特許第6765769号(P6765769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6765769状態変動検出装置及び状態変動検出用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765769
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】状態変動検出装置及び状態変動検出用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20200928BHJP
【FI】
   G06N20/00 130
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-40531(P2018-40531)
(22)【出願日】2018年3月7日
(65)【公開番号】特開2019-159365(P2019-159365A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年3月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊和
(72)【発明者】
【氏名】牧野 真一
【審査官】 北元 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−219466(JP,A)
【文献】 特開2008−168185(JP,A)
【文献】 特開2013−44530(JP,A)
【文献】 特開2002−302824(JP,A)
【文献】 特開平10−232714(JP,A)
【文献】 特開2006−300895(JP,A)
【文献】 特開2017−220111(JP,A)
【文献】 特表2010−505036(JP,A)
【文献】 内山勇一、外3名,自己回帰予測を用いたトラヒック解析によるDoS検知方法の提案,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2003年 9月11日,第103巻, 第311号,pp.55−60
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
説明変数を測定するセンサと目的変数を測定するセンサとにより構成される複数のセンサを用いて、1回毎に同時に測定し、得られた説明変数である測定説明変数と得られた目的変数である測定目的変数とを使用して状態変動を検出する状態変動検出装置であって、
定まった値の目的変数である教師目的変数と、定まった値の説明変数である教師説明変数とにより構成される教師データを用いて作成され、機械学習により説明変数から目的変数を予測する予測モデルと、
前記教師データの前記教師説明変数を前記予測モデルへ入力して教師予測データを得る教師予測データ取得手段と、
前記教師予測データと前記教師データの前記教師目的変数との差分である標準誤差を取得する標準誤差取得手段と、
前記測定目的変数と、前記測定説明変数とにより構成される測定データを用いて、前記測定説明変数を前記予測モデルへ入力して測定予測データを得る測定予測データ取得手段と、
前記測定予測データと前記測定目的変数との差分である誤差を取得する誤差取得手段と、
前記標準誤差と前記誤差との解離度を求め、この解離度に基づき状態変動を検出する状態変動検出手段と
を具備することを特徴とする状態変動検出装置。
【請求項2】
前記教師データを用いて前記予測モデルを作成する予測モデル作成手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の状態変動検出装置。
【請求項3】
前記教師データは、定まった値の目的変数である教師目的変数と、定まった値の説明変数である教師説明変数とにより構成される1セットのデータを複数セット備えたデータであり、
前記測定データは、測定回毎に得られる、測定した目的変数である測定目的変数と、測定した説明変数である測定説明変数とにより構成される1セットのデータを、測定回に応じて複数集合したデータであり、
前記標準誤差取得手段は、前記教師データの複数セットの各セットの標準誤差の平均を求めて標準誤差とし、前記誤差取得手段は、前記測定回毎の誤差の平均を求めて誤差とすることを特徴とする請求項1または2に記載の状態変動検出装置。
【請求項4】
前記状態変動検出手段は、各測定データから求めた誤差量が教師データから求めた基準誤差と比較して何倍であるかの倍率に基づいて状態変動を検出し、或いは、標準誤差の偏差値σSTと測定回毎の誤差の偏差値σt1、σt2、σt3との比に基づいて状態変動を検出することを特徴とする請求項3に記載の状態変動検出装置。
【請求項5】
前記状態変動検出手段は、解離度閾値を有し、求めた解離度が前記解離度閾値を超えた場合に状態変動ありと判定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の状態変動検出装置。
