特許第6765892号(P6765892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メディカルシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6765892-X線CT装置 図000002
  • 特許6765892-X線CT装置 図000003
  • 特許6765892-X線CT装置 図000004
  • 特許6765892-X線CT装置 図000005
  • 特許6765892-X線CT装置 図000006
  • 特許6765892-X線CT装置 図000007
  • 特許6765892-X線CT装置 図000008
  • 特許6765892-X線CT装置 図000009
  • 特許6765892-X線CT装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765892
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20200928BHJP
【FI】
   A61B6/03 360B
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-151187(P2016-151187)
(22)【出願日】2016年8月1日
(65)【公開番号】特開2018-19760(P2018-19760A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山鼻 将央
(72)【発明者】
【氏名】川鍋 信哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰誠
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−325966(JP,A)
【文献】 特開2014−155586(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/117418(WO,A1)
【文献】 特開2004−024598(JP,A)
【文献】 特開平04−250142(JP,A)
【文献】 特開2012−105910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を所定の方向にスキャンするスキャン制御部と、
前記スキャンにより収集された投影データから前記所定の方向における前記被検体の情報を含む第1の画像データを生成する画像生成部と、
前記第1の画像データが描出している対象の位置を取得する取得部と、
前記対象の位置に基づいて前記対象を描出している確認用画像データを複数の領域に分け、前記領域ごとに画像処理を施す画像処理部と、
を備え
前記画像生成部は、前記確認用画像データに係る投影データを逐一再構成することにより前記確認用画像データを逐一生成し、
前記画像処理部は、前記確認用画像データが生成される度に当該確認用画像データに前記画像処理を施す、
X線CT装置。
【請求項2】
前記スキャン制御部は、前記被検体を前記所定の方向に予備スキャンし、
前記画像生成部は、前記予備スキャンにより収集された前記投影データから前記第1の画像データを生成し、
前記画像処理部は、前記確認用画像データとして前記第1の画像データと異なる第2の画像データを複数の前記領域に分け、前記領域ごとに画像処理を施す、請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記スキャン制御部は、前記被検体を前記所定の方向に本スキャンし、
前記画像生成部は、前記本スキャンにより収集された前記投影データから前記第2の画像データを生成する、請求項に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記スキャン制御部は、前記被検体を前記所定の方向に本スキャンし、
前記画像生成部は、前記本スキャンにより収集された前記投影データから前記第1の画像データを生成し、
前記画像処理部は、前記確認用画像データとして前記第1の画像データを複数の前記領域に分け、前記領域ごとに画像処理を施す、請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記第1の画像データから抽出した解剖学的特徴点に基づいて前記対象の位置を取得する、請求項1から請求項のいずれか一つに記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記取得部は、ユーザが前記第1の画像データに基づいて入力した情報に基づいて前記対象の位置を取得する、請求項1から請求項のいずれか一つに記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記画像生成部は、前記被検体の三次元の情報を含む前記第1の画像データを生成する、請求項1から請求項のいずれか一つに記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記画像生成部は、前記所定の方向と平行な平面内における前記被検体の情報を示す前記第1の画像データを生成する、請求項1から請求項のいずれか一つに記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記画像処理は、ウインドウ幅の変更、ウインドウレベルの変更、表示中心の変更、拡大率の変更及び前記確認用画像データの読影に不要な領域の削除の少なくとも一つである、請求項1から請求項のいずれか一つに記載のX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置が生成する画像データに施すべき画像処理は、描出する対象によって異なる。