特許第6765963号(P6765963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765963
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】気候コントローラ
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/76 20180101AFI20200928BHJP
   F24F 11/523 20180101ALI20200928BHJP
   F24F 11/54 20180101ALI20200928BHJP
   F24F 11/62 20180101ALI20200928BHJP
   F24F 11/70 20180101ALI20200928BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   F24F11/76
   F24F11/523
   F24F11/54
   F24F11/62
   F24F11/70
   H04Q9/00 301D
【請求項の数】21
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-530330(P2016-530330)
(86)(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公表番号】特表2016-527471(P2016-527471A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】CN2014082799
(87)【国際公開番号】WO2015014229
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2017年7月20日
【審判番号】不服2019-10272(P2019-10272/J1)
【審判請求日】2019年8月2日
(31)【優先権主張番号】1313444.0
(32)【優先日】2013年7月29日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516023928
【氏名又は名称】アンビ ラブス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】アントニー、マシス
【合議体】
【審判長】 山崎 勝司
【審判官】 松下 聡
【審判官】 槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−5126(JP,A)
【文献】 特開2005−226845(JP,A)
【文献】 特開2011−58668(JP,A)
【文献】 特開平10−73300(JP,A)
【文献】 特開2013−76493(JP,A)
【文献】 特開2007−32875(JP,A)
【文献】 特開2012−149839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気候制御空間にサービスを提供するHVACユニットの複数の機能を制御する制御部と、
複数の温度測定を実行して前記複数の温度測定の結果を前記制御部に通信する温度センサと、
複数の湿度測定を実行して前記複数の湿度測定の結果を前記制御部に通信する湿度センサと
を備え、
前記複数の機能は、温度設定、送風速度設定、モードおよび、オン/オフ設定から選択され、
前記制御部は、複数の機能の複数の設定ポイントを設定するべく前記HVACユニットに複数の信号を送信することによって、前記HVACユニットの前記複数の機能を制御し、前記複数の設定ポイントは、今後の複数の温度および複数の湿度を予測するべく過去および現在の複数の温度測定の結果および複数の湿度測定の結果に基づいてトレーニングされた複数の機械学習方法によって算出され、前記気候制御空間において所望の温度および所望の湿度を実現する気候コントローラ。
【請求項2】
前記複数の機械学習方法は、1または複数の他の環境パラメータに基づき、前記複数の設定ポイントを算出する請求項1に記載の気候コントローラ。
【請求項3】
前記1または複数の他の環境パラメータは、光度、時刻、受動型赤外線活性カウント、屋外温度および屋外湿度から選択される請求項2に記載の気候コントローラ。
【請求項4】
前記制御部をコンピュータプロセッサに通信可能に接続するネットワークインターフェースを備え、前記コンピュータプロセッサは、前記複数の機械学習方法を実施して前記複数の設定ポイントを算出する請求項1から3のいずれか一項に記載の気候コントローラ。
【請求項5】
前記制御部をコンピュータプロセッサに通信可能に接続するネットワークインターフェースを備え、前記コンピュータプロセッサは、前記1または複数の他の環境パラメータのうち1または複数を取得して、前記複数の機械学習方法を実施して前記複数の設定ポイントを算出する請求項2または3に記載の気候コントローラ。
【請求項6】
前記コンピュータプロセッサは、ネットワーク化されたサーバ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォンのうち1つの一部を形成する請求項4または5に記載の気候コントローラ。
【請求項7】
前記コンピュータプロセッサに通信可能に接続されているデータ格納デバイスを備え、前記データ格納デバイスは、前記複数の設定ポイントを算出することを目的として前記複数の機械学習方法によって過去データとして利用されるべく、前記1または複数の他の環境パラメータのうち1または複数を格納している請求項5に記載の気候コントローラ。
【請求項8】
前記所望の温度および前記所望の湿度は、所望の見掛け温度に対応する請求項1からのいずれか一項に記載の気候コントローラ。
【請求項9】
前記制御部をコンピュータプロセッサに通信可能に接続するネットワークインターフェースを備え、前記コンピュータプロセッサは、ユーザに選択された前記所望の温度、前記所望の湿度および前記所望の見掛け温度のうち1または複数を受信する請求項8に記載の気候コントローラ。
