特許第6765961号(P6765961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6765961多能性間質細胞集団の免疫調節ポテンシャル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765961
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】多能性間質細胞集団の免疫調節ポテンシャル
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20200928BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20200928BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   G01N33/53 Y
   G01N33/48 P
   G01N33/53 D
   C12Q1/02
【請求項の数】15
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-526339(P2016-526339)
(86)(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公表番号】特表2016-540969(P2016-540969A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】US2014063578
(87)【国際公開番号】WO2015066552
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2017年10月3日
(31)【優先権主張番号】61/899,835
(32)【優先日】2013年11月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】コルセッリ,ミルコ
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/121426(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0305673(US,A1)
【文献】 特表2007−530543(JP,A)
【文献】 特表2005−524843(JP,A)
【文献】 Pinar Cetinalp Demircan、他5名,Immnuoregulatory effects of human dental pulp-derived stem cells on t cells: comparison of transwell co-culture and mixed lymphocyte reaction systems,Cytotherapy,米国,2011年,Vol.13,No.10,Page.1205-1220
【文献】 Gebler A、外2名,The immunomodulatory capacity of mesenchymal stem cells,Trends in Molecular Medicine,2012年,Vol.18,No.2,Page.128-134
【文献】 Guangwen Ren、外11名,Inflammatory Cytokine-Induced Intercellular Adhesion Molecule-1 and Vascular Cell Adhesion Molecule-1 in Mesenchymal Stem Cells are critical for Immunosuppression,The Journal of Immunology,米国,2010年,Vol.184,Page.2321-2328
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/58
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多能性間質細胞(MSC)集団の免疫調節ポテンシャルを評価する方法であって、
(a)MSC集団を作製するステップと、
(b)前記MSC集団のMSCに関連するCD54の量及びIL−6の量を評定して、CD54/IL−6結果を得るステップと、
(c)前記CD54/IL−6結果に基づき前記MSC集団の前記免疫調節ポテンシャルの評価を提供するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記評定するステップは、
CD54に特異的に結合する第1の検出可能標識及びIL−6に特異的に結合する第2の検出可能標識に前記MSC集団から得られるMSC集団の試料を接触させて、標識された試料を作製するステップと、
標識された試料中のMSCに関連する第1及び第2の標識の量を定量化して、前記CD54/IL−6結果を得るステップと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記MSC集団の試料をタンパク質輸送阻害剤で処理するステップをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
IL−6に特異的に結合する第2の検出可能標識に前記MSC集団の試料を接触させる前に前記MSC集団の試料を固定試薬で処理するステップをさらに含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
IL−6に特異的に結合する第2の検出可能標識に前記MSC集団の試料を接触させる前に前記MSC集団の試料を透過処理試薬で処理するステップをさらに含むことを特徴とする請求項〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
MSC免疫調節ポテンシャルの指標となる1つ以上の追加のバイオマーカーに特異的に結合する1つ以上の追加の検出可能標識に前記MSC集団の試料を接触させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1及び第2の検出可能標識が各々、特異的結合ドメインと標識ドメインとを含むことを特徴とする請求項〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記定量化するステップは、前記標識された試料から蛍光発光極大データを得るステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記標識された試料から光散乱データを得るステップをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記定量化するステップは、フローサイトメトリーを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記評価を提供するステップは、前記CD54/IL−6結果が閾値を上回るときに前記MSC集団を高度な免疫調節ポテンシャルを有すると同定するステップを含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
フローチャネルと、
前記フローチャネルのアッセイ領域から光を受け取るように構成された検出器モジュールと、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法に従って前記検出器モジュールから第1及び第2の信号を受け取り、且つMSC集団の免疫調節ポテンシャルの評価を出力するように構成された信号処理モジュールと
を有することを特徴とするシステム。
【請求項13】
標識された試料であって、
請求項2〜11のいずれか一項に記載の方法によって作製されており、
CD54に特異的に結合する第1の検出可能標識と、IL−6に特異的に結合する第2の検出可能標識とによって標識された多能性間質細胞(MSC)集団を含む
ことを特徴とする標識された試料。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の多能性間質細胞(MSC)集団の免疫調節ポテンシャルの評価に用いられるキットであって、
CD54に特異的に結合する第1の検出可能標識と、
IL−6に特異的に結合する第2の検出可能標識と
を含むことを特徴とするキット。
【請求項15】
前記MSC集団のMSC表面のCD54の量と、前記MSC集団のMSC内部のIL−6の量とを評定する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本分野で間葉系幹細胞とも称される多能性間質細胞(MSC)には、その再生特性及び免疫調節ポテンシャル故に多くの治療用途がある。国際細胞治療学会(International Society for Cellular Therapy)は、プラスチックに対するその接着、そのCD73、CD90及びCD105発現、並びに複数の間葉系譜、特に骨芽細胞、脂肪細胞及び軟骨芽細胞を生じるそのポテンシャルによってMSCを分類している。しかしながら、MSC集団の違いは由来組織及び培養条件によってもたらされるため、MSCの確定的な定義はない。MSCは典型的には免疫抑制性であり、T細胞及びB細胞の増殖を阻害し、ある一部のT細胞が調節性T細胞に分化するのを促進し、及び樹状細胞への単球分化を阻害することが示されている。IFN−γ及び/又はTNF−αへの曝露などによってMSCが活性化すると、この免疫調節ポテンシャルは典型的には増加する。可溶性因子及び直接的な細胞間接触の両方が、MSC免疫調節活性の機構である。
【0002】
かかる免疫調節ポテンシャルのため、MSCは、限定はされないが、移植片対宿主病、クローン病、及び多発性硬化症を含めた自己免疫疾患並びに/又は炎症性疾患の細胞治療候補となる。その単離及び臨床規模への拡大が容易であること、凍結保存後も効力が維持されること、及び同種異系MSC移植時に有害反応が誘発されないことを含めたさらなる要因によって、MSCは細胞治療のさらに強力な候補となる。
【0003】
MSCは、典型的には骨髄又は脂肪組織から採取される。MSC及びMSCを生じる幹細胞は比較的まれである(多くの場合に全体に占める割合は僅かである)ため、MSCは典型的には治療での使用に先立ちインビトロで拡大される。由来組織及びMSCを拡大する培養条件などの要因が、得られるMSC集団の免疫調節ポテンシャル及び効力に影響を及ぼし、ひいてはそれらが細胞ベースの治療に使用されるMSC集団の質に影響し得ると理解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0172885号明細書