【請求項6】
前記状態変動検出手段は、異常と判定すべき解離度異常閾値を有し、求めた解離度が前記解離度異常閾値を超えた場合に異常発生と判定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の状態変動検出装置。
【請求項7】
説明変数を測定するセンサと目的変数を測定するセンサとにより構成される複数のセンサを用いて、1回毎に同時に測定し、得られた説明変数である測定説明変数と得られた目的変数である測定目的変数とを使用して状態変動を検出する状態変動検出装置のコンピュータを、
定まった値の目的変数である教師目的変数と、定まった値の説明変数である教師説明変数とにより構成される教師データを用いて作成され、機械学習により説明変数から目的変数を予測する予測モデル、
前記教師データの前記教師説明変数を前記予測モデルへ入力して教師予測データを得る教師予測データ取得手段、
前記教師予測データと前記教師データの前記教師目的変数との差分である標準誤差を取得する標準誤差取得手段、
前記測定目的変数と、前記測定説明変数とにより構成される測定データを用いて、前記測定説明変数を前記予測モデルへ入力して測定予測データを得る測定予測データ取得手段、
前記測定予測データと前記測定目的変数との差分である誤差を取得する誤差取得手段と、
前記標準誤差と前記誤差との解離度を求め、この解離度に基づき状態変動を検出する状態変動検出手段
として機能させることを特徴とする状態変動検出用プログラム。
【請求項8】
前記コンピュータを、更に、
前記教師データを用いて前記予測モデルを作成する予測モデル作成手段
として機能させることを特徴とする請求項7に記載の状態変動検出用プログラム。
【請求項9】
前記教師データは、定まった値の目的変数である教師目的変数と、定まった値の説明変数である教師説明変数とにより構成される1セットのデータを複数セット備えたデータであり、
前記測定データは、測定回毎に得られる、測定した目的変数である測定目的変数と、測定した説明変数である測定説明変数とにより構成される1セットのデータを、測定回に応じて複数集合したデータであり、
前記コンピュータを前記標準誤差取得手段として、前記教師データの複数セットの各セットの標準誤差の平均を求めて標準誤差とするように機能させ、前記コンピュータを前記誤差取得手段として、前記測定回毎の誤差の平均を求めて誤差とするように機能させることを特徴とする請求項7または8に記載の状態変動検出用プログラム。
【請求項10】
前記コンピュータを前記状態変動検出手段として、各測定データから求めた誤差量が教師データから求めた基準誤差と比較して何倍であるかの倍率に基づいて状態変動を検出し、或いは、標準誤差の偏差値σSTと測定回毎の誤差の偏差値σt1、σt2、σt3との比に基づいて状態変化を検出するように機能させることを特徴とする請求項9に記載の状態変動検出用プログラム。
【請求項11】
前記コンピュータを前記状態変動検出手段として、解離度閾値を有し、求めた解離度が前記解離度閾値を超えた場合に状態変動ありと判定するように機能させることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の状態変動検出用プログラム。
【請求項12】
前記コンピュータを前記状態変動検出手段として、異常と判定すべき解離度異常閾値を有し、求めた解離度が前記解離度異常閾値を超えた場合に異常発生と判定するように機能させることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の状態変動検出用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、状態変動検出装置及び状態変動検出用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、機械の電流と電圧と振動とを測定して、異常等の状態変動を検出する場合に、一般的には、人による過去の経験等に基づき異常の判定を行う。即ち、状態変動の閾値は人が設定するものであり、異常データを持っていない機械が状態変動を行うことはほぼ不可能であった。
【0003】
特許文献1には、異常事態を検知する対象物や事象の種類・数、それらの対象物や事象を監視する空間(場所、時間帯等)に依存しない汎用性の高い異常検知装置が開示されている。
【0004】
具体的には、対象の事象において異常が発生したことを検知する装置である。この装置では、事象に依存して変化するデータである入力パターンの時系列を取得し、取得された入力パターンの時系列における遷移についての特徴を解析し、解析された前記遷移についての特徴と予め決定されている基準値とを比較し、それらが一定範囲内で近似しているのでなければ、前記事象において異常が発生したと判断する。このようにして、上記比較の結果、異常が発生したと判断された場合に、その旨の出力動作を行う出力手段とを備えるものである。
