登録商標))204によって一対の接着布205の接合または解除を行っている。平紐201,202は腕の長さに形成した上肢用包帯本体200に、平紐201及び平紐202を取付けても、上肢用包帯本体200が下がったり、上肢用包帯本体200の上部が肩から剥がれたりすると、腕の長さまたは脚の長さに形成した上肢用包帯本体200は、不安定となりずれ落ちたりして、移動ずれを起こすと違和感が生じた。
特に、腕の長さ方向に上肢用包帯本体200に取付けた平紐201及び平紐202には、寝返りを打つと身体に巻き付く可能性があり、紐201及び平紐202の使用は好ましいとは言えなかった。
【0012】
そこで、本発明は、下肢用及び上肢用筒状包帯本体において、上肢用紐等で結束する手段をなくしても筒状包帯の移動が制限され、かつ、人体の断面の形状の変化に対応でき、しかも、フィット性を高めることができ、高い還流促進効果を得ることができ、安定に保持できる筒状包帯の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明の筒状包帯は、腕の長さまたは脚の長さに形成した筒状の筒状編地と、前記腕の長さまたは脚の長さに形成した前記筒状編地の端部には、前記筒状編地の外周囲の長さを短くして、前記筒状編地の筒を樋状に編み込んだ樋状編地とを具備し、前記樋状編地は、前記筒状編地の端部からU字状またはV字状に切り欠いて突出させた。
特に、前記筒状編地は、腕の長さまたは脚の長さに形成し、腕の長さまたは脚の長さの長さ方向に対する垂直断面としたとき、この垂直に切断した断面は、ベース糸によるベース組織に弾性糸を交編させてループ状に編み込み、内面側では内側凸部にベース糸よりも伸縮性の高い弾性糸が表出することなく、弾性糸の装着者の肌への接触を避けたものである。
【0014】
ここで、前記筒状編地は、足首側によって脚の長さに形成した筒状の筒状編地が反対の端部側に移動しないように弾性を付与している。この弾性は、樋状編地の一部または全部が自重で折れたり、曲がったりしない程度に自立する弾性力を具備する。この樋状編地の一部または全部が自重で降れたり、曲がったりしない程度には、筒状編地と樋状編地とを一体に接合する編地の影響もその弾性力に入る。
したがって、樋状編地の一部または全部、好ましくはその全体が自重で降れたり、曲がったりしないとは、単なるヤング率等の弾性力を意味するものではなく、樋状編地の視覚的な特性である。特に、樋状編地としてU字状またはV字状に切り欠いた結果、前記筒状編地の外周囲の長さを短くし、前記筒状編地の筒を樋状に編み込んだ形状により、U字状またはV字状に切り欠いた樋状編地の縁部のバイパス等も含む。
【0015】
また、上記筒状編地は、腕の長さまたは脚の長さに形成して、長さ方向に対する垂直断面によってベース糸によるベース組織に弾性糸を交編させてループ状に編み込み、内面側では内側凸部にベース糸よりも弾性(伸縮性)の高い弾性糸が表出することなく、弾性糸が装着者の肌へ接触することを避けたものである。
そして、上記樋状編地は、前記腕の長さまたは脚の長さの長さとした前記筒状編地の端部には、前記筒状編地の外周囲の長さを徐々に短くして、前記筒状編地の筒の側面の一部を切断して空洞となる樋状に編み込み、前記筒状編地の端部からU字状またはV字状に切り欠いて突出させたものである。
【0016】
上記樋状編地は、前記樋状編地の中間位置で目数を変化させたものである。
ここで、上記樋状編地は、前記筒状編地から目数を変化させたU字状またはV字状の端部とは、U字状またはV字状に端部すべく目数を変化させて、端部を少なくとも同一長さまたは端部を広くしたものである。上記樋状編地の面積から見れば、U字状またはV字状に端部の目数を少なくし、端部を少なくとも前記筒状編地を同一長さから解放端を広くしたものである。
特に、前記樋状編地の中間を広くすることにより、鎖骨を直接覆い、かつ、内部で肩関節が動くので、全体的に樋状編地は安定して鎖骨上を覆うことができる。
なお、U字状またはV字状の端部とは、前記筒状編地側の下部よりも上部の開口が開いていることを意味し、U字状においても、上部ほど端部が広くなっていることを示している。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明の筒状包帯によれば、腕の長さまたは脚の長さの長さ方向に対して垂直に切断した断面は、内面側では内側凸部にベース糸よりも伸縮性の高い弾性糸が表出することなく、弾性糸の装着者の肌への接触を避けた腕の長さまたは脚の長さに形成した筒状編地の端部には、前記筒状編地の外周囲の長さを短くして、前記筒状編地の筒を樋状に編み込み、前記筒状編地の端部からU字状またはV字状に切り欠いて突出させた樋状編地を有するものである。
【0022】
したがって、筒状編地の端部には、前記筒状編地の外周囲の長さを徐々に短くして、前記筒状編地の筒を樋状に編み込み、前記筒状編地の端部からU字状またはV字状に切り欠いて突出させた樋状編地を有するから、樋状編地は内部で肩関節が動き、全体的に樋状編地は安定して鎖骨上を覆うことができるから、就寝前に着用すれば、着用者の寝返り等によって容易に外れることがない。
また、U字状またはV字状に端部すべく目数を変化させて、U字状またはV字状に端部を形成すべく目数を変化させたものでは、設定したU字状またはV字状の端部よりも締め付けを行うことができるから、樋状編地で肩関節を覆い、全体的に樋状編地は安定して鎖骨上を軽く締め付けることができる。
ここで、前記筒状編地の上部の端部からU字状またはV字状に切り欠いて突出させることとは、正確にU字状またはV字状を意味するものではなく、U字状またはV字状に近似した形態を意味し、正確にU字またはV字の形態を意味するものではない。
【0023】
前記樋状編地は、前記筒状編地から目数を変化させたU字状またはV字状の端部としたものであるから、U字状またはV字状の切り欠きを形成した樋状編地は、前記筒状編地における編地の周囲長を徐々に狭くしており、前記樋状編地が前記筒状編地の長さに自立することができるし、徐々に曲げることもできるので、紐等で結束する結束手段をなくしても使用でき、かつ、人体の断面の形状の変化に対応でき、しかも、フィット性を高めることができ、筒状の下肢用または上肢用サポータ、スリーブ、靴下、タイツ、肘用サポータ、手、手首用サポータ等として外部から圧迫力を加える包帯等に使用され、静脈還流障害やリンパ浮腫等の疾患の予防、治療に好適な高い還流促進効果を得ることができ、更に、安定に保持できる筒状包帯の提供を課題とするものである。
【0024】
したがって、筒状編地の端部には、前記筒状編地の外周囲の長さを短くして、前記筒状編地の筒を樋状に編み込み、前記筒状編地の端部からU字状またはV字状に切り欠いて突出させた樋状編地を有するから、樋状編地は内部で肩関節が動き、全体的に樋状編地は安定して鎖骨上を覆うことができるから、就寝前に着用すれば、装着者の寝返り等によって容易に外れることがない。
また、U字状またはV字状に端部とすべく目数を変化させて、U字状またはV字状に端部とすべく目数を変化させたものでは、U字状またはV字状に端部を目数、編地の厚み、形状等より1以上に締め付け方法により、締め付けを行うことができるから、樋状編地で肩関節を覆い、全体的に樋状編地は安定して鎖骨上を軽く締め付けることができる。
【0025】
そして、上記樋状編地は、前記筒状編地から編地の目数を変化させたU字状またはV字状の端部としたものであるから、U字状またはV字状の切り欠きを形成した樋状編地は、前記筒状編地における編地の周囲長を徐々に狭くしており、前記樋状編地が前記筒状編地の長さに自立することができ、かつ、徐々に曲げることもできるので、紐等で結束する結束手段をなくしても使用でき、また、人体の断面の形状の変化に対応でき、しかも、フィット性を高めることができ、筒状の下肢用または上肢用サポータ、スリーブ、靴下、タイツ、肘用サポータ、手、手首用サポータ等として外部から圧迫力を加える包帯等に使用され、静脈還流障害やリンパ浮腫等の疾患の予防、治療に好適な高い還流促進効果を得ることができ、更に、安定に保持できる筒状包帯の提供を課題とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は従来の筒状包帯の使用を説明するもので、(a)は右側の下肢用筒状包帯及びその取付具の説明図、(b)は上腕の筒状包帯及びその取付具、(c)は右の腕に取付けた状態の正面面である。
図2図2は本発明の実施の形態に係る筒状包帯の形状を決定する人体の採寸を行う採寸リストの説明図で、(a)は脚部の左側面、(b)は左脚部の正面、(c)は足部の要部骨の配置の平面である。
図3図3は本発明の実施の形態に係る筒状包帯を、(a)は装着時に足の甲側及び脚の脛側となる正面の正面図、(b)は取付使用状態を示す図である。
図4図4は本発明の実施の形態に係る筒状包帯の図3のZに示す要部拡大図であり、(a)は実施物の写真、(b)は図3のZに示す要部を説明するための模式図である。
図5図5は本発明の実施の形態に係る筒状包帯の接続編地の概略的な編成基本動作を示す編成コース図である。
図6図6は本発明の実施の形態に係る筒状包帯の図3のZに示す要部拡大図であり、(a)は実施物の写真、(b)は図3のZに示す要部を説明するための模式図である。
図7図7は本発明の実施の形態に係る筒状包帯を、装着時に足の甲側及び脚の脛側となる方を正面側とし、その反対側の足の脹脛側を背面側としたとき、正面側と背面側を対向させて重ね折りにした重ね折り畳み状態として正面側から見た平面図(正面図)である。
図8図8は本発明の実施の形態に係る筒状包帯を構成する樋状編地の要部展開図である。
図9図9は本発明の実施の形態に係る筒状包帯を構成する筒状編地の凹凸構造を説明するための断面図である。
図10図10は本発明の実施の形態に係る筒状包帯を構成する第1筒状編地及び第2筒状編地の編成構造を説明するための編成図であり、(a)は編み込み状態を説明するための編地の要部拡大図であり、(b)は編成コースを示す編成模式図である。
図11図11は本実施の形態の筒状包帯の実施の形態に係る第1筒状編地及び第2筒状編地の編成構造を説明するための編成コースを示す編成模式図である。
図12図12は本実施の形態の筒状包帯の実施の形態(a)〜(f)に係る第1筒状編地及び第2筒状編地の編成構造を説明するための編成コースを示す編成模式図である。
図13図13は本発明の他の実施の形態に係る筒状包帯を示すもので、(a)は全体を示す斜視図、(b)は正面からみた使用状態の参考図である。
図14図14は本発明の他の実施の形態に係る筒状包帯を対で使用する場合で、(a)は全体を示す斜視図、(b)は正面からみた使用状態の参考図である。
図15図15は本実施の形態の上肢用の筒状包帯で、(a)は斜視図、(b)は正面からみた使用状態の参考図、(c)は端部の長さを示す掌の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、実施の形態において、図示の同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分であるから、ここではその重複する詳細な説明を省略する。
【0032】
[実施の形態]
まず、本発明の実施の形態に係る筒状包帯の構成について、主に、図2乃至図8を参照して説明する。本実施の形態においては、基本的に、下肢用サポータ等の下肢用と上肢用サポータとは相違するものでないから、本発明の筒状包帯の装着対象を人体の下肢(脚部及び足部)とした事例で説明する。
【0033】
本実施の形態の筒状包帯1は、長さ方向の両端が端部Tと端部R及び端部Wとしてなる筒状編地Mと、その上部に延長させ、環状でないU字状またはV字状に切り欠いた樋状編地Nから構成されている。
腕の長さまたは脚の長さの長さ方向に対して垂直に切断した筒状編地Mの断面は、内面側では内側凸部にベース糸Aよりも伸縮性の高い弾性糸Bが表出することなく、弾性糸の装着者の肌への接触を避けた腕の長さまたは脚の長さに形成した筒状編地の端部には、前記筒状編地Mの外周囲の長さを短くして、前記筒状編地Mの筒を樋状に編み込み、前記筒状編地の端部からU字状またはV字状の面を切り欠いて形成し、前記筒状編地Mから突出させた樋状編地Nを有するものである。
なお、この筒状包帯1は、図2に示すように、個人(装着者)のデータを基に作成するものである。
【0034】
本実施の形態で説明する筒状包帯1の筒状編地Mは、人体の下肢の長さ方向に装着する下肢用サポータ(ロングサポータ)として、装着によって爪先を除いた足部から脚部の大腿部までを覆うものである。筒状包帯1としての下肢用サポータは、両脚を一対として用いられることもあれば、右脚または左脚のどちらか一方のみ装着される場合もある。
本実施の形態の前記筒状編地Mは、樋状編地Nに連結されているので、本発明の実施の形態の右脚、左脚用を区別する必要がある。
筒状編地Mの長さ方向の端部の樋状編地N側の端部Qは、脚の長さに形成し、脚の長さの長さ方向に対する垂直断面としたとき、足の中足骨の楔状骨側または中節骨側の範囲内に端部Tとなるように設けられている。当然ながら、端部Tの足の中足骨の楔状骨側または中節骨側の範囲内とは、一部が中足骨の範囲から外れていてもよい。
また、既成のソックスのように、脚部の下の端部Tは必ずしも端部であることを要しない。好ましくは、移動が規制されればよい。
なお、本発明を実施する場合の筒状編地Mは、人体位置情報L7よりも上部、即ち、人体位置情報L7のある踵以上の位置であればよい。
【0035】
脚の場合の筒状編地Mの長さ方向の一端(下端)の端部Tは、脚の長さを形成し、脚の長さ方向に対する垂直断面は、脚の中足骨の中節骨側または中手骨側の範囲内に端部するように設けられている。なお、腕の場合の筒状編地Mの長さ方向の一端の端部Tは、腕の長さに形成し、脚の長さの長さ方向に対する垂直断面は、腕の中手骨の基節骨側の範囲内に端部するように設けられている。
ここで、腕の長さまたは脚の長さの筒状編地Mは、樋状編地Nが接続されて本実施の形態の筒状包帯1となる。
以下、本実施の形態においては、筒状包帯1が人体の脚部側を覆う事例で説明する。
なお、発明内容は筒状包帯1が人体の上腕部側を覆う事例と相違するものでないので、途中で相違点があれば、その都度説明することとする。
【0036】
本実施の形態の筒状包帯1は、図3に示すように、人体の脚部側を覆う第1筒状編地10と、第1筒状編地10に連続し、人体の足部側を覆う第2筒状編地20と、人体の足部の踵形状に対応して第1筒状編地10と第2筒状編地20の間を繋げて人体の足部の踵部側を覆う踵編地30とを有する。
ここで、第1筒状編地10、第2筒状編地20、踵編地30は、筒状編地Mを構成する。
なお、本発明を実施する場合の第1筒状編地10、第2筒状編地20、踵編地30は、第1筒状編地10のみ、第1筒状編地10と第2筒状編地20のみとすることができ、踵編地30は必要に応じて省略することができる。しかし、後述するが、踵編地30の構成を編み込むと、安定性が高くなる。
【0037】
そして、本実施の形態の筒状包帯1の第1筒状編地10及びそれに連続する第2筒状編地20は、図3及び図4に示すように、人体に装着される長さ方向の人体位置情報L0,L1,L2,・・・と、人体位置情報L0,L1,L2,・・・に対する垂直断面の長さの人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・を用いて編成される。
ここで、人体位置情報L0に対する垂直断面の長さの人体周囲長情報m0は、樋状編地Nの編地LMの面積が徐々に狭くなるが、腕の長さまたは脚の長さの筒状編地Mによって支えられるので、人体位置情報L0,L1と、人体位置情報L0,L1に対する垂直断面の長さの人体周囲長情報m0,m1を用いて編成されている。樋状編地Nの弾性力に芯があるので、縦の長さ情報のみで、概略の保持力が設定できる。
【0038】
ここで、本発明を実施する場合には、人体位置情報L0,L1,L2,・・・の位置は、例えば、下記の表1及び図2に示すように採寸する寸法の位置として決定されている。したがって、使途(例えば、リンパ浮腫または下肢静脈瘤等の治療・予防用等)により、または、筒状包帯1の種類(サポータ、スリーブ、ストッキング、グローブ、肌着等)や外部から圧迫力を加える腕部、脚部、頭部、足部、手部、手首部等の筒状包帯1の装着部位によって、採寸する位置が決定され、その位置の周りを測定するものである。
こうして人体位置情報L0,L1,L2,・・・の位置を特定し、特定された人体位置情報L0,L1,L2,・・・の位置における垂直断面の長さの寸法を測定する。人体の長さ方向の位置、即ち、人体位置情報L0,L1,L2,・・・と位置が変化すると、それに対応して人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・が脚または腕等の太さの周囲長として対応する。なお、通常、人体位置情報L0,L1,L2,・・・は、身体の形状の変化がある部分、またはその前後に測定点が設定される。
【0039】
装着対象を爪先を除いた足部から脚部の大腿部とする本実施の形態の筒状包帯1(下肢用サポータ)においては、図3に示したように、脚部の大腿部の付け根に近い位置L0から足部の小指(小趾)の付け根位置L10までの採寸を行った。
図3は、本実施の形態の筒状包帯1の装着対象を人体の脚部及び足部の一部の端部W、端部Rとして、その採寸を行った人体位置情報L0,L1,L2,・・・,L9,L10の関係(測定点)を示したものである。
また、表1は、本実施の形態の第1筒状編地10及び第2筒状編地20の編成に用いた実施物として、人体の脚長(股下寸法)及び爪先(指部)を除いた足長としての人体位置情報L0,L1,L2,・・・,L9,L10の位置に対する垂直断面の長さの人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・m9,m10の関係の測定値である。但し、表1の数値は人体の断面の周囲長の測定値であり、伸びと直接の関係がない。
【0040】
【表1】

【0041】
念のため、表1の実施の形態の数値は、図2に示すように、人体の骨盤位置または骨盤の上位置の骨盤終了時点3〜5cm上の上部位置L0の周囲長である人体周囲長情報m0が61cm、人体の臀部(ヒップ部)のふくらみの終わり位置a点から5cm下の位置L1の断面(廻り)の周囲長である人体周囲長情報m1、即ち、人体位置情報L1に対する垂直断面長さの人体周囲長情報m1が52cmであることを示す。
また、位置a点と膝の屈曲部の位置L3との中間位置L2の断面の周囲長である人体周囲長情報m2、即ち、人体位置情報L2に対する垂直断面長さの人体周囲長情報m2が47cmであることを示す。
そして、膝の屈曲部の位置L3の断面の周囲長である人体周囲長情報m3、即ち、人体位置情報L3に対する垂直断面長さの人体周囲長情報m3が36cmであることを示す。
腓骨頭の位置L4の断面の周囲長である人体周囲長情報m4、即ち、人体位置情報L4に対する垂直断面長さの人体周囲長情報m4が34cmであることを示す。
【0042】
脹脛の一番太い位置L5の断面の周囲長である人体周囲長情報m5、即ち、人体位置情報L5に対する垂直断面長さの人体周囲長情報m5が35cmであることを示す。
脹脛の始まり位置L6の断面の周囲長である人体周囲長情報m6、即ち、人体位置情報L6に対する垂直断面長さの人体周囲長情報m6が28cmであることを示す。
足首の一番細い位置L7の断面の周囲長である人体周囲長情報m7、即ち、人体位置情報L7に対する垂直断面長さの人体周囲長情報m7が22cmであることを示す。
甲から踵位置L8の断面の周囲長である人体周囲長情報m8、即ち、人体位置情報L8に対する垂直断面長さの人体周囲長情報m8が30cmであることを示す。
土踏まず位置L9の断面の周囲長である人体周囲長情報m9、即ち、人体位置情報L9に対する垂直断面長さの人体周囲長情報m9が22cmであることを示す。
小指(小趾)の付け根位置L10を通る断面の周囲長である人体周囲長情報m10、即ち、人体位置情報L10に対する垂直断面の長さの人体周囲長情報m10が22cmであることを示す。
なお、表1の実施物の数値は、下肢のリンパ浮腫患者の採寸データである。これらの単位を、mm単位の寸法情報としても良い。
【0043】
このようにして、本実施の形態においては、人体位置情報L0,L1,L2,・・・と、糸が横方向に連続する1環状の編目列、以下『ウェール側』の1ユニット長さを決定する人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・との関係を取得している。ここで、編地LMの縦方向に並んだループ行をコース側、横方向に並んだループ列をウェール側と呼ぶ。即ち、コース側、ウェール側とは、編目を縦方向(X−Y軸のY軸方向)に数えた場合をコース、コース方向に直角な方向の横方向(X−Y軸のX軸方向)がウェール(ゲージ)針数であり、編地LMの縦方向(y方向)に並んだループ行、即ち、糸がループ状(環状)に編み込まれる縦方向の編目をコースとし、編地LMの横方向(x方向)に並んだループの列、即ち、糸が横方向に連続する編目をウェールとして区別する。
【0044】
ここで、本実施の形態の筒状包帯1は、筒状編地Mの第1筒状編地10及び第2筒状編地20において共に、人体位置情報L0,L1,L2,・・・に対する垂直断面における周囲長の人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・を用いて、人体位置情報L0,L1,L2,・・・等の位置(人体の部位)に対応した人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・が所定のヤング率(弾性)となるように計算した計算結果によりウェール側の編目列の目数(ループ数、針数=針目数)を算出して、それに近似する目数に設定される。
【0045】
即ち、人体位置情報L0,L1,L2,・・・に対する垂直断面における周囲長の人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・の各人体周囲長情報同士の間の周長変化(周長差)がウェール側の編目列の目数の差として表現される。
詳しく説明すると、人体位置情報L0,L1,L2,・・・は、装着部位、用途等によって決定されると、当該位置で垂直断面における周囲長の人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・を、第1筒状編地10及び第2筒状編地20におけるウェール側の1環状の編目列の長さを設定するための情報として測定する。
【0046】
人体位置情報L0,L1,L2,・・・と人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・は、実施物を作る際、それらの情報を医療機関等から提供される場合もあり、最初、人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・は、人体の各部の長さ寸法(単位はcm,mmの何れも可)情報であり、装着対象である人体の一部の長さ方向の人体位置情報L0,L1,L2,・・・と、それに対する垂直断面における周囲長の人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・とを用いて筒状包帯1が採寸される。