【発明の概要】
【0005】
多能性間質細胞(MSC)集団の免疫調節ポテンシャルを評価する方法が提供される。本方法の態様は、MSC集団の試料中のMSCに関連するCD54/IL−6の量を評定するステップであって、それによりCD54/IL−6結果を得るステップと、得られたCD54/IL−6結果に基づきMSC集団の免疫調節ポテンシャルの評価を提供するステップとを含む。また、本方法の実施に用途が見出されるシステム及びキットも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】多能性間質細胞(MSC)、骨髄球及びリンパ球集団をフローサイトメトリーによって分離するためのゲーティング手法を提示する。細胞集団は、前方散乱(FSC)及び側方散乱(SSC)並びにCD45、CD73、CD14及びCD3発現の組み合わせに基づき分離される。各集団は、種々の条件下(例えば、単独又は共培養、刺激前及び刺激後)で表面マーカー及び/又はサイトカインについてさらに選別することができる。この特定のゲーティング手法では、リンパ球サブセット(赤色)は、CD3ゲーティングに起因して主としてT細胞からなる。
図2A】T細胞のIFN−γ発現及びT細胞増殖に対するMSCの免疫調節活性を示すフローサイトメトリーアッセイの結果を提示する。図2B及び図2Cでアッセイされる末梢血単核細胞(PBMC)、具体的にはCD3+ T細胞を得るために用いられるゲーティング手法を提示する。
図2B】T細胞のIFN−γ発現及びT細胞増殖に対するMSCの免疫調節活性を示すフローサイトメトリーアッセイの結果を提示する。静止PBMC、刺激PBMCにおけるIFN−γ発現を示す。刺激PBMCは単独で培養するか、又は骨髄(BM MSC)若しくは脂肪組織(AT MSC)のいずれかに由来するMSCとの共培養で培養した。
図2C】T細胞のIFN−γ発現及びT細胞増殖に対するMSCの免疫調節活性を示すフローサイトメトリーアッセイの結果を提示する。図2Bに関して記載される条件下におけるPBMCのviolet proliferation dye(VPD)染色を示す。
図3A】BM MSC又はAT MSCにおけるCD54、CD274及びIL−6の発現を示すフローサイトメトリーアッセイの結果を提示する。MSCを得るのに有用なゲーティング手法を示す。
図3B-1】BM MSC又はAT MSCにおけるCD54、CD274及びIL−6の発現を示すフローサイトメトリーアッセイの結果を提示する。刺激PBMCとの共培養前(赤色の囲み)及び共培養後のBM MSC及びAT MSCにおけるCD54、CD274、及びIL−6の発現を示す。
図3B-2】BM MSC又はAT MSCにおけるCD54、CD274及びIL−6の発現を示すフローサイトメトリーアッセイの結果を提示する。刺激PBMCとの共培養前(赤色の囲み)及び共培養後のBM MSC及びAT MSCにおけるCD54、CD274、及びIL−6の発現を示す。
図4A】静止BM MSC及びAT MSCにおけるCD54及びIL−6の発現を示すフローサイトメトリーアッセイの結果を提示する。CD54及びIL−6がBM MSCと比較してAT MSCでより高発現であることを示す。
図4B】静止BM MSC及びAT MSCにおけるCD54及びIL−6の発現を示すフローサイトメトリーアッセイの結果を提示する。BM MSCと共培養したT細胞と対照的に、AT MSCと共培養したT細胞においてIFN−γ発現が低下したことを示す。
図4C】静止BM MSC及びAT MSCにおけるCD54及びIL−6の発現を示すフローサイトメトリーアッセイの結果を提示する。BM MSCと比較して、AT MSCと共培養したT細胞の増殖が低下したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
多能性間質細胞(MSC)集団の免疫調節ポテンシャルを評価する方法が提供される。本方法の態様は、MSC集団の試料中のMSCに関連するCD54/IL−6の量を評定するステップであって、それによりCD54/IL−6結果を得るステップと、得られたCD54/IL−6結果に基づきMSC集団の免疫調節ポテンシャルの評価を提供するステップとを含む。また、本方法の実施に用途が見出されるシステム及びキットも提供される。
【0008】
本発明をさらに記載する前に、本発明は記載される特定の実施形態に限定されず、そのため当然ながら異なり得ることが理解されるべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語法は特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定する意図はないことも理解されるべきである。
【0009】
値の範囲が提供される場合、文脈上特に明確に指示されない限り下限の単位の10分の1に至るまでの、その範囲の上限及び下限の間にある各中間値並びにその指定範囲における任意の他の指定値又は中間値が、本発明の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立に、そのより小さい範囲に含まれ得るとともに、また、指定範囲における任意の具体的に除外される限界値を条件として、本発明の範囲内に包含される。指定範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界値の一方又は両方を除外する範囲もまた本発明に含まれる。
【0010】
本明細書に記載される方法は、記載されるイベントの論理的に可能な任意の順序で、並びに記載されるイベント順序で実施し得る。
【0011】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験においては、本明細書に記載されるものと同様の又は均等な任意の方法及び材料もまた使用し得るが、ここで好ましい方法及び材料を記載する。
【0012】
本明細書において言及する全ての刊行物は、それらの刊行物の引用が関連する方法及び材料を開示及び記載するため、参照により本明細書に援用される。
【0013】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、文脈上特に明確に指示されない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は複数形の指示対象を含むことに留意されなければならない。さらに、特許請求の範囲は任意選択の要素を除外するように起案され得ることが留意される。従って、この記述は、特許請求の範囲の要素の記載に関連して「もっぱら」、「のみ」などの排他的な用語の使用、又は「否定的な」限定の使用に対する先行詞として機能することが意図される。
【0014】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に記載及び例示される個々の実施形態の各々は、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴と容易に分離し得る又はそれと組み合わせ得る個別的な構成要素及び特徴を有する。記載されるいずれの方法も、記載されるイベント順序で、又は論理的に可能な任意の他の順序で実施することができる。
【0015】
本明細書で考察される刊行物は、もっぱら本願の出願日より前のそれらの開示について提供される。本明細書のいかなる事項も、先行発明を理由として本発明がかかる刊行物に先行する権利を有しないことを認めるものと解釈されてはならない。さらに、提供される刊行日は実際の刊行日と異なることがあり、実際の刊行日を独立に確認する必要があり得る。
【0016】
本発明の実施形態をさらに説明するにあたって、最初に本方法の実施形態の態様をさらに詳細に記載する。次に、本発明の方法の実施に用い得るシステム及びキットの実施形態を概説する。
【0017】
方法
上記に要約したとおり、本発明の実施形態は、多能性間質細胞(MSC)集団の免疫調節ポテンシャルを評価する方法に関する。MSCはプラスチック接着性であってよく、骨芽細胞、脂肪細胞、筋芽細胞及び軟骨芽細胞などの複数の間葉系譜への分化能を有する。ヒトMSCは表面マーカーCD73、CD90、及びCD105が陽性で、表面マーカーCD34、CD45、CD14、CD11b、及びCD19が陰性であり得る。加えて、CD271、COX2、IDO、CD274、CD44、CD166、STRO−1などの他のマーカーが、ヒトMSC若しくはそのサブセットの同定及び/又は特徴付けにおいて有用であり得る。MSC集団及びMSC表面マーカーの詳細な考察は、Hass R.et al.,Cell Commun Signal.(2011)14;9:12を参照することができる。
【0018】
特定の態様では、MSC集団は、初めに哺乳類組織から細胞(MSC及び/又は幹細胞(SC)を含む)を得ることによって作製し得る。哺乳類組織はヒト、非ヒト霊長類、マウス、又は別の好適な哺乳動物から得ることができる。組織は、骨髄、脂肪組織、末梢血、又はMSCの作製に好適な別の組織であってもよい。
【0019】
組織からの細胞の単離には、必要に応じて適切な分散液又は懸濁液が用いられ得る。溶液は、好都合にはウシ胎仔血清、ヒト血小板溶解物又は他の因子を補足した、低濃度、例えば5〜25mMの許容される緩衝液と併せた平衡塩類溶液、例えば、通常生理食塩水、PBS、ハンクス平衡塩類溶液等であってもよい。好都合な緩衝液としては、HEPES、リン酸緩衝液、乳酸緩衝液等が挙げられる。分離された細胞は、細胞の生存能力を維持する任意の適切な培地中に収集され得る。dMEM、HBSS、dPBS、RPMI、イスコフ培地等を含めた様々な培地が市販されており、細胞の性質に基づき用いることができ、多くの場合にウシ胎仔血清又はヒト血小板溶解物が補足される。
【0020】
次に得られた細胞をMSCの作製及び/又は拡大に好適な条件下で培養し得る。培養条件は1代以上の継代、場合によっては10代又はそれ未満の継代を含み得る。培養条件は、細胞における多能性を維持するための1つ以上の因子を含み得る。かかる因子の例としては、ウシ胎仔血清(FBS)、ヒト血小板溶解物、多能性を誘導/維持するための遺伝子のトランスフェクト用ベクター等が挙げられる。MSC集団は、必要に応じて使用前に(例えば、5%以上のDMSO中に及び液体窒素温度で)凍結し得る。
【0021】
上記に記載したとおりのMSCは、必要に応じて、分化を促進することなく増殖を促進する培養条件を使用して培養下で継続的に増殖させることができる。細胞は、ウシ胎仔血清又は無血清補充物の存在下で分化させることなく培地、例えばDMEM、RPMI等に維持することができる。細胞は、プロテアーゼ、例えばトリプシン、コラゲナーゼ等を使用して75〜95%コンフルエンスで継代し得る。MSCの多能性に起因して、及びMSCはその由来組織中に比較的まれであるにも関わらず(多くの場合に全体に占める割合は僅かである)、培養下で増殖させるMSCは、臨床適用に好適なレベルまでエンリッチさせ得る。
