特許第6765881号(P6765881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765881
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】内燃機関用点火コイル
(51)【国際特許分類】
   F02P 15/00 20060101AFI20200928BHJP
   H01F 38/12 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   F02P15/00 303G
   H01F38/12 L
   H01F38/12 E
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-137376(P2016-137376)
(22)【出願日】2016年7月12日
(65)【公開番号】特開2018-9468(P2018-9468A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174426
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ阪神株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(72)【発明者】
【氏名】柳井 崇明
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−179654(JP,A)
【文献】 実開平03−053755(JP,U)
【文献】 特開2005−209540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 1/00− 3/12、 7/00−17/12
H01F 30/00−38/12、38/16
H01R 4/24− 4/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイルに通電された電流を遮断することで、二次コイルに高電圧を発生させ、前記一次コイルの通電時に前記二次コイルに発生するON電圧を抑制するダイオードを前記二次コイルの低圧側に備えた内燃機関用点火コイルにおいて、
第一コイル巻回部と、この第一コイル巻回部と連結されたストッパ鍔部とを有し、一次巻線が前記第一コイル巻回部に巻回された一次ボビンと、
端部に鍔部が設けられた第二コイル巻回部を有し、二次巻線が前記第二コイル巻回部に巻回された二次ボビンと、
前記一次ボビンの前記ストッパ鍔部に設けられ、給電系から前記一次コイルへの電気的接続を確保させるための一次端末板と、
前記二次ボビンの前記鍔部の側部に設けられた収納部と、を備え、
前記一次端末板は、前記ダイオードのカソードと接続するための一対の接続部を備え、
前記一対の接続部の対向する内面には、前記収納部側に向けて開口し、前記ダイオードのカソード側リードを圧入保持できる間隙部を備え、
前記収納部は、内部に、一対の接続腕部当接面と、この一対の接続腕部当接面の間に設けられ、前記カソード側リードを支持するリード当接体とを有し、
前記カソード側リードが、前記リード当接体に支持された状態で、前記間隙部に挿入された際に、前記一対の接続腕部の先端が互いに離れる方向に徐々に広がり、前記一対の接続の外面が、前記一対の接続腕部当接面に押し当たることによって、前記一対の接続部の広がりが抑制され、前記間隙部の幅が前記カソード側リードの径以下となる位置まで、前記一対の接続腕部が前記収納部に内挿される、
ことを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項2】
前記収納部は、内部に、前記接続部が挿入される端部から内奥へ向けて徐々に互いに狭くなる一対のテーパ面と、前記テーパ面に連なった前記一対の接続部当接面とを備え、
前記接続外面が前記接続部当接面に押し当たることにより、前記接続部の進行を止めて、前記接続部の先端部が、前記収納部の奥壁に接触せず、前記接続部の先端部と前記奥壁との間に空洞が形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項3】
前記間隙部は、その挿入端側から基端側に向けて徐々に狭くなり、再び、間隙が広がる拡大間隙部を備え、前記拡大間隙部によって、前記接続部が拡開し易くなり、前記間隙部に内挿された前記カソード側リードが挟み潰されない
