(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
<第1実施形態>
第1実施形態に係るショベルについて、
図1〜
図7を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係るショベルの左側面図である。
図2は、
図1に示すショベルの右側面図である。
【0011】
図1及び
図2に示すように、ショベルは、下部走行体1、上部旋回体2、キャビン3、ブーム4、アーム5、及びバケット6を有する。上部旋回体2は、旋回機構(図示せず)を介して下部走行体1上に搭載される。上部旋回体2の左側前部にキャビン3が設けられる。上部旋回体2の前部中央にブーム4の一端が回動可能に取り付けられる。アーム5は、ブーム4の先端部に回動可能に取り付けられる。エンドアタッチメントであるバケット6は、アーム5の先端部に回動可能に取り付けられる。掘削アタッチメントであるバケット6の代わりに、ブレーカや破砕機のようなエンドアタッチメントがアーム5の先端部に取り付けられてもよい。
【0012】
上部旋回体2の後部には、後述するようにディーゼルエンジン及びエンジンに付随する構成部品が搭載されており、これらエンジンと構成部品上部を覆うようにエンジンフード200が取り付けられている。エンジンフード200は、ディーゼルエンジン8を含む構成部品を覆って保護するとともに、ショベルの外観を良くするために設けられる。
【0013】
図3は上部旋回体2の概略構成を示す平面図である。
図3に示すように、上部旋回体2の後部にはエンジンルーム7(一点鎖線で示す)が形成される。エンジンルーム7の上部は、
図1及び
図2に示すようにエンジンフード200及びカバー109により覆われているが、
図3ではエンジンルーム7の内部を図示するためにエンジンフード200及びカバー109が取り外された状態が示されている。
【0014】
図3に示すように、エンジンルーム7内にはディーゼルエンジン8が設置される。ディーゼルエンジン8の近傍には、排ガス処理装置10が配置される。ディーゼルエンジン8には冷却ファン12が設けられ、ラジエータを含む熱交換器ユニット13が冷却ファン12の前方に設置される。
【0015】
熱交換器ユニット13の側方(ショベルとしては前側)には、エアクリーナ63(エアフィルタ)が配置される。エアクリーナ63は吸気管64を介してディーゼルエンジン8に接続されている。エアクリーナ63で濾過された空気が吸気管64を通じてディーゼルエンジン8に供給される。
【0016】
ディーゼルエンジン8には、エンジン排気(以下、「排ガス」と称する)を放出するための排気管9が接続される。排気管9の下流側の端部には、高次の排ガス規制に対応する排ガス処理装置10が設置される。本実施形態では、排ガス処理装置10として、尿素水溶液(液体還元剤)を用いた尿素選択還元型のNOx処理装置、いわゆる、SCR(selective catalytic reduction)システムが用いられる。
【0017】
キャビン3は上部旋回体2の左側前部に配置されている。ここで、本明細書において、上部旋回体2の前部とは、上部旋回体の中央から見てブーム4が取り付けられている側の部分である。また、前方とは、上部旋回体の中央から見てブーム4が延在する方向である。また、左側とは上部旋回体2において前方(ブーム4が延在する方向)を向いたときに左となる部分である。また、右側とは上部旋回体2において前方(ブーム4が延在する方向)を向いたときに、右となる部分である。
【0018】
キャビン3の後方には、油圧システムで用いられる作動油を貯蔵する作動油タンク120が配置される。作動油タンク120の後方に上述の熱交換器ユニット13が配置される。
【0019】
一方、エンジンルーム7の前側に、軽油等のディーゼルエンジン燃料を貯蔵する燃料タンク19が配置される。燃料タンク19に貯蔵されたディーゼルエンジン燃料は、燃料供給配管(図示せず)を介してディーゼルエンジン8に供給される。
【0020】
燃料タンク19の前側に、排ガス処理装置10が使用する処理剤(尿素水溶液(液体還元剤))を貯蔵する尿素水タンク(処理剤タンク)20が配置される。尿素水タンク20に貯蔵された処理剤は、処理剤供給配管(図示せず)により排ガス処理装置10に供給される。尿素水タンク20はタンクカバー40(
図2参照)で覆われていてもよい。なお、尿素水溶液(液体還元剤)は処理剤の一例であり、液体還元剤として他の処理剤を用いてもよいし、他の処理方法を用いてもよい。
【0021】
