(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記センサ情報取得部は、前記ドップラ効果を利用して前記移動体の移動に関する情報を測定するセンサが測定したドップラ角度と、前記慣性センサが測定した角速度とを取得し、
前記補正部は、前記慣性センサによって測定された角速度に基づく角度と前記ドップラ角度との差分に基づいて補正量を算出し、前記角速度に基づく角度の値にその補正量を加算する、
請求項1に記載の位置測定装置。
前記補正部は、前記補正において前記複数のセンサのうち測定頻度の高いセンサによる密度の高い測定値を用いて測定頻度の低いセンサによる密度の低い測定値を補間する、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の位置測定装置。
前記センサ情報取得部は、前記ドップラ効果を利用して前記移動体の移動に関する情報を測定するセンサが測定した第一測定値と、前記慣性センサが測定した第二測定値とを取得し、
前記補正部は、所定の時間における前記第二測定値の変化と比較して前記第一測定値の変化が所定の閾値よりも大きい場合にその変化に係る前記第一測定値を修正し、
前記統合化処理部は、前記補正部が修正した前記第一測定値および前記第二測定値の両方に基づいて、前記移動体の位置情報を算出する、
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の位置測定装置。
前記補正部は、前記慣性センサによって測定された加速度に基づく速度に前記補正量を加算した値に基づいて算出した所定の第1時間ごとの前記移動体の位置情報と、前記第1時間より長い所定の第2時間ごとにGPSによって測位された前記移動体の位置情報とを回帰分析して得られた位置情報に基づいて、前記GPSによって測位された前記移動体の位置情報を補間する、
請求項1から請求項8の何れか1項に記載の位置測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<一実施形態>
以下、本発明の一実施形態による制御装置を
図1〜
図15を参照して説明する。
図1は、本発明に係る一実施形態における位置測定装置の機能ブロック図である。
位置測定装置10は、移動体に取り付けられた複数種類のセンサの測定値に基づいて、その移動体の位置情報を算出する。移動体とは、例えば、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)、車両、人などである。
図1に示すように位置測定装置10は、センサ情報取得部11、速度算出部12、角度算出部13、位置算出部14、補正部15、統合化処理部16、出力部17、記憶部102を備えている。
【0023】
センサ情報取得部11は、移動体に搭載された各種センサが検出したその移動体の移動に関する情報を取得する。移動に関する情報とは、例えば、移動体の速度、加速度、移動方向、位置情報などをいう。また、各種センサとは、例えばGPS受信機、IMU(Inertial Measurement Unit)などである。なお、IMUとは加速度センサとジャイロセンサを備える慣性センサである。本実施形態で使用するGPS受信機は位置情報に加え、GPS衛星が送信する搬送波のドップラ効果に基づく速度(ドップラ速度と呼ぶ)および角度(ドップラ角度と呼ぶ)を出力する機能を有している。ドップラ速度およびドップラ角度は、GPSによって測位する位置情報に比べ精度が高いことが知られている。しかし、GPS受信機によって得られる測定値(位置情報、ドップラ速度、ドップラ角度)は何れも搬送波の反射などによるマルチパスの影響を受けて精度が劣化することがあり、測定値の確度がばらつく可能性がある。一方、IMUによる測定値は、GPS受信機による測定値のような確度のばらつきは少なく安定している。しかし、IMUの測定値には、ドリフトや倍率の誤差が含まれ高精度の測定値が得られない可能性がある。さらに、例えば、IMUの測定値に基づく位置情報には、IMUが検出した誤差を含む加速度を積分して移動体の速度を算出し、さらにその速度を積分することで移動体の位置情報を算出するため、累積された誤差が含まれることが知られている。後述するように本実施形態では、各センサの測定値を、特性の異なる他のセンサが測定した有効な測定値を用いて補正し、各センサの欠点を互いに補い合う。なお、IMUが測定した加速度、角速度をIMU測定値、GPS受信機が取得したドップラ速度、ドップラ角度、位置情報をGPS測定値、GPS受信機が取得した位置情報をGPS位置情報と記載することがある。
【0024】
速度算出部12は、センサ情報取得部11が取得したIMUが測定した加速度の情報を用いて、移動体の速度を算出する。
角度算出部13は、センサ情報取得部11が取得したIMUが測定した角速度の情報を用いて、移動体の移動方向(角度)を算出する。
位置算出部14は、速度算出部12が算出した速度、角度算出部13が算出した角度のうち少なくとも一方を用いて、移動体の位置情報を算出する。
