特許第6765711号(P6765711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765711
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】水中カメラ用アーム部材
(51)【国際特許分類】
   F16M 11/04 20060101AFI20200928BHJP
   G03B 17/56 20060101ALI20200928BHJP
   F16M 13/00 20060101ALI20200928BHJP
   F16M 11/14 20060101ALI20200928BHJP
   F16M 11/24 20060101ALI20200928BHJP
   F16M 11/28 20060101ALI20200928BHJP
   F16M 11/20 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   F16M11/04 A
   G03B17/56 A
   F16M13/00 M
   F16M11/04 E
   F16M11/04 Z
   F16M11/14 A
   F16M11/24 A
   F16M11/28
   F16M11/20 T
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-98302(P2016-98302)
(22)【出願日】2016年5月16日
(65)【公開番号】特開2017-207102(P2017-207102A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年5月14日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [販売日] 平成28年1月14日 [販売場所] アクアフォトチーム ゲーエムベーハー(ドイツ,ナーゴルト72202,ホーアーバウム通り 1) [販売日] 平成28年1月20日 [販売場所] 阿部秀樹写真事務所(静岡県伊豆の国市長岡226−1) クラブマーメイド(岡山県岡山市海吉1437−8) mic21株式会社横浜本店(神奈川県横浜市中区万代町2−4−1) ダイブファミリーイエロー(静岡県伊東市宇佐美1660−6) ダイブゼスト(和歌山県東牟婁郡串本町潮岬3544−45) 峯水写真事務所(静岡県駿東郡清水町八幡224−1 サボイコート101) 日本水中映像株式会社(東京都新宿区中落合2−11−15) 吉野雄輔フォトオフィス(東京都世田谷区弦巻3−24−17) 鎌田多津丸(鳥取県西伯郡大山町安原99−3) 有限会社リゾートバンク(大阪府大阪市中央区南船場2−7−14大阪写真会館3F) 株式会社アンサー(東京都新宿区西新宿1−16−10小勝ビル3F) mic21株式会社梅田店(大阪府大阪市北区堂山町3−3) [掲載年月日] 平成28年1月20日 [掲載アドレス] http://www.inon.co.jp/cgis/news/wforum.cgi?no=453&reno=no&oya=453&mode=msg_view&page=0
(73)【特許権者】
【識別番号】595132061
【氏名又は名称】有限会社イノン
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(74)【代理人】
【識別番号】100206645
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 恒幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 彰英
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−140975(JP,A)
【文献】 特開昭53−077956(JP,A)
【文献】 特開平09−119298(JP,A)
【文献】 特開2007−071274(JP,A)
【文献】 実開平03−069708(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16M 11/04
F16M 11/14
F16M 11/20
F16M 11/24
F16M 11/28
F16M 13/00
G03B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維強化プラスチックで形成された筒状のポール本体、及び前記ポール本体の一端部に接合された金属製の筒状部材からなる水中カメラ用アーム部材であって、