【0022】
特定の態様では、MSC又はMSCの前駆体であるSCをエンリッチすることにより実質的に純粋なMSC集団を得ることができ、ここではそれを行うのに好都合な任意のプロトコルを利用し得る。例えば、非MSC表面マーカーに特異的に結合する抗体(又は別の結合分子)にコンジュゲートしたビーズを使用して、非MSC細胞を枯渇させ得る。MSC表面マーカーに特異的な抗体にコンジュゲートしたビーズを使用して、MSCを他の細胞と分離し得る。別の例では、蛍光活性化セルソーター(FACS)機器で図1に示すものと同様のゲーティング手法を用いてMSC集団を精製し得る。
【0023】
MSC集団の免疫調節ポテンシャルとは、MSC集団が特定の免疫細胞、例えばT細胞、B細胞、NK細胞、若しくはそれらの組み合わせの増殖及び/又は活性化を抑制する能力であり得る。MSC集団の免疫調節ポテンシャルにはまた、集団中のMSCが免疫細胞の発生を調節する能力(例えば、調節性T細胞へのT細胞分化を誘導する、樹状細胞への単球分化を阻止する等)も含まれ得る。例えば、図2に示されるとおり、骨髄由来のMSC(BM MSC)又は脂肪組織由来のMSC(AT MSC)を刺激PBMCと共培養すると、T細胞のIFN−y発現及び増殖の両方が減弱した。
【0024】
本方法の一部の例では、試料(例えば、アリコート)をMSC集団から得てアッセイすることにより、試料を得た元のMSC集団の免疫調節ポテンシャルの評価が得られる。MSC集団の試料(本明細書では「アリコート」及び「試料」と同義的に用いられる)は、本明細書に開示される方法の態様において使用する前に培養され(例えば、上記のMSC集団に関する記載と同様の条件下で)、及び/又は凍結され得る。
【0025】
本発明の態様は、目的のMSC集団の試料を1つ以上の検出可能標識と接触させて標識された試料を得るステップを含む。検出可能標識は特異的結合ドメインと標識ドメインとを含み得る。用語「特異的結合」、「特異的に結合する」などは、溶液又は反応混合物中の他の分子又は部分に対するドメインの優先的結合(例えば、一方の結合対メンバーの、同じ結合対の他方の結合対メンバーに対するもの)を指す。特異的結合ドメインは、細胞内の特定のエピトープに(例えば、共有結合的又は非共有結合的に)結合し得る。特定の態様では、特異的結合ドメインは標的に非共有結合的に結合する。そのような場合、特異的結合ドメインと結合標的(例えば、CD54、IL−6又は別のバイオマーカー)との会合は、10-5M以下、10-6M以下、例えば10-7M以下、例えば10-8M以下、例えば、10-9M以下、10-10 M以下、10-11 M以下、10-12 M以下、10-13 M以下、10-14 M以下、10-15 M以下、例えば10-16 M以下のKD(解離定数)によって特徴付けられ得る。様々な異なる種類の特異的結合ドメインを捕捉リガンドとして用い得る。目的の特異的結合ドメインとしては、限定はされないが、抗体結合剤、タンパク質、ペプチド、ハプテン、核酸等が挙げられる。用語「抗体結合剤」は、本明細書で使用されるとき、ポリクローナル若しくはモノクローナル抗体又は目的の分析物に結合するのに十分な断片を含む。抗体断片は、例えば、単量体Fab断片、単量体Fab’断片、又は二量体F(ab)’2断片であってもよい。また、抗体工学によって作製される分子、例えば、一本鎖抗体分子(scFv)、若しくは重鎖及び軽鎖の定常領域を置き換えてキメラ抗体を作製するか、又は定常領域及び可変領域のフレームワーク部分の両方を置き換えてヒト化抗体を作製することによりモノクローナル抗体から作製されるヒト化若しくはキメラ抗体も用語「抗体結合剤」の範囲内である。
【0026】
標識ドメインは、例えば、蛍光発光極大、蛍光偏光、蛍光寿命、光散乱、質量、分子質量、又はそれらの組み合わせに基づき検出可能であり得る。特定の態様では、標識ドメインはフルオロフォア(即ち、蛍光標識、蛍光色素等)であってもよい。フルオロフォアは、分析適用(例えば、フローサイトメトリー、イメージング等)における使用に好適な多くの色素のいずれからも選択することができる。種々の供給者、例えば、Molecular Probes(Eugene,OR)及びExciton(Dayton,OH)などから多数の色素が市販されている。マイクロパーティクルに組み込み得るフルオロフォアの例としては、限定はされないが、4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’ジスルホン酸;アクリジン及び誘導体、例えば、アクリジン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー、アクリジンレッド、及びアクリジンイソチオシアネート;5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS);4−アミノ−N−[3−ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド−3,5ジスルホネート(ルシファーイエローVS);N−(4−アニリノ−1−ナフチル)マレイミド;アントラニルアミド;ブリリアントイエロー;クマリン及び誘導体、例えば、クマリン、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン(クマリン151);シアニン及び誘導体、例えばシアノシン、Cy3、Cy5、Cy5.5、及びCy7;4’,6−ジアミニジノ−2−フェニルインドール(DAPI);5’,5”−ジブロモピロガロール−スルホンフタレイン(ブロモピロガロールレッド);7−ジエチルアミノ−3−(4’−イソチオシアナトフェニル)−4−メチルクマリン;ジエチルアミノクマリン;ジエチレントリアミンペンタアセテート;4,4’−ジイソチオシアナトジヒドロ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸;4,4’−ジイソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸;5−[ジメチルアミノ]ナフタレン−1−スルホニルクロリド(DNS、塩化ダンシル);4−(4’−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL);4−ジメチルアミノフェニルアゾフェニル−4’−イソチオシアネート(DABITC);エオシン及び誘導体、例えばエオシン及びエオシンイソチオシアネート;エリスロシン及び誘導体、例えばエリスロシンB及びエリスロシンイソチオシアネート;エチジウム;フルオレセイン及び誘導体、例えば5−カルボキシフルオレセイン(FAM)、5−(4,6−ジクロロトリアジン−2−イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’7’−ジメトキシ−4’5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセインクロロトリアジニル、ナフトフルオレセイン、及びQFITC(XRITC);フルオレサミン;IR144;IR1446;緑色蛍光タンパク質(GFP);造礁サンゴ蛍光タンパク質(Reef Coral Fluorescent Protein:RCFP);Lissamine(登録商標);リサミンローダミン、ルシファーイエロー;マラカイトグリーンイソチオシアネート;4−メチルウンベリフェロン;オルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラロザニリン;ナイルレッド;オレゴングリーン;フェノールレッド;B−フィコエリトリン;o−フタルジアルデヒド;ピレン及び誘導体、例えばピレン、ピレンブチレート及びスクシンイミジル1−ピレンブチレート;リアクティブレッド4(Cibacron(登録商標)ブリリアントレッド3B−A);ローダミン及び誘導体、例えば6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシローダミン(R6G)、4,7−ジクロロローダミンリサミン、ローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101、スルホローダミン101のスルホニルクロリド誘導体(テキサスレッド)、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、テトラメチルローダミン、及びテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC);リボフラビン;ロゾール酸及びテルビウムキレート誘導体;キサンテン;又はそれらの組み合わせが挙げられる。当業者に公知の他のフルオロフォア又はそれらの組み合わせ、例えば、Molecular Probes(Eugene,OR)及びExciton(Dayton,OH)から利用可能なものもまた使用し得る。蛍光標識は蛍光発光極大に基づき、及び任意選択で光散乱又は光減衰にさらに基づき識別可能であり得る。
【0027】
他の態様において、標識ドメインは、例えば国際公開第2010/097070号パンフレットとして公開されている国際特許出願PCT/米国特許出願公開第2012/020950号明細書(その開示は参照により本明細書に援用される)に記載されるとおりの、マスサイトメトリーで用いられる飛行時間型質量分析器によるなど、質量分析によって検出可能な金属同位体であってもよい。
【0028】
特定の態様では、MSC集団の試料は、CD54に特異的に結合する第1の検出可能標識と接触させる(例えば、それに曝露する、それで染色する、それによって標識する)。細胞間接着分子1(ICAM−1)としても知られるCD54は、インテグリン(CD11a/CD18及びCD11b/CD18)に結合し、それにより細胞間相互作用を安定化させると理解されている。ヒトCD54については、他の場所の中でも特に、「omim.org/entry/147840?search=cd54&highlight=cd54」の前に「http://」を置くことにより作られるアドレスを有するウェブサイトに記載される。MSC集団の試料はまた、IL−6に特異的に結合する第2の検出可能標識と接触させてもよい。IL−6活性はコンテクストに依存し、炎症誘発特性及び抗炎症特性の両方を有する。ヒトIL−6については、他の場所の中でも特に、「omim.org/entry/147620?search=il6&highlight=il6」の前に「http://」を置くことにより作られるアドレスを有するウェブサイトに記載される。