補正部15は、複数のセンサが測定した測定値のそれぞれを、特性の異なる他のセンサによる測定値を用いて修正する。具体的には、比較的精度の高いGPS受信機による測定値でIMU測定値に基づいて算出した速度等を修正する。また、確度にばらつきのあるGPS受信機の測定値を、確度が安定したIMUの測定値を用いて修正する。また、補正部15は、複数のセンサのうち測定頻度の高いセンサによる高密度の測定値に基づいて測定頻度の低いセンサによる密度の低い測定値を補間する。例えば、補正部15は、測定頻度の低いGPS受信機が検出する測定値の隙間を、測定頻度が高いIMUが検出した測定値を用いて埋める(補間する)。なお、本明細書では、修正、補間を総称して補正という。
【0025】
統合化処理部16は、複数のセンサが検出した測定値に対して補正部15が補正を行った情報に基づく位置情報の全てを統合化して移動体の位置情報を高精度に算出する。
出力部17は、算出した移動体の位置情報などをディスプレイなどの他装置へ出力する。
記憶部102は、センサ情報や、位置情報の算出過程における各種値、プログラムなどを記憶する。
【0026】
図2は、本発明に係る一実施形態における位置測定装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示す通り、位置測定装置10は、プロセッサ101と、記憶部102と、入出力IF103とを含むコンピュータ装置によって実現される。記憶部102は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体である。入出力IF103は、移動体が備えるセンサ105(GPS受信機、IMUなど)や、ディスプレイ106との信号の入出力を行うインターフェースである。入出力IF103は、ネットワーク接続用の通信インターフェースを含んでいてもよい。プロセッサ101は、記憶部102が記憶するプログラムを読み出して、例えば、速度算出部12、角度算出部13、位置算出部14、補正部15、統合化処理部16、出力部17の機能を実現する。
なお、速度算出部12等の機能の全て又は一部は、マイコン、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0027】
位置測定装置10は、移動体に搭載されたマイコンなどの小型コンピュータでもよいし、移動体から離れた場所に設置されたPC(Personal Computer)、サーバ端末装置などでもよい。位置測定装置10は、移動体に搭載された各種センサから測定値を取得し、移動体の移動に伴って移動体の位置情報を算出してもよいし、移動体の一連の移動において各種センサが検出した測定値を取得して、移動体の移動経路をまとめて算出してもよい。
【0028】
図3は、本発明に係る一実施形態における位置情報算出方法の全体概略を示す図である。
移動体は、IMUとGPS受信機を備えているとする。IMUが備える加速度センサは、移動体の加速度を測定し、その加速度情報を位置測定装置10へ出力する。また、IMUが備えるジャイロセンサは、移動体の角速度を測定し、その角速度情報を位置測定装置10へ出力する。一方、GPS受信機は、移動体のドップラ角度、ドップラ速度、位置を測定してそれらの情報を位置測定装置10へ出力する。位置測定装置10では、センサ情報取得部11がそれらの情報を取得する。
【0029】
速度算出部12は、所定時間に加速度センサが測定した加速度を積分して、その所定時間における移動体の速度を算出する。角度算出部13は、所定時間にジャイロセンサが測定した角速度を積分して、その所定時間における移動体の移動方向の角度を算出する。また、位置算出部14は、速度を積分して移動体の位置情報(DR:Dead-Rekoning)(DR位置(仮))を算出する。また、移動体が歩行者の場合、位置算出部14は、歩行者の位置情報(PDR:Pedestrian Dead-Rekoning)を算出してもよい(歩行者の場合、DR、PDRの何れを算出してもよい)。位置算出部14は、公知のPDRの算出式を用いて歩行者の1歩ごとのPDRを算出してそれらを累積し所定時間後のPDR位置(仮)を算出する。なお、DR位置(仮)、PDR位置(仮)としたのは、後に修正を行うためである。
【0030】
位置測定装置10は、DR位置(仮)、PDR位置(仮)を算出する一方で、各センサによる測定値に対する補正を行う。補正部15がIMU測定値に基づいて算出した速度、角度の値には、加速度センサ等のドリフト等による累積誤差が含まれている。そこで、補正部15は、GPS受信機が測定したドップラ速度を用いて速度算出部12が算出した速度を修正する。また、補正部15は、GPS受信機が測定したドップラ角度を用いて角度算出部13が算出した角度を修正する。
【0031】
一方、GPS受信機の測定間隔は比較的長く(例えば1秒)、測定密度が低い。例えば、高加速度で移動する移動体の位置情報を得るためには、測定値のサンプリング間隔がより短いことが好ましい。そこで、補正部15は、補正後の速度でドップラ速度の測定結果を補間する。同様に補正部15は、補正後の角度でドップラ角度の測定結果を補間する。また、GPSによる測定値には、ばらつきが出る場合がある。そこで、補正部15は、GPSの測定値のばらつきを監視し、測定値の劣化を検出すると、IMUの測定値を用いてGPSの測定値を補正する。具体的には、補正部15は、ドップラ速度の精度が劣化した場合、IMU測定値に基づく補正後の速度情報でドップラ速度を修正する。また、ドップラ角度の精度が劣化した場合、IMU測定値に基づく補正後の角度情報でドップラ角度を修正する。