前記筒状部材は、前記ポール本体の前記一端部の外周面を覆うと共に、内周側に軸に沿う断面形状において内側に向けて所定寸法だけ突出する複数個の突出部を軸方向に所定間隔を離して形成した凹凸部を備え、
前記ポール本体の前記一端部の端面に接触すると共に前記ポール本体の前記一端部側の外周面と前記筒状部材の内周面とを離間させる第1スペーサ部材と、
前記ポール本体の外周面と前記筒状部材における他端側端部の内周面とを離間させる第2スペーサ部材とを備え、
前記ポール本体の外周面と前記筒状部材との間であって、前記第1スペーサ部材と前記第2スペーサ部材との間に形成される空間に前記ポール本体と前記筒状部材とを絶縁しつつ固着する接着材を充填したことを特徴とする水中カメラ用アーム部材。
【請求項2】
前記筒状部材は、他の部材が接続可能なジョイント部材を備え、
前記ジョイント部材は、前記筒状部材及び前記ポール本体の前記一端部の端面を覆う円板部とからなるキャップ部と、前記キャップ部に隣接して形成され、他の部材と接続可能なジョイント部とからなることを特徴とする請求項1に記載の水中カメラ用アーム部材。
【請求項3】
前記ジョイント部材には、前記ジョイント部から前記ポール本体の内部に連通する導水孔部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の水中カメラ用アーム部材。
【請求項4】
前記ジョイント部は球形であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の水中カメラ用アーム部材。
【請求項5】
前記ジョイント部は、連通孔部を開設した平板部材を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の水中カメラ用アーム部材。
【請求項6】
前記ジョイント部材は、前記キャップ部に互いに平行になるように立設形成された複数の板状部材を備え、前記板状部材には各板状部材の間隔を変更するねじ部材を挿入可能な貫通孔部が形成されて構成されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の水中カメラ用アーム部材。
【請求項7】
前記筒状部材の外周には雄ねじ部が形成され、雌ねじ部を形成した筒体がねじ込み可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の水中カメラ用アーム部材。
【請求項8】
前記キャップ部の筒状部材の内面に形成された突出部は螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項2から請求項6までのいずれか一項に記載の水中カメラ用アーム部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維強化プラスチック製のポール本体とこのポール本体の端部に取り付けられた金属製の筒状部材とを備える水中カメラ用アーム部材に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化プラスチック製のポール本体とこのポール本体に取付けられた金属製の筒状部材とを備えるボール部材は、水中カメラ用アームに使用される。水中カメラ用アームは水中カメラ本体に外部照明装置を水中カメラ本体から離れた位置に保持するために使用される。この種の水中カメラ用アームとして、円筒状のポール本体の両端又は一端に金属製のジョイント部材を配置した構造を備えるものがある。また、水中カメラ用アームとしては、ポール本体に伸縮機構を備えたものもある。このような伸縮機構を実現するためには、炭素繊維強化プラスチック製のポール本体に外周に雄ねじ部を形成した筒状部材を接合している。このような水中カメラ用アームは、使用上の要請から、水中カメラ用アームは、軽量で高い強度が求められる。また、水中カメラ用アームは、海中で使用されることから、海水に対する耐腐食性も求められる。
【0003】
一般に水中カメラ用アームは、軽量アルミニウム合金を素材とするものが多く使用されている。近年、更に軽量化を図るため、水中カメラ用アームのポール本体を炭素繊維強化プラスチックで作成することが提案されている。
【0004】
しかし、ポール本体を炭素繊維強化プラスチックで形成した場合であっても、ボールジョイントはその成形性、耐摩耗性を良好にするため軽量アルミニウム合金で形成される。このように、異種素材を接合した物品を海水中に配置した場合、異種素材におけるイオン化傾向の相違から、電位差が発生して電解腐食しやすいことが知られている。
