特許第6765887号(P6765887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765887
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/08 20120101AFI20200928BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20200928BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20200928BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   B24B37/08
   B24B49/12
   H01L21/304 622S
   G01B11/24 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-143436(P2016-143436)
(22)【出願日】2016年7月21日
(65)【公開番号】特開2018-12166(P2018-12166A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107745
【氏名又は名称】スピードファム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前原 英信
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕介
(72)【発明者】
【氏名】吉原 秀明
(72)【発明者】
【氏名】山浦 徹
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−146751(JP,A)
【文献】 特開2006−082169(JP,A)
【文献】 特開2004−047876(JP,A)
【文献】 特開2001−060572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 − 37/34
H01L 21/304
B24B 49/12
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な定盤を有する研磨機によりワークを研磨する研磨装置であって、
研磨加工中の前記ワークの径方向の断面形状の傾向に基づいて分類された類型である判断形状と、前記ワークの最大計測厚さと最小計測厚さとの差であるP−V値と、を測定する形状測定装置と、
該形状測定装置が測定したワークの前記判断形状及びP−V値に基づいて、該判断形状及びP−V値目標判断形状及び目標P−V値となるように研磨加工を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記形状測定装置が測定したワークの前記判断形状及びP−V値が前記目標判断形状及び目標P−V値に到達していない場合は、前記ワークの前記判断形状及びP−V値に応じて、前記目標判断形状及び目標P−V値にするための適正な加工条件を示すレシピを変更し、変更したレシピの加工条件に基づいて研磨加工を繰り返し制御し、
前記形状測定装置が測定したワークの前記判断形状及びP−V値が前記目標判断形状及び目標P−V値に到達した場合であって、前記ワークの厚さが目標厚さの上限以下でないときには、前記レシピを変更せずに研磨加工を繰り返し制御し、
前記形状測定装置が測定したワークの前記判断形状及びP−V値が前記目標判断形状及び目標P−V値に到達した場合であって、前記ワークの厚さが目標厚さの上限以下のときには、前記レシピを変更せずに研磨加工の次加工動作を制御する
ことを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記形状測定装置が測定したワークの前記判断形状及びP−V値が前記目標判断形状及び目標P−V値に到達していない場合であって、前記ワークの厚さが目標厚さの下限以下でないときには、変更したレシピの加工条件に基づいて研磨加工を制御し、前記ワークの厚さが前記目標厚さの下限以下のときには、研磨加工の制御を終了する
ことを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記レシピが記憶された記憶部を備え、