【0047】
即ち、人体の長さ方向の人体位置情報L0,L1,L2,・・・に対する垂直断面の人体周囲長情報m0,m1,m2・・・は、人体の原寸として採寸されるが、この状態では人体位置情報L0,L1,L2,・・・に対する垂直断面の周囲の長さを意味するものである。
人体位置情報L0,L1,L2,・・・は、筒状包帯1の位置に対する基準であり、人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・がこれから設定しようとするウェール側の編目列の編目数を算出する基準とする周囲長情報であり、この間に情報の加工はしていない。
【0048】
そして、人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・を得た後、その情報から、人体位置情報L0,L1,L2,・・・の位置に対応した所定の弾性となるように計算した計算結果により目数を算出する。この計算結果は目数を算出するが、その目数以下の単位は四捨五入しても良いし、切り捨てても、切り上げてもよい。この切り捨て、切り上げ、四捨五入の選択は、編糸の物性及び筒状包帯1の用途の特性等によって決定できる。
【0049】
ここで、人体位置情報L0,L1,L2,・・・の位置に対応した所定の弾性力としてのヤング率は、使用する糸の物性、編成方法、ループの径(度目)等を考慮して設定される。
そして、人体位置情報L0,L1,L2,・・・の位置によってヤング率を決定し、人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・に基づいて計算した計算結果により算出された目数に近似する針目数にウェール側の1環状(ループ)の編目列が設定される。
なお、ヤング率(E)は、例えば、ウェール側の編目の断面積(糸の物性)をS、1環状の編目の断面積(糸の物性)Sに加わる力をF、元の長さPがΔP伸びたとき、
E=(F/S)/(ΔP/P)
で表される。
なお、ヤング率として弾性力を表現することができる。しかし、人の感覚と人体に対する圧迫力は、必ずしもヤング率と一致しない箇所もあるので、この明細書を通して、ここでは、弾性力として表現することとする。
【0050】
ここで、ウェール側の編目の断面積Sは糸の物性、編み方等から決定され、また、ウェール側の編目の断面積(紡績糸の物性)Sに加わる力Fは、人体位置情報L0,L1,L2,・・・の位置に応じて設定される。ウェール側の編目の断面積(紡績糸の物性)Sに加わる力Fを、常に何れの場所でも一定値にしたい場合にはF/Sは固定値になり定数となる。この場合、人体位置情報L0,L1,L2,・・・相互のユニット間で弾性力(ヤング率)を一定にして人体の長さ方向の特定の部位にのみ外力が加わることがなく、装着時に長さ方向で均一な圧迫力を受け違和感が生じない。一方で、ウェール側の編目の断面積(紡績糸の物性)Sに加わる力Fを、人体位置情報L0,L1,L2,・・・の位置変化に応じて変化させてもよく、部位に応じて外力の大きさを変化させることにより、例えば、装着時に足首側から大腿部側に向かって徐々に圧迫力、着圧を低下させる設計により、還流促進効果を増大させることも可能である。
【0051】
このようにして、弾性力(ヤング率)を人体位置情報L0,L1,L2,・・・の位置に対応した所定値にして、人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・の断面変化(周囲長変化)に応じてウェール側の編目数を算出でき、人体の一部の長さ方向の人体位置情報L0,L1,L2,・・・に対する垂直断面の人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・から算出したウェール側は、目数を表すものとなる。即ち、人体位置情報L0,L1,L2,・・・の位置に対応した所定の弾性力(ヤング率)となるように計算したウェール側の編目列の目数が設定され、人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・が、この時点でウェール側の目数として置換される。
【0052】
このように、本実施の形態の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1の第1筒状編地10と第2筒状編地20においては、装着対象である人体の一部の長さ方向の人体位置情報L0,L1,L2,・・・と、それに対する垂直断面の周囲長の人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・とを用いて編成され、ウェール側の環状の編目列が、人体周囲長情報m0,m1,m2,・・から人体位置情報L0,L1,L2,・・・の位置に対応した所定の弾性力(ヤング率)となるように計算した計算結果となるように近似する目数に設定されて編成される。即ち、人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・の変化は、編目の目数として表現される。
【0053】
本実施の形態では、脚長及び足長としての人体位置情報L0,L1,L2,・・・と位置が変化すると、人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・が変化する筒状編地M及び樋状編地Nにおいて、人体に装着される部位の断面変化に伴って目数の変化で対応する。つまり、人体の長さ方向において編目数の可変により環状の長さ(ウェール側の長さ)が変化することになる。
こうして、本実施の形態の筒状包帯1の筒状編地M及び樋状編地Nでは、人体位置情報L0,L1,L2,・・・に対応した人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・に基づいて、人体位置情報L0,L1,L2,・・・の位置に対応した所定の弾性力(ヤング率)となるように計算した計算結果に近似する目数によりウェール側の環状の目数を特定し、目数、編幅を変更させて全長の形状を決定している。
【0054】
そして、本実施の形態の筒状包帯1においては、目数の変化により周囲長を変化させることで、圧迫力の調節も可能であり、長さ方向に装着部位の人体の断面が変化しても所定の圧迫を可能とし、人体位置情報L0,L1,L2,・・・の位置や人体の断面変化に応じて所望とする圧迫力の調節が容易である。
なお、圧迫力は、目数の変化により調節可能の他、ループの径(度目)、編み方、糸の物性等の調節(弾性力(ヤング率)の設定)により変化させることも可能であり、長さ方向で圧迫力を一定としてもよいし、圧迫力を変化させてもよい。
また、糸をループ状に編み込んだコース側の編目数は、糸の物性値、編み方、度目等によって、人体位置情報L0,L1,L2,・・・の相互間の長さに基づいて設定することができる。
【0055】
ここで、足の甲と踵周囲の人体周囲長情報m8でも示すように、人体の脚部と足部の境界となる足首領域(人体位置情報L7,L8に相当)では踵や踝により断面周囲の変化が大きく、特に、静脈還流障害やリンパ浮腫等の装着者では局部的に足首領域の周囲長が大きくなったり、断面周囲の変化が大きくなったりする。つまり、脚部の足首位置の人体位置情報L7に対応した人体周囲長情報m7から足部の土踏まず位置の人体位置情報L9に対応した人体周囲長情報m9にかけて断面の周囲長の変化が大きくなる。
【0056】
そこで、本実施の形態の筒状包帯1では、筒状編地Mにおいて、目数の変化によりウェール側の長さ(周囲長)を変化させるが、人体位置情報L0,L1,L2,・・・,L6,L7に対する垂直断面の周囲長の人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・,m6,m7から、人体位置情報L0,L1,L2,・・・の位置に対応した所定のヤング率となるように計算した計算結果に近似する針目数をウェール側の1環状の編目列として設定して第1筒状編地10を編成し、また、人体位置情報L9,L10に対する垂直断面の周囲長の人体周囲長情報m9,m10から、人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・の位置に対応した所定のヤング率となるように計算した計算結果に近似する針目数をウェール側の1環状の編目列として設定して第2筒状編地20を編成した。
【0057】
そして、その間の筒状編地Mが繋がる第1筒状編地10の端部と第2筒状編地20の端部において、第1筒状編地10の最端部(下端部)のウェール側の1環状の編目列の目数よりも、第2筒状編地20の端部(上端部)のウェール側の1環状の編目列の目数を増やして、第1筒状編地10の最下端の編幅l1よりも、この第1筒状編地10の下端に連続される第2筒状編地20の最上端の編幅l2の方を大きくした(図5及び図6参照)。つまり、目数の変化により、第1筒状編地10の下端のウェール側の1環状の編目列で形成される環状の径(周囲長)よりも、この第1筒状編地10の下端から連続される第2筒状編地20の上端のウェール側の1環状の編目列で形成される環状の径(周囲長)の方を大きくし、径大とした(図5及び図6参照)。
【0058】
なお、第1筒状編地10の最端部(下端部)のウェール側の1環状の編目列の目数と、第2筒状編地20の端部(上端部)のウェール側の1環状の編目列の目数とを同一とし、第1筒状編地10の最下端の編幅l1と、この第1筒状編地10の下端に連続される第2筒状編地20の最上端の編幅l2とを同じくすると、目数の一致により、第1筒状編地10の下端のウェール側の1環状の編目列で形成される環状の径(周囲長)と、この第1筒状編地10の下端から連続される第2筒状編地20の上端のウェール側の1環状の編目列で形成される環状の径(周囲長)が同じとなる。
【0059】
このように、本発明を実施する場合には、第1筒状編地10と第2筒状編地20が繋がる筒状編地Mにおいて、第1筒状編地10の端部と第2筒状編地20の端部を等しくし、踵編地30を無くすことができる。
即ち、図5を参照しながら説明すると、第1筒状編地10の最端部(下端部)のウェール側の1環状の編目列の目数と、第2筒状編地20の端部(上端部)のウェール側の1環状の編目列の目数を同数とし、第1筒状編地10の最下端の編幅l1と、この第1筒状編地10の下端に連続される第2筒状編地20の最上端の編幅l2と、を同一としたものである。
【0060】
本発明を実施する形態では、第1筒状編地10の最端部(下端部)のウェール側の環状の編目列の一部と、第1筒状編地10の最端部(下端部)よりも径大な第2筒状編地20の最端部(上端部)のウェール側の環状の編目列の一部の間で、糸をループ状に編み込むコース側の目数を増大させて踵編地30を形成し、第1筒状編地10の最端部(下端部)のウェール側の環状の一部と、それよりも径大な第2筒状編地20の最端部(上端部)のウェール側の環状の一部とを踵編地30で繋いだものである。
第1筒状編地10と第2筒状編地20からなる筒状編地Mは、そこに踵編地30が形成されているのが筒状包帯1の安定性から望ましいが、踵編地30を省略したものが発明として失格であるという意味ではない。特に、踵編地30が人の踵に合致するから、筒状包帯1の安定性を増すので特に好ましい。
【0061】
因みに、脚部と足部の境界となる足首領域のコース側の繋がりにおいて、筒状編地Mの第1筒状編地10から第2筒状編地20にかけての接続をウェール側の1環状の編目列の目数の増大を一度に多くして急な角度で繋げた場合、つまり、短いコース幅で編目数を増大させた場合、人体の脚部及び足部の装着対象に装着した際に足首背面側に段差による浮きが生じたり踵の屈曲部で無理な張力が生じたりし、人体の足部の踝部分の凹凸の凹部分に対しても編地LMが浮くことなく接触、密着させて適切な圧迫力をかけることが困難となる。
一方で、ウェール側の1環状の編目列の目数の増大を徐々に行い緩やかな傾斜としても、その間のコース幅が長くなると、装着した際に足関節周りにおいて適切な筒径とならないことで、歪みや皺が生じたり、皺の食い込みによる着圧集中が生じたりする。
【0062】
これに対し、本実施の形態の筒状包帯1においては、第1筒状編地10の一部に対して直接、第2筒状編地20の一部を連結して形成し、第1筒状編地10の最端部(下端部)のウェール側の1環状の編目列の一部に第2筒状編地20の最端部(上端部)のウェール側の1環状の編目列の一部を繋げた一方で、残りの第1筒状編地10の最端部(下端部)のウェール側の1環状の編目列の一部と第2筒状編地20のウェール側の1環状の編目列の一部とを踵編地30で繋げ、第1筒状編地10の下端のウェール側の環状の径(周囲長)と第2筒状編地20の上端のウェール側の環状の径(周囲長)との差異を踵編地30で吸収させている。
このような筒状編地Mの構成によって、足首背面側に浮きが生じたり踵の屈曲部で緊張が生じたりするのが防止され、また、皺や弛みが防止され、足関節周りへのフィット性を高めることが可能となる。
【0063】
なお、本発明を実施する場合には、甲と踵周囲の人体周囲長情報m8を用いて、人体位置情報L8,L9,L10に対する垂直断面の周囲長の人体周囲長情報m8,m9,m10から、人体位置情報L8,L9,L10,・・・の位置に対応した所定の弾性力(ヤング率)となるように計算した計算結果に近似する針目数をウェール側の1環状の編目列として設定して第2筒状編地20を編成することも可能である。この場合、第1筒状編地10の人体周囲長情報m7に対応するユニットのウェール側の環状の編目列の一部と第2筒状編地20の人体周囲長情報m8に対応するユニットのウェール側の環状の編目列の一部とが踵編地30で繋がれる。これによっても、ウェール側の環状の編目列の編目数が人体周囲長情報m8,m9,m10から人体位置情報L8,L9,L10,・・・の位置に対応した所定のヤング率となるように計算した計算結果に近似する目数に設定されることで、第1筒状編地10の人体周囲長情報m7に対応させたユニット端部のウェール側の1環状の編目列と第2筒状編地20の人体周囲長情報m8に対応させたユニット端部のウェール側の1環状の編目列とでは目数が異なり、脚部と足部の境界となる足首領域の人体位置情報L7に対応した人周囲長情報m7から人体位置情報L8に対応した人体周囲長情報m8にかけて目数が増大することになる。
【0064】
つまり、第1筒状編地10の最下端の編幅l1よりも、この第1筒状編地10の下端に連続される第2筒状編地20の最上端の編幅l2の方が大きく、第1筒状編地10の下端のウェール側の環状の径(周囲長)よりも、この第1筒状編地10の下端に連続される第2筒状編地20の上端のウェール側の環状の径(周囲長)の方が径大に編成されることになる。
また、第1筒状編地10の最下端の編幅l1と、この第1筒状編地10の下端に連続される第2筒状編地20の最上端の編幅l2が等しいと、第1筒状編地10の下端のウェール側の環状の径(周囲長)と、この第1筒状編地10の下端に連続される第2筒状編地20の上端のウェール側の環状の径(周囲長)が同一に編成されることになる。
【0065】
本実施の形態の第1筒状編地10及び第2筒状編地20からなる筒状編地Mは、その上に樋状編地Nが編み込まれる。筒状編地Mは、人体位置情報L2で人体周囲長情報m2のとき、最長の長さ位置は、人体位置情報L0,L1,L2,・・・,L6,L7、または人体位置情報L0,L1,L2,・・・,L9、または人体位置情報L0,L1,L2,・・・,L9,L10、として特定され、筒状編地Mの人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・に基づいて計算した計算結果により算出された目数に近似する針目数にウェール側の1環状(ループ)の編目列が設定される。
樋状編地Nは人体位置情報L0,L1であるけれども、人体周囲長情報m0,m1で規定されるから、人体位置情報の最上位の位置L0と人体位置情報L1が決定すれば、筒状編地Mが膨らみ、人体位置情報L1側はそれに追随するものであるから、人体位置情報L0が特定できればよい。
【0066】
特に、腕の長さまたは脚の長さの長さとした筒状編地Mの端部に筒状編地Mの外周囲の長さを短くして、筒状編地Mの筒を樋状に編み込んだ樋状編地Nは、筒状編地Mの端部からU字状またはV字状に切り欠いて上に突出させたものであるから、筒状編地Mから立ち上がる樋状編地Nは腹部から臀部の形状によって樋状編地Nが起立されているから、樋状編地N弾性力は、弾性力、圧迫力はヤング率のみで決定されるものではない。
【0067】
こうして、本実施の形態の筒状編地Mの第1筒状編地10及び第2筒状編地20では、人体位置情報L0,L1,L2,・・・,L9,L10に対する人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・m9,m10の変化が編目数の可変により表現される。
そして、人体位置情報L0,L1,L2,・・・,L6,L7とそれに対する人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・,m6,m7とを用いて編成される第1筒状編地10は主に脚部側に装着されることになり、人体の脚の長さ方向の大腿部側から足首側に向かって順に人体周囲長情報m0,m1,m2,・・・,m6,m7の数値が減少する場合には、それに伴い編目数が減少される。このとき、人体位置情報L1,L2,L3,・・・,L6,L7の相互間では、編目数の差異が段階的に徐々に縮小されるように設定されて、編成される。これにより安定した着圧が得られ、着用感も良い。
【0068】
一方、人体位置情報(L8,)L9,L10とそれに対する人体周囲長情報(m8,)m9,m10とを用いて編成される第2筒状編地20は主に足側に装着されることになり、人体の足の長さ方向の足首から足先側に向かって順に人体周囲長情報(m8,)m9,m10の数値が小さくなる場合には、それに伴い編目数が減少される。このとき、人体位置情報(L8,)L9,L10の相互間では、編目数の差異が段階的に徐々に縮小されるように設定されて、編成される。これにより安定した着圧が得られ、着用感も良くなる。
なお、筒状包帯1の上下方向(長さ方向)の端部の端部側では隣接するユニットの影響が少なく、挿着及び脱着による抵抗を受けやすいことから、使用によるヘタリ等の弾性の低下を考慮して目数を決定する場合もある。
【0069】
ここで、本実施の形態の筒状包帯1では、第1筒状編地10と第2筒状編地20の間で、糸をループ状に編み込むコース側の目数を増大させて踵編地30が編成される。そして、踵編地30は、第1筒状編地10の最端部(下端部)のウェール側の1環状の編目列の周囲長の40%以下に対し、また、第2筒状編地20の最端部(上端部)のウェール側の1環状の編目列の周囲長の40%以下に対して繋がる。このとき、第1筒状編地10の最端部(下端部)のウェール側の1環状の編目列に繋がる踵編地30の接続距離よりも、第2筒状編地20の最端部(上端部)のウェール側の1環状の編目列に繋がる踵編地30の接続距離の方が大きくされる。
【0070】
好ましくは、第1筒状編地10の最端部(下端部)のウェール側の1環状の編目列の編幅の一部を使用した10%以上、40%以下の範囲内、より好ましくは20%以上、40%以下の範囲内に対して、また、第2筒状編地20の最端部(上端部)のウェール側の1環状の編目列の編幅の一部を使用した10%以上、40%以下の範囲内、より好ましくは20%以上、40%以下の範囲内に対して踵編地30を繋げ、第1筒状編地10と第2筒状編地20の間に踵編地30を介在させて、踵編地30によって第1筒状編地10と第2筒状編地20の間に一定の角度を与える。
【0071】
そして、筒状包帯1の装着時において人体の腹側から見た方向を正面、人体の背中側から見た方向を背面とし、その正面及び背面に対しての人体の側面側から見た方向を側面としたとき、本実施の形態の筒状包帯1は、左側面と右側面の編地LMが対称の形状であり、正面視で図6乃至図8に示すように左右対称となっている。図6乃至図8に示すように、背面側の左右対称線d2図6の背面視では中心線d2として表れる)正面側の左右対称線d1図7の正面視では中心線d1として表れる)でウェール側の1環状の編目列で形成される環状の周囲長が半分となるように環状の内面を相手側の内面に接触する重ね折りにして折り畳んだときに、第1筒状編地10と第2筒状編地20と踵編地30との境界部Pから正面側の左右対称線d1に向かう仮想垂線c1図4において境界部Pから第1筒状編地10と第2筒状編地20の外形端縁に向かう垂線c1)の距離幅aと、境界部Pから背面側の左右対称線d2に向かう仮想垂線c2図4において境界部Pから踵編地30の外形端縁に向かう垂線c2)の距離幅bとの比が、6:4≦a:b≦9:1の範囲内となるようにしている。なお、この距離幅の関係は、外部から力を加えない状態での距離幅の測定である。また、このときの仮想垂線c1,c2は第1筒状編地10の長さ方向を垂直にしたときのこの垂直方向に直角なものとされる。
【0072】
別の角度から見て、図6の背面視において、上記左右対称線d2を中心線として、ウェール側の1環状の編目列で形成される環状の周囲長が半分となるように環状の内面を相手側の内面に接触する重ね折りにした折り畳んだ状態では、第1筒状編地10と第2筒状編地20と踵編地30の両側の境界部P1と境界部P2を結ぶ仮想線の距離幅をw1とし、また、その仮想線を第1筒状編地10と第2筒状編地20の外形端縁まで真っ直ぐに延長させたときの仮想線の距離幅をw2としたとき、距離幅w2と距離幅w1との関係が、距離幅w2100%に対して、距離幅w1が10%〜90%の範囲内、好ましくは、20〜80%の範囲内、更に好ましくは、30〜70%の範囲内とされる。なお、この距離幅関係も、外部から力を加えない状態での距離幅の測定である。
【0073】
即ち、ウェール側の環状の周囲長を半分とする左右対称線d1,2を中心線として環状の内面を相手側の内面に接触する重ね折りにした折り畳んだ状態で、第1筒状編地10と第2筒状編地20と踵編地30との境界部P1,境界部P2同士を結ぶ仮想線を真っ直ぐに延長させたときの第1筒状編地10及び第2筒状編地20の外縁間の距離幅w2を100%としたとき、第1筒状編地10と第2筒状編地20と踵編地30との境界部P1,境界部P2同士の距離幅w1は10%〜90%の範囲内、好ましくは、20〜80%の範囲内、更に好ましくは、30%〜70%の範囲内である。
【0074】
このように、本実施の形態の筒状包帯1においては、第1筒状編地10の最端部(下端部)のウェール側の環状の周囲長の40%以下、また、第2筒状編地20の最端部(上端部)のウェール側の環状の周囲長の40%以下に対して、第1筒状編地10と第2筒状編地20との間で、糸をループ状に編み込むコース側の目数を増大させて踵編地30で繋げ、正面側の左右対称線d1及び背面側の左右対称線d2に沿ってウェール側の環状の周囲長が半分となるように環状の内面を相手側の内面に接触する重ね折りにした折り畳んだ状態で、第1筒状編地10と第2筒状編地20と踵編地30との境界部Pから正面側の左右対称線d1に向かう仮想垂線c1の距離幅aと、境界部Pから背面側の左右対称線d2に向かう仮想垂線c2の距離幅bとの関係を、6:4≦a:b≦9:1の範囲内(a/bが6/4〜9/1の範囲内)としている。
【0075】