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関用点火コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(例えば、自動車やバイクのガソリンエンジン等)の点火プラグに火花放電を発生させるための内燃機関用点火コイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、一次コイルに一次電流を通電した後、所定の点火時期に一次電流を遮断することで、二次コイルに高い放電電圧を生成し、二次コイルに接続された点火プラグの電極間に火花放電を生じさせるように構成された内燃機関用点火コイルが存在する。
【0003】
しかしながら、このような内燃機関用点火コイルは、一種の変圧器であるので、一次電流の通電を開始した瞬間にも二次コイルに比較的高い二次電圧、即ち、ON電圧が発生するため、本来の点火時期よりも前に点火プラグに点火して異常燃焼を発生させる問題がある。
【0004】
そこで、このような問題を解消させるため、ダイオードを用いた内燃機関用点火コイルが存在する。その一例として、二次コイルと電源間にダイオードを設けた構造につき、図6を用いて以下に説明する。
【0005】
図6に示すように、内燃機関用点火装置は、主として、内燃機関用点火コイル1、直流の電源2、点火信号出力機能を有する点火信号出力回路やECU(図示省略)、点火プラグ3及びパワースイッチ4から構成されている。
【0006】
内燃機関用点火コイル1は、一次コイル11、二次コイル12及びON電圧抑止用のダイオード13を備え、一次コイル11における一次巻線の一方端である受電側は、給電系5を介して上記電源2と接続され、一次コイル11における一次巻線の他方端である接地側は、上記パワースイッチ4を介して接地される。上記給電系5とは、車載バッテリ等の電源2から内燃機関用点火コイル1へ直流を供給する電源経路を包括的に指すもので、例えば、着脱可能なコネクタを備えるワイヤーハーネスを用いて電源2と内燃機関用点火コイル1のコネクタを接続する。内燃機関用点火コイル1内では、一次端末板(後述)を介してコネクタ部と一次巻線とを導通させる。
【0007】
IGBT等のパワースイッチング素子で構成されたパワースイッチ4には、点火信号出力回路等から供給される点火信号(例えば、図6中に示すクロック波形)が入力されており、点火サイクルの適宜なタイミングでパワースイッチ4がオン・オフすることで、一次コイル11への通電・遮断が行われる。この一次コイル11と鉄心14を介して相互誘導可能に配置される二次コイル12における二次巻線の一方端(高圧側)は、点火プラグ3と接続され、二次コイル12における二次巻線の他方端(低圧側)は、ダイオード13のアノード側に接続される。
【0008】
また、ダイオード13のカソード側は、給電系5を介して電源2と接続することで、二次コイル12の高圧側から給電系5に向って順方向となる通電経路が形成される。
【0009】
このような二次コイル12と電源2との間にダイオード13を設けた構造とすれば、ダイオード13の整流作用により、一次コイル11への通電開始時に二次コイル12に誘起される高電圧が点火プラグ3に印加されるのを防ぎ、一次コイル11の通電終了時に二次コイル12に誘起される高電圧を点火プラグ3に印加させ、点火サイクルの適切なタイミングで点火プラグ3に放電火花を発生させることができる。
【0010】
しかし、一次コイル11と二次コイル12は別体として形成され、これらを組み付けて内燃機関用点火コイル1とするものであるから、一次コイル11に設けられている一次端末板(一次巻線の一端と接続され、コネクタ部と導通する導電性板材)と、二次コイル12に設けられているダイオード13のカソードを接続しなければならないため、内燃機関用点火コイル1の組み立て作業が繁雑となる。そこで、一次コイル11と二次コイル12とを適正に組み付けるだけで、二次コイル12に設けたダイオード13を給電系5と簡易に接続できる内燃機関用点火コイルが提案されている(例えば、特許文献1)。以下にその構造について説明する。
【0011】