前記制御装置は、変更したレシピの加工条件に基づいて研磨加工を制御する際、前記形状測定装置が測定したワークの前記判断形状及びP−V値に応じて、前記記憶部からレシピを読み出すとともに、この読み出したレシピの加工条件に基づいて研磨加工を制御する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記形状測定装置は、前記定盤に設けられた計測孔を介して前記ワークに向けて測定光が照射されるとともに該ワークで反射した反射光を受光する光学ヘッドと、
該光学ヘッドの反射光の受光に基づいて前記ワークの計測厚さを求める厚さ演算装置と、
前記ワークの計測厚さが求められた面内位置を求める位置演算装置と、
前記厚さ演算装置が求めた前記ワークの計測厚さと前記位置演算装置が求めた面内位置とに基づいて、前記ワークの前記判断形状及びP−V値を求める演算装置とを有する
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばシリコンウエーハなどのワークの表面を研磨する研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ウエーハを保持したキャリアプレートを自転及び公転をさせてウエーハの両面を研磨する両面研磨装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
係る両面研磨装置は、研磨加工中のウエーハの厚みが計測可能な厚み計測器と、計測用の貫通した穴を有する上定盤と、下定盤と、サンギアと、インターナルギアと、キャリアプレートなどを備え、上定盤と下定盤とでキャリアプレートを挟み込むとともにこのキャリアプレートをサンギア及びインターナルギアに噛合させ、このサンギア及びインターナルギアを回転させることによってキャリアプレートを自転及び公転させていき、さらに上定盤及び下定盤を回転させていくことにより、キャリアプレートに保持されたウエーハの両面を研磨していくものである。
【0004】
また、この両面研磨装置は、キャリアプレートを自転のみさせながらウエーハの両面を研磨する研磨工程を有し、この研磨工程中にウエーハの所定の位置における厚みを計測する計測工程と、この計測工程の計測結果に基づいて研磨終了時期を判断する判定工程とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−47656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような研磨装置にあっては、研磨工程中にウエーハの所定の位置における厚みを計測して研磨終了時期を判断するだけであるから、研磨加工中のウエーハの断面形状に応じて、目標とする断面形状となるようにウエーハを研磨していくことができないという問題がある。
【0007】
研磨加工においては、ウエーハを所望の厚さに仕上げるだけではなく、目標とする所望の断面形状に仕上げることも求められている。ウエーハの断面形状はSFQRやGBIR等の指標で評価されるが、これらの指標による条件を満たした所望の断面形状を有するウエーハを得ることにより、その後の半導体デバイス製造工程で製造される半導体デバイスの歩留まりを向上させることができる。
しかしながら、ウエーハの厚さを計測するだけではウエーハの断面形状が所望の断面形状に加工されたか否かを判断することができない。そこで、所望の断面形状を有するウエーハを得るため、研磨加工中にウエーハの断面形状を測定し、測定されたウエーハの断面形状に応じて所望の断面形状となるように加工条件を設定し、ウエーハを研磨加工していくことができる研磨装置が求められていた。
【0008】
また、ウエーハの断面形状は、上定盤、下定盤、サンギア及びインターナルギアの回転速度、加工荷重、研磨スラリーの供給量や温度等の任意に設定可能な加工条件と、上定盤及び下定盤等の加工面の状態(温度変化や摩耗による形状変化)、研磨スラリーの実温度、ウエーハの自転状態等の研磨進行に伴い随時変動する加工状態とによって変化する。このため、同一の加工条件でウエーハを研磨加工したとしても、加工状態が同一になるとは限らない。つまり、同一の加工条件でウエーハを研磨加工したとしても加工状態は変動するため、所望の断面形状を有するウエーハを定常的に得ることができない。そのため、研磨加工中にウエーハの断面形状を測定し、所望の断面形状でないときは加工条件を変更する必要がある。
【0009】