ここで言う画像処理とは、例えば、ウインドウ幅、ウインドウレベル、表示中心、拡大率、画像データの読影に不要な領域の削除である。従来のX線CT装置は、被検体をスキャンする前にこの画像処理を設定しておくことができる。
【0003】
しかし、従来のX線CT装置は、一回のスキャンにより生成される画像データ全体に予め設定された画像処理を施すことしかできない。このため、従来のX線CT装置のユーザは、被検体のスキャン中に表示された画像データを確認しながら、画像データに施すべき画像処理を手動で設定する必要があった。また、従来のX線CT装置のユーザは、画像データが読影されるべき対象を複数含む場合、これらの対象を含む画像データごとに画像処理を手動で設定する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−061601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、自動的に対象に応じた画像処理を施すことができるX線CT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るX線CT装置は、スキャン制御部と、画像生成部と、取得部と、画像処理部とを備える。スキャン制御部は、被検体を所定の方向にスキャンする。画像生成部は、前記スキャンにより収集された投影データから前記所定の方向における前記被検体の情報を含む第1の画像データを生成する。取得部は、前記第1の画像データが描出している対象の位置を取得する。画像処理部は、前記対象の位置に基づいて前記対象を描出している確認用画像データを複数の領域に分け、前記領域ごとに画像処理を施す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成の例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置が行う処理の例を示すフローチャートである。
図3図3は、ウインドウ幅の変更を説明するための図である。
図4図4は、ウインドウレベルの変更を説明するための図である。
図5図5は、画像データの表示中心の変更を説明するための図である。
図6図6は、画像データの拡大率の変更を説明するための図である。
図7図7は、被検体の肋骨及び肺を含む画像データの例を示す図である。
図8図8は、図7に示した画像データから肋骨を除去した画像データの例を示す図である。
図9図9は、第2の実施形態に係るX線CT装置が行う処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係るX線CT装置を説明する。なお、以下の実施形態では、重複する説明は適宜省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1を参照しながら、実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成の例を示す図である。X線CT装置1は、図1に示すように、架台10と、寝台20と、コンソール30とを備える。なお、X線CT装置1の構成は、下記の構成に限定されるものではない。
【0010】
架台10は、高電圧発生回路11と、コリメータ調整回路12と、架台駆動回路13と、X線照射装置14と、検出器15と、データ収集回路16と、回転フレーム17とを備える。
【0011】
高電圧発生回路11は、後述するX線管141に管電圧を供給する。コリメータ調整回路12は、後述するコリメータ143の開口度及び位置を調整する。これにより、コリメータ調整回路12は、X線管141が被検体Pに照射するX線の照射範囲を調整する。架台駆動回路13は、回転フレーム17を回転させる。これにより、架台駆動回路13は、被検体Pを中心とした円軌道上でX線照射装置14及び検出器15を旋回させる。高電圧発生回路11、コリメータ調整回路12及び架台駆動回路13は、後述する記憶回路35に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、その機能を実現する。高電圧発生回路11、コリメータ調整回路12及び架台駆動回路13は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0012】