【0029】
特定の態様では、本方法は、例えば、MSC集団の試料において試料(及びその中の細胞)を第2の検出可能標識と接触させる前に、MSC集団の試料をタンパク質輸送阻害剤で処理するステップを含み得る。タンパク質輸送阻害剤の例としてはブレフェルジンA及びモネンシンが挙げられ、しかしながら必要に応じて他のタンパク質輸送阻害剤もまた用いられ得る。MSC集団をタンパク質輸送阻害剤で前処理することにより、前処理なしには検出が困難である通常分泌されるタンパク質(IL−6及び他のサイトカインなど)を蓄積させることが可能となり得る。MSC集団は、通常分泌されるタンパク質が蓄積するのに十分な時間、例えば5分〜1日、30分〜6時間、又は1時間〜2時間にわたりタンパク質輸送阻害剤で前処理され得る。
【0030】
特定の態様では、本方法は、例えば、試料を第1及び第2の検出可能標識と接触させる前、試料を第2の検出可能標識と接触させる前、並びに/又は試料を第2の検出可能標識と接触させた後に、試料を固定するステップを含み得る。試料の細胞は、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、メタノール、アセトン、ホルマリンなどの、いくつかの細胞固定剤(即ち、固定試薬)のいずれか、又はそれらの任意の組み合わせに曝露することによって固定し得る。必要に応じて他の固定液及び固定方法が用いられてもよい。固定時間は様々であってよく、場合によっては1分〜1時間、例えば5分〜30分の範囲である。固定を行う温度は様々であってよく、場合により温度は−30℃〜30℃の範囲である。
【0031】
特定の態様では、試料を第2の検出可能標識と接触させる前に、試料は透過処理剤で処理され得る。透過処理により、第2の検出可能標識が試料中の細胞に侵入し、IL−6に特異的に結合することが可能となり得る。透過処理は前述の固定の前、その後、又はそれと同時に行われ得る。試料の細胞は、メタノール、アセトン又はデタージェント(例えば、トリトン、NP−40、サポニン、tween 20、ジギトニン、leucoperm等)などの、いくつかの細胞透過処理剤のいずれか、又はそれらの組み合わせに曝露することによって透過処理し得る。透過処理時間は様々であってよく、場合によっては1分〜1時間、例えば5分〜30分の範囲である。透過処理を行う温度は様々であってよく、場合により温度は0℃〜50℃の範囲であり得る。
【0032】
MSC集団の試料は、任意選択で1つ以上の追加の検出可能標識と接触させ得る。追加の検出可能標識は、追加の目的のバイオマーカー(例えば、MSC免疫調節ポテンシャルの指標となるバイオマーカー)に特異的に結合し得る。例えば、追加のバイオマーカーは、CD271、COX2、IDO、CD274、CD44、CD166、STRO−1、又はMSC細胞間相互作用、増殖、及び/若しくは免疫調節ポテンシャルにおいて役割を果たすと考えられる任意の他のバイオマーカーであり得る。任意選択で、追加のバイオマーカーはMSCを他の細胞型と識別するのに有用であり得る。
【0033】
試料は検出可能標識(例えば、第1、第2、及び/又は追加の検出可能標識)と同時に又は逐次的に接触させ得る。試料は、十分な量の検出可能標識と、検出可能標識をその特異的な標的(例えば、CD54、IL−6、追加のバイオマーカー等)に結合させるのに十分な期間にわたって接触させ得る。例えば、試料は、5分〜数時間、例えば30分〜2時間にわたり接触させ得る。接触ステップの間、試料は任意の好都合な温度、例えば凍結温度と室温との間に維持し得る。次に必要に応じて洗浄ステップを実施して、例えば任意の未結合の検出可能標識及び他の試料構成要素を除去し得る。洗浄は、反応混合物を好適な洗浄緩衝液(例えば、PBS、HEPES)と合わせ、細胞を流体と分離することによるなど、任意の好都合なプロトコルを用いて実施し得る。所与の洗浄プロトコルは、必要に応じて1つ以上の個別的な洗浄ステップを含み得る。任意の洗浄プロトコル後、細胞を好適な液体(例えば、洗浄緩衝液又は別の緩衝液)に再懸濁し得る。
【0034】
MSC集団の試料を検出可能標識と接触させて標識された試料(例えば、上記に記載したとおりの)を得た後、本方法の態様は、試料中のMSCに関連する第1及び第2の検出可能標識の量を評定する、例えば定量化するステップであって、それによりCD54/IL−6結果を得るステップを含む。評定は定性的であって、例えばその量が所定の閾値を上回る又は下回ることの決定であってもよく、又は定量的であって、例えば標的分子のコピー数を代表する値若しくはレベルの決定であってもよい。細胞に関連する、例えば細胞の表面に結合したり、細胞内部に存在したりするなどの検出可能標識の量は、細胞に関連する検出可能標識の標識ドメインが生成する信号の強度(例えば、蛍光強度)に基づき評定、例えば定量化し得る。CD54/IL−6結果は、単一のMSC内の又は複数のMSC間で平均したときの第1及び第2の検出可能標識の定量化された量であり得る。CD54/IL−6結果はCD54及びIL−6の発現レベルに関係し得る。本方法は、任意選択で1つ以上の追加の検出可能標識の量を定量化するステップであって、それによりさらなる結果(例えば、CD54/IL−6結果について記載される方法のいずれかで定量化したもの)を得るステップを含み得る。
【0035】
特定の実施形態において、検出可能標識(即ち、第1、第2、及び/又は追加の検出可能標識)の各々の量を定量化するステップは、蛍光発光極大に基づき検出可能標識を識別するステップを含み得る。例えば、スペクトルのオーバーラップによる2つ以上の検出可能標識間の蛍光補償を用いて、検出可能標識の各々から得られる信号(例えば、蛍光発光)を識別し得る。2つ以上の検出可能標識はまた、光散乱、蛍光寿命、励起スペクトル、又はそれらの組み合わせに基づき識別することもできる。
【0036】
場合によっては、検出可能標識はフローサイトメトリーによって定量化されてもよい。フローサイトメトリーは、液状媒体中の(例えば、標識、サイズ、粒度等の点で)互いに異なる種々の粒子、例えば細胞又はビーズの間の同定及び識別に多重パラメータデータを使用する方法論である。フローサイトメトリーによる粒子(例えば、上記に記載したとおり調製した細胞)の解析では、初めにそれらの粒子を含む液体媒体がフローサイトメーターの流路に導入される。流路にあるとき、粒子は1つ以上の検知領域を実質的に一つずつ通過し、そこで粒子の各々が個々に単色光源に曝露され、必要に応じて光散乱パラメータ及び/又は蛍光発光の計測(例えば、2つ以上の光散乱パラメータ及び1つ以上の蛍光発光の計測)が各粒子について別個に記録される。各粒子について記録されたデータは、必要に応じてリアルタイムで解析されるか、又はデータストレージ及び解析手段、例えばコンピュータに保存される。米国特許第4,284,412号明細書は、単一光源を備えた典型的なフローサイトメーターの構成及び使用を記載しており、一方、米国特許第4,727,020号明細書は、二光源を備えたフローサイトメーターの構成及び使用を記載している。これらの特許の開示は参照により本明細書に援用される。3つ以上の光源を有するフローサイトメーターもまた用いられ得る。
【0037】
より具体的には、フローサイトメーターでは、懸濁液中の粒子が流路において1つ以上の検知領域を実質的に一つずつ通過し、各領域において各粒子がエネルギー源によって照射される。エネルギー源は、レーザー(例えば、He/Ne、アルゴン)又は適切なフィルタを有する水銀アークランプによって提供されるような単一波長の光を発するイルミネーターを含み得る。例えば、単一の検知領域を有するフローサイトメーターの発光波長として488nmの光が用いられ得る。2つの個別的な波長の光を発するフローサイトメーターには追加の発光波長が用いられてもよく、具体的な目的の波長としては、限定はされないが、535nm、635nmなどが挙げられる。
【0038】
検知領域と直列に、1つ以上の検出器、例えば光電子増倍管(又は「PMT」)などの集光器を含む検出器モジュールが用いられ、粒子が検知領域を通過し、エネルギー源によって照射されるときの各粒子を通過する光(概して前方光散乱と称される)、検知領域を通る粒子の流れ方向と直角に反射する光(概して直角又は側方光散乱と称される)及び粒子が蛍光マーカーで標識されている場合には、粒子が発する蛍光が記録される。前方光散乱(又はFSC)、直角光散乱(SSC)、及び蛍光発光の各々は、粒子毎に(即ち「イベント」毎に)別個のパラメータを含む。従って、例えば、2つの異なる蛍光マーカーで標識された粒子から2、3、4つ又はそれを超えるパラメータを収集(及び記録)することができる。
【0039】
従って、フローサイトメトリーによる粒子のアッセイでは、必要に応じて粒子を励起光に曝露し、且つ1つ以上の検出チャネル内の各粒子の蛍光を計測することにより、種々の量の第1、第2、及び/又は追加の検出可能標識を含み得る粒子が検出され、ユニークに同定される。励起光は1つ以上の光源からであってもよく、狭帯域であっても、又は広帯域であってもよい。励起光源の例としては、レーザー、発光ダイオード、及びアークランプが挙げられる。粒子及びそれに関連する結合複合体の同定に用いられる検出チャネルにおいて発せられる蛍光は、単一光源による励起後に計測されてもよく、又は個別的な光源による励起後に別個に計測されてもよい。別個の励起光源を使用して粒子標識を励起させる場合、標識は、使用される励起光源の各々によって全ての標識を励起可能であるように選択され得る。
【0040】
フローサイトメーターは、コンピュータなどのデータ収集、解析及び記録手段をさらに含み、ここでは各粒子が検知領域を通過するときに発する光散乱及び蛍光について、各検出器からのデータを複数のデータチャネルが記録する。この解析システムの目的は粒子を分類してカウントすることであり、ここでは各粒子それ自体が一組のデジタル化パラメータ値を呈する。本発明の方法におけるフローサイトメトリーによる粒子のアッセイでは、フローサイトメーターは、目的の粒子をバックグラウンド及びノイズと区別するため選択のパラメータに関してトリガが設定され得る。「トリガ」は、パラメータを検出するための予め設定された閾値を指す。トリガは典型的には、レーザービームを通る粒子の通過を検出するための手段として使用される。選択のパラメータの予め設定された閾値を超えるイベントの検出が、粒子の光散乱及び蛍光データの取得をトリガする。アッセイされている媒体中の、閾値未満の応答を生じる粒子又は他の構成要素については、データは取得されない。トリガパラメータは、粒子が光ビームを通過することによって生じる前方散乱光の検出であり得る。次にフローサイトメーターは粒子の光散乱及び蛍光データを検出して収集する。