そこで、所望の断面形状を有するウエーハを得るため、研磨加工中にウエーハの断面形状を測定し、測定されたウエーハの断面形状に応じて所望の断面形状となるように加工条件を設定しウエーハを研磨していくことができる研磨装置が求められていた。
【0010】
この発明の目的は、研磨加工中にウエーハの断面形状を測定し、測定されたウエーハの断面形状に応じて、目標とする断面形状となるようにウエーハを研磨加工していくことができる研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、回転可能な定盤を有する研磨機によりワークを研磨する研磨装置であって、研磨加工中の前記ワークの径方向の断面形状の傾向に基づいて分類された類型である判断形状と、前記ワークの最大計測厚さと最小計測厚さとの差であるP−V値と、を測定する形状測定装置と、該形状測定装置が測定したワークの前記判断形状及びP−V値に基づいて、該判断形状及びP−V値目標判断形状及び目標P−V値となるように研磨加工を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、形状測定装置が測定したワークの前記判断形状及びP−V値前記目標判断形状及び目標P−V値に到達していない場合は、ワークの前記判断形状及びP−V値に応じて、前記目標判断形状及び目標P−V値にするための適正な加工条件を示すレシピを変更し、変更したレシピの加工条件に基づいて研磨加工を繰り返し制御し、形状測定装置が測定したワークの前記判断形状及びP−V値前記目標判断形状及び目標P−V値に到達した場合であって、前記ワークの厚さが目標厚さの上限以下でないときには、レシピを変更せずに研磨加工を繰り返し制御し、前記形状測定装置が測定したワークの前記判断形状及びP−V値が前記目標判断形状及び目標P−V値に到達した場合であって、前記ワークの厚さが目標厚さの上限以下のときには、前記レシピを変更せずに研磨加工の次加工動作を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、研磨加工中にワークの断面形状を測定し、測定されたワークの断面形状に応じて、目標とする断面形状となるようにワークを研磨していくことができる。そのため、ワークの断面形状が目標とする断面形状に加工されているか否かを把握しながら研磨加工を進めることができ、目標とする断面形状でないときは加工条件を研磨加工中に変更することができる。これにより、定常的に目標とする断面形状を有するワークを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明に係る研磨装置の実施例の構成を示した説明図である。
図2図1に示すサンギアとインターナルギアとキャリアプレートの位置関係を示した説明図である。
図3】測定されたウエーハの断面形状と目標とするウエーハの断面形状を比較した結果に応じた最適なレシピを表示したテーブルの説明図である。
図4】各レシピの加工条件を表示したテーブルの説明図である。
図5】ウエーハの断面形状及び断面形状に基づく判断形状とP−V値を示した説明図である。
図6】第1実施例の動作を示すフロー図である。
図7図6のメイン加工ステップ処理を示すフロー図である。
図8】第2実施例の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明に係る研磨装置の実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
[第1実施例]
【0015】
図1に示す研磨装置10は、ワークの1つであるウエーハ(シリコンウエーハ)Wの両面を研磨する研磨機20と、研磨加工中のウエーハWの径方向の断面形状を測定する形状測定装置100と、この形状測定装置100が測定したウエーハWの径方向の断面形状に基づいて、該断面形状が目標とする断面形状となるように後述する駆動装置M1〜M5などを制御する制御装置300などとを備えている。200は、ウエーハWの径方向の断面形状に応じて、この断面形状を目標とする断面形状にするための適正な加工条件を示すレシピを記憶した記憶部である。
[研磨機]
【0016】
研磨機20は、上定盤21及び下定盤22と、この上定盤21及び下定盤22の中心部に回転自在に配置されたサンギア23と、上定盤21及び下定盤22の外周側に配置されたインターナルギア24と、上定盤21と下定盤22との間に配置され且つワーク保持孔30A(図2参照)が設けられたキャリアプレート30とを有している。また、上定盤21の下面には研磨部材25が設けられており、下定盤22の上面には研磨部材26が設けられている。