【0005】
上述の炭素繊維強化プラスチック製のポール本体を備える水中カメラ用アームは、ポール本体と、ボールジョイント部に従来からの腐食対策を施して、ポール本体にボールジョイントをねじ込んで接合して海中に持ち込むと電界侵食が発生する。即ち、軽量アルミニウム合金製のボールジョイントや、水中カメラ用アームを取付けるアルミニウム製の水中カメラハウジングが電界腐食されてしまう。これは、上述したように、イオン化傾向の異なる材質からなる部材が接触又は近接し、その間に水分が介在すると、イオン化傾向の高い材質が酸化して腐食が発生するからである。
【0006】
アルミニウム、はイオン化傾向が大きく、炭素繊維は、アルミニウムよりイオン化傾向が数段小さく、水中では、イオン化傾向の大きいアルミニウムが陽極に、イオン化傾向の小さいカーボン繊維が陰極となって、電流が生じる。このため、陽極となったアルミニウムの原子が電子を放出して酸化(電界腐食)するのである。
【0007】
塩素イオン濃度が高い海水では、電気伝導率が真水より上昇し、更に腐食速度を増加させる。海中で使用するアルミニウムは、通常、耐蝕性能を上げるため、表面を陽極酸化被膜で覆うアルマイト処理を行っている。しかし、電気伝導率の高い海中では、アルマイト処理がなされていても、細かな使用時のスレや経年変化などから細かいクラックがアルマイト被膜に入り、このクラックから海水が浸透し通電することとなる。
【0008】
また、炭素繊維強化プラスチック製のポール本体も、母材であるエポキシ樹脂の中に通電するカーボン繊維が編み込まれており、陸上の使用では、通電することはない。しかし、海中ではアルミニウム部材のアルマイト処理面と同様に使用時の細かなスレや経年変化などから細かいクラックがエポキシ樹脂の中に入り、クラックから海水が浸透し通電することとなる。また、ポール本体の切断面には炭素繊維が露出していることがあり、通電が発生する。
【0009】
通常水中カメラシステムにあっては、イオン化傾向の違うステンレスや真鍮のねじや部品を組み込んで、アルミニウムを海中で使用されている。しかし、組み込むステンレスのねじ、真鍮の部品がカーボンアームと比べ小さいこともあり、今までの経験上、アルマイト処理のみで問題はないとされた。
【0010】
しかし、発明者の試験によれば、イオン化傾向が数段小さい炭素繊維強化プラスチックに接触又は近接した状態で組み込まれているアルミニウム部材は、1カ月間の長時間の海中に設置すると溶けるように激しい電界腐食が見られた。更にもう1カ月という長いサイクルの海中設置テストでは、カーボンアームを接続した水中カメラシステムに使われているアルミニウム製のクランプなどにも、同じように激しい電界腐食が見られた。
【0011】
炭素繊維強化プラスチック製のポール本体と軽量アルミニウム合金製のボールジョイントを備える水中カメラ用アームは、長期間の海中での使用を考えると、従来のアルマイト処理だけでなく、更に絶縁性能を対策する必要がある。
【0012】
このように海水中での電界腐食を防止するため、特許文献1には、金属材料と炭素繊維強化プラスチック(CFRP)積層材料とを接合して構成される異材継手において、両材料間の全接合面に介在すると共に量材料の中間的力学特性を有し導電性の低い中間材料を具備してなることを特徴とする異材継手が開示されている。
【特許文献1】実公平3−69708公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1に記載のように、円筒状のポール本体に接着材を介して軽量アルミニウム合金製のボールジョイントを単純に接合するだけでは、以下場合通電が発生するから、腐食を有効に防止できないという問題がある。
(1)炭素繊維強化プラスチックのポール本体の切断面が海水に触れてしまう。
(2)ボールジョイントとポール本体を構成する炭素繊維とが直接接触してしまう。
(3)ボールジョイントとポール本体とを接合する接着材の層に泡が混入してクラックが発生し、海水がしみ込んでしまう。