【請求項10】
前記制御部をコンピュータプロセッサに通信可能に接続するネットワークインターフェースを備え、前記コンピュータプロセッサは、データ格納デバイスに通信可能に接続されており、前記データ格納デバイスに事前に格納されている前記所望の温度、前記所望の湿度および前記所望の見掛け温度のうち1または複数を取得する請求項8に記載の気候コントローラ。
【請求項11】
前記所望の温度、前記所望の湿度および前記所望の見掛け温度のうち1または複数は、前記所望の温度、前記所望の湿度および前記所望の見掛け温度のそれぞれの最小値および最大値によって定義されているそれぞれの快適帯域に収まっている請求項8に記載の気候コントローラ。
【請求項12】
前記制御部をコンピュータプロセッサに通信可能に接続するネットワークインターフェースを備え、前記コンピュータプロセッサはユーザが選択した前記快適帯域を受信する請求項11に記載の気候コントローラ。
【請求項13】
前記制御部をコンピュータプロセッサに通信可能に接続するネットワークインターフェースを備え、前記コンピュータプロセッサは、データ格納デバイスに通信可能に接続されており、前記データ格納デバイスに事前に格納されている前記快適帯域を取得する請求項11に記載の気候コントローラ。
【請求項14】
前記コンピュータプロセッサは、前記快適帯域をユーザに推薦する請求項13に記載の気候コントローラ。
【請求項15】
前記複数の設定ポイントは、前記所望の温度および前記所望の湿度を実現するために必要な最小消費電力に基づいて選択される請求項1に記載の気候コントローラ。
【請求項16】
前記複数の設定ポイントは、前記所望の温度および前記所望の湿度を実現するために必要な目標時間に基づいて選択される請求項1に記載の気候コントローラ。
【請求項17】
前記制御部をコンピュータプロセッサに通信可能に接続するネットワークインターフェースを備え、前記コンピュータプロセッサは、ユーザインターフェースに通信可能に接続されており、前記複数の温度測定の結果および前記複数の湿度測定の結果を前記ユーザインターフェースに表示する請求項1から16のいずれか一項に記載の気候コントローラ。
【請求項18】
前記ユーザインターフェースは、温度スライダ、湿度スライダ、エネルギースライダおよび時間スライダを備え、各スライダは、所望値、現在値、および他の複数のスライダの複数の設定を考慮に入れて算出した複数の可能な値を含む範囲を表示する請求項17に記載の気候コントローラ。
【請求項19】
赤外線モジュールを備え、前記制御部は前記赤外線モジュールを利用して複数の赤外線信号を前記HVACユニットに送信して前記HVACユニットの1または複数の機能を制御する請求項1から18のいずれか一項に記載の気候コントローラ。
【請求項20】
前記HVACユニットは、前記HVACユニットの1または複数の機能を制御するべく前記HVACユニットに複数の赤外線信号を送信するリモート制御を備え、前記赤外線モジュールは、前記リモート制御が送信する前記複数の赤外線信号のうち1または複数を複製する請求項19に記載の気候コントローラ。
【請求項21】
気候コントローラを用いて気候制御空間における気候を制御する方法であって、
前記気候コントローラは、
複数の温度測定を実行する温度センサと、
複数の湿度測定を実行する湿度センサと
を備え、
前記気候制御空間における気候を制御する方法は、
複数の設定ポイントを設定するべくHVACユニットに複数の信号を送信することによって、前記気候制御空間において所望の温度および所望の湿度を実現するべく、前記気候制御空間にサービスを提供する前記HVACユニットの複数の機能を制御する段階を含み、
前記複数の設定ポイントは、今後の複数の温度および複数の湿度を予測するべく過去および現在の複数の温度測定の結果および複数の湿度測定の結果に基づいてトレーニングされた複数の機械学習方法によって算出され、
前記複数の機能は、温度設定、送風速度設定、モードおよび、オン/オフ設定から選択される、気候制御空間における気候を制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屋内気候制御に関する。より具体的には、屋内気候制御機器を制御するコントローラおよび方法に関する。本発明は、本明細書において主にHVACユニットに制御することに関連して説明しているが、この特定用途に限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
加熱ユニット、換気ユニットおよび空調ユニット(HVACユニットと総称する)は概して「無能」なデバイスであって、機械学習デザインおよびユーザエクスペリエンスデザイン等の進化した最新技術を有効活用していない。普通のHVACユニットのユーザは、加熱、冷却、乾燥(空気中から水分を除去、除湿)、送風およびオフ、ならびに、所望の屋内温度といった多くのモードを与えられる。ユーザは、好ましいモードを選択し、所望の温度を設定し、HVACユニットは当該温度に到達するまで加熱部または冷却部を稼働させてオフにする。そして温度差が再度生じると、再度オンに制御して、これを繰り返す。乾燥モードおよび送風モードの場合、絶対温度には決して到達しないので、ユーザが快適か否かに関わらずHVACユニットは永遠に稼働し続けることになる。より進化したHVACユニットは、加熱部または冷却部の周波数をインバータによって制御するとしてよい。つまり、加熱部または冷却部を繰り返しオンオフに制御する必要はないが、ユーザが快適か否かを考慮していない点では変わらない。
【0003】
このような「無能」な基本的な機能の問題点はたちどころに明らかになる。相対湿度は人間の温度感知能力に影響を与えるので、体感快適度、つまり、体感する見掛け温度は絶対温度および相対湿度の関数として上昇することがよく知られている。空気を冷却するだけでは、屋内気候環境での相対湿度を高めることになり、十分でない。このため、普通のHVACユニットは空気を冷却すると共に除湿も行う。
【0004】