X線照射装置14は、X線管141と、ウェッジ142と、コリメータ143とを備える。X線管141は、被検体PにX線を照射する。X線管141は、高電圧発生回路11が供給する管電圧により、ビーム状のX線を発生させる。このビーム状のX線は、コーンビームとも呼ばれる。ウェッジ142は、X線管141から照射されたX線の線量を調節するためのX線フィルタである。コリメータ143は、X線の照射範囲を調整するためのスリットである。コリメータ143の開口度及び位置は、コリメータ調整回路12により調整される。コリメータ143の開口度の調整により、例えば、コーンビームのファン角及びコーン角が調整される。
【0013】
検出器15は、検出素子を有する。これらの検出素子は、第1方向及び第1方向と交差する第2方向に規則的に配置される。例えば、第1方向は、回転フレーム17の円周方向であり、第2方向は、スライス方向である。ここで、スライス方向は、体軸方向である。検出素子は、入射したX線の強度を検出する。このような検出器は、多列検出器と呼ばれる。
【0014】
検出素子は、シンチレータ、フォトダイオード及び検出回路を有する。検出回路の入力端子は、フォトダイオードの出力端子に接続されている。検出回路の出力端子は、データ収集回路16の入力端子に接続されている。
【0015】
検出素子は、次のような方法により、入射したX線の強度を検出する。まず、検出素子は、入射したX線をシンチレータにより光に変換する。次に、検出素子は、その光をフォトダイオードにより電荷に変換する。そして、検出素子は、この電荷を検出回路により電気信号に変換し、後述するデータ収集回路16へ出力する。シンチレータ及びフォトダイオードを有する検出素子を備える検出器は、固体検出器と呼ばれる。
【0016】
データ収集回路16は、検出素子が出力した電気信号に基づいて投影データを生成する。投影データは、例えば、サイノグラムである。サイノグラムとは、X線管141の各位置において検出器15が検出した信号を並べたデータである。ここで、X線管141の位置は、ビュー(View)と呼ばれる。あるビューにおける検出素子の回転フレーム17の円周方向の列は、チャンネル(Channel)と呼ばれる。サイノグラムは、第1方向をビュー方向とし、第1方向と直交する第2方向を検出器15のチャンネル方向とする二次元直交座標系に、検出器15が検出したX線の強度を割り当てたデータである。データ収集回路16は、スライス方向の列単位でサイノグラムを生成する。データ収集回路16は、例えば、プロセッサにより実現される。なお、データ収集回路16は、DAS(Data Acquisition System)とも呼ばれる。
【0017】
回転フレーム17は、円環状のフレームである。回転フレーム17は、X線照射装置14と検出器15とを被検体Pを挟んで対向するように保持する。回転フレーム17は、架台駆動回路13により駆動され、被検体Pを中心とした円軌道上を高速で回転する。
【0018】
寝台20は、天板21と、寝台駆動回路22とを備える。天板21は、被検体Pが載せられる板状の部材である。寝台駆動回路22は、被検体Pが載せられた天板21を体軸方向へ移動させることにより、被検体Pを架台10の撮影口内で移動させる。寝台駆動回路22は、後述する記憶回路35に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、その機能を実現する。寝台駆動回路22は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0019】
コンソール30は、入力回路31と、ディスプレイ32と、投影データ記憶回路33と、画像記憶回路34と、記憶回路35と、処理回路36とを備える。
【0020】
入力回路31は、指示や設定を入力するユーザにより使用される。入力回路31は、例えば、マウス、キーボードに含まれる。入力回路31は、ユーザが入力した指示や設定を処理回路36に転送する。入力回路31は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0021】
ディスプレイ32は、ユーザが参照するモニタである。ディスプレイ32は、例えば、液晶ディスプレイである。ディスプレイ32は、例えば、処理回路36から画像データ、GUI(Graphical User Interface)を表示する旨の指示を受ける。これにより、ディスプレイ32は、画像データ及びGUIを表示する。画像データとは、予備スキャン又は本スキャンにより生成された三次元のCT画像、二次元のCT画像又はこれらのCT画像を表示する基となるデータである。GUIは、ユーザが指示や設定を入力する際に使用される。
【0022】
投影データ記憶回路33は、後述する前処理機能362が前処理を施した投影データを記憶する。なお、前処理機能362により前処理が施された投影データは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。画像記憶回路34は、後述する画像生成機能363により生成された画像データを記憶する。
【0023】
記憶回路35は、高電圧発生回路11、コリメータ調整回路12、架台駆動回路13及びデータ収集回路16が上述した機能を実現するためのプログラムを記憶する。記憶回路35は、寝台駆動回路22が上述した機能を実現するためのプログラムを記憶する。記憶回路35は、処理回路36が後述する機能それぞれを実現するためのプログラムを記憶する。
