特許第6765780号(P6765780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6765780-脱臭装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765780
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】脱臭装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/34 20060101AFI20200928BHJP
   B01D 53/48 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   B01D53/34ZAB
   B01D53/48
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-126393(P2014-126393)
(22)【出願日】2014年6月19日
(65)【公開番号】特開2016-2538(P2016-2538A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年5月9日
【審判番号】不服2019-4162(P2019-4162/J1)
【審判請求日】2019年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】514156529
【氏名又は名称】株式会社ニチボー環境エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】春田 一吉
【合議体】
【審判長】 宮澤 尚之
【審判官】 馳平 憲一
【審判官】 後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−334124(JP,A)
【文献】 特開昭59−98717(JP,A)
【文献】 特開平1−315316(JP,A)
【文献】 特開平4−371213(JP,A)
【文献】 特開平7−284659(JP,A)
【文献】 特開平10−258114(JP,A)
【文献】 特開平5−123386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも含硫臭気物質を含む被処理ガスを脱臭する装置であって、
前記被処理ガスを導入する導管と、
前記導管を通して導入された被処理ガスを拡散させる拡散層と、
前記拡散層を経た被処理ガスが導入される脱臭層と、
前記脱臭層を加湿するために、前記拡散層の一部を浸す加湿用水であり、排水管により系外に排出される加湿用水を貯留する加湿用水貯留部と、
前記加湿用水貯留部に希釈用水を供給する希釈用水経路と、を備え、
前記脱臭層は、前記含硫臭気物質を分解する微生物と、粒状ゼオライトと、活性炭と、
前記微生物が資化し得る有機物とを含む脱臭浄化媒体を有し、
前記拡散層は、前記被処理ガスが流通可能な隙間を確保して充てんされた複数の石材で
構成され、前記脱臭層を下面側から支持する支持層として機能し、
前記導管は、前記拡散層内に配設された主導管と、前記主導管の長さ方向に間隔をおい
て接続された複数の枝導管とを有し、
前記枝導管は、前記拡散層内に配設され、前記主導管から導入された前記被処理ガスを
前記拡散層内に放出可能である、脱臭装置。
【請求項2】
前記枝導管は、網状体からなる管体である、請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項3】
前記粒状ゼオライトは、クリノプチロライト、モルデナイトのうち少なくとも一方を主
成分とする、請求項1または2に記載の脱臭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場などで発生する硫化水素等の臭気物質を含むガスを脱臭する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場等の施設では、硫化水素等の臭気物質を含むガスが発生するため、脱臭装置が使用されている(例えば、特許文献1を参照)。