屋内気候条件を絶対温度ではなく快適レベルに合わせて制御することは、エネルギー効率の面から見て有益である。湿度が低くなると、ユーザの快適レベルは改善し得るが、大半の既存の普通のHVACユニットは湿度を測定しない。米国特許第5,737,934号および第8,356,760号は、相対湿度および絶対温度を考慮しつつ、見掛け温度に応じてHVACユニットを制御する方法を説明している。または、HVACユニットが乾燥モードまたは送風モードで稼働している場合、ユーザは、見掛け温度が低くなったことにより、または、皮膚から水分が蒸発した効果により、温度が下がったと感じ始めるとしてよい。これらの要素は普通のHVACユニットの制御メカニズムでは考慮されておらず、無関係に稼働し続けるので、エネルギーが浪費されてしまう。
【0005】
湿度の監視および制御には、さらに有益な点がある。湿度が低い環境ほどカビの成長は少なく、湿度が高い環境ほど肌には良い。また、湿度管理は細菌およびウイルスの残存および増殖に影響を及ぼすことも公知である。
【0006】
さらに、HVACユニットでスマート操作が可能であれば、例えば、一般的なPID(比例・積分・微分)アルゴリズムに従って所望の終点に向けて温度を緩やかに「滑らせる」ことが可能である。こうすることで、単純なオン/オフ制御システムに比べてエネルギーを節約することができる。さらに、HVACユニットの各モードは、それぞれのエネルギー消費が特徴的であり、エネルギー使用量を最小限に抑えつつユーザにとって快適な温度を維持するために、HVACユニットをアクティブ化する際に複数のモードを組み合わせて利用することが可能である。
【0007】
絶対温度に基づいてオンかオフかを制御し、そしてオンかオフかに基づき空気に対して熱の追加または除去の一方を行う単純なHVACシステムに比べて、高度な制御方法は、エネルギー消費を低減し得るが、所望の終点の見掛け温度に到達するまでの時間が長くなるという危険性がある。このため、ユーザに対して、自身の制御方法について可能な選択肢、または、実現するためのエネルギーおよび時間と比較した相対湿度の快適レベル/可能な温度の範囲を提示するコントローラが望ましい。
【0008】
言うまでもなく、屋内気候制御は、HVACユニットが気候条件を制御している建物または部屋の外部の気候にも左右される。消費エネルギーに関心のない無能なHVACユニットの場合、配置されている直近の屋内環境にのみしたがって稼働するので、屋外気候は関連する要素ではない。しかし、所望の終点に到達するために用いられるエネルギーは、直近の屋内環境と屋外気候との間の温度差に比例する。一部のHVACユニットは、屋外温度計を通気口に組み込むが、これは温度を測定するのみである。屋外条件を考慮に入れ、ユーザの希望消費エネルギーに基づいて可能な快適レベル(温度と相対湿度との組み合わせ)の範囲をユーザに提案するスマート気候コントローラが望ましい。このようなスマートコントローラは、ネットワークに接続して、現在の温度および相対湿度、予想温度および予想相対湿度、雲量、UV透過量、大気圧および風速、さらには、粒子状物質(PM)濃度および空気組成等のエネルギー消費量および快適レベルに対して与える影響が少ない要素等、屋外条件に関するデータを取得することが可能である。米国特許第6,853,882号は、ネットワーク化された位置認識HVAC制御システムを開示しているが、一の連続的な屋内環境において複数のセンサを用いることを目的にしており、制御レベルは依然として比較的無能なレベルにとどまっている。米国特許第6,975,958号は、ネットワークから送信される信号に基づいて、価格に敏感なユーザによるHVACシステムの制御に影響を及ぼす方法を開示しているが、HVACユニットを直接制御することについては説明していない。
【0009】
このようなスマートコントローラをネットワークに接続することで、さらに多くの利点が得られる。ユーザは、コントローラをリモートに操作することが可能になり、例えば、HVACユニットをアクティブ化して家の屋内条件が、仕事から帰宅する前に所望の終点に到達するようにすることができたり、または、家を留守にしている間にペットの快適レベルが保証されるようにすることができたりする。また、屋外条件に応じての無人操作が可能になる。例えば、休暇中のユーザは、屋内温度が所与のレベルを下回り数日間にわたって天気が回復しないと予想される場合にアクティブ化されるようにHVACユニットを設定することができる。これによって、屋内の植物が寒害に見舞われないようにすることができる。PCT公開広報WO2012068517号では、ユーザが使用し易く、ネットワークアクセスが可能なユーザインターフェースが開示されているが、提示されているインターフェースは比較的無能でしかなく、温度、湿度、エネルギーおよび時間のやり取り、または、快適レベルについては説明していない。
【0010】
温度差に加えて、所望の終点に到達するために利用されるエネルギーは、HVACユニットの特性(効率、電力、メンテナンスレベルを含む)、屋内環境のサイズ、屋内環境においていずれかのドアまたは窓が空いているか否か、他の熱源または冷却源が屋内環境内に存在するか等の複数の要素に応じて決まる。このため、屋内気候コントローラは、好ましくはユーザのフィードバックを必要とすることなく、所与の快適レベルを実現するより重要な要素および/または予測可能性がより高い要素を学習することが望ましい。このようなシステムはさらに、より重要性の低い要素または予測可能性のより低い要素を識別することが理想的である。このようなコントローラは、HVACユニットのエネルギー使用量を、厳密なキロワットまたはキロジュール単位の数値の代わりに、または、そのような数値に加えて、相対値で提示することができる。米国特許第5,579,994号は、多くの入力に基づき車の屋内気候を制御するためのルールベース推論エンジンの一部として、機械学習の一分野であるファジー論理の利用を説明している。重要な点として、ルールは工場で構築される点が挙げられる。特許権所有者は、車の正確なサイズ、HVACユニットの特性およびHVACユニットを有効化し得る他の入力を把握しているが、順応性に欠ける。
【0011】