【0024】
投影データ記憶回路33、画像記憶回路34及び記憶回路35は、記憶されている情報をコンピュータにより読み出すことができる記憶媒体を有する。記憶媒体は、例えば、ハードディスクである。
【0025】
処理回路36は、スキャン制御機能361、前処理機能362、画像生成機能363、取得機能364、画像処理機能365及び制御機能366を有する。制御機能366は、架台10、寝台20及びコンソール30の各構成要素を目的に応じて適切なタイミングで動作させ、スキャンを実行させる機能である。その他の機能の詳細は、後述する。なお、処理回路36は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0026】
図2から図8を参照しながら、実施形態に係るX線CT装置1の処理の一例について説明する。図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置が行う処理の例を示すフローチャートである。図3は、ウインドウ幅の変更を説明するための図である。図4は、ウインドウレベルの変更を説明するための図である。図5は、画像データの表示中心の変更を説明するための図である。図6は、画像データの拡大率の変更を説明するための図である。図7は、被検体の肋骨及び肺を含む画像データの例を示す図である。図8は、図7に示した画像データから肋骨を除去した画像データの例を示す図である。
【0027】
処理回路36は、図2に示すように、被検体Pを所定の方向に予備スキャンし、第1の画像データを生成する(ステップS11)。ステップS11の処理は、例えば、次のようなものである。
【0028】
処理回路36は、記憶回路35からスキャン制御機能361に相当するプログラムを読み出して実行する。スキャン制御機能361は、架台10、寝台20及びコンソール30の各構成要素を目的に応じて適切なタイミングで動作させ、被検体Pを所定の方向にスキャンする機能である。スキャン制御機能361は、被検体Pを所定の方向に予備スキャンする機能を含む。処理回路36は、スキャン制御機能361を実行することにより、被検体Pを体軸方向にヘリカルスキャンし、投影データを収集する。ヘリカルスキャンは、天板21に載せられた被検体Pを移動させながら被検体Pをスキャンする方式である。具体的には、処理回路36は、架台10、寝台20及びコンソール30の各構成要素を次のように動作させる。
【0029】
処理回路36は、寝台駆動回路22を制御することにより、被検体Pを載せた天板21を架台10に対して移動させる。同時に、処理回路36は、高電圧発生回路11を制御することによりX線管141へ管電圧を供給し、架台駆動回路13を制御することにより回転フレーム17を回転させる。処理回路36は、コリメータ調整回路12を制御することによりコリメータ143の開口度及び位置を調整する。処理回路36は、データ収集回路16を制御することにより、投影データを収集する。なお、X線管141は、後述する本スキャンよりも低い線量のX線を照射する。
【0030】
処理回路36は、記憶回路35から前処理機能362に相当するプログラムを読み出して実行する。前処理機能362は、データ収集回路16により生成された投影データを補正する機能である。この補正は、例えば、対数変換、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正、散乱線補正である。処理回路36は、前処理機能362により投影データにこれらの補正を施す。
【0031】
処理回路36は、記憶回路35から画像生成機能363に相当するプログラムを読み出して実行する。画像生成機能363は、投影データを再構成し、第1の画像データを生成する機能を含む。処理回路36は、画像生成機能363を実行することにより、予備スキャンにより収集された投影データから第1の画像データを生成する。再構成法は、例えば、逆投影法、逐次近似法である。また、逆投影法は、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法である。
【0032】
第1の画像データは、予備スキャンされる方向における被検体Pの情報を含む。例えば、第1の画像データは、被検体Pの三次元の情報を含んでいてもよい。すなわち、第1の画像データは、被検体Pの三次元の画像データ又はボリュームレンダリング画像データでもよい。或いは、第1の画像データは、予備スキャンされる方向と平行な平面内における被検体Pの情報を示していてもよい。すなわち、第1の画像データは、被検体Pの矢状面又は冠状面の画像データでもよい。
【0033】
処理回路36は、図2に示すように、第1の画像データが描出している対象の位置を取得する(ステップS12)。ステップS12の処理は、例えば、次のようなものである。
【0034】
処理回路36は、記憶回路35から取得機能364に相当するプログラムを読み出して実行する。取得機能364は、第1の画像データが描出している対象の位置を取得する機能である。処理回路36は、取得機能364を実行することにより、第1の画像データが描出している対象の位置を取得する。例えば、処理回路36は、第1の画像データから抽出した解剖学的特徴点に基づいて対象の位置を取得する。或いは、処理回路36は、ユーザが第1の画像データに基づいて入力した指示に基づいて対象の位置を取得する。これは、具体的には、次のような処理である。