二次巻線が巻回された二次コイルに設けたダイオード収容部にダイオード本体を収容する一対の立壁片を立設する。その一対の立壁片の間にダイオード本体を収容させる。そして、各立壁片の外側方には、ダイオードの一方のリードを遊動可能に保持させる第1端子挿入部、及びダイオードの他方のリードを止着する第2端子挿入部を突設し、第1端子挿入部の遊嵌部、及び第2端子挿入部の保持部に各リードをそれぞれ保持させる。
【0012】
第2端子挿入部の保持部に保持されたリード(アノード側)は、遊動不能であるが、第1端子挿入部の遊嵌部に保持されたリード(カソード側)は、遊嵌部内で遊動可能となる。そのため、一次コイルと二次コイルを組み付ける際に、第1端子挿入部の遊嵌部に保持されたリードの位置と一次コイルに設けた一次端末板の圧入接続溝との位置が多少ずれていても、遊動可能な範囲でリードが移動するので、そのリードを圧入接続溝へ容易に嵌入させることができ、ダイオードのカソード側リードが一次端末板の接続溝に接続することとなる。
【0013】
その後、二次コイルの中空筒部へ一次巻線が巻回された一次コイルを内挿すると共に、圧入接続溝にカソード側リードを押し当て、その状態で、絶縁ケース内に収容され、そのケース内に樹脂を注入する(特許文献1の図4及び図8参照)。
【0014】
以上のような構造とした特許文献1に記載の内燃機関用点火コイルにおいては、一次コイルと二次コイルとを適正に組み付けるだけで、二次コイルに保持されたダイオードのカソード側が一次端末板を介して電源と接続されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第4608308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1に記載の内燃機関用点火コイルでは、二次コイルに設けた第1端子挿入部の遊嵌部、及び第2端子挿入部の保持部でダイオードの各リードをそれぞれ保持させ、第1端子挿入部の遊嵌部に保持された状態のリードに対して、一次端末板の圧入接続溝を押し当てたにすぎない。
【0017】
このため、一次端末板の圧入接続溝が押し当たる側のリードは、第1端子挿入部の遊嵌部内を遊動可能であり、圧入接続溝とリードを接触させた状態に保持する構造は必ずしも強固なものとならない。したがって、外部からの衝撃や熱応力の影響などで、第1端子挿入部におけるリードの保持状態が微妙に変化すると、一次端末板の圧入接続溝からリードが離れて導通不良となる虞がある。かといって、第2端子挿入部と同様の保持部を第1端子挿入部にも設け、ダイオードの両リードを遊動不能に固定すると、一次端末板の圧入接続溝の位置に応じてダイオードのリードが移動しなくなるために、位置合わせがシビアとなり、組立時の作業性を悪くしてしまう虞もある。
【0018】
そこで、本発明は、従来の内燃機関用点火コイルにおける前述した課題を解決するためになされたものであり、一次コイルと二次コイルとを適正に組み付けるだけで、ダイオードのカソード側リードと一次端末板との導通状態を好適に保持できる内燃機関用点火コイルの提供を目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、一次コイルに通電された電流を遮断することで、二次コイルに高電圧を発生させ、前記一次コイルの通電時に前記二次コイルに発生するON電圧を抑制するダイオードを前記二次コイルの低圧側に備えた内燃機関用点火コイルにおいて、給電系から前記一次コイルへの電気的接続を確保させるための一次端末板と、一次巻線が巻回された一次ボビンと、二次巻線が巻回された二次ボビンとを備え、前記一次端末板は、前記ダイオードのカソードと接続するための一対の接続部を備え、前記一対の接続部の対向する内面には、前記ダイオードのカソード側リードを圧入保持できる間隙部を備え、前記二次ボビンは、前記間隙部に前記カソード側リードを挿入した際に、前記一対の接続部の外面である接続部外面が接触することによって前記接続部の広がりを抑える収納部を備えたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記収納部の内部には、前記カソード側リードを支持するリード当接体が形成され、前記リード当接体が前記カソード側リードに支持された状態で、前記間隙部の幅が前記カソード側リードの径以下となる位置まで、前記接続部を前記収納部に内挿し、前記接続部が徐々に拡開されることにより、前記カソード側リードが保持される構造であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、前記