特許第6765770号(P6765770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765770
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20200928BHJP
   B60K 11/08 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   B60K11/04 K
   B60K11/04 H
   B60K11/08
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-48894(P2018-48894)
(22)【出願日】2018年3月16日
(65)【公開番号】特開2019-156319(P2019-156319A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年3月28日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】小林 利行
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−050862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
B60K 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサフレームを有する車両用のコンデンサと、
車両前面視でラジエータコアの周縁部が前記コンデンサフレームによって隠れるように前記コンデンサの後方に配される車両用のラジエータと、
前記コンデンサと前記ラジエータとの間の空間の少なくとも一部を車両上面視又は車両側面視で遮蔽する遮蔽部材と、
前記空間に配されて、前記コンデンサを通過した空気を、前記ラジエータコアの周縁部における、車両前面視で前記コンデンサフレームによって隠れる部分に誘導する誘導部材を備え、
前記誘導部材は、一方端は前記コンデンサフレームによって外縁が囲まれているコンデンサコアの上端よりもやや下側の位置に合わせられ、他方端は前記ラジエータコアの前記コンデンサフレームによって隠れる部分の下端よりやや下側の位置に合わせられ、
前記誘導部材の主面が前記コンデンサの主面に垂直な方向に対してなす角度が10°以下である、車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両構造に関し、特に、コンデンサで温度上昇した空気をラジエータに供給する、車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンルームの車両前方には、コンデンサおよびラジエータが、走行風の流れ方向に対して、この順で配される。車両の前方に配設され、当該エンジンルームと連通する開口部より流入した走行風は、こうして配されたコンデンサおよびラジエータの各々のコアを通過し、熱交換が施される。ただし、熱交換によって生成された熱風がエンジンルーム前方に巻き返され、コンデンサおよびラジエータの各々のコアを再度通過(再循環)すると、コンデンサおよびラジエータの冷却熱量が低下する。そこで、特許文献1では、コンデンサおよびラジエータの間の空間をエアガイド部材によって覆うようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−180310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラジエータコアのサイズがコンデンサコアのサイズよりも大きければ、走行風の一部は、コンデンサコアを通過することなくラジエータコアに供給される。然るに、特許文献1のようにエアガイド部材を配すると、当該一部の走行風がラジエータコアに供給されず、これによってラジエータの冷却熱量が低下するという問題が生じる。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、ラジエータの冷却熱量が低下する懸念を軽減することができる、車両構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両構造は、コンデンサフレームを有する車両用のコンデンサと、車両前面視でラジエータコアの周縁部がコンデンサフレームによって隠れるようにコンデンサの後方に配される車両用のラジエータと、コンデンサとラジエータとの間の空間の少なくとも一部を車両上面視又は車両側面視で遮蔽する遮蔽部材と、空間に配されて、コンデンサを通過した空気を、ラジエータコアの周縁部における、車両前面視でコンデンサフレームによって隠れる部分に誘導する誘導部材を備え、誘導部材は、一方端はコンデンサフレームによって外縁が囲まれているコンデンサコアの上端よりもやや下側の位置に合わせられ、他方端はラジエータコアのコンデンサフレームによって隠れる部分の下端よりやや下側の位置に合わせられ、誘導部材の主面がコンデンサの主面に垂直な方向に対してなす角度が10°以下である。
【発明の効果】