【0035】
入力回路31は、ユーザが入力した対象の位置に関する情報を受け付ける。ユーザは、例えば、ディスプレイ32に表示された画像データを参照し、この情報を入力する。処理回路36は、この情報に基づいて対象の位置を取得する。また、入力回路31は、ユーザが入力した対象の位置とみなす領域を調整する情報を受け付ける。ユーザは、例えば、ディスプレイ32に表示された画像データを参照し、この情報を入力する。ここで、ユーザに参照される画像データは、ディスプレイ32に表示される少なくとも一枚の被検体Pの画像データである。これらの画像データは、被検体Pの横断面、冠状面又は矢状面の画像データでもよい。また、これらの画像は、被検体PのMPR(multi-planar reconstruction)画像データでもよい。
【0036】
なお、処理回路36は、取得機能364を実行することにより、対象の位置とみなす領域を調整するか否かをユーザに問い合わせてもよい。この場合、処理回路36は、例えば、ディスプレイ32に対象の位置とみなす領域を調整するか否かを選択するためのGUIを表示する。
【0037】
処理回路36は、図2に示すように、後述するステップS16で確認用画像データに施す画像処理の内容を決定する(ステップS13)。確認用画像データは、主に、読影に使用される画像データを生成することができるか否かを技師が判断するために使用される。技師は、確認用画像データを参照し、例えば、対象が適切に描出されているか否かを判断する。ステップS13の処理は、例えば、次のようなものである。
【0038】
処理回路36は、記憶回路35から画像処理機能365に相当するプログラムを読み出して実行する。画像処理機能365は、確認用画像データに施す画像処理の内容を決定する機能を含む。処理回路36は、画像処理機能365を実行することにより、確認用画像データに施す画像処理の内容を決定する。この画像処理の内容は、予め決定されている。この画像処理の内容の詳細は、後述する。
【0039】
また、処理回路36は、ユーザが入力回路31を使用して入力した情報を受け付け、画像処理機能365を実行することにより、この情報に基づいて確認用画像データに施す画像処理の内容を修正する。この情報は、主に予め決定されている画像処理の内容を変更するものである。
【0040】
処理回路36は、図2に示すように、被検体を所定の方向に本スキャンし、確認用画像データを生成し、表示する(ステップS14)。ステップS14の処理は、例えば、次のようなものである。
【0041】
処理回路36は、記憶回路35からスキャン制御機能361に相当するプログラムを読み出して実行する。スキャン制御機能361は、被検体Pを所定の方向に本スキャンする機能を含む。処理回路36は、スキャン制御機能361を実行することにより、被検体Pを体軸方向にヘリカルスキャンし、投影データを収集する。処理回路36は、データ収集回路16を制御することにより、投影データを収集する。なお、X線管141は、上述した予備スキャンよりも高い線量のX線を照射する。
【0042】
処理回路36は、記憶回路35から前処理機能362に相当するプログラムを読み出して実行する。処理回路36は、前処理機能362により投影データに上述した補正を施す。
【0043】
処理回路36は、記憶回路35から画像生成機能363に相当するプログラムを読み出して実行する。画像生成機能363は、本スキャンにより収集された投影データから確認用画像データを生成する機能を含む。ここで、確認用画像データは、第2の画像データとも呼ばれる。処理回路36は、画像生成機能363を実行することにより、確認用画像データを生成する。ディスプレイ32は、この確認用画像データを表示する。ステップS14で表示される確認用画像データは、リアルタイム再構成画像とも呼ばれる。確認用画像データは、上述した所定の方向、すなわち本スキャンされる方向と交差する平面内における被検体Pの情報を含む。確認用画像データは、例えば、本スキャンされる方向と交差する平面内における被検体Pの情報を含む。すなわち、確認用画像データは、被検体Pの横断面の情報を含む。
【0044】
処理回路36は、図2に示すように、ステップS14で表示された確認用画像データがステップS12で取得された対象を描出しているか否かを判定する(ステップS15)。処理回路36は、記憶回路35から画像処理機能365に相当するプログラムを読み出して実行する。画像処理機能365は、ステップS14で表示された確認用画像データがステップS12で取得された対象を描出しているか否かを判定する機能を含む。処理回路36は、例えば、被検体Pが載せられている天板21の位置に基づいてステップS14で表示された確認用画像データがステップS12で取得された対象を描出しているか否かを判定する。或いは、処理回路36は、ステップS14で表示された確認用画像データから抽出した対象の輪郭に基づいて当該画像データがステップS12で取得された対象を描出しているか否かを判定する。或いは、処理回路36は、これらの方法を併用し、当該確認用画像データがステップS12で取得された対象を描出しているか否かを判定する。
