【実施例1】
【0014】
実施例1に係る陳列用具につき、
図1と
図2を参照して説明する。以下、
図2の画面左側を陳列用具の正面側(前方側)とし、その前方側から見たときの上下左右方向を基準として説明する。
【0015】
本実施例の陳列用具1は、例えば、スーパーマーケットやデパート等において、物品陳列棚や壁等の物品陳列空間に設置され、
図1に示されるように、物品陳列空間の左右方向に延びる断面四角形状の桟部材2に取り付けられ、前方側に延出する物品保持部材4に物品に設けられる貫通孔やフック等を吊下げることにより物品を吊支して陳列できるようになっている。
【0016】
図1及び
図2に示されるように、陳列用具1は、側面視下向き略コ字状を成し桟部材2に上方から着脱可能な係合部材3(係合部)と、該係合部材3の前板部3aの中央に取り付けられる側面視略S字状の物品保持部材4(物品保持部)と、係合部材3の上板部3bに平型蝶番6を介して揺動可能に軸支される規制部材5と、から主に構成されている。
【0017】
係合部材3は、スチール板の曲げ加工により側面視下向き略コ字状を成し、上板部3bを挟んで前方側で垂下する前板部3aと、上板部3bを挟んで後方側で垂下する後板部3cとを有し、これら上板部3bと前板部3aと後板部3cとで画成された下方に開放する開口部3dを形成している。開口部3dの前後寸法は、桟部材2の前後寸法と略同一または僅かに大きく形成されることにより、係合部材3を桟部材2に上方から嵌挿するようにして着脱できるようになっている。
【0018】
前板部3aは、後板部3cよりも上下方向に長尺となるように形成されており、陳列用具1を桟部材2に取り付ける際には、桟部材2に対して前方側から前板部3aの後面側を後板部3cよりも先に当接させることにより、桟部材2が開口部3dに嵌挿されるようにガイドできるため、係合部材3を桟部材2に確実に取り付けることができる。また、陳列用具1を桟部材2から取り外す際には、係合部材3を上方に持ち上げた際に桟部材2と後板部3cとの接触が前板部3aとの接触よりも先に解除されるため、係合部材3を桟部材2から完全に引き抜くことなく前方側に引き寄せることができ、陳列用具1を桟部材2に対して前方側から着脱しやすくなっている。
【0019】
また、前板部3aの前面左右中央には、物品保持部材4の基部4cが溶接固定されており、上板部3bには、平型蝶番6の一方の板部6bが溶接固定されている。
【0020】
物品保持部材4は、棒状の鋼材の曲げ加工により側面視略S字状を成し、前端側が折り曲げられて上方に延びる自由端部4aと、後端側が折り曲げられて下方に延びる基部4cと、自由端部4aと基部4cとの間で前後方向に延び物品を吊支して保持可能な保持部4bと、から構成されている。
【0021】
自由端部4aは、折り曲げられて上方に延びているため、保持部4bに吊支される物品の前方側への移動を規制し、物品保持部材4に吊支された物品の抜け落ちを防いでいる。また、自由端部4aの先端は半球状に成形されており、利用者の体の一部や吊支される物品が自由端部4aの先端に接触した際に、怪我や破損等が発生しないように安全性が高められている。
【0022】
また、保持部4bは、物品が吊支されて荷重が大きくかかった際に撓りにより略水平な状態となるように、前方側から後方側にかけて所定角度下方に傾斜するように形成されている。
【0023】
また、基部4cは、係合部材3の前板部3aと上下寸法が略同一に形成されており、係合部材3の前板部3aの上下方向に亘って接触部分を増やすことにより、溶接による固定強度が高められている。
【0024】
規制部材5は、樹脂製の板材からなり、その左右中央が下端側に切り欠かれ側面視略レ字状、正面視略コ字状に形成され、係合部材3の前板部3aに前方側から当接する前面板5bと、該前面板5bの下端から後方側に斜め上方に向けて延びる規制板5cと、から構成されている。規制部材5の左右中央下端側には、物品保持部材4の径よりも長い幅寸法の切欠部5aが形成されており、規制部材5は物品保持部材4の基部4cを上方から囲うようになっている。尚、規制部材5の切欠部5aは、規制板5cに下端縁から前面板5bの上端部にかけて形成されており、規制部材5を揺動させた際に、物品保持部材4が接触して規制部材5の揺動を邪魔しないようになっている。また、規制部材5は、アルミニウム合金やスチール等の金属板から構成されていてもよい。
【0025】