【0017】
キャリアプレート30は、図2に示すようにサンギア23及びインターナルギア24に噛合し、このサンギア23及びインターナルギア24の回転により自転及び公転していくようになっている。このキャリアプレート30の自転及び公転により、キャリアプレート30のワーク保持孔30A内に配置されたウエーハWの両面が研磨部材25,26により研磨されていくようになっている。
【0018】
上定盤21は、図1に示すように、支持スタッド40及び取付部材41を介してロッド42に固定されている。ロッド42は駆動装置M1によって上下動し、ロッド42の上下動により上定盤21が一体となって上下動するようになっている。
【0019】
一方、サンギア23の中心部の穴23Aには駆動軸43の上部43Aが貫通するとともに、この上部43Aにサンギア23が固定されており、駆動軸43と一体となってサンギア23が回転していくようになっている。駆動軸43は駆動装置M4によって回転され、サンギア23は駆動装置M4によって駆動軸43と一体となって回転される。
【0020】
駆動軸43の穴内には、駆動装置M2によって回転される駆動軸44が貫挿され、この駆動軸44の上端部44Aが駆動軸43の上端から突出している。この上端部44Aにはドライバ45が固定されており、ドライバ45は駆動軸44と一体となって回転していく。ドライバ45の外周面には、上定盤21に設けたフック46が係合してドライバ45の回転によって一体となって上定盤21が回転していくようになっている。また、フック46はドライバ45の外周面に対して上下方向に移動可能となっており、これによって、上定盤21はドライバ45に対して上下動可能となっている。
【0021】
すなわち、上定盤21は、ロッド42の上下動により上下動し、駆動軸44の回転により回転していく。つまり、上定盤21は駆動装置M2によって駆動軸44と一体となって回転される。
【0022】
下定盤22の中心部の下部には、駆動軸49が形成され、この駆動軸49の中に駆動軸43が回転自在に配置されている。駆動軸49は駆動装置M3によって回転され、下定盤22は駆動装置M3によって駆動軸49と一体となって回転される。
【0023】
インターナルギア24には、駆動軸47が形成されており、この駆動軸47の中に駆動軸49が回転自在に配置されている。駆動軸47は駆動装置M5によって回転され、インターナルギア24は駆動装置M5によって駆動軸47と一体となって回転される。
【0024】
上定盤21には、上定盤21の中心から径方向に所定距離離間した位置に計測孔50が形成されている。計測孔50は、上定盤21及び研磨部材25を貫通して形成され、測定光である赤外レーザ光を透過する窓部材51が装着されている。また、上定盤21には研磨スラリーを供給する供給孔(図示せず)が設けられている。
[形状測定装置]
【0025】
形状測定装置100は、図1に示すように、上定盤21の計測孔50に装着された窓部材51を介してウエーハWに向けて測定光である赤外レーザ光を照射するとともにウエーハWで反射した反射光を受光する光学ヘッド101と、光学ヘッド101から赤外レーザ光を照射させるためのレーザ発振器102と、ウエーハWの径方向の断面形状を求める演算装置110とを有している。なお、光学ヘッド101は上定盤21に設けられており、上定盤21とともに回転するようになっている。
[演算装置]
【0026】
演算装置110は、光学ヘッド101の反射光の受光に基づいてウエーハWの計測厚さを求める厚さ演算部111と、ウエーハWの計測厚さが求められた面内位置をサンギア23及びインターナルギア24の回転位置から求める位置演算部112と、厚さ演算部111が求めたウエーハWの計測厚さと位置演算部112が求めた面内位置とからウエーハWの径方向の断面形状を求める断面形状演算部113とを有している。
[厚さ演算部]
【0027】
厚さ演算部111は、例えば光反射干渉法で測定するものであり、光学ヘッド101の反射光の受光に基づいて、高速に波長掃引する波長可変レーザ光のウエーハWの面での反射強度を求め、この反射強度から反射の波長分散(ウエーハWの表面と裏面で反射する光の干渉の様子)を再構築して周波数解析することにより、ウエーハWの計測厚さを求めるものである。