現在のHVACインフラストラクチャの別の問題点として、多くの建物において旧型のHVACユニットが既に設置済みである点が挙げられる。アップグレードコストは高く、一部の居住者は賃借人であり、そのようなHVACユニットの交換ができないか、または、乗り気ではない。このため、既存のHVACユニットにスマート機能を追加することが可能なデバイスが必要とされている。
【0012】
最後に、最新型のHVACユニットはエネルギー効率の点で有益なさまざまなモードを提供し得るが、普通のユーザにとっては混乱の原因であり、コストを最低限に抑えつつ快適な環境を実現するためにはHVACユニットをどのように設定すればよいのか、VCRをプログラミングすることと同様に、皆目見当がつかず、または、快適レベルを構成する温度および湿度は実際にはどの程度なのかすら分からない。エネルギー効率を高めるためには、この点を平均的なユーザに対して明確にする必要があり、特に、所与の屋外環境に応じた屋内環境における平均的な人間の快適レベルに基づき快適レベルを提案することが望ましい。
【0013】
このため、HVACユニットとのやり取りが可能で、HVACユニットの動作を制御することが可能な屋内気候コントローラを設計する必要がある。本発明は、前述した従来技術の問題点から改善し、有益な新たな機能を導入することを目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の側面は、気候制御空間にサービスを提供するHVACユニットの1または複数の機能を制御する制御部と、複数の温度測定を実行して複数の温度測定の結果を制御部に通信する温度センサと、複数の湿度測定を実行して複数の湿度測定の結果を制御部に通信する湿度センサとを備える気候コントローラを提供する。制御部は、複数の温度測定の結果および複数の湿度測定の結果に基づいてHVACユニットの1または複数の機能を制御して気候制御空間において所望の温度および所望の湿度を実現する。
【0015】
本発明の第2の側面は、気候コントローラを提供する。当該気候コントローラは、HVACユニットをアクティブ化および非アクティブ化することが可能な制御部と、制御部に温度および相対湿度の測定結果を通信することが可能な温度センサおよび湿度センサと、制御部をネットワーク化されたサーバに接続させることが可能で、温度および相対湿度の測定結果を送信することが可能なネットワークに対するインターフェースとを備え、アクティブ化および非アクティブ化は、温度および湿度のレベルを測定し、HVACユニットの動作モードおよび温度設定値を取得し、アクティブ化または非アクティブ化を実施するべくHVACユニットに信号を通信する制御部に応じて制御が可能である。気候制御は、絶対温度よりも快適レベルを優先的に参照して実施される。エネルギー効率は、気候コントローラが収集したデータセットに対して実行される機械学習方法を適用することで実現される。気候コントローラは、所与の快適レベルに到達するために必要なエネルギーを最小限に抑える、HVACユニットの動作モードおよび目標絶対温度の組み合わせである気候パスを生成することが可能である。
【0016】
HVACユニットおよび気候コントローラは、制御対象である同一の屋内気候環境に設置されている。
【0017】
屋内気候環境の所望(または「終点」)の相対湿度および所望(または「終点」)の温度値は、コンピュータで実行されるユーザインターフェースによってネットワーク上で設定されることが好ましい。コンピュータは、タッチスクリーン型のスマートフォン等、ユーザと同じ位置にあるとしてよく、または、ユーザから離れたサーバであるとしてもよい。後者の場合、HTML等の標準的なプロトコルを用いてユーザとやり取りする。気候コントローラのネットワークインターフェースは、WiFiモジュールであることが好ましいが、無線方式、イーサネット(登録商標)方式またはBluetooth(登録商標)方式等、任意の種類のネットワークインターフェースであってよい。
【0018】
最初にオンに制御した後、ユーザは気候コントローラを初期学習モードにするとしてよい。当該モードにおいて、気候コントローラは、当該気候コントローラの位置に基づきネットワーク化されたサーバから屋外条件を表す値を取得する。当該値は、温度、風速および雲量を含むことが好ましい。ユーザは任意で、HVACユニットの既知のパラメータ、例えば、消費電力および/または冷却能力を入力するとしてよい。または、これらのパラメータはネットワーク化されたサーバから自動で取得するとしてもよい。これに代えて、HVACユニットのパラメータは気候コントローラの学習モード中または動作モード中に推定されるとしてもよい。
【0019】
気候コントローラはさらに、屋内気候環境のパラメータ、例えば、屋内気候を制御しようと試みる場合にHVACユニットの動作に影響を及ぼし得るパラメータを推定することが可能であることが好ましい。または、別の実施形態では、ユーザはこのようなパラメータを任意で入力するとしてもよい。このようなパラメータには、空気流および部屋のサイズが含まれるとしてよい。
【0020】
気候コントローラは、非侵襲的手段、例えば、HVACユニットのリモート制御の赤外線信号を複製する等の手段でHVACユニットと通信することが可能であることが好ましい。別の実施形態によると、気候コントローラはこれに代えて、HVACユニットの交流電源を直接制御するとしてもよい。例えば、交流電力ソケットとHVACユニットの電力プラグとの間を仲介するとしてよい。さらに別の実施形態によると、気候コントローラはHVACユニットの制御回路と直接やり取りするとしてよい。
【0021】
学習モードにおいて、気候コントローラは、温度変化および相対湿度変化を測定しつつ、加熱、乾燥、冷却および送風といったさまざまなモードでのHVACユニットのアクティブ化を周期的に繰り返す。このため、推定エネルギー消費パラメータを算出することができる。HVACユニットおよび/または屋内気候環境の既知のパラメータを利用することで、推定エネルギー消費パラメータをより正確に算出可能とすることが好ましい。学習モードを終了させる際にこれらのパラメータは気候コントローラまたはネットワーク化されたサーバに格納されるとしてよい。
【0022】
