特許第6765894号(P6765894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765894
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】医用画像処理装置及び医用画像診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20200928BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20200928BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20200928BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   A61B8/00
   A61B5/055 380
   A61B6/03 360Z
   G06T1/00 290C
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-152143(P2016-152143)
(22)【出願日】2016年8月2日
(65)【公開番号】特開2018-19837(P2018-19837A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢部 仁美
(72)【発明者】
【氏名】篠田 健輔
(72)【発明者】
【氏名】古舘 直幸
【審査官】 永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−183069(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/150783(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0093385(US,A1)
【文献】 特開2002−034948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
A61B 5/055
A61B 6/00
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に関する画像データを取得する取得部と、
前記画像データに基づいて、前記被検体の部位が描出された画像とともに、部位ごとに定義された解剖学的な方向を示す情報を表示させる表示制御部とを備え
前記部位ごとに定義された解剖学的な方向を示す情報は、前記被検体の第1の部位に対して定義された解剖学的な方向を示す第1の情報と、前記第1の部位とは異なる前記被検体の第2の部位に対して定義された前記第1の情報とは異なる解剖学的な方向を示す第2の情報とを含み、
前記表示制御部は、前記被検体の部位に応じて前記第1の情報又は前記第2の情報を表示させる、医用画像処理装置。
【請求項2】
被検体に関する画像データを取得する取得部と、
前記画像データから前記被検体の部位に関する特徴点を検出し、前記特徴点に基づいて解剖学的な方向を定義する検出部と、
前記検出部により定義された解剖学的な方向を示す文字情報を前記画像データとともに表示させる表示制御部とを備え
前記解剖学的な方向を示す文字情報は、前記被検体の第1の部位の解剖学的な方向を示す第1の文字情報と、前記第1の部位とは異なる第2の部位の解剖学的な方向を示す第2の文字情報とを含み、
前記表示制御部は、前記被検体の部位に応じて前記第1の文字情報又は前記第2の文字情報を表示させ、医用画像処理装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記特徴点を複数検出し、複数の前記特徴点を通る線又は面を特定することにより、前記解剖学的な方向を定義する、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記特徴点を複数検出し、複数の前記特徴点から近似して求められる線又は面を特定することにより、前記解剖学的な方向を定義する、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記解剖学的な方向を示す情報として、前記画像データを生成した医用画像診断装置において定義された上下方向、左右方向及び前後方向を示す情報とは異なる情報を表示させる、
請求項1〜4のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記画像データを生成した医用画像診断装置において定義された上下方向、左右方向及び前後方向から前記解剖学的な方向を再定義し、再定義された方向を示す情報を表示させる、
請求項1〜5のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記画像データから前記部位に関する特徴点を検出し、検出された特徴点に基づいて、前記解剖学的な方向を再定義する、
請求項6に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記検出された特徴点を通るベクトル又は断面を特定し、特定されたベクトル又は断面の方向に基づいて、前記解剖学的な方向を再定義する、
請求項7に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記画像データから前記部位に含まれる特徴的な領域又は区間を検出し、検出された領域又は区間の形状に基づいて、前記解剖学的な方向を再定義する、
請求項6に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記画像データに対して方向を設定する操作を操作者から受け付け、当該操作によって設定された方向に基づいて、前記解剖学的な方向を再定義する、
請求項6に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
被検体に関する画像データを生成する生成部と、
前記画像データに基づいて、前記被検体の部位が描出された画像とともに、部位ごとに定義された解剖学的な方向を示す情報を表示させる表示制御部とを備え
前記部位ごとに定義された解剖学的な方向を示す情報は、前記被検体の第1の部位に対して定義された解剖学的な方向を示す第1の情報と、前記第1の部位とは異なる前記被検体の第2の部位に対して定義された前記第1の情報とは異なる解剖学的な方向を示す第2の情報とを含み、
前記表示制御部は、前記被検体の部位に応じて前記第1の情報又は前記第2の情報を表示させる、医用画像診断装置。
【請求項12】
被検体に関する画像データを生成する生成部と、
前記画像データから前記被検体の部位に関する特徴点を検出し、前記特徴点に基づいて解剖学的な方向を定義する検出部と、
前記検出部により定義された解剖学的な方向を示す文字情報を前記画像データとともに表示させる表示制御部とを備え
前記解剖学的な方向を示す文字情報は、前記被検体の第1の部位の解剖学的な方向を示す第1の文字情報と、前記第1の部位とは異なる第2の部位の解剖学的な方向を示す第2の文字情報とを含み、
前記表示制御部は、前記被検体の部位に応じて前記第1の文字情報又は前記第2の文字情報を表示させ、医用画像診断装置。
【請求項13】
前記生成部は、位置決め画像の画像データを生成し、
前記表示制御部は、前記位置決め画像を用いて位置決めされた撮像位置の画像とともに、前記解剖学的な方向を示す情報を表示させる、
請求項11又は12に記載の医用画像診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置及び医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置やX線CT(Computed Tomography)装置等の医用画像診断装置によって撮像された画像を表示する際に、当該画像の方向を示す情報を表示する技術が知られている。例えば、画像の方向を示す情報として、医用画像診断装置において定義された上下方向、左右方向及び前後方向を示す情報を画像とともに表示する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−78980号公報
【特許文献2】特開2011−142974号公報
【特許文献3】特開2015−213748号公報
【特許文献4】特開2008−104624号公報
【特許文献5】特開2009−089736号公報
【特許文献6】特開2008−206962号公報