【0041】
目的の特定のサブ集団は、試料全体について収集されたデータに基づく「ゲーティング」によってさらに解析され得る。適切なゲートを選択するため、可能なサブ集団の最良の分離が得られるようにデータがプロットされる。この手順は、典型的には、二次元ドットプロット上に前方光散乱(FSC)を側方(即ち、直角)光散乱(SSC)に対してプロットすることにより行われる。次にフローサイトメーター操作者が粒子の所望のサブ集団(即ち、ゲート内にある細胞)を選択し、ゲート内にない粒子を除外する。必要に応じて操作者はコンピュータ画面上でカーソルを使用して所望のサブ集団の周りに線を描くことによりゲートを選択し得る。次に、ゲート内にある粒子のみが、それらの粒子の他のパラメータ、例えば蛍光をプロットすることによりさらに解析される。次に蛍光に基づくゲーティングを用いて細胞のサブ集団がさらに分離され得る。例えば、MSCが図1に概説する手法に従ってゲーティングされ得る。次にゲーティングされたMSCは、以下に記載するとおりさらに評価され得る。
【0042】
特定の態様では、本方法は、MSC集団の免疫調節ポテンシャルの評価を提供するステップをさらに含む。この評価は前述のCD54/IL−6結果に基づき得る。任意選択でさらに、評価はまた、追加の結果(先述のとおり、追加のバイオマーカーに特異的な1つ以上の追加の検出可能標識の信号から得られる)にも基づき得る。評価はデジタル評価、定性的評価又は定量的評価として提供され得る。例えば、結果(例えばCD54/IL−6及び/又は追加の結果)が閾値を上回るとき、MSC集団は高度な免疫調節ポテンシャルを有するものとして評価され得る。閾値は予め決められてもよく、又は標準化対照に基づき決定されてもよい。
【0043】
一部の実施形態では、MSCは、MSCに関連するCD54に結合した検出可能標識の蛍光強度中央値(例えば、フローサイトメトリーによって決定するとき)が所定の閾値を超えるとき、高度な免疫調節ポテンシャルを有すると決定される。例えば、実施形態において、MSCは、MSCに関連するCD54に結合した検出可能標識の蛍光強度中央値が250以上、例えば500以上、例えば750以上を超えるとき、及び1000以上の蛍光強度中央値を含め、高度な免疫調節ポテンシャルを有すると決定され得る。他の実施形態では、MSCは、MSCに関連するIL−6に結合した検出可能標識の蛍光強度中央値(例えば、フローサイトメトリーによって決定するとき)が所定の閾値を超えるとき、例えばMSCに関連するIL−6に結合した検出可能標識の蛍光強度中央値が1000以上、例えば1500以上、例えば2000以上、例えば2500以上、例えば5000以上の閾値を超える場合、及び10000以上の蛍光強度中央値を含め、高度な免疫調節ポテンシャルを有すると決定される。
【0044】
特定の実施形態において、方法は、MSCが高度な免疫調節ポテンシャルを有するかどうかを評価するための蛍光強度中央値(MFI)閾値を決定するステップをさらに含む。場合によっては、蛍光強度中央値(MFI)閾値は、高い免疫調節ポテンシャルを有する1つ以上のMSC集団由来の対照細胞に関連するバイオマーカーに結合した検出可能標識の蛍光強度中央値を計測することにより決定される。場合によっては、蛍光強度中央値閾値を決定するステップは、高い免疫調節ポテンシャルを有する2つ以上の異なるMSC集団、例えば高い免疫調節ポテンシャルを有する3つ以上の異なるMSC集団、例えば高い免疫調節ポテンシャルを有する4つ以上及び例えば5つ以上の異なるMSC集団由来の対照細胞に関連するバイオマーカーに結合した検出可能標識の蛍光強度中央値の平均をとるステップを含む。一例において、方法は、MSCに関連するCD54に結合した検出可能標識の蛍光強度中央値閾値を決定するステップを含む。別の例において、方法は、MSCに関連するIL−6に結合した検出可能標識の蛍光強度中央値閾値を決定するステップを含む。
【0045】
他の実施形態では、MSCは、CD54に結合した検出可能標識の蛍光強度(例えば、フローサイトメトリーによって計測するとき)が所定の閾値を超えるMSC集団の割合が特定のカットオフポイントを上回るとき、高度な免疫調節ポテンシャルを有すると決定される。例えば、場合によりMSCは、MSC集団の2%以上においてCD54に結合した検出可能標識の蛍光強度が所定の閾値を超えるとき、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上及び例えばMSC集団の90%以上においてCD54に結合した検出可能標識の蛍光強度が所定の閾値を超えるとき、高度な免疫調節ポテンシャルを有すると決定される。このような場合に、CD54に結合した検出可能標識の蛍光強度の所定の閾値は、250以上、例えば500以上、例えば750以上、例えば1000以上、例えば1500以上の蛍光強度など、及び5000以上の蛍光強度を含め、様々であり得る。
【0046】
さらに他の実施形態では、MSCは、IL−6に結合した検出可能標識の蛍光強度(例えば、フローサイトメトリーによって計測するとき)が所定の閾値を超えるMSC集団の割合が特定のカットオフポイントを上回るとき、高度な免疫調節ポテンシャルを有すると決定される。例えば、場合によりMSCは、MSC集団の2%以上においてIL−6に結合した検出可能標識の蛍光強度が所定の閾値を超えるとき、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上及び例えばMSC集団の90%以上においてIL−6に結合した検出可能標識の蛍光強度が所定の閾値を超えるとき、高度な免疫調節ポテンシャルを有すると決定される。このような場合に、IL−6に結合した検出可能標識の蛍光強度の所定の閾値は、1000以上、例えば1500以上、例えば2000以上、例えば2500以上、例えば5000以上の蛍光強度など、及び10000以上の蛍光強度を含め、様々であり得る。
【0047】
一部の実施形態では、MSCは、標準化対照と比較したとき高度な免疫調節ポテンシャルを有すると決定される。一例において、標準化対照は蛍光対照ビーズ又は対照細胞などの対照粒子であり得る。対照粒子は陽性対照又は陰性対照としての役割を果たし得る。例えば、高い免疫調節ポテンシャルを有するMSC集団由来の対照細胞は、比較的高いCD54/IL−6結果(即ち、CD54及びIL−6の高発現)を有し得る。対照細胞CD54/IL−6結果は閾値として設定され得る。標識された試料の検出可能標識の定量化でこの閾値より高いCD54/IL−6結果が得られた場合、この標識された試料のMSC集団は高度な(又は高い)免疫調節ポテンシャルを有すると評価され得る。
【0048】
特定の実施形態において、方法は、MSC集団が陽性対照として用いるのに好適であるかどうかを決定するステップを含む。場合によっては、MSC集団は、MSCが活性化免疫細胞(例えば、上記に記載したとおりのT細胞、B細胞、NK細胞、PBMC又はそれらの組み合わせ)による1つ以上のバイオマーカーの発現を例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上及び例えば90%以上、又は2倍以上、例えば3倍以上、例えば5倍以上及び例えば10倍以上抑制又は低減する場合、陽性対照として用いるのに好適であると決定される。例えば、MSC集団は、MSCが活性化T細胞によるCD3発現を10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上及び例えば90%以上抑制又は低減する場合、陽性対照として用いるのに好適であると決定され得る。他の場合には、MSC集団は、MSCが活性化T細胞によるCD3発現を2倍以上、例えば3倍以上、例えば5倍以上減少する場合、活性化T細胞によるCD3発現を10倍以上減少することを含め、陽性対照として用いるのに好適であると決定される。
【0049】
他の場合には、MSC集団は、MSCが活性化T細胞によるIFN−γ発現を10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上及び例えば90%以上抑制又は低減する場合、陽性対照として用いるのに好適であると決定される。他の場合には、MSC集団は、MSCが活性化T細胞によるIFN−γ発現を2倍以上、例えば3倍以上、例えば5倍以上低減する場合、例えば活性化T細胞によるIFN−γ発現を10倍以上低減する場合、陽性対照として用いるのに好適であると決定される。
【0050】
一部の実施形態では、MSC集団は、MSCが所定の閾値を超えるCD54の蛍光強度中央値(例えば、フローサイトメトリーによって決定するとおりの)、例えば、250以上、例えば500以上、例えば750以上を超えるCD54の蛍光強度中央値及び例えば1000以上の蛍光強度中央値を呈する場合、陽性対照として用いるのに好適であると決定される。他の実施形態では、MSC集団は、MSCが所定の閾値を超えるIL−6の蛍光強度中央値(例えば、フローサイトメトリーによって決定するとおりの)、例えば、1000以上、例えば1500以上、例えば2000以上、例えば2500以上、例えば5000以上を超えるCD54の蛍光強度中央値及び例えば10000以上の蛍光強度中央値を呈する場合、陽性対照として用いるのに好適であると決定される。
【0051】
さらなる態様では、異なるMSC集団由来の複数の試料がそれらのCD54/IL−6結果に基づき、及び任意選択でさらにそれらの追加の結果に基づき比較され得る。
【0052】
先述のとおり、由来組織及び培養条件は異なる特性(表面マーカー発現など)及び免疫調節特性を有するMSC集団をもたらし得る。そのため、MSCの異なるバッチは異なる治療有効性を呈し得る。従ってMSC集団の免疫調節ポテンシャルの評価はMSC治療レジメンの品質管理として用いられ得る。特定の実施形態において、MSC集団は、MSC集団が高度な免疫調節ポテンシャルを有するかどうかの評価に基づき、治療的に用いられることも、又は用いられないこともある。
【0053】