こうして、筒状編地Mの第1筒状編地10と第2筒状編地20との間でコース側の目数を増大させて踵編地30を形成し、第1筒状編地10の最端部(下端部)のウェール側の1環状の編目列で形成される環状の周囲長の40%以下、また、第2筒状編地20の最端部(上端部)のウェール側の1環状の編目列で形成される環状の周囲長の40%以下で踵編地30を繋げることにより、筒状包帯1において踵編地30にて曲率を持たせ踵に対応した立体的な編成となり、踵編地30が周囲の第1筒状編地10及び第2筒状編地20よりも曲率を持って丸みが付され、装着した際に踵形状にフィットする。また、足関節周りに対して適切な筒径となって弛みが生じ難く、更に、踵側で引き攣りによる突っ張りが防止されることで、踝周囲(特に踝後部)での編地LMの浮きが防止され、着圧の低下を防止する。
【0076】
更に、人体の踵形状に対応させた踵編地30を境界に、踵編地30の上側に接続し装着時に脚部側を覆うことになる第1筒状編地10の踵編地30及び第2筒状編地20へと繋がる最端部(下端部)のウェール側の環状の径よりも、踵編地30の下側に接続し装着時に足部側を覆うことになる第2筒状編地20の踵編地30及び第1筒状編地10へと繋がる最端部(上端部)のウェール側の環状の径の方を大きくしていることで、踵の膨らみ形状に対応して、踵側で無理な張力が掛かるのを防止し、編地LMの踝周囲への密着性を高める。
【0077】
そして、踵編地30の第1筒状編地10及び第2筒状編地20からなる筒状編地Mへの接続関係を、左右対称線d1,d2に沿ってウェール側の1環状の編目列で形成される環状の周囲長が半分となるように環状の内面を相手側の内面に接触する重ね折りにした折り畳んだ状態で、第1筒状編地10と第2筒状編地20と踵編地30との境界部Pから正面側の左右対称線d1に向かう仮想垂線c1の距離幅aと、境界部Pから背面側の左右対称線d2に向かう仮想垂線c2の距離幅bとの比が、6:4≦a:b≦9:1の範囲内とすることにより、第1筒状編地10と第2筒状編地20と踵編地30の境界部Pが正面側よりも背面側に位置し、装着時に踝付近の屈曲形状を、曲率を持った踵編地30ではなく、所定のヤング率とした第1筒状編地10と第2筒状編地20で覆うようにしている。
【0078】
よって、本実施の形態の筒状包帯1によれば、装着時に踵側での引き攣りや、甲側での弛み、皺の発生が抑えられ、更に、第1筒状編地10と第2筒状編地20が踝付近の凹凸を覆うことになるから、踝周囲の凹部での編地の浮きが防止されて、踝付近の屈曲部にフィットさせて密着し、足関節周りの着圧分布が均一化され、安定した着圧が得られる。
【0079】
特に、踵編地30を第1筒状編地10の第2筒状編地20へと繋がる最端部(下端部)の編幅l1の一部である10%以上、40%以下に対して、より好ましくは、20%以上、40%以下の範囲内、また、第2筒状編地20の第1筒状編地10へと繋がる最端部(上端部)の編幅l2の一部の10%以上、40%以下、より好ましくは、20%以上、40%以下の範囲内に対して繋げることにより、装着時に第1筒状編地10と第2筒状編地20の踵側への引き攣りによる緊張が生じ難く、人体の足の踝付近の屈曲部の凹部分に対しても第1筒状編地10及び第2筒状編地20の浮きが少なく踝部分の屈曲形状へのフィット性、密着性が向上し、より安定した着圧が得られる。
【0080】
更に、図9で示すように、第1筒状編地10と第2筒状編地20を接続する本実施の形態の踵編地30の編成において、編幅(引き返し幅)の増減を行ったり、引き返し幅の位置による変化をつけたりすることにより、つまり、糸をループ状に編み込んだコース側の目数を変化させることにより、曲率の変化をより大きくして、踵の屈曲形状に沿ってフィットさせることができ、第1筒状編地10及び第2筒状編地20の踵側への引き攣りが少なくなる。
【0081】
そして、本実施の形態の筒状包帯1は、少なくとも第1筒状編地10及び第2筒状編地20のベース組織をリブ編み(ゴム編)、タック編等により、例えば、図9に示すベース糸(地糸)Aで表目と裏目を交互に編むリブ編みによって周方向(ウェール側)に凹凸を交互に連続させ、また、長手方向(上下方向、コース側)で表目と裏目をそれぞれ連続させて統一させた編成を行う。
これにより、第1筒状編地10及び第2筒状編地20の外面側及び内面側、即ち、表裏で、長手方向に連続して延びる凹部及び凸部が交互に並列し、図9に示すように、横断面形状が周方向に凹凸の連続する凹凸状(波形状)を呈する。このとき、凸状に表れる編目の裏面が凹状に表れ、凹状に表れる編目の裏面が凸状に表れることになる。つまり、外面側で凸状に表れる編目は内側面で凹状に表れ、また、外面側で凹状に表れる編目は、内面側で凸状に表れることになる。
【0082】
ここで、装着者の装着部位に触れる内面側で凸状に表れ、その裏面となる外面側では凹状に表れる編目を内側凸部41とし、また、装着部位に触れる内面側では凹状に表れ、その裏面となる外面側では凸状に表れる編目を外側凸部42としたとき、内側凸部41と外側凸部42は互いに隣接して周方向(ウェール側)に交互に配置されている。つまり、装着者の肌に触れる内面側においては、内側凸部41が外側凸部42を介して周方向(ウェール側)に複数本が並列的に、かつ、長手方向(コース側)に連続して延びて配列している。
【0083】
こうして、本実施の形態の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1によれば、装着者の肌に触れる内面側において、長手方向に連続して延び、周方向に複数列並列した内側凸部41により、装着者の皮膚に深い圧迫(押圧)を可能として、環状に作用する周方向の圧迫力(締付圧力)を変化させ、かつ、長手方向で圧迫力を連続させていることで、つまり、圧迫圧の分布において環状にバランスよく強弱が付され、かつ、上下方向に流れるリンパ液、静脈の流れに沿う形で長手方向に連続していることで、静脈、リンパ液の流れを促進させることができ(リンパ液を静脈に促進的に還流でき)、還流促進効果を向上させることができる。また、マッサージ効果により人体の皮膚を柔軟にし組織肥厚を軽減し、筋肉をほぐすことができる。
加えて、編地LMの内面側の凹凸形状によって面の変化があることで、人体の断面周囲の変化がある屈曲部分(例えば、足関節周りの踵付近)の形状に対応して編地LMが密着してフィットし易くなる。
【0084】
更に、本実施の形態の筒状包帯1では、図9に示すように、ベース糸Aをリブ編み等することより形成される凹凸のベース組織に対し、所定間隔のコース(段)でベース糸Aよりも弾性(伸縮性)の高い弾性糸Bを編み込んで挿入した。具体的には、弾性糸Bは、ベース糸Aをリブ編みして編成されるリブ編みベース組織の外側凸部42を形成する編目に対してはニットを行い、即ち、ループを絡め、内側凸部41を形成する編目に対してはミス及び/またはタックを行い、ニットと、ミス及び/またはタックとを交互に繰り返す編成を行った。
【0085】
このように、本実施の形態の筒状包帯1においては、弾性糸Bは、リブ編み等からなる凹凸のベース組織の外側凸部42を形成する編目(表編み)に対してはニットを行い、即ち、ループを絡め、内側凸部41を形成する編目(裏編み)に対してはミス及び/またはタックを行ったことで、図9に示すように、装着者の肌に触れる内面側では弾性糸Bの表出(露出)が少なく、特に、内面側では内側凸部41に弾性糸Bが表出することなく、弾性糸Bの装着者の肌への接触が避けられ、弾性糸Bの素材、伸縮、摩擦等による肌への刺激が抑制されて、肌当たりや肌触りが良いものとなり、弾性糸Bによるアレルギーや湿疹等を抑えることができる。
【0086】
また、第1筒状編地10及び第2筒状編地20において長手方向(コース側)に連続して延びる凹凸のリブ組織に対して弾性糸Bを交編したことにより、ウェール側及びコース側の伸張性、伸縮性が高められ、更に、張力が大きくなって圧迫力(締付力)が向上する。
特に、第1筒状編地10及び第2筒状編地20では、ベース組織がベース糸Aによるリブ編みとされて筒状(環状)に形成されており、そして、弾性糸Bがそのベース糸Aのリブ編みからなるベース組織の外側凸部42を構成する編目に対してニットし、また、内側凸部41を構成する編目に対してミス及び/またはタックを行って所定間隔のコースで挿入されていることで、張力が環状に作用し、環状(ウェール側)の張力が内面側に比して外面側で高くなり、それによって、図9に示すように、装着者の装着部位に触れる内面側において凸状に表れる内側凸部41が、外面側において凸状に表れる外側凸部42よりも最大厚みが大きくなりボリュームが増大し、曲率を持ってその断面外形が曲線に近似し、横断面が略半円形の丸みを帯びた形状に近づく。
【0087】
加えて、ベース糸Aによるリブ編みベース組織に対して弾性糸Bをニットとミス及び/またはタックとを交互に繰り返して挿入していることで、周方向(ウェール側)で張力の変化が生じ、特に、弾性糸Bを、ベース組織の内面側で凹状に表れる外側凸部42を構成する編目に対してはニットし、また、内面側で凸状に表れる内側凸部41を構成する編目に対してはミス及び/またはタックしていることで、外面側において凸状に表れる外側凸部42に比して内面側において凸状に表れる内側凸部41の厚みやボリュームを更に増大させて曲率を持たせ、内面側で凸状に表れる編目と凹状に表れる編目の凹凸のメリハリを際立たせている。
【0088】
このように、本実施の形態の筒状包帯1では、筒状編地M及び樋状編地Nにおいて、人体の装着部位に触れる内面側で長手方向(コース側)に連続して延びる凸状の内側凸部41及び凹状の外側凸部42を形成し、更に、長手方向に連続して延びる凹凸組織に対して弾性糸Bを挿入して筒状(環状)に編成している。特に、弾性糸Bをベース糸Aのリブ編みからなるベース組織の外側凸部42を構成する編目に対してニットし、また、内側凸部41を構成する編目に対してミス及び/またはタックを行って交編させている。こうして、張力(締付力)を環状に高め、装着部位に触れる内面側よりもその裏面となる外面側の張力を大きくし、また、周方向(ウェール側)で張力の大きさを変化させていることで、装着部位に接触させる内面側で凸状に表れる内側凸部41と内面側で凹状に表れる外側凸部42とで張力が相違し、装着者の肌に触れる内面側に形成された長手方向に連続して延びる内側凸部41の最大厚みやボリュームを大きくして、曲率を持たせることができ、内側凸部41の厚み方向の緩衝性(弾力性、クッション性)を高めて装着部位への密着性を高め、高い圧迫力(押圧力)、着圧を得ることができる。
【0089】
ここで、リブ編み等による凹凸のベース組織を構成するベース糸Aとしては、例えば、綿糸、ナイロン糸、ポリエステル糸、レーヨン糸、絹アクリル糸、絹糸、麻糸、綿アクリル混紡糸、麻アクリル混紡糸、毛糸、毛アクリル混紡糸等の毛混糸や、疏水性の合繊を親水基でブロック共重合したり表面を多孔質にしたりした吸湿性糸や、遠赤外線を発生するセラミック糸、ポリウレタンやゴム等の弾性糸等が挙げられる。糸の種類や本数や番手に限定されることなく、各種の糸が使用可能で、複数本組み合わせて束ねても良い。
また、弾性糸Bとしては、ベース糸Aよりも弾性力が高いもので、例えば、ポリウレタンやゴム等の糸が使用される。ポリウレタンやスパンテックス等の弾性の高い糸を芯糸とし、その周囲に他の糸を巻きつけた所謂カバードヤーン、カバーリング糸等であっても良く、複数本組み合わせても良い。
【0090】
なお、編み方に強度、弾力を持たせるものではあるが、切れ難い比較的引っ張り強度等の機械的強度の高いものの使用が望ましい。
特に、例えば、500〜2000デニールの太い編糸で編成することにより、筒状包帯1は硬く厚いものとなり、装着時に皺が生じ難く、弛みや横皺を防止して高い還流促進効果が得られる。
【0091】
好ましくは、筒状包帯1の筒状編地Mと樋状編地Nの横断面の厚みを2mm〜15mm、より好ましくは、5mm〜15mmの範囲内とすることにより、筒状包帯1の装着時に編地LMに皺が生じ難く、装着部位へのフィット性も高く、装着した際に弛みや横皺が防止されて高い還流促進効果が得られる。特に、装着時に屈曲等の動きがある部位(例えば足の甲側)でも皺が生じ難く、皺の食い込みによる着圧の集中やターニケット作用を防止できる。なお、厚みが2mm〜15mm、より好ましくは、5mm〜15mmの範囲内は、外力を加えていない状態での編地LMの厚み(横断面の厚み)の測定である。
【0092】
なお、リブ編み組織は、所定周期で表目(表編み)と裏目(裏編み)を交互に編み、給糸方向に連続したウェール側(ループの横の列)が表目と裏目の交互に配列した構造を呈すものである。そして、本実施の形態では、給糸方向に対して垂直方向に連続したコース側(ループの縦の行)に表目または裏目がそれぞれ連続するようにして編成される。
また、踵編地30についてもリブ編み組織としてもよいし、第1筒状編地10や第2筒状編地20とは異なる編み方、例えば、天竺編み等の平編み、パール編み、両面編み等で編成しても良い。
【0093】
ところで、本実施の形態の筒状包帯1においては、第1筒状編地10が第2筒状編地20及び踵編地30へと繋がる側とは反対側の端部であって、装着時に人間の心臓に近い方向側に、第1筒状編地10からコース側に目数を増やして環状の補助固定されている。
【0094】
樋状編地Nの最上部にある編地LMの端部Qは、人体の一部(足部及び脚部)が挿入される筒状包帯1の履き口となり、筒状包帯1が人体から勝手に移動することがなく、ずれ落ちを防止してその位置を保持する程度の弾性力を維持している。例えば、リブ編みにより所定の弾性力を確保するようにしても良いし、第1筒状編地10や第2筒状編地20と同様、ゴム等の弾性の高い弾性糸Bを挿入することにより、テンションを高めても良い。
即ち、腕の長さまたは脚の長さに形成し、腕の長さまたは脚の長さの長さ方向に対して垂直に切断した断面は、ベース糸Aによるベース組織に弾性糸Bを交編させてループ状に編み込み、内面側では内側凸部41にベース糸Aよりも伸縮性の高い弾性糸Bが表出することなく、弾性糸Bの装着者の肌への接触を避けた筒状編地Mの端部に、筒状編地Mの外周囲の長さを短くして、前記筒状編地Mの筒を樋状に編み込んだ樋状編地Nとしたものである。
【0095】
なお、この樋状編地Nを、隣接する筒状編地Mの第1筒状編地10のユニット(上端部)よりも弾性力(ヤング率)を高くして、弾性の少ない編地LMで構成した場合には、第1筒状編地10の上端部に当たる大腿部の弾性が大きくならず、逆に低下するから、人体の一部に対して食い込みが少なく、赤くなったり、痒くなったりするのが防止され、装着感や使用感が良くなる。即ち、第1筒状編地10に突然端部を生じさせると、弾性力(ヤング率)が隣接するユニットの影響を受けないで、何倍かの弾性力が直接大腿部に加わる可能性がある。このような状態で使用すると、個人差により、血液の循環を悪くすることになったり、第1筒状編地10の端部に当たる大腿部が締められることで、赤くなったり、痒くなったりする可能性があるが、第1筒状編地10の最上部に弾性の少ない編地LMからなる樋状編地Nを設けることでそのような不具合を解消できる。また、着圧の集中による還流の阻害を防止できる。特に、第1筒状編地10の端部に隣接するユニット以降の樋状編地Nの弾性力(ヤング率)を順次変化するようにしたり、また、二重に折り曲げても弾性が大きく変化しないようにしたりすることによって、血液の循環を悪くしないから、第1筒状編地10の端部に当たる大腿部の弾性が大きくならず、逆に低下することで、赤くなったり、痒くなったりする炎症を効果的に防止でき、着圧の集中も防止できる。
【0096】
本発明を実施する場合、筒状包帯1の樋状編地N側とは反対側の最下端部側において、編糸の自由端部を拘束できるほつれ止めを複数環状に施して、任意の箇所で切断自在とし、使用する人の足長によって第2筒状編地20の長さ寸法を調節可能としてもよい。
即ち、第2筒状編地20において第1筒状編地10側とは反対側の端部側に、ほつれ止めを複数環状に配設し、当該ほつれ止めの機能により切断自在とし、ほつれ止めによって糸の自由端部を拘束してほつれが入ることがないようにしてもよい。
【0097】
例えば、筒状包帯1の製造中に、供給する編糸に対して、合成樹脂系の接着剤を注入して糸に塗布することによりほつれ止めを施し、そのほつれ止めを複数環状に配設することにより、任意の箇所で切断してもほつれの広がりが防止され、そのほつれ止め機能により切断自在として、第2筒状編地20の長さ寸法を調節可能とすることができる。ほつれ止めは一重で形成されていてもよいし、二重であっても良いし、所定の幅で形成されてもよい。
特に、ほつれ止めとして着色した接着剤を使用することにより、切断箇所の指示を明確にできる。なお、図7に示した第2筒状編地20の最下端は、着色した接着剤が塗布された糸により編成されたほつれ止めで切断されたものである。
【0098】
このようにほつれ止めを複数環状に配設し、切断自在とすることで、例えば、圧迫力を基に規格を作成した場合には、使用者の身体に応じて長さサイズを変更でき、使用者に対しては使用する際の重要なファクターである圧迫力を基に選択でき、装着部位の長さに合わせて切断すればよいことから、使用者に特別な知識を準備させる必要がない。そして、ほつれ止めがなされていることで部分的切断によって機械的強度が低下することもない。
また、本発明を実施する場合には、筒状包帯1の樋状編地N側とは反対側の最下端の端部Tにおいて、伏せ目編成によりほつれ止めを行ってもよい。
勿論、筒状包帯1の樋状編地Nについても、筒状編地Mと同様に筒状編地Mに樋状編地Nを接続し、その最上の端部P,Rにおいも伏せ目編成によりほつれ止めを行っている。
【0099】
次に、このような構成の本実施の形態に係る筒状包帯1の編成の詳細について、主に、編成パターンを示した図10乃至図12を参照して詳しく説明する。
本実施の形態の筒状包帯1は、例えば、少なくとも前後一対の対峙するニードルべッドを備えた横編機を用いて編成することができる。特に、株式会社島精機製作所製のニット横編機のホールガーメント編機(ホールガーメントは株式会社島精機製作所の登録商標。例えば、株式会社島精機製作所製造のホールガーメント横編機MACH2X、MACH2XS,MACH2S,SWG等)の使用により、周回編成を行うことで、無縫製で筒状に編成することが可能である。
以下、前後一対の対峙するニードルべッドを備えたホールガーメント横編機を使用して、筒状包帯1を無縫製で筒状に編成した事例で説明する。
【0100】
具体的には、少なくとも前後一対の針床を有し、前後針床が相対的にラッキング可能に構成された横編機、より詳細には、ゲージに2本の編針を夫々摺動可能に挿着したニードルベッドを有し、各ニードルベッドの上面を摺動走行するキャリッジで各編針が進退摺動操作されると共に、前後のニードルベッドが相対的に移動(ラッキング)可能とされた構造の横編機を用いて編成を行った。
【0101】
そして、このような前後一対の対峙するニードルべッドを備えた横編機を用いた編成により、本実施の形態の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1は、筒状包帯1を人体の下肢に装着した際に脚の膝側や足の甲側を正面側とし、脚の脹脛側や足の踵側を背面側としたとき、正面側及び背面側に対して側面とされる左または右側面の編成パターンが、それに対向する右または左側面の編成パターンと同じになるように前後針床上の針に展開され、左右の対向する側面の編地LMの形状が略同一形状に編成される。即ち、図4において、正面側端縁の左右対称線d1及び背面側端縁の左右対称線d2の位置が給糸方向の反転箇所に位置して前後針床上の編成領域の左右両端の針で編成されるように針床上の針に展開されて周回編成を行うことで、正面側端縁の左右対称線d1及び背面側端縁の左右対称線d2の位置において、左右側面の編地LMが両端で連続した筒状に編成される。
【0102】
具体的に、本実施の形態に係る筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1の編成の実施の形態を例に挙げて説明する。
本実施の形態の筒状包帯1の筒状編地M及び樋状編地Nにおいては、相対的に弾性の小さいベース糸Aによるリブ編みからなるベース組織に相対的に弾性の大きい弾性糸Bを交編させて編成されている。
リブ編みからなるベース組織の編成は、装着した際に編地表面側(外面側)に表目として表れる編目を前針床の針に係止させ、裏目として表れる編目を対向する後針床に移した後、前後のニードルヘッドの針に亙って編糸をジグザグに供給して左または右側面(上記正面側及び背面側に対する側面側)の編地LMとなる何れか一方の編地のコース編成を行い、そのコース編成後に裏目形成のために後針床に移されていた編目を元の前針床に移し戻すようにして左または右側面となる片方の側面の編地LMの全部を前針床に係止(付属)させる。そして続く他方の右または左側面の編地をコース編成する際には、装着した際に編地表面側(外面側)に表目として現れる編目はそのまま後針床の針に係止させ、裏目として現れる編目を対向する前針床に移した後、前後のニードルヘッドの針に亙って編糸をジグザグに編糸を供給して編地LMのコース編成を行い、そのコース編成後に裏目形成のために前針床に移されていた編目を元の後針床に移し戻すようにして右または左側面となる片方の側面の編地LMの全部を後針床に係止(付属)させる。このとき、周回状に給糸されることで左側面の編地と右側面の編地で筒状となり、表編みと裏編みが交互に配設したリブ編み組織が編成される。
【0103】
ここで、本実施の形態では、図10及び図11に示すように、第1筒状編地10及び第2筒状編地20のベース組織を、弾性の小さいベース糸Aによってウェール側に表目と裏目とが3×3のリブ編みの編成としている。
そして、本実施の形態においては、図10及び図11に示すように、弾性の小さいベース糸Aによって編成されるウェール側に3×3のリブ編み組織に対して1コース(1段)おきに(ごとに)弾性の大きい弾性糸Bを表目(表編み)、つまり、編地LMにおいて外面側で凸状に表れ内面側で凹状に表れる外側凸部42を構成する編目に対してニットし、一方で、裏目(裏編み)、つまり、編地LMにおいて外面側で凹状に表れ内面側で凸状に表れる内側凸部41を構成する編目に対してミスすることにより、ウェール側にニットとミスの交互の繰り返しで3×3のリブ編み組織に交編している。
【0104】
なお、本実施の形態においては、弾性の小さいベース糸Aよりも弾性の大きい弾性糸Bの方が糸の太さが小さく(糸が細く)、外部から力を加えていない通常状態では、図4(a)に示すように、筒状包帯1の内面側で弾性糸Bの表出が殆どなく、外部から力を加えた状態の図4(b)や図4(c)でも、筒状包帯1の内面側で内側凸部41では弾性糸Bが表出せず、外側凸部42でも弾性糸Bの表出が少なく、弾性糸Bが装着者の肌に接触し難いものとなっている。図8で示したように、外面側(表面側)から見ると、内側凸部41においては弾性の小さいベース糸Aに弾性の大きい弾性糸Bが重なるように配置されている。
【0105】
なお、樋状編地Nの下端部と筒状編地Mの上端の端部Qより上の編地LMを左右対称線dを中心にして展開すると、図8に示すようになる。筒状編地Mの端部Qから筒状編地Mの上端の端部Qは、X=30°、左右対称線d1と左右対称線d1間は360°で筒を形成している。筒状編地Mの上端が環状であることを示している。具体的には、所定の筒径まで減らし目されて編目数を減少させる。
