【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、合成樹脂からなるハウジング内において、前記ハウジングの第1端部側からハウジング軸方向反対側の第2端部側向かって順に、点火器、合成樹脂からなる棒状発射体、電気回路の一部を形成させるための導体片が配置され、前記ハウジングの第2端部と前記導体片の間に絶縁空間を有しており、
前記導体片が、両端側の第1接続部、第2接続部と中間部分の切断部からなる板片であり、前記切断部の面が前記ハウジングの軸方向に直交して配置されており、
前記棒状発射体が、前記導体片の切断部の面とハウジング軸方向に対向して配置されており、
前記棒状発射体と前記ハウジング内壁面の間に金属からなるシリンダーが配置されており、
さらに前記シリンダーおよび前記絶縁空間の外側の前記ハウジング内部に補強用フレームが配置されているものであり、
前記絶縁空間と前記ハウジングの第2端部の間に前記点火器の作動により生じた燃焼生成物の排出経路を有している、電気回路遮断装置を提供する。
【0007】
本発明の電気回路遮断装置は、電気自動車の電気回路、ガソリンまたはディーゼル自動車のバッテリー(リチウムイオンバッテリーなど)、家庭電化製品などの様々な電気回路に取り付けて使用して、電気回路に異常が生じたときには、電気回路を遮断できるものである。
本発明の電気回路遮断装置は、単独で前記した各種自動車に取り付けることもできるが、例えば、自動車に搭載されたエアバッグ装置と連動して作動できるようにして取り付けることもできる。このような場合には、エアバッグ装置が搭載された各種自動車が事故を起こしたとき、エアバッグ装置の作動信号を受けて本発明の電気回路遮断装置も作動して電気回路が遮断されるようにすることで、大電流の漏電を防止できる。
【0008】
ハウジングは合成樹脂からなるものであり、外形は取り付け部位に応じて適宜決定されるものである。
ハウジングは、点火器、発射体、シリンダー、導体片、補強用フレームなどの部品を収容したり、取り付けたりすることができる形状、構造および大きさのものである。
【0009】
点火器は、公知の電気回路遮断装置で使用されている点火器のほか、自動車のエアバッグ装置で使用するガス発生器用の点火器などである。
点火器は、点火薬を備えた点火部と通電するための導電ピンを備えたものであり、作動時には、外部電源から通電することで点火薬を燃焼させ、燃焼ガスや火炎などの燃焼生成物を発生させるものである。
【0010】
棒状発射体は、点火器の作動により発生した燃焼生成物の圧力を受けて、ハウジング内を軸方向に移動し、導体片を切断して、電気回路を遮断するためのものである。
棒状発射体の先端部は、特許文献1、2の
図1の34で示される矢尻形状のものでもよいし、特許文献3の
図1のピストン6のような平坦面のものでもよい。
棒状発射体は、ハウジングと同じ合成樹脂からなるものを使用することができる。
【0011】
導体片は、公知の電気回路遮断装置で使用されているものと同じものを使用することができる。
導体片は、両端側の接続部(第1接続部と第2接続部)と中間部分の切断部からなる板片であり、電気回路に取り付けたとき、電気回路の一部を形成するためのものである。
導体片の形状は、ハウジングに対する取り付け部分の形状および構造に対応した板形状になっている。
【0012】
ハウジングを補強するための金属からなるシリンダーは、ステンレス、アルミニウムなどの金属、炭素繊維強化樹脂などの繊維強化樹脂から選ばれるものからなるものを使用することができる。
ハウジング内壁面とシリンダーの外周面は、互いに接触していることが好ましい。
シリンダーの内周面と棒状発射体の外周面は、互いに接触していてもよいが、作動時に移動し易くするため、僅かな隙間が形成されて配置されていることが好ましい。
シリンダーの幅方向の断面形状と棒状発射体の断面形状は、同じであることが好ましいが、部分的に異なっていてもよい。
【0013】
本発明の電気回路遮断装置は、シリンダーの外側のハウジング内部に補強用フレームが配置されている。
補強用フレームは、樹脂ハウジング内に埋設されていてもよいし、一部または全部が樹脂ハウジングの表面に露出されていてもよい。