MSCの多くのポテンシャル及び公知の治療上の使用が、本明細書に開示される実施形態の範囲内にある。具体的には、MSC集団は、自己免疫及び/又は炎症によって特徴付けられる疾患、例えば、移植片対宿主病(GvHD)、クローン病、I型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、強皮症及び当業者に周知されている他の自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患の治療又は予防に使用され得る。クローン病に対するMSC治験のレビューがDalal J et al.2012,Pediatr Res.71(4 Pt 2):445−51によって提供され、その開示は参照により本明細書に援用される。GvHDに対するMSCベースの治療の臨床試験の記載がLe Blanc K et al.2008,Lancet 10;371(9624):1579−86によって提供され、その開示は参照により本明細書に援用される。主として自己免疫及び/又は炎症以外によって特徴付けられる他の疾患、例えば、心筋梗塞、慢性閉塞性肺疾患、及び特定の変性疾患(例えば、骨形成不全症)の治療におけるMSCの治療上の使用もまた、本明細書に開示される実施形態の範囲内にある。MSC治療の一般的レビューは、Parekkadan B.et al.,Annu Rev Biomed Eng.(2010)12:87−117によって提供される。
【0054】
本発明の目的上、MSC集団はレシピエントに対して同種異系、自家、又は異種であり得る。MSCは免疫拒絶から少なくとも部分的に保護されており、従って同種異系移植に組織適合抗原の完全一致は要求されない。場合によっては、少なくとも1つのHLA一致、より通常は2つの一致、3つの一致、4つの一致、5つの一致、又はそれを超える一致が提供される。移植される細胞の数は、所望される具体的な治療、レシピエントのサイズなどによって異なり得る。一般に、ヒトについては、MSCの用量は105 細胞、多くの場合に106 細胞、107 細胞、又は108 細胞又はそれを超える細胞を含み得る。MSCの用量は患者に例えば1日1回、週数回、週1回、又は月1回投与され得る。MSCは局所的に(例えば、罹患組織の部位又はMSCを罹患組織に送り込み得る部位に)及び/又は全身的に投与され得る。
【0055】
一例において、MSCは目的の細胞又は組織に隣接して(例えば移植の拒絶を防ぐために)投与され得る。移植の目的の細胞としては、限定なしに、心筋細胞及びその前駆体;例えばニューロン又は網膜などの再生のための神経前駆細胞、膵島細胞、特に膵臓B細胞、造血幹及び前駆細胞、筋肉衛星細胞、内皮細胞又はその前駆体などが挙げられる。目的の組織としては、肝組織、腎組織、心臓組織、肺組織、皮膚組織、脳組織、脊髄組織、膵島、網膜組織、骨髄などが挙げられる。
【0056】
医薬製剤における一般原則については、Cell Therapy:Stem Cell Transplantation,Gene Therapy,and Cellular Immunotherapy,by G.Morstyn&W.Sheridan eds,Cambridge University Press,1996が読者の参考となる。細胞賦形剤及び組成物の任意の付随要素の選択は、投与に使用される経路及び装置に従って適合され得る。細胞は、注射、カテーテルなどによって導入され得る。細胞は液体窒素温度で凍結して長期間保存してもよく、解凍すると使用可能であり得る。
【0057】
装置及びシステム
本発明の態様は、本方法の実施に用いられるシステムをさらに含む。本発明のシステムは、FSC、SSC、蛍光発光極大、光散乱、質量、分子質量等の信号を計測することにより粒子(例えば、ビーズ、MSCなどの細胞等)をアッセイするように構成されたフローサイトメーターを含み得る。本システムは、信号を受け取り、且つMSC集団の免疫調節ポテンシャルの評価を出力するように構成された信号処理モジュールをさらに含み得る。目的のフローサイトメーターとしては、限定されないが、米国特許第4,704,891号明細書;同第4,727,029号明細書;同第4,745,285号明細書;同第4,867,908号明細書;同第5,342,790号明細書;同第5,620,842号明細書;同第5,627,037号明細書;同第5,701,012号明細書;同第5,895,922号明細書;及び同第6,287,791号明細書(これらの開示は参照により本明細書に援用される)に記載される装置が挙げられる。場合によっては、フローサイトメーターは、フローチャネル、及び、フローチャネルのアッセイ領域から第1の信号を受け取るように構成された第1の検出器と、フローチャネルのアッセイ領域から第2の信号を受け取るように構成された第2の検出器とを含む検出器モジュールを含む。フローサイトメーターは、任意選択で、光をフローチャネルのアッセイ領域に当てるように構成された少なくとも第1の光源をさらに含み得る(ここで場合によりサイトメーターは2つ以上の光源を含む)。特定の態様では、第1の信号が、CD54に特異的に結合する検出可能標識によって生成されてもよく、及び第2の信号が、IL−6に特異的に結合する検出可能標識によって生成されてもよい。任意選択でさらに、フローサイトメーターは、1つ以上の追加の信号を検出するための1つ以上の追加の検出器及び/又は光源を含み得る。1つ以上の追加の信号は、MSC集団の免疫調節ポテンシャルの指標となるバイオマーカーに特異的に結合する1つ以上の追加の検出可能標識によって生成され得る。
【0058】
本発明の態様は、第1及び第2の検出器から信号を受け取り、且つMSC集団の免疫調節ポテンシャルの評価(例えば、先述のとおり、MSC集団が高度な免疫調節ポテンシャルを有するか否か)を出力するように構成された信号処理モジュールをさらに含む。信号処理モジュールはサイトメーターと単一の装置として一体化されてもよく、又はサイトメーターから分離して、信号処理モジュール及びサイトメーターが互いに例えば有線又は無線通信プロトコルを介して通信してもよい。信号処理モジュールのさらなる態様は、以下のコンピュータが関連する実施形態でさらに記載される。
【0059】
従って、本発明の態様は、例えば上記に記載したとおりの、第1及び第2の検出可能な信号の存在を検出するように構成されるシステム、例えばコンピュータベースのシステムをさらに含む。「コンピュータベースのシステム」とは、本発明の情報を解析するために使用されるハードウェア手段、ソフトウェア手段、及びデータストレージ手段を指す。本発明のコンピュータベースのシステムの最小限のハードウェアは、中央演算処理装置(CPU)、入力手段、出力手段、及びデータストレージ手段を含む。当業者は、現在利用可能なコンピュータベースのシステムのいずれも本発明での使用に好適であることを容易に理解し得る。データストレージ手段には、上記に記載したとおりの本情報の記録を含む任意の製品、又はかかる製品にアクセスすることのできるメモリアクセス手段が含まれ得る。
【0060】
データを「記録する」ため、コンピュータ可読媒体上のプログラミング又は他の情報が、当該技術分野において公知のとおりの任意の方法を用いて、情報を記憶するためのプロセスを参照する。記憶された情報にアクセスするために使用される手段に基づき、任意の好都合なデータストレージ構造が選択され得る。記憶には、種々のデータプロセッサプログラム及びフォーマット、例えば、ワードプロセッシングテキストファイル、データベースフォーマット等を使用することができる。
【0061】
「プロセッサ」は、それに必要な機能を果たす任意のハードウェア及び/又はソフトウェアの組み合わせを指す。例えば、本明細書における任意のプロセッサは、電子制御器、メインフレーム、サーバ又はパーソナルコンピュータ(デスクトップ型又は携帯型)の形態で利用可能なものなどのプログラム可能なデジタルマイクロプロセッサであってもよい。プロセッサがプログラム可能である場合、好適なプログラミングはリモート位置からプロセッサに送られてもよく、又はコンピュータプログラム製品(磁気、光学又は固体装置ベースのいずれであるかに関わらず、携帯型又は固定型コンピュータ可読記憶媒体など)に予め保存されてもよい。例えば、磁気媒体又は光ディスクがプログラミングを保持することができ、各プロセッサとその対応するステーションで通信する好適なリーダーによって読み出され得る。
【0062】
例えば上記に記載したとおりの検出装置及び信号処理モジュールに加え、本発明のシステムは複数の追加の構成要素、例えば、データ出力装置、例えばモニタ及び/又はスピーカ、データ入力装置、例えば、インターフェースポート、キーボード等、流体操作構成要素、電源等を含み得る。
【0063】
場合によっては、システムは、上記に記載される本方法の態様のいずれかに従って調製されるような試料(例えば、フローチャネルにロードされる)をさらに含み得る。特定の態様では、フローサイトメーターは蛍光活性化セルソーター(FACS)機器又はマスサイトメーターであり得る。別の態様において、システムはフルオリメーターであり得る。
【0064】
有用性
本方法及びシステムは、MSC集団の免疫調節ポテンシャルの評価が所望される種々の異なる適用に用途が見出される。かかる適用としては、治療レジメンの品質管理及び研究、並びに予後診断適用が挙げられる。例えば、高度な(又は十分な)免疫調節ポテンシャルを予測する特定のシグネチャ(CD54+IL6+)をMSC集団が示すかどうかの評価は、MSC集団が細胞治療において有用であるかどうかの指針となり、従って品質管理を通じて標準治療を改良し得る。さらに、2つ以上のMSC集団を、評価された免疫調節ポテンシャルに基づき比較することができ、最も高い免疫調節ポテンシャルを有すると評価されたMSC集団を治療レジメンに使用し得る。研究適用では、本方法を用いることにより、MSC培養条件がMSC免疫調節ポテンシャルに及ぼす効果を調べ得る。MSCベースの細胞治療で治療される患者の予後の評価においては、細胞治療に用いられるMSC集団の免疫調節ポテンシャルの評価を使用して転帰を予測し得る。
【0065】
本方法及びシステムの上述の適用は、多大な時間を要しない単一のアッセイが関わるものであるため好都合である。これは、多くの場合にそれぞれ表面シグネチャ及びサイトカインシグネチャの決定に用いられるフローサイトメトリー及びELISAなど、アッセイの組み合わせと比較することができる。さらに、多くの場合にMSCをPBMC、T細胞、B細胞、NK細胞、単球等と共培養することが必要なMSC免疫調節活性の機能アッセイと比較できる。比較して、本方法及びシステムは、比較的時間のかからない、且つMSC以外の細胞型が不要なアッセイを提供する。
【0066】
本明細書に記載される方法及び組成物の実施形態はまた、表面マーカーCD54の発現に基づく高い免疫調節能力を有するMSCサブセットの精製にも用途が見出される。細胞精製は、例えば上記に記載したとおりのFACS選別又は磁気選別によって達成することができる。これはIL6検出及び/又は選別と併せて行われても、又はそうでなくてもよい。
【0067】
コンピュータが関連する実施形態