図2は、脱臭装置の一例を示すもので、脱臭装置1は、槽5内に、被処理ガスを導入する導管2と、導管2からの被処理ガスを拡散させる拡散層3と、臭気物質を分解する微生物を含む脱臭層4とを備えている。脱臭層4における脱臭処理効率を高めるには、脱臭層4がある程度水を含んでいることが好ましいため、槽5の下部には、脱臭層4の保湿を目的として、加湿用水が貯留されている。導管2から導入された被処理ガスは、拡散層3で拡散しつつ上昇し、脱臭層4を通過する際に臭気物質が除去される。臭気物質、例えば硫化水素は、硫黄酸化細菌などの作用により酸化されて硫酸イオンが生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3028134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記脱臭装置1では、降雨などにより供給された水が脱臭層4内を流下すると、この流下水に硫酸イオンが溶解して加湿用水に混入するため、加湿用水のpHが低下することがある。加湿用水を排水として放流するには中和が必要となるため、中和剤注入のため設備コストや薬剤コストがかさむという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、設備コストおよび運転コストを低く抑えることができる脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の脱臭装置は、臭気物質を含むガスを脱臭する装置であって、臭気物質を分解する微生物を含む脱臭浄化媒体を含む脱臭層と、この脱臭層を加湿する加湿用水を貯留する加湿用水貯留部と、この加湿用水貯留部に希釈用水を供給する希釈用水経路とを備えていることを特徴とする。
前記希釈用水経路は、下水処理場の二次処理水を希釈用水として供給できるように構成することができる。
本発明の脱臭装置は、前記希釈用水経路には、脱臭層に散布する水を供給する散布水供給経路が接続され、希釈用水の一部を、脱臭層の表面に散布できる構成とすることができる。
本発明の脱臭方法は、臭気物質を分解する微生物を含む脱臭浄化媒体を含む脱臭層と、この脱臭層を加湿する加湿用水を貯留する加湿用水貯留部と、前記加湿用水に希釈用水を供給する希釈用水経路とを備えた脱臭装置を用い、前記希釈用水経路を通して、希釈用水を加湿用水貯留部に供給し、加湿用水のpHを中性領域にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の脱臭装置は、加湿用水貯留部に希釈用水を供給する希釈用水経路を備えているので、加湿用水のpHが低くなった場合には、希釈用水により加湿用水を希釈し、そのpHを中性領域にすることができる。このため、加湿用水を、中和せずにそのまま系外に排出することができる。このため、中和剤および中和剤注入設備が不要となり、コストの点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の脱臭装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2図1に示す脱臭装置の全体を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の脱臭装置の一実施形態を図1および図2を利用して説明する。
ここに示す脱臭装置1は、被処理ガスを導入する導管2と、導管2からの被処理ガスを拡散させる拡散層3と、臭気物質を分解する微生物を含む脱臭浄化媒体Mからなる脱臭層4とを、槽5内に備えている。脱臭層4における脱臭処理効率を高めるには、脱臭層4がある程度水を含んでいることが好ましいため、槽5の下部には、脱臭層4を加湿することを目的として、加湿用水6が貯留されている。加湿用水6が貯留される槽5下部を、加湿用水貯留部7という。
【0009】
図1に示すように、槽5には、加湿用水貯留部7に希釈用水を供給する希釈用水経路8が接続されている。希釈用水経路8は、例えば下水処理場で得られる二次処理水などを、希釈用水として供給できるようになっている。導管2は、被処理ガスを導く主導管2aと、主導管2aに、長手方向に間隔をおいて接続された複数の枝導管2bとを有する。枝導管2bは、例えば網状体からなる管体とされ、主導管2aからのガスを、拡散層3の全体に放出することができるようになっている。