【0005】
つまり、監視の対象となる人又は物の動き等の事象の変化に応じて変化するデータを入力パターンとする時系列を取得し、その時系列におけるパターンの遷移に着目し、遷移における特徴量を抽出し、正常なケースにおけるものと比較することで異常事態の発生を検知する。ここで、「事象」とは、機器センサ等からの信号、人からの報告(データ入力)等によってコンピュータ処理可能なデータとして表現し得る現象のことであり、また、宅内における「人の行動」にも適用可能である。
【0006】
引用文献2には、高精度な予測を実現する予測モデルを用いて、しかも予測過程が理解できるようなデータ予測方法又はデータ予測システムが開示されている。
【0007】
この特許文献2の発明は、過去の実績に基づいて将来を予測するデータ予測方法において、予測モデルは、予測対象日における少なくとも一つの特徴量について予測値を出力する第1の予測モデルと、この第1の予測モデルから出力される予測値を入力因子に含み、予測対象日の所定時間ごとの予測値を出力する第2の予測モデルと、から構成されるものである。
【0008】
そして、収集された至近実績データおよび過去実績データを用いて予測モデルを構築する予測モデル構築手段、構築された予測モデルに予測用入力データを入力して予測を実行し、予測値を得る予測実行手段、収集された至近実績データと予測値とから予測誤差またはモデル誤差を計算する予測誤差計算手段、予測誤差またはモデル誤差に基づいて前記予測値を補正する補正係数又は補正量を算出し、補正予測値を得る予測値補正手段により実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−256957号公報
【特許文献2】特開2015−127914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら上記のように、従来の予測モデルは予測の精度の向上等を狙ったものであり、状態変動がないときのデータのみから状態変動を的確に捕えることが可能な状態変動検出装置は知られていなかった。
【0011】
本発明は、上記のような状態変動検出装置の現状に鑑みてなされたもので、その目的は、状態変動がないときのデータのみから状態変動ありを、或いは、状態変動が生じているデータのみから状態変動なしを、検出可能とする状態変動検出装置及び状態変動検出用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る状態変動検出装置は、説明変数を測定するセンサと目的変数を測定するセンサとにより構成される複数のセンサを用いて、1回毎に同時に測定し、得られた説明変数である測定説明変数と得られた目的変数である測定目的変数とを使用して状態変動を検出する状態変動検出装置であって、定まった値の目的変数である教師目的変数と、定まった値の説明変数である教師説明変数とにより構成される教師データを用いて作成され、機械学習により説明変数から目的変数を予測する予測モデルと、前記教師データの前記教師説明変数を前記予測モデルへ入力して教師予測データを得る教師予測データ取得手段と、前記教師予測データと前記教師データの前記教師目的変数との差分である標準誤差を取得する標準誤差取得手段と、前記測定目的変数と、前記測定説明変数とにより構成される測定データを用いて、前記測定説明変数を前記予測モデルへ入力して測定予測データを得る測定予測データ取得手段と、前記測定予測データと前記測定目的変数との差分である誤差を取得する誤差取得手段と、前記標準誤差と前記誤差との解離度を求め、この解離度に基づき状態変動を検出する状態変動検出手段とを具備することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る状態変動検出装置では、前記教師データを用いて前記予測モデルを作成する予測モデル作成手段を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る状態変動検出装置では、前記教師データは、定まった値の目的変数である教師目的変数と、定まった値の説明変数である教師説明変数とにより構成される1セットのデータを複数セット備えたデータであり、前記測定データは、測定回毎に得られる、測定した目的変数である測定目的変数と、測定した説明変数である測定説明変数とにより構成される1セットのデータを、測定回に応じて複数集合したデータであり、前記標準誤差取得手段は、前記教師データの複数セットの各セットの標準誤差の平均を求めて標準誤差とし、前記誤差取得手段は、前記測定回毎の誤差の平均を求めて誤差とすることを特徴とする。