【0014】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、海水中で長期間にわたり使用したとしても腐食が生じることがない水中カメラ用アーム部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決する請求項1に記載の発明は、炭素繊維強化プラスチックで形成された筒状のポール本体、及び前記ポール本体の一端部に接合された金属製の筒状部材からなる水中カメラ用アーム部材であって、前記筒状部材は、前記ポール本体の前記一端部の外周面を覆うと共に、内周側に軸に沿う断面形状において内側に向けて所定寸法だけ突出する複数個の突出部を軸方向に所定間隔を離して形成した凹凸部を備え、 前記ポール本体の前記一端部の端面に接触すると共に前記ポール本体の前記一端部側の外周面と前記筒状部材の内周面とを離間させる第1スペーサ部材と、 前記ポール本体の外周面と前記筒状部材における他端側端部の内周面とを離間させる第2スペーサ部材とを備え、 前記ポール本体の外周面と前記筒状部材との間であって、前記第1スペーサ部材と前記第2スペーサ部材との間に形成される空間に前記ポール本体と前記筒状部材とを絶縁しつつ固着する接着材を充填したことを特徴とする水中カメラ用アーム部材である。
請求項1に記載の発明によれば、ポール本体と筒状部材とは、第1スペーサ部材、第2スペーサ部材及び接着材により絶縁されている。このため、炭素繊維強化プラスチックのポール本体の切断面が海水に触れたり、筒状部材とポール本体を構成する炭素繊維とが直接接触したりする事態を防止できる。また、ポール本体は、単なる筒状部材であり他に加工が施されていない。このため、炭素繊維が表面に露出しない。また、ポール本体の端部切断面は、第1スペーサ部材に接触しており、炭素繊維が他の部材に接触しない。このため、電解腐食が防止される。
【0016】
同じく請求項2に記載の発明は、前記筒状部材は、他の部材が接続可能なジョイント部材を備え、前記ジョイント部材は、前記筒状部材及び前記ポール本体の前記一端部の端面を覆う円板部とからなるキャップ部と、前記キャップ部に隣接して形成され、他の部材と接続可能なジョイント部とからなることを特徴とする水中カメラ用アーム部材である。
請求項2に記載の発明によれば、ジョイント部に他の部材を接合でき、アーム部材を水中カメラ用アームとして使用できる。
【0017】
同じく請求項3に記載の発明は、前記ジョイント部材には、前記ジョイント部から前記ポール本体の内部に連通する導水孔部が設けられていることを特徴とする水中カメラ用アーム部材である。
本発明によれば、導水孔部から水がポール本体に流入する。このため、メンテナンス時において、ポール本体内から洗浄用の真水を排出することができる他、水中での使用時にポール本体に水が入り浮力が発生せず、アーム部材を水中カメラ用アームに使用できる。
【0018】
同じく請求項4に記載の発明は、前記ジョイント部は球形であることを特徴とする水中カメラ用アーム部材である。
本発明によれば、球形のジョイント部に回転及び角度可変に水中フラッシュ等のアクセサリーを取付けることができる水中カメラ用アームを実現できる。
【0019】
同じく請求項5に記載の発明は、前記ジョイント部は、連通孔部を開設した平板部材を備えることを特徴とする水中カメラ用アーム部材である。
本発明によれば、連通孔部を形成した板状のジョイント部に回転及び角度可変に水中フラッシュ等のアクセサリーを取付けることができる水中カメラ用アームを実現できる。
【0020】
同じく請求項6に記載の発明は、前記ジョイント部材は、前記キャップ部に互いに平行になるように立設形成された複数の板状部材を備え、前記板状部材には各板状部材の間隔を変更するねじ部材を挿入可能な貫通孔部が形成されて構成されることを特徴とする水中カメラ用アーム部材である。
本発明によれば、複数の板状部材で構成したジョイント部に回転及び角度可変に水中フラッシュ等のアクセサリーを取付けることができる水中カメラ用アームを実現できる。
【0021】
同じく請求項7に記載の発明は、前記筒状部材の外周には雄ねじ部が形成され、雌ねじ部を形成した筒体がねじ込み可能に構成されていることを特徴とする水中カメラ用アーム部材である。
本発明によれば、筒状部材の外周に他の部材をねじ込むことができる。
【0022】
同じく請求項8に記載の発明は、前記キャップ部の筒状部材の内面に形成された突出部は螺旋状に形成されていることを特徴とする水中カメラ用アーム部材である。
本発明によれば、凹凸部を構成する突出部は螺旋状であるので、接着材がこの螺旋状の凹凸部に沿って流れやすくなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るアーム部材によれば、海水中で長期間にわたり使用したとしても腐食が生じることがない。
【0024】