収納部は、内部に、前記接続部が挿入される端部から内奥へ向けて徐々に互いに狭くなる一対のテーパ面と、前記テーパ面に連なって前記接続部外面が押し当たる一対の接続部当接面とを備え、前記接続部外面が前記接続部当接面に押し当たることにより、前記接続部の進行を止めて、前記接続部の先端部が、前記収納部の奥壁に接触せず、前記接続部の先端部と前記奥壁との間に空洞が形成されることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前記間隙部は、その挿入端側から基端側に向けて徐々に狭くなり、再び、間隙が広がる拡大間隙部を備え、前記拡大間隙部によって、前記接続部が拡開し易くなり、前記間隙部に内挿された前記カソード側リードが挟み潰されないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の内燃機関用点火コイルは、一次コイルに設けた一次端末板における一対の接続部の間にダイオードのリードを圧入保持させて、二次コイルに設けた収納部が接続部間の広がりを抑える構造となっている。そのため、本発明は、一次コイルと二次コイルとを適正に組み付けるだけで、ダイオードのカソード側リードと一次端末板との導通状態を好適に保持できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(a)は、本発明の実施形態に係る内燃機関用点火コイルの組立状況を示す斜視図、(b)は、内燃機関用点火コイルが完成した状態を示す斜視図である。
図2】(a)は、本発明の実施形態に係る内燃機関用点火コイルにおける一次コイルを示す斜視図、(b)は、一次コイルに設けた一次端末板におけるリード接続体を示す拡大図である。
図3】本発明の実施形態に係る内燃機関用点火コイルにおける二次コイルを示す斜視図である。
図4図3に示すA−A間の拡大断面図である。
図5】一次コイルにおけるリード接続体の接続部がダイオードのリードを圧入保持する過程を示す説明図である。
図6】従来における内燃機関用点火コイルを含む点火装置の概略構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る内燃機関用点火コイルの実施形態について、図1から5に基づいて説明する。なお、図1(a)は、内燃機関用点火コイルの組立状況を示す斜視図、(b)は、内燃機関用点火コイルが完成した状態を示す斜視図、図2(a)は、内燃機関用点火コイルにおける一次コイルを示す斜視図、(b)は、一次コイルに設けた一次端末板におけるリード接続体を示す拡大図、図3は、内燃機関用点火コイルにおける二次コイルを示す斜視図、図4は、二次コイルにおける収納部の断面図、図5は、接続部がダイオードのリードを圧入保持する状態を示す説明図である。
【0026】
まず、本発明に係る実施形態の内燃機関用点火コイル(以下、「点火コイル」という)10の概略構造について説明する。
【0027】
図1(a)に示すように、本発明の点火コイル10は、主として、一次ボビン21におけるコイル巻回部211の外面へ一次巻線22を巻回してなる一次コイル20、二次ボビン31におけるコイル巻回部311の外面へ二次巻線32を巻回してなる二次コイル30、二次コイル30に誘導される高電圧が点火プラグへ印加されるのを阻止するダイオード40、及び一次コイル20の鉄心挿通孔20aに挿通される鉄心(図示省略)から構成される。
【0028】
図1(b)に示すように、一次コイル20の一次ボビン21は、コイル巻回部211の一方から二次コイル30の一次コイル導入空部30a内に挿入できるが、コイル巻回部211の他方には一次コイル導入空部30aを通過できない任意形状のストッパ鍔212を設けてあるので、一次コイル20が一次コイル導入空部30aから抜け出すことを防止できる。そのため、図示を省略した適宜な係脱機構によって、一次コイル20と二次コイル30は適正な組み付け状態に保持される。また、このストッパ鍔212には、一次巻線22の一方端が接続される導電性の一次端末板50を所要位置に固定できる機能を有している。この一次端末板50は、組み付けた状態の一次コイル20および二次コイル30をケース内適所へ収納すると、コネクタの端子と導通するので、ワイヤーハーネス等の給電系により車載バッテリから一次コイル20への直流給電が可能となる。なお、一次端末板50にコネクタ端子を形成しておいて、給電系と直接導通するようにしても良い。