【0007】
コンデンサとラジエータとの間の空間の少なくとも一部を車両上面視又は車両側面視で遮蔽する遮蔽部材を設けることで、コンデンサおよびラジエータを通過した空気の再循環が抑制される。また、ラジエータコアの周縁部は車両前面視でコンデンサフレームによって隠れるところ、コンデンサを通過した空気を当該周縁部に誘導する誘導部材をコンデンサとラジエータとの間の空間に配することで、ラジエータの冷却熱量が低下する懸念が軽減される。
【0008】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この実施例の車両構造を前面視した状態を示す図解図である。
図2】(A)は図1に示す車両構造の側部断面の一部を示す図解図であり、(B)は図2(A)に示す側部断面の一部を拡大して示す拡大図である。
図3】他の実施例の車両構造を前面視した状態を示す図解図である。
図4】(A)は図3に示す車両構造の側部断面の一部を示す図解図であり、(B)は図3に示す車両構造の一部を上面視した状態を示す図解図である。
図5】その他の実施例の車両構造を前面視した状態を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1図2(A)および図2(B)を参照して、この実施例の車両構造10は、車両用のコンデンサ12と、当該コンデンサ12の車両後方に配されたラジエータ14とを備える。
【0011】
コンデンサ12は、主面が車両の左右方向を長辺とする長方形をなす板状のコンデンサコア12cと、コンデンサコア12cの外縁を囲んでコンデンサコア12cを支持する金属製のコンデンサフレーム12fとによって構成される。コンデンサコア12cの主面は長方形をなすため、当該主面に直交する方向から眺めると、コンデンサフレーム12fの外縁および内縁もまた長方形をなす。
【0012】
ラジエータ14は、主面が長方形をなす板状のラジエータコア14cと、ラジエータコア14cの外縁を囲んでラジエータコア14cを支持する金属製のラジエータフレーム14fとによって構成される。ラジエータコア14cの主面は長方形をなすため、当該主面に直交する方向から眺めると、ラジエータフレーム14fの外縁および内縁もまた長方形をなす。ラジエータコア14cの後方には、ラジエータファン14wとファンシュラウド14sとが配される。
【0013】
車両が走行することで発生した風、またはラジエータファン14wの回転によって発生した風は、まずコンデンサコア12cによって熱交換を施され、次にラジエータ14cによって熱交換を施される。これによって、コンデンサコア12cを流れる冷媒またはラジエータコア14cを流れる冷却水が冷却される。
【0014】
ただし、ラジエータコア14cの主面がなす長方形の短辺の長さは、コンデンサフレーム12fの外縁がなす長方形の短辺の長さを上回る。また、コンデンサ12およびラジエータ14は、コンデンサコア12cおよび14cの各々の主面が車両の前後方向に面し、かつ当該主面がなす長方形の長辺が車両の左右方向に延在する姿勢で配され、コンデンサコア12cの主面中央がラジエータコア14cの主面中央と重なるように位置決めされる。この結果、車両構造10を前面視したとき、ラジエータコア14cの上端部Ps(図2(A)参照)は、コンデンサフレーム12fによって隠れる。
【0015】
遮蔽部材(プレート)16は、樹脂又は金属を材料とし、コンデンサフレーム12fの外縁がなす長方形の長辺に相当する長さと、コンデンサコア12cの背面からラジエータコア14cの前面までの距離と略同じ距離に相当する幅とを有して、帯状に形成される。遮蔽部材16は、その帯が車両の左右方向に沿って延在するように、コンデンサ12とラジエータ14との間の空間SP1の上側に配される。
【0016】
このとき、帯の長さ方向における両端は、コンデンサフレーム12fの外縁がなす長方形の長辺の両端に合わせられる。また、帯の幅方向における一方端はコンデンサフレーム12fの上端に合わせられ、帯の幅方向における他方端はラジエータコア14cの上端に合わせられる。この結果、遮蔽部材16は、空間SP1の少なくとも一部を上面視で遮蔽する。
【0017】
誘導部材(ルーバ)18も、樹脂又は金属を材料とし、コンデンサフレーム12fの外縁がなす長方形の長辺に相当する長さと、コンデンサコア12cの背面からラジエータコア14cの前面までの距離と略同じ距離に相当する幅とを有して、帯状に形成される。誘導部材18は、その帯が車両の左右方向に沿って延在するように、空間SP1のうち遮蔽部材16よりもやや下側の位置に配される。
【0018】
このとき、帯の長さ方向における両端は、コンデンサフレーム12fの外縁がなす長方形の長辺の両端に合わせられる。また、帯の幅方向における一方端はコンデンサコア12cの上端よりもやや下側の位置に合わせられ、帯の幅方向における他方端は上述した上端部Psの下端よりもやや下側の位置に合わせられる。
【0019】
図2(B)を参照して、遮蔽部材16の主面がコンデンサコア12cの主面に垂直な方向に対してなす角度をθ1とし、誘導部材18の主面がコンデンサコア12cの主面に垂直な方向に対してなす角度をθ2とすると、角度θ1およびθ2のいずれも0°を上回る。好ましくは、角度θ2の最大角度は10°である。