ブーム4は、上部旋回体2の旋回フレーム2aの前側中央部に強固に固定されたブーム支持ブラケット17に回動可能に支持される。より具体的には、ブーム4は、ブーム支持ブラケット17の右側ブラケット17R及び左側ブラケット17Lとの間に挟まれた状態で、右側ブラケット17R、ブーム4、左側ブラケット17Lを貫通して設けられるブームフートピン100により支持される。
【0022】
図4は、エンジンルーム7の概略構成を示す右側面図である。
図4における破線矢印は、排ガスの流れを示す。なお、
図4の例では、説明の便宜上、ディーゼルエンジン8やエアクリーナ63などが省略されている。
【0023】
図4に示すように、エンジンルーム7には、ラック71と、排ガス処理装置10と、が設けられる。ラック71は、天板72及び脚部73を備え、脚部73の下端をエンジンルーム7の底面に固定される。
図4の例では、省略されているが、ラック71の天板72の下部には、ショベルの油圧システムにおける作動油を循環させるための油圧ポンプが配置される。油圧ポンプは、ディーゼルエンジン8により駆動される。
【0024】
排ガス処理装置10は、ラック71の天板72に固定される。排ガス処理装置10は、第1排ガス処理部101と、排気管102と、第2排ガス処理部103と、テールパイプ104と、を備える。
【0025】
第1排ガス処理部101は、前段酸化触媒を備え、排気管9の下流側に接続される。第1排ガス処理部101は、排気管9を介してディーゼルエンジン8から排ガスを供給され、供給された排ガスに含まれるNOx(窒素酸化物)や一酸化炭素を、酸化触媒により酸化する。第1排ガス処理部101は、DPF(Diesel Particulate Filter)などのフィルタを備え、排ガスに含まれる微粒子を除去してもよい。
【0026】
第1排ガス処理部101には、センサ105が設けられる。センサ105は、第1排ガス処理部101に供給された排ガスや第1排ガス処理部101から流出する排ガスの、温度やNOx濃度を計測するセンサを含む。センサ105は、ラック71の脚部73に固定された基板106に信号線105Lを介して接続される。センサ105の出力データは、基板106により収集される。基板106は、信号線106Lを介して、排ガス処理装置10の制御回路(ECU(Engine Control Unit)など)に接続されており、収集したセンサ105の出力データを制御回路入力する。制御回路に入力されたセンサ105の出力データは、排ガス処理装置10の監視、若しくは、制御に利用される。第1排ガス処理部101の下流側は、排気管102に接続される。
【0027】
排気管102は、第1排ガス処理部101と、第2排ガス処理部103と、の間に接続され、第1排ガス処理部101から流出した排ガスを、第2排ガス処理部103に供給する。排気管102には、排ガス中に尿素水溶液(液体還元剤)を吐出するためのノズル107が設けられる。
図4の例では省略されているが、ノズル107は、尿素水タンク20に接続され、尿素水溶液を供給される。排気管102の下流側は、第2排ガス処理部103に接続される。
【0028】
第2排ガス処理部103は、SCR触媒及び後段酸化触媒を備え、排気管102の下流側に接続される。第2排ガス処理部103は、排気管102を介して第1排ガス処理部101から流出した排ガスを供給される。第2排ガス処理部103は、供給された排ガスに含まれるNOxをSCR触媒により還元する。これにより、排ガス中のNOxが窒素と水に分解され、排ガスが浄化される。また、第2排ガス処理部103は、SCR触媒により還元した排ガスを、後段酸化触媒により酸化し、アンモニアの発生を抑制する。
【0029】
第2排ガス処理部103には、センサ108が設けられる。センサ108は、第2排ガス処理部103に供給された排ガスや第2排ガス処理部103から流出する排ガスの、温度やNOx濃度を計測するセンサを含む。センサ108は、ラック71の脚部73に固定された基板106に信号線108Lを介して接続される。センサ108の出力データは、基板106により収集され、排ガス処理装置10の制御回路に入力され、排ガス処理装置10の監視、若しくは、制御に利用される。第2排ガス処理部103の下流側は、テールパイプ104に接続される。
【0030】
テールパイプ104は、第2排ガス処理部103の下流側に接続され、第2排ガス処理部103から排ガスを供給される。テールパイプ104は、エンジンフード200に設けられた開口部201(第1開口部)から、一部がエンジンルーム7の外側に突出するように設けられ、第2排ガス処理部103から供給された排ガス(排ガス処理装置10により処理された排ガス)を、大気中に放出する。第2排ガス処理部103に対するテールパイプ104の取り付け方法として、既存の任意の方法を利用できる。