【0029】
図2(a)に示すように、一次端末板50は、所要形状の導電性板材を屈曲加工して形成したもので、接続本体板51には、一次巻線接続部やコネクタ端子接続部等が設けられる。また、一次端末板50の適所には、リード接続体52を形成し、一次コイル20と二次コイル30とを組み付けた際に、リード接続体52がダイオード40のリードと接続され、一次端末板50を介してダイオード40のカソード側リードを給電系と導通させる。このため、リード接続体52は、一次コイル20を一次コイル導入空部30a内へ挿入する方向(図1(a)中の矢印参照)に突出する部分を備え、その突出部分の先端側には、ダイオード40のリードの周面へ両側からそれぞれ当接し得る一対の接続腕部、すなわち、第1接続腕部521と第2接続腕部522を対向状に設ける。
【0030】
図2(b)に示すように、これら第1接続腕部521と第2接続腕部522の先端側は、ダイオード40のリード径よりも大きく離隔しているが、基端側へ向かうに従って徐々に第1接続腕部521と第2接続腕部522の離隔距離が狭くなる。ある位置でその離隔距離はダイオード40のリード径と等しくなり、更に基端側へ向って第1接続腕部521と第2接続腕部522との離隔距離がダイオード40のリード径よりも狭くなってゆく。そして、更に基端側に向かうと、離隔距離は再びダイオード40のリード径よりも広くなる。
【0031】
すなわち、リード接続体52の第1,第2接続腕部521,522は、所定の位置まで握り鋏の刃が開いた状態に類似した形状となっている。そして、第1接続腕部521と第2接続腕部522の対向する内面に形成される間隙部は、第1,第2接続腕部521,522の先端側がダイオード40のリード径より広く、第1,第2接続腕部521,522の基端側がダイオード40のリード径より徐々に狭くなる狭窄間隙部52aと、この狭窄間隙部52aと連続するが、再び、ダイオード40のリード径より間隙が広がる拡大間隙部52bとからなる。この拡大間隙部52bを設けることによって、第1,第2接続腕部521,522の基端側には幅の狭い部分ができ、比較的弱い力でも撓んで拡開し易くなり、狭窄間隙部52aに内挿されたカソード側リードが挟み潰されないこととなる。
【0032】
一方、図3に示すように、二次コイル30の二次ボビン31は、二次巻線32を巻回するコイル巻回部311の両端に第1端部鍔312と第2端部鍔313を設け、その間に二次巻線32を巻回してゆく。なお、コイル巻回部311の外面には、多層に整列巻きする二次巻線32を適宜間隔で区画するガイド鍔部311a〜311eを設けてある。
【0033】
この二次コイル30の一次コイル導入空部30aには、第1端部鍔312側から一次コイル20を挿入するものとし、上述した一次コイル20のストッパ鍔212に取り付けた一次端末板50のリード接続体52が臨む第1端部鍔312の適所へ、ダイオード40を保持させる非導電性の収納保持手段60を設けておく。
【0034】
なお、収納保持手段60は、二次ボビン31とは別体として構成し、第1端部鍔312へ取り付けるようにしても良いし、二次ボビン31と収納保持手段60を一体成型するようにしても良い。本実施形態では、二次ボビン31における第1端部鍔312の外面(一次コイル20の一次端末板50に臨む面)を保持手段形成面312aとして、保持手段形成面312aの適所に収納保持手段60を一体に設けた。
【0035】
収納保持手段60に保持されるダイオード40は、アノードとカソードが設けられた円柱状のダイオード本体41と、その両端から軸方向へ延びる一対の接続線(カソード側リード42およびアノード側リード43)で構成されている。そして、収納保持手段60は、ダイオード40におけるダイオード本体41を収容できる本体収容空部61、この本体収容空部61にダイオード本体41が収容された状態で一方に延出するカソード側リード42と一対の接続腕部521,522を収納させる収納部62、及び本体収容空部61にダイオード本体41が収容された状態で他方に延出するアノード側リード43を保持させる保持部63を備えている。
【0036】
ダイオード40のアノード側リード43を保持する保持部63は、保持手段形成面312aから突出する適宜な厚さの板状体にリード保持溝63aを設けたものである。リード保持溝63aは、保持部63の突出端より保持手段形成面312aに向って適宜な深さまで形成されており、例えば、ダイオード40のアノード側リード43をリード保持溝63aの最奥部まで押し入れたときに、ダイオード本体41が保持手段形成面312aに押し当たることなく、本体収容空部61に収まるように調整してある。