【0032】
このように本実施形態では、精度の高いGPS受信機によるドップラ速度、ドップラ角度を用いて、相対的に精度の低いIMU測定値に基づいて算出した速度、角度の値をそれぞれ修正する。一方、GPS受信機による測定値にばらつきが出た場合、精度が劣化した測定値を、確度の安定したIMU測定値に基づく速度、角度の値で修正する。また、測定密度の低いGPS測定値を、測定密度の高いIMU測定値に基づく速度、角度の値で補間する。このように特性の異なるセンサが測定した測定値を、それぞれのセンサが有する優れた特性成分を用いて互いに補正し合うので、それぞれのセンサによって検出した測定値に基づく値(移動に関する情報)の精度を高めることができる。
【0033】
次に、位置算出部14は、補正後の速度を積分してDR位置(修正)を算出する。また、移動体が人の場合、位置算出部14は、補正後の角度、公知のPDRの算出式を用いて歩行者の一歩ごとの移動位置を求め、これらを積分してPDR位置(修正)を算出する。また、GPS受信機が測定する位置情報の測定間隔は例えば1秒である。これに対し、IMUの測定間隔はより短い(例えば、0.01秒)。そこで、補正部15は、測定密度の低い(粗い)GPS位置情報を、測定密度の高い(細かい)DR位置(修正)、PDR位置(修正)の値で補間する。また、GPS位置情報にばらつきがあり、マルチパスの影響などによる精度の劣化がある場合には、補正部15は、GPS位置情報を、DR位置(修正)等の値で修正する。
【0034】
最後に統合化処理部16が、DR位置(修正)またはPDR位置(修正)と、補正後のGPS位置情報とに基づいて最終的な移動体の位置情報を算出する。このように、異なるセンサの測定値に基づく位置情報に対して互いに補正を行い、さらに複数のセンサの測定値に由来する補正後の位置情報に基づいて移動体の位置情報を算出するのでより高精度に位置情報を得ることができる。
【0035】
次に
図3で概略を説明した各過程の処理についてさらに詳しく説明する。
図4は、本発明に係る一実施形態の位置測定装置による位置情報算出過程を説明する第一の図である。
例えば、GPS受信機が1秒ごと、IMUが0.01秒ごとに測定を行い、位置測定装置10がそれらの値を取得して、逐次位置情報を算出する場合を例に説明する。より具体的には、位置測定装置10が、GPS受信機による位置情報を取得する度に、直前の1秒間にIMUが検出した測定値を補正するという処理を繰り返す。
図4の表の縦軸は経過時間、横軸は位置測定装置10が取得する測定値、その測定値に基づいて算出する値が記載されている。また、この表では、DRおよびPDRの両方について位置測定装置10が同時に算出処理を行うように表現されているが、一般的には位置測定装置10は、移動体が人の場合にPDR又はDRを算出し、その他の場合にはDRを算出する。
【0036】
図4は、測定の開始から1秒未満(0.99秒)までの間に位置測定装置10が行う処理を示している。図示するように0〜0.99秒までの間、IMUは0.01秒ごとに加速度、角速度の測定を行い、その測定値を位置測定装置10に出力する。速度算出部12は、加速度の測定値を積分して「速度(生値)」を算出する。角度算出部13は、角速度の測定値を積分して「角度(生値)」を算出する。位置算出部14は、「速度(生値)」を積分し「DR(仮)」を算出する。位置算出部14は、「角度(生値)」、公知のPDRの算出式を用いて1歩あたりの移動距離を求め、それを積分し「PDR(仮)」を算出する。
【0037】
図5は、本発明に係る一実施形態の位置測定装置による位置情報算出過程を説明する第二の図である。
図5は、測定開始から1秒を迎えた時に位置測定装置10が行う処理を示している。図示するように1秒が経過すると、0〜0.99秒までと同様、速度算出部12は「速度(生値)」を算出する。角度算出部13は「角度(生値)」を算出する。また、位置算出部14は、「DR(仮)」、「PDR(仮)」を算出する。また、センサ情報取得部11は、GPS受信機からドップラ速度、ドップラ角度、位置の情報を取得する。また、GPS受信機から測定値を受信した時、補正部15は、補正処理を開始する。補正処理については、
図6〜
図11を用いて後に説明する。
【0038】
ただし、GPS受信機の測定値がマルチパスによる影響を受け、GPS測定値の精度が劣化していると判定した場合、補正部15は、この時刻では補正処理を行わず、次の同期時刻に過去からその同期時刻にかけて補正処理を行う。具体的には、1秒後(つまり、測定開始から2秒後)のGPS測定値が正常である場合、補正部15は、0〜2秒の間のIMUによる全ての測定値を2秒の時点で取得したGPS測定値に基づいて修正する。また、補正後のIMUによる測定値を用いて、0〜2秒の間のドップラ速度、ドップラ角度を補間する。なお、補正部15は、IMU測定値に基づく値の修正を行わない場合、GPSの補間も行わない。
【0039】
なお、GPS測定値の精度が劣化しているか否かの判定については、例えば、所定の時間におけるGPSドップラ速度、GPSドップラ角度が所定の閾値以上に大きく変化しても、IMU測定値に基づく速度および角度の変化には、それに該当する変化が見られず、その変化量が閾値以内である場合に、補正部15は、GPSドップラ速度およびGPSドップラ角度は、マルチパスの影響等で精度が劣化していると判定する。