[位置演算部]
【0028】
位置演算部112は、サンギア23及びインターナルギア24の回転位置に基づいて、キャリアプレート30の位置と回転数を求める。すなわち、キャリアプレート30の公転位置と自転位置とを求め、この公転位置と自転位置とに基づいてウエーハWの面内位置を求める。これにより、厚さ演算部111により求められたウエーハWの計測厚さが測定された面内位置が求められる。
[断面形状演算部]
【0029】
断面形状演算部113は、厚さ演算部111が求めたウエーハWの計測厚さと、位置演算部112が求めたウエーハWの面内位置とに基づいてウエーハWの径方向の断面形状を求めていく。
【0030】
ウエーハWの径方向の断面形状は任意の方法で求めることができる。ここでは、例えば図5に示すように、ウエーハWの直径が300mmの場合、0〜150mmの区間(ウエーハWの半径分)の形状を求め、この区間の形状を150mmの地点を中心にミラー反転させて、ウエーハWの径方向の断面形状を求める。また、ミラー反転させず、0〜300mmの区間(ウエーハWの直径分)の形状を求め、ウエーハWの径方向の断面形状とすることもできる。次に、求めたウエーハWの径方向の断面形状からウエーハWの判断形状及びP−V値を求める。ウエーハWの「判断形状」とは、ウエーハWの径方向の断面形状の傾向に基づいて分類された類型のことである。求めたウエーハWの径方向の断面形状のうちウエーハWの半径分の断面形状を任意の区間に分割し、分割した区間の断面形状の傾向に基づいて、図5に示すように、凹凸、並びに逆V字形、W字形、M字形、U字形などを組み合わせた類型から該当する類型を選択し、この類型をウエーハWの「判断形状」とする。P−V値とは、図5に示すようにウエーハWの最大計測厚さPと最小計測厚さVとの差である。なお、P−V値は制御装置300が求めてもよい。
[制御装置]
【0031】
制御装置300は、求められたウエーハWの径方向の断面形状と目標とするウエーハWの断面形状を比較する。すなわち、求められたウエーハWの判断形状及びP−V値と目標とするウエーハWの判断形状及びP−V値とを比較し、その比較した結果に応じたレシピを記憶部200に記憶された図3に示すテーブル1から読み出し、さらに、読み出したレシピに応じた加工条件を図4に示すテーブル2から読み出し、この読み出した加工条件に基づいて各駆動装置M1〜M5の駆動の制御などの研磨加工の制御を行う。また、制御装置300は、演算装置110を制御するようにもなっている。
[記憶部]
【0032】
記憶部200は、図3に示すように、求められたウエーハWの径方向の断面形状と、目標とする断面形状とを比較した結果に応じた最適なレシピを表示したテーブル1が記憶されている。
【0033】
また、記憶部200には、図4に示すように各レシピの加工条件を表示したテーブル2が記憶されている。
【0034】
加工条件は、上定盤21及び下定盤22の回転速度、サンギア23及びインターナルギア24の回転速度、上定盤21の加工荷重及び単位圧力、荷重スロープ、上定盤21及び下定盤22の加速時間、上定盤21及び下定盤22の減速時間、キャリアプレート30の自転及び公転の回転速度などである。
【0035】
最適な加工条件は、求められたウエーハWの径方向の断面形状を、効率よく目標の断面形状となるように研磨加工することができる加工条件を実験により予め求めておくものである。また、加工条件には研磨スラリーの種類、供給量及び温度等を入れてもよい。これらの加工条件を研磨加工中に変更することにより、研磨加工を制御することができる。
[動 作]
【0036】
次に、上記のように構成される研磨装置10の動作について、図6図8に示すフロー図に基づいて説明する。
ステップS1では、基本加工条件を選択する。基本加工条件とは、ウエーハWの研磨加工開始から後述する測定結果に基づくフィードバック処理が実施されるまでの間の研磨加工をするためのベースとなる加工条件を指す。まずは、予め設定されたベースとなる基本加工条件により、ウエーハWの研磨加工が開始されることになる。
【0037】
ステップS2では、ウエーハWをキャリアプレート30のワーク保持孔30A(図2参照)に装填する。そして、待避位置にある上定盤21を下降させて、ウエーハWを下定盤22と上定盤21とで挟み込む。
【0038】
ステップS3では、基本加工条件による両面研磨加工を開始させる。