【0037】
また、リード保持溝63aの溝幅は、アノード側リード43の径よりも大きくなるようにしても良いが、アノード側リード43の径よりも若干狭くなる程度(アノード側リード43や保持部63が破損しないように圧入できる程度)としておけば、保持部63のリード保持溝63aに押し入れたアノード側リード43が抜け落ちることを防止できるので、その後の作業性が良くなる。
【0038】
一方、収納保持手段60の収納部62は、保持手段形成面312aから突出する四側壁状の突出体で、収納保持手段60に保持されたダイオード40のカソード側リード42が跨がるように配置された一対の側壁は、第1リード保持体621と第2リード保持体622であり、他の一対の側壁は、第1誘導保持体623と第2誘導保持体624である。
【0039】
第1リード保持体621と第2リード保持体622には、上述した保持部63のリード保持溝63aと同様の第1リード保持溝621aと第2リード保持溝622aをそれぞれ設け、ダイオード40のカソード側リード42を保持する。第1誘導保持体623は、リード接続体52の第1接続腕部521を内奥へ誘導すると共に第1接続腕部521が容易に抜けないように保持するものである。第2誘導保持体624は、リード接続体52の第2接続腕部522を内奥へ誘導すると共に第2接続腕部522が容易に抜けないように保持するものである。
【0040】
なお、第1,第2リード保持体621,622と第1,第2誘導保持体623,624は別々の壁体として設けても良いが、各壁体が一体に連なる四側壁構造としておけば、収納部62自体の強度が増し、後に詳述するダイオード導通保持構造としての機能を高めることができる。
【0041】
上記のように構成した収納保持手段60を備える二次コイル30の一次コイル導入空部30aへ、上記のように構成した一次端末板50を備える一次コイル20を内挿して、一体に組み付ける。このときに、一次コイル20側のリード接続体52が二次コイル30側の収納部62へ導かれ、第1,第2接続腕部521,522間の狭窄間隙部52aにダイオード40のカソード側リード42が挿入される。
【0042】
更に第1,第2接続腕部521,522を内奥へ進めると、第1,第2接続腕部521,522がカソード側リード42を挟み込むようにダイオード40と接続するので、一次端子板50を介してダイオード40と給電系との導通を実現できる。また、第1,第2接続腕部521,522は、収納部62内でダイオード40のカソード側リード42に接続すると共に、第1,第2誘導保持体623,624に押し当たり、その接触抵抗により第1,第2接続腕部521,522が収納部62から抜けにくくなり、第1,第2接続腕部521,522がカソード側リード42に接続した状態(ダイオード40と一次端子板50との導通状態)が良好に保持される。
【0043】
次に、一次コイル20に取り付ける一次端末板50、及び二次コイル30に設ける収納保持手段60の構成について、更に詳細に説明する。
【0044】
一次コイル20のストッパ鍔212に取り付けられる一次端末板50は、一次巻線22の一端とコネクタ端子等が接続される接続本体板51と、二次コイル30側に保持されたダイオード40のカソード側リード42と接続するためのリード接続体52とを備える。リード接続体52は、所要形状の導電本体部523を備え、この導電本体部523を介して接続本体板51と第1,第2接続腕部521,522を連結することで、二次コイル30の収納部62に対応する位置へ第1,第2接続腕部521,522を保持することができる。
【0045】
この導電本体部523は、接続本体板51の適所より第1方向(収納保持手段60に保持されたダイオード40のリードが延出する方向)へ突出する第1導電部5231と、この第1導電部5231の突出端より直交する第2方向(第1,第2接続腕部521,522が対向配置される方向)へ屈曲して延びる第2導電部5232と、この第2導電部5232の突出端より第3方向(一次コイル20を二次コイル30へ組み付ける方向)へ屈曲して延びる第3導電部5233を備える。
【0046】