【特許文献7】特開2013−102889号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】[平成28年5月2日検索]、インターネット<URL:http://images.philips.com/is/image/PhilipsConsumer/HC795200-CIL-ja_JP-007?wid=960&hei=500>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、画像に描出された部位に関する被検体の構造上の方向を操作者がより容易に把握することができる医用画像処理装置及び医用画像診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、表示制御部とを備える。取得部は、被検体に関する画像データを取得する。表示制御部は、前記画像データに基づいて、前記被検体の部位が描出された画像とともに、部位ごとに定義された解剖学的な方向を示す情報を表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る表示制御機能によって行われる特徴点の検出及びベクトルの特定の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る表示制御機能によって行われる解剖学的な方向の再定義の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る表示制御機能によって行われる解剖学的な方向の表示の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る表示制御機能によって表示される解剖学的な方向に対する比較例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置が有する各処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
図7図7は、第1の実施形態に係る表示制御機能によって行われる特徴点の検出及びベクトルの特定の他の例を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
図9図9は、第2の実施形態に係る表示制御機能によって行われる特徴点の検出及びベクトルの特定の一例を示す図である。
図10図10は、第2の実施形態に係る表示制御機能によって行われる解剖学的な方向の表示の一例を示す図である。
図11図11は、第2の実施形態に係る表示制御機能によって表示される解剖学的な方向に対する比較例を示す図である。
図12図12は、第2の実施形態に係るMRI装置が有する各処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
図13図13は、第1及び第2の実施形態の変形例に係る解剖学的な方向を示す情報の他の例を示す図である。
図14図14は、第1及び第2の実施形態の変形例に係る解剖学的な方向の他の例を示す図である。
図15図15は、第1及び第2の実施形態の変形例に係る解剖学的な方向の他の例を示す図である。
図16図16は、第1及び第2の実施形態の変形例に係る解剖学的な方向の他の例を示す図である。
図17図17は、第1及び第2の実施形態の変形例に係る解剖学的な方向の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置及び医用画像診断装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の構成例を示す図である。例えば、図1に示すように、本実施形態に係る医用画像処理装置300は、ネットワーク400を介して、MRI装置100と、医用画像保管装置200とに接続される。
【0010】
MRI装置100は、磁気共鳴現象を利用して被検体のデータを収集し、収集したデータに基づいて画像を生成する。具体的には、MRI装置100は、操作者によって設定された撮像条件に基づいて各種撮像シーケンスを実行することで、被検体から磁気共鳴データを収集する。そして、MRI装置100は、収集した磁気共鳴データに対してフーリエ変換処理等の画像処理を施すことで、2次元又は3次元の画像データを生成する。
【0011】
医用画像保管装置200は、各種画像診断装置によって収集された画像データを保管する。具体的には、医用画像保管装置200は、ネットワーク400を介してMRI装置100から画像データを取得し、取得した画像データを装置内又は装置外に設けられた記憶回路に記憶させる。例えば、医用画像保管装置200は、サーバ装置等のコンピュータ機器によって実現される。
【0012】
医用画像処理装置300は、各種画像診断装置によって収集された画像データを処理する。具体的には、医用画像処理装置300は、ネットワーク400を介してMRI装置100又は医用画像保管装置200から画像データを取得し、取得した画像データに基づいて、各種画像をディスプレイ等に表示する。例えば、医用画像処理装置300は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。
【0013】
例えば、図1に示すように、医用画像処理装置300は、I/F(インターフェース)回路310と、記憶回路320と、入力回路330と、ディスプレイ340と、処理回路350とを備える。
【0014】
I/F回路310は、医用画像処理装置300と、ネットワーク400を介して接続された他の装置との間で送受信される各種データの伝送及び通信を制御する。具体的には、I/F回路310は、処理回路350に接続され、処理回路350から出力される画像データを所定の通信プロトコルに準拠した形式に変換し、MRI装置100又は医用画像保管装置200に送信する。また、I/F回路310は、MRI装置100又は医用画像保管装置200から受信した画像データを処理回路350に出力する。例えば、I/F回路310は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0015】
記憶回路320は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路320は、処理回路350に接続され、処理回路350から送られる命令に応じて、入力された画像データを記憶し、又は、記憶している画像データを処理回路350に出力する。例えば、記憶回路320は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0016】
入力回路330は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力回路330は、処理回路350に接続され、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路350に出力する。例えば、入力回路330は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、タッチパネル等によって実現される。
【0017】
ディスプレイ340は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ340は、処理回路350に接続され、処理回路350から出力される画像データに基づいて、各種の形式で画像を表示する。例えば、ディスプレイ340は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0018】
処理回路350は、入力回路330を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、医用画像処理装置300が有する各構成要素を制御する。具体的には、処理回路350は、I/F回路310から出力される画像データを記憶回路320に記憶させる。また、処理回路350は、記憶回路320から読み出した画像データをディスプレイ340に表示する。例えば、処理回路350は、プロセッサによって実現される。
【0019】
以上、本実施形態に係る医用画像処理装置300の構成例について説明した。このような構成のもと、医用画像処理装置300は、MRI装置100又は医用画像保管装置200から被検体に関する画像データを取得する。そして、医用画像処理装置300は、取得した画像データに基づいて、被検体の部位が描出された画像とともに、当該画像の方向を示す情報を表示させる。
【0020】
ここで、一般的に、読影医等が画像を参照して診断を行う際には、被検体の構造上の方向を把握したうえで、画像に描出されている部位を観察することが多い。ここでいう被検体の構造上の方向は、被検体の形態及び構造に基づいて定義される解剖学的な方向として表され、被検体の部位ごとに個別に定義される。例えば、肩については、解剖学的な方向として、体幹に近い側を近位(Proximal)、体幹から遠い側を遠位(Distal)とした近遠位方向が定義される。
【0021】