本発明の電気回路遮断装置を電気自動車の電気回路を遮断するための装置として使用する場合、前記電気回路に流れる電流は、例えばガソリン車のバッテリーに流れる電流と比べると過大である。
このため、電気回路遮断装置で使用する導体片もより大きなものとなり、前記装置に必要な強度および耐久性を付与しようとすると、樹脂ハウジング部分をより大きくする必要があり、装置自体が大型化してしまう。
しかし、本発明の電気回路遮断装置は、シリンダーの外側のハウジング内部に補強用フレームが配置され、十分な強度が付与されているため、樹脂ハウジングを大きくする必要がなくなり、全体を小型化することができる。
補強用フレームは、ステンレス、アルミニウムなどの金属、炭素繊維強化樹脂などの繊維強化樹脂から選ばれるものからなるものを使用することができる。
【0014】
本発明の電気回路遮断装置は、絶縁空間とハウジングの第2端部の間に燃焼生成物の排出経路を有している。
前記燃焼生成物の排出経路は、点火器の作動により発生した燃焼ガスを含む燃焼生成物の一部を外部に排出するための排出経路である。
【0015】
本発明の装置では、点火器が作動すると発射体が軸方向に移動して、発射体の先端部が導体片の切断部に衝突して前記切断部を切断したあと、前記先端部と切断片は絶縁空間に入る。
このように切断部が切断されることで、電気的に不通となり電気回路が遮断されるが、切断されずに残った第1接続部と第2接続部の間に電位差が生じることによって、絶縁空間内にアークが発生する場合がある。
このように絶縁空間内にアークが発生すると、通電状態が維持されてしまったり、第1接続部と第2接続部や周辺部材が溶融したりするおそれもある。
しかし本発明の装置は、上記のように絶縁空間内でアークが発生した場合でも、点火器の作動により発生した燃焼生成物が排出経路を通って外部雰囲気に放出される過程において速やかに消弧されるため、上記したような問題が生じることがない。
【0016】
本発明の電気回路遮断装置は、前記補強用フレームが、厚さ方向に貫通されたガス通過孔を有する基板部と、前記基板部の長さ方向の両端側から同一方向に伸ばされた第1側板部と第2側板部を有する、平面形状がU字形状またはそれに類似する形状のものであり、
前記補強用フレームが、前記基板部が前記ハウジングの第2端部側になり、前記第1側板部の先端部と前記第2側板部の先端部が前記ハウジングの第1端部側になり、前記絶縁空間と前記シリンダーに対して間隔をおいて外側から包囲するように配置されているものであり、
前記基板部のガス通過孔が、前記燃焼生成物の排出経路の一部となっているものが好ましい。
【0017】
補強用フレームは、板状の基板部、板状の第1側板部および板状の第2側板部を有している。
基板部は、厚さ方向に貫通されたガス通過孔を有しており、前記ガス通過孔は燃焼生成物の排出経路の一部となっている。
第1側板部と第2側板部は、基板部を挟んで対向されているものであり、それらの間隔は等間隔であるものが好ましい。
補強用フレームは、平面形状がU字形状またはそれに類似する形状のものである。U字形状に類似する形状は、角部分が曲面ではなく角張った面である形状(例えば、平面形状が四角形の三辺からなる形状)、第1側板部と第2側板部の間隔が先端部に向かって徐々に広くなっているもの、または第1側板部と第2側板部の間隔が先端部に向かって徐々に狭くなっているものなどである。
【0018】
本発明の電気回路遮断装置は、前記補強用フレームが、
厚さ方向に貫通されたガス通過孔を有する基板部と、前記基板部の長さ方向の両端側から同一方向に伸ばされた第1側板部と第2側板部を有する、平面形状がU字形状またはそれに類似する形状のものであり、
前記第1側板部が、前記基板部側から先端部までの間に幅が狭くなっている第1凹部を有し、前記第2側板部が、前記基板部側から先端部までの間に幅が狭くなっている第2凹部を有しており、前記第1凹部と前記第2凹部が、それぞれ対向する位置に形成されているものであり、