なお、この例では、補正の間隔を1秒間ごととしているが、この間隔については任意であってよい。例えば、センサ特性に合わせて有効な期間を設定してもよい。
【0040】
図6は、本発明に係る一実施形態の位置測定装置による位置情報算出過程を説明する第三の図である。
図6は、測定開始から1秒を超過した時に位置測定装置10が行う処理を示している。図示するように1秒を超過した後も速度算出部12は「速度(生値)」を算出し、角度算出部13は「角度(生値)」を算出する。また、位置算出部14は、「DR(仮)」、「PDR(仮)」を算出する。また、補正部15は、GPS受信機からドップラ速度、ドップラ角度、位置の情報を取得する。また、補正部15は、GPS受信機が測定したドップラ速度、ドップラ角度の値を用いて修正値を算出する(図中、「IMU修正値」)。また、補正部15は、算出した修正値を、「速度(生値)」、「角度(生値)」に加算して修正する(図中、「IMU修正」)。次にIMUによる測定値の補正処理について説明する。
【0041】
図7〜
図9を用いて、IMU測定値に基づく値を過去に遡って修正する方法について、いくつかの修正方法の例を挙げて説明する。
図7は、本発明に係る一実施形態の位置測定装置による修正処理を説明する第一の図である。
図7は、GPS受信機が測定したドップラ角度と、IMUの測定値に基づいて角度算出部13が算出した角度とを同一座標系にプロットした図である。点G1はGPS測定値、I1〜I3はIMU測定値に基づく角度を示している。
図7においてX軸と点G1がなす角度θ
GPSは、測定開始から1秒後のGPS受信機が測定したドップラ角度である。X軸と原点と点I1を結ぶ直線がなす角度θ
IMU(1)は、測定開始から0.01秒後のIMUが測定した角速度に基づいて角度算出部13が算出した角度である。また、角度dθ
IMU(2)は、測定開始から0.02秒後にIMUが測定した角速度に基づいて角度算出部13が算出した角度である。dθ
IMU(2)は、0.01秒から0.02秒の間に移動体が移動した方向に相当する。破線Lnと、点In−1と点Inを結ぶ直線がなす角度dθ
IMU(n)についても同様である。
0〜1秒の間にこのようなデータが測定、または算出された場合、補正部15は、以下の式で、ドップラ角度とIMU測定値に基づく角度との差分dθ´を算出する。
dθ´ = θ
GPS−(θ
IMU(1)+dθ
IMU(1)+・・・
+dθ
IMU(n)) ・・・(1)
補正部15は、1秒後以降についても各秒区間のGPSによるドップラ角度とIMUの角度差dθ´を求める。同様に移動体の速度についても、補正部15は、各秒区間のGPSによるドップラ速度とIMUの速度差dV´を求める。
【0042】
図8〜
図9を用いて、IMU測定値に基づく値を過去に遡って修正する方法について、いくつかの修正方法の例を挙げて説明する。
図8は、本発明に係る一実施形態の位置測定装置による修正処理を説明する第二の図である。
図8を用いて、修正量の算出方法とIMU測定値に基づく角度の修正処理の一例について説明する。補正部15は、式(1)で算出したdθ´をサンプル数nで除算する。この例の場合、n=100のため、補正部15は、dθ´を100で除算する。この除算して求めた値が修正量である。次に補正部15は、算出した修正量をIMU測定値に基づいて角度算出部13が算出した100個の角度のそれぞれに加算する。図中、原点と点I´
1を結ぶ直線とX軸がなす角度θ
IMU(1)+dθ´/n、点I
1と点I´
2を結ぶ直線と破線L
2がなす角度θ
IMU(2)+dθ´/n、点I
nー1と点I´
nを結ぶ直線と破線L
nがなす角度θ
IMU(n)+dθ´/nは、補正部15が修正量を加算した後の角度を示している。つまり、修正後の各点I´
nに対応する角度dθ´´は、次式で表すことができる。
dθ´´
IMU(n) = dθ
IMU(n)+ dθ´/n ・・・(2)
ここで、dθ´´
IMU(n)は、修正後の角度である。
【0043】
なお、修正量の算出に関し、サンプル数の平均を求める方法を例に説明を行ったが、dθ´、dθ´/nを、例えば、過去数秒間の最頻値などによって誤差を推定する等の統計処理を用いて算出してもよい。例えば、現在、3〜4秒の間の測定値に基づいて上述のような方法で算出したdθ´が10度、0〜1秒、1〜2秒、2〜3秒におけるdθ´がそれぞれ8度であったとすると、3〜4秒のdθ´をこれらを平均して求めるようなことである。具体的には、dθ´=(8+8+8+10)/4 = 8.5のようになる。また、修正量の算出に関し、補正部15は、算出した修正量に対し各種カルマンフィルタ処理などの統計的予測技術を適用して、さらに精度・確度を高めてもよい。なお、統計的予測技術には、例えば、線形カルマンフィルタ処理、非線形カルマンフィルタ処理、パーティクルフィルタ処理などが含まれる。また、式(1)のθ
GPS、つまりGPS受信機が測定したドップラ角度に対して統計的予測技術を適用してもよい。GPS受信機が測定するドップラ角度などは比較的精度が高いが、統計的予測技術を行うことで精度・確度を高め、より信頼性の高い測定値とすることができる。