ステップS4では、初期加工ステップ動作が行われる。すなわち、制御装置300による駆動装置M2,M3の制御により上定盤21及び下定盤22が低速回転されていくとともに、駆動装置M1の制御により低荷重で上定盤21が下方へ押圧される。これにより、上定盤21は低荷重でウエーハWを押圧していく。また、制御装置300による駆動装置M4,M5の制御により、サンギア23及びインターナルギア24が低速回転されていき、キャリアプレート30が低速で自転及び公転していく。
【0039】
上定盤21及び下定盤22の低速回転と上定盤21の低荷重とによりウエーハWの両面が研磨されていく。また、キャリアプレート30の低速による自転及び公転によりウエーハWの両面が研磨されていく。
なお、研磨が行われている期間は、研磨スラリーが上定盤21に設けられた供給孔(図示せず)から所定のタイミングで供給されていく。
【0040】
ステップS4の処理動作が所定時間行われると、ステップS5へ進む。
ステップS5では、低速回転されている上定盤21及び下定盤22が除々に回転速度を上昇されて中速回転される。また、上定盤21が中荷重でさらに下方へ押圧される。これにより、上定盤21は中荷重でウエーハWを押圧していく。また、低速回転されているサンギア23及びインターナルギア24の回転速度が徐々に上昇されて中速回転されていき、キャリアプレート30が中速で自転及び公転していく。そして、上定盤21及び下定盤22の中速回転と上定盤21の中荷重とによりウエーハWの両面が研磨される。また、キャリアプレート30の中速による自転及び公転によりウエーハWの両面が研磨される。そして、ステップS4と同様にステップS5の処理動作が所定時間行われるとステップS20へと進む。
【0041】
ステップS20は、メイン加工ステップ処理を行うものであり、このメイン加工ステップ処理は、図7に示すように、ステップS21ないしステップS26の処理動作、すなわちフィードバック処理によって行われる。以下に各ステップS21〜ステップS26の処理動作について説明する。
【0042】
ステップS21では、中速回転されている上定盤21及び下定盤22は除々に回転速度が上昇されて高速回転されていく。また、上定盤21が高荷重で下方へ押圧される。これにより、上定盤21が高荷重でウエーハWを押圧していく。また、中速回転されているサンギア23及びインターナルギア24の回転速度が徐々に上昇されて高速回転されていき、キャリアプレート30が高速で自転及び公転していく。そして、上定盤21及び下定盤22の高速回転と上定盤21の高荷重とによりウエーハWの両面が研磨されていく。また、キャリアプレート30の高速による自転及び公転によりウエーハWの両面が研磨されていく。
【0043】
一方、レーザ発振器102によって光学ヘッド101から赤外レーザ光が下方へ照射され、計測孔50の窓部材51を介してウエーハWを照射し、このウエーハWの表面と裏面とで反射した反射光が計測孔50の窓部材51を介して光学ヘッド101へ入射する。
【0044】
ステップS22では、光学ヘッド101が反射光を受光するごとに、受光したウエーハWの表面と裏面の反射光との干渉光に基づいて厚さ演算部111がウエーハWの計測厚さを求めていく。他方、演算装置110の位置演算部112は、その計測厚さが求められたウエーハWの面内位置をそれぞれ求めていく。
【0045】
演算装置110の断面形状演算部113は、厚さ演算部111が求めたウエーハWのそれぞれの計測厚さと、これら計測厚さが求められたウエーハWのそれぞれの面内位置とに基づいて、ウエーハWの径方向の断面形状を求めていく。すなわち、ウエーハWの径方向の断面形状は、ウエーハWのそれぞれの面内位置の計測厚さから求めていく。また、求められたウエーハWの径方向の断面形状に基づき、P−V値を求める。さらに、求められたウエーハWの計測厚さに基づきウエーハWの厚さを求める。ここで、「ウエーハWの計測厚さ」は、測定された厚さひとつひとつを指し、データ数は複数で断面形状の描画に使用される。また、「ウエーハWの厚さ」は、測定されたウエーハWの計測厚さを基に求められた現時点でのウエーハ計測厚さの代表値(移動平均値など)を指し、データ数は単数で目標厚さとの比較に使用される。
【0046】
すなわち、ステップS22では、ウエーハWの径方向の断面形状、図5に示すP−V値、ウエーハWの厚さなどをウエーハWの両面研磨加工中にリアルタイムで求めていく。
【0047】