即ち、請求項1に記載の発明によれば、ポール本体と筒状部材とは、第1スペーサ部材、第2スペーサ部材及び接着材により絶縁されているため、炭素繊維強化プラスチックのポール本体の切断面が海水に触れたり、筒状部材とポール本体を構成する炭素繊維とが直接接触したりする事態を防止できる。また、キャップ部材の内側には凹凸部が形成されているので、接着材が筒状部材に良好に接合する。更に、ポール本体は、それ自体は単なる筒状部材であり他に加工が施されておらず、炭素繊維が表面に露出しない。また、ポール本体の端部切断面は、第1スペーサ部材に接触しており、炭素繊維が他の部材に接触しないため、電解腐食が防止される。
【0025】
また、請求項2に記載の発明によれば、ジョイント部に他の部材を接合でき、アーム部材を水中カメラ用アームとして使用できる。
【0026】
また、請求項3に記載の発明によれば、導水孔部から水がポール本体に流入する。このため、メンテナンス時において、ポール本体内から洗浄用の真水を排出することができる他、水中での使用時にポール本体に水が入り浮力が発生せず、アーム部材を水中カメラ用アームに使用できる。
【0027】
また、請求項4乃至請求項6に記載の発明によれば、ジョイント部に回転及び角度可変に水中フラッシュ等のアクセサリーを取付けることができる。
【0028】
更に、請求項7に記載の発明によれば、筒状部材の外周に他の部材をねじ込むことができる。
【0029】
そして、請求項8に記載の発明によれば、凹凸部を構成する突出部は螺旋状に形成されているので、接着材がこの螺旋状の凹凸部に沿って流れやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1実施形態に係る水中カメラ用アームを示す斜視図である。
図2】同水中カメラ用アームの図1中のA−A線に相当する断面図である。
図3】同水中カメラ用アームの要部を示す拡大断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る水中カメラ用アームを示すものであり、(a)はジョイント部の縦断面図、(b)は(a)中のI-I線に相当する断面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る水中カメラ用アームを示すものであり、(a)はジョイント部の縦断面図、(b)は(a)中のII-II線に相当する断面図である。
図6】本発明の第4実施形態に係るアーム部材を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明を実施するための形態に係るアーム部材について説明する。
【0032】
<第1実施形態>
以下本発明に係るアーム部材の第1実施形態として水中カメラ用アームについて説明する。図1は本発明の実施形態に係る水中カメラ用アームを示す斜視図である。
【0033】
本実施形態に係る水中カメラ用アーム10は、本発明に係るアーム部材を組み合わせて伸縮可能な構造を備える。即ち、水中カメラ用アーム10は、ポール本体である外側ポール本体20と、同じくポール本体である内側ポール本体30とを備える。外側ポール本体20には、筒状部材を含むジョイント部材である第1ボールジョイント部材40が接続され、内側ポール本体30には、ジョイント部材である第2ボールジョイント部材50が接続されている。第1ボールジョイント部材40、第2ボールジョイント部材50は、他部材との接続のために使用される。水中カメラ用アーム10は、外側ポール本体20内に外側ポール本体20を収納した縮小状態(図1中実線で示した)と、内側ポール本体30を外側ポール本体20から引き出した伸張状態(同仮想線で示した)、及びこの中間位置に設定することができる。
【0034】
外側ポール本体20は、グリップ21、つまみ部22を備える。グリップ21を保持しつつ、つまみ部22をリリース方向に回転することにより、内側ポール本体30を外側ポール本体20に対して移動可能である。同様に、つまみ部22をロック方向に回転することにより、外側ポール本体20に内側ポール本体30を固定した状態に設定できる。これらの伸縮機構及びリリース、ロック機構は公知である。外側ポール本体20及び内側ポール本体30は、炭素繊維強化プラスチックで形成されている。また、第1ボールジョイント部材40及び第2ボールジョイント部材50は、金属製、例えば軽量アルミニウム合金で作成されている。
【0035】
外側ポール本体20と第1ボールジョイント部材40、内側ポール本体30と第2ボールジョイント部材50とは接着材で接合され、それらの基本構造は同一であるので、以下、内側ポール本体30と第2ボールジョイント部材50の構造について説明する。図2は同水中カメラ用アームの要部を示す断面図、図3は同水中カメラ用アームの要部を示す拡大断面図である。