【0044】
また、補正部15は、同様の処理によってIMU測定値に基づく速度を修正する。この場合も、ドップラ速度に統計的予測技術を適用したり、修正量に対して統計的予測技術を適用したりしてもよい。
これにより、補正部15は、精度の高いドップラ角度によってIMU測定値に基づく角度を過去に遡って修正することができる。また、補正部15は、精度の高いドップラ速度によってIMU測定値に基づく速度を過去に遡って修正することができる。
【0045】
図9は、本発明に係る一実施形態の位置測定装置による修正処理を説明する第三の図である。
図9を用いて、修正量の算出方法とIMU測定値に基づく角度の修正処理の他の例について説明する。補正部15は、式(1)で算出したdθ´を、最初のIMU測定値に基づく角度θ
IMU(1)に加算する。すると、
図9に示すように最初のIMU測定値に基づく角度に対応する点I
1はI´
1へ移動する。同様に2回目以降のIMU測定値に基づく角度に対応する点I
n−1はI´
n−1へ移動する。移動したこれらの点I´
1、・・・、I
n−1、I
nに対応する角度が修正後の角度である。補間部15は、IMU測定値に基づく速度についても、ドップラ速度との差分を計算して同様の修正を行ってもよい。
【0046】
なお、
図7〜
図9を用いて修正方法のいくつかの例を挙げたがIMU測定値に基づく速度および角度の修正方法はこれに限定されない。例えば、修正の対象となる区間を長くとり比較するデータ数を増やしたうえで上述の方法によって修正処理を行ってもよい。あるいは、修正対象区間を長くして比較データ数を増やしたうえで、回帰分析等によって算出するといった方法でもよい。例えばGPSドップラ角度とIMU測定値に基づく角度の相関関係を算出し、算出した相関関係に基づいて上記のdθ´を推定し、そのdθ´を用いて修正量を算出するといった方法でもよい。
【0047】
図10は、本発明に係る一実施形態の位置測定装置による位置情報算出過程を説明する第四の図である。
図10は、補正部15が、過去における所定期間のIMU測定値に基づく速度等の値を修正した後の処理を示している。
図7、8で説明した補正処理が終了すると、今度は、補正部15は、補正後のIMU測定値に基づく角度でドップラ速度を補間する(図中、「GPS補間」の「角度」)。また、補正部15は、補正後のIMU測定値に基づく速度でドップラ角度を補間する(図中、「GPS補間」の「速度」)。
なお、補正部15による補間処理と並行して、速度算出部12は「速度(生値)」を、角度算出部13は「角度(生値)」を算出し、位置算出部14は、「DR(仮)」、「PDR(仮)」を算出し続ける。
【0048】
図11は、本発明に係る一実施形態の位置測定装置による補間処理を説明する図である。
図11を用いて補間処理について説明する。GPSドップラ測定値の測定間隔は1秒である。一方、IMUによる測定間隔は0.01秒である。従って、GPS受信機が1つのドップラ角度等を測定するまでに、IMUは99個の測定値を検出する。補正部15は、99個の補正後のIMU測定値に基づく角度で、GPSドップラ測定値の測定間隔の角度情報を補間する。補間された修正後の精度を高めたIMU測定値に基づく角度をGPSドップラ角度とみなすことで、測定精度を低下させることなくGPSドップラ角度の測定値の密度を高めることができる。
また、マルチパスの影響でGPSドップラ角度の精度が劣化した場合は、劣化したドップラ角度の測定値を、修正後のIMU測定値に基づく角度で置き換えたり、よりIMU測定値に基づく角度に重みを与えて、ドップラ角度との重み付け平均を求めた値をGPSドップラ角度に設定してもよい。これにより、GPSドップラ角度のばらつきを抑えることができる。
【0049】
同様に、補正部15は、GPSドップラ速度をIMU測定値に基づく速度で補間する。これにより、GPSドップラ速度の測定値の密度を高めることができる。また、マルチパスの影響でGPSドップラ速度の精度が低下した場合は、IMU測定値に基づく速度の補正後の値で、精度が低下したGPSドップラ速度を置き換える等を行ってもよい。これにより、GPSドップラ速度のばらつきを抑えることができる。
【0050】
なお、補間処理を行う際に、補間する値(修正後のIMU測定値に基づく角度および修正後のIMU測定値に基づく速度)にカルマンフィルタ等の統計的予測技術を適用する。これにより、これらの値の精度・確度を高めることができる。
【0051】
また、例えば回帰分析等によってGPSドップラ角度とIMU測定値に基づく角度の相関関係を算出した場合、その相関関係を用いて補正後のIMU測定値に基づく角度に対するGPSドップラ角度を求め、その値でGPSドップラ角度を補間してもよい。
【0052】
さらに補間後のGPS測定値を用いて、次のような補正処理を行ってもよい。例えば、0〜T秒の間の補間後のGPSドップラ角度と、対応する時刻に測定されたIMU測定値に基づく「角度(生値)」との誤差の平均を求め、求めた平均値をIMU測定値に基づく「角度(生値)」に加算して、補正後のIMU測定値に基づく角度を算出する。補間後のGPS測定値を用いることで、測定密度の高いデータによる補正を行うことができ、さらなる精度の向上が期待できる。
【0053】