ステップS221では、求められたウエーハWの径方向の断面形状と、予め定めた基準となる判断形状とを比較し、求められたウエーハWの径方向の断面形状がどの判断形状に該当するかを決定する。すなわち、求められたウエーハWの半径分の断面形状を任意の区間に分割し、例えばウエーハWの外周部、内周部、外周部と内周部との間の中間周部などに分割し、これら分割した区間における断面形状の傾向に基づいて、図5に示すように、凹凸、並びに逆V字形、W字形、M字形、U字形などを組み合わせた類型から該当する類型をウエーハWの判断形状と決定する。
【0048】
ステップS23では、ステップS22及びステップS221で求めたウエーハWの径方向の断面形状が目標断面形状に到達したか否かが判断される。すなわち、ステップS22及びステップS221で求めたウエーハWの判断形状が目標判断形状に到達し、且つ、P−V値が目標P−V値に到達したか否かが判断され、ノーであればステップS24へ進む。
【0049】
ステップS24では、ステップS22で求めたウエーハWの厚さが目標厚さの下限以下であるか否かが判断され、目標厚さの下限以下のとき、ウエーハWは破損する虞があるので、ステップS24ではイエスと判断してステップS6へ進ませ、研磨加工を終了させる処理工程へ進ませる。
ウエーハWの厚さが目標厚さの下限以下でない場合、ステップS24ではノーと判断してステップS25へ進む。
【0050】
ステップS25では、制御装置300は、ステップS22及びステップS221で求めたウエーハWの径方向の断面形状と、目標とするウエーハWの断面形状とを比較し、その比較した結果に基づいたレシピを記憶部200に記憶されているテーブル1(図3参照)から読み出し、この読み出したレシピが示す加工条件をテーブル2(図4参照)から読み出し、この読み出した加工条件に基づいて各駆動装置M1〜M5の駆動などを制御する。そして、ステップS22へ戻る。
【0051】
ステップS22では、再度、上述のようにウエーハWの径方向の断面形状、すなわちウエーハWの判断形状やP−V値などを求めていく。この求めたウエーハWの径方向の断面形状が目標断面形状に到達するまで、ステップS22ないしステップS25の処理動作が繰り返し行われ、ウエーハWの両面が研磨されていくとともに、そのウエーハWの径方向の断面形状に応じて、加工条件(レシピ)も変更されていくので、ウエーハWの径方向の断面形状を目標断面形状となるように確実に研磨していくことができる。
【0052】
ウエーハWの径方向の断面形状が目標断面形状に到達すると、ステップS23でイエスと判断されてステップS26へ進む。
ステップS26では、ウエーハWの厚さが目標厚さの上限以下か否かが判断され、ノーであればステップS21へ戻り、ウエーハWの厚さが目標厚さの上限以下になるまでステップS21ないしステップS26の処理動作が繰り返し行われる。ウエーハWの厚さが目標厚さの上限以下になると、イエスと判断されてステップS6へ進む。
【0053】
ステップS6では、減速加工ステップ動作が行われる。すなわち、制御装置300による駆動装置M1〜M5の制御により高速回転されている上定盤21及び下定盤22、サンギア23、インターナルギア24が減速されて中速回転されるとともに、上定盤21による下方への荷重が中荷重に減少される。このステップS6の処理動作が所定時間行われるとステップS7へ進む。
【0054】
ステップS7では、純水洗浄ステップ動作が行われる。すなわち、上定盤21に設けられた供給孔から純水が供給されるとともに、上定盤21及び下定盤22、サンギア23、インターナルギア24が減速されて低速回転される。また、上定盤21による下方への荷重が低荷重に減少される。そして、ウエーハWの両面が純水により洗浄されていくことになる。このステップS7の処理動作が所定時間行われるとステップS8へ進み、加工運転が終了される。
【0055】
ステップS9では、上定盤21を上昇させて研磨されたウエーハWを回収し、ステップS10では、外部測定器によってウエーハWの断面形状を測定する。
【0056】
上述のように、研磨加工中にウエーハWの断面形状を測定し、この断面形状が目標の断面形状となるように加工条件(レシピ)を変更していくものであるから、ウエーハWを効率よく目標の断面形状に研磨加工していくことができる。また、上述したようにステップS24で目標厚さとの比較を行うことができるので、ウエーハWの研磨しすぎによる不良品の発生を確実に防止することができる。