気候コントローラは、動作モード中、所望の終点快適レベルを実現するべくさまざまなモードでのHVACユニットのアクティブ化を周期的に繰り返し行うことができる。HVACユニットのアクティブ化の周期的な繰り返しは、標準的な機械学習技術に従い、気候コントローラまたはネットワーク化されたサーバに格納されている、HVACユニットのエネルギー消費量およびその他のパラメータを含む既知のパラメータ、屋内気候環境の既知のパラメータ、および、ネットワーク化されたサーバから取得された既知の屋外条件に基づいて決定される。機械学習技術はさらに、気候コントローラの実際の動作に応じて、学習し、格納されているパラメータの精度を上げ得ることが好ましい。
【0023】
ユーザインターフェースはこのため、温度、相対湿度、エネルギー消費量および所与の快適レベルを実現するまでにかかる時間について所望の終点を組み合わせた表示をユーザに提示することが可能である。採用される機械学習技術は、可能な快適レベルの範囲、エネルギー消費量およびかかる時間をユーザに提案することが可能であることが好ましい。これによって、範囲のうち1または複数を制限することで、他の所望の終点について実現可能な範囲に影響を与え、他の所望の終点について実現可能な範囲をユーザに対して直感的に提示する。
【0024】
本発明のさまざまな実施形態のその他の特徴は請求項で定義している。本発明のさまざまな実施形態において特徴をさまざまなに組み合わせ得ることに想到するであろう。
【0025】
請求項を含む本明細書において、「comprise(備える)」、「comprising(備える)」およびその他の同様の用語は、特に明記されていない限り、または、文脈から明らかにそうでないと理解されない限りにおいて、包括的な意味を持つものとして、つまり、「含むが限定されない」という意味で解釈されたく、排他的または全てを網羅することを意味すると解釈されるべきではない。
【0026】
本発明への理解を深めていただき、本発明を実施する方法を示すべく、添付図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態を一例としてのみ、本発明を限定することなく、以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下の図面を参照しつつ、限定することなく、例を説明する。図面は以下の通りである。
図1】本発明の実施形態に係る気候コントローラを示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る気候コントローラのユーザインターフェースの3つの構成を示す図である。
図3】本発明の別の実施形態にかかる気候コントローラのユーザインターフェースの3つの構成を示す図である。
図4】本発明の別の実施形態にかかる学習モード中の気候コントローラの動作を示すブロック図である。
図5】本発明の別の実施形態にかかる動作モード中の気候コントローラの動作を示すブロック図である。
図6】本発明の別の実施形態にかかる気候パスの算出に用いられる凸包の例を示す図である。
図7】HVACユニットを複数の異なるモードで動作させることによって、始点相対湿度/温度から、所望の相対湿度/温度に到達するための相対湿度−温度平面における可能な気候パスを示す図であり、選択されたパスは本発明の実施形態に係る気候コントローラが算出している様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面を参照しつつ説明すると、気候コントローラ1は、気候制御空間に対してサービスを提供するHVACユニット13の1または複数の機能を制御する制御部7を備える。温度センサ3は、温度測定を行い、制御部7に温度測定の結果を通信する。湿度センサ5は、湿度測定を行い、制御部7に湿度測定の結果を通信する。制御部7は、気候制御空間において所望の温度および所望の湿度を実現するべく、温度および湿度の測定結果に基づきHVACユニット13の1または複数の機能を制御する。1または複数の機能は、温度設定、送風速度設定、モード、加熱/冷却/乾燥/換気モード設定およびオン/オフ設定から選択され得る。しかし、HVACユニットは他の機能を含むとしてよく、これらの機能も選択され得る。
【0029】
制御部7は、複数の機能のうち1または複数について設定ポイントを設定するべくHVACユニットに信号を送信することで、HVACユニットの機能を制御する。設定ポイントは、今後の温度および湿度を予測するべく、過去の温度および湿度の測定結果に基づいてトレーニングされた機械学習方法から算出される。このように、設定ポイントはそれぞれ、予測される今後の温度および湿度に対応する。適切な機械学習方法には、サポートベクターマシン、ランダムフォレストおよびニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムに基づいたものが含まれる。これらの機械学習方法は、設定ポイントまたは目標ベクトルを生成することを目的として、特徴選択、次元縮小および回帰分析等のプロセスを実行する。
【0030】
機械学習方法は、過去の温度および湿度の測定結果に加え、1または複数のその他の環境パラメータに基づき、設定ポイントを算出する。1または複数のその他の環境パラメータは、光度、時刻、受動型赤外線活性カウント、屋外温度および屋外湿度から選択され得る。これらのパラメータは、センサによって測定され得るか、または、インターネットから取得されるとしてもよく、または、単にユーザが入力するとしてもよい。例えば、屋外温度および屋外湿度は、インターネット上のウェブサイトから取得することができる。
【0031】
気候コントローラ1はさらに、制御部7をコンピュータプロセッサに通信可能に接続するネットワークインターフェース9を備える。コンピュータプロセッサは、設定ポイントを算出するべく機械学習方法を実施する。別の実施形態によると、コンピュータプロセッサはさらに、環境パラメータのうち1または複数を取得する。コンピュータプロセッサは、ネットワーク化されたサーバ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォンのうちいずれか1つの一部を形成するとしてよい。図1は、コンピュータプロセッサがネットワーク化されたサーバ14の一部である実施形態を示す図である。