図12は、本発明に係る一実施形態の位置測定装置による位置情報算出過程を説明する第五の図である。
上述のように、補正部15は、修正値の算出、所定期間におけるIMU測定値に基づく値に対する修正、修正後のIMU測定値に基づく値によるGPSドップラ値の補間を行う。これら一連の補正処理(
図6〜
図11で説明したIMU測定値に基づく値に対する修正、GPS測定値に対する補間)を行うと、次に位置算出部14が、補正後のIMU測定値に基づく速度および角度を積分等してDR、PDRを算出する(図中、「IMU修正位置」の「DR(修正)」および「PDR(修正)」)。補正後のIMU測定値に基づく速度および角度は、精度の高いGPSドップラ速度および角度によって補正されているので、この値を積分して求めたDRの値は、IMUのドリフトの累積等による誤差が補正された値であると考えられる。PDRについても同様である。
なお、「DR(修正)」、「PDR(修正)」の再計算中も、速度算出部12は「速度(生値)」を、角度算出部13は「角度(生値)」を算出し、位置算出部14は、「DR(仮)」、「PDR(仮)」を算出し続ける。
【0054】
図13は、本発明に係る一実施形態の位置測定装置による位置情報算出過程を説明する第六の図である。
位置算出部14が「DR(修正)」、「PDR(修正)」を再計算すると、補正部15は、「DR(修正)」または「PDR(修正)」の値を用いて、GPS位置情報を補間する。つまり、GPS受信機は1秒間隔でGPS衛星から位置情報を取得するが、補正部15は、「DR(修正)」または「PDR(修正)」の値で、その間の位置情報を補間する。この際にも、補正部15は、補間する値に対してカルマンフィルタ等の統計的予測技術を施して、精度・確度を高めた値で補間処理を行ってもよい。
また、比較対象区間を長くして比較データ数を増やしたうえで、回帰分析等でDR(修正)またはPDR(修正)とGPS位置情報との相関関係を算出し、GPS受信機による測定値の間の位置情報を、「DR(修正)」等と算出した相関関係とによって求めた位置情報で補間してもよい。
修正後の精度を高めたIMU測定値に基づく、DR(修正)またはPDR(修正)によってGPS位置情報を補間することで、測定精度を低下させることなくGPS位置情報のデータ密度を高めることができる。
また、マルチパスの影響でGPS位置情報の精度が劣化した場合は、その位置情報をDR(修正)またはPDR(修正)によって置き換える等の処理を行ってもよい。これにより、GPS位置情報のばらつきを抑えることができる。
【0055】
図14は、本発明に係る一実施形態の位置測定装置による位置情報算出過程を説明する第七の図である。
図14は、測定開始から2秒を迎えた時に位置測定装置10が行う処理を示している。2秒を迎えても、速度算出部12は「速度(生値)」を、角度算出部13は「角度(生値)」を算出し、位置算出部14は、「DR(仮)」、「PDR(仮)」を算出し続ける。また、2秒が経過すると、センサ情報取得部11は、GPS受信機からドップラ速度、ドップラ角度、位置の情報を取得する。
【0056】
また、統合化処理部16は、「DR(修正)」または「PDR(修正)」の値と、GPS位置情報とを用いて統合化処理を行い、移動体が移動した経路を示す位置情報を算出する。ここで、統合化処理とは、「DR(修正)」または「PDR(修正)」の値と、GPS位置情報とを考慮して移動体の位置情報を算出することをいう。例えば、統合化処理部16は、「DR(修正)」値とGPS位置情報との平均値を算出して、その値を移動体の位置情報として決定する。または、統合化処理部16は、「PDR(修正)」値とGPS位置情報との平均値を算出して、その値を歩行者の位置情報として決定する。あるいは、統合化処理部16は、「DR(修正)」または「PDR(修正)」値と、GPS位置情報との重み付け平均を算出して、その値を移動体の位置情報として決定する。または、統合化処理部16は、「DR(修正)」または「PDR(修正)」値と、GPS位置情報との重み付け平均に対して各種カルマンフィルタ等の統計的予測技術を適用して得られる値を移動体の位置情報として決定してもよい。統合化処理を行うことにより、補正後のIMU測定値に基づく位置情報と、補正後のGPS測定値に基づく位置情報、の両方を考慮したより高精度な位置情報を推定することができる。また、GPS位置情報について前処理の段階で補間を行い、0.01秒間隔で位置情報を得ているので、統合化処理による高精度な位置情報も0.01秒の間隔で算出することができる。
【0057】
本実施形態において、統合化処理にカルマンフィルタ等の統計的予測技術を適用する場合、次の様な利点が存在する。なお、統計的予測技術には、例えば、線形カルマンフィルタ処理、非線形カルマンフィルタ処理、パーティクルフィルタ処理などが含まれる。例えば、精度・確度の高い位置情報を得たい場合、位置情報だけにカルマンフィルタを使用する例が多い。しかし、元の位置情報の信憑性が低い場合、カルマンフィルタを提供しても十分な効果が得られない。そこで本実施形態では、前処理として、元の位置情報の精度・確度を上げる処理を行っている。つまり、1.
図7、
図8で説明したGPS測定値によるIMU測定値に基づく値の修正(速度および角度)、2.
図11で説明した修正したIMU測定値によるGPS測定値の補間。3.