【0010】
図1に示すように、拡散層3は、多数の栗石10aからなる下層10と、栗石10aより小さな多数の砕石11aからなる上層11とから構成されている。下層10の厚さは、例えば50〜60cmとすることができる。上層11の厚さは、例えば5cm程度とすることができる。 下層10は、多数の栗石10aからなるため、これらの隙間を通して被処理ガスが水平方向に拡散し、全体に行きわたるようになっている。同様に、上層11も、砕石11aの隙間を通してガスが拡散するようになっている。拡散層3は、脱臭層4を支持する支持層としても機能する。
【0011】
脱臭層4に用いられる脱臭浄化媒体Mとしては、土壌(黒ボク土など)、砕石、人工媒体などを用いることができる。特に、人工媒体を用いるのが好ましく、この人工媒体としては、無機物からなる無機担体と、脱臭層4内の臭気物質分解微生物が資化し得る有機物とを含むものを用いるのが好適である。上記無機担体としては、鉱物(ゼオライトなど)、活性炭、セラミック媒体などが使用可能である。無機担体は、粒径が小さすぎると、脱臭層4の通気抵抗が大きくなり被処理ガスが短絡路を形成しやすくなるため、平均粒径が2mm以上であるものを用いるのが好ましい。上記有機物としては、臭気物質分解微生物が資化し得るものが用いられる。
【0012】
人工媒体としては、特に、粒状ゼオライトと活性炭とを含む無機担体と、有機物とを含むものを用いるのが好ましい。粒状ゼオライトは、臭気物質を吸着除去する機能を持ち、かつpH緩衝材としても機能するものが好適である。例えば、クリノプチロライト、モルデナイトのうち少なくとも一方を主成分とするものが好ましい。なお、主成分とは当該成分を重量基準で50%を越えて含むことをいう。粒状ゼオライトの粒径は、小さすぎれば、脱臭層4の通気抵抗が大きくなって被処理ガスが短絡路を形成しやすくなり、大きすぎれば、比表面積が小さくなって臭気物質の吸着量が低下する。このため、平均粒径が2〜5mmであるものが好適である。
【0013】
粒状ゼオライトの添加量は、少なすぎれば臭気物質の吸着作用が低下し、多すぎればコストの点で不利である。このため、粒状ゼオライトの添加量は、脱臭浄化媒体M全体に対して、20〜50vol%(好ましくは20〜40vol%、さらに好ましくは25〜40vol%)が好適である。
【0014】
活性炭は、水を保持する機能、臭気物質を吸着除去する機能、および微生物を担持する機能を持つものが好適である。活性炭の粒径は、小さすぎれば、脱臭層4の通気抵抗が大きくなって被処理ガスが短絡路を形成しやすくなり、大きすぎれば、比表面積が小さくなって臭気物質の吸着量が低下する。このため、平均粒径が1〜3mm(好ましくは2〜3mm)であるものが好適である。活性炭の添加量は、少なすぎれば臭気物質の吸着作用が低下し、多すぎればコストの点で不利である。このため、活性炭の添加量は、脱臭浄化媒体M全体に対して、20〜50vol%(好ましくは20〜40vol%、さらに好ましくは25〜40vol%)が好適である。
【0015】
有機物は、脱臭層4内の臭気物質分解微生物のエネルギー源となるものである。有機物は、脱臭層4内の臭気物質分解微生物が資化し得るものであれば特に限定されないが、長期間にわたってエネルギー源として作用させるには、比較的生分解しにくいもの、例えばバーク堆肥、ピートモスを用いるのが好適である。有機物の添加量は、少なすぎれば、臭気物質分解微生物の機能が低下し臭気物質分解効率が低下する。添加量が多すぎる場合には、脱臭層4の通気抵抗が大きくなり、脱臭層4を通過するガスが短絡路を形成しやすくなる。このため、有機物の添加量は、脱臭浄化媒体M全体に対して、20〜50vol%(好ましくは20〜40vol%、さらに好ましくは25〜40vol%)が好適である。
【0016】
脱臭浄化媒体Mには、臭気物質分解微生物を含む種菌を含有させると、装置の運転開始後、短時間で脱臭効率を高めることができるため好ましい。種菌は、臭気物質分解微生物の供給源となるもので、この種菌としては、火山性腐植土壌(例えば黒ボク土)を用いるのが好ましい。これは、火山性腐植土壌には臭気物質を分解、資化し得る微生物が多く含まれるためである。種菌としては、汚泥コンポストを用いることもできる。