これに対し、例えば、画像の方向を示す情報として、医用画像診断装置において定義された上下方向、左右方向及び前後方向を示す情報を画像とともに表示する技術が知られている。例えば、上下方向は、「H」(=上)及び「F」(=下)等の文字情報で表され、左右方向は、「L」(=左)及び「R」(=右)等の文字情報で表され、前後方向は、「A」(=前)及び「P」(=後)等の文字情報で表される。
【0022】
しかしながら、このような情報からでは、診断対象の部位によっては、画像に描出された部位に関する被検体の構造上の方向を把握することが難しい場合もあり得る。
【0023】
例えば、診断対象が肩である場合には、一般的に、撮像される断面が、肩関節を中心として、前後方向及び左右方向に対して斜めに設定されることが多い。また、例えば、診断対象が手である場合には、掌の向きを自由に変えることが可能であるため、撮像される断面が上下方向、左右方向又は前後方向に対して斜めに設定されることがあり得る。また、例えば、診断対象が関節周辺の部位である場合には、被検体の容態によって、間接を曲げた状態又は伸ばした状態で撮像を行わざるを得ない場合もあるため、撮像される断面が上下方向、左右方向又は前後方向に対して斜めに設定されることがあり得る。
【0024】
このように、撮像される断面が上下方向、左右方向又は前後方向に対して斜めに設定されるような場合には、例えば、画像の方向を示す情報として、複数の方向を組み合わせた情報が表示される。例えば、「LPH」、「RAF」、「FL」、「HR」等のように、複数の方向を組み合わせた文字情報が表示される。しかし、このような情報からでは、画像に描出された部位に関する被検体の構造上の方向を直感的に把握することが難しい場合があり得る。
【0025】
このようなことから、本実施形態に係る医用画像処理装置300は、部位ごとに定義された解剖学的な方向を示す情報を画像とともに表示させることによって、画像に描出された部位に関する被検体の構造上の方向を操作者がより容易に把握することができるように構成されている。
【0026】
具体的には、処理回路350が、取得機能351と、生成機能352と、表示制御機能353とを備える。なお、取得機能351は、特許請求の範囲における取得部の一例である。また、表示制御機能353は、特許請求の範囲における表示制御部の一例である。
【0027】
取得機能351は、被検体に関する画像データを取得する。具体的には、取得機能351は、ネットワーク400を介して、MRI装置100又は医用画像保管装置200から画像データを取得し、取得した画像データを記憶回路320に記憶させる。
【0028】
例えば、取得機能351は、被検体に関する3次元画像データを取得する。ここでいう3次元画像データは、MRI装置100が2Dシーケンスを複数回実行することによって得られたマルチスライスデータであってもよいし、MRI装置100が3Dシーケンスを実行することによって得られたボリュームデータであってもよい。
【0029】
なお、ここでいう2Dシーケンスは、スライス方向に沿った1つ又は複数の位置について、位相エンコード方向及びリードアウト方向にエンコードを行うことで、2次元の断面(スライス)画像を収集するパルスシーケンスである。また、3Dシーケンスは、位相エンコード方向及びリードアウト方向だけでなく、スライス方向にもエンコードを行うことで、3次元のボリュームデータを収集するパルスシーケンスである。
【0030】
生成機能352は、取得機能351によって取得された画像データに基づいて、被検体の部位が描出された画像を生成する。具体的には、生成機能352は、取得機能351によって取得された画像データを記憶回路320から読み出し、読み出した画像データに対して各種の画像処理を施すことで、各種の画像を生成する。
【0031】
例えば、生成機能352は、取得機能351によって取得された3次元画像データに基づいて、2次元の画像を生成する。例えば、生成機能352は、3次元画像データに対してMPR(Multi Planer Reconstruction)を行うことで、被検体の部位の断面の画像を生成する。また、例えば、生成機能352は、3次元画像に対してボリュームレンダリング等を行うことで、被検体の部位のレンダリング画像を生成する。
【0032】
表示制御機能353は、取得機能351によって取得された画像データに基づいて、被検体の部位が描出された画像とともに、部位ごとに定義された解剖学的な方向を示す情報をディスプレイ340に表示させる。
【0033】
ここで、表示制御機能353は、解剖学的な方向を示す情報として、画像データを生成したMRI装置100において定義された上下方向、左右方向及び前後方向を示す情報とは異なる情報を表示させる。具体的には、表示制御機能353は、MRI装置100において定義された上下方向、左右方向及び前後方向から解剖学的な方向を再定義し、再定義された方向を示す情報を表示させる。
【0034】
例えば、表示制御機能353は、画像データから被検体の部位に関する特徴点を検出し、検出された特徴点に基づいて、解剖学的な方向を再定義する。例えば、表示制御機能353は、画像データから被検体の部位に関する特徴点を検出し、検出された特徴点を通るベクトルを特定し、特定されたベクトルの方向に基づいて、解剖学的な方向を再定義する。
【0035】
例えば、表示制御機能353は、取得機能351によって取得された3次元画像データから被検体の部位に関する特徴点を検出し、検出された特徴点を通るベクトルを特定する。この場合に、表示制御機能353が画像データから特徴点を検出する方法としては、一般的に知られた各種の特定部位推定技術を用いることができる。また、画像データから抽出される特徴点は、診断対象の部位ごとに、あらかじめ定義されている。
【0036】
図2は、第1の実施形態に係る表示制御機能353によって行われる特徴点の検出及びベクトルの特定の一例を示す図である。例えば、図2に示すように、表示制御機能353は、診断対象の部位が肩である場合には、肩甲上腕関節面の中心を1つの特徴点23として検出し、上腕骨頭の中心をもう1つの特徴点24として検出する。そして、表示制御機能353は、検出された2つの特徴点23及び24を通り、かつ、肩甲上腕関節面の中心である特徴点23の側から上腕骨頭の中心である特徴点24の側へ向かうベクトル25を特定する。
【0037】
その後、表示制御機能353は、特定されたベクトルの方向に基づいて、MRI装置100において定義された上下方向、左右方向及び前後方向から解剖学的な方向を再定義する。ここでいう解剖学的な方向とは、前述したように、被検体の構造上の方向を表す方向であり、診断対象の部位ごとに、あらかじめ定義されている。例えば、肩については、解剖学的な方向として、体幹に近い側を近位(Proximal)、体幹から遠い側を遠位(Distal)とした近遠位方向が定義されている。
【0038】
図3は、第1の実施形態に係る表示制御機能353によって行われる解剖学的な方向の再定義の一例を示す図である。ここで、図3の上側に示すF→H、R→L及びP→Aは、MRI装置100において定義された上下方向、左右方向及び前後方向を示している。具体的には、F→Hは上下方向を示し、R→Lは左右方向を示し、P→Aは前後方向を示している。また、図3の下側に示すF’→H’、R’→L’及びP’→A’は、特定の部位に関する解剖学的な方向を示している。具体的には、F’→H’は、解剖学的な方向における上下方向を示し、R’→L’は、解剖学的な方向における左右方向を示し、P’→A’は、解剖学的な方向における前後方向を示している。
【0039】
例えば、図3の下側に示すように、表示制御機能353は、診断対象の部位が肩である場合には、肩の3次元画像データ22から検出された2つの特徴点23及び24に基づいて特定されたベクトル25の方向をR’→L’として定義する。そして、さらに、表示制御機能353は、R’側を近位(Proximal)、L’側を遠位(Distal)とすることで、近遠位方向を定義する。なお、この場合に、例えば、表示制御機能353は、F→Hの方向をF’→H’として定義し、R’→L’及びF’→H’の両方に直交する方向をP’→A’として定義する。
【0040】
そして、表示制御機能353は、被検体の部位が描出された画像とともに、再定義された方向を示す情報をディスプレイ340に表示させる。例えば、表示制御機能353は、生成機能352によって生成された2次元の画像とともに、部位ごとに定義された解剖学的な方向を示す情報をディスプレイ340に表示させる。
【0041】