【0036】
内側ポール本体30は、所定の外径Dを備える炭素繊維強化プラスチック製の筒状に形成されたポール本体であり、一端部(図中上端部)31に第2ボールジョイント部材50が接着材100により固着されている。内側ポール本体30の一端部の端面には切断面がそのまま現れている。
【0037】
第2ボールジョイント部材50は、キャップ部60と、このキャップ部60に隣接して設けられた球形ジョイント部70と、を備える。キャップ部60は、内側ポール本体30の一端部31の外周面を覆う筒状部材をなす筒状部61と、内側ポール本体30の一端部の端面を覆う円板部62とからなる。球形ジョイント部70は、球形部71と、この球形部71をキャップ部60に接続する首部72とからなる。球形部71にはゴムリング73がはめ込まれる溝部74が形成される他、内側ポール本体30に連通する導水孔部75、導水孔部75の内面に形成された雌ねじ部76を備える。雌ねじ部76には、他の部材の雄ねじ部をねじ込み、連結することができる。
【0038】
キャップ部60において、筒状部61には、図3に示すように、軸Oに沿う断面形状において、内側に向けて所定寸法dだけ突出する複数個の突出部63が形成されている。突出部63は、軸方向に所定間隔を離して形成され、これらは凹凸部64を形成する。この凹凸部64の内径D1は、上述した内側ポール本体30の外径Dより寸法2d以上大きく(D1+2d>D)、キャップ部60を内側ポール本体30に固着した状態で、突出部63の先端は内側ポール本体30に接触しない。このため、接着材100を充填した状態で、突出部63と内側ポール本体30の外周面との間には、接着材100が介在して、両者を絶縁する。本例では、突出部63は断面形状を略矩形とし、凹凸部64は、筒状部61の内周面において螺旋形の雌ねじ形状となっている。
【0039】
また、本実施形態では、内側ポール本体30と第2ボールジョイント部材50のキャップ部60の間には、第1スペーサ部材80と、第2スペーサ部材90とが配置されている。
【0040】
第1スペーサ部材80は、環状スペーサ部81とこの環状スペーサ部81の外周から図中下方に向け延設される短筒状スペーサ部82とからなり、断面L字状の環状部材をなしている。環状スペーサ部81は、内側ポール本体30の一端部31の端面とキャップ部60の円板部62との間に配置される。短筒状スペーサ部82は、内側ポール本体30の一端部31側の外周面と筒状部61の内周面との間に配置される。第1スペーサ部材80は、絶縁物であり例えば合成樹脂で構成されている。第1スペーサ部材80の環状スペーサ部81は、内側ポール本体30の一端部31の端面31aを覆って、第2ボールジョイント部材50のキャップ部60及び海水が端面31aに露出する炭素繊維に接触するのを防止する。また、第1スペーサ部材80の短筒状スペーサ部82は、内側ポール本体30の外周面とキャップ部60の筒状部61の内周面とを離間させて、両者の接触を防止し、絶縁する。
【0041】
第2スペーサ部材90は、短筒状スペーサ部91と、この短筒状スペーサ部91の下側端部から外方に向けて延設されたフランジ部92とからなる断面L字状の環状部材である。第2スペーサ部材90は合成樹脂で形成される。短筒状スペーサ部91は、内側ポール本体30の外周面とキャップ部60の筒状部61における反球形ジョイント側端部(図中下部)の内周面との間に配置される。フランジ部92は、この短筒状スペーサ部91から外側に突出して筒状部61の下端部に接触する。第2スペーサ部材90の短筒状スペーサ部91は、内側ポール本体30の外周面とキャップ部60の筒状部61の内周面とを離間させて、接触を防止し、両者の間を絶縁する。また、第2スペーサ部材90は、接着材100のキャップ部60からのはみ出しを防止する。
【0042】
そして、本実施形態では、内側ポール本体30の外周面とキャップ部60の筒状部61との間であって、第1スペーサ部材80と前記第2スペーサ部材90との間の空間には、内側ポール本体30とキャップ部60とを絶縁しつつ固着する接着材100が充填されている。この接着材100により、内側ポール本体30と第2ボールジョイント部材50とを固着するとともに、内側ポール本体30と第2ボールジョイント部材50との間を絶縁する。
【0043】