リード接続体52は、その先端側がカソード側リード42の径以上、その基端側がカソード側リード42の径以下となり、再び、カソード側リード42の径以上となる間隙部(狭窄間隙部52aと拡大間隙部52b)を介して対向する一対の接続部、即ち、第1接続部521及び第2接続部522を導電体本部523の挿入端側に備える。
【0047】
第1,第2接続腕部521,522は、その内面にカソード側リード42が接触するリード接触縁部521a,522a、及びその外面に二次コイル30に設けた収納部62における接続部当接面623b,624bと当接する接続部外面521b,522bを有している。このように、接続部当接面623b,624bと接続部外面521b,522bが当接することにより、第1,第2接続腕部521,522が拡開できる範囲を制限し、狭窄間隙部52aの広がりを抑える。
【0048】
第1,第2接続腕部521,522の基端側では、その挿入端側から基端側に向けて徐々に狭くなり、再び、間隙が広がる略円形状の拡大間隙部52bを設けており、導電本体部523の第3導電部5233と第1,第2接続腕部521,522との連結部分の幅が狭くなるようにする。すなわち、第1接続腕部521は、第1接続腕部521の基端部に形成される第1狭幅部521cを介して第3導電部5233と連結され、第2接続腕部522は、第2接続腕部522の基端部に形成される第2狭幅部522cを介して第3導電部5233と連結される。そのため、第1,第2接続腕部521,522は、第1,第2狹幅部521c,522cによって、比較的弱い力でも撓んで拡開し易くなり、狭窄間隙部52aに内挿されるカソード側リード42が挟み潰されない構成となっている。
【0049】
なお、拡大間隙部52bの形状は略円形に限定されるものではなく、第1,第2接続腕部521,522と第3導電部5233との連結強度が著しく低下しない第1,第2狹幅部521c,522cを形成できる形状であれば、どのような形状であっても良い。
【0050】
以上のように、リード接続体52は、その先端側に一対の接続部、その基端側に導電本体部によって構成されている。そして、第1,第2接続腕部521,522の対向する内面に形成された間隙部がカソード側リード42を圧入保持する役目を果たしている。
【0051】
図4に示すように、誘導保持体623,624の内面側は、リード接続体52が挿入される入口である端部62aから奥壁である保持手段形成面312aへ向けて徐々に互いに近づき、第1,第2接続部521,522を奥へ誘導させる誘導テーパ面623a,624a、及びその誘導テーパ面に連なって各接続部における接続部外面521b,522bが押し当たる一対の接続部当接面623b,624bで構成されている。
【0052】
第1誘導保持体623と第2誘導保持体624との間には、保持手段形成面312aから突出するリード当接体625を設ける。リード当接体625は、カソード側リード42を支持するリード支持面625a、そのリード支持面625aから奥壁に向かって直角方向に延びるリード当接体壁面625b、及びそのリード当接体壁面625bに連なって、奥壁に向かって徐々に広がるリード当接体テーパ面625cで構成されている。このようにリード当接体625は、テーパ形状となっているので、リード支持面625aに対し強い力が加わったとしても、強度が確保されており、折れや破損等を防ぐ構造となっている。
【0053】
第1誘導保持体623とリード当接体625との間には第1接続部導入空部62b1が、第2誘導保持体624とリード当接体625との間には第2接続腕部導入空部62b2がそれぞれ形成される。
【0054】
第1接続腕部導入空部62b1は第1接続部521を招じ入れるのに十分な広がりと奥行を備え、第2接続腕部導入空部62b2は第2接続部522を招じ入れるのに十分な広がりと奥行を備える。また、リード当接体625の突出端は、第1リード保持体621の第1リード保持溝621a最凹部と第2リード保持体622の第2リード保持溝622a最凹部とに跨がる平坦なリード支持面625aとし、カソード側リード42はリード支持面625a上にて支持される。
【0055】
前述のように各誘導保持体623,624には、誘導テーパ面623a,624aによって傾斜が形成されている。そのため、一次コイル20に設けた一次端末板50における第1,第2接続腕部521,522の位置と収納部62の位置がずれても、誘導テーパ面623a,624aのテーパ部分が誘導するので、各接続部521,522を容易に収納部62の内奥へ導くことができる。そして、接続部外面521b,522bが接続部当接面623b,624bに押し当たることにより、各接続部の進行を止めて、その先端部が、保持手段形成面312aに接触せず、各接続部の先端部と保持手段形成面312aとの間に空洞が形成される。