本発明の態様は、コンピュータが関連する種々の実施形態をさらに含む。具体的には、前述して記載された方法の定量化及び評価ステップは、コンピュータを使用して実施され得る。従って、本発明は、第1、第2、及び/又は追加の検出可能標識の量を定量化し、且つMSC集団が高度な免疫調節ポテンシャルを有するかどうかの評価を提供するため、上記の方法を用いて生成されたデータを解析するためのコンピュータベースのシステムを提供する。
【0068】
特定の実施形態において、本方法は、「プログラミング」の形態で物理的コンピュータ可読媒体にコーディングされ、ここで用語「コンピュータ可読媒体」は、本明細書で使用されるとき、実行及び/又は処理のためコンピュータに命令及び/又はデータを提供することに関与する任意の記憶媒体又は伝送媒体を指す。記憶媒体の例としては、かかる装置がコンピュータに内蔵されているか又は外付けかの否かに関わらず、フロッピーディスク、磁気テープ、CD−ROM、ハードディスクドライブ、ROM又は集積回路、光磁気ディスク、又はコンピュータ可読カード、例えばPCMCIAカードなどが挙げられる。ファイルに入っている情報(例えば、1つ以上の「イベント」に関連する光散乱及び/又は蛍光信号、CD54/IL−6結果、上回る場合にCD54/IL−6結果が高度な免疫調節ポテンシャルを有するMSC集団の指標となり得る閾値等)はコンピュータ可読媒体上に「記憶」されることができ、ここで「記憶する」とは、後日コンピュータによってアクセス可能且つ検索可能であるように情報を記録することを意味する。特定の態様では、情報は、「永久メモリ」(即ちコンピュータ又はプロセッサへの電源供給の停止によって消去されないメモリ)又は「非永久メモリ」に記憶され得る。コンピュータハードドライブ、CD−ROM、フロッピーディスク及びDVDは、全て永久メモリの例である。ランダムアクセスメモリ(RAM)は非永久メモリの例である。永久メモリ中のファイルは編集可能且つ書換え可能であり得る。
【0069】
特定の態様では、モジュール(先述のシステムの信号処理モジュールなど)は、高度な免疫調節ポテンシャルを有する間葉系間質細胞(MSC)を同定するためのものであり得る。モジュールは、第1及び第2の信号(蛍光発光極大及び/又は強度、蛍光寿命、光散乱、質量、分子質量等)を検出器から受け取るように構成され得る。検出器は、例えば、フローサイトメトリーシステム、フルオリメーター、又は本方法を実施するための任意の好都合なシステムの一部であり得る。第1の信号は、CD54に特異的に結合する第1の検出可能標識によって生成されてもよく、第2の信号は、IL−6に特異的に結合する第2の検出可能標識によって生成されてもよい。任意選択でさらに、モジュールは、MSC免疫調節ポテンシャルの指標となるバイオマーカーに結合する追加の検出可能標識によって生成される1つ以上の追加の信号を受け取るように構成され得る。
【0070】
モジュールはまた、第1及び第2の信号を処理してCD54/IL−6結果を得るようにも構成され得る。任意選択でさらに、モジュールは、1つ以上の追加の信号を処理して追加の結果を得るように構成され得る。モジュールは、CD54/IL−6結果及び/又は追加の結果に基づきMSC集団の免疫調節ポテンシャルの評価を出力するように構成され得る。モジュールは、CD54/IL−6結果及び/又は追加の結果が閾値を上回るかどうかに基づき評価を出力し得る。モジュールは、別のMSC集団及び/又は標準化対照(例えば、本方法に記載されるとおりの)との比較に基づき閾値を決定するように構成され得る。さらに、モジュールは、CD54/IL−6結果を得る前に、FSC、SSC、及び/又は蛍光に基づきMSCを他の細胞から自動的にゲーティングするように構成され得る。例えば、モジュールは、図1のゲーティング手法に基づいたり、先述のMSC表面マーカーに基づいたりするなどにより、MSCをゲーティングするように構成され得る。
【0071】
特定の態様では、モジュールは、蛍光活性化セルソーター(FACS)システム又はマスサイトメトリーシステムの一部であり得る。
【0072】
キット
さらに別の態様において、本発明は、本方法を例えば上記に記載したとおり実施するためのキットを提供する。本キットは、第1及び第2の検出可能標識並びに任意選択で1つ以上の追加の検出可能標識を含み得る。第1の検出可能標識がCD54に特異的に結合してもよく、第2の検出可能標識がIL−6に特異的に結合してもよい。検出可能標識(例えば、第1、第2、及び/又は追加の検出可能標識)は、本方法の態様のいずれかに記載されるとおりであってよい。加えて、キットは1つ以上のタンパク質輸送阻害剤(例えば、ブレフェルジンA、モネンシン等)を含み得る。キットはまた、1つ以上の細胞固定試薬、例えば、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、メタノール、アセトン、ホルマリン、若しくはこれらの任意の組み合わせ、又は緩衝液も含み得る。さらに、キットは、細胞透過処理試薬、例えば、メタノール、アセトン又はデタージェント(例えば、トリトン、NP−40、サポニン、tween 20、ジギトニン、leucoperm)、又はこれらの任意の組み合わせ若しくは緩衝液を含み得る。当業者に周知されている他のタンパク質輸送阻害剤、細胞固定試薬及び細胞透過処理試薬が、本キットの範囲内にある。
【0073】
キットは、フローサイトメトリーアッセイを実施するための試薬をさらに含み得る。前記試薬の例としては、第1及び第2の検出可能分子の再構成及び希釈の少なくとも一方のための緩衝液、細胞試料を第1及び第2の検出可能分子の一方又は両方と接触させるための緩衝液、洗浄緩衝液、対照細胞、対照ビーズ、フローサイトメーター校正用の蛍光ビーズ及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0074】
上記に記載される検出可能標識及び/又は試薬は液体形態又は乾燥(例えば凍結乾燥)形態で提供され得る。上記の構成要素(検出可能標識及び/又は試薬)のいずれも別個の容器(例えば、別個のチューブ、ボトル、若しくはマルチウェルストリップ、又はプレート中のウェル)に存在し得る。加えて、1つ以上の構成要素が単一の容器、例えばガラス又はプラスチック製バイアル、チューブ又はボトルに組み合わされてもよい。
【0075】
特定の態様では、キットは1つ以上の標準化対照を含み得る。標準化対照は、対照ビーズ又は対照細胞などの対照粒子であり得る。例えば、陰性対照細胞は、免疫調節ポテンシャルが低い及び/又はCD54/IL−6の発現が低いMSC集団由来であってもよい。陽性対照細胞は、免疫調節ポテンシャルが高度な及び/又はCD54/IL−6の発現が高いMSC集団由来であってもよい。
【0076】
上記の構成要素に加えて、本キットは、本方法の実施に関する説明書をさらに含み得る。このような説明書は本キットにおいて種々の形態で存在してもよく、キット中にそれらの形態の1つ以上が存在し得る。このような説明書が存在し得る一つの形態は、好適な媒体又は基材、例えば情報が印刷される1枚又は複数枚の紙に印刷された情報としての形態、キットの包装の形態、添付文書の形態等である。さらなる別の手段は、情報が記録されているコンピュータ可読媒体、例えば、ディスケット、CD、DVD、携帯型フラッシュドライブ等であり得る。存在し得るさらなる別の手段は、インターネットを介して使用することにより遠隔サイトで情報にアクセスし得るウェブサイトアドレスである。キットにおいては任意の好都合な手段が存在し得る。
【0077】
以下の例は限定としてではなく、例示として提供される。
【実施例】
【0078】
実施例1
方法
刺激した末梢血単核細胞(PBMC)を単独で培養し、骨髄由来のMSC(BM MSC)と共培養し、及び脂肪組織由来のMSC(AT MSC)と共培養した。T細胞(CD3+PBMC)を、図1に概説する手法に従ってゲーティングした。T細胞によるIFN−γ発現及びviolet proliferation dye(VPD)のレベルをフローサイトメトリーによってアッセイした。静止PBMCを陰性対照として提供した。
【0079】
結果(図2
刺激PBMCとBM MSC又はAT MSCのいずれかとの共培養では、IFN−γ発現及びT細胞増殖によって計測されるとおりのT細胞活性化が抑制される。AT MSCはT細胞のIFN−γ発現をBM MSCより強力に抑制する。AT MSCはT細胞増殖を完全に消失させ、一方、BM MSCの阻害は1世代遅れるように見える。
【0080】
実施例2
方法
BM MSC及びAT MSCを単独で、又は刺激したPBMCとの共培養で培養した。BM MSCを、図1に概説する手法に従ってゲーティングした。MSCのCD54、CD274、及びIL−6発現をフローサイトメトリーによってアッセイした。
【0081】
結果(図3
静止AT MSCは静止BM MSCと比較してより高いレベルのCD54及びIL−6を発現する。刺激PBMCとの共培養によって活性化すると、BM MSC及びAT MSC集団は両方とも、それらの陰性対照と比較してより高いレベルのCD54、CD274、及びIL−6を発現する。
【0082】
実施例3
方法
静止BM MSC及び静止AT MSCのCD54及びIL−6発現をフローサイトメトリーによってアッセイした。BM MSC又はAT MSCと共培養した後のT細胞のIFN−γ発現及びVPDレベルをフローサイトメトリーによってアッセイした。
【0083】
結果(図4
AT MSC集団におけるより高いCD54及びIL−6発現は、IFN−γ発現の阻害及びT細胞の増殖によって計測するときの免疫調節の亢進と相関する。
【0084】
添付の請求項にもかかわらず、本明細書に記載される開示は、以下の付記によっても定義される。
1.多能性間質細胞(MSC)集団の免疫調節ポテンシャルを評価する方法であって、
(a)前記MSC集団のMSCに関連するCD54/IL−6の量を評定するステップであって、それによりCD54/IL−6結果を得るステップと、
(b)CD54/IL−6結果に基づき前記MSC集団の前記免疫調節ポテンシャルの評価を提供するステップと
を含む方法。
2.前記評定するステップは、CD54に特異的に結合する第1の検出可能標識及びIL−6に特異的に結合する第2の検出可能標識に前記MSC集団の試料を接触させるステップであって、それにより標識された試料を作製するステップと、標識された試料中のMSCに関連する第1及び第2の標識の量を定量化するステップであって、それにより前記CD54/IL−6結果を得るステップとを含む付記1に記載の方法。
3.前記MSC集団を作製するステップをさらに含む付記1又は2に記載の方法。
4.前記MSC集団が、ヒト組織から幹細胞を得ること及びMSC作製に好適な培養条件下で幹細胞を培養することによって作製される付記3に記載の方法。