本発明に係る状態変動検出装置では、前記状態変動検出手段は、各測定データから求めた誤差量が教師データから求めた基準誤差と比較して何倍であるかの倍率に基づいて状態変動を検出し、或いは、標準誤差の偏差値σSTと測定回毎の誤差の偏差値σt1、σt2、σt3との比に基づいて状態変化を検出することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る状態変動検出装置では、前記状態変動検出手段は、解離度閾値を有し、求めた解離度が前記解離度閾値を超えた場合に状態変動ありと判定することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る状態変動検出装置では、前記状態変動検出手段は、異常と判定すべき解離度異常閾値を有し、求めた解離度が前記解離度異常閾値を超えた場合に異常発生と判定することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る状態変動検出用プログラムは、説明変数を測定するセンサと目的変数を測定するセンサとにより構成される複数のセンサを用いて、1回毎に同時に測定し、得られた説明変数である測定説明変数と得られた目的変数である測定目的変数とを使用して状態変動を検出する状態変動検出装置のコンピュータを、定まった値の目的変数である教師目的変数と、定まった値の説明変数である教師説明変数とにより構成される教師データを用いて作成され、機械学習により説明変数から目的変数を予測する予測モデル、前記教師データの前記教師説明変数を前記予測モデルへ入力して教師予測データを得る教師予測データ取得手段、前記教師予測データと前記教師データの前記教師目的変数との差分である標準誤差を取得する標準誤差取得手段、前記測定目的変数と、前記測定説明変数とにより構成される測定データを用いて、前記測定説明変数を前記予測モデルへ入力して測定予測データを得る測定予測データ取得手段、前記測定予測データと前記測定目的変数との差分である誤差を取得する誤差取得手段と、前記標準誤差と前記誤差との解離度を求め、この解離度に基づき状態変動を検出する状態変動検出手段として機能させることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る状態変動検出用プログラムでは、前記教師データは、定まった値の目的変数である教師目的変数と、定まった値の説明変数である教師説明変数とにより構成される1セットのデータを複数セット備えたデータであり、前記測定データは、測定回毎に得られる、測定した目的変数である測定目的変数と、測定した説明変数である測定説明変数とにより構成される1セットのデータを、測定回に応じて複数集合したデータであり、前記コンピュータを前記標準誤差取得手段として、前記教師データの複数セットの各セットの標準誤差の平均を求めて標準誤差とするように機能させ、前記コンピュータを前記誤差取得手段として、前記測定回毎の誤差の平均を求めて誤差とするように機能させることを特徴とする。
本発明に係る状態変動検出用プログラムでは、前記コンピュータを前記状態変動検出手段として、各測定データから求めた誤差量が教師データから求めた基準誤差と比較して何倍であるかの倍率に基づいて状態変動を検出し、或いは、標準誤差の偏差値σSTと測定回毎の誤差の偏差値σt1、σt2、σt3との比に基づいて状態変化を検出するように機能させることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る状態変動検出用プログラムでは、前記コンピュータを前記状態変動検出手段として、前記標準誤差と前記誤差との比、前記誤差の前記標準誤差に対する倍率、前記比または倍率を標準化して得た値である解離度に基づき状態変動を検出するように機能させることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る状態変動検出用プログラムでは、前記コンピュータを前記状態変動検出手段として、解離度閾値を有し、求めた解離度が前記解離度閾値を超えた場合に状態変動ありと判定するように機能させることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る状態変動検出用プログラムでは、前記コンピュータを前記状態変動検出手段として、異常と判定すべき解離度異常閾値を有し、求めた解離度が前記解離度異常閾値を超えた場合に異常発生と判定するように機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、状態変動がないときのデータのみから状態変動ありを、或いは、状態変動が生じているデータのみから状態変動なしを、検出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る状態変動検出装置を実現するコンピュータシステムの構成を示すブロック図。
図2】本発明に係る状態変動検出装置を実現するコンピュータシステムに備えられる状態変動検出用プログラムで実現される手段を示す図。
図3】本発明に係る状態変動検出装置の動作を説明するためのフローチャート。
図4】本発明に係る状態変動検出装置に用いられる教師データと、それを予測モデルへ適用して得られる予測データと、標準誤差の値を示す図。
