(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765743
(24)【登録日】2020年9月18日
    
      
        (45)【発行日】2020年10月7日
      
    (54)【発明の名称】宇宙飛行体内に用いられる望遠鏡及び望遠鏡アレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B  23/02        20060101AFI20200928BHJP        
   G02B  23/18        20060101ALI20200928BHJP        
   B64G   1/66        20060101ALI20200928BHJP        
【FI】
   G02B23/02
   G02B23/18
   B64G1/66 A
【請求項の数】12
【全頁数】8
      (21)【出願番号】特願2017-502762(P2017-502762)
(86)(22)【出願日】2015年3月23日
    
      (65)【公表番号】特表2017-513074(P2017-513074A)
(43)【公表日】2017年5月25日
    
      (86)【国際出願番号】US2015021996
    
      (87)【国際公開番号】WO2015148371
(87)【国際公開日】20151001
    【審査請求日】2018年2月28日
      (31)【優先権主張番号】14/224,134
(32)【優先日】2014年3月25日
(33)【優先権主張国】US
    
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】500360769
【氏名又は名称】ユニバーシティ  オブ  フロリダ  リサーチ  ファウンデーション,インコーポレイティド
          (74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】特許業務法人にじいろ特許事務所
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】ザオ、ボー
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】ガズマン、ラファエル
              
            
        
      
    
      【審査官】
        殿岡  雅仁
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          米国特許第03527526(US,A)      
        
        【文献】
          実開昭57−153317(JP,U)      
        
        【文献】
          特表2008−507740(JP,A)      
        
        【文献】
          特開昭56−078816(JP,A)      
        
        【文献】
          米国特許第05905591(US,A)      
        
        【文献】
          米国特許出願公開第2004/0233550(US,A1)    
        
        【文献】
          特開平06−175039(JP,A)      
        
        【文献】
          米国特許出願公開第2008/0019022(US,A1)    
        
        【文献】
          米国特許第3711184(US,A)      
        
        【文献】
          米国特許第4523816(US,A)      
        
        【文献】
          米国特許第4273425(US,A)      
        
      
      
        【文献】
          Alexey N. Yudin, Anatoly V. Sankovitch,"Fast catadioptric telescopes for CCD observation of transient events and space surveillance",OPTICAL COMPLEX SYSTEMS:OCS11,2011年  9月30日,Proc. of SPIE Vol. 8172,pages1-10
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B      9/00  −  17/08
G02B    21/02  −  21/04
G02B    23/00  −  23/22
G02B    25/00  −  25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  改良されたマクストフカセグレン型の光学構造を有するカタディオプトリック式光学望遠鏡であって、
  略円柱形の内部、入口端および出口端を有し、光軸に沿って細長い形状のハウジングと、
  前記ハウジングの前記入口端に設けられ、前記光学構造の最も前方の光学要素であり、第1面及び第2面と、前記第2面の中央部に設けられる反射膜とを有する、球面メニスカス補正レンズと、
  前記ハウジングの前記出口端に設けられ、中央絞りと、第1面及び第2面と、前記第2面に位置する反射膜とを有する、マンジャンミラーである主鏡と、
  前記主鏡の前記中央絞り内に位置し、前記補正レンズ及び前記主鏡の光軸上に配置される単一のレンズからなるフィールドフラットナレンズと
を備え、
  前記補正レンズと前記主鏡は、前記ハウジング内部にてそれぞれの第1面が互いに対向するように、光軸上に配置され、
  前記補正レンズに入射された光線は、前記フィールドフラットナレンズに入射されるまでに、前記主鏡の第2面に位置する反射膜と、前記補正レンズの第2面の中央に設けられる反射膜とでのみ反射されることを特徴とするカタディオプトリック式光学望遠鏡。
【請求項2】
  前記フィールドフラットナレンズの光軸上かつ後方に配置されるCMOSセンサを有する、請求項1に記載の望遠鏡。
【請求項3】
  前記フィールドフラットナレンズの光軸上かつ後方に配置されるフィルタを有する、請求項1に記載の望遠鏡。
【請求項4】
  前記ハウジング、前記補正レンズ、前記主鏡および前記反射膜は、おおよそ400〜1000nmの波長域の電波での使用に前記望遠鏡を最適化するように選択される、請求項1に記載の望遠鏡。
【請求項5】
  前記ハウジングはセラミックスにより製造され、前記レンズはセラミックスと同一の熱係数を有するガラスにより製造される、請求項1に記載の望遠鏡。
【請求項6】
  前記補正レンズの第1面に近接して配置される円錐形バッフルと、
  前記主鏡の第1面に近接して配置される円柱形バッフルと、
  前記補正レンズの第2面に近接して配置される円柱形バッフルと、
を有する、請求項1に記載の望遠鏡。
【請求項7】
  請求項1に記載の2つのカタディオプトリック式光学望遠鏡を含む宇宙飛行体内で用いられる双眼望遠鏡アレイ。
【請求項8】
  2つの望遠鏡は、目標とする観察距離において同一の視野を有するように位置合わせされる、請求項7に記載の望遠鏡アレイ。
【請求項9】
  2つの望遠鏡は、目標とする観察距離において異なる視野を有するように位置合わせされる、請求項7に記載の望遠鏡アレイ。
【請求項10】
  一方の望遠鏡は画像データを出力するように構成され、他方の望遠鏡は分光分析データを出力するように構成される、請求項8に記載の望遠鏡アレイ。
【請求項11】
  一方の望遠鏡は画像データを出力するように構成され、他方の望遠鏡はポラリメトリデータを出力するように構成される、請求項8に記載の望遠鏡アレイ。
【請求項12】
  2つの望遠鏡は、異なる波長域の電磁波を観察するように構成される、請求項8に記載の望遠鏡アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  発明の背景  
  本発明は、望遠鏡に関し、具体的には、電磁スペクトルの可視及び近赤外領域で適用可能な光学望遠鏡に関する。更に直接的に言えば、本発明は、宇宙飛行体(例えば、人工衛星)内及びその他のリモートセンシングのアプリケーションで使用される光学望遠鏡及び光学望遠鏡アレイに関する。
 