発明者の実験によれば、樋状編地Nの編地LMの広さは、筒状編地Mの中心位置の左右対称線dからX=30°〜270°とするのが好適であり、樋状部分が自立し、かつ、必要な弾性力を付与できるものである。
【0106】
更に、本実施の形態の筒状包帯1においては、図9に示すように、外側凸部42を構成する3目の真ん中の目をそれに隣接する左または右の目に対して目移し(重ね)を行い、詳細には、コース方向で順に左目または右目と交互に目移しを行うメッシュ状編成によって、第1筒状編地10及び第2筒状編地20の編地において外面側で凸状に表れ内面側で凹状に表れる外側凸部42では、外面側で凹状に表れ内面側で凸状に表れる内側凸部41に比して編地密度を低下させて通気性を高めている。
特に、ベース糸Aに綿糸等を使用することでも通気性が良く、肌触り、肌当たりに優れ、また、装着部位への緩衝性が高く、高い密着性が得られる。
なお、本発明を実施する場合、通気を良くするための孔をタック等によって形成することも可能である。
【0107】
また、本実施の形態の筒状包帯1では、第1筒状編地10と第2筒状編地20を繋げる踵編地30は、ベース糸Aによって平編み(天竺編み)編成されている。
更に、樋状編地Nの最上部の端部W、端部Rにおいても、伏せ目編成によりほつれ止めを行っている。袋編み編成により図9で示したように、第1筒状編地10や第2筒状編地20と同様、ベース糸Aによるベース組織に弾性糸Bを交編している。なお、弾性糸Bの挿入は外面側(表側)のみとされて使用者の肌に触れる内面側では弾性糸Bが表出しないようになっている。また、袋編みの編み始め側とする最上端部側では弾性糸Bが挿入されず、弾性変形を少なくしている。
【0108】
ここで、本実施の形態の筒状包帯1について、樋状編地N、第1筒状編地10側から編み出す事例で説明すると、初めに、弾性の小さいベース糸Aによる平編み組織を袋編み編成し、そこに所定コースで弾性の大きい弾性糸Bを交編させ、所定コースを筒状に編んで樋状編地Nの編成を行い、続いて、3×3のリブが編成されるように編目の移し分けを行い、第1筒状編地10の編成を行う。
【0109】
本実施形態の第1筒状編地10では、表1に示した人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・L6,L7に対する垂直断面の周囲長の人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・m6,m7から、ベース糸Aからなるループの径を一定とし、人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・L6,L7に対応して設定されるヤング率を基に計算した計算結果に近似する目数の算定によりウェール側の環状を形成する1環状の編目列となる針目数が特定され、人体位置情報L0,人体位置情報L1,人体位置情報L2,人体位置情報L3,・・・人体位置情報L6,人体位置情報L7の順に編成される。
【0110】
このとき、表1で人体周囲長情報m0から人体周囲長情報m7に向かって順に周囲長が短くなり径が縮小しているのに伴い、順に針目数を減らす減らし目により編幅を短くし筒径を減少して編成が行われる。
そして、本実施の形態の筒状包帯1の第1筒状編地10においては、このように人体位置情報L1から順に、人体位置情報L2、人体位置情報L3・・・人体位置情報L7に対応する編成を行い、人体位置情報L7に対する周囲長の人体周囲長情報m7に対応して所定の筒径まで減らし目を行い、下部の端部まで所定の編目数に減少させる。
同様に、本実施の形態の樋状編地Nにおいても、このように人体位置情報L0から順に人体位置情報L1、人体位置情報L2に対応する編成を順次行い、人体位置情報L1に対する周囲長の人体周囲長情報m1に対応して所定の筒径まで順次目を減らし、下部の端部まで所定の編目数に減少させる。
【0111】
本実施の形態の筒状編地Mの第1筒状編地10では、例えば、図10の編成図に示すように、弾性の小さいベース糸Aを用いた3×3のリブ編みとするベース組織に弾性糸Bを1コースごとに挿入して交編する。このとき、本実施の形態では、弾性糸Bが、ベース糸Aを用いた3×3のリブ編みとするベース組織において外面側(表側)で凸状に表れる表目3目(ウェール側)からなる外側凸部42を形成するニット部分に対してニットを行い、編地LMの内面側で凹状に表れる裏目3目(ウェール側)からなる内側凸部41を形成するニット部分に対してミスする、ニットとミスの所定の交互の繰り返しによってベース糸Aによる3×3のリブ編みに交編される。
更に、本実施の形態では、外面側に凸状に表れる外側凸部42を構成する表目3目(ウェール側)の真ん中の目を隣接する右目または左目に目移し(コース方向で右目または左目の交互に目移し)する編成が行われる。
【0112】
詳細な手順は、図11の編成図に示すように、ベース糸Aの給糸によって3×3にリブ編みしたリブ編みコースに続き、ベース糸Aから弾性糸Bに切り替え、弾性糸Bの給糸によって上記リブ編みしたウェール側の表目3目をニットした編針には弾性糸Bのニットを行い、一方でウェール側の裏目3目をニットした編針にはミスする弾性糸編みコースを行う。そして、再びベース糸Aに切り替え、ベース糸Aの給糸によって、弾性糸編みコースで弾性糸Bをニットした編針にはベース糸Aをニットし、上記ミスした部分の編針にもベース糸Aをニットさせて3×3のリブ編みを行った後、再び弾性糸編みコースを編成する。
【0113】
また、このようなリブ編みコースと弾性糸編みコースを交互に適宜繰り返す間において、リブ編みコースと弾性糸編みコースが交互に所定回数周回編成されたところで、外面側で凸状に表れる外側凸部42を構成する3目(ウェール側)の真ん中の目を隣接する左または右のどちらかの目に目移しを行い、更に、再びリブ編みコースと弾性糸編みコースが交互に所定回数周回編成されたところで、外側凸部42を構成する3目(ウェール側)の真ん中の目を前回の目移しとは反対側の右または左のどちらかの目に目移しを行う編成を行う。これらの繰り返しにより本実施の形態の筒状編地Mの第1筒状編地10が編成されている。
【0114】
そして、このように弾性の小さいベース糸Aによるリブ編み組織に弾性の大きい弾性糸Bを交編させながらコース側に連続させる間、表1に示した人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・L6,L7に対する垂直断面の長さの人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・m6,m7に対応して筒径を減少させるためにウェール側の目数を減少させる減らし目編成が行われる。減らし編成は、内減らしであっても外減らしであってもよい。勿論、弾性の小さいベース糸Aからなるリブ編み組織の減らし目に対応して弾性糸Bが交編される。
【0115】
なお、本実施の形態の筒状包帯1の筒状編地M及び樋状編地Nにおいては、装着時に正面側(左右対称線d1側)となる方での目減らしによって編地LMのウェール側のループ数を減少させ、人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・m6,m7や、ヤング率(E)に対応して筒径を減少させている。減らし目編成は、例えば、ベース組織のリブの表目または裏目の1目を隣接する表目または裏目に重ね(移し目)、場合によっては編地LMを移して寄せることにより行われ、減らし目編成を適宜繰り返し、コース方向に所定の随所で減らし目されることにより、人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・m6,m7や、ヤング率(E)に対応した筒径とされる。人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・m6,m7に基づくウェール側の針目数の低減を1〜2目単位(筒状全体で2〜4目単位)、即ち、1〜2本の編目(針目)単位(筒状全体で2〜4本単位)で除々に行うことにより輪郭形状が段差のない連続する滑らかな線状となって段差による皺等が目立つことなく、脚の輪郭形状に沿ったフィット性及び安定した着圧が得られる。また、着用感も良い。しかし、本発明を実施する場合、ウェール側の針目数の低減を数単位として急な角度の接続とすることも可能である。
【0116】
このとき、本実施の形態では、装着時に正面側となる側で減らし目(内減らしまたは外減らし)が行われている。つまり、図4の側面視で紙面左方向の正面側端部(左右対称線d1側)において減らし目がなされている。このため、図7の正面視で装着時に正面側となる部分では、その中心線側(左右対称線d1側)に向かってコース方向に連続して延びる外側凸部42を形成する編目及び内側凸部41を形成する編目が収束している。
一方、図8に示すように、背面側では、各外側凸部42及び各内側凸部41が平行にコース方向に連続して延びていることで、リンパ、静脈の流れに沿って高い還流促進効果が得られる。また、編成時において給糸方向を反転させる箇所(前後の針床の左右端部)の直線状の目面が左右対称線d1,d2上となり、装着時に正面側及び背面側の中心線上に表れることで、外観性も良く、踝側に給糸方向の反転箇所が位置しないため、第1筒状編地10及び第2筒状編地20の踝周囲への密着性を高くできる。
なお、本発明を実施する場合には、背面側や、正面側と背面側との間の中央側で目減らしを行ってもよい。特に、針床の左右どちらかの端部側で目数の増減を行う編成方法では編地の歪みが生じにくいものとなる。
【0117】
続いて、このように人体位置情報L1側から順に、人体位置情報L2、人体位置情報L3、・・・人体位置情報L7側に向かって所定の筒径まで減らし目されて編目数を減少させた第1筒状編地10に対し、第1筒状編地10が属する所定の前後針床の左右方向の方側(装着時に背面側となる方)の編針に編糸を前針床と後針床に交互にC字状に反転させながら供給して引き返し編成を行い、踵編地30の編目コースを編成する。その間、残りの第1筒状編地10の一部が係止する編針は休止状態を保ち引き返しのコース編成を行わない。このとき、休止する編針は第1筒状編地10の最終コースのウェール側の1環状の編目列が属する(係止する)針床の60%以上とされる。即ち、第1筒状編地10の最終コースのウェール側の1環状の編目列が属する針床の40%以下の編針だけに編糸が給糸され引き返しのコース編成がなされる。なお、この実施例では、踵編地30の編成は天竺編みとした。
【0118】
ここで、本実施の形態の筒状包帯1では、例えば、編成過程を概念的に示した編成コース図である図10乃至図12に示すように、第1筒状編地10の最終コースのウェール側の編目列が属する(係止する)前後針床の編針のうち、左右方向の方側端部(装着時に背面側となる方)の編針を使用し、そこから、第1筒状編地10の最終の編目列が係止していない編針を順に用いると共に、第1筒状編地10の最終コースの編目列が属する(係止する)上記の方側端部から前後針床において内側の編針を順に用い、徐々に引き返し幅を増やして編幅(ウェール側の目数)を増やし、針床に沿う往復方向の給糸で前針床と後針床に交互にC字状に反転させながら、引き返し編成を行っている。即ち、前針床と後針床でC字状に交互に反転させながらコース編成を増大させる際に、各針床において使用する編針をウェール側の両端で増やし、増目を行っている。
【0119】
そして、所定の編幅に達した後は、使用する編針を前後針床において内側から外側(図11の紙面において左側から右側)に順に移動させ、また、第1筒状編地10の最終の編目列が係止していない編針を順に用いて、引き返し幅を外側(背面側)に移し、かつ、徐々に編幅(ウェール側の目数)を減少させ、前針床と後針床に交互にC字状に反転させながら引き返し編成を行っている。即ち、前針床と後針床でC字状に交互に反転させながらコース編成を増大させる際に、引き返し幅の減少を行い、ウェール側の減目を行っている。なお、このとき、先のコースごとウェール側の編目列の目数の増大よりも大きい割合でコースごとのウェール側の編目列の目数の減らしが行われる。
【0120】
例えば、第1筒状編地10の最終の編目列が属し(係止し)て、そこに踵編地30が繋がる編針数10本に対し、最終的には、踵編地30が属する編針数を25本に増大させるようにする。このとき、踵編地30の編成は、例えば、図11で示すように、第1筒状編地10の最終の編目列が属する(係止する)所定の前後針床のウェール側の端部(背面側)の針数2目から開始し、第1筒状編地10の最終の編目列が係止していない編針を順次用いて目増やしを行うと共に、引き返しの両端部で順次第1筒状編地10の最終の編目列が係止している針床の内側の編針を用いて、目増やしを行い第1筒状編地の最終コースの編目列に接続させて、前後の針床の針数が各20目になるまで順次C字状の引き返し編成を目増やししながら行う。続いて、ウェール側の前後針床の各針数を20目としたところで、今度は、使用する針床の編針を外側に順次移動させ、また、第1筒状編地10の最終の編目列が係止していない編針を順次用い、前後の針床の針数が各2目になるまで順次C字状の引き返し編成を目減らししながら行う。ここでは、最初のコースごとの増目単位のときよりも減目単位を多くしている。
なお、針目数の増減または低減は1〜2単位(筒状全体で2〜4単位)、即ち、1〜2本の編目(針目)単位(筒状全体で2〜4本単位)で除々に行うのが好ましい。
【0121】
これにより、本実施の形態では、踵編地30でゴアライン(接ぎ線)が形成されることがなく、また、第1筒状編地10の最終列の編目が属する前後針床の最端部(背面側の一端部)の編針でのニット回数を多くして、第1筒状編地10の最終列が属するウェール側の最端部(背面側の一端部)の編目に接続するコース側の目数を最も大きくしており、図7で示したように側面視で、踵編地30は境界部Pを中心とした扇形の略円弧形状を呈している。なお、実施の形態では、針目数の増減や引き返し幅の移動は、前後両方の針床の編針で同じに統一しており、左右の側面の編地LMは左右対称形に形成されている。図7の編成図では、装着時に人体の脚の脛側及び足の甲側を正面としたとき、その正面に対して右側面側の編地LMの編成基本動作(編幅の変化)のみを図示している。
【0122】
このように、前後両方の針床の編針を使用した引き返し編成による踵編地30の編成では、前床または後床のどちらかの一方の針床の編針のみ使用する場合と比較して使用可能な針数が限定されてループ数が不足することもなく、踵編地30の寸法形状の表現自由度を高くでき、足の踵の立体形状に応じて編地LMの面積や内部の空間を広く形成できて、編地LMの不足による装着時の踵側での突っ張りを防止できる。
そして、引き返す端部間の位置や幅を変化させて、第1筒状編地10の最終列が属する最端部(背面側の一端部)の編目に接続するコース側の目数が最も大きくなるように編成することによって、つまり、糸をループ状に編み込んだ(ニットさせた)コース側の目数を変化させることにより、曲率を変化させて、足の踵の立体形状にフィットさせることができる。即ち、往復する編目列を、引返す編幅や位置が変化するように編成するので、踵を覆う膨らみ、丸み形状を調整することができる。また、踵の膨らみが最も大きくなる部分での空間を広く形成できて、余裕があり、踵側で無理な張力が掛かるのを防止できる。特に、踵編地30にゴアラインが形成されないので、見た目もよく、かつ、ゴアラインによる編地LMの伸びの妨げや皺が生じることもない。よって、踵形状へのフィット性が高まり、踵側での緊張が防止され、第1筒状編地10及び第2筒状編地20の踝周囲への密着性を高めることができる。更に、横編機による編成時に、編地LMに無理な力をかけることもないので、編地LMの歪みを少なくできる。
しかし、本発明を実施する場合には、踵編地30の編成の始めから終わりまで、編幅を一定としても良いし、ウェール側の目数を増大する編成としても良い。
【0123】
特に、第1筒状編地10の編み終わりとなる最終コースのウェール側の1環状の編目列で形成される環状の周囲長の40%以下、好ましくは第1筒状編地10の最終コースの1環状の編目列が属する針床の編針を使用して、その針数の10%〜40%、更に好ましくは20%〜40%の範囲内を用い、そこに、踵編地30が接続され、また、第2筒状編地20の編み始めコースのウェール側の1環状の編目列で形成される環状の周囲長の40%以下、好ましくは10%〜40%、更に好ましくは20%〜40%の範囲内のウェール側の目数に対応した針床の編針に踵編地30が属することにより、踵編地30が第1筒状編地10において第2筒状編地20へと繋がる最端部(下端部)の編幅の40%以下、好ましくは10%以上、40%以下、より好ましくは、20%以上、40%以下の範囲内に対して、また、第2筒状編地20の第1筒状編地10へと繋がる最端部(上端部)の編幅の一部の40%以下、より好ましくは10%〜40%の範囲内、更に好ましくは20%〜40%の範囲内に対して繋がることになる。これにより、筒状包帯1の装着時に踵側で無理な張力がかかり難く、踝周囲での第1筒状編地10及び第2筒状編地20の浮きが防止されて踵周囲への密着性を高めることができる。
なお、本発明を実施する場合には、第1筒状編地10の最終コースの1環状の編目列が属する針床を使用することなく、当該最終コースの1環状の編目列が属していない(係止していない)編針を使用して、そこからウェール側の目数を徐々に増大させることにより、踵編地30を編成してもよい。また、踵編地30において、針目数の増減や引き返し位置の移動を、前後両方の針床の編針で相異させて左右の側面の編地を非対称形とすることも可能である。
【0124】
このようにして踵編地30を編成した後は、踵編地30を編成する間に休止状態にあった前後針床上の第1筒状編地10の編目が属する(係止する)編針と、踵編地30の編目列の編目が属する(係止する)編針とを使用して、再度編糸を周回状に供給して第2筒状編地20の編成を行う。
第1筒状編地10の最終列の編目が属している(係止している)編針を使用した編成により、筒状編地M及び樋状編地Nの第1筒状編地10に第2筒状包帯20が連続して繋げられると共に、踵編地30の最終列の編目が属している編針を使用した編成により踵編地30に対しても第2筒状包帯20が連続して繋げられる。
【0125】
このとき、第1筒状編地10及び踵編地30及び第2筒状編地20へと繋がる最端部(下端部)のウェール側の1環状の編目列の目数に対し、第2筒状編地20の踵編地30及び第2筒状編地20へと繋がる最端部(上端部)のウェール側の1環状の編目列の目数が、10〜40%の範囲内、好ましくは、20〜30%の範囲内に増大されている。即ち、第1筒状編地10の踵編地30及び第2筒状編地20へと繋がる最端部の1環状の編目列で形成される環状の径に対し、第2筒状編地20の踵編地30及び第2筒状編地20へと繋がる最端部の1環状の編目列で形成される環状の径が1.1〜1.4倍の範囲内、好ましくは、1.2〜1.3倍の範囲内に拡径されている。
【0126】
そして、第2筒状編地20では、人体位置情報(L8,)L9,L10に対する垂直断面の周囲長の人体周囲長情報(m8,)m9,m10から、ベース組織であるリブ編み組織においてベース糸Aからなるループの径を一定とし、人体位置情報(L8,)L9,L10に対応して設定されるヤング率を基に計算した計算結果に近似する目数の算定によりウェール側の環状を形成する1環状の編目列となる針目数が特定されて、断面の寸法形状変化に合わせて目数の調整が行われ、(人体位置情報L8,)人体位置情報L9,人体位置情報L10の順に編成される。
本実施の形態では、踵編地30側から人体周囲長情報m9、人体周囲長情報m10側に向かって針目数を減らす減らし目(内減らしまたは外減らし)により編幅を短くし筒径を減少して編成が行われる。
第2筒状編地20においても、第1筒状編地10と同じく、弾性の小さいベース糸Aを用いた3×3のリブ編みとするベース組織に弾性糸Bを1コースごとに交編して、編成される。
【0127】
なお、図3及び図7に示したように、本実施の形態の筒状包帯1の第2筒状編地20においては、装着時に足裏側(左右対称線d2側)となる方での目減らしによって編地LMのコースのループ数を徐々に減少することで、筒径を減少させている。ここでも、減らし目編成は、例えば、ベース組織のリブの表目または裏目の1目を隣接する表目または裏目に重ね、場合によっては編地LMを移して寄せることにより行われ、減らし目編成を適宜繰り返し、コース方向に所定の随所で減らし目されることにより、人体周囲長情報(m8,)m9,m10に対応した筒径とされる。そして、ウェール側の針目数の低減を1〜2単位(筒状全体で2〜4単位)、即ち、1〜2本の編目(針目)単位(筒状全体で2〜4本単位)で除々に行うことにより輪郭形状が段差のない連続する滑らかな線状となって段差による皺が目立つこともなく、足の輪郭形状に沿ったフィット性が得られる。しかし、本発明を実施する場合、針目数の低減を数単位で段階的に行い、急な角度の接続とすることも可能である。
【0128】
このとき、本実施の形態では、装着時に足裏側となる側で目減らし(内減らしまたは外減らし)が行われ、つまり、図3の側面視で紙面右方向の背面側端部(左右対称線d2側)において減らし目がなされている。このため、背面視で装着時に足裏側となる部分では、その中心線(左右対称線d2側)に向かって長手方向(コース方向)に連続して延びる外側凸部42を形成する編目及び内側凸部41を形成する編目が収束している。一方、装着時に足の甲側となる正面側では、各外側凸部42及び各内側凸部41が平行に長手方向(コース方向)に連続して延びていることで、足の爪先からのリンパ、静脈の高い還流促進効果が得られる。
なお、本発明を実施する場合には、装着時に足の甲側となる正面側、正面側と背面側の間の中央側で目減らしを行ってもよい。特に、針床の左右どちらかの端部側で目数の増減を行う編成方法では編地LMの歪みが生じにくいものとなる。
【0129】
因みに、上記実施の形態の編成においては、第1筒状編地10から踵編地30、踵編地30から第2筒状編地20と編成を行うときに給糸位置が変更する切換えが行われ、踵編地30の端部で糸が切断される。糸の切断によって直ちに機械的強度が低下するものではないが、切断された糸のほつれを防止する処理、結ぶとか、合成接着剤で接着させるとかの方法によって、所定の耐久性が維持できる。
【0130】
ここで、このようにして編成された上記実施の形態の筒状包帯1を人体の足型に装着し、足関節周りの着圧を測定した。
このときの筒状包帯1の素材は、第1筒状編地10及び第2筒状編地20を構成するベース糸Aに綿糸20/2×5本、弾性糸Bにポリウレタンの芯糸(260デニール)の周囲にポリエステルの糸(75デニール)を巻いたダブルカバーリング糸×2本を使用し、また、踵編地30を構成するベース糸Aに綿糸20/2×2本を使用した。
そして、比較のため、市販のリンパ浮腫用の弾性ストッキング(従来品)についても同様にして着圧を測定し、筒状包帯1と比較した。
これらの測定結果を表2に示す。
【0131】
【表2】
【0132】
表2に示したように、上記実施の形態の筒状包帯1によれば、各測定部位において、下肢のリンパ浮腫等の治療(還流促進効果)に適する着圧(10〜46mmHg程度)が得られた。