図5】本発明に係る状態変動検出装置において教師データを用いて予測モデルを作成するまでの手順を示す図。
図6】本発明に係る状態変動検出装置において教師データを予測モデルへ投入して、標準誤差を得るまでの手順を示す図。
図7】本発明に係る状態変動検出装置に用いられる3つの時刻の測定データと、それらを予測モデルへ適用して得られる予測データと誤差の値を示す図。
図8】本発明に係る状態変動検出装置において3つの時刻の測定データを予測モデルへ投入して、誤差を得るまでの手順を示す図。
図9】本発明に係る状態変動検出装置において、3つの時刻の測定データから得られた標準誤差に対する誤差の倍率を概念的に示した図。
図10】本発明に係る状態変動検出装置において、標準誤差の分布と誤差の分布とを用いて解離度であるピークの差を得ることをグラフにより示した図。
図11】本発明に係る状態変動検出装置において、測定回毎の誤差を標準化して得た値である解離度と偏差値に基づき状態変動を検出することを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下添付図面を参照して、本発明に係る状態変動検出装置及び状態変動検出用プログラムの実施形態を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。本発明の実施形態に係る状態変動検出装置は、例えば図1に示されるようなパーソナルコンピュータやワークステーション、その他のコンピュータシステムにより構成することができる。このコンピュータシステムは、CPU10が主メモリ11に記憶されている或いは主メモリ11に読み込んだプログラムやデータに基づき各部を制御し、必要な処理を実行することにより状態変動検出装置として動作を行うものである。
【0027】
CPU10には、バス12を介して外部記憶インタフェース13、入力インタフェース14、表示インタフェース15、データ入力インタフェース16が接続されている。外部記憶インタフェース13には、状態変動検出用プログラム等のプログラムと必要なデータ等が記憶されている外部記憶装置23が接続されている。入力インタフェース14には、コマンドやデータを入力するための入力装置としてのキーボードなどの入力装置24とポインティングデバイスとしてのマウス22が接続されている。
【0028】
表示インタフェース15には、LEDやLCDなどの表示画面を有する表示装置25が接続されている。データ入力インタフェース16には、測定データを得るためのセンサ26−1、26−2、・・・、26−mが接続されている。このコンピュータシステムには、他の構成が備えられていても良く、また、図1の構成は一例に過ぎない。
【0029】
上記において、CPU10には、外部記憶装置23内の状態変動検出用プログラムによって図2に記載の各手段等が実現される。即ち、予測モデル作成手段31、予測モデル30、教師予測データ取得手段32、標準誤差取得手段33、測定予測データ取得手段34、誤差取得手段35、状態変動検出手段36が実現される。また、外部記憶装置23内には、教師データが記憶されている。予測モデル作成手段31は、教師データを用いて予測モデル30を作成するものである。予測モデル30は、機械学習により説明変数から目的変数を予測するものである。ここに、機械学習のアルゴリズムとしては、パターンマイ二ングのランダムフォレストを挙げることができるが、これ以外に、回帰分析や回帰木などのアリゴリズムを採用しても良い。
【0030】
また、説明変数、目的変数予測モデルについては、yを目的変数、xiを説明変数、fを予測モデルとするとき、y=f(x1,x2,・・・,xi,・・・,xn)により表わすことができる。教師予測データ取得手段32は、定まった値の目的変数である教師目的変数と、定まった値の説明変数である教師説明変数とにより構成される教師データを用いて、上記教師説明変数を上記予測モデル30へ入力して教師予測データを得るものである。標準誤差取得手段33は、上記教師予測データと上記教師目的変数との差分である標準誤差を取得するものである。
【0031】
測定予測データ取得手段34は、測定した目的変数である測定目的変数と、測定した説明変数である測定説明変数とにより構成される測定データを用いて、上記測定説明変数を上記予測モデル30へ入力して測定予測データを得るものである。測定データは、センサ26−1、26−2、・・・、26−mにより得られたデータとすることができる。誤差取得手段35は、上記測定予測データと上記測定目的変数との差分である誤差を取得するものである。
【0032】
状態変動検出手段36は、上記標準誤差と上記誤差との解離度を求め、この解離度に基づき状態変動を検出するものである。
【0033】