【背景技術】
【0002】
  大学等では、天文、気候及び地球科学における研究のためにナノサテライトを用いている。そして、官民両目的のためのナノサテライトの使用が期待されてきた。例えば、ナノサテライトネットワークは、パイプラインの周辺にて無許可のトラックサイズの車両に乗ってくる人を検知することによって石油やガソリンの盗難を防止するためのパイプライン全長に亘る監視のために利用することができる。更に、ナノサテライトは、出入国管理(麻薬を輸送する可能性がある飛行機及びゲリラ兵の動きを監視)または環境災害の予防(例えば、保護林の広範囲に及び発生する国際的な火災)にも利用することができる。
【0003】
  ナノサテライトのような宇宙飛行体内で使用するための光学望遠鏡は厳しい条件を満たさなければならない。このような光学望遠鏡は、小さく、軽く、平衡性がよく、かつ安定的な機械性能を有する必要がある。また、このような光学望遠鏡は簡単にカスタマイズできなければならず、あるナノサテライトのアプリケーションでは広視野が要求され、またある時は高解像度の画像が要求され、さらには分光分析データまたはポラリメトリデータの取得機能が要求されたりもする。
【0004】
  そこで、本発明の目的は、望遠鏡及びアレイが小さく、軽く、平衡性が良く、安定的な機械性能を有し、かつ簡単にカスタマイズ可能な宇宙飛行体内やナノサテライトのようなリモートセンシングのアプリケーションに用いられる光学望遠鏡及び光学望遠鏡アレイを提供することにある。
【0005】
  従来のマクストフカセグレン型のカタディオプトリック式光学望遠鏡は良好な機械特性を有しており、小さく、軽く、平衡性がよく、機械性能も安定的である。しかしながら、このような望遠鏡は、400〜1000nmの波長域(ナノサテライトのアプリケーションに要求される可視領域から近赤外線領域までの波長域)で適用する場合、非点収差、コマ収差及び有色球面収差が許容できないレベルにある。また、従来のマクストフカセグレン式光学望遠鏡をカスタマイズして、異なるナノサテライトのアプリケーションの要求を満足させることは困難である。
 
【発明の概要】
【0006】
  本発明は以下の2種類の方法から実現できる。その一つは、従来のマクストフカセグレン式光学望遠鏡の設計を改良し、第2の面反射を主鏡及び副点鏡(従来における第1の面反射の代わり)に用いれば、元の設計における寸法、重量、平衡性及び安定性のメリットを維持しつつ、光学収差を許容範囲内とすることができる。
 