【0057】
さらに、ウエーハWの断面形状を測定し、断面形状に応じて加工条件を変更しているので、ウエーハWの一部分だけが薄くなりすぎたり、厚くなりすぎたりしてしまうことを防止することができる。さらに、研磨加工中にウエーハWの断面形状が目標の断面形状に加工されているか否かを把握しながら研磨加工を進めることができ、目標の断面形状でないときは加工条件を研磨加工中に変更できるため、定常的に目標の断面形状を有するウエーハWを得ることが可能となる。
[第2実施例]
【0058】
図8は、第2実施例のフロー図を示す。この第2実施例では、ステップS5の後にメイン加工ステップ処理1を行うステップS20′とメイン加工ステップ処理2を行うステップS30とを設けたものである。
【0059】
ステップS20′のメイン加工ステップ処理1は、図7に示すステップS21ないしステップS26の処理を行うものであるが、ステップS23の「目標断面形状到達」を「第1目標断面形状到達」に変更する。この第1目標断面形状は、目標断面形状に到達する前段階の断面形状を示す。他は、第1実施例と同様なのでその説明は省略する。
【0060】
ステップS30のメイン加工ステップ処理2は、図7に示すステップS21ないしステップS26と同じ処理動作を行うのでその説明は省略する。
【0061】
この第2実施例によれば、ステップS20′,S30を設けたことにより、複数段階に分けて目標の断面形状に研磨加工していくことができるため、ウエーハWの断面形状を目標の断面形状となるようにより確実に研磨していくことができる。すなわち、ウエーハWの研磨しすぎによる不良品の発生をより確実に防止することができ、ウエーハWの一部分だけが薄くなりすぎたり、厚くなりすぎたりしてしまうことを確実に防止することができる。さらに、研磨加工中にウエーハWの断面形状が目標の断面形状に加工されているか否かを把握しながら研磨加工を進めることができ、目標の断面形状でないときは加工条件を研磨加工中に変更できるため、定常的に目標の断面形状を有するウエーハWを得ることが可能となる。
【0062】
上記実施例では、上定盤21に計測孔50を設けているが、下定盤22に計測孔を設けて、下からウエーハWの下面に赤外レーザ光を照射してウエーハWの断面形状を測定するようにしてもよい。
【0063】
また、1つのキャリアプレート30を使用して1つのウエーハWを研磨する場合について説明したが、複数のキャリアプレート30を上定盤21と下定盤22との間に配置して複数のウエーハWを同時に研磨していく場合や、1つのキャリアプレートに複数のウエーハWを配置する場合にも適用できる。
【0064】
さらに、上記実施例では、光学ヘッド101は上定盤21に設けられているが、上定盤21の中心から径方向へ所定距離離間した位置の上方に光学ヘッドを設け、上定盤21の回転によって計測孔50が光学ヘッドの真下に来るごとに光学ヘッドから照射される赤外レーザ光が窓部材51を介してウエーハWを照射し、ウエーハWの断面形状を測定するようにしてもよい。計測孔50は少なくとも一つあればよいが、上記の所定距離離間した位置の周方向に沿って等間隔に複数形成してもよい。計測孔50を複数形成する場合は、各計測孔50に窓部材51が装着されている。
【0065】
上記実施例はいずれもウエーハWの両面を研磨する研磨装置について説明したが、ウエーハWの片面だけを研磨する研磨装置にも適用可能である。
【0066】
また、上記実施例では、ステップS20,S20′,S30のとき、ステップS21ないしステップS26の処理動作を行っているが、これに限らず、他の加工ステップ動作のときにも、ステップS21ないしステップS26と同様な処理動作を行ってもよい。また、上記実施例では、シリコンウエーハを研磨する場合について説明したが、これに限らず、ガラス、セラミックス、水晶等の薄板状のワークであればよい。
【0067】
この発明は、上記実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0068】
10 研磨装置
20 研磨機
21 上定盤(定盤)
22 下定盤(定盤)
50 計測孔
100 形状測定装置
101 光学ヘッド
111 厚さ演算部
112 位置演算部
113 断面形状演算部
200 記憶部
300 制御装置
W ウエーハ(ワーク)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8