以上のような手段等によって構成される状態変動検出装置は、図3に示すフローチャートによって処理動作を実行するので、このフローチャートを参照して動作説明を行う。最初に教師データを用いて予測モデル30を作成する(STEP1)。例えば、教師データは、図4により示すように、センサAにより得られるべき目的変数のデータと、センサBにより得られる1つ目の説明変数のデータと、センサCにより得られる2つ目の説明変数のデータとにより構成される。データの取得回数(図4の縦方向のデータの数)は任意である。図5のように、図4の如くの教師データTを用いて予測モデル作成手段31が予測モデル30を作成する。
【0034】
次に、図3のフローチャートと図6の動作シーケンス図に示すように、教師データTを用いて予測モデル30に説明変数(図4のセンサBのデータとセンサCのデータ)を入力し、予測データ(教師予測データTF(図6では、教師データ予測結果))を得て、この予測データ(教師予測データTF)と教師データTの目的変数との差である誤差(標準誤差)を求める(STEP2)。ここで、説明変数は、図4の教師データ中のセンサBとセンサCのデータである。図6に示すように、教師データTの目的変数をTTとし、この目的変数TTが例えば真円により表わされるとすれば、この目的変数TTに対し、教師予測データTFは歪(いびつ)であるから、真円から飛び出たり引っ込んだりした部分が誤差となる。実際には、図4の「教師データの予測値標準・誤差」の欄に示すように、予測データ(教師予測データ)と誤差(標準誤差STER)は、数値として得られる。これらは、データの取得回数と同じだけ計算して得られるから、取得回数と同じ数量が得られるので、これらの平均を計算して求め、これを平均標準誤差(AVSTER)として保持する。
【0035】
次に、図3のフローチャートに示すように、センサB、Cによる測定データMを用いて予測モデル30に説明変数M1、M2を入力し、予測データ(測定予測データ)を得て、この予測データ(測定予測データ)と測定データMの実測された目的変数との差である誤差を求める(STEP3)。
【0036】
ここでは、時刻を異ならせて、測定t1、t2、t3を行って、測定t1の説明変数t1M1、t1M2を得て、測定t2の説明変数t2M1、t2M2を得て、測定t3の説明変数t3M1、t3M2を得る(図7)。図8に示すように、これらを同じ予測モデル30に入力して予測データ(測定予測データ)t1F、t2F、t3Fを得る(図7では、右欄)。図8においては、予測モデル30を3つ設けているように描いているが、予測モデル30を1つ用いて順次予測を行っても良い。勿論、予測モデル30を3つ設けても良い。図7図8に示すように予測データ(測定予測データ)t1F、t2F、t3Fと測定データMの実測された目的変数t1MT、t2MT、t3MTとの差分を誤差(個別誤差)t1ER、t2ER、t3ERとして求める。誤差t1ER、t2ER、t3ERは、データの測定回数と同じだけ計算して得られるから、取得回数と同じ数量が得られるので、これらの平均値を求めて、これを測定t1、t2、t3毎に平均誤差(t1AVER、t2AVER、t3AVER)として保持する。
【0037】
次に、図3のSTEP4に示すように、各測定データから求めた誤差量が、教師データから求めた基準誤差と比較して何倍であるかを計算する。この倍率が大きいほど状態変動が生じていると結論する。図9には、比較主体として「測定t1の誤差(平均)(t1AVER)」、「測定t2の誤差(平均)(t2AVER)」、「測定t3の誤差(平均)(t3AVER)」に示すような円の面積に相当する値があり、比較対象として「標準誤差(平均)(AVSTER)」に示すような円の面積に相当する値があるとする。倍率が、1.2、2.3、3.8であるとすると、(測定t1の誤差)<(測定t2の誤差)<(測定t3の誤差)が成り立つから、測定3が最も状態変動が起こっていると結論でき、その次に測定2において状態変動が起こっていると結論でき、測定1は最も状態変動が起こっている確率が低いと結論できる。
【0038】
或いは、標準誤差や誤差について平均を求めるのではなく、標準誤差の値の分布グラフを作成し、誤差の値の分布グラフを作成し、これらの分布グラフを用いて状態変動を検出する。標準誤差の値の分布グラフが図10(a)のようであり、測定t1の誤差の値の分布グラフが図10(b)のようであり、測定t2の誤差の値の分布グラフが図10(c)のようであり、測定t3の誤差の値の分布グラフが図10(d)のようであるとする。
【0039】
上記の場合においては、解離度として分布グラフのピークの差を採用する。標準誤差の値の分布グラフのピークと測定t1の誤差の値の分布グラフのピークの差は、図10(b)に示すd1のようである。標準誤差の値の分布グラフのピークと測定t2の誤差の値の分布グラフのピークの差は、図10(c)に示すd2のようである。標準誤差の値の分布グラフのピークと測定t3の誤差の値の分布グラフのピークの差は、図10(d)に示すd3のようである。ピークの差は、t1<t2<t3であるから、状態変動の判定については、図9を用いて説明した通りとなる。
【0040】
また、図3のSTEP4に示すように、上記で求めた倍率に対し、または、上記測定回数毎の誤差を標準化した値σに対して異常判定の閾値を設定し、異常を検知するようにしても良い。例えば、図9の例において、閾値が「3.5」であれば、測定3において異常であると判定することができる。