【0007】
  もう一つは、そのように改良されたデザインを有する2つの望遠鏡により構成される双眼望遠鏡アレイを用いることによって、簡単かつ安価にカスタマイズを実現できる。実際には、望遠鏡の互いの向き、レンズ上のコーティング及び使用するフィルタを変更することによってカスタマイズすることができる。例えば、2つの望遠鏡を互いに平行にさせ、それらの視野を衛星からの特定の距離で一致するようにすれば高解像度の画像が得られる。また、大きい領域の画像が欲しい場合は、特定の距離での視野がオーバーラップしないように望遠鏡を正確にコントロールすれば良い。さらに、レンズ上において適切なコーティングを用い、かつ適切なフィルタを使用することによって、分光分析データとポラリメトリデータを取得でき、また、一方の望遠鏡で画像を取得し、他方の望遠鏡で所望の非画像データを取得するように配置することによって、画像データと、分光分析データまたはポラリメトリデータとの両方のデータを取得することができる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0008】
  本発明をより良く理解できるように、以下に図面を参照して説明するが、それらに限定されるものではない。
【
図1】従来のマクストフカセグレン型のカタディオプトリック式光学望遠鏡の動作を示す図である。
 
【
図2】本発明のカタディオプトリック式光学望遠鏡の動作を示す図である。
 
【
図3】本発明の代表的な実施形態に基づく望遠鏡を示す図である。
 
【
図4】本発明に基づく双眼望遠鏡アレイを示す図である。
 
【
図5A】本発明に基づく双眼望遠鏡アレイの第1実施形態の動作を示す図である。
 
【
図5B】本発明に基づく双眼望遠鏡アレイの第1実施形態の動作を示す図である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0009】
  各図において、各構成要素には同一符号を付し、それに対応する構成要素にはその符号にダッシュを付して示している。また、各図は実際の寸法、割合、角度を示すものではなく、より明確にするために拡大または縮小して示し得るものである。
 
【0010】
  図1は、マクストフカセグレン型のカタディオプトリック式光学望遠鏡の400〜1000nmの波長域における動作を示す図である。入射光2、4、6及び8は、望遠鏡の球面メニスカス補正レンズ10を通過して望遠鏡の入口端200に入る。光学ガラスにより形成される球面メニスカス補正レンズ10は、入射光2、4、6及び8を外側へ放射状に分散させる。その後、これらの入射光は、主鏡(プライマリミラー)12(その中心には絞り16を有する)の球形反射面に到達して補正レンズ10に向けて反射され、補正レンズ10における副点鏡(セカンダリスポットミラー)14に入射される。その後、副点鏡14により反射された後の光線2、4、6および8は、主鏡12の中心に位置する円形絞り16に方向付けられる。
 
【0011】
  鏡12及び14は、鏡の第1面上に位置する反射材料の層により形成される。(光線がぶつかる最初の面から反射されるため、「第1面」の用語を用いた。)この結果、光線2、4、6および8が副点鏡14により反射された時、これらの光線が形成する画像において、ゆがみ、非点収差、コマ収差及び有色球面収差を含む収差問題が発生する。補正レンズ18はこれらの収差を補正し、そして光線2、4、6および8は、フィールドフラットナレンズ20を通過して望遠鏡の出口端210に位置するセンサ22(例えばCMOSセンサ)に入射される。
 
【0012】
  図2では、本発明のカタディオプトリック式光学望遠鏡の動作を模式的に示している。ここで、望遠鏡の入口端200’では、球面メニスカス補正レンズ10’が光線2、4、6および8を外側へ放射状に分散させ、光線2、4、6および8は主鏡12’に入射される。マンジャンミラーとしての主鏡12’は中心に円形絞り16’を有する負メニスカスレンズである。ここで、反射光線は主鏡12’の第2面から反射されたものであり、光線2、4、6および8は、光学ガラスにより作成される主鏡12’の第1面を通過し主鏡12’の第2面に到達したときだけ反射される。したがって、主鏡12’は鏡としてだけでなく、トリプレットレンズ(2回の光偏向を行うものであり、その1回目は光線が主鏡12’に入る時であり、2回目は光線が主鏡12’から離れる時である)としての機能も有する。
 