【0031】
カバー109は、エンジンフード200の開口部から突出したテールパイプ104の突出部分の少なくとも一部を覆うように、エンジンフード200の上部に設けられる。カバー109は、高温のテールパイプ104が外部の可燃物に接触することを防ぎ、火災の発生を抑制する。
【0032】
上述の通り、テールパイプ104は、排ガス処理装置10に取り付けられる。排ガス処理装置10は、ラック71に取り付けられる。ラック71は、エンジンルーム7の底面に取り付けられる。この結果、テールパイプ104の位置には、テールパイプ104と排ガス処理装置10との間の公差と、排ガス処理装置10とラック71との間の公差と、ラック71とエンジンルーム7の底面との間の公差と、を含む累積公差(位置ずれ)が発生する。
【0033】
図5は、本実施形態に係るテールパイプ104の周辺部の一例を示す部分拡大図である。
図5に示すように、テールパイプ104の周辺には底板110が設けられる。
【0034】
図5の底板110は、テールパイプ104とエンジンフード200の開口部201との隙間の一部を覆う板状部材であり、テールパイプ104とは別体として構成される。底板110は、中央部に開口部112(第2開口部)を有し、開口部112からテールパイプ104の一部が突出する。底板110の開口部112は、エンジンフード200の開口部201より小さく、かつ、テールパイプ104の開口部201から突出した部分を挿通可能なように形成される。
【0035】
底板110は、テールパイプ104が排ガス処理装置10に取り付けられた状態で、エンジンフード200に取り付けられる。具体的には、底板110は、エンジンフード200の開口部201から突出したテールパイプ104の部分を、開口部112に挿通させることにより、エンジンフード200の上部に配置される。エンジンフード200の上部に底板110を配置することにより、テールパイプ104とエンジンフード200の開口部201との隙間の一部が覆われる。
【0036】
エンジンフード200の上部に配置された底板110は、複数のボルト111によりエンジンフード200に固定される。底板110を固定可能なように、底板110及びエンジンフード200には、ボルト111が挿通するボルト孔が設けられる。ボルト111が挿通するボルト孔は、所定方向に長い長孔であり、底板110をエンジンフード200に固定する際の調整代として機能する。このため、テールパイプ104の位置の累積公差が大きい場合であっても、作業者は、底板110をエンジンフード200に容易に取り付けできる。
【0037】
底板110の上部には、カバー109が取り付けられる。すなわち、カバー109は、底板110を介して、エンジンフード200の上部に取り付けられる。カバー109は、下端部が底板110の表面に溶接されていてもよい。また、カバー109は、下端部にフランジ113を備え、フランジ113に設けられたボルト孔を介して、ボルト114によりエンジンフード200に固定されてもよい。この場合、カバー109を固定するためのボルト孔が、カバー109、底板110及びエンジンフード200に設けられる。ボルト114が挿通するボルト孔は、所定方向に長い長孔であり、カバー109をエンジンフード200に固定する際の調整代として機能する。このため、テールパイプ104の位置の累積公差が大きい場合であっても、作業者は、カバー109をエンジンフード200に容易に取り付けできる。
【0038】
図6及び
図7は、本実施形態に係るテールパイプ104の周辺部の一例を後方斜め上からみた斜視図である。
【0039】
図6の例では、底板110は、平面視形状が矩形であり、カバー109の平面視形状より大きく形成されている。底板110は、前後左右の各辺をボルト111によりエンジンフード200に固定されている。また、カバー109は、フランジ113を備え、ボルト114によりエンジンフード200に固定されている。このような構成により、底板110を大型化できるため、エンジンフード200の開口部201が大きい場合であっても、テールパイプ104とエンジンフード200の開口部201との隙間を底板110により覆える。
【0040】
図7の例では、底板110は、平面視形状が矩形であり、カバー109の平面視形状と同一形状に形成されている。また、カバー109は、フランジ113を備え、ボルト114によりエンジンフード200に固定されている。
図7の例では、底板110は、ボルト111により固定されず、ボルト114だけでエンジンフード200に固定されている。このような構成により、底板110を小型化できるため、底板110を安価に形成できる。