図4は、第1の実施形態に係る表示制御機能353によって行われる解剖学的な方向の表示の一例を示す図である。例えば、図4に示すように、表示制御機能353は、診断対象の部位が肩である場合には、図2に示した3次元画像データ22における特徴点23及び24を通る断面の画像41をディスプレイ340に表示させる。そして、表示制御機能353は、画像41とともに、肩に関する解剖学的な方向を示す情報として、上下方向を示す「H」及び「F」の文字情報と、近遠位方向を示す「Proximal」及び「Distal」の文字情報とをディスプレイ340に表示させる。
【0042】
図5は、第1の実施形態に係る表示制御機能353によって表示される解剖学的な方向に対する比較例を示す図である。ここで、図5は、仮に、図4に示した画像41とともに、MRI装置100において定義された上下方向、左右方向及び前後方向を示す情報を表示した場合の例を示している。この場合には、例えば、図5に示すように、近遠位方向と同じ方向を示す情報として、「RA」及び「LP」の文字情報が表示される。このような情報では、操作者は、画像41について、前後方向及び左右方向に対して断面が傾いていることは認識できるものの、どちらの側が体幹に近い側(近位)であるか、又は、体幹から遠い側(遠位)であるかを直感的に把握することは難しい。
【0043】
これに対し、本実施形態では、例えば、図4に示すように、診断対象の部位が肩である場合に、近遠位方向を示す情報が画像41とともに表示される。これにより、読影医等の操作者が、画像41を参照して被検体の肩の診断を行う際に、体幹に近い側、及び、体幹から遠い側を容易に把握することができる。
【0044】
以上、処理回路350が有する各処理機能について説明した。これらの処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路320に記憶される。処理回路350は、各プログラムを記憶回路320から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路350は、図1に示した各処理機能を有することとなる。
【0045】
なお、図1では、上述した各処理機能が単一の処理回路350によって実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路350は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路350が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0046】
図6は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置300が有する各処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0047】
例えば、図6に示すように、本実施形態に係る医用画像処理装置300では、取得機能351が、ネットワーク400を介して、MRI装置100又は医用画像保管装置200から被検体に関する画像データを取得する(ステップS101)。
【0048】
続いて、生成機能352が、取得機能351によって取得された画像データに基づいて、被検体の部位が描出された画像を生成する(ステップS102)。
【0049】
また、表示制御機能353が、取得機能351によって取得された画像データから被検体の部位に関する特徴点を検出する(ステップS103)。
【0050】
さらに、表示制御機能353は、検出された特徴点を通るベクトルを特定し(ステップS104)、特定されたベクトルの方向に基づいて、解剖学的な方向を再定義する(ステップS105)。
【0051】
そして、表示制御機能353は、生成機能352によって生成された画像とともに、部位ごとに定義された解剖学的な方向を示す情報をディスプレイ340に表示させる(ステップS106)。
【0052】
なお、上述した各ステップのうち、ステップS101は、例えば、処理回路350が取得機能351に対応する所定のプログラムを記憶回路320から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS102は、例えば、処理回路350が生成機能352に対応する所定のプログラムを記憶回路320から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS103〜S106は、例えば、処理回路350が表示制御機能353に対応する所定のプログラムを記憶回路320から呼び出して実行することにより実現される。
【0053】
上述したように、第1の実施形態では、診断対象の部位が肩である場合に、近遠位方向を示す情報が画像41とともに表示される。これにより、読影医等の操作者が、画像41を参照して被検体の肩の診断を行う際に、体幹に近い側、及び、体幹から遠い側を容易に把握することができる。すなわち、本実施形態によれば、部位ごとに定義された解剖学的な方向を示す情報を画像とともに表示させることによって、画像に描出された部位に関する被検体の構造上の方向を操作者がより容易に把握することができる。
【0054】
なお、上述した第1の実施形態では、表示制御機能353が、画像データから検出された特徴点を通るベクトルを特定し、特定されたベクトルの方向に基づいて、解剖学的な方向を再定義する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、表示制御機能353は、画像データから検出された特徴点を通る断面を特定し、特定された断面の方向に基づいて、解剖学的な方向を再定義してもよい。
【0055】
図7は、第1の実施形態に係る表示制御機能353によって行われる特徴点の検出及びベクトルの特定の他の例を示す図である。なお、図7に示すF→Hは、MRI装置100において定義された上下方向を示しており、R→Lは、MRI装置100において定義された左右方向を示しており、A→Pは、MRI装置100において定義された前後方向を示している。例えば、図7に示すように、表示制御機能353は、診断対象の部位が肩である場合に、図2に示した例と同様に、肩21を撮像した3次元画像データ22から2つの特徴点23及び24を検出する。そして、表示制御機能353は、検出した2つの特徴点23及び24を通る断面74を特定する。
【0056】
その後、表示制御機能353は、特定された断面の方向に基づいて、MRI装置100において定義された上下方向、左右方向及び前後方向から解剖学的な方向を再定義する。例えば、図7に示すように、表示制御機能353は、特定した断面74に沿ってF→Hの方向と直交し、かつ、肩甲上腕関節面の中心である特徴点23の側から上腕骨頭の中心である特徴点24の側へ向かう方向をR’→L’として定義する。そして、表示制御機能353は、R’側を近位(Proximal)とし、L’側を遠位(Distal)とすることで、近遠位方向を定義する。なお、この場合に、例えば、表示制御機能353は、F→Hの方向をF’→H’として定義し、R’→L’及びF’→H’の両方に直交する方向をA’→P’として定義する。
【0057】
また、上述した第1の実施形態では、表示制御機能353が、特徴点を通るベクトル又は断面の方向に基づいて解剖学的な方向を再定義する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、表示制御機能353は、画像データから3つ以上の特徴点を検出し、検出された特徴点に関する近似直線を求めることで、解剖学的な方向を再定義してもよい。
【0058】
また、上述した第1の実施形態では、表示制御機能353が、画像データから特徴点を検出することで、解剖学的な方向を自動的に再定義する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、表示制御機能353は、画像データに対して方向を設定する操作を操作者から受け付け、当該操作により設定された方向に基づいて、解剖学的な方向を再定義してもよい。
【0059】
この場合には、例えば、表示制御機能353は、取得機能351によって取得された3次元画像データをディスプレイ340に表示する。例えば、表示制御機能353は、3次元画像データを立体的に表示したり、3次元画像データから生成された少なくとも2つの異なる断面の画像を表示したりする。さらに、表示制御機能353は、表示した3次元画像データ上に、図2に示したベクトル又は図7に示した断面を表すグラフィックを表示し、入力回路330を介して、当該グラフィックの位置や形状を設定する操作を操作者から受け付ける。そして、表示制御機能353は、グラフィックに対する操作により設定されたベクトル又は断面の方向に基づいて、上述した例と同様に、解剖学的な方向を再定義する。このとき、表示制御機能353は、診断対象の部位に応じて、部位ごとにあらかじめ決められた解剖学的な方向を定義する。
【0060】