【0013】
  主鏡12’の第2面から反射された後の光線2、4、6および8は、補正レンズ10’の第2面に位置する副点鏡14’に入射される。補正レンズ10’は球面メニスカスレンズであるので、副点鏡14’も主鏡12’の場合のように、レンズとしての機能を有する。
 
【0014】
  図1と
図2を比較してわかるように、本発明の望遠鏡は、補正レンズ10または10’と主鏡12または12’との間に補正レンズを配置する必要がない。本発明の望遠鏡は、その出口端210’に位置するCMOSセンサ22の前にフィールドフラットナレンズ20を配置すればよい。
 
【0015】
  図3は、本発明の代表的な実施形態に基づく望遠鏡を示す図である。この実施形態においては、  
    円柱形バッフル30が、補正レンズ10’の前に配置され、  
    他の円柱形バッフル32が、主鏡12’の前に配置され、  
    円錐形バッフル34が、補正レンズ10’の後に配置され、かつ  
    フィルタ24が、フィールドフラットナレンズ20’と検出器22との間に挿入されている。バッフル、例えばバッフル30、32および34は、通常、マクストフカセグレン式光学望遠鏡に用いられる。これらのアルミ製のバッフルが迷光を遮断する。以下に記載されるように、フィルタ24は、検出器22により検出するデータに応じて選択される。
 
【0016】
  図3に示す実施形態において使用されるガラスはN−BK7であり、その屈折率nは1.5168である。この実施形態での焦点距離は1500mmであり、そのスピードはf/10である。700kmの目標観察距離(例えば、700kmの軌道上のナノサテライトと地球上との間の距離)で、この実施形態では、直径20kmの視野を有する。
 
【0017】
  本発明によれば、カタディオプトリック式光学望遠鏡の双眼望遠鏡アレイが構成される。各望遠鏡は本発明に基づく望遠鏡の上述の実施形態であることが好ましい。特別な適用に対して簡単かつ安価にカスタマイズできるアレイの実施形態について、以下に説明する。
 
【0018】
  この実施形態によるアレイは、2つの上述した望遠鏡により構成される。望遠鏡100および110は、補正レンズ10’及び主鏡12’におけるガラスと同一の熱係数を有するセラミックスにより製造されるハウジング120(
図4)内に設けられる。ハウジング120は入口端120A及び出口端120Bを有し、補正レンズ10’は入口端120Aに配置され、CMOSセンサ22は出口端120Bに配置される。
 
【0019】
  特別な適用として高精細なビジュアルイメージが要求される場合は、ハウジング120を構成するときに、望遠鏡100および110の光軸を非平行状態に保持するようにすれば、望遠鏡100及び110は700km(
図5A)の目標観察距離で約20kmの同一の視野を有することができる。この距離において、この実施形態によるアレイによれば、解像度が約3mの画像を生成することができる。また、より大きな視野が重視される場合は、ハウジング120’を構成するときに、望遠鏡100および110の光軸を平行に保持するようにすれば、アレイは約40km幅(
図5B)の視野を有することができる。
 
【0020】
  この実施形態による望遠鏡は、電磁スペクトルの波長が400〜1000nmの可視及び近赤外線領域で動作可能である。本発明の望遠鏡及び望遠鏡アレイをカスタマイズするために、電磁スペクトルの関心領域において望遠鏡及び望遠鏡アレイの性能が最適化されるように、各レンズ上のコーティング及びフィルタ24が選択される。好適には、レンズの透過光面にはBBAR反射防止膜を施し、反射光面には銀の保護膜を施す。一般的なフィルタ24は、例えば波長域400nm〜700nmと波長域700nm〜1000nmといったような異なる波長域にて動作する高精度のバンドパスフィルタである。さらに、本発明のアレイは、分光分析データあるいはポラリメトリデータを収集するために、一方の望遠鏡を電磁スペクトルの可視領域にて動作すべく最適化すると同時に、他方の望遠鏡を電磁スペクトルの近赤外領域にて動作すべく最適化するようにカスタマイズすることができる。好適には、一方の望遠鏡は分光分析データを収集すべく最適化し、他方の望遠鏡はポラリメトリデータを収集すべく最適化するようにカスタマイズする。このような場合、2つの望遠鏡は、通常、取得された画像データが取得された赤外線データと関連付くように、そして電磁スペクトルのある波長域で取得されたデータが他の波長域で取得されたデータと関連付くように、同一の視野を共用する。