【0032】
気候コントローラはさらに、コンピュータプロセッサに通信可能に接続されているデータ格納デバイスを備える。データ格納デバイスは、設定ポイントを算出するべく機械学習方法によって過去データとして利用される環境パラメータのうち1または複数を格納する。図1において、データ格納デバイスはネットワーク化されたサーバ14の一部を成す。
【0033】
所望の見掛け温度、例えば、ヒュミデックス(humidex、湿度インデックス)を用いて算出したものを設定すると便利であることが多い。見掛け温度は、温度(乾球)および湿度を考慮に入れた温度で、ある環境が人間に対してどの程度熱く感じられるかの尺度である。
【0034】
ネットワークインターフェース9は、制御部7をコンピュータプロセッサに通信可能に接続する。コンピュータプロセッサは、ユーザが選択した所望の温度、湿度および見掛け温度のうち1または複数を受信する。コンピュータプロセッサは、この場合、機械学習方法を実施する上述したコンピュータプロセッサと同じであってもよいし、または、別のデバイスの一部であってもよい。図1において、コンピュータプロセッサは、別のデバイス、つまり、コンピュータ12の一部である。コンピュータ12は、ユーザに所望の温度、湿度または見掛け温度を入力させるためのユーザインターフェース11を有する。これに代えて、または、これに加えて、コンピュータプロセッサは、データ格納デバイスに通信可能に接続されており、データ格納デバイスに事前に格納されている所望の温度、湿度および見掛け温度のうち1または複数を取得する。
【0035】
一部の実施形態によると、所望の温度、湿度および見掛け温度のうち1または複数はそれぞれ、所望の温度、湿度または見掛け温度の最小値および最大値によって定義されている快適帯域に含まれる。コンピュータプロセッサは、ユーザが選択する快適帯域を受信するとしてよい。これに代えて、または、これに加えて、コンピュータプロセッサは、データ格納デバイスに通信可能に接続されており、データ格納デバイスに事前に格納されている快適帯域を取得する。このように、気候コントローラ1は、ユーザが所望の温度、湿度または見掛け温度を入力する必要がなく、完全自動動作が可能である。一実施形態によると、快適帯域は特定のユーザについてカスタマイズされる。別の実施形態によると、快適帯域を定義する最小値および最大値は一日のうちで変化する。更に別の実施形態によると、コンピュータプロセッサは快適帯域をユーザに推薦する。
【0036】
設定ポイントは、所望の温度および湿度を実現するために必要な最小消費電力に基づいて選択され得る。設定ポイントはさらに、所望の温度および湿度を実現するために必要な目標時間に基づいて選択され得る。
【0037】
ユーザインターフェース11は、リアルタイムで温度および湿度の測定結果を表示し得る。図2および図3に示すように、ユーザインターフェース11は、温度スライダ、湿度スライダ、エネルギースライダおよび時間スライダを有し、各スライダは他のスライダの設定を考慮して算出した可能な値の範囲、現在値および所望値を表示する。
【0038】
一の好ましい実施形態によると、気候コントローラ1は、非侵襲的手段でHVACユニット13と通信する。一の具体例では、HVACユニット13はユーザが操作するリモート制御によって制御される。リモート制御は、HVACユニット13に赤外線信号を送信してHVACユニット13の1または複数の機能、または、全ての機能を制御する。気候コントローラ1は、赤外線モジュール15を備え、制御部7は、リモート制御が通常提供する1または複数の赤外線信号、または、全ての赤外線信号を赤外線モジュール15を用いて複製して、HVACユニット13の1または複数の機能を制御する。本実施形態は、気候コントローラ1がHVACユニット自体を変形することなく既存のHVACユニットと共に利用可能であるという点において特に利点が大きい。
【0039】
本発明はさらに、気候制御空間における気候を気候コントローラを用いて制御する方法を提供する。一実施形態によると、気候コントローラは、温度測定を実行する温度センサ3と、湿度測定を行う湿度センサ5とを備える。当該実施形態は、気候制御空間において所望の温度および所望の湿度を実現するべく、温度および湿度の測定結果に基づいて、気候制御空間にサービスを提供するHVACユニット13の1または複数の機能を制御することを含む。
【0040】
当該実施形態は、より具体的には、気候制御空間において所望の温度および所望の湿度を実現する、複数の機能のうち1または複数についての設定ポイントを算出することを目的として、今後の温度および湿度を予測するべく過去の温度および湿度の測定結果に基づいてトレーニングを行った機械学習方法を用いることと、および、設定ポイントを設定するべくHVACユニット13に信号を送信することとを含む。
【0041】
本発明に係る気候制御空間における気候を制御する方法の他の実施形態は、上記の説明から想到され得る。
【0042】
以下の説明では、他の実施形態をさらに詳細に説明する。以下の説明は概して、気候コントローラで実施されHVACユニットによって実現される屋内気候制御のシステムおよび方法に関する。
【0043】
図1は、本発明に係る気候コントローラの好ましい実施形態を示す図である。気候コントローラ1は、温度センサ3、相対湿度センサ5、制御部7およびネットワークインターフェース9が組み込まれている。気候コントローラは、本発明の好ましい実施形態においては、赤外線モジュール15を用いて、HVACユニットのリモート制御プロトコルと互換性のある赤外線信号を生成することによって、HVACユニット13のモードおよびアクティブ化を制御することが可能である。
【0044】