【0041】
以上説明した通り、本実施形態によれば、底板110により、テールパイプ104とエンジンフード200の開口部201との隙間の一部が覆われる。したがって、エンジンルーム7内への雨水の侵入を抑制できる。また、エンジンフード200の開口部201の大きさに依存せずに雨水の侵入を抑制できるため、開口部201を大きく形成できる。開口部201を大きく形成することにより、テールパイプ104の位置の累積公差が大きい場合であっても、開口部201を介してテールパイプ104を排ガス処理装置10に容易に取り付けできる。また、開口部201を大きく形成することにより、開口部201を介して、排ガス処理装置10の周辺に設けられた構成部品(センサ105,108や基板106など)のメンテナンスを容易に行える。
【0042】
<第2実施形態>
第2実施形態に係るショベルについて、
図8を参照して説明する。
図8は、本実施形態に係るテールパイプ104の周辺部の一例を示す部分拡大図である。なお、本実施形態において、テールパイプ104の周辺部以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0043】
図8の底板110は、テールパイプ104と、エンジンフード200の開口部201と、の隙間を全て覆う板状部材であり、テールパイプ104と一体に構成される。底板110は、中央部に開口部112を有し、開口部12からテールパイプ104の一部が突出する。底板110は、開口部112からテールパイプ104の一部が突出した状態で、テールパイプ104と溶接される。
【0044】
本実施形態において、排ガス処理装置10(第2排ガス処理部103)は、テールパイプ104の取り付け方向に延びる筒状の凸部115を有する。排ガス処理装置10により処理された排ガスは、凸部115から流出する。本実施形態に係る底板110は、テールパイプ104が排ガス処理装置10の凸部115に嵌合するように、エンジンフード200の上部に配置される。エンジンフード200の上部に底板110を配置することにより、テールパイプ104とエンジンフード200の開口部201との隙間の全てが覆われる。
【0045】
エンジンフード200の上部に配置された底板110は、複数のボルト111によりエンジンフード200に固定される。底板110を固定可能なように、底板110及びエンジンフード200には、ボルト111が挿通するボルト孔が設けられる。ボルト111が挿通するボルト孔は、所定方向に長い長孔であり、底板110をエンジンフード200に固定する際の調整代として機能する。このため、テールパイプ104の位置の累積公差が大きい場合であっても、底板110は、エンジンフード200に容易に取り付けできる。
【0046】
底板110の上部には、カバー109が取り付けられる。すなわち、カバー109は、底板110を介して、エンジンフード200の上部に取り付けられる。カバー109は、下端部が底板110の表面に溶接されていてもよい。また、カバー109は、下端部にフランジ113を備え、フランジ113に設けられたボルト孔を介して、ボルト114によりエンジンフード200に固定されてもよい。この場合、カバー109を固定するためのボルト孔が、カバー109、底板110及びエンジンフード200に設けられる。ボルト114が挿通するボルト孔は、所定方向に長い長孔であり、カバー109をエンジンフード200に固定する際の調整代として機能する。このため、テールパイプ104の位置の累積公差が大きい場合であっても、カバー109は、エンジンフード200に容易に取り付けできる。
【0047】
以上説明した通り、本実施形態によれば、底板110により、テールパイプ104とエンジンフード200の開口部201との隙間の全てが覆われる。したがって、エンジンルーム7内への雨水の侵入をより効果的に抑制できる。また、エンジンフード200の開口部201の大きさに依存せずに雨水の侵入を抑制できるため、開口部201を大きく形成できる。開口部201を大きく形成することにより、テールパイプ104の位置の累積公差が大きい場合であっても、開口部201を介して、テールパイプ104を排ガス処理装置10に容易に取り付けできる。また、開口部201を大きく形成することにより、開口部201を介して、排ガス処理装置10の周辺に設けられた構成部品(センサ105,108や基板106など)のメンテナンスを容易に行える。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えられる。