規制部材5の前面板5bの上方の裏面には、平型蝶番6の他方の板部6cが溶接固定されている。平型蝶番6の一方の板部6b及び他方の板部6cは、軸部6a(軸支部分)により互いが回動可能に軸支されている。前面板5bの上端部は、規制部材5を軸支する平型蝶番6の軸部6aの位置よりも上方に突出するとともに、物品保持部材4の保持部4bよりも上方に突出している。これによれば、規制部材5の前面板5bの上端部を押す力を規制部材5の揺動に変換することができるとともに、物品保持部材4の保持部4bを把持しながら規制部材5の前面板5bの上端部を前方側から親指等で操作することができ、陳列用具1を桟部材2に対して片手で着脱することも可能となっている(
図2(a)参照)。
【0026】
また、前面板5bは、係合部材3の前板部3aの前面側に隣接して設けられ、上述したように上端部が軸部6aよりも上方に突出しているため、平型蝶番6や係合部材3を前方側から見え難いように被装でき、陳列用具1を桟部材2に対して取り付けた際の美観を向上させることができる。尚、前面板5bの前面側には、鏡面加工等の加工や塗装等の装飾を行ってもよい。
【0027】
また、規制板5cは、前面板5bの上端部を操作して平型蝶番6の軸部6aを中心に規制部材5を揺動させることにより係合部材3の下方で前後方向に移動可能となっている。さらに、規制部材5は、平型蝶番6の軸部6aよりも規制板5cが後方側に延在し、その重心Gは軸部6aよりも後方側に位置する(
図2(c)参照)。そのため、陳列用具1を桟部材2に取り付けた状態(すなわち水平に位置させた状態)で、規制部材5は、荷重バランスにより軸部6aを中心として反時計回りに揺動するが、係合部材3の前板部3aにより移動規制され、前面板5bが略垂直な状態になる位置に保持されるようになっている(
図2(b)及び
図2(c)参照)。
【0028】
尚、規制部材5は、全体の素材と厚みが均一な板材から構成されており、形状に基づく重心の位置により荷重バランスを調整するものとして説明したが、これに限らず、例えば、規制部材を構成する板材の部分的な素材または厚みの変更や重り等の付加によって荷重バランスを調整してもよい。
【0029】
次いで、陳列用具1の桟部材2への取り付け方法について
図2を用いて説明する。尚、陳列用具1は、物品陳列空間の桟部材2に対して前方側から取り付けられるものとして説明する。
【0030】
先ず、
図2(a)に示されるように、物品保持部材4の保持部4bを把持しながら、規制部材5の前面板5bの上端部を前方側から親指等で押圧操作する。そして、規制部材5の規制板5cが係合部材3の下方で開口部3dの鉛直線上から退避する位置まで前方側に移動させた状態で、係合部材3を桟部材2に対して上方から略垂直に嵌挿する。
【0031】
次に、規制部材5の前面板5bの上端部に対する押圧操作を解除することにより、規制部材5は、荷重バランスにより平型蝶番6の軸部6aを中心に自然に揺動する(
図2(b)参照)。そして、規制部材5の前面板5bが略垂直になるまで揺動して係合部材3の前板部3aと当接することにより、規制部材5の規制板5cは、係合部材3の下方で開口部3dの鉛直線上に位置する。この状態で、陳列用具1が略垂直方向に持ち上げられても、係合部材3の規制板5cが桟部材2の下方に当接するため、陳列用具1の上方への移動が規制され桟部材2から不用意に外れることを防げる(
図2(c)参照)。
【0032】
以上説明したように、陳列用具1は、規制部材5を揺動させるだけで桟部材2への係合部材3の移動を可能としているため、桟部材2に対して前方側から容易に取り付けることができるとともに、規制部材5に作用させた力を解放することにより、規制部材5は荷重バランスにより揺動し、陳列用具1を取り付けた後に係合部材3の上方への移動が規制されるため、陳列用具1を桟部材2に容易に取り付けることができる。
【0033】
また、陳列用具1を桟部材2から取り外す場合には、取り付け時と逆の手順、詳しくは、物品保持部材4の保持部4bを把持しながら規制部材5の前面板5bの上端部を前方側から親指等により押圧操作し、規制部材5を揺動させるだけで規制板5cが桟部材2に干渉しなくなり、この状態で陳列用具1を略垂直に持ち上げることにより、陳列用具1を桟部材2から取り外すことができるため、陳列用具1の取り外し操作が容易である。すなわち、陳列用具1は、桟部材2の前方側から片手で容易に着脱可能になっている。
【0034】
また、規制部材5の前面板5bの上端部を操作することにより、規制部材5を揺動させることができるため、物品保持部材4の保持部4bに物品が吊支された状態であっても陳列用具1を取り外すことができる。
【0035】
また、規制部材5は、側面視略レ字状を成し、陳列用具1を桟部材2に取り付けた状態で規制板5cが後方側に斜め上方に向けて延びているため、桟部材2の下部と規制板5cが近接しており、不用意に外そうとしても規制板5cが桟部材2に直ぐに当接して移動を規制するとともに、前面板5bと規制板5cの間の角度が鋭角であるため、規制板5cが桟部材2に当接した状態から外れ難くなっている。
【実施例2】