図8で説明した修正したIMU測定値(速度および角度)の精度・確度をさらに上げる為の統計的予測技術処理、である。このように、統合化処理による最終的な位置の確度を上げる為に、本実施形態では前処理の段階で修正・補間だけでなく統計的予測技術処理を行う。これにより、常に精度・確度が高い移動に関する情報だけを使って位置情報を算出することができる。また、カルマンフィルタ処理を行わず単に平均を求めるような場合であっても、上述した前処理を行って求めたIMU測定値に基づく位置情報とGPS測定値に基づく位置情報を使用するので、精度・確度の高い最終的な位置情報を算出することができる。
【0058】
さらにカルマンフィルタ処理における値の求め方について説明する。カルマンフィルタ処理には、状態方程式、観測方程式にノイズを含むことがある。状態方程式におけるノイズvの共分散行列Qと観測状態方程式におけるノイズwの共分散行列Rは次のように決めてもよい。まず、Qについては、カルマンフィルタ処理の都度、事後推定値と事前推定値の誤差を入力したり、ある秒区間の事後推定値と事前推定値の誤差の平均、中央値、正規分布、β分布等で求めたりすることができる。また、初期値は実験的に決めた値、事前に キャリブレーションした値、またはセンサ特性に合わせた決めた値で求めてもよい。何れの場合も、どの値を使用するかは、センサ特性に合わせて決めることができる。また、Rについては、正規分布にのっとった乱数を入力してもよい。
【0059】
なお、ここでは、2秒経過時に統合化処理を行うこととして説明を行ったが、
図13で説明した処理が終了すれば測定開始から2秒が経過していなくても、統合化処理部16は、統合化処理を行ってよい。
統合化処理が終了すると、補正部15は、今度は1〜2秒の間に測定されたIMUおよびGPS受信機による測定値に対して補正処理を行う。また、統合化処理部16は、補正処理後の位置情報に対して統合化処理を行う。各処理については
図4〜
図14で説明したとおりである。なお、0〜1秒の間の補正処理、統合化処理が終わらない限り、2秒が経過したとしても1〜2秒の間の補正処理、統合処理には着手しない。
【0060】
図15は、本発明に係る一実施形態の位置測定装置による位置情報算出処理の一例を示すフローチャートである。
図15を用いて、本実施形態における位置情報算出処理の流れについて説明する。
図15のフローチャートは、一例として、GPS受信機から測定値を取得する時刻とIMUから測定値を取得する時刻とが同期する度(1秒ごと)に、直前の1秒間における移動体の位置情報を算出する場合の処理の流れを示している。
まず、センサ情報取得部11がIMU測定値(加速度、角速度)を取得する(ステップS11)。センサ情報取得部11は取得したIMU測定値を記憶部102に記録する。次に速度算出部12が記憶部102に記録された加速度情報を積分して速度を算出し、さらに位置算出部14がその速度を積分して位置情報(DR(仮))を算出する。速度算出部12は、算出した速度情報を記憶部102に記録する。位置算出部14は、算出した位置情報(DR(仮))を記憶部102に記録する。または、移動体が人の場合、角度算出部13は、記憶部102に記録された角速度情報を積分して角度を算出し、さらに位置算出部14が、角度算出部13によって算出された角度、公知のPDRの算出式によって得られる一歩あたりの移動距離を積分して位置情報(PDR(仮))を算出する。角度算出部13は、算出した角度情報を記憶部102に記録する。位置算出部14は、算出した位置情報(PDR(仮))を記憶部102に記録する。センサ情報取得部11がGPS測定値を取得するまでの間(ステップS13;No)、位置測定装置10はステップS11〜S12の処理を繰り返す。
【0061】
次にセンサ情報取得部11がGPS測定値(ドップラ角度、ドップラ速度、位置情報)を取得すると(ステップS13;Yes)、補正部15が、過去の所定期間(1秒間)におけるIMU測定値に基づく速度とドップラ速度とに基づいて速度の修正量を算出する(ステップS14)。同様に補正部15は、過去の所定期間におけるIMU測定値に基づく角度とドップラ角度とに基づいて角度の修正量を算出する(
図7〜
図8)。次に補正部15は、算出した修正量で、所定期間にIMUが測定した全ての測定値を修正する(ステップS15)。補正部15は、修正後の速度および角度に対してカルマンフィルタ処理を行う。次に、補正部15は、補正後のIMU測定値を用いて、GPS測定値(ドップラ測定値)を補間する(ステップS16)。この際、GPS測定値に精度の劣化があるかどうかを判定し、劣化がある場合、補正後のIMU測定値でGPS測定値を補正する。
【0062】
次に位置算出部14は、修正後のIMU測定値を積分して、位置情報(修正)を算出する(ステップS17)。位置情報(修正)とは、DR(修正)またはPDR(修正)である。次に、補正部15は、GPS位置情報を、位置情報(修正)で補間する(ステップS18)。この際、GPS位置情報の精度が劣化していると判定される場合、補正後の位置情報(修正)でGPS位置情報を補正する。次に統合化処理部16が、補正後の位置情報(修正)と補正後のGPS位置情報とを用いて統合化処理を行う(ステップS19)。最後に出力部17は、統合化処理後の位置情報をディスプレイ106に出力する。
なお、ステップS13の判定がYesの場合にも、ステップS11〜S12の処理は継続され、さらに1秒が経過すると、位置測定装置10は、その経過した1秒間における移動体の位置情報を算出する。位置測定装置10は、この一連の処理を移動体が停止するまで繰り返し行い、算出した位置情報を出力する。ユーザは、ディスプレイ106に出力された位置情報によって、移動体の位置や移動経路を把握することができる。また、出力部17は、位置情報だけでなく、補間後のドップラ速度およびドップラ角度、IMUによる加速度等の情報を出力してもよい。これによりユーザは、移動体の移動経路だけでなく、その過程における移動体の挙動を把握することができる。
【0063】
なお、このフローチャートでは、1秒ごとにその1秒間における位置情報を算出する処理を行っているが、この間隔は、数秒あるいは数分ごとに行ってもよいし、移動体の移動が停止してからまとめて行ってもよい。
【0064】