【0017】
種菌の添加量は、20vol%以下(好ましくは5〜20vol%、さらに好ましくは5〜15vol%)とするのが好適である。この添加量が上記範囲を越えると、脱臭層4の通気抵抗が大きくなり被処理ガスが短絡路を形成しやすくなる。またこの添加量に関して好適な下限値を示したのは、添加量が上記下限値未満であると、脱臭装置1の脱臭効率が定常状態となるのに時間がかかるようになるためである。粒状ゼオライト、活性炭、および有機物の添加量は、乾燥状態の容積に基づいて定めることができる。また種菌の添加量は、湿潤状態の容積に基づいて定めることができる。
【0018】
脱臭浄化媒体Mは、粒径が2mm以上(好ましくは2〜4.76mm)である成分を50質量%以上含有することが望ましい。この成分の含有率が上記範囲未満であると、脱臭層4の通気抵抗が大きくなり、脱臭層4を通過するガスが短絡路を形成しやすくなる。脱臭層4の厚さは、40cm以上が好ましい。厚さをこの範囲とすることによって脱臭処理効率を高めることができる。脱臭層4の厚さが大きすぎると、脱臭層4が圧密化しやすくなるため、この厚さは60cm以下が好ましい。
【0019】
希釈用水経路8には、脱臭層4に散布する水を供給する散布水供給経路9が接続されている。散布水供給経路9は、希釈用水の一部を、槽5に設置されたスプリンクラー15から脱臭層4の表面に散布できるようになっている。図1および図2において、符号12は、隣り合う2つの層を隔てる網状体などの隔離体である。符号13は、加湿用水6を排出する排水管である。符号14は排水ピットである。脱臭層4の表面には、砂利層16を設けることができる。
【0020】
次に、脱臭装置1の使用方法について説明する。本発明が対象とする臭気物質としては、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチルなどの含硫臭気物質;アンモニアなどの含窒臭気物質を挙げることができる。臭気物質の発生源となり得る設備としては、下水処理場、屎尿処理場、合併処理浄化施設などの廃水処理施設の汚泥濃縮槽、汚泥脱水機、沈砂池、最初沈殿池、コンポスト発酵施設などを挙げることができる。臭気物質濃度が高くなりやすい処理方式としては、嫌気好気ろ床法が挙げられる。
【0021】
臭気物質発生源において発生した臭気物質を含有するガス(被処理ガス)を、導管2に導入する。被処理ガスは、主導管2aを経て枝導管2bを通して拡散層3内に導入され、拡散層3内を水平方向に拡散しつつ上昇し、脱臭層4を通過し、処理ガスとして大気に放出される。脱臭層4における空間速度(SV)は、15〜70(1/Hr)が好ましい。脱臭層4における空塔速度は、3〜8mm/秒が好ましい。脱臭層4内の脱臭浄化媒体Mと被処理ガスとの接触時間は50〜200秒が好ましい。
【0022】
脱臭層4を通過する際、被処理ガス中の臭気物質のうち易水溶性のものは、脱臭層4内において水に溶解しイオン化し、上記脱臭浄化媒体M表面にイオン吸着される。臭気物質のうち難水溶性のもの(硫化メチル、二硫化メチルなど)は、水分が介在せずに脱臭浄化媒体M、特に粒状ゼオライトおよび活性炭に物理的に吸着される。脱臭浄化媒体Mに吸着した臭気物質は、脱臭浄化媒体M表面の臭気物質分解微生物の酸化、還元作用などにより分解されること等により無臭化する。
【0023】
臭気物質分解微生物としては、硫黄酸化細菌(Thiobacillus属細菌、Beggiatoa属細菌など)、硝化細菌(Nitrosomonas属細菌、Nitrobactor属細菌など)、脱窒細菌(Pseudomonas属細菌、Paracoccus属細菌など)、従属栄養細菌(Pseudomonas属細菌など)などが挙げられる。例えば、含硫臭気物質である硫化水素は、水に溶解してイオン化することにより無臭化する。また、このイオンの一部は硫黄酸化細菌の作用により酸化されることにより無臭の硫黄酸化物となる。硫化メチルや二硫化メチルは従属栄養細菌などにより酸化分解され、分解物である硫化水素は上記過程に従って無臭化される。含窒臭気物質であるアンモニアは、好気的条件下で硝化細菌の作用により硝化されて無臭化される。生成した硝酸または亜硝酸は、嫌気的条件下で脱窒細菌の作用により無臭の窒素ガスとなる。