【0045】
処理回路36は、ステップS14で表示された確認用画像データがステップS12で取得された対象を描出していると判定した場合(ステップS15肯定)、処理をステップS16へ進める。処理回路36は、ステップS14で表示された確認用画像データがステップS12で取得された対象を描出していないと判定した場合(ステップS15否定)、処理をステップS14へ戻す。
【0046】
処理回路36は、図2に示すように、ステップS12で取得された対象を描出している確認用画像データを複数の領域に分け、領域ごとにステップS13で決定された画像処理を施す(ステップS16)。ステップS16の処理は、例えば、次のようなものである。
【0047】
処理回路36は、記憶回路35から画像処理機能365に相当するプログラムを読み出して実行する。画像処理機能365は、ステップS12で取得された対象の位置に基づいて、この対象を描出している確認用画像データを複数の領域に分ける機能を含む。処理回路36は、画像処理機能365を実行することにより、確認用画像データとして第1の画像データと異なる第2の画像データを複数の領域に分ける。
【0048】
処理回路36は、画像処理機能365を実行することにより、ステップS12で取得された対象を描出している三次元の確認用画像データを複数の領域に分ける。例えば、処理回路36は、複数の対象を描出している三次元の確認用画像データを、対象を一つ含む複数の領域に分ける。処理回路36は、複数の対象を描出している三次元の確認用画像データを、被検体Pをスキャンした方向と交わる平面又は曲面で切断することにより複数の領域に分けてもよい。或いは、処理回路36は、画像処理機能365を実行することにより、ステップS12で取得された対象を描出している二次元の確認用画像データを複数の領域に分ける。例えば、処理回路36は、複数の対象を描出している二次元の確認用画像データを、対象を一つ含む複数の領域に分ける。
【0049】
処理回路36は、記憶回路35から画像処理機能365に相当するプログラムを読み出して実行する。画像処理機能365は、領域ごとにステップS13で設定された画像処理を施す機能を含む。処理回路36は、画像処理機能365を実行することにより、これらの領域ごとにステップS13で決定された画像処理を施す。この画像処理は、例えば、ウインドウ幅の変更、ウインドウレベルの変更、表示中心の変更、拡大率の変更及び確認用画像データの読影に不要な領域の削除の少なくとも一つである。これらの詳細は、次に述べる通りである。
【0050】
処理回路36は、画像処理機能365を実行することにより、ウインドウ幅を変更することができる。ウインドウ幅の変更とは、ディスプレイ32に表示されるCT値の最大値と最小値の差を変更することである。処理回路36は、画像処理機能365を実行することにより、例えば、ウインドウレベルを図3に示したWL1に固定したまま、ウインドウ幅を図3に示したWW1からWW2に変更する。これにより、ディスプレイ32に表示されるCT値の範囲が広くなる。
【0051】
処理回路36は、画像処理機能365を実行することにより、ウインドウレベルを変更することができる。ウインドウレベルの変更とは、ディスプレイ32に表示されるCT値の中央値を変更することである。処理回路36は、画像処理機能365を実行することにより、例えば、ウインドウ幅を図4に示したWW1に固定したまま、ウインドウレベルを図4に示したWL1からWL2に変更する。これにより、ディスプレイ32に表示されるCT値の範囲が変更される。
【0052】
処理回路36は、画像処理機能365を実行することにより、表示中心を変更することができる。表示中心の変更とは、画像データ表示領域の中心と一致する画像データ上の点を変更する操作である。ここで、画像データ表示領域とは、ディスプレイ32において画像データが表示される領域である。表示中心が変更される前に画像データ表示領域に表示される画像データは、例えば、図5に示した画像データIm10である。この場合、表示中心は、画像データIm10上の点K10である。ここで、図5の左図に示すように、表示中心が画像データIm10上の点K10から点K20へ変更されたと仮定する。すると、画像データ表示領域に表示される画像データは、例えば、図5に示した画像データIm20となる。この場合、表示中心は、画像データIm10上の点K20である。画像データIm20は、図5に示した長方形F20に囲まれた画像データである。なお、表示中心の変更は、被検体Pの横断面の中心に位置しない臓器が対象となっている場合に有効である。このような臓器は、例えば、肝臓、心臓である。
【0053】
処理回路36は、画像処理機能365を実行することにより、拡大率を変更することができる。拡大率の変更とは、表示中心を固定した状態で、ディスプレイ32に表示される画像データの倍率を変更する操作である。拡大率が変更される前に画像データ表示領域に表示される画像データは、例えば、図6に示した画像データIm10である。この場合、表示中心は、画像データIm10上の点K10である。ここで、図6の左図に示すように、拡大率が長方形F30に囲まれた画像データを表示するように変更されたと仮定する。すると、画像データ表示領域に表示される画像データは、例えば、図6に示した画像データIm30となる。図6の右図に示すように、表示中心は、点K10のままとなっている。画像データIm30は、図6に示した長方形F30に囲まれた画像データである。