また、上述した第1の実施形態では、医用画像処理装置300が、MRI装置100から画像データを取得する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、医用画像処理装置300は、ネットワーク400を介して、X線CT(Computed Tomography)装置や、超音波診断装置、PET(Positron Emission Tomography)装置等の他の医用画像診断装置から画像データを取得して、上述した例と同様の処理を行ってもよい。
【0061】
(第2の実施形態)
以上、医用画像処理装置の実施形態について説明したが、上述した医用画像処理装置300の構成は、医用画像診断装置に適用することも可能である。そこで、以下では、第2の実施形態として、上述した医用画像処理装置300の構成をMRI装置に適用した場合の例を説明する。
【0062】
図8は、第2の実施形態に係るMRI装置100の構成例を示す図である。例えば、図8に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、送信コイル4、送信回路5、受信コイル6、受信回路7、寝台8、入力回路9、ディスプレイ10、記憶回路11、処理回路12〜15を備える。
【0063】
静磁場磁石1は、中空の略円筒形状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、内周側に形成される撮像空間に一様な静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、永久磁石や超伝導磁石等によって実現される。
【0064】
傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒形状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、静磁場磁石1の内周側に配置される。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するx軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を発生させる3つのコイルを含む。ここで、x軸、y軸及びz軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、x軸の方向は、水平方向に設定され、y軸の方向は、鉛直方向に設定され、z軸の方向は、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束の方向と同じに設定される。
【0065】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2が有する3つのコイルそれぞれに個別に電流を供給することで、x軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を撮像空間に発生させる。x軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を適宜に発生させることによって、互いに直交するリードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場を発生させることができる。ここで、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。なお、以下では、リードアウト方向に沿った傾斜磁場をリードアウト傾斜磁場と呼び、位相エンコード方向に沿った傾斜磁場を位相エンコード傾斜磁場と呼び、スライス方向に沿った傾斜磁場をスライス傾斜磁場と呼ぶ。
【0066】
ここで、各傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳され、磁気共鳴信号(Magnetic Resonance:MR)に空間的な位置情報を付与するために用いられる。具体的には、リードアウト傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、MR信号にリードアウト方向に沿った位置情報を付与する。また、位相エンコード傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、MR信号に位相エンコード方向の位置情報を付与する。また、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ、枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させることで、MR信号にスライス方向に沿った位置情報を付与する。
【0067】
送信コイル4は、中空の略円筒形状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、傾斜磁場コイル2の内側に配置される。送信コイル4は、送信回路5から出力されるRF(Radio Frequency)パルスを撮像空間に印加する。
【0068】
送信回路5は、ラーモア周波数に対応するRFパルスを送信コイル4に出力する。例えば、送信回路5は、発振回路、位相選択回路、周波数変換回路、振幅変調回路、及び、RF増幅回路を含む。発振回路は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有の共鳴周波数のRFパルスを発生する。位相選択回路は、発振回路から出力されるRFパルスの位相を選択する。周波数変換回路は、位相選択回路から出力されるRFパルスの周波数を変換する。振幅変調回路は、周波数変換回路から出力されるRFパルスの振幅を例えばsinc関数に従って変調する。RF増幅回路は、振幅変調回路から出力されるRFパルスを増幅して送信コイル4に出力する。
【0069】
受信コイル6は、被検体Sから発せられるMR信号を受信するRFコイルである。具体的には、受信コイル6は、撮像空間に置かれた被検体Sに装着され、送信コイル4によって印加されるRF磁場の影響で被検体Sから発せられるMR信号を受信するRFコイルである。また、受信コイル6は、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。例えば、受信コイル6として、撮像対象の部位ごとに用意された専用のコイルが用いられる。ここでいう専用のコイルは、例えば、頭部用の受信コイル、頚部用の受信コイル、肩用の受信コイル、胸部用の受信コイル、腹部用の受信コイル、下肢用の受信コイル、脊椎用の受信コイル等である。
【0070】
受信回路7は、受信コイル6から出力されるMR信号に基づいてMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路13に出力する。例えば、受信回路7は、選択回路、前段増幅回路、位相検波回路、及び、アナログデジタル変換回路を含む。選択回路は、受信コイル6から出力されるMR信号を選択的に入力する。前段増幅回路は、選択回路から出力されるMR信号を増幅する。位相検波回路は、前段増幅回路から出力されるMR信号の位相を検波する。アナログデジタル変換回路は、位相検波回路から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換することでMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路13に出力する。
【0071】
なお、ここでは、送信コイル4がRFパルスを印加し、受信コイル6がMR信号を受信する場合の例を説明するが、送信コイル及び受信コイルの形態はこれに限られない。例えば、送信コイル4が、MR信号を受信する受信機能をさらに有してもよい。また、受信コイル6が、RF磁場を印加する送信機能をさらに有していてもよい。送信コイル4が受信機能を有している場合は、受信回路7は、送信コイル4によって受信されたMR信号からもMR信号データを生成する。また、受信コイル6が送信機能を有している場合は、送信回路5は、受信コイル6にもRFパルスを出力する。
【0072】
寝台8は、被検体Sが載置される天板8aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、静磁場磁石1及び傾斜磁場コイル2の内側に形成される撮像空間へ天板8aを挿入する。例えば、天板8aは、略矩形状に形成されており、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。
【0073】
入力回路9は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力回路9は、処理回路15に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路15へ出力する。例えば、入力回路9は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、タッチパネル等によって実現される。