次に内側ポール本体30と第2ボールジョイント部材50との接合手順について説明する。内側ポール本体30に第2ボールジョイント部材50を接合するには、まず、キャップ部60の内部に第1スペーサ部材80をはめ込む。このとき、環状スペーサ部81が円板部62の内面に、短筒状スペーサ部82が筒状部61の内面に密着するようにする。次いで、キャップ部60の凹凸部64に接着材100、例えばエポキシ樹脂接着材を塗布する。このとき、接着材100は、凹凸部64の突出部63により垂れ落ちが防止される。なお、接着材100を内側ポール本体30側に塗布しておくことができる。
【0044】
次いで、内側ポール本体30の一端部31をキャップ部60の筒状部61内に挿入して、一端部31の端面31aが第1スペーサ部材80の環状スペーサ部81に当接するまで押し入れる。このとき、凹凸部64に塗布された接着材100は、螺旋形の凹凸部64に沿って流れる他、突出部63と内側ポール本体30の外周で押付けられる。
【0045】
更に、内側ポール本体30の図中下方の端部から第2スペーサ部材90をはめ込み、第2スペーサ部材90の短筒状スペーサ部91をキャップ部60の筒状部61と内側ポール本体30の間に押し入れ、フランジ部92をキャップ部60の端部に接触させる。これにより、第2スペーサ部材90の短筒状スペーサ部91が接着材100を押し込み、内側ポール本体30の外周面とキャップ部60の筒状部61との間であって、第1スペーサ部材80と第2スペーサ部材90との間に接着材100が充填される。接着材100の硬化を待って、内側ポール本体30と第2ボールジョイント部材50の接合は終了する。外側ポール本体20及び第1ボールジョイント部材40も同様にして接合される。
【0046】
以上のように、本実施形態では、内側ポール本体30と第2ボールジョイント部材50のキャップ部60とは、第1スペーサ部材80、第2スペーサ部材90及び接着材100によって絶縁されているため、炭素繊維強化プラスチック製の内側ポール本体30の切断面が、第2ボールジョイント部材50のキャップ部60とが直接接触することを防止できる。また、第2ボールジョイント部材50の内側には凹凸部64が形成されているので、第2ボールジョイント部材50に接着材100が良好に接合する他、接着材100による接合に際して接着材100が凹凸部64で押されて流れる。また、内側ポール本体30の端部の切断面は、第1スペーサ部材80の環状スペーサ部81に接触しており、炭素繊維が他の部材に接触せず、電解腐食が防止される。
【0047】
また、本実施形態では、凹凸部64は螺旋状としているので、接着材100がこの螺旋状の凹凸部64に沿って流れやすくなる。
【0048】
更に、本実施形態によれば、穴部から水がポール本体に流入するので、メンテナンス時において、ポール本体内から洗浄用の真水を排出することができる他、水中での使用時にポール本体に水が入り水中カメラ用アームに浮力が発生しない。そして、本実施形態に係る水中カメラ用アーム10によれば、球形ジョイント部70に回転及び角度可変に水中フラッシュ等のアクセサリーを取付けることができる。
【0049】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態について説明する。水中カメラ用アームに取付けるアクセサリーの取付け機構にはボールジョイントを用いたもの他、さまざまな構成を備えるものがある。第2実施形態は、このようなボールジョイント以外の取付けに対応するものである。
【0050】
図4は本発明の第2実施形態に係る水中カメラ用アームを示すものであり、(a)はジョイント部の縦断面図、(b)は(a)中のI-I線に相当する断面図である。第2実施形態では、ポール本体に接合するジョイント部110は、円板部115から延設された首部112に平板部材111を連結して構成している。平板部材111は、先端が弧状であり、2つの連通孔部113、114が開設されている。また、連通孔部113の周面から円板部115に向け導水孔部116がポール本体内に連通するように開設されている。なお、ポール本体とジョイント部との接合構造は第1の実施形態と同じである。
【0051】
本実施形態によれば、連通孔部113を形成した板状のジョイント部110に回転及び角度可変に水中フラッシュ等のアクセサリーを取付けることができる。
【0052】
<第3実施形態>