【0056】
次に、収納部62の内部に第1,第2接続腕部521,522を内挿させて、カソード側リード42を保持させる構造について詳細に説明する。
【0057】
まず、二次コイル30における収納保持手段60によって、ダイオード40を保持させる。そして、一次コイル20の一次ボビンを二次コイル30における一次コイル導入空部30a内に挿入する。そうすると、図5(a)に示すように、リード接続体52の第1,第2接続腕部521,522が、収納部62の第1,第2接続部導入空部62b1,62b2に徐々に内挿される。
【0058】
この時、図5(b)に示すように、狭窄間隙部52aの幅がリードの径と同一の位置で、第1,第2接続腕部521,522がカソード側リード42に押し当たる。そして、更に強い力で第1,第2接続腕部521,522を第1,第2接続腕部導入空部62b1,62b2の奥へ押し込んだ場合、カソード側リード42はリード当接体625のリード支持面625aに支持されているので、カソード側リード42が奥側へ逃げるように変形することはなく、第1,第2接続腕部521,522によって挟み込まれ、良好な接触状態となる。
【0059】
なお、第1,第2接続腕部521,522を必要以上に第1,第2接続腕部導入空部62b1,62b2の奥へ押し込んでゆくと、第1,第2接続腕部521,522がカソード側リード42を強く噛み込んで、カソード側リード42を傷つけたり破断させたりする虞がある。逆に、リード接続体52の方に負担が掛かって、第1,第2リード接続腕部521,522の基端側にクラックが生じたり折れたりする危険性もある。
【0060】
そこで、リード接続体52には、上述した拡大間隙部52bを設けることで、第1,第2狹幅部521c,522cを形成し、第1接続腕部521と第2接続腕部522は互いに離隔する方向(狭窄間隙部52aを拡開する方向)へ撓みやすくなり、カソード側リード42を傷つけたり破断させたりするほど強く噛み込むこと、つまり、挟み潰されることを抑制し、第1,第2リード接続腕部521,522の基端側にクラックが生じたり折れたりすることも防止する。
【0061】
その結果、図5(c)に示すように、第1,第2接続腕部521,522の基端側に、すなわち、拡大間隙部52bの幅がカソード側リード42の径以下となる位置までカソード側リード42を内挿すればするほど、そのリードを起点に第1,第2接続腕部521,522が外側へ徐々に拡開することになる。
【0062】
そうすると、接続部外面521b,522bが接続部当接面623b,624bに押し当たり、第1,第2接続腕部521,522の進行を止めて、その先端部が収納部62の奥壁である保持手段形成面312aに接触せず、その先端部と保持手段形成面312aとの間に空洞が形成される。
【0063】
このため、その接続部当接面が接続部間(拡大間隙部52b)の広がりを強固に抑えると共に、その押し当たりの接触抵抗により、第1,第2接続腕部521,522が収納部62から抜け出すことを防止する、すなわち、カソード側リード42との接続状態を保持することとなる。よって、ダイオード40のカソード側リード42が外部からの衝撃等で、第1,第2接続腕部521,522から容易に外れることはなく、両者の導通状態を好適に保持できることとなる。
【0064】
このように、第1,第2接続腕部521,522を収納部62に内挿するだけで、ダイオード40のカソード側リードと一次端末板50との導通状態を好適に保持できる。
【0065】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 内燃機関用点火コイル
20 一次コイル
21 一次ボビン
22 一次巻線
30 二次コイル
30a 一次コイル導入空部
31 二次ボビン
32 二次巻線
40 ダイオード
41 ダイオード本体
42 カソード側リード
43 アノード側リード
50 一次端末板
521 第1接続
522 第2接続
523 導電本体部
60 収納保持手段
61 本体収容空部
62 収納部
63 保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6