5.前記ヒト組織は骨髄である付記4に記載の方法。
6.前記ヒト組織は脂肪組織である付記4に記載の方法。
7.前記培養条件はヒト血小板溶解物を含む付記4〜6のいずれか一つに記載の方法。
8.前記培養条件はウシ胎仔血清を含む付記4〜6のいずれか一つに記載の方法。
9.試料を得る前に前記MSC集団を培養するステップをさらに含む付記1〜8のいずれか一つに記載の方法。
10.試料をタンパク質輸送阻害剤で処理するステップをさらに含む付記1〜9のいずれか一つに記載の方法。
11.IL−6に特異的に結合する第2の検出可能標識に試料を接触させる前に前記試料を固定試薬で処理するステップをさらに含む付記1〜10のいずれか一つに記載の方法。
12.IL−6に特異的に結合する第2の検出可能標識に試料を接触させる前に前記試料を透過処理試薬で処理するステップをさらに含む付記1〜11のいずれか一つに記載の方法。
13.MSC免疫調節ポテンシャルの指標となる1つ以上の追加のバイオマーカーに特異的に結合する1つ以上の追加の検出可能標識に試料を接触させるステップをさらに含む付記1〜12のいずれか一つに記載の方法。
14.第1及び第2の検出可能標識が各々、特異的結合ドメインと標識ドメインとを含む付記1〜13のいずれか一つに記載の方法。
15.前記特異的結合ドメインは抗体又はその結合断片を含む付記14に記載の方法。
16.前記標識ドメインは蛍光標識を含む付記14又は15に記載の方法。
17.前記標識ドメインは金属同位体を含む付記14又は15に記載の方法。
18.前記定量化するステップは、前記試料から蛍光発光極大データを得るステップを含む付記2〜16のいずれか一つに記載の方法。
19.前記試料から光散乱データを得るステップをさらに含む付記18に記載の方法。
20.前記定量化するステップは、フローサイトメトリーを含む付記2〜19のいずれか一つに記載の方法。
21.前記評価を提供するステップは、前記CD54/IL−6結果が閾値を上回るときに前記MSC集団を高度な免疫調節ポテンシャルを有すると同定するステップを含む付記1〜20のいずれか一つに記載の方法。
22.前記閾値を上回るCD54/IL−6結果は、MSC集団が所望の免疫調節ポテンシャルを有することを示す付記21に記載の方法。
23.標準化対照に基づき前記閾値を決定するステップをさらに含む付記21又は22に記載の方法。
24.前記標準化対照は対照粒子を含む付記23に記載の方法。
25.CD54発現に基づき高い免疫調節ポテンシャルを有するMSCサブセットをエンリッチするステップをさらに含む付記1〜24のいずれか一つに記載の方法。
26.試料であって、
多能性間質細胞(MSC)集団のアリコートと、
CD54に特異的に結合する検出可能標識と、
IL−6に特異的に結合する検出可能標識と
を含む試料。
27.前記アリコートはタンパク質輸送阻害剤で処理されている付記26に記載の試料。
28.前記アリコートは固定試薬で処理されている付記26又は27に記載の試料。
29.前記アリコートは透過処理試薬で処理されている付記26〜28のいずれか一つに記載の試料。
30.MSC免疫調節ポテンシャルの指標となる1つ以上の追加のバイオマーカーに特異的に結合する1つ以上の追加の検出可能標識と接触させた付記26〜29のいずれか一つに記載の試料。
31.第1及び第2の検出可能標識が各々、特異的結合ドメインと標識ドメインとを含む付記26〜30のいずれか一つに記載の試料。
32.前記特異的結合ドメインは抗体又はその結合断片を含む付記31に記載の試料。
33.前記標識ドメインは蛍光標識を含む付記31に記載の試料。
34.前記第1及び第2の検出可能標識は識別可能である付記33に記載の試料。
35.前記第1及び第2の検出可能標識は蛍光発光極大に基づき識別可能である付記34に記載の試料。
36.前記標識ドメインは金属同位体を含む付記31に記載の試料。
37.標準化対照をさらに含む付記26〜36のいずれか一つに記載の試料。
38.前記標準化対照は対照粒子を含む付記37に記載の試料。
39.前記MSC集団はヒトMSCを含む付記26〜38のいずれか一つに記載の試料。
40.システムであって、
フローチャネルと、
前記フローチャネルのアッセイ領域から光を受け取るように構成された検出器モジュールと、
前記検出器モジュールから第1及び第2の信号を受け取り、且つMSC集団の免疫調節ポテンシャルの評価を出力するように構成された信号処理モジュールと
を有するシステム。
41.前記フローチャネルのアッセイ領域に光を当てるように構成された光源をさらに有する付記40に記載のシステム。
42.前記フローチャネルにMSC集団の試料がロードされる付記40又は41に記載のシステム。
43.前記試料はタンパク質輸送阻害剤で処理されている付記42に記載のシステム。
44.前記試料は固定試薬で処理されている付記42又は43に記載のシステム。
45.前記試料は透過処理試薬で処理されている付記42〜44のいずれか一つに記載のシステム。
46.前記試料は、CD54に特異的に結合する第1の検出可能標識及びIL−6に特異的に結合する第2の検出可能標識を含む付記42〜45のいずれか一つに記載のシステム。
47.前記第1の検出可能標識は第1の信号を提供し、前記第2の検出可能標識は第2の信号を提供する付記46に記載のシステム。
48.前記試料は、MSC免疫調節ポテンシャルの指標となる1つ以上の追加のバイオマーカーに特異的に結合する1つ以上の追加の検出可能標識を含む付記46又は47に記載のシステム。
49.前記信号処理モジュールは、第1及び第2の信号を処理してCD54/IL−6結果を生成するように構成されている付記40〜48のいずれか一つに記載のシステム。
50.前記信号処理モジュールは、CD54/IL−6結果が閾値を上回るかどうかに基づきMSC集団の免疫調節ポテンシャルの評価を出力するように構成されている付記49に記載のシステム。
51.前記閾値を上回るCD54/IL−6結果は、MSC集団が所望の免疫調節ポテンシャルを有することを示す付記50に記載のシステム。
52.前記信号処理モジュールは、標準化対照に基づき閾値を決定するように構成されている付記50又は51に記載のシステム。
53.前記標準化対照は対照粒子を含む付記52に記載のシステム。
54.前記第1及び第2の信号は蛍光発光である付記40〜53のいずれか一つに記載のシステム。
55.前記第1及び第2の信号を蛍光発光極大に基づき互いに識別することができる付記54に記載のシステム。
56.前記第1及び第2の検出可能標識を光散乱に基づきさらに識別することができる付記55に記載のシステム。
57.多能性間質細胞(MSC)集団の免疫調節ポテンシャルの評価を提供するためのモジュールであって、
CD54に特異的に結合する第1の検出可能標識が生成する第1の信号と、IL−6に特異的に結合する第2の検出可能標識が生成する第2の信号とを受け取り、
前記第1及び第2の信号を処理してCD54/IL−6結果を求め、及び
CD54/IL−6結果に基づきMSC集団の免疫調節ポテンシャルの評価を出力する
ように構成されるモジュール。
58.前記第1及び第2の信号は、フローサイトメトリーシステムの検出器モジュールから受け取られる付記57に記載のモジュール。
59.前記CD54/IL−6結果が閾値を上回るかどうかに基づきMSC集団の免疫調節ポテンシャルの評価を出力するように構成される付記57又は58に記載のモジュール。
60.前記閾値を上回るCD54/IL−6結果は、MSC集団が所望の免疫調節ポテンシャルを有することを示す付記59に記載のモジュール。
61.標準化対照に基づき前記閾値を決定するように構成される付記59又は60に記載のモジュール。
62.前記標準化対照は対照粒子を含む付記61に記載のモジュール。
63.前記第1及び第2の信号は蛍光発光から得られる付記57に記載のモジュール。
64.蛍光発光極大に基づき前記第1及び第2の信号を互いに識別することができる付記63に記載のモジュール。
65.1つ以上の追加の信号を受け取るように構成される付記57に記載のモジュール。
66.前記1つ以上の追加の信号は、MSC免疫調節ポテンシャルの指標となる1つ以上の追加のバイオマーカーによって生成される付記65に記載のモジュール。
67.前記1つ以上の追加の信号を処理して追加の結果を生成するように構成される付記66に記載のモジュール。
68.前記CD54/IL−6結果及び前記追加の結果に基づきMSC集団の免疫調節ポテンシャルの評価を出力するように構成される付記67に記載のモジュール。
69.多能性間質細胞(MSC)集団の免疫調節ポテンシャルの評価に用いられるキットであって、
CD54に特異的に結合する第1の検出可能標識と、
IL−6に特異的に結合する第2の検出可能標識と
を含むキット。
70.タンパク質輸送阻害剤をさらに含む付記69に記載のキット。
71.固定試薬をさらに含む付記69又は70に記載のキット。
72.透過処理試薬をさらに含む付記69〜71のいずれか一つに記載のキット。
73.前記第1及び第2の検出可能標識は各々、特異的結合ドメインと標識ドメインとを含む付記69〜72のいずれか一つに記載のキット。
74.前記特異的結合ドメインは抗体又はその結合断片を含む付記73に記載のキット。
75.前記標識ドメインは蛍光標識を含む付記73又は74に記載のキット。
76.MSC免疫調節ポテンシャルの指標となる追加のバイオマーカーに特異的に結合する追加の検出可能標識をさらに含む付記69〜75のいずれか一つに記載のキット。
【0085】
本明細書に引用される全ての刊行物及び特許出願は、個別の各刊行物又は特許出願が参照によって援用されることが具体的且つ個別的に示されたものとして参照により本明細書に援用される。任意の刊行物の引用は出願日より前のその開示に関するものであり、先行発明を理由として本発明がかかる刊行物に先行する権利を有しないことを認めるものと解釈されてはならない。
【0086】
前述の本発明は、理解を明確にするため説明及び例示としていくらか詳細に記載されているが、当業者には、本発明の教示を踏まえれば、添付の特許請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱することなくそれに対する特定の変更形態及び改良形態をなし得ることは容易に明らかである。
【0087】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2013年11月4日に出願された米国仮特許出願第61/899,835号明細書の出願日に対する優先権を主張し、この仮特許出願の開示は参照により本明細書に援用される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B-1】
図3B-2】
図4A
図4B
図4C