【0036】
次いで、実施例2に係る陳列用具につき、
図3を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0037】
図3に示されるように、陳列用具100の係合部材103(係合部)は、上板部103bを挟んで前方側で垂下する前板部103aと、上板部103bを挟んで後方側で垂下する後板部103cと、から構成され、前板部103aの下端縁が前方側に向けて斜めに延出して延出部103eを形成している。これによれば、係合部材103の開口部103dを桟部材2に上方から嵌挿する際に、桟部材2が延出部103eの後面側に接触することにより、桟部材2が延出部103eの後面側の傾斜によって前板部103aまでガイドされるため、係合部材103と桟部材2とを前後に位置合わせして嵌挿することができる。
【0038】
また、係合部材103の上板部103bの一方の側端(右端)側には、側面視四角形状の固定板106が溶接固定されており、固定板106の前方上端部に設けられた軸部106a(軸支部分)に規制部材105が揺動可能に軸支されている。尚、規制部材105は、固定板106の軸部106aに左右両側からリベット等で締結されている。
【0039】
図3(b)に示されるように、規制部材105は、側面視略倒立L字状を成し、前方側に延びる操作部105aと、後方側に延び上方に突出する突出部105bと、該突出部105bから係合部材103の後板部103cに沿って下方に垂下し、係合部材103の下方において前方側に斜め上方に延びて鉤状に形成される規制部105cと、から構成されており、操作部105aを下方に押圧操作することにより、固定板106の軸部106aを中心に規制部材105が揺動し、規制部105cが後方側に移動する(
図3(c)参照)。
【0040】
また、操作部105aは、先端が係合部材103の中央側に湾曲しており、物品保持部材4の保持部4bを把持しながら操作しやすくなっている。
【0041】
また、規制部材105の後方側に突出部105bが形成されることにより、後方側の荷重が前方側の荷重よりも大きくなり、その重心が軸部106aよりも前方かつ下方に位置するため、陳列用具100を桟部材2に取り付けた状態で荷重バランスによって固定板106の軸部106aを中心に規制部105cが係合部材103の下方に配置されるように自然に揺動するようになっている。
【0042】
図4に示される変形例である陳列用具200の係合部材203(係合部)は、上板部203bを挟んで前方側で垂下する前板部203aと、上板部203bを挟んで後方側で垂下する後板部203cと、から構成され、前板部203aの下端縁が前方側に向けて斜めに延出して延出部203eと、後板部203cの下端縁が後方側に向けて斜めに延出して延出部203fとを形成している。これによれば、係合部材203の開口部203dを桟部材2に上方から嵌挿する際に、桟部材2が延出部203eの後面側に接触することにより、桟部材2が延出部203eの後面側の傾斜によって前板部203aまでガイドされるとともに、桟部材2が延出部203fの前面側に接触することにより、延出部203fの前面側の傾斜によって後板部203cまでガイドされるため、係合部材203と桟部材2とを前後に位置合わせして嵌挿することができる。
【0043】
また、後板部203cには、延出部203fの下端左右中央から上方に向けて切欠部203gが形成されており、切欠部203gに後方側から規制部材205の一部が嵌挿されることにより規制部材205が後板部203cに沿って当接する構造になっている。
【0044】
規制部材205は、係合部材203の上板部203bの左右中央に溶接固定される固定板206の前方上端側の軸部206a(軸支部分)に揺動可能に軸支され、物品保持部材4と略一直線状に配置されるため、物品保持部材4の保持部4bを把持しながら操作部205aの先端を操作しやすくなっている。
【0045】
図3及び
図4に示されるように、陳列用具100,200の規制部材105,205の規制部105c,205cは、それぞれ係合部材103,203を挟んで物品保持部材4と水平方向に互いに対向させて配置されているため、物品保持部材4に吊支された物品が規制部材105,205の規制部105c,205cに接触し難く、規制部材105,205の誤作動が起こり難い。
【0046】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0047】
例えば、前記実施例では、物品に設けられる貫通孔やフック等を棒状の物品保持部材4に挿通して吊支する態様として説明したが、これに限らず、例えば、リング形状の物品保持部材にフック等で物品が吊支されてもよいし、棚板状の物品保持部材の上面に物品が載置されてもよい。