前記補強用フレームが、前記基板部が前記ハウジングの第2端部側になり、前記第1側板部の先端部と前記第2側板部の先端部が前記ハウジングの第1端部側になり、前記絶縁空間と前記シリンダーに対して間隔をおいて外側から包囲するように配置され、さらに前記導体片の第1接続部と第2接続部が前記第1凹部と前記第2凹部を横切るように配置されているものであり、
前記基板部のガス通過孔が、前記燃焼生成物の排出経路の一部となっているものが好ましい。
【0019】
補強用フレームは、板状の基板部、板状の第1側板部および板状の第2側板部を有している。
基板部は、厚さ方向に貫通されたガス通過孔を有しており、前記ガス通過孔は燃焼生成物の排出経路の一部となっている。
第1側板部と第2側板部は、基板部を挟んで対向されているものであり、それらの間隔は等間隔であるものが好ましい。
補強用フレームは、平面形状がU字形状またはそれに類似する形状のものである。U字形状に類似する形状は、角部分が曲面ではなく角張った面である形状(例えば、平面形状が四角形の三辺からなる形状)、第1側板部と第2側板部の間隔が先端部に向かって徐々に広くなっているもの、または第1側板部と第2側板部の間隔が先端部に向かって徐々に狭くなっているものなどである。
【0020】
第1側板部の第1凹部は、第1側板部の一部が長方形または半楕円形(楕円形が長軸方向に半分に分割された形状)などの形状に切り取られた部分である。
第1凹部は、第1側板部の長さ方向の中間位置を含む部分に形成されていることが好ましい。
第2側板部の第2凹部は、第2側板部の一部が長方形または半楕円形(楕円形が長軸方向に半分に分割された形状)などの形状に切り取られた部分である。
第2凹部は、第2側板部の長さ方向の中間位置を含む部分に形成されていることが好ましい。
【0021】
導体片は、第1側板部と第2側板部を横切るように配置されるが、このとき導体片と第1側板部、第2側板部が接触しないようにするためには、第1側板部の幅と第2側板部の幅を狭くする必要がある。
このように第1側板部の幅と第2側板部の幅を狭くすると、補強用フレーム自体の補強効果が低下してしまう。
第1凹部を有する第1側板部と第2凹部を有する第2側板部を使用して、導体片が第1凹部と第2凹部を横切るように配置すると、導体片と第1側板部と第2側板部が接触することがなくなる上、第1側板部の第1凹部を除いた部分の幅を広くすることができ、第2側板部の第2凹部を除いた部分の幅を広くすることができるため、補強用フレーム自体の補強効果の低下も小さくできる。
【0022】
本発明の電気回路遮断装置は、前記補強用フレームが、前記第1側板部の第1凹部を除いた部分と前記第2側板部の第2凹部を除いた部分に厚さ方向に貫通された穴を有しているものが好ましい。
第1側板部の第1凹部を除いた部分と第2側板部の第2凹部を除いた部分は、いずれも幅が広くなっているため、そこに貫通穴を形成することで、補強用フレーム自体の強度を低下させることなく、軽量化することができる。
穴形状は特に制限されるものではないが、角部からクラックが入ることを防止するため、内周が曲線からなる円形、楕円形が好ましい。
【0023】
本発明の電気回路遮断装置は、前記導体片の切断部が、第1端部側の面と第2端部側の面の少なくとも一方に脆弱部を有しているものが好ましい。
導体片の切断部が脆弱部を有していると、作動時に発射体により破壊され易くなるので好ましい。
脆弱部は、溝、傷、薄肉部分などである。
【0024】
本発明の電気回路遮断装置は、前記導体片の切断部が、第1端部側の第1面に第1脆弱部を有し、第2端部側の第2面に第2脆弱部を有しているものであり、
前記第1脆弱部を有する第1面と前記第2脆弱部を有する第2面が、前記第2面の強度の方が小さくなっているものが好ましい。
【0025】
導体片の両面側に脆弱部を有していると、作動時に発射体により破壊され易くなるので好ましい。
但し、導体片の両面側に脆弱部を有していると導体片自体の強度が低下するため、第1面の第1脆弱部と第2面の第2脆弱部の強度に差を付けることで、導体片自体の強度を確保した上で、破壊されやすくすることが好ましい。
例えば、脆弱部が溝である場合は、第1脆弱部の溝深さを第2脆弱部の溝深さよりも浅くしたり、第1脆弱部の溝幅を第2脆弱部の溝幅よりも狭くしたりすることで、強度を調整することができる。