特に、従来品の比較例では、踵側の踝周囲(測定点e、測定点f)の着圧が、足の甲部(測定点g)の着圧の半分程度であり、踵側の踝基端部(測定点e、測定点f)と足の甲部(測定点g)との着圧差が50%(8〜11mmHg)程度あった。また、足首部(測定点h)の着圧に対して、足の甲部(測定点g)の着圧は75%程度、踵側の踝基端部(測定点e、測定点f)の着圧は僅か40%〜50%程度であった。
これに対し、実施の形態の筒状包帯1では、踵側の踝基端部(測定点e、測定点f)と足の甲部(測定点g)の着圧が同等で、その着圧差は僅か5%(1mmHg)であった。また、踵側の踝基端部(測定点e、測定点f)及び足の甲部(測定点g)の着圧は、足首部(測定点h)の着圧と同等以上であった。
【0133】
また、樋状編地Nは、端部Wまたは端部Rの編地LMが身体の一部を適当な弾性力で挟むから、編地LMが脚の周りにフィットする。特に、本実施の形態の筒状包帯1においては、筒状編地M及び樋状編地Nが、人体の断面の変化に対応して環状の編目数を可変するものであるから、個人の症例に合わせたオーダーメイド型の圧迫力の付与が可能となる。また、規格品であるスタンダードを作成することも使用者のデータ及び国民の平均体形から算出することで容易となる。特に、目数により周囲長を変化させるものであるから、部位に応じた圧迫力の変化を容易に可能とし、静脈瘤やリンパ浮腫等で人体の断面変形が重度な患者に対しても、特定部位へ所望とする圧迫力を加えることができ、還流促進効果を高めることが可能である。
【0134】
このように、上記実施の形態の筒状包帯1によれば、足の甲側での皺の発生が防止されて着圧の集中が防止され、また、踵側での引き攣りが防止され、踝周囲にも編地LMが密着し、編地LMが足関節周りにフィットすることで、踝周囲の着圧を高めることができ、足の甲側と踝周囲(踵側の踝基端部)の着圧差が殆どなく、着圧分布が安定して均一となる。また、足の甲側から踝周囲にかけての着圧と足首部の着圧差も少なくでき、足の甲側から踝周囲にかけて足首部と同等以上に着圧を高めることができる。よって、下肢において高い還流促進効果が得られ、特に踝部や足首背面の浮腫や組織肥厚に対しての軽減効果も高くなる。更に、リンパ液が溜まり易い踵部の踝周囲(踵側の踝基端部)、足首背面側においても高い着圧を発現できることで、足関節周りにおいて筒状包帯1の内面側に形成された長手方向に連続して延びる凹凸(外側凸部42及び内側凸部41)の着圧の強弱による還流促進効果及びリンパの流れに沿った還流促進効果が一段と高くなる。
【0135】
次に、筒状包帯1の着圧と還流促進等の改善効果、装着感との総合評価を行ったので、それを示す。
即ち、周囲長が異なる筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1(第1筒状編地10及び第2筒状編地20を構成するベース糸Aに綿糸20/2×5本、弾性糸Bにポリウレタンの芯糸(260デニール)の周囲にポリエステルの糸(75デニール)を巻いたダブルカバーリング糸×2本を使用し、また、踵編地30を構成するベース糸Aに綿糸20/2×2本を使用)を数種類用意し、足型の足関節周りに装着させた際の着圧測定を行い、また、筒状包帯1を実際にリンパ浮腫患者(30名)に装着してモニタアンケートを実施し、着圧との関係で評価した。
【0136】
ここで、着圧は、実施の形態の筒状包帯1を人体の足型、即ち、上述した5本指ソックス用ディスプレー紳士用((株)店研創意 51-196-10-2)の足型(左足)に装着して測定を行ったものである。着圧は人体の装着部位の凹凸や弾力等によって影響を受け易いことから、ここでは人体の足型模型に装着したときの着圧で評価を行った。
着圧の評価は、踵側の外果基端部(測定点f)の着圧(hhmg)を基準にして行った。
なお、着圧測定器及び測定方法は、上述と同様にした。
【0137】
そして、本実施の形態の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1を実際に下肢のリンパ浮腫の患者(30名)に装着、具体的には、軽度〜重度の任意のリンパ浮腫患者をモニターとして、下腿部に筒状包帯1を1日6時間〜12時間程度で1週間〜2週間程度装着させて、装着後の下肢の浮腫改善(軽減)効果と装着時の締め付け感、圧迫感を問い、着圧との関係で評価した。浮腫改善(軽減)効果については、装着前と比較して浮腫の改善(軽減)効果が高かったものを◎、浮腫の改善(軽減)効果に効果的であったものを○、浮腫の改善(軽減)効果が僅かであったものを△とした。締め付け感、圧迫感については、締め付け感、圧迫感が殆ど感じられなかったものを◎、締め付け感、圧迫感を僅かに感じるが日常生活で違和感が生じなかったものを○、締め付け感、圧迫感が強く、日常生活で違和感を生じたり、皮膚トラブル(蒸れ等)が生じたりしたものを△とした。
評価結果を表3に示す。
【0138】
【表3】
【0139】
表3に示したように、筒状包帯1を足関節周りに装着した際の踵側の外果基端部(測定点f)の着圧が15mmHg以上であれば、浮腫が効果的に軽減されることが分かった。より好ましくは、踵側の外果基端部(測定点f)の着圧が20mmHg以上あれば、高い浮腫の改善効果が得られることが分かった。一方で、着圧が55mmHg以上では患者の程度によっては効果が少なくなることもあった。
また、筒状包帯1を足関節周りに装着した際の踵側の外果基端部(測定点f)の着圧が50mmHg以下であれば、締め付け感や圧迫感が少なく、装着の違和感も少ないことが分かった。より好ましくは、踵側の外果基端部(測定点f)の着圧が45mmHg以下であれば、締め付け感や圧迫感が殆ど感じられず、装着感が良好であることが分かった。
【0140】
これより、筒状包帯1を足関節周りに装着した際の踵側の外果基端部(測定点f)の着圧が15mmHg〜50mmHgの範囲内であれば、浮腫が効果的に軽減され、また、締め付け感や圧迫感が少なく、装着の違和感も殆どない。より好ましくは、踵側の外果基端部(測定点f)の着圧が20mmHg〜45mmHgの範囲内であれば、浮腫の高い改善効果が得られ、また、締め付け感や圧迫感が殆どなく、装着感が良好である。
なお、評価に用いた周囲長が異なる数種類の筒状包帯1は何れも、足の甲部と踝周囲の踵側の外果基端部の着圧差が20%以下(5mmHg以下)であった。
【0141】
ところで、上記実施の形態の筒状包帯1においては、人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・相互間でベース糸Aにより編成されるループの径(ステッチの高さ)を一定とし、また、弾性糸Bにより編成されるループの径を一定とし、つまり、ベース糸Aまたは弾性糸Bからなる単一の糸によって形成されるループの径を一定に統一している。なお、ここでの単一の糸から形成されるループの径を一定とは、特定の1ループを形成する1本の糸が同一であればそのループの径は全て同じになることを意味し、編地LMを構成する糸は1種類でなくとも、数種類の糸を使用可能であり、糸の種類、太さ等によってループの径は変化するが、同一の糸であればそのループの径は全て同じとされる。また、単一の糸は、必ずしも1種の糸であることに限定されず、複数種類が組み合わせられたものであってもよい。
【0142】
また、ベース糸Aからなる3(表目)×3(裏目)のリブ編み組織に対して、1コースごとに、その表目の外側凸部42を構成する編目に弾性糸Bをニットさせ、裏目の内側凸部41を構成する編目でミス及び/またはタックする編成を行っている。
そして、人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・相互間でコース側及びウェール側の針数からなる編目密度及びヤング率を一定としている。
これにより、装着時に使用者は常に、第1筒状編地10と第2筒状編地20の全体から均一の圧迫力を受けることができるから人体の長さ方向の特定の部位にのみ外力が加わることがなく、違和感が生じない。長さ方向で装着部位の人体の断面が変化しても均一な圧迫を可能とし、着圧分布を均一化することができる。
【0143】
しかし、本発明を実施する場合には、目数やループの径を変化させたり、ベース糸Aの編み方を変化させたり、弾性糸Bの挿入位置や編み方を変化させたりする等によって人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・の位置に応じてヤング率や編目密度を変化させ、長さ方向で外力を変化させて、圧迫力、着圧分布に変化を持たせることも可能である。例えば、筒状包帯1の装着対象を下肢とした場合、装着時に人体の心臓に近づく側に向かって段階的に順次着圧を減少させる設計によって、還流促進効果をより高めることができる。
【0144】
ここで、上記実施の形態では、第1筒状編地10及び第2筒状編地20のリブ組織の構成を3×3(表目がウェール側に3目、裏目がウェール側に3目交互に繰り返される)とする説明であったが、本発明を実施する場合には、表目と裏目の編目周期は特に限定されない。例えば、図12(a)で示すように1(表目)×1(裏目)のリブ編み組織とし、その表目の外側凸部42を構成する編目に弾性糸Bをニットさせ、裏目の内側凸部41を構成する編目をミス及び/またはタックする編成としてもよいし、図12(b)で示すように2(表目)×2(裏目)のリブ編み組織、図12(d)で示すように8(表目)×8(裏目)のリブ編み組織等として、同様にそれらの表目の外側凸部42を構成する編目に弾性糸Bをニットさせ、裏目の内側凸部41を構成する編目をミス及び/またはタックする編成としてもよい。
【0145】
また、図12(c)で示す2(表目)×3(裏目)のリブ編み組織のように、表目と裏目の目数、即ち、外側凸部42を構成する目数と内側凸部41を構成する目数を異にしても良いし、更に、図12(e)や図12(f)で示すように表目と裏目の目数をそれぞれウェール側で周期的にあるいは変則的に変化させても良い。この場合でも同様に弾性糸Bを表目の外側凸部42を構成する編目にニットし、裏目の内側凸部41を構成する編目にミス及び/またはタックする編成とすることができる。
即ち、本発明を実施する場合には、筒状包帯1の内面側で凹状に表れ外面側で凸状に表れて長手方向(コース方向)に連続して延びる外側凸部42を構成する目数や、内面側で凸状に表れ外面側で凹状に表れて長手方向(コース方向)に連続して延びる内側凸部41を構成する目数はそれぞれウェール側の環状において同一数でなくてもよく、変化させることも可能である。
【0146】
更に、上記実施の形態では、弾性糸Bが、ベース糸Aによるリブ編み等のベース組織に対して、1コースおき(ごと)に挿入(交編)されていたが、本発明を実施する場合には、弾性糸Bの挿入はそれに限定されず、例えば、2コース毎、3コース毎等であってもよいし、コース方向で変則的に挿入してもよい。また、上記実施の形態では、装着者の肌への弾性糸Bの接触を少なくするために、弾性糸Bはベース糸Aによるリブ編み等のベース組織の表目の外側凸部42を構成する編目にニットし、裏目の内側凸部41を構成する編目にミスする編成であったが、本発明を実施する場合には弾性糸Bの挿入はこれに限定されず、例えば、ミス部分をタックとすることも可能であるし、ミスとタックを両方併用してもよい。ニットと、ミス及び/またはタックとした編成以外であっても良い。
【0147】
また、上記実施の形態では、外側凸部42と内側凸部41が長手方向(コース方向)に連続して延びるものとしたが、本発明を実施する場合には、例えば、外側凸部42と内側凸部41が格子状に配置される編成として、長手方向(コース方向)に不連続であってもよい。これによっても装着部位に触れる内面において、凹部(外側凸部42)と凸部(内側凸部41)が交互に並列され、環状の周囲(ウェール側)で凹凸が連続する断面凹凸状(波形状)となり、装着者の長手方向に直角な周方向で着圧に強弱が生ることで、リンパ液、静脈の流れが促進され、高い還流促進効果が得られる。更に、リブ編みに限定されることなく、例えば、鹿の子編み、ワッフル編み等の編成により凹凸を形成してもよい。
【0148】
加えて、上記実施の形態においては、ベース糸Aによって構成されるリブ編みのベース組織に弾性糸Bを挿入することで、リブ編み編成による弾性変形に加え弾性糸Bの挿入により張力を増大させ、高い圧迫力、伸縮性を可能とするが、本発明を実施する場合には、弾性糸Bの交編を省略し、リブ編みのベース組織を形成するベース糸Aに弾力性の高い糸を使用することによって圧迫力、伸縮性を高めることも可能である。
【0149】
なお、上記実施の形態では、第1筒状編地10側から編み出す事例で説明をしたが、本発明を実施する場合には、それに限定されず、第2筒状編地20側から編み出し、第2筒状編地20、踵編地30、第1筒状編地10、樋状編地Nの順に編成することも可能である。この場合には、第2筒状編地20は、踵編地30側に向かって目増やし(増目)によってウェール側の目数を増大する編成が行われ、それに続く踵編地30の編成では、引き返し幅を変化させ、目増やし、目減らしがなされる。そして、続く第1筒状編地10の編成においては、人体位置情報L7側から人体位置情報L1側に向かって目増やし(増目)によってウェール側の目数を増大する編成が行われる。
次に、樋状編地Nの編成においては、人体位置情報L2側から人体位置情報L0側に向かって目減らしが行われ、ウェール側の目数を減少する編成が行われる。
【0150】
このように、本実施の形態の筒状包帯1では、筒状編地Mとそれに連続する樋状編地Nにおいて、人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・に対応して設定される所定のヤング率となるように人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・を基に目数を算出してウェール側の1環状の編目列となる針目数を特定しており、目数(編目数)の増減により下肢等の人体の断面の寸法形状の変化に対応させている。
【0151】
即ち、本実施の形態の筒状包帯1においては、横編機等を使用した平編み編成により、下肢等の人体の断面の外周寸法に基づき、人体の断面の変化に対応してウェール側の1環状の編目列の編目数を変化させている。
【0152】
こうして編目のループ数(針数=針目数)を変化させることによるその編幅、周径の太さを変化させることで、下肢等の人体の輪郭に沿う形状の可変断面を有し、方向性(指向性)を持たせており、編目数の増減により人体の長さに対する断面の寸法形状の相違に対応させ、また、任意の圧迫力の付加を可能とするものである。よって、寸法形状の表現自由度が高く、周囲長を自在とすることができ、人体の断面の寸法形状に対応した最適な径の設計や圧迫力の設定が容易である。特に、従来の丸編機による弾性ストッキングでは着圧がかかり難いとされていた足関節周りの寸法形状に合わせた筒状の径の設定が可能となる。
これより、例えば、足関節周りに装着した場合、余分な編地LMによる装着時の足の甲側での弛みや皺の発生を防止でき、横皺による着圧の集中も防止される。また、装着した際に、余分な編地LMによって生じる足の甲側の弛み、皺による違和感を生じさせることがなく、足の甲側の弛み、皺によって発生する位置ズレも防止できる。更に、踵側での編地LMの不足による引き攣りや余分な編地LMによる弛み、皺の発生も防止できる。そして、このように足関節周りにおいて弛みや皺の発生が防止されることで、弛みや皺を伸ばすために長手方向に引き伸ばした装着形態による踝から背面の踵側における編地LMの浮きが防止され、踝から背面の踵側においても編地LMを密着でき、高い圧迫力、着圧を掛けることができる。更に踝付近でも着圧を高められることで、踝後部の組織肥厚を軽減することも可能である。
【0153】
また、本実施の形態の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1は、第1筒状編地10の最下の端部(下端部)の1環状の編目列の針目数、編幅l1よりも、第2筒状編地20の最端部(上端部)の1環状の編目列の針目数、編幅l2を大きくし、つまり、第1筒状編地10の第2筒状編地20へと続くウェール側の1環状の編目列(最終列)で形成される環状の径(周囲長)よりも、第1筒状編地10から接続される第2筒状編地20のウェール側の1環状の編目列(最初の列)で形成される環状の径(周囲長)の方を大きくし、第1筒状編地10と第2筒状編地20の間で糸をループ状に編み込むコース側の目数を増大して踵編地30を形成し、更に踵編地30で編幅や針床上の給糸の引き返し位置を変化させてコース側の目数の変化を設けることによって、最も膨らみが大きくなる足の踵の輪郭形状に対応して筒状の空間を膨らませることができ、足の踵の輪郭形状に近い立体的な形状とされ、装着時に踵側で段差、皺が生じることもなく、また、踵側で無理な力が掛かることによる引き攣りが防止される。こうして、第1筒状編地10と第2筒状編地20の間を曲率を持たせた踵編地30によって繋げている。
【0154】
特に、踵編地30の第1筒状編地10及び第2筒状編地20との繋がりにおいて、正面側の左右対称線d1及び背面側の左右対称線d2に沿ってウェール側の1環状の編目列が半分となるように環状の内面を相手側の内面に接触する重ね折りにした折り畳んだ状態で、第1筒状編地10と第2筒状編地20と踵編地30との境界部Pから正面側の左右対称線d1に向かう仮想垂線c1の距離幅aと、境界部Pから背面側の左右対称線d2に向かう仮想垂線c2の距離幅bとの比を、6:4≦a:b≦9:1の範囲内とすることにより、曲率を持たせた踵編地30ではなく、断面の輪郭形状が略円形状で長手方向に曲率を持たずに均一な圧迫が可能な第1筒状編地10及び第2筒状編地20が筒状包帯1の装着時に足の甲部側から踝周囲を覆うことになるから、装着時に踝周囲の屈曲にフィットさせることができる。そして、曲率を持たせた踵編地30の形成により装着時に踵側での引っ張りが防止されることで、踝周囲の屈曲の凹部を覆う第1筒状編地10及び第2筒状編地20の浮きが防止され、踝周囲の輪郭形状に追従して第1筒状編地10及び第2筒状編地20を密着させ均一な圧迫を可能とする。
【0155】
好ましくは、第1筒状編地10の第2筒状編地20及び踵編地30へと繋がる最端部のウェール側の1環状の編目列で形成される環状の周囲長の10%〜40%の範囲内、より好ましくは、20〜40%の範囲内に対して、また、第2筒状編地20の第1筒状編地10及び踵編地30へと繋がる最端部のウェール側の1環状の編目列で形成される環状の周囲長の10%〜40%の範囲内、より好ましくは、20%〜40%の範囲内に対して、踵編地30を繋げることで、筒状包帯1の装着によって足関節周りを覆った際に、第1筒状編地10と第2筒状編地20が踵側に引き攣られて突っ張るのが一段と防止され、履き心地が良く窮屈とならない。そして、踝周囲の凹凸を覆う第1筒状編地10と第2筒状編地20の緊張による浮きが防止され、踝周囲へ屈曲形状への密着性を高めることができる。
【0156】
また、本実施の形態の筒状包帯1の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1において、ベース組織をリブ編み等により編成したことで、人体の装着部位に触れる内面側で、長手方向(コース側)に連続して延びる凹部(=内面側で編目が凹状に表れる外側凸部42)及び凸部(=内面側で編目が凸状に表れる内側凸部41)が交互に並列して環状の周方向(ウェール側)に凹凸の連続する横断面凹凸状(波形状)に形成されていることから、装着時にその凹凸によって人体の長手方向に対して直角な周方向で密着性が変化して着圧に強弱が生じ、更に、その凹凸が長手方向(コース側)に連続して延びていることで着圧の強弱がリンパ液の流れる方向に沿うことになるから、リンパ液の流れが促進され、還流促進効果が高まる。また、強弱バランスの良い圧迫力を受けるため違和感もない。
加えて、編地LMの内面側の凹凸形状によって面の変化があることで、人体の断面周囲の変化がある屈曲部分の形状に対応して編地LMが密着してフィットしやすい。
【0157】
特に、本実施の形態においては、弾性糸Bがベース糸Aによるリブ編みからなるベース組織の外側凸部42を構成する編目に対してニットし、また、内側凸部41を構成する編目に対してミス及び/またはタックを行って所定間隔のコースで挿入されていることによって、装着部位に触れる内面側よりも、その裏面となる外面側で環状の張力が大きくされている。このため、筒状包帯1の内面側において、凸部(=内面側で編目が凸状に表れる内側凸部41)と凹部(=内面側で編目が凹状に表れる外側凸部42)のメリハリが際立ち、装着部位に触れる筒状包帯1の内面側に形成された長手方向(コース側)に連続して延びる内側凸部41が曲率を持って厚み方向にボリュームが増大し、緩衝性(弾力性、クッション性)を高めて装着部位への編地LMの密着性を向上させることができる。
【0158】
また、ベース糸Aのリブ編み組織に対して、ニットとミス及び/またはタックとによって弾性糸Bを交編させていることにより、装着部位に触れる内面側に表れる凸部(=内面側で編目が凸状に表れる内側凸部41)と凹部(=内面側で編目が凹状に表れる外側凸部42)とで張力の相違が生じ、特に、弾性糸Bがベース糸Aによるリブ編みからなるベース組織の外側凸部42を構成する編目に対してニットし、また、内側凸部41を構成する編目に対してミス及び/またはタックを行っているため、それによっても、筒状包帯1の内面側において、凸部(=内面側で編目が凸状に表れる内側凸部41)と凹部(=内面側で編目が凹状に表れる外側凸部42)のメリハリが際立ち、装着部位に接触させる内面側に形成された長手方向(コース側)に連続して延びる内側凸部41が曲率を持って厚み方向にボリュームが増大し、緩衝性(弾力性、クッション性)を高めて装着部位への編地LMの密着性を高めることができる。
よって、本実施の形態の筒状包帯1によれば、内側凸部41による密着性を高めて、圧迫力(押圧力)を高めることができ、高い還流促進効果が得られる。
【0159】
このようにして、本実施の形態の筒状包帯1によれば、例えば、足関節周りに装着した場合、弛みの発生や横皺による着圧の集中を防止し、また、踵側での緊張を防止して、足の踝周囲への編地LMの密着性を高め、編地LMが足関節周りにフィットすることで、足の甲側上方と踝周囲の着圧差が殆どなく、足関節周りの着圧分布を安定して均一化することができ、高い還流促進効果を得て、リンパ浮腫等の浮腫の軽減、改善、予防効果を高めることができる。また、疲れやむくみの軽減、改善効果にも有効である。更に、目数の可変により人体の装着部位に対応した筒径、圧迫力の設定が容易に可能で、装着部位にフィットさせることができることで、編地LMの過不足によって生じる摩擦等による痛みや皮膚の損傷、皮膚裂傷、スキン・テア(Skin Tear)等も防止できる。また、着圧集中によるターニケット作用を防止できる。
【0160】
更に、本実施の形態の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1は、このように弾性糸Bがベース糸Aのリブ編みからなるベース組織の外側凸部42を構成する編目に対してニットし、また、内側凸部41を構成する編目に対してミス及び/またはタックを行って挿入されていることで、筒状包帯1の内面側で弾性糸Bの表出が少なく弾性糸Bが装着者の肌に触れ難いから、装着感及び使用感が良い。ベース組織を構成するベース糸Aに綿糸等を使用することでも、吸水性や肌当たり、肌触り等が良く、装着感及び使用感が向上し、蒸れを防止できる。更に、目数の設定等によってループの径(度目、編目の大きさ)、編目密度等を任意にできるから通気対策も万全である。