【0054】
処理回路36は、画像処理機能365を実行することにより、画像データの読影に不要な領域を削除することができる。すなわち、処理回路36は、画像処理機能365を実行することにより、画像データに描出された対象を抽出することができる。処理回路36は、例えば、画像処理機能365を実行することにより、肺L及び肋骨Rを表示している図7に示した画像データIm40から肋骨Rを削除し、肺Lのみを表示している図8に示した画像データIm50を生成する。
【0055】
なお、ウインドウ幅の変更、ウインドウレベルの変更、表示中心の変更及び拡大率の変更の少なくとも一つは、対象を含む確認用画像データ又は対象を含む領域にのみ適用される。或いは、これらの画像処理は、対象を含む確認用画像データ又は対象を含む領域だけでなく、対象を含む確認用画像データの周辺の確認用画像データ又は対象を含む領域の周辺の領域に適用してもよい。この場合、対象を含む確認用画像データの周辺の確認用画像データに適用される画像処理の内容は、対象を含む確認用画像データに近づくにつれてステップS13で決定された画像処理の内容に近づくことが好ましい。同様に、この場合、対象を含む確認用画像データの周辺の領域に適用される画像処理の内容は、対象を含む領域に近づくにつれてステップS13で決定された画像処理の内容に近づくことが好ましい。
【0056】
処理回路36は、図2に示すように、生成すべき確認用画像データがあるか否かを判定する(ステップS17)。処理回路36は、記憶回路35から画像生成機能363に相当するプログラムを読み出して実行する。画像生成機能363は、生成すべき確認用画像データがあるか否かを判定する機能を含む。処理回路36は、生成すべき確認用画像データがあると判定した場合(ステップS17肯定)、処理をステップS14へ戻す。処理回路36は、生成すべき確認用画像データがないと判定した場合(ステップS17否定)、処理を終了させる。
【0057】
処理回路36は、図2に示したステップS14からステップS17までの処理は、確認用画像データが生成される度に実行してもよい。つまり、処理回路36は、画像生成機能363を実行することにより、確認用画像データに係る投影データを逐一再構成し、確認用画像データを逐一生成する。そして、処理回路36は、画像処理機能365を実行することにより、確認用画像データが生成される度に当該確認用画像データに画像処理を施す。
【0058】
以上、第1の実施形態に係るX線CT装置1について説明した。第1の実施形態に係るX線CT装置1は、予備スキャンにより生成された第1の画像データが描出している対象の位置を取得し、この対象の位置に基づいて確認用画像データを複数の領域に分け、領域ごとに画像処理を施す。このため、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、ユーザが確認用画像データに施すべき画像処理を手動で設定する労力を軽減することができる。また、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、被検体Pの広い範囲を短時間でスキャンすることができる。このため、この効果は、一層重要なものとなっている。
【0059】
(第2の実施形態)
第1の実施形態に係るX線CT装置1は、予備スキャンにより生成された第1の画像データから対象の位置を取得する。そして、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、この対象の位置に基づいて確認用画像データを複数の領域に分け、この領域ごとに画像処理を施す。第1の実施形態における確認用画像データは、第1の画像データと異なる第2の画像データである。つまり、第1の実施形態では、対象の位置の取得に使用される画像データは、画像処理が施される画像データと異なる。
【0060】
一方、第2の実施形態に係るX線CT装置は、本スキャンにより生成された第1の画像データから対象の位置を取得する。そして、第2の実施形態に係るX線CT装置は、この対象の位置に基づいて確認用画像データを複数の領域に分け、この領域ごとに画像処理を施す。第2の実施形態における確認用画像データは、第1の画像データである。つまり、第1の実施形態では、対象の位置の取得に使用される画像データは、画像処理が施される画像データと異なる。
【0061】
図9は、第2の実施形態に係るX線CT装置が行う処理の例を示すフローチャートである。なお、第1の実施形態と重複する内容については、同一の符号を使用し、詳細な説明を省略する。
【0062】
処理回路36は、図9に示すように、被検体Pを所定の方向に予備スキャンし、位置決め画像データを生成する(ステップS21)。位置決め画像データとは、本スキャンの条件の決定に使用される画像データである。ステップS21の処理は、第1の画像データではなく位置決め画像データを生成することを除き、上述したステップS11の処理と同様である。