【0041】
上記偏差値σを用いる場合の例を図11に示す。前述の誤差の分布が図11のグラフに示すようであるとする。この誤差の平均値を求める(S11)。この平均値を用いて、偏差値σを求める(S12)。次に、上記で求めた偏差値σを用いて状態変化を検出する(S13)。例えば、標準誤差も測定回毎に得られるから、これらの分布から標準誤差の偏差値σSTが得られる。一方、測定t1、t2、t3についても、偏差値σt1、σt2、σt3が得られる。偏差値σt1、σt2、σt3のうち、標準誤差の偏差値σSTとの差または比或いは倍率が大きいほど状態変化である確率が高いものとする。偏差値σt1、σt2、σt3に対する閾値σSHを設定し、これを越えた場合に状態変化(異常)ありとすることができる。
【0042】
なお、上記においては、2つの説明変数から1つの目的変数を得るものとしたが、1つ以上の説明変数から1つの目的変数を得る予測モデルについて適用可能である。また、状態変動は異常への変動に限定されず、過剰状態、不足状態、低い状態、高い状態など、各種の状態変動検出に適用可能である。
【0043】
上記の実施形態では、センサA、B、Cによりデータの測定を行う場合において、目的変数をセンサAにより得られるデータとし、説明変数をセンサB、Cにより得られるデータとする、センサA予測モデルを1つの予測モデルのみを構成するようにした。しかしながら、このように、3系統以上のデータの測定を行うシステムでは、複数の予測システムを構築することができる。
【0044】
例えば、センサA、B、Cによりデータの測定を行う場合においては、目的変数をセンサAにより測定されるデータとし、説明変数をセンサB、Cにより測定されるデータとする場合を、センサA予測モデルと称し、目的変数をセンサBにより測定されるデータとし、説明変数をセンサA、Cにより測定されるデータとする場合を、センサB予測モデルと称し、目的変数をセンサCにより測定されるデータとし、説明変数をセンサA、Bにより測定されるデータとする場合を、センサC予測モデルと称するとき、センサA予測モデル、センサB予測モデル、センサC予測モデルのように、3つの予測モデルを作成することができる。
【0045】
仮にセンサA、B、Cのデータを測定した時系列の測定値が、t1、t2、t3であるとする。t1、t2、t3はいずれもセンサA、B、Cの3種のデータにより構成される。センサA予測モデルにおいては、センサB、Cの測定値t1、t2、t3を入力し、センサA予測モデルの3種の平均誤差、A_t1AVER、A_t2AVER、A_t3AVERを得ることができる。センサB予測モデルにおいては、センサA、Cの測定値t1、t2、t3を入力し、センサB予測モデルの3種の平均誤差、B_t1AVER、B_t2AVER、B_t3AVERを得ることができる。センサC予測モデルにおいては、センサA、Bの測定値t1、t2、t3を入力し、センサC予測モデルの3種の平均誤差、C_t1AVER、C_t2AVER、C_t3AVERを得ることができる。
【0046】
教師データから求めた各モデルの基準誤差を、A_AVSTER、B_AVSTER、C_AVSTERとした場合には、基準誤差A_AVSTERを基準とした対A_t1AVER、A_t2AVER、A_t3AVERのそれぞれ倍率や誤差の分布(偏差)を求めることができ、基準誤差B_AVSTERを基準とした対B_t1AVER、B_t2AVER、B_t3AVERのそれぞれ倍率や誤差の分布(偏差)を求めることができ、基準誤差C_AVSTERを基準とした対C_t1AVER、C_t2AVER、C_t3AVERのそれぞれ倍率や誤差の分布(偏差)も求めることができる。
【0047】
上記で、偏差を求めた場合には、例えば、センサA予測モデルにおける測定値t1の偏差値σA_t1、センサB予測モデルにおける測定値t1の偏差値σB_t1、センサC予測モデルにおける測定値t1の偏差値σC_t1の平均等を求めることによって、測定値t1の新たな特徴量を生成することができ、これに対して閾値を設ける事で異常を検知することも可能である。上記は、測定値t1の例であるが、測定値t2、t3についても同様に扱うことが可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 CPU
11 主メモリ
12 バス
13 外部記憶インタフェース
14 入力インタフェース
15 表示インタフェース
16 データ入力インタフェース
22 マウス
23 外部記憶装置
24 入力装置
25 表示装置
26 センサ
30 予測モデル
31 予測モデル作成手段
32 教師予測データ取得手段
33 標準誤差取得手段
34 測定予測データ取得手段
35 誤差取得手段
36 状態変動検出手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11