【0074】
ディスプレイ10は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ10は、処理回路15に接続されており、処理回路15から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ10は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0075】
記憶回路11は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路11は、MR信号データや画像データを被検体Sごとに記憶する。例えば、記憶回路11は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0076】
処理回路12は、寝台制御機能12aを有する。具体的には、寝台制御機能12aは、寝台8に接続され、制御用の電気信号を寝台8へ出力することで、寝台8の動作を制御する。例えば、寝台制御機能12aは、入力回路9を介して、天板8aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板8aを移動するように、寝台8が有する天板8aの駆動機構を動作させる。例えば、処理回路12は、プロセッサによって実現される。
【0077】
処理回路13は、収集機能13aを有する。具体的には、収集機能13aは、各種パルスシーケンスを実行することで、被検体SのMR信号データを収集する。具体的には、収集機能13aは、処理回路15から出力されるシーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信回路5及び受信回路7を駆動することで、各種パルスシーケンスを実行する。例えば、処理回路13は、プロセッサによって実現される。
【0078】
ここで、シーケンス実行データは、MR信号データを収集するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。具体的には、シーケンス実行データは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給される電流の強さ、送信回路5が送信コイル4に供給するRFパルス電流の強さや供給タイミング、受信回路7がMR信号を検出する検出タイミング等を定義した情報である。
【0079】
また、収集機能13aは、各種パルスシーケンスを実行した結果として、受信回路7からMR信号データを受信し、受信したMR信号データを記憶回路11に格納する。なお、収集機能13aによって受信されたMR信号データの集合は、前述したリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて2次元又は3次元に配列されることで、k空間を構成するデータとして記憶回路11に格納される。
【0080】
処理回路14は、生成機能14aを有する。例えば、処理回路14は、プロセッサによって実現される。生成機能14aは、収集機能13aによって収集されたMR信号データに基づいて画像データを生成する。具体的には、生成機能14aは、収集機能13aによって記憶回路11に格納されたMR信号データを読み出し、読み出したMR信号データに後処理すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、画像データを生成する。また、生成機能14aは、生成した画像データを記憶回路11に格納する。
【0081】
処理回路15は、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、処理回路15は、プロセッサによって実現される。例えば、処理回路15は、入力回路9を介して操作者からパルスシーケンスに関する各種のパラメータの入力を受け付け、受け付けたパラメータに基づいてシーケンス実行データを生成する。そして、処理回路15は、生成したシーケンス実行データを処理回路13に送信することで、各種のパルスシーケンスを実行する。また、例えば、処理回路15は、操作者から要求された画像の画像データを記憶回路11から読み出し、読み出した画像をディスプレイ10に出力する。
【0082】
以上、本実施形態に係るMRI装置100の構成例について説明した。このような構成のもと、MRI装置100は、被検体に関する画像データを生成する。そして、医用画像処理装置300は、生成された画像データに基づいて、被検体の部位が描出された画像とともに、当該画像の方向を示す情報を表示させる。
【0083】
ここで、本実施形態に係るMRI装置100は、第1の実施形態で説明した医用画像処理装置300と同様に、部位ごとに定義された解剖学的な方向を示す情報を画像とともに表示させることによって、画像に描出された部位に関する被検体の構造上の方向を操作者がより容易に把握することができるように構成されている。
【0084】
具体的には、処理回路14の生成機能14aが、被検体に関する画像データを生成する。なお、生成機能14aは、特許請求の範囲における生成部の一例である。
【0085】
例えば、生成機能14aは、位置決め画像用のデータとして収集されたMR信号データに基づいて、位置決め画像を生成する。また、生成機能14aは、位置決め画像を用いて位置決めされた撮像位置から収集されたMR信号データに基づいて、画像を生成する。ここで、生成される画像は、診断画像として用いられたり、さらに次に撮像される画像の撮像位置を決めるための位置決め画像として用いられたりする。
【0086】
また、処理回路15が、表示制御機能15aを備える。なお、表示制御機能15aは、特許請求の範囲における表示制御部の一例である。
【0087】
表示制御機能15aは、生成機能14aによって生成された画像データに基づいて、被検体の部位が描出された画像とともに、部位ごとに定義された解剖学的な方向を示す情報をディスプレイ10に表示させる。
【0088】
例えば、表示制御機能15aは、生成機能14aによって生成された位置決め画像を用いて位置決めされた撮像位置の画像とともに、部位ごとに定義された解剖学的な方向を示す情報を表示させる。
【0089】
ここで、表示制御機能15aは、解剖学的な方向を示す情報として、画像データを生成したMRI装置100において定義された上下方向、左右方向及び前後方向を示す情報とは異なる情報を表示させる。具体的には、表示制御機能15aは、MRI装置100において定義された上下方向、左右方向及び前後方向から解剖学的な方向を再定義し、再定義された方向を示す情報を表示させる。
【0090】
例えば、表示制御機能15aは、画像データから被検体の部位に関する特徴点を検出し、検出された特徴点に基づいて、解剖学的な方向を再定義する。例えば、表示制御機能15aは、画像データから被検体の部位に関する特徴点を検出し、検出された特徴点を通るベクトルを特定し、特定されたベクトルの方向に基づいて、解剖学的な方向を再定義する。
【0091】
例えば、表示制御機能15aは、生成機能14aによって生成された位置決め画像から被検体の部位に関する特徴点を検出し、検出された特徴点を通るベクトルを特定する。この場合に、表示制御機能15aが画像データから特徴点を検出する方法としては、一般的に知られた各種の特定部位推定技術を用いることができる。また、画像データから抽出される特徴点は、診断対象の部位ごとに、あらかじめ定義されている。
【0092】
図9は、第2の実施形態に係る表示制御機能15aによって行われる特徴点の検出及びベクトルの特定の一例を示す図である。例えば、図9に示すように、表示制御機能15aは、診断対象の部位が膝である場合には、膝91を撮像した位置決め画像92から、大腿骨外側顆を1つの特徴点93として検出し、大腿骨内側顆をもう1つの特徴点94として検出する。そして、表示制御機能15aは、検出された2つの特徴点93及び94を通り、かつ、大腿骨外側顆である特徴点93の側から大腿骨内側顆である特徴点94の側へ向かうベクトル95を特定する。
【0093】
その後、表示制御機能15aは、特定されたベクトルの方向に基づいて、MRI装置100において定義された上下方向、左右方向及び前後方向から解剖学的な方向を再定義する。ここでいう解剖学的な方向とは、前述したように、被検体の構造上の方向を表す方向であり、被検体の部位ごとに個別に定義される。例えば、膝については、解剖学的な方向として、正中に近い側を内側(Inside)、正中から遠い側を外側(Outside)とした内外方向が定義される。なお、ここでいう正中(Medial)とは、被検体を概ね左右対称と考えた場合に、対称軸となる平面の位置である。