【0063】
処理回路36は、図9に示すように、被検体Pを所定の方向に本スキャンし、確認用画像データを生成する(ステップS22)。ステップS22の処理は、確認用画像データとして第1の画像データを生成することを除き、上述したステップS14の処理と同様である。ただし、ステップS22の処理は、ステップS14で行われる確認用画像データを表示する処理を含まない。
【0064】
処理回路36は、図9に示すように、確認用画像データが描出している対象の位置を取得する(ステップS23)。ステップS23の処理は、上述したステップS12の処理と同様である。
【0065】
処理回路36は、図9に示すように、ステップS27で確認用画像データに施す画像処理の内容を決定する(ステップS24)。ステップS24の処理は、上述したステップS13の処理と同様である。
【0066】
ディスプレイ32は、ステップS22で生成された確認用画像データを表示する(ステップS25)。
【0067】
処理回路36は、図9に示すように、ステップS25で表示された確認用画像データがステップS23で取得された対象を描出しているか否かを判定する(ステップS26)。ステップS26の処理は、上述したステップS15の処理と同様である。
【0068】
処理回路36は、図9に示すように、ステップS23で取得された対象を描出している確認用画像データを複数の領域に分け、領域ごとにステップS24で決定された画像処理を施す(ステップS27)。ステップS27の処理は、上述したステップS16の処理と同様である。
【0069】
処理回路36は、図9に示すように、生成すべき確認用画像データがあるか否かを判定する(ステップS28)。処理回路36は、生成すべき確認用画像データがあると判定した場合(ステップS28肯定)、処理をステップS25へ戻す。処理回路36は、生成すべき確認用画像データがないと判定した場合(ステップS28否定)、処理を終了させる。
【0070】
処理回路36は、図9に示したステップS25からステップS28までの処理は、確認用画像データが表示される度に実行してもよい。つまり、処理回路36は、画像生成機能363を実行することにより、確認用画像データに係る投影データを逐一再構成し、確認用画像データを逐一生成する。そして、処理回路36は、画像処理機能365を実行することにより、確認用画像データが生成される度に当該確認用画像データに画像処理を施す。
【0071】
以上、第2の実施形態に係るX線CT装置1について説明した。第2の実施形態に係るX線CT装置1は、本スキャンにより生成された第1の画像データが描出している対象の位置を取得し、この対象の位置に基づいて画像データを複数の領域に分け、領域ごとに画像処理を施す。このため、第2の実施形態に係るX線CT装置1は、第1の実施形態に係るX線CT装置1と同様の効果を奏する。
【0072】
上述したプロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device:PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)である。また、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device:PLD)は、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)である。
【0073】
上述した実施形態では、高電圧発生回路11、コリメータ調整回路12、架台駆動回路13、データ収集回路16、寝台駆動回路22及び処理回路36は、記憶回路35に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、その機能を実現したが、これに限定されない。記憶回路35にプログラムを保存する代わりに、これらの回路それぞれにプログラムを直接組み込んでもよい。この場合、これらの回路は、直接組み込まれたプログラムを読み出して実行することにより、その機能を実現する。
【0074】
図1に示した各回路は、適宜分散又は統合されてもよい。例えば、処理回路36は、スキャン制御機能361、前処理機能362、画像生成機能363、取得機能364、画像処理機能365及び制御機能366それぞれの機能を実行するスキャン制御回路、前処理回路、画像生成回路、取得回路、画像処理回路及び制御回路に分散されてもよい。また、例えば、高電圧発生回路11、コリメータ調整回路12、架台駆動回路13、データ収集回路16、寝台駆動回路22及び処理回路36は、任意に統合されてもよい。
【0075】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、自動的に対象に応じた画像処理を施すことができるX線CT装置を提供することができる。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0077】
361 スキャン制御機能
363 画像生成機能
364 取得機能
365 画像処理機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9