ユーザインターフェース11は、コンピュータ12上で気候コントローラ1のユーザに対して提示される。コンピュータ12は、好ましい実施形態では、タッチスクリーン型のスマートフォンまたはタブレットデバイスである。ユーザインターフェース11は、ネットワークインターフェース9を介して気候コントローラ1と通信する。好ましい実施形態において、ユーザインターフェース11はスライダ20を表示する。スライダ20は、温度センサ3によって乾球で測定された屋内温度T、湿度センサ5によって測定された屋内相対湿度HおよびHVACユニット13のエネルギー消費量Eを指し示し、屋内温度T、屋内相対湿度Hおよびエネルギー消費量Eを設定可能である。テストを実施したことで、以下の線形モデルがT、HおよびEの関係について利用可能な近似値となることが分かった。
Tを変更する場合:
H(T)=a.T+b
E(T)=α.|T−Toutside
Hを変更する場合:
T(H)=α.H+b=(1/a).T−(b/a
E(H)=α.|T(H)−Toutside
Eを変更する場合:
T(E)=Toutside±(E/α
H(E)=a .T(E)+b
【0045】
上記の式中、Toutsideは、HVACユニット13が影響を与える屋内気候に対して外部の屋外温度であり、ネットワークインターフェース9を介してネットワーク10から制御部7によって取得される。好ましい実施形態において、コンピュータ12のジオロケーションフィーチャは、コントローラ1の位置を正確に特定し、Toutsideを正確に特定できるように利用されている。a、bおよびαは、コントローラが特定すべき屋内気候環境のパラメータである。|x|は、xの絶対値または係数値を示す。±は、所望の快適レベルに到達するために屋内気候環境の加熱または冷却のどちらをコントローラが実行すべきかに応じて選択される。
【0046】
気候コントローラの好ましい実施形態は、図4に示す学習モードを持つ。当該学習モードは、コントローラ1が新しいHVACユニット13について最初に操作された場合、または、コントローラ1が新しい位置に移動した場合に利用されるモードである。学習モードでは、コントローラは、HVACユニット13に関するデータに基づいてテストされていないモードがあるか否かを確認する。当該データは、ユーザが入力したものか、ネットワーク10から収集したものか、または、制御部7で格納されているかのいずれかである。テストされていないモードが無い場合には、コントローラは学習モードを終了する。テストされていないモードがある場合には、制御部7は、ネットワーク10から、HVACユニット13の位置の外部の温度の値を取得する。当該値は、T_outと言及する。制御部7はこの後、温度センサ3が測定する屋内温度TとT_outとの間の差分の絶対値または係数値が、低い値(テストを行って得られたもの、摂氏2度が良いことが分かっている)に事前設定されたしきい値温度T_t未満になるまで、待機する。この処理では、実際には、制御部7は常に温度センサ3を用いて屋内温度Tを監視しており、屋内温度Tが屋外温度T_outと近似均衡状態になるまで待機する。
【0047】
この条件が真となる場合、制御部7は、好ましい実施形態では、HVACユニット13のテストされていないモードを赤外線モジュール15によってアクティブ化して、このモードの所望の温度設定T_sをユーザに設定させる。T_sは、ユーザが快適であろうと感じる温度である。制御部7は、センサ3および5が測定する屋内乾球温度および相対湿度の値を、一定の時間間隔で記録し始め、記録された値を制御部7または、好ましい実施形態では、ネットワークサーバ14に格納する。テストによって、好ましい時間間隔は5分毎であることが分かっている。
【0048】
制御部7は、冷却モードの場合には、屋内温度TがT_sより低い値であるT_learnに到達するまで、または、加熱モードの場合には、屋内温度TがT_sよりも高い値であるT_learnに到達するまで、HVACユニット13のアクティブ化状態を維持する。T_learnは、制御部7によって、T_sとは数度異なる、ユーザにとって快適でない温度に自動的に設定される。
【0049】
テストによって、T_learnの最良値はT_setの摂氏±2度であることが分かっている。T_learnに到達できない場合、制御部7は、適切な期間が経過した後、HVACユニットのアクティブ化を停止させる。この期間は、テストにより2時間と決定されている。アクティブ化が望まれていない場合、制御部7は、HVACユニット13を、好ましい実施形態では、赤外線モジュール15を用いて非アクティブ化する。
【0050】
HVACユニット13の非アクティブ化に続いて、制御部7は、屋内温度TがT_outからT_t度の範囲内に再度到達するまで、つまり、屋内温度および屋外温度が近似均衡状態に戻るまで、センサ3および5によって温度および相対湿度の値を監視および格納し続ける。この期間において、制御部7は、センサ3および5で測定する屋内乾球温度および相対湿度の値を、一定の時間間隔で、依然として記録しており、記録された値を制御部7、または、好ましい実施形態では、ネットワークサーバ14のいずれかに格納する。
【0051】
このため、制御部7、または、好ましい実施形態ではネットワークサーバ14は、HVACユニット13の既知の特性および学習サイクル中の時間間隔に基づき所望(または「終点」)温度と開始時屋内温度との間の差異を解消するために必要なエネルギー消費量、および、制御部7または好ましくはネットワークサーバ14に既知の一連の屋外条件において、事前にテストされていないモードのアクティブ化がサイクル中に相対湿度にどのように影響するかを推定することが可能である。
【0052】