次に本発明の第3実施形態について説明する。図5は本発明の第3実施形態に係る水中カメラ用アームを示すものであり、(a)はジョイント部の縦断面図、(b)は(a)中のII-II線に相当する断面図である。第3実施形態では、ポール本体に接合するジョイント部120は、円板部125から延設された3枚の板状部材121、122、123を備える。この板状部材121、122、123は、互いに平行になるように立設形成され、各板状部材121、122、123には、間隔を変更するねじ部材であるボルト126を挿入可能な貫通孔部121a、122a、123aが形成されている。
【0053】
このジョイント部120では、アクセサリーは、板状部材121、122、123の間にはめ込まれる取付具128を介してジョイント部120に取付けられる。取付具128は2枚の平行板状部材129、130を備える。ジョイント部120に取付具128を取付けた状態で、ボルト126と蝶ナット127でジョイント部120の板状部材121、122、123の間隔を狭め、ジョイント部120と取付具128とを固定する。なお、ボルト126の頭部は板状部材123に回転しないように埋め込まれている。
【0054】
また、円板部125には、導水孔部124がポール本体内に連通するように開設されている。なお、ポール本体とジョイント部との接合構造は第1の実施形態と同じである。
本実施形態によれば、複数の板状部材121、122、123で構成したジョイント部120に回転及び角度可変に、防水ケースに入れたアクションカメラ、水中フラッシュ等のアクセサリーを取付けることができる。
【0055】
<第5実施形態>
次に本発明の第5実施形態に係るアーム部材について説明する。この実施形態に係るアーム部材130は、炭素繊維強化プラスチック製の筒状のポール本体131の一端に金属製の筒状部材132を接着材で接合している。また、突出部134の外周面には、雄ねじ部133が形成されている。更に筒状部材132の内側面には、実施形態1と同様に、軸Oに沿う断面形状において、内側に向けて所定寸法だけ突出する複数個の突出部134が形成されている。
【0056】
突出部134は、軸方向に所定間隔を離して形成され、これらは凹凸部135を形成する。この凹凸部135の内径は、ポール本体131の外径より大きく、筒状部材132をポール本体131に固着した状態で、突出部134の先端はポール本体131に接触しない。このため、接着材を充填した状態で、突出部134とポール本体131の外周面の間には、接着材145が介在して、両者を絶縁する。本例では、突出部134は断面形状を略矩形とし、凹凸部135は、筒状部の内周面において螺旋形の雌ねじ形状となっている。
【0057】
また、本実施形態では、ポール本体131と突出部134の間には、第1スペーサ部材141と、第2スペーサ部材142とが配置されている。本実施形態では、ポール本体131の外周面と突出部134との間であって、第1スペーサ部材141と第2スペーサ部材142との間の空間145には、ポール本体131と突出部134とを絶縁しつつ固着する接着材が充填されている。この接着材により、ポール本体131と筒状部材132とを固着するとともに、内側ポール本体30と第2ボールジョイント部材50との間を絶縁する。
【0058】
第1スペーサ部材141及び第2スペーサ部材142は、第1実施形態における第1スペーサ部材80と、第2スペーサ部材90と同様の構成を備える。本実施形態によれば、金属製の筒状部材132が海水等で腐食されることがないし、また、筒状部材の外周に他の部材をねじ込むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係るアーム部材は、海水中で長期間にわたり使用したとしても腐食が生じることがなく、海中で腐食しない水中カメラ用アームを実現できるという効果を有し、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0060】
10:水中カメラ用アーム
20:外側ポール本体(ポール本体)
30:内側ポール本体(ポール本体)
31:一端部
31a:端面(切断面)
40:第1ボールジョイント部材(ボールジョイント部材)
50:第2ボールジョイント部材(ボールジョイント部材)
60:キャップ部
61:筒状部
62:円板部
63:突出部
64:凹凸部
70:球形ジョイント部
71:球形部
72:首部
73:ゴムリング
74:溝部
75:導水孔部
76:雌ねじ部
80:第1スペーサ部材
81:環状スペーサ部
82:短筒状スペーサ部
90:第2スペーサ部材
91:短筒状スペーサ部
92:フランジ部
100:接着材
110:ジョイント部
111:平板部材
131:ポール本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6