【0020】
この結果、コンデンサコア12cを通過した風の一部は、誘導部材18によってラジエータコア14cの上端部Psに誘導される。また、角度θ2を10°以下に抑えることで、誘導部材18の下側に渦が発生する懸念が軽減される。なお、渦が発生する懸念は、ラジエータ14に近づくにつれてせり上がるように誘導部材18を湾曲させることによっても軽減される。
【0021】
この実施例によれば、コンデンサ12とラジエータ14との間の空間SP1の少なくとも一部を上面視で遮蔽する遮蔽部材16を設けることで、コンデンサ12およびラジエータ14を通過した空気の再循環が抑制される。また、ラジエータコア14cの上端部Psは前面視でコンデンサフレーム12fによって隠れるところ、コンデンサ12を通過した空気を当該上端部Psに誘導する誘導部材18をコンデンサ12とラジエータ14との間の空間SP1に配することで、ラジエータ14の冷却熱量の低下する懸念が軽減される。
【0022】
図3図4(A)および図4(B)を参照して、他の実施例の車両構造10は、遮蔽部材16および誘導部材18の代わりに、遮蔽部材20が設けられる点を除き、上述の実施例の車両構造10と同じであるため、同様の構成に関する重複した説明は省略する。
【0023】
遮蔽部材20は、樹脂又は金属を材料とし、コンデンサフレーム12fの外縁がなす長方形の長辺に相当する長さと、コンデンサコア12cの背面からラジエータコア14cの前面までの距離の略2倍の距離に相当する幅とを有して、帯状に形成される。遮蔽部材20は、その帯が車両の左右方向に沿って延在するように、コンデンサ12とラジエータ14との間の空間SP1の上側に配される。
【0024】
このとき、帯の上面は、ラジエータフレーム14fの上面に対して略面一とされる。また、帯の長さ方向における両端は、ラジエータフレーム14fの外縁がなす長方形の長辺の両端に合わせられる。さらに、帯の幅方向における一方端はコンデンサフレーム12fの前端よりも前側の位置に合わせられ、帯の幅方向における他方端はラジエータフレーム14fの前端に近接する位置に合わせられる。したがって、遮蔽部材20も、空間SP1の少なくとも一部を上面視で遮蔽する。
【0025】
遮蔽部材20がなす帯の幅方向における他方端には、当該他方端から一方端に向けて延びる切り込みが、当該帯の長さ方向に略均等な間隔で入れられる。この結果、当該他方端には、遮蔽部材20によって支持された複数の短冊20s,20s,…が形成される。形成された複数の短冊20s,20s,…は1枚おきに下に折り曲げられ、折り曲げられた短冊20s,20s,…が誘導部材をなす。したがって、遮蔽部材20とコンデンサ12との間隙を通過した風の一部は、短冊20s,20s,…によってラジエータコア14cの上端部Psに誘導される。
【0026】
この実施例によれば、コンデンサ12とラジエータ14との間の空間SP1の少なくとも一部を上面視で遮蔽する遮蔽部材20を設けることで、コンデンサ12およびラジエータ14を通過した空気の再循環が抑制される。また、ラジエータコア14cの上端部Psは前面視でコンデンサフレーム12fによって隠れるところ、遮蔽部材20とコンデンサ12との間隙を通過した空気を当該上端部Psに誘導する短冊20s,20s,…をコンデンサ12とラジエータ14との間の空間SP1に配することで、ラジエータ14の冷却熱量が低下する懸念が軽減される。
【0027】
なお、この実施例では、図4(B)に示す形状の遮蔽部材20を空間SP1の上方に配するようにしている。しかし、これに代えて、図5に示す形状の遮蔽部材20´を空間SP1の上方に配するようにしてもよい。図5によれば、遮蔽部材20´がなす帯の幅方向における他方端(ラジエータコア14cに近接する端部)は、車両前面視で波を描く。このような形状の遮蔽部材20´を設けることによっても、遮蔽部材20とコンデンサ12との間隙を通過した風の一部がラジエータコア14cの上端部Psに誘導される。この結果、ラジエータ14の冷却熱量が低下する懸念が軽減される。
【0028】
また、上述の実施例では、空間SP1の少なくとも一部を車両上面視で遮蔽するように遮蔽部材16または20を設けるようにしている。しかし、空間SP1の少なくとも一部を車両側面視で遮蔽する別の遮蔽部材を追加的に又は代替的に設けるようにしてもよい。
【0029】
なお、上述した誘導部材は、ラジエータ14のようなプレートフィン型熱交換器を前面視したときに、当該熱交換部の少なくとも一部が何らかの部材(例えば、コンデンサのモジュレータタンク,外気温センサなど)によって隠れ、当該熱交換部に対する冷却空気の流れが当該部材によって妨げられるような場合に、当該熱交換器の冷却熱量の低下を抑えるという技術的意義を奏する。
【符号の説明】
【0030】
10 …車両構造
12 …コンデンサ
12f …コンデンサフレーム
14 …ラジエータ
14c …ラジエータコア
16,20,20´ …遮蔽部材
18 …誘導部材
20s …短冊(誘導部材)
図1
図2
図3
図4
図5