【0161】
特に、上記実施の形態の筒状包帯1においては、外側凸部42において任意のループを隣接する針に目移しする(重ねる)ことによりメッシュ状(メッシュ調)としていることで、高い通気性も確保される。
加えて、目数の設定等によって、更にはベース糸A、弾性糸Bの弾性や、弾性糸Bの挿入の編み方、ループ(編目)の径等によって、任意の圧迫力に設定できる。
【0162】
また、リブ編み等により長手方向(コース側)に連続して延びる凹部(=内面側で編目が凹状に表れる外側凸部42)及び凸部(=内面側で編目が凸状に表れる内側凸部41)が環状の周囲(ウェール側)で交互に並列し、特に、上記実施の形態では、表目と裏目をウェール側で交互に配列し、表裏でウェール側の編目の編成の変化を持たせていることで、編地LMが皺になり難く(皺が生じ難く)、装着部位への密着性を高め、着圧を安定させることができる。
【0163】
そして、リンパ液が溜まり易い踝(内果、外果)周囲への編地LMの密着性を高めることができることで、踝周囲のリンパ液の流れを促進できて、踝近辺の浮腫の改善効果が高くなる。加えて、第1筒状編地10及び第2筒状編地20の内面側を環状の周方向(ウェール側)に凹凸連続する形状に形成することで、着圧の強弱によって更にリンパ液の流れを促進させ、高い還流促進効果を得ることができる。殊に、凹凸が長手方向(コース側)に連続して延びる形状とすることで、リンパ、静脈の流れに沿うから、リンパ液、静脈の流れを促進する効果が高くなる。なお、上記実施の形態のように、筒状包帯1を人体の足指の付け根部分まで覆う長さに設定した場合には、人体の足指の付け根部分から心臓方向に向かってリンパの流れを促進させることができ、より高い還流促進効果が得られ、足指付け根付近の浮腫の改善効果も高くなる。更に、足首側から大腿部側に向かって段階的に着圧が低くなるように、例えば、足首の着圧が10〜70mmHgの範囲内、下腿領域で5〜35mmHgの範囲内、大腿領域で3〜20mmHgの範囲内で設定することで、還流促進効果をより高めることも可能である。
【0164】
また、本実施の形態の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1によれば、第1筒状編地10及び第2筒状編地20において、人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・に対応する周囲長の人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・を基に、人体の断面の変化に対応して針目数を変化させ、このとき、人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・に対応させた所定のヤング率となるようにして計算した計算結果に近似する針目数に設定し、ウェール側の編目列の人体周囲長の長さを目数、ヤング率で特定することにより、人体の位置によって所定の圧迫力を受けることができ高い還流促進効果が得られる。即ち、目数、ヤング率によって、人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・に対応した弾性力の付与が可能である。
【0165】
このように本実施の形態の筒状包帯1においては、第1筒状編地10及びそれに連続する第2筒状編地20が、人体の断面の変化に対応して環状の編目数を可変するものであるから、個人の症例に合わせたオーダーメイド型の圧迫力の付与が可能となる。勿論、規格品であるスタンダードを作成することも使用者のデータ及び国民の平均体形から算出することで容易となる。特に、目数により周囲長を変化させるものであるから、部位に応じた圧迫力の変化を容易に可能とし、静脈瘤やリンパ浮腫等で人体の断面変形が重度な患者に対しても、特定部位へ所望とする圧迫力を加えることができ、還流促進効果を高めることが可能である。
【0166】
また、静脈瘤やリンパ浮腫等による重度の変形に対しても目数の変化により対応でき、フィットさせ、圧迫できることで、編地LMの過不足、編地LMの浮きにより生じる摩擦等による痛みや皮膚の損傷、皮膚裂傷、スキン・テア(Skin Tear)等も防止できる。特に、静脈瘤やリンパ浮腫等の治療に使用されてきた従来の弾性ストッキング等の市販品は、外国人仕様であり、日本人の体形には不向きであるという問題点も国内の規格を採用することにより解消でき、日本人のサイズに合った仕様にできる。勿論、各人の体形に合わせたオリジナルの商品とすることもできる。
更に、生地の物性を測定し、かつ、ループの径等を決定してヤング率を求めれば、圧迫力を受ける装着者の着圧分布を所望の値に安定させることができる。
【0167】
特に、本実施の形態の筒状包帯1によれば、下肢用サポータとして、足先を除く足部側から足首の位置、脹脛の下部位置、脹脛の上部位置、脛、膝の下位置、膝の上位置として装着し、ベース糸Aからなるベース組織において表目と裏目を交互に編んで凹凸を形成するリブ編み(ゴム)等による編み方により弾性変形を高くし、そのベース組織に弾性糸Bを編み込むことにより圧迫力を増大させることで、目数の設定により3〜70mmHgの範囲内の着圧が得られる。
【0168】
また、本実施の形態の筒状包帯1の装着は人体の一部の長さ方向やそれに直角な筒径方向に弾性に抗して装着すればよいから、熟練者でなくとも任意の圧力を人体の一部の長さ方向に加えれば、必要に応じてその直角方向に圧力を加えれば、無理なく着脱でき、着脱が自由であり、取り扱い及び持ち運びの利便性に優れる。
【0169】
なお、上記実施の形態の筒状編地Mの第1筒状編地10及び第2筒状編地20においては、環状の編目列のウェール側の弾性力(ヤング率)(E)は、糸をループ状に編み込んだコース側のヤング率(E0)と比較すると、E≦E0に設定されている。ウェール側の環状の編目列の弾性力(ヤング率)(E)と、コース側のヤング率(E0)とが同一であると、両方の伸びが同じになり、また、E>E0となると人体に装着する方向側に引っ張り易いが、人体の脚等を入れる筒状の径の広がり方向に引っ張り難くなる。逆に、E<E0となると、人体の脚等を入れる筒状の径の広がり方向に引っ張り易く、引っ張りが伸びとなって変化し、挿入する場合の抵抗が少なく扱い易くなる。したがって、ウェール側の環状の編目列の弾性力(ヤング率)(E)よりも、コース側のヤング率(E0)の方が大きくなっているのが好ましい。これにより、筒状包帯1に外力を加えて装着したり、離脱させたりする際、人体に装着する方向の弾性変形が少ないから、人体に装着して長さ方向に移動させる側に引っ張り易くなり、人体に装着する方向の押圧力で任意の移動が自在となる。即ち、筒状包帯1に外力を加えて装着したり、離脱させたりする際、人体に装着する方向の弾性変形が少なくて移動させようとする方向には伸びが少なくても、人体に装着する方向の押圧力で任意の移動が自在となり、人体の長さ方向の人体位置情報L1,L2,L3,・・・に対する垂直断面の人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・のウェール側の弾性力(ヤング率)(E)により、挿入する場合の抵抗が決まるので、不慣れな人でも装着し易い。しかし、本発明を実施する場合には、E>E0に設定することも可能である。
【0170】
加えて、本実施の形態の筒状包帯1は、筒状に形成されるものであり、また、第1筒状編地10及び第2筒状編地20のベース組織がリブ編み等で構成され、更にそこに弾性糸Bを挿入していることで弾性変形を大きくしているから、使用者の運動によって装着が解け難く、装着している位置が移動し難い。
【0171】
そして、無縫製ニット横編機の使用により無縫製の筒状に編成した場合には、縫い目がないことで肌へのストレスを軽減でき、洗濯による型崩れが生じ難いものとなる。また、縫製による縫い目がないことで張力が分散され、ウェール側の伸縮性や圧迫力もより均一なものとなる。加えて、無縫製であることで編糸の端部の全体の管理も容易である。
【0172】
また、従来の丸編機で編成された弾性ストッキングでは足首側でループの径を小さくして編目密度を高めたり(度詰たり)、弾性糸の張力を高めたりすることによって他の部分より高い着圧がかかるようにしていることで、装着の際、この部分に足首よりも周径の大きな踵を有する足部を通すのに強い力を要し、特に指の力が弱い高齢者や女性にとって装着が大変困難であった。更に、足の甲側で皺が発生しやすいこともあって編目密度が高いところでは通気性が悪く、殊に編地LMがナイロン製のものでは肌にアレルギー反応が出やすいという問題点があった。
【0173】
それに対し、本実施の形態の筒状包帯1を構成する筒状編地M及び樋状編地Nの第1筒状編地10と第2筒状編地20とが、人体の断面変化に対応し、また、人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・に対応させた所定のヤング率となるようにして計算した結果に近似する針目数でウェール側の目数を特定して、目数によって周囲長を変化させていることにより、任意のループ径に設定できるから、第1筒状編地10と第2筒状編地20からの所定の圧迫力を使用者が受けることができる一方で、指の力が弱い高齢者や女性でも任意の圧力を人体の一部の長さ方向、必要に応じてその直角方向に加えれば、弱い力でも無理なく簡単に着脱できる。加えて、着脱時に無理な力が加えられることもないため、耐久性も良い。
【0174】
特に、上記実施の形態では、編目の編幅方向を筒状の径の方向に一致させているが、ベース糸Aで構成されるリブ編みのベース組織に弾性糸Bを交編していることで、人体の長さ方向及びその長さ方向に対する直角方向に伸びが良く、殊に、上記実施の形態では、弾性糸Bの交編がリブ編みのベース組織の一部に対してミスして行われていることで、人体の長さ方向に対する直角方向の伸びが高く、編地LMの伸びしろを大きくできて、着脱が極めて容易にできる。また、張力を弱くしても、充分な保持力を有し、着用感を良好にすると共に、弱い張力でも高い伸縮性を発揮できる。更に、弾性糸Bを外側凸部42にニットさせていることで、ウェール側の伸縮性にも富み、また、弾性糸Bが仮に切断されても張力低下の影響が少ない。勿論、弾性糸Aをタックさせることでも高い伸縮性をだすことができる。
【0175】
そして、人体の長さ方向に断面が変化しても、目数の変化で対応し、装着時に足の甲側で皺が生じ難く着圧の集中もないうえ、綿素材で製造できるから、通気性も良くて蒸れが防止される。更に、通気性が良いことで汗の気化熱が結果的に、還流の促進効果となることも期待できる。特に、皺になり難い厚めの綿素材の使用により、例えば、着圧が3〜70mmHg以上の圧迫力が得られ、それでも、挿着、脱着が容易である。しかも、繰り返しの洗濯をしても型崩れ等が生じない。
こうして、還流促進効果と通気性を両立させることができる。
なお、このように筒径の変化を目数で表現していることで、デザインを編成により付与する場合でもデザインに与える影響も少ないものとなる。
【0176】
そして、本実施の形態の筒状包帯1によれば、装着部位に触れる内面側が長手方向(コース側)に連続して延びる凹部(=外側凸部42)及び凸部(=内側凸部41)が交互に並列して環状の周囲(ウェール側)に凹凸の連続する横断面凹凸状(波形状)に形成された第1筒状編地10及び第2筒状編地20によって、装着時に足の甲側から踝周囲が覆われることで、リンパ液が滞り(溜まり)易いとされている踝周囲においても内面側に内側凸部41を設けた筒状編地Mを密着できるため、極めて高い還流促進効果が得られる。
【0177】
特に、筒状包帯1を足関節周りに装着した際に、上述した測定条件による測定で、従来の弾性ストッキングでは着圧が掛かり難いとされていた、足の踵側の踝周囲の基端部においても15mmHg以上の着圧を発現させることができ、足の甲部と足の踵側の踝周囲の基端部との着圧差が5mmHg以下、好ましくは、3mmHg以下、より好ましくは1mmHg以下となり、足の甲部と足の踵側の踝周囲の基端部との着圧分布の差が40%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下となり、差が断面変化の大きい足関節周りでも編地LMがフィットして密着し、均一な圧迫を可能とし、高い還流促進効果を得ることができる。
ここで、着圧が高いと還流促進効果を高められるが、装着者の装着部位(患部)の状態によっては、高い着圧により、例えば、皮膚の損傷、皮膚裂傷、スキン・テア(Skin Tear)を招く恐れがある。そして、本発明者らの実験研究によれば、着圧が3mmHg未満であると、還流促進効果が得られず、70mmHgを超えると却って還流促進を阻害する恐れがあることが確認された。
よって、足の踵側の踝周囲の基端部において3mmHg〜70mmHgの範囲内、好ましくは、5mmHg〜60mmHgの範囲内であれば、皮膚の損傷、皮膚裂傷、スキン・テア(Skin Tear)を招く恐れが少なく、還流促進効果が得られる。より好ましくは15mmHg〜50mmHgの範囲内であれば、更に好ましくは20〜45mmHgの範囲内であれば、高い還流促進効果が得られ、装着感も良好である。
更に、筒状包帯1の内面側において長手方向に連続して延びる凹凸(外側凸部42及び内側凸部41)の着圧の強弱による還流促進効果及びリンパの流れに沿った還流促進効果で、低い着圧でも高い還流促進効果が得られる。
【0178】
したがって、本実施の形態の筒状包帯1は、静脈性(静脈瘤、深部静脈血栓症、静脈血栓後遺症、肺血栓塞栓症等)、リンパ性(発育形成不全・リンパ節郭清・リンパ管炎等)、炎症性(各種炎症等)、アレルギー性(薬剤、植物、虫刺され等に起因するもの)、血管神経性(クインケの浮腫等)、廃用性(長期にわたる寝たきり状態、麻痺等)、外傷・一般的手術の後遺症等による広範囲に亘る疾患の局部性の浮腫等の治療や予防に効果的であり、四肢のリンパ浮腫等の治療や要望に使用される弾性ストッキング、弾性スリーブ、弾性包帯等の総称である弾性着衣として使用可能である。因みに、現在、日本の業界自主基準で30mmHg以上の圧迫力がかかるものを弾性着衣として扱っている。
【0179】
なお、静脈瘤の治療、深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症の治療・予防及びリンパ浮腫の治療・予防に効果的な弾性ストッキング、弾性スリーブ、弾性包帯等の弾性着衣は医師の装着指示書により療養費適用になるものである。しかし、本発明で定義する筒状包帯1は、人体の一部を圧迫する圧迫法で使用される全体に伸縮性ある布帛からなる包帯、サポータ、スリーブ、ストッキング、肌着等の圧迫用の装着具として、また、シームレス成形包帯としても使用できる。例えば、リンパ浮腫治療用のサポータまたは下肢静脈瘤のサポータにも使用できる医療具として扱われる場合もあり、または、腕、脚、頭部、足部、手首部、手部等の外部から圧迫力を加える筒状包帯として使用される場合もあり、四肢体幹の必要箇所に圧迫力を与え四肢体幹の浮腫、静脈瘤等を改善、予防するため等に使用可能なものを含むものである。また、本発明の筒状包帯1は、患者の浮腫の部位に合わせて、数種類必要な場合がある。
【0180】
更に、リンパ浮腫治療用のサポータまたは静脈瘤のサポータ等の医療具としての使用に限定されず、包帯、サポータ、スリーブ、ストッキング、肌着、靴下、グローブ等の圧迫用の装着具としても使用可能であり、日常生活や運動における疲れやむくみの予防又は軽減にも高い効果が得られる。特に、筒状包帯1の内面側に形成された凹凸によって着圧に強弱が生じることで血行促進効果を高めて、疲れやむくみの予防、軽減効果を高めることができる。
勿論、圧迫用ではなく日常生活等に使用される包帯、サポータ、スリーブ、ストッキング、肌着、靴下、グローブ、手袋等の装着具にも適用可能である。
【0181】
即ち、図13は、別の実施の形態の筒状包帯1を示すもので、樋状編地Nを取付けを行う骨盤に対して、樋状編地N側の目数により周囲長を変化させるものであり、部位に応じた弾性力の変化を容易に可能とする。静脈瘤やリンパ浮腫等で人体の断面変形が重度な患者に対しても、特定部位へ所望とする圧迫力を加えることができ、還流促進効果を高めることが可能である。
本実施の形態の筒状包帯1は、下方が細く、上方が太く形成されており、しかも、樋状編地Nが途中に膨らみを有しており、骨盤及び臀部にフィットし、下肢用筒状包帯1においても、筒状編地Mの上端から人体位置情報L0,L1,L2に対する垂直断面の長さの人体周囲長情報m0,m1,2を用いて、上肢用紐等で結束する手段をなくしても筒状包帯1の移動が制限され、かつ、人体の断面の形状の変化に対応でき、しかも、フィット性を高めることができ、高い還流促進効果を得ることができ、安定に保持できる。
【0182】
また、図14は、別の実施の形態の筒状包帯1を示すものである。左右の筒状包帯1に対し、樋状編地Nの最上の端部W及び端部Rに接着布35と接着布36を取付け、左右の筒状包帯1が自立するのをアシストするものである。
図の実施の形態の接着布35と接着布36は、背後に配設されているが、手前に配設してもよい。これによって、2個の筒状包帯1の位置を安定化している。また、自由端に形成された最上の端部W及び端部Rが、接着布35と接着布36によって自由が拘束され、寝相が悪い人の場合でも区によって捲れあがることがない。
しかし、実施の形態の接着布35と接着布36は、当然、配設してなくてもよいが、気分的に配設しても良いし、接着布35と接着布36を背後に、または前面に、背面及び前面に配設することが可能である。
【0183】
そして、図15は、別の実施の形態の筒状包帯1を示すものである。筒状編地Mを構成する下端の端部T及び端部tは、端部tは親指を挿通させ、端部Tは残りの4指を通過させている。端部Tは、5個の中手骨の相当位置に端部Tを形成している。
反対側の端部に形成した樋状編地Nは、肩甲骨及び上腕二頭筋、肩甲下筋に対して上から取付けを行うもので、樋状編地N側の目数により周囲長を変化させるものであり、部位に応じた弾性力の変化を容易に可能とする。静脈瘤やリンパ浮腫等で人体の断面変形が重度な患者に対しても、特定部位へ所望とする圧迫力を加えることができ、還流促進効果を高めることが可能である。
本実施の形態の筒状包帯1は、下方が細く、上方が太く形成されており、しかも、樋状編地Nが途中に膨らみを形成することができるから、肩甲骨及び上腕二頭筋、肩甲下筋に対してフィットし、上肢用の筒状包帯1においても、図示しないが、筒状編地Mの上端から人体位置情報L0,L1,L2に対する垂直断面の長さの人体周囲長情報m0,m1,2を用いて、上肢用紐等で結束する手段をなくしても筒状包帯1の移動が制限され、かつ、人体の断面の形状の変化に対応でき、しかも、フィット性を高めることができ、高い還流促進効果を得ることができ、安定に保持できる。
【0184】
加えて、本実施の形態の筒状包帯1によれば、高い密着性が得られることで、特に編糸を綿素材とすることによって通気性、肌触りや肌当たり、クッション性も良いことから、公知の弾性ストッキング等の圧迫部材を装着する際にその内側(より肌に近い方)に装着される緩衝材としても有効である。本実施の形態の筒状包帯1を人体の長さ方向の一部に装着した上に、更に公知の弾性ストッキング等の圧迫部材を装着することにより、公知の弾性ストッキング等の圧迫部材の還流促進効果をより高めることができる。殊に、編糸を綿素材とすることによって、痛みや皮膚の損傷、皮膚裂傷、スキン・テア(Skin Tear)等の予防や保護効果も高いものとなる。
【0185】
また、上記実施の形態の筒状包帯1は、下肢用サポータとして爪先を除いた足部側から足部の大腿部までを覆うものであるが、本発明の筒状包帯1は、足の甲部や足裏部から足首までを覆う形態としてもよいし、足の甲部や足裏部から膝下まで覆う形態としても良いし、足の甲部や足裏部から腰部まで覆うものとしても良い。更に、足の爪先を覆う形態としても良い。例えば、編目の増減を行い、伏せ目処理によって端部を閉口して第2筒状編地20の下端側を靴下等と同じ円弧状、5本指等に編成することによって、足の爪先を被覆できる。また、下肢に限定されず、腕、手、手首等を装着部位としてそこを覆うものに適用することも可能である。腕に装着する場合であっても、踵編地30によって肘頭の屈曲部にフィットさせることができ、筒状包帯1を肘関節周囲に密着させて高い還流促進効果を得ることができる。
【0186】
ところで、上記実施の形態の筒状包帯1では、装着対象を脚部及び足部としていることで、踵の形状に対応させるために、脚の長さとしての人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・L6,L7と、それに対する垂直断面の周囲長の人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・m6,m7から第1筒状編地10を編成し、足の長さとしての人体位置情報(L8,)L9,L10と、それに対する垂直断面の周囲長の人体周囲長情報(m8,)m9,m10から第2筒状編地20を編成し、そして、この人体位置情報L7から人体位置情報L9の間で、装着時に踵に対応させるために糸をループ状に編み込むコース数を増大して踵編地30によって第1筒状編地10と第2筒状編地20を繋げており、踵編地30において踵の膨らみに合わせて曲率を持たせている。
【0187】
しかし、本発明を実施する場合には、筒状包帯1の使途、装着部位(例えば、腕、脚部、頭部、足部、手部)等によって、第1筒状編地10と第2筒状編地20の区別なく、そして、曲率を持たせた踵編地30を設けることなく、つまり、上記の繰り返しの引き返し編成への切り替えを行うことなく長さ方向において周回編成を連続させて、所望の圧迫力を与えたい全体で人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・に対する垂直断面における周囲長の人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・から、人体周囲長情報L0,L1,L2,L3,・・・に対応した所定のヤング率となるように計算した計算結果に近似する針目数によりウェール側の環状の編目列の目数を設定した筒状包帯1とすることも可能である。つまり、全体形状が長さ方向に直線状に連続する形状の筒状包帯1としても良い。
【0188】