図6は、一連の時間間隔および所与の一連の屋外条件において、屋内温度Tおよび屋内相対湿度Hについて記録された値21のグラフである。値21は、14時間にわたるHVACユニットにおける試験されていない冷却モードについての学習モード中に取得された値であり、制御部7または、好ましくは、ネットワークサーバ14に格納されている。凸包23は、このようなサイクルにわたって記録されたデータに応じて生成される。機械学習において、凸包は、所定期間にわたってTおよびHについて格納されている値全てを含む必要がある最小凸集合である。このため、制御部7または、好ましくは、ネットワークサーバ14は、図6に示すように、所与の屋内気候環境に位置している所与のHVACユニットの所与のモードについて記録されたデータセットから、所与の屋内温度について可能な相対湿度の値の範囲(およびその逆)を、既知の屋外条件群について、特定することができる。制御部7または、好ましくは、ネットワークサーバ14はさらに、既知の屋外条件群について、所与の始点から所定の終点の相対湿度値および温度に到達するためにかかる時間を(したがって、エネルギーも)推定することができる。そして、制御部7または、好ましくは、ネットワークサーバ14は、好ましい実施形態において、サポートベクターマシン(公知の機械学習技術)によってデータセットを複数の超平面で分離し、分離結果が最も良好な超平面について、HVACユニット13の事前にテストされていないモードのパラメータa、bおよびαを算出する。好ましい実施形態では、超平面の算出およびパラメータは、ネットワーク化されたサーバ14に格納されている。サポートベクターマシンとは別の機械学習技術には、線形近似または最小二乗回帰による新しい等式の推定、線形判別分析、ベイズ法、高次多項式またはニューラルネットワークが含まれる。
【0053】
屋外条件の変化に応じて、HVACユニット13に対する屋外条件の変化の影響を近似するべく、パラメータa、bおよびαの調整が可能である。好ましい実施形態では、学習モードは複数の異なる屋外条件群について繰り返し行われ、最良の調整を行うことが可能となる。
【0054】
図5に示した気候コントローラの動作モードの好ましい実施形態では、制御部7または、好ましい実施形態では、ネットワークサーバ14は、凸包23から収集した一連の相互依存する範囲を、超平面分離算出および気候コントローラの近似位置における現在の屋外条件についてのパラメータと共に、ユーザインターフェース11においてスライダ20に表示されているコンピュータ12に通信する。現在の湿度、温度およびエネルギー使用量(HVACユニット13の現在のアクティブ化状態に応じる)もさらに、ネットワークインターフェース9を介して制御部7によってコンピュータ12に通信される。ユーザインターフェース11の実施形態は図2および図3に示す。このように、T、H、Eまたは時間の値のうち制約されたスライダの値について、3つの他のスライダの値はコンピュータ12によって算出することができ、それに応じて範囲を調整することができる。気候コントローラの動作モードの別の実施形態によると、算出はすべてネットワークサーバ14で実行され、スライダ20の値はユーザインターフェース11に直接通信される。
【0055】
好ましい実施形態によると、ユーザはユーザインターフェース11に快適レベルを入力することができる。快適レベルは、屋内乾球温度および相対湿度の組み合わせであり、アール・ジー・ステッドマン(R.G.Steadman)の研究に基づいた公知のヒートインデックスイクエージョン(Heat Index Equation)に応じたものである。好ましい実施形態によると、ユーザインターフェース11は追加で、快適レベルを提案してユーザに提示することが可能である。これは、当該快適レベルに到達するためにかかるエネルギー使用量または時間を最小限に抑えつつ、現在の屋外条件におけるユーザの快適さを最大化するためである。ユーザの理想の快適レベルは、ユーザインターフェース11を介して行われたユーザの過去の入力および選択の内容を記録することによって把握する。
【0056】
ユーザがユーザインターフェース11を介して所望の快適レベルを選択すると、この選択は制御部7または、好ましい実施形態では、ネットワークサーバ14に通信される。HVACユニット13における可能なモードの数がMであり、パスにおけるステップの数、つまり、最初の始点から所望の快適レベルに到達するべく連続して実行される複数の異なるHVACユニットのアクティブ化モードの数がnである場合、複数の異なるパスから成るM^n個の可能な組み合わせが存在する。このため、現在の屋内気候条件から所望の快適レベルまでの最良パスまたは最短パス(エネルギー使用量または時間を最小限に抑えるパス)について完全な検索を実行することは実際には不可能である。しかし、制御部7または、好ましい実施形態において、ネットワークサーバ14は、概略を上述した機械学習方法にしたがって、既に取得した凸包23の線形近似または多項式近似を持つ検索空間を大幅に削減する。パスの算出およびその代替となる線形バージョンを図7に示す。図7では、所与の一連の屋外条件における、既知の特性のHVACユニットについての最初の屋内気候条件30から目標快適レベル32までの最短パスはパス34であることが分かる。パス34は、好ましい実施形態では、赤外線モジュール15によってHVACユニット13を乾燥モードで所定の時間にわたってアクティブ化した後、HVACユニット13を非アクティブ化することに相当する。
【0057】
動作モード中、HVACユニット13の現在のアクティブ化モードに関して追加のデータポイントが収集され、制御部7または好ましくはネットワークサーバ14に格納される。好ましい実施形態によると、凸包23は定期的に生成し直され、上記の機械学習技術によってそのHVACユニットモードのパラメータが、および、選択された機械学習方法に応じて超平面算出および/または式が算出し直され、気候コントローラ1の性能が常に最適化され得るようにする。
【0058】
気候コントローラ1の動作モードは図5にまとめている。
【0059】
上記の実施形態は本発明の原理を説明するために採用された例示的な実施形態に過ぎず、本発明は上記のみに限定されないことに想到し得る。さまざまな変更例および変形例は、本発明の意図および本質から逸脱することなく当業者によって実施され得ると共に、そのような変更例および変形例も本発明の範囲に含まれる。したがって、本発明は具体例に基づいて説明してきたが、当業者であれば本発明は多くの他の形態で実施し得ることに想到し得る。また、当業者は、説明したさまざまな例の特徴を他の組み合わせでも組み合わせることが可能であることに想到するであろう。具体的には、上述した回路配置については多くの変形が可能であり、変形後も同じ受動方式を採用して受動型力率補正を実現し、そのような変形は当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7