【0094】
例えば、表示制御機能15aは、診断対象の部位が膝である場合には、膝の位置決め画像92から検出された2つの特徴点93及び94に基づいて特定されたベクトル95の方向を、内側(Inside)から外側(Outside)へ向かう内外方向として定義する。なお、この場合に、例えば、表示制御機能15aは、MRI装置100において定義されている上下方向を、解剖学的な方向における上下方向として定義し、当該上下方向及び内外方向の両方に直交する方向を、解剖学的な方向における前後方向として定義する。
【0095】
なお、ここでは、表示制御機能15aが、2つの特徴点93及び94に基づいて特定されたベクトル95の方向を、内側から外側へ向かう内外方向として定義する場合の例を説明するが、内外方向を定義する方法はこれに限られない。例えば、膝の位置決め画像が撮像される際に、診断対象の膝だけでなく、もう片方の膝も含まれるように撮像領域が設定される場合もある。このような場合には、表示制御機能15aは、診断対象の膝に関する解剖学的な方向を定義する際に、診断対象ではない膝に近い側を内側(Inside)とし、診断対象ではない膝から遠い側を外側(Outside)とすることで、内外方向を定義してもよい。
【0096】
そして、表示制御機能15aは、位置決め画像92を用いて位置決めされた撮像位置の画像とともに、再定義された方向を示す情報をディスプレイ10に表示させる。
【0097】
図10は、第2の実施形態に係る表示制御機能15aによって行われる解剖学的な方向の表示の一例を示す図である。例えば、図10に示すように、表示制御機能15aは、診断対象の部位が膝である場合には、図9に示した位置決め画像92における特徴点93及び94を通る断面の画像101をディスプレイ10に表示させる。そして、表示制御機能15aは、画像101とともに、膝に関する解剖学的な方向を示す情報として、上下方向を示す「H」及び「F」の文字情報と、内外方向を示す「Inside」及び「Outside」の文字情報とをディスプレイ10に表示させる。
【0098】
図11は、第2の実施形態に係る表示制御機能15aによって表示される解剖学的な方向に対する比較例を示す図である。ここで、図11は、仮に、図10に示した画像101とともに、MRI装置100において定義された上下方向、左右方向及び前後方向を示す情報を表示した場合の例を示している。この場合には、例えば、図11に示すように、内外方向と同じ方向を示す情報として、「R」及び「L」の文字情報が表示される。このような情報では、操作者は、画像101について、被検体の全体における右側及び左側は認識できるものの、描出されている膝が右膝なのか左膝なのか、及び、前後どちらから見たものなのかを直感的に把握することが難しいため、どちらの側が正中に近い側(内側)であるか、又は、正中から遠い側(外側)であるかを直感的に把握することは難しい。
【0099】
これに対し、本実施形態では、例えば、図10に示すように、診断対象の部位が膝である場合に、内外方向を示す情報が画像101とともに表示される。これにより、読影医等の操作者が、画像101を参照して被検体の膝の診断を行う際に、正中に近い側、及び、正中から遠い側を容易に把握することができる。
【0100】
以上、処理回路15が有する各処理機能について説明した。これらの処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路11に記憶される。処理回路15は、各プログラムを記憶回路11から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路15は、図8に示した各処理機能を有することとなる。
【0101】
なお、図8では、上述した各処理機能が単一の処理回路15によって実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路15は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路15が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0102】
また、図8に示した処理回路12〜15が有する各処理機能が、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0103】
図12は、第2の実施形態に係るMRI装置100が有する各処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0104】
例えば、図12に示すように、本実施形態に係るMRI装置100では、収集機能13aが、被検体の位置決め画像用のMR信号データを収集する(ステップS201)。
【0105】
続いて、生成機能14aが、収集機能13aによって収集されたデータに基づいて、被検体の位置決め画像を生成する(ステップS202)。
【0106】
また、表示制御機能15aが、生成機能14aによって生成された位置決め画像から被検体の部位に関する特徴点を検出する(ステップS203)。
【0107】
さらに、表示制御機能15aは、検出された特徴点を通るベクトルを特定し(ステップS204)、特定されたベクトルの方向に基づいて、解剖学的な方向を再定義する(ステップS205)。
【0108】
また、収集機能13aは、位置決め画像が生成された後に、位置決め画像を用いて位置決めされた撮像位置からMR信号データを収集する(ステップS206)。
【0109】
続いて、生成機能14aが、収集機能13aによって収集されたデータに基づいて、位置決め画像を用いて位置決めされた撮像位置の画像を生成する(ステップS207)。
【0110】
そして、表示制御機能15aは、生成機能14aによって生成された画像とともに、部位ごとに定義された解剖学的な方向を示す情報をディスプレイ10に表示させる(ステップS208)。
【0111】
なお、上述した各ステップのうち、ステップS201及びS206は、例えば、処理回路13が収集機能13aに対応する所定のプログラムを記憶回路11から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS202及びS207は、例えば、処理回路14が生成機能14aに対応する所定のプログラムを記憶回路11から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS203〜S205及びS208は、例えば、処理回路15が表示制御機能15aに対応する所定のプログラムを記憶回路11から呼び出して実行することにより実現される。
【0112】
上述したように、第2の実施形態では、診断対象の部位が膝である場合に、内外方向を示す情報が画像101とともに表示される。これにより、読影医等の操作者が、画像101を参照して被検体の膝の診断を行う際に、正中に近い側、及び、正中から遠い側を容易に把握することができる。すなわち、本実施形態によれば、部位ごとに定義された解剖学的な方向を示す情報を画像とともに表示させることによって、画像に描出された部位に関する被検体の構造上の方向を操作者がより容易に把握することができる。
【0113】
なお、上述した第2の実施形態では、表示制御機能15aが、位置決め画像に基づいて、解剖学的な方向を示す情報を表示する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、表示制御機能15aは、第1の実施形態で説明した表示制御機能353と同様に、3次元画像データに基づいて、解剖学的な方向を示す情報を表示してもよい。
【0114】
この場合には、収集機能13aが、2Dシーケンスを複数回実行し、生成機能14aが、2Dシーケンスによって収集されたMR信号データからマルチスライスデータを生成する。または、収集機能13aが、3Dシーケンスを実行し、生成機能14aが、3Dシーケンスによって収集されたMR信号データからボリュームデータを生成する。
【0115】
さらに、生成機能14aが、第1の実施形態で説明した生成機能352と同様に、取得機能351によって取得された3次元画像データに基づいて、2次元の画像を生成する。そして、表示制御機能15aが、生成機能14aによって生成された3次元画像データに基づいて、第1の実施形態で説明した表示制御機能353と同様に、解剖学的な方向を再定義し、生成機能14aによって生成された画像とともに、再定義された方向を示す情報をディスプレイ10に表示させる。
【0116】
また、上述した第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した医用画像処理装置300の構成をMRI装置に適用した場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、上述した医用画像処理装置300の構成は、X線CT装置や、超音波診断装置、PET装置等の他の医用画像診断装置にも同様に適用することが可能である。