以上説明してきたように、上記実施の形態の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1は、第1筒状編地10とそれに連続する第2筒状編地20が、装着対象である人体の一部の長さ方向として特定する人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・と、人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・に対する垂直断面における周囲長の人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・とを用いて編成され、ベース組織において、人体の長さ方向の人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・に対する垂直断面の周囲長である人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・をウェール側の編目列の目数として編み込み、特に、人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・を、人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・に対応した所定のヤング率となるようにして計算した計算結果となるように近似する目数に設定して、横編みしたものである。
【0189】
そして、このように上記実施の形態の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1は、第1筒状編地10とそれに連続する第2筒状編地20が、装着対象である人体の一部の長さ方向として特定する人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・と、人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・に対する垂直断面における周囲長の人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・とを用いて編成されてなり、人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・に対応した所定の弾性力(ヤング率)となるように計算し、その計算結果に近似する針目数に、編目を形成する糸が連続するウェール側の1環状の編目列で形成された環状の目数が設定され、ウェール側の1環状の編目列の目数の増減変化により人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・の人体の断面長さ変化に対応して人体の一部の長さ方向に装着される筒状包帯1であって、装着部位に接触させる内面側を、編成により長手方向(コース方向)に連続して延びる外側凸部42及び内側凸部41が交互に並列して環状の周囲方向(ウェール側)に凹凸の連続する横断面凹凸状に形成したものである。
【0190】
つまり、上記実施の形態の筒状包帯1は、ウェール側の1環状の編目列の目数の変化により、装着対象である人体の一部の長さ方向の人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・に対する垂直断面における周囲長の人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・に基づく人体の断面変化に対応して周囲長を変化させ、人体の装着部位に接触させる内面側を、編成により凹部及び凸部が交互に並列して長手方向に直角な周方向に凹凸の連続する断面凹凸状に形成したものである。
【0191】
ここで、上記人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・は、人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・に対する垂直断面の周囲の長さであり、人体の断面長さ(周囲長)の変化情報としてウェール側の1環状の編目列の長さを決定するものである。
そして、編目を形成する糸が連続するウェール側の1環状の編目列の目数の変化により人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・の人体の断面変化に対応とは、人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・の位置に対応した所定のヤング率となるように、ウェール側の1環状の編目列の目数で周囲長さを調整して人体の断面の長さ(周囲長)の変化に対応したものである。即ち、人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・に対応した所定のヤング率となるように計算し、その結果に近似する目数で長さを調整したものである。
【0192】
人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・の位置に対応した所定のヤング率となるように計算し、その結果に近似する針目数によりウェール側の1環状の編目列で形成された環状の目数が設定されることから、編目を形成する糸が連続するウェール側の1環状の編目列の目数の増減変化により人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・の人体の断面長さ変化に対応する。
つまり、人体位置情報L1,L2,L3,・・・に対する垂直断面の人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・の変化を、所定のヤング率となるように、目数で長さを調整する。
ここで、ウェール側の1環状の編目列で形成された環状の目数の設定は、人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・等の位置(人体の部位)に対応した所定のヤング率となるようにすべく、近似する目数に設定することを意味する。このとき、計算結果は目数を算出するが、その目数以下の単位は四捨五入してもよいし、切り捨てても、切り上げてもよい。切り捨て、切り上げ、四捨五入の選択は、糸の物性及び編み方及び身体の使用箇所の特性によって決定できる。したがって、人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・を近似する目数で表す(近似表現する)ことができる。つまり、近似するは目数の1以内の誤差になる。
【0193】
こうして、本実施の形態の筒状包帯1は、横編機等を使用した横編み編成され、第1筒状編地10とそれに連続する第2筒状編地20が、人体の断面の変化に対応して長手方向でウェール側の環状の編目列の目数を可変することにより、人体の長さに対する断面の寸法形状の相違に対応させたものである。人体の断面の変化に対応して編目数を変化させることにより、寸法形状の表現自由度が高く、周囲長を自在とすることができ、人体の断面の寸法形状に対応した最適な径の設計が容易である。更に、目数により所望とする圧迫力の設定が容易である。
【0194】
よって、例えば、断面の寸法形状の変化が大きい足関節周りに対してもフィット性を高めることができ、編地LMの過不足による弛みや皺の発生、引き攣りを防止して、背面踵側、特に踝付近の凹部に対しても編地LMを密着させて着圧分布を均一にし、着圧を安定させることができる。また、局所的な浮腫み等による屈曲(凹凸)に対応して、密着させることが可能である。そして、目数により周囲長を変化させ所望とする圧迫力の設定を可能とするものであるから、任意のループ径とすることが可能で、通気性を確保でき、装着も容易である。
なお、本発明を実施する場合、無縫製のホールガーメント式の横編機による筒状編成に限定されず、縫製によって筒状に形成してもよく、コンピュータ制御式、手動式、機械編み、手編み等は問わない。
【0195】
また、上記実施の形態の筒状包帯1の筒状編地M及び樋状編地Nは、装着部位に接触させる内面側を、長手方向に連続して延びる凹部(=編目が外面側で凸状に表れ、内面側で凹状に表れる外側凸部42)及び凸部(=編目が外面側で凹状に表れ、内面側で凸状に表れる内側凸部41)が交互に並列して環状の周囲方向に凹凸の連続する横断面凹凸状に形成したことから、装着時にその凹凸によって装着者の長手方向に直角な周方向で着圧に強弱が生じ部分的な圧迫力(押圧作用)により、リンパ液の流れが促進され、還流促進効果が高まる。特に、その凹凸が長手方向に連続して延びていることで、着圧の強弱がリンパ液の流れる方向に沿うことになるから、リンパ液の流れがより一層促進され、還流促進効果が高まる。また、バランスの良い圧迫力を受けて違和感がない。加えて、編地LMの内面側の凹凸形状によって面の変化があることで、人体の断面周囲の変化がある屈曲部分の形状に対応して編地LMが密着してフィットしやすい。
【0196】
こうして、人体の断面の寸法形状の変化に対応してフィット性を高めることができるうえ、装着部位にフィットさせる編地LMが長手方向に連続して延びる凹部及び凸部が交互に並列して環状の周囲方向で凹凸の連続する横断面凹凸状に形成されていることで還流促進効果を高めることができ、高い還流促進効果を得ることができる。
【0197】
更に、上記実施の形態の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1は、弾性糸Bをベース糸Aのリブ編みからなるベース組織の外側凸部42を構成する編目に対してニットし、また、内側凸部41を構成する編目に対してミスまたはタックを行って所定間隔のコースで挿入されていることによって、装着部位に触れる内面側よりも、その裏面となる外面側の環状の張力が大きくされている。即ち、装着部位に接触させる内面側よりも、その裏面となる外面側の環状の張力を大きくした発明として捉えることもできる。
これにより、凸部(=編目が内面側で凸状に表れ、外面側で凹状に表れる内側凸部41)と凹部(=編目が内面側で凹状に表れ、外面側で凸状に表れる外側凸部42)のメリハリが際立ち、装着部位に触れる内面側に形成された内側凸部41が曲率を持って厚み方向にボリュームが増大する。これより、内側凸部41による装着部位への密着性を高めて圧迫力(押圧力)を向上させることができる。
【0198】
また、上記実施の形態の筒状包帯1は、ベース糸Aのリブ編み組織に対して、ニットとミスまたはタックとによって弾性糸Bを交編させていることにより、環状の周囲方向で張力の変化が生じて、装着部位に接触させる内面側の凸部(=編目が内面側で凸状に表れ、外面側で凹状に表れる内側凸部41)と凹部(=編目が内面側で凹状に表れ、外面側で凸状に表れる外側凸部42)とで張力が相違する。即ち、装着部位に接触させる内側に表れる凸部と凹部とで張力を相違させた発明として捉えることもできる。
これにより、凸部(=編目が内面側で凸状に表れ、外面側で凹状に表れる内側凸部41)と凹部(=編目が内面側で凹状に表れ、外面側で凸状に表れる外側凸部42)のメリハリが際立ち、装着部位に接触させる内側に形成された内側凸部41が曲率を持って厚み方向にボリュームが増大する。よって、内側凸部41による装着部位への密着性を高めて圧迫力(押圧力)を更に向上させることができる。
【0199】
また、上記実施の形態の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1は、第1筒状編地10及び第2筒状編地20のベース組織がリブ編みで編成され、編地LMの表裏で長手方向に連続して延びる外側凸部42と内側凸部41とからなる凹部及び凸部が交互に並列して横断面外形が環状の周方向に凹凸の連続する凹凸状を呈し、装着部位に接触させる内面側において凸状に表れる編目の裏面が外面側において凹状に表れ、装着部位に接触させる内面側において凹状に表れる編目の裏面が外面側において凸状に表れ、装着部位に接触させる内面側では凸状に表れその裏面の外面側では凹状に表れる編目を内側凸部41とし、装着部位に接触させる内面側では凹状に表れその裏面の外面側では凹状に表れる編目を外側凸部42としたとき、外側凸部42よりも内側凸部41の断面外形が曲線に近似する発明として捉えることもできる。
【0200】
即ち、上記実施の形態の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1は、第1筒状編地10とそれに連続する第2筒状編地20が、装着対象である人体の一部の長さ方向として特定する人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・と、人体位置情報L0,L1,L2,L3,・・・に対する垂直断面における周囲長の人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・とを用いて編成されてなり、人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・に対応した所定のヤング率(弾性力)となるように計算し、その結果に近似する針目数によりウェール側の1環状の編目列で形成された環状の目数が設定され、ウェール側の1環状の編目列の目数の増減変化により人体周囲長情報m0,m1,m2,m3,・・・の人体の断面長さ変化に対応して人体の一部の長さ方向に装着される筒状包帯1であって、編地LMの表裏で長手方向に連続して延びる凹部及び凸部が交互に並列して横断面外形が環状の周囲方向に凹凸の連続する凹凸状を呈し、装着部位に接触させる内面側において凸状に表れる編目の裏面が外面側において凹状に表れ、装着部位に接触させる内面側において凹状に表れる編目の裏面が外面側において凸状に表れ、装着部位に接触させる内面側では凸状に表れ、その裏面の外面側では凹状に表れる編目を内側凸部41とし、装着部位に接触させる内面側では凹状に表れ、その裏面の外面側では凸状に表れる編目を外側凸部42としたとき、外側凸部42よりも内側凸部41でその横断面形状が曲線に近似するものである。
【0201】
よって、本実施の形態の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1は、第1筒状編地10とそれに連続する第2筒状編地20が、人体の断面の変化に対応して長手方向でウェール側の環状の編目列の目数を可変することにより、人体の長さに対する断面の寸法形状の相違に対応させたものである。人体の断面の変化に対応して編目数を変化させることにより、寸法形状の表現自由度が高く、周囲長を自在とすることができ、人体の断面の寸法形状に対応した最適な径の設計が容易である。更に、目数、ヤング率により所望とする圧迫力の設定が容易である。例えば足部に装着する場合でも、断面の寸法形状の変化が大きい足関節周りに対してもフィット性を高めることができ、編地LMの過不足による弛みや皺の発生、引き攣りを防止して、踝周囲の凹部に対しても編地LMを密着させて着圧分布を均一にし、着圧を安定させることができる。また、局所的な浮腫み等による凹凸に対応して、密着させることが可能である。そして、目数周囲長を変化させ、所望とする圧迫力の設定を可能とするものであるから、任意のループ径とすることが可能で、通気性を確保でき、装着も容易である。
【0202】
そして、編成により編地LMの表裏で長手方向に連続して延びる外側凸部42と内側凸部41とからなる凹部及び凸部が交互に並列して横断面外形が周方向に凹凸の連続する凹凸状に形成したことから、装着時にその凹凸によって装着者の長手方向に対して直角な周方向で部分的な高い圧迫力(押圧作用)の発生により着圧に強弱が生じることで、リンパ液の流れが促進され、還流促進効果が高まる。特に、その凹凸が長手方向に連続して延びていることで、着圧の強弱がリンパ液の流れる方向に沿うことになるから、リンパ液の流れがより一層促進され、還流促進効果が高まる。また、バランスの良い圧迫力を受けて違和感がない。
加えて、弾性糸Bがベース糸Aのリブ編みからなるベース組織の外側凸部42を構成する編目に対してニットし、また、内側凸部41を構成する編目に対してミスまたはタックを行って所定間隔のコースで挿入されていることによって、外側凸部42よりも内側凸部41が湾曲して湾曲度が大きく、孤状の曲線に近似するものである。よって、内側凸部41の緩衝性(弾力性、クッション性)が高く、内側凸部41による装着部位への密着性を高めて圧迫力(押圧力)を向上させることができる。
更に、編地LMの内面側の凹凸形状によって面の変化があることで、人体の断面周囲の変化がある屈曲部分の形状に対応して編地LMが密着してフィットしやすい。
【0203】
こうして、人体の断面の寸法形状の変化に対応してフィット性を高めることができるうえ、装着部位にフィットさせる編地LMが長手方向に連続して延びる凹部及び凸部が交互に並列して環状の周囲で凹凸の連続する横断面凹凸状に形成されていることで還流促進効果を高めることができ、高い還流促進効果を得ることができる。
【0204】
また、上記実施の形態の筒状包帯1は、筒状編地M及び樋状編地Nからなり、第1筒状編地10と第2筒状編地20の間で糸をループ状に編み込むコース側の目数を増大して第1筒状編地10と第2筒状編地20を繋げる踵編地30とを具備し、第1筒状編地10の第2筒状編地20及び踵編地30へと繋がる最端部のウェール側の環状の径よりも、第2筒状編地20の第1筒状編地10及び踵編地30に繋がる最端部のウェール側の環状の径が径大とされ、踵編地30の第1筒状編地10及び第2筒状編地20との繋がりにおいて、正面側の左右対称線d1及び背面側の左右対称線d2にてウェール側の1環状の編目列が半分となるように環状の内面を相手側の内面に接触する重ね折りにした折り畳んだ状態で、第1筒状編地10と第2筒状編地20と踵編地30との境界部Pから第1筒状編地10に第2筒状編地20が連続する側である正面側の左右対称線d1に向かう仮想垂線c1の距離幅aと、境界部Pから踵編地30側である背面側の左右対称線d2に向かう仮想垂線c2の距離幅bとの比が、6:4≦a:b≦9:1の範囲内であるものである。
【0205】
上記実施の形態の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1は、第1筒状編地10の第2筒状編地20へと繋がる最端部(下端部)のウェール側の1環状の径(周囲長)よりも、第2筒状編地20の第1筒状編地10へと繋がる最端部(上端部)のウェール側の1環状の径(周囲長)の方が大きく、径大となっている。
なお、上記実施の形態においては、第1筒状編地10及び第2筒状編地20が目数の変化により周囲長を変化させるものであることから、目数の変化により第1筒状編地10の第2筒状編地20及び踵編地30へ繋がるときの径よりも、第2筒状編地20の第1筒状編地10及び踵編地30に繋がるときの径が径大とされている。本発明を実施する場合には、ループ径、編み方、張力等により調節することも可能である。
【0206】
そして、上記実施の形態の筒状包帯1では、筒状編地Mの第1筒状編地10と第2筒状編地20の繋がりにおいて、第1筒状編地10から第2筒状編地20へと径(周囲長)が拡大される間で糸をループ状に編み込むコース数を増大して踵編地30によって第1筒状編地10と第2筒状編地20を繋げている。
【0207】
特に、正面側の左右対称線d1及び背面側の左右対称線d2に沿ってウェール側の環状の周囲長が半分となるように環状の内面を相手側の内面に接触する重ね折りにした折り畳んだときに、第1筒状編地10と第2筒状編地20と踵編地30との境界部Pから第1筒状編地10に第2筒状編地20が連続する側である正面側の左右対称線d1に向かう仮想垂線c1の距離幅aと、境界部Pから踵編地30側である背面側の左右対称線d2に向かう仮想垂線c2の距離幅bとの比が、6:4≦a:b≦9:1の範囲内となるように、踵編地30が第1筒状編地10及び第2筒状編地20に繋がっている。
【0208】
このように、上記実施の形態の筒状包帯1によれば、第1筒状編地10の第2筒状編地20へと繋がる最端部のウェール側の環状の径(周囲長)よりも、第2筒状編地20の第1筒状編地10へと繋がる最端部のウェール側の環状の径(周囲長)の方が径大であり、踵編地30によって第1筒状編地10と第2筒状編地20の間でコース数を増大して第1筒状編地10と第2筒状編地20を繋げていることで、踵編地30において曲率を持たせ、装着によって足関節周りを覆った際に、足首背面側に皺が生じることもなく、また、踵側での引き攣りが防止され、踵の輪郭形状にフィットする。そして、第1筒状編地10と第2筒状編地20の繋がり部分で、第1筒状編地10よりも第2筒状編地20が径大とされて第1筒状編地10と第2筒状編地20で径の変化を持たせていることで、第1筒状編地10と第2筒状編地20を繋げる踵編地30において踵の膨らみに合わせて十分に大きな曲率を持たせることができ、装着時において踵側での引き攣りを少なくできる。また、第1筒状編地10と第2筒状編地20の繋がりにおいて第1筒状編地10よりも第2筒状編地20が径大とされていることで、径の選択幅を持たせることができるから足関節周りの寸法形状に合わせた最適な径の設計、選択が可能であり、編地LMの余りによる足の甲側での弛みや皺の発生を抑えることができる。故に、横皺の食い込みによる還流の阻害を防止できる。また、編地LMの不足による踵側での緊張も防止される。
【0209】
そして、正面側の左右対称線d1及び背面側の左右対称線d2に沿ってウェール側の環状の周囲長が半分となるように環状の内面を相手側の内面に接触する重ね折りにした折り畳んだ状態で、第1筒状編地10と第2筒状編地20と踵編地30との境界部Pから第1筒状編地10に第2筒状編地20が連続する側である正面側の左右対称線d1に向かう仮想垂線c1の距離幅aと、境界部Pから踵編地30側である背面側の左右対称線d2に向かう仮想垂線c2の距離幅bとの比が、6:4≦a:b≦9:1の範囲内であるから、第1筒状編地10と第2筒状編地20の間で糸をループ状に編み込んだコース側の目数を増大させて曲率を持たせた踵編地30ではなく、所定の弾性力、例えば、ヤング率に設定されて均一な圧迫力を加える第1筒状編地10と第2筒状編地20が踝(内果、外果)周囲を覆うことになる。
【0210】
こうして、装着時に足の甲側での弛みや皺の発生が抑えられ、更に、踵側での引き攣り防止され、そして、丸み(膨らみ)を持たない第1筒状編地10と第2筒状編地20が踝周囲の凹凸を覆うことになるから、踝周囲の凹部での編地LMの浮きが防止されて、踝周囲の屈曲部にフィットさせて密着させることが可能となる。特に踝付近の背面側の凹部分に対しても密着させることができ、着圧を安定させることができる。また、局所的な浮腫み等による凹凸に対応して、密着させることが可能である。
【0211】
よって、踵部、踝部、足首下端と甲部の境界部等の屈曲部を有し断面の寸法形状の変化が大きい足関節周りでもフィット性を高めて着圧分布を均一とし、着圧の安定性を高めることができる。
【0212】
特に、踵編地30の第1筒状編地10と第2筒状編地20への繋がりが、第1筒状編地10の第2筒状編地20及び踵編地30へと繋がる最端部のウェール側の環状の周囲長の20%〜40%の範囲内に対して、また、第2筒状編地20の第1筒状編地10及び踵編地30へと繋がる最端部のウェール側の環状の周囲長の20%〜40%の範囲内であることで、装着によって足関節周りを覆った際に、第1筒状編地10と第2筒状編地20が踵側に引き攣られて突っ張ることによる無理な張力が生じる緊張が防止され、また、弛みが生じることもなく、踝周囲の凹凸への密着性を高めることができる。
【0213】