IMU測定値もGPS測定値も基本的に高精度かつ高確度な測定値であるが、その精度と確度の安定性がそれぞれのセンサの特性により異なる。例えば、GPS測定値のようにドップラ効果を利用して移動体の移動に関する情報を測定するセンサにおいては、搬送波を検出して測定を行うため、マルチパス等の影響により急激に測定値が変化する場合がある(値が安定しない)。一方、IMUなどの慣性センサの測定値は、ドリフトや倍率の影響で、測定時間の経過に伴って誤差が累積され、徐々にその誤差が増加するが、その変化は緩やかである(値が安定する)。つまり、GPS測定値は、IMU測定値と比較して確度が安定せず、IMU測定値は、確度は安定しているが誤差を累積するため測定を継続すると精度が低下する性質がある。そこで、本実施形態では、上記の説明のように、補正部15が、前処理において互いに、修正・補間を行って精度・確度を向上させ、統合化処理部16が、精度・確度の高い異なるセンサに由来する位置情報を統合して最終的な位置情報を算出する。
【0065】
より具体的には、補正部15は、比較的精度の低いIMUによる測定値を、比較的精度の高いGPSドップラ値で修正する。また、補正部15は、測定密度の低いGPS測定値を、測定密度の高いIMU測定値に基づく値(速度、角度)であって、かつ、補正を行って精度を高めた値で補間する。また、補正部15は、比較的確度の低い(ばらつきのある)GPS測定値を、確度の安定したIMU測定値に基づく値であって、かつ、補正を行って精度を高めた値で修正する(置き換えるなど)。さらに、補正部15は、補正後のIMU測定値に基づく値に対してカルマンフィルタ処理を行い、より確度を高める。また、統合化処理部16は、各センサが持つ有効な特性で補正し合った各センサの測定値に基づく位置情報のそれぞれを統合化して最終的な位置情報を算出する。これにより、より精度および確度の高い位置情報を算出することができる。なお、本実施形態によれば、測定密度の高いIMU測定値を対象に修正を行い、また、GPS測定値についても補間を行うので、精度・確度が高められた単位時間当たりの移動に関する情報を多数得ることができる。従って、本実施形態の位置測定方法によれば、移動体の移動経路をきめ細かく追尾することができる。従って、本実施形態の位置測定方法は、特に高加速度で移動する移動体の位置測定に効果的である。また、短時間のうちに加速度が急激に変化するような移動体の位置測定に対しても有効である。但し、本実施形態の位置測定方法の適用範囲は、これらの例に限定されるものではない。例えば、低加速度で移動する移動体の位置測定に対して用いてもよい。
【0066】
さらに、移動体が、空間内の各位置における絶対座標系での座標情報が既知であるような空間であって、移動体の存在する位置の座標情報を通知する手段を有した固定座標局が設けられた空間(空間αと呼ぶ)に進入した場合、補正部15は、次のようにして統合化処理部16が算出した移動体の位置情報を修正してもよい。例えば、移動体が、空間αに進入したときに統合化処理部16が算出した位置の座標情報がP
1(X1、Y1)であったとする。一方、センサ情報取得部11は、固定座標局から移動体が存在する位置の座標情報P
2(X2、Y2)を取得する。その場合、補正部15は、固定座標局から得たP
2を正としてP
1を修正してもよい。また、補正部15は、P
2とP
1の差(ΔP)を求め、過去の所定時間において統合化処理部16が算出した位置情報のそれぞれにΔPを加算し、移動体の位置情報を修正してもよい。また、例えば、補正部15は、空間αにおいて固定座標局から取得した一つの座標情報だけではなく、移動体の移動に伴って固定座標局から取得した複数個の座標情報と、それら複数個の座標情報それぞれに対応する統合化処理部16が算出した座標情報との差を求めて、それら複数の差の値に対して統計的予測技術を適用し、より高精度・高確度な位置情報の修正量ΔPを算出してもよい。
このような修正を行うことで、予め正確な位置情報が分かっている空間αを移動体が移動する場合、その正確な位置情報に基づいて、例えば、移動体が過去において空間α以外に存在していたときに算出した位置情報などに対しても、より正確な位置情報に修正することができる。これにより、ユーザは、移動体の移動経路をより正確に把握することができる
【0067】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、実施形態の説明では、GPS受信機によってドップラ速度およびドップラ角度を測定することとしたが、ドップラ効果を用いて速度等を測定することができれば、GPS受信機でなくてもよい。他にもレーダーやBluetooth(登録商標)ビーコンを利用してドップラ速度等を測定する態様でも構わない。なお、Bluetooth(登録商標)ビーコン等を用いる場合、GPSと異なり、位置情報が測定できない可能性があるが、位置情報については、例えばIMU測定値と同様に積分等を行って算出するようにしてもよい。Bluetooth(登録商標)ビーコン等を用いることで、屋内でも精度よく位置情報を算出することができる。
また、本実施形態の説明では、DRの算出に加速度情報のみを用いたが、加速度に加えて角速度情報を用いてもよい。
なお、実施形態においては最も効果的な補正処理の例として、補正部15が、ア)所定の時間におけるIMU測定値の変化と比較してGPS測定値の変化が所定の閾値よりも大きい場合にその変化に係るGPS測定値を修正すること、イ)測定時間の経過に伴って増加するIMU測定値に基づく移動に関する情報に含まれる累積誤差を修正すること、ウ)所定の時間において測定されたIMU測定値とGPS測定値のうちより密度の高い測定値に基づいてより密度の低い測定値を補間すること、の全てを行うことによってIMU測定値に基づく移動に関する情報およびGPS測定値の精度と確度を向上させる場合を例に説明を行ったが実施の形態はこれに限定されない。例えば、補正部15が、上述のア)〜ウ)のうち何れか1つ又は2つの処理だけを行うような実施形態とすることも可能である。
なお、IMUは第一センサの一例であり、GPS受信機は第二センサの一例であり、修正量は補正量の一例である。また、GPS受信機はドップラ効果を利用して移動体の移動に関する情報を測定するセンサの一例である。
【0068】
なお、上述した位置測定装置10における各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムを位置測定装置10のコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0069】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
また、位置測定装置10は、1台のコンピュータで構成されていても良いし、通信可能に接続された複数のコンピュータで構成されていてもよい。