【0024】
無臭化した分解物(硫黄イオン、硫黄酸化物、硝酸など)は、水に溶解した状態のまま排水管13を通して槽5から導出され、排水ピット14を経て系外に排出される。分解により無臭のガスとなった分解物(窒素ガスなど)は、脱臭層4を通過して大気に放出される。脱臭層4においては、含硫臭気物質の酸化により硫酸イオンが生成し、処理の進行に従って蓄積する。降雨などにより供給された水が脱臭層4内を流下すると、この流下水に硫酸イオンが溶解して加湿用水6に混入するため、加湿用水6のpHは低下する。例えば、加湿用水6のpHは2〜3になることがある。
【0025】
加湿用水6のpHが低くなった場合には、希釈用水を、経路8を通して槽5内に導入する。これによって、加湿用水6のpHを高め、中性領域(例えば5〜9、好ましくは6〜8)にすることができる。希釈用水経路8を通して供給される水としては、下水処理場の二次処理水が好ましい。希釈用水の供給量は、槽5内の加湿用水6の容量に対して、滞留時間が3Hr以下(好ましくは2Hr以下)、例えば0.5〜3Hrとなるように定めるのが好ましい。加湿用水6は、排水管13を通して槽5から導出され、排水ピット14を経て系外に排出される。
【0026】
上記脱臭装置1は、加湿用水貯留部7に希釈用水を供給する希釈用水経路8を備えているので、加湿用水6のpHが低くなった場合には、希釈用水により加湿用水6を希釈し、そのpHを中性領域にすることができる。このため、加湿用水6を、中和せずにそのまま系外に排出することができる。このため、中和剤および中和剤注入設備が不要となり、コストの点で有利である。
脱臭装置1では、下水処理場の二次処理水を希釈用水として利用すれば、用水のコストを抑えることができる。また、少量の供給で加湿用水6のpHを中性領域に調整できる。また、脱臭装置1では、散布水供給経路9を通して、希釈用水の一部を脱臭層4に散布できるようになっているので、散布水の供給源を別途用意する必要がなく、コスト面で有利である。
さらに、脱臭装置1では、難水溶性の臭気物質(硫化メチル、二硫化メチルなど)が、脱臭浄化媒体M、特に粒状ゼオライトおよび活性炭に物理的に吸着され、脱臭浄化媒体M中の微生物によって分解される。このため、被処理ガス中に高濃度の臭気物質が残存した場合でも、この臭気物質を効率よく分解することができる。また、粒状ゼオライトおよび活性炭を使用することによって、長期にわたって圧密現象による脱臭層4の表面の固結化を防止することができ、通気性及び排水性を高め、降雨時の冠水や短絡路形成による処理効率の低下を防ぐことができる。
【実施例】
【0027】
以下、具体例を示して本発明の効果を明確化する。下水処理場の汚泥受槽、除塵汚泥槽、汚泥遠心濃縮機、濃縮汚泥槽、および汚泥濃縮前処理装置からの臭気物質を含む被処理ガスを、脱臭装置1を用いて脱臭処理した。脱臭装置1の装置仕様を以下に示す。脱臭層4の面積:60m。加湿用水6の量:6.3m
【0028】
脱臭浄化媒体Mとしては、粒状ゼオライトと活性炭と有機物と種菌とからなるものを用いた。粒状ゼオライトとしては、イワミライト(石見鉱山社製、主成分:クリノプチロライト、粒径:2〜5mm)を使用した。活性炭としては、平均粒径2mmのものを使用した。有機物としては、バーク堆肥を使用した。種菌としては、黒ボク土を使用した。粒状ゼオライト、活性炭、バーク堆肥、および種菌の添加量は、各々30vol%、30vol%、30vol%、10vol%とした。
【0029】
被処理ガスの硫化水素濃度は30〜80ppmであった。脱臭層4を通過した処理ガスの硫化水素濃度は0.002ppm未満であった。
【0030】
下水処理場の二次処理水を、希釈用水経路8を通して槽5内に導入した。希釈用水は7時間供給し、その流量は3.6m/Hr(滞留時間1.75Hr)とした。希釈用水の供給開始からの加湿用水6のpHの経時変化を表1に示す。
表1より、希釈用水の供給によって、加湿用水6のpHを中性領域にすることができたことがわかる。
【0031】
【表1】
【符号の説明】
【0032】
1…脱臭装置、3…拡散層、4…脱臭層、6…加湿用水、7…加湿用水貯留部、8…希釈用水経路、9…散布水供給経路、15…スプリンクラー、M…脱臭浄化媒体。
図1
図2