そして、上記実施の形態1の筒状包帯1によれば、例えば、足関節周りに装着た際に、装着部位に接触させる内面側を、編成により糸をループ状に編み込んだ長手方向に連続して延びる凹部(=編目が外面側で凸状に表れ、内面側で凹状に表れる外側凸部42)及び凸部(=編目が外面側で凹状に表れ、内面側で凸状に表れる内側凸部41)が交互に並列して環状の周囲で凹凸の連続する横断面凹凸状に形成した第1筒状編地10と第2筒状編地20によって、足の甲側から踝周囲を覆い踝付近の屈曲部、特に背面側においても密着させることができることで、高い還流促進効果を得ることができる。即ち、装着時に、踝付近の屈曲部に対して第1筒状編地10と第2筒状編地20を密着できることで着圧を高めて還流促進効果を高めることができるうえ、踝付近の屈曲部に密着させる第1筒状編地10と第2筒状編地20の内面側が長手方向に連続して延びる凹部(=編目が外面側で凸状に表れ、内面側で凹状に表れる外側凸部42)及び凸部(=編目が外面側で凹状に表れ、内面側で凸状に表れる内側凸部41)が交互に並列して環状の周囲に連続して形成されていることで、リンパ液が滞り(溜まり)易い踝周囲のリンパの流れを促進させることができ、還流促進効果を更に高めることができる。
【0214】
上記実施の形態の筒状包帯は、ウェール側の1環状(ループ)の編目列の目数の変化により、装着対象である人体の断面変化に対応して周囲長を変化させた筒状包帯であって、前記人体の装着部位に接触させる内面側を、編成によって長手方向に直角な周方向に凹部及び凸部が交互に並列して凹凸の連続した断面凹凸状に形成したものである。
【0215】
ここで、上記ウェール側とは、編目を形成する糸が連続して編地LMの横方向(x方向)に並んだループの列であり、糸をループ状に編み込んで編地LMの縦方向(y方向)に並んだコース側と区別される。
また、上記編地LMの編成に使用する糸としては、例えば、紡績糸、フィラメント糸、モノフィラメント糸、嵩高糸、中空糸、被覆糸、コアヤーン糸、複合糸、扁平糸、異形断面糸、スプリット糸、漆糸等の糸が挙げられる。そして、糸の原材料としては、化学材料から形成される糸、金属から形成される糸、植物から形成される糸、それら2以上の組み合わせからなる撚り糸等の使用が可能である。
【0216】
そして、上記人体の断面変化に対応して、編目を形成する糸が連続したウェール側の1環状の編目列の目数の変化により周囲長を変化させたとは、1環状(ループ)の編目列の目数で筒状の周囲長さ(ウェール側の長さ)を調整して、人体の長さ方向に対して垂直断面の周囲長さの変化に対応したものである。
【0217】
また、上記編成によって周方向に凹部及び凸部が連続した断面凹凸状は、筒状包帯の内面側で凹状に表れる編目で形成された凹部及び凸状に表れる編目で形成された凸部がウェール側の1環状(ループ)の編目列で形成される環状(筒状)の周方向で連続し、筒状包帯の横断面形状が内面側で凹凸形状(波形状)を呈することを意味し、例えば、リブ編み(ゴム編み)、タック編み等の編成方法(編み込み)により形成することができる。
【0218】
上記実施の形態の筒状包帯によれば、人体の断面の変化に対応して長手方向でウェール側の環状の編目列の目数を可変することにより、人体の長さに対する断面の寸法形状の相違に対応させたものである。人体の断面の変化に対応して編目数を変化させることにより、寸法形状の表現自由度が高く、周囲長を自在とすることができ、人体の断面の寸法形状に対応した最適な径の設計が容易である。よって、例えば、断面の寸法形状の変化が大きい足関節周りに対してもフィット性を高めることができ、編地LMの過不足による弛みや皺の発生、引き攣りを防止して、踝周辺の凹部に対しても編地LMを密着させて着圧分布を均一にし、着圧を安定させることができる。更に目数の変化により環状の長さ(周囲長)を調整していることで、任意のループの径の設定により十分な伸張性が得られ、食い込みやそれによる着圧の集中、通気性の低下を防止でき、着脱も容易にできる。
【0219】
そして、装着部位に接触させる内面側が、編成により凹部及び凸部が交互に並列して環状(筒状)の周方向に凹凸の連続する断面凹凸状に形成されているため、装着時にその凹凸によって装着者の長手方向に直角な周方向で着圧差が生じることで、リンパ液の流れが促進され、還流促進効果が高まる。また、バランスの良い圧迫力を受けて違和感がない。
【0220】
こうして、人体の断面の寸法形状の変化に対応してフィット性を高めることができるうえ、装着部位にフィットさせる編地LMが周方向で凹凸の連続する断面凹凸状に形成されていることで還流促進効果を高めることができ、高い還流促進効果を得ることができる。
【0221】
上記実施の形態の筒状包帯1は、前記凹部及び前記凸部が長手方向(コース方向)に連続して延びるものである。
上記実施の形態の筒状包帯1によれば、前記凹部及び凸部は長手方向に連続して延びていることで、着圧の強弱がリンパ液の流れる方向に沿うことになるから、リンパ液の流れを更に促進させ、還流促進効果を高めることができる。
【0222】
上記実施の形態の筒状包帯1は、前記人体の装着部位に接触させる内面側よりも、その裏面となる外面側で周方向の環状の張力を大きくしたものである。
上記実施の形態の筒状包帯1によれば、前記装着部位に接触させる内面側よりも、その裏面となる外面側の環状の張力が大きくされていることから、装着部位に接触させる内面側に形成された凸部の厚み方向のボリュームを増大させて曲率を持たせることができる。よって、凸部による装着部位への密着性を高めて圧迫力(押圧力)、着圧を高めることができる。
【0223】
上記実施の形態の筒状包帯1は、前記人体の装着部位に接触させる内面側に表れる凸部と凹部とで周方向の環状の張力を相違させたものである。
上記実施の形態の筒状包帯1によれば、前記装着部位に接触させる内面側に表れる凸部と凹部とで環状の張力を相違させたことから、張力の相違によって、装着部位に接触させる内面側に形成された凸部の厚み方向のボリュームを増大させて曲率を持たせることができる。よって、更に、凸部による装着部位への密着性を高めて圧迫力(押圧力)、着圧を高めることができる。
【0224】
上記実施の形態の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1は、ウェール側の1環状(ループ)の編目列の目数の変化により、装着対象である人体の断面変化に対応して周囲長を変化させた筒状包帯1であって、編地LMの表裏で凹部及び凸部が交互に並列して断面外形が長手方向に直角な周方向に凹凸の連続する凹凸状を呈し、前記人体の装着部位に接触させる内面側では凹状に表れ、その裏面の外面側では凸状に表れる編目で形成される外側凸部よりも、装着部位に接触させる内面側では凸状に表れ、その裏面の外面側では凹状に表れる編目で形成される内側凸部において、その断面外形が曲線状に近似するものである。
【0225】
ここで、上記ウェール側とは、編目を形成する糸が連続して編地LMの横方向(x方向)に並んだループの列であり、糸をループ状に編み込んで編地LMの縦方向(y方向)に並んだコース側と区別される。
また、上記編地LMの編成に使用する糸としては、例えば、紡績糸、フィラメント糸、モノフィラメント糸、嵩高糸、中空糸、被覆糸、コアヤーン糸、複合糸、扁平糸、異形断面糸、スプリット糸、漆糸等の糸が挙げられる。そして、糸の原材料としては、化学材料から形成される糸、金属から形成される糸、植物から形成される糸、それら2以上の組み合わせからなる撚り糸等の使用が可能である。
【0226】
そして、上記人体の断面変化に対応して、編目を形成する糸が連続したウェール側の1環状の編目列の目数の変化により周囲長を変化させたとは、1環状(ループ)の編目列の目数で筒状の周囲長さ(ウェール側の長さ)を調整して、人体の長さ方向に対して垂直断面の周囲長さの変化に対応したものである。
【0227】
また、上記編成によって周方向に凹部及び凸部が連続した断面凹凸状は、ウェール側の1環状(ループ)の編目列で形成される環状(筒状)の周方向で凹部及び凸部が連続し、筒状包帯の横断面形状が表裏で凹凸形状(波形状)を呈することを意味し、例えば、リブ編み(ゴム編み)、タック編み等の編成方法(編み込み)により形成することができる。
更に、上記外側凸部よりも内側凸部においてその断面外形が曲線に近似とは、筒状包帯の横断面において、外面側で凸状に表れる編目で形成された外側凸部との比較で、その外側凸部よりも、人体の装着部位に接触させる内面側で凸状に表れる編目で形成された内側凸部の方が丸みを帯びていることを意味する。
【0228】
上記実施の形態の筒状包帯1によれば、人体の断面の変化に対応して長手方向にウェール側の環状の編目列の目数を可変することにより、人体の長さに対する断面の寸法形状の相違に対応させたものである。人体の断面の変化に対応して編目数を変化させることにより、寸法形状の表現自由度が高く、周囲長を自在とすることができ、人体の断面の寸法形状に対応した最適な径の設計が容易である。よって、例えば、断面の寸法形状の変化が大きい足関節周りに対してもフィット性を高めることができ、編地LMの過不足による弛みや皺の発生、引き攣りを防止して、踝周辺の凹部に対しても編地LMを密着させて着圧分布を均一にし、着圧を安定させることができる。更に目数の変化により環状の長さ(周囲長)を調整していることで、任意のループの径の設定により十分な伸張性が得られ、食い込みやそれによる着圧の集中、通気性の低下を防止でき、着脱も容易にできる。
【0229】
そして、編地LMの表裏で凹部及び凸部が交互に並列して横断面が周方向に凹凸の連続する凹凸状を呈しているため、装着時にその凹凸によって装着者の長手方向に直角な周方向で着圧差が生じることでリンパ液の流れが促進され、還流促進効果が高まる。また、バランスの良い圧迫力を受けて違和感がない。
更に、装着部位に接触させる内面側では凹状に表れ、その裏面の外面側では凸状に表れる編目の外側凸部42よりも、装着部位に接触させる内面側では凸状に表れ、その裏面の外面側では凹状に表れる編目の内側凸部41において、その横断面外形が曲線に近似することで、凸部による装着部位への密着性を高めて圧迫力(押圧力)、着圧を高めることができる。
【0230】
こうして、人体の断面の寸法形状の変化に対応してフィット性を高めることができるうえ、装着部位にフィットさせる編地LMが周方向で凹凸の連続する断面凹凸状に形成されていることで還流促進効果を高めることができ、高い還流促進効果を得ることができる。
上記実施の形態の筒状包帯は、前記外側凸部42及び前記内側凸部41が長手方向(コース側)に連続して延びるものである。
上記実施の形態の筒状包帯によれば、前記外側凸部42及び内側凸部41は長手方向に連続して延びていることで、着圧の強弱がリンパ液の流れる方向に沿うことになるから、リンパ液の流れを更に促進させ、還流促進効果を高めることができる。
【0231】
上記実施の形態の筒状包帯は、編地LMの厚みが外力を加えていない状態で2mm〜15mmの範囲内、好ましくは、5mm〜15mmの範囲内であるものである。
上記実施の形態の筒状包帯は、その編地LMの横断面の断面厚みが2mm〜15mmの範囲内であるから、編地LMに皺が生じ難く、特に、装着時に屈曲等の動きがある部位(例えば足の甲側)でも皺が生じ難く、皺の食い込みによる着圧の集中やターニケット作用を防止できる。
【0232】
上記実施の形態の筒状包帯は、前記人体の足関節周りに装着した際に、足の踵側の外果(外踝)部周囲の基端部における着圧が3mmHg〜70mmHg、好ましくは15mmHg〜50mmHg、より好ましくは20mmHg〜45mmHgの範囲内であるものである。
ここで、上記着圧は、5本指ソックス用ディスプレー紳士用((株)店研創意 51-196-10‐2)の足型(左足)に装着して、エアパック式接触圧測定器((株)エイエムアイ・テクノ製,AMI3037−SB−SET)により測定したものである。
また、上記足の踵側の外果部周囲の基端部の着圧は、足の外果(外踝)部の踵側の後方であって、隆起している外果(外踝)部の裾部分に相当する略平坦部分での測定である。
なお、上記数値範囲は、厳格であることを要求するものではなく、測定精度等による数割の誤差を否定するものではない。
【0233】
上記実施の形態の筒状包帯によれば、前記人体の足関節周りに装着した際に、足の踵側の外果部周囲の基端部における着圧が3mmHg〜70mmHgの範囲内である。
ここで、着圧が3mmHg未満であると、還流促進効果が得られず、70mmHgを超えると却って還流促進を阻害する恐れがある。
本発明の筒状包帯によれば、人体の足関節周りで編地LMの皺の発生や引き攣り(突っ張り)を抑えて編地LMを密着させ、フィットさせることができることで、従来着圧が掛かり難いとされていた踝周囲、特に足の踵側の踝部周囲の基端部においても着圧が15mmHg以上の高いフィット性、圧迫力を可能として高い還流促進効果が得られる。還流促進効果の観点からみれば、足の踵側の踝部周囲の基端部において着圧が15mmHg以上の高いフィット性、圧迫力の実現により、高い還流促進が得られるが、装着者の装着部位(患部)の状態によっては、高い着圧により、例えば、皮膚の損傷、皮膚裂傷、スキン・テア(Skin Tear)を招く恐れがある。よって、3mmHg〜70mmHgの範囲内であれば、皮膚の損傷、皮膚裂傷、スキン・テア(Skin Tear)を招く恐れが少なく、下肢において還流促進効果が得られる。好ましくは、15mmHg〜50mmHgの範囲内、より好ましくは20mmHg〜45mmHgの範囲内であれば、装着感も良好で、より高い還流促進効果が得られ、足関節周り、殊に、リンパ液が溜まり易い踝部や足首背面の浮腫に対しての軽減効果も高くなる。
【0234】
上記実施の形態の筒状包帯1は、前記人体の足関節周りに装着した際に、足の踵側の外果(外踝)部周囲の基端部と足の甲部との着圧差が40%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下であるものである。
ここで、上記着圧は、5本指ソックス用ディスプレー紳士用((株)店研創意 51-196-10‐2)の足型(左足)に装着して、エアパック式接触圧測定器((株)エイエムアイ・テクノ製,AMI3037−SB−SET)により測定したものである。
また、上記足の踵側の外果部周囲の基端部の着圧は、足の外果(外踝)部の踵側の後方であって、隆起している外果(外踝)部の裾部分に相当する略平坦部分での測定である。
更に、足の甲部の着圧は、足首側の正面中央部であって、土踏まずの頂点の真上に相当する部分での測定である。
なお、上記数値範囲は、厳格であることを要求するものではなく、測定精度等による数割の誤差を否定するものではない。
【0235】
上記実施の形態の筒状包帯1は、前記人体の足関節周りに装着した際に、足の踵側の外果部周囲の基端部と足の甲部との着圧差が40%以下であるものである。
本発明の筒状包帯によれば、前記人体の足関節周りで編地LMの皺の発生や引き攣り(突っ張り)を抑えて編地LMを密着させ、フィットさせることができることで、従来着圧が掛かり難いとされていた踝周囲、特に足の踵側の踝部周囲の基端部においても、着圧が15mmHg以上の高いフィット性、圧迫力を可能とし、足の甲側との着圧差を40%以下にすることができる。このように足の踵側の踝部周囲の基端部と足の甲部との着圧差が40%以下であり、リンパ液が溜まり易いとされている踝部周囲においても高い着圧がかかり、足関節周りにおいて着圧分布が安定し着圧の集中が防止されて均一な着圧分布となることで、下肢において高い還流促進効果が得られ、足関節周り、殊に、リンパ液が溜まり易い踝部や足首背面の浮腫に対しての軽減効果も高くなる。好ましくは、足の踵側の外果部周囲の基端部と足の甲部との着圧差が30%以下、より好ましくは10%以下であれば、着圧の安定性が高く、より高い還流促進効果が得られる。
【0236】
なお、上記実施の形態では、本発明の筒状包帯1を人体の下肢に装着する下肢用サポータに適用した事例で説明したが、本発明を実施する場合には、本発明の筒状包帯1の適用は足部、脚部に限定されず、腕部、手首部、手部等の四肢体幹及び頭部等に装着する包帯、サポータ、スリーブ(弾性スリーブ)、グローブ(弾性グローブ)等としても適用可能である。例えば、手首、手部への装着部材として、第1筒状編地10と第2筒状編地20の繋がり部分における環状の径の相違部分に切込や分割によって孔を形成し、そこに手部の親指を挿入し、第1筒状編地10で主に手部側を、第2筒状編地20で手首側を覆う装着として、掌の断面変化に対応してフィットさせることも可能である。
【0237】
以上のように、本実施の形態の筒状包帯1は、腕の長さまたは脚の長さに形成し、腕の長さまたは脚の長さの長さ方向に対して垂直に切断した断面は、ベース糸Aによるベース組織に弾性糸Bを交編させてループ状に編み込み、内面側では内側凸部41にベース糸Aよりも伸縮性の高い弾性糸Bが表出することなく、弾性糸Bの装着者の肌への接触を避けた筒状編地Mと、前記腕の長さまたは脚の長さの長さとした筒状編地LMの端部には、筒状編地Mの外周囲の長さを短くして、筒状編地Mの筒を樋状に編み込んだ樋状編地Nとを具備する筒状包帯1にあって、前記樋状編地は、筒状編地Mの端部からU字状またはV字状に切り欠いて突出させたものである。
【0238】
したがって、筒状編地Mの端部には、筒状編地Mの外周囲の長さを短くして、前記筒状編地の筒を樋状に編み込み、筒状編地Mの端部からU字状またはV字状に切り欠いて突出させた樋状編地Nを有するから、樋状編地Nは内部で肩関節が動き、全体的に樋状編地Nは安定して鎖骨上を覆うことができるから、就寝前に着用すれば、着用者の寝返り等によって容易に外れることがない。
また、U字状またはV字状に端部すべく目数を変化させて、U字状またはV字状に端部すべく目数を変化させたものでは、U字状またはV字状に端部を1以上に締め付けを行うことができるから、樋状編地Nで肩関節を覆い、全体的に樋状編地Nは安定して鎖骨上を軽く締め付けることができる。
【0239】
そして、上記樋状編地Nは、筒状編地Mから目数を変化させたU字状またはV字状の端部としたものであるから、U字状またはV字状の切り欠きを形成した樋状編地Nは、筒状編地Mの周囲長を徐々に狭くしており、筒状編地Mが筒状編地Mの長さに自立することができるし、徐々に曲げることもできるので、紐等で結束する結束手段をなくしても使用でき、かつ、人体の断面の形状の変化に対応でき、しかも、フィット性を高めることができ、筒状の下肢用または上肢用サポータ、スリーブ、靴下、タイツ、肘用サポータ、手、手首用サポータ等として外部から圧迫力を加える包帯等に使用され、静脈還流障害やリンパ浮腫等の疾患の予防、治療に好適な高い還流促進効果を得ることができ、更に、安定に保持できる筒状包帯1となる。
【0240】
樋状編地Nは、樋状編地Nの中間位置で目数を変化させたものである。
したがって、筒状編地Mの端部には、筒状編地Mの外周囲の長さを短くして、筒状編地Mの筒を樋状に編み込み、筒状編地Mの端部からU字状またはV字状に切り欠いて突出させた樋状編地Nを有するから、樋状編地Nは内部で肩関節が動き、全体的に樋状編地Nは安定して鎖骨上を覆うことができるから、就寝前に着用すれば、着用者の寝返り等によって容易に外れることがない。
また、U字状またはV字状に端部すべく目数を変化させて、U字状またはV字状に端部すべく目数を変化させたものでは、U字状またはV字状に端部を1以上に締め付けを行うことができるから、樋状編地Nで肩関節を覆い、全体的に樋状編地Nは安定して鎖骨上を軽く締め付けることができる。
【0241】
そして、樋状編地Nは、筒状編地Mから目数を変化させたU字状またはV字状の端部としたものであるから、U字状またはV字状の切り欠きを形成した樋状編地Nは、筒状編地Mの周囲長を徐々に狭くしており、樋状編地Nが筒状編地Mの長さに自立することができるし、徐々に曲げることもできるので、紐等で結束する結束手段をなくしても使用でき、かつ、人体の断面の形状の変化に対応でき、しかも、フィット性を高めることができ、筒状の下肢用または上肢用サポータ、スリーブ、靴下、タイツ、肘用サポータ、手、手首用サポータ等として外部から圧迫力を加える包帯等に使用され、静脈還流障害やリンパ浮腫等の疾患の予防、治療に好適な高い還流促進効果を得ることができ、更に、安定に保持できる。
【0242】
樋状編地Nは、筒状編地Mの中心位置から、30°〜270°を踵編地30が繋がったものである。
本発明の筒状編地M及び樋状編地Nからなる筒状包帯1によれば、樋状編地Nの接続位置が筒状編地Mの中心から、30°〜270°の角度で踵編地30を繋げるものであるから、樋状編地Nが30°〜270°のとき自己で立つことができるから、筒状編地M及び樋状編地Nが変化しない使用が可能となる。
発明者の実験によれば、筒状編地Mの中心位置から30〜270°の範囲で自立でき、かつ、所望の弾性力が得られた。特に、体型との違いで筒状編地Mの中心位置から30〜270°の範囲が決まるので、筒状編地Mの中心位置から30〜270°の範囲は厳格なものではない、
【0243】
樋状編地N及び前記筒状編地の厚みは2mm〜15mmの範囲内としたものである。
この筒状包帯1によれば、樋状編地N及び筒状編地Mの厚みは2mm〜15mmの範囲内であるから、樋状編地N及び筒状編地Mを形成する編地LMの厚みが厚く、自己でその形態を保持できるから、人体に沿って移動することがない。また、編地LMに皺が生じ難く、特に、装着時に屈曲等の動きがある部位(例えば足の甲側)でも皺が生じ難く、皺の食い込みによる着圧の集中やターニケット作用を防止できる。
【0244】
筒状編地Mの他端は、中足骨の相当位置を端部位置としたもの、または、掌の中手骨の相当位置の端部としたものであるから、中手骨の相当位置の端部があり、体重が加わっても、人が動いても、腕に沿って前記樋状編地及び前記筒状編地が移動しないから、フィット性を高めることができる。
【0245】
樋状編地N及び前記筒状編地Mは、樋状編地N及び前記筒状編地Mを上下に接続し、中央垂直線を線対称の構造としたものである。
このように、本願発明の筒状包帯1によれば、筒状編地M及び樋状編地Nを上下に接続し、線対称の中心となる中央垂直線を線対称の構造としたものであるから、左右対称の筒状包帯によって、体重が加わっても、人が動いても、腕に沿って前記樋状編地及び前記筒状編地が移動しないから、フィット性を高めることができる。
樋状編地Nは、筒状編地Mから目数を変化させたU字状またはV字状の端部としたものであるから、特に、臀部の形状によって目数を変化させることにより、樋状編地Nを使用する者にフィットした形状とすることができる。
【符号の説明】
【0246】
1 筒状包帯
M 筒状編地
N 樋状編地
10 第1筒状編地
20 第2筒状編地
30 踵編地
41 内側凸部
42 外側凸部
0,L1,L2,L3,・・・ 人体位置情報
0,m1,m2,m3,・・・ 人体周囲長情報
A ベース糸
B 弾性糸
LM 編地
【要約】      (修正有)
【課題】下肢用及び上肢用筒状包帯本体において、上肢用紐等で結束する手段をなくしても筒状包帯の移動が制限され、かつ、人体の断面の形状の変化に対応でき、しかも、フィット性を高めることができ、高い還流促進効果を得ることができる筒状包帯を提供する。
【解決手段】腕の長さまたは脚の長さに形成した筒状の筒状編地Mと、前記腕の長さまたは脚の長さの長さとした前記筒状編地Mの一端には、前記筒状編地の外周囲の長さを短くして、前記筒状編地Mの筒を樋状に編み込んだ樋状編地Nとを具備し、前記樋状編地Nは、前記筒状編地Mの端部からU字状またはV字状に切り欠いて突出させる。
【選択図】図3
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