【0117】
以上、第1及び第2の実施形態について説明したが、各実施形態は、上述した各処理機能の一部を変形して実施することも可能である。そこで、以下では、第1及び第2の実施形態に係る変形例について説明する。
【0118】
例えば、上述した第1及び第2の実施形態では、図4に示した「Proximal」及び「Distal」や、図10に示した「Inside」及び「Outside」のように、解剖学的な方向を示す文字情報を表示する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、解剖学的な方向を示す情報として、立体的なグラフィックを表示してもよい。
【0119】
図13は、第1及び第2の実施形態の変形例に係る解剖学的な方向を示す情報の他の例を示す図である。例えば、図13に示すように、第1の実施形態において、表示制御機能353が、解剖学的な方向を示す文字情報の代わりに、解剖学的な方向を各面に示した立方体形状を立体的に表したグラフィック132を表示する。この場合に、表示制御機能353は、画像41における解剖学的な方向と、グラフィック132において示される解剖学的な方向とが対応するように、グラフィック132の表示態様を設定する。なお、第2の実施形態において、表示制御機能15aが、同様のグラフィックを表示してもよい。
【0120】
また、上述した第1及び第2の実施形態では、診断対象の部位が肩又は膝の場合を例に挙げて説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、診断対象が他の部位である場合も、あらかじめ、画像データから抽出される特徴点、及び、被検体の構造上の方向を表す方向を部位ごとに定義しておくことで、同様に、解剖学的な方向を示す情報を表示することができる。
【0121】
または、例えば、被検体の部位に関する特徴点を抽出するのではなく、被検体の部位に含まれる特徴的な領域又は区間を画像データから抽出してもよい。ここでいう特徴的な領域又は区間とは、被検体の部位における解剖学的な方向を特定するうえで特徴的な形状を有する領域又は区間である。例えば、特徴的な領域又は区間は、被検体の部位における解剖学的な方向と相関する形状を有する骨や血管等の特定の領域又は区間である。この場合には、表示制御機能が、画像データから被検体の部位に含まれる特徴的な領域を検出し、検出された領域の形状に基づいて、解剖学的な方向を再定義する。例えば、表示制御機能は、画像データに対してセグメンテーション処理を行うことで、部位ごとにあらかじめ定義された特徴的な領域又は区間を抽出する。そして、表示制御機能は、抽出した領域又は区間の走行方向を直線又は曲線で近似することで、解剖学的な方向を再定義する。
【0122】
図14〜17は、第1及び第2の実施形態の変形例に係る解剖学的な方向の他の例を示す図である。ここで、図14及び15は、手に関する解剖学的な方向の一例を示しており、図16及び17は、足に関する解剖学的な方向の一例を示している。
【0123】
例えば、図14及び15に示すように、手については、解剖学的な方向として、体幹に近い側を近位(Proximal)、体幹から遠い側を遠位(Distal)とした近遠位方向、手のひらの側を掌側(Palmar)、手の甲の側を背側(Dorsal)とした掌背方向、及び、親指の側を左(L)、小指の側を右(R)とした左右方向が定義される。
【0124】
ここで、例えば、近遠位方向については、手の画像データから手首の部分と中指の先端部分とを特徴点として検出し、手首の側を近位、中指の先端部分の側を遠位とすることで定義される。また、例えば、掌背方向については、手の画像データから手のひらの湾曲形状を検出し、湾曲方向における手のひらが湾曲した側を掌側、湾曲方向における掌側の反対側を背側とすることで定義される。また、例えば、左右方向については、手の画像データから、親指の先端部分と小指の先端部分とを特徴点として検出し、親指の側を左、小指の側を右とすることで定義される。
【0125】
なお、手のひらの形状は、指が反り返った状態となることもあり得る。そのため、例えば、掌背方向については、手の画像データから、中手骨のような湾曲した特定の領域を抽出し、抽出した特定の領域の形状に基づいて定義されてもよい。この場合には、例えば、掌背方向は、湾曲した特定の領域の曲率を計測することで、曲率中心の位置を特定し、当該領域に対して、曲率中心がある側を掌側、その反対側を背側とすることで定義される。
【0126】
また、例えば、図16及び17に示すように、足については、解剖学的な方向として、体幹に近い側を近位(Proximal)、体幹から遠い側を遠位(Distal)とした近遠位方向、足の裏の側を底側(Planter)、足の甲の側を背側(Dorsal)とした底背方向、及び、親指の側を左(L)、小指の側を右(R)とした左右方向が定義される。
【0127】
ここで、例えば、近遠位方向については、足の画像データから踵の部分と中指の先端部分とを特徴点として検出し、踵の側を近位、中指の先端部分の側を遠位とすることで定義される。また、例えば、底背方向については、足の画像データから足の底面と足首の部分とを検出し、底面の側を底側、足首の側を背側とすることで定義される。また、例えば、左右方向については、足の画像データから、親指の先端部分と小指の先端部分とを特徴点として検出し、親指の側を左、小指の側を右とすることで定義される。
【0128】
なお、部位ごとに定義される解剖学的な方向としては、上述したものの他に、例えば、以下のものが挙げられる。
・内外方向:体表に近い側を外(External)、体表から遠い側を内(Internal)とした方向
・近遠位方向(血管等):心臓に近い側を近位(Proximal)、心臓から遠い側を遠位(Distal)とした方向
・近遠位方向(抹消神経等):脳に近い側を近位(Proximal)、脳から遠い側を遠位(Distal)とした方向
・橈尺方向(上肢等):橈骨及び親指のある側を橈側(Radial)、尺骨の側を尺側(Ulnar)とした方向
・脛腓骨方向(下肢等):脛骨の側を脛骨側(Tibial)、腓骨の側を腓骨側(Fibular)とした方向
・口肛方向(消化管等):口に近い側を口側(Oral)又は吻側(Rostal)、肛門に近い側を肛側(Anal)とした方向
・尾吻方向(脳幹、小脳等):脊髄のある側を尾側(Caudal)、中脳と第三脳室のある側を吻側(Rostral)とした方向
・尾吻方向(間脳、大脳等):前側を吻側(Rostral)、後側を尾側(Caudal)とした方向
・腹背方向(脳幹、小脳等):前方やや斜め下、橋横線維やオリーブや錐体のある側を腹側(Ventral)、小脳のある側を背側(Dorsal)とした方向
・腹背方向(間脳、大脳等):上側を背側(Dorsal)、下側を腹側(Ventral)とした方向
・屈曲進展方向:隣接する部位に近付く側を屈曲側(Flexion)、隣接する部位から遠ざかる側を伸展(Extension)とした方向
・内外転方向:被検体の一部が正中線に対して近付いたり遠ざかったりする運動において、正中線に近付く側を内転側(Adduction)、正中線から遠ざかる側を外転側(Abduction)とした方向
・内外旋方向(上腕部、大腿部等):垂直軸を中心に水平面上で生じる運動において、上腕部又は大腿部の前面を外方に回す側を外旋側(External Rotation)、内方に回す側を内旋側(Internal Rotation)とした方向
・回内外方向(前腕部等):肘関節を屈曲した状態で手掌が上を向く側を回外側(Supination)、手掌が下を向く側を回内側(Pronation)とした方向
【0129】
ここで、上述した解剖学的な方向は、あらかじめ定義されて、MRI装置100の製造時又は据付時に設定されてもよいし、MRI装置100の運用が開始された後に、操作者によって任意に設定又は変更されてもよい。
【0130】
なお、上述した各実施形態において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0131】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、画像に描出された部位に関する被検体の構造上の方向を操作者がより容易に把握することができる。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0133】
300 医用画像処理装置
350 処理回路
351 取得機能
353 表示制御機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17