特許第6766072号(P6766072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6766072
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】車両用センサおよびそれを備えた車両
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/87 20200101AFI20200928BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20200928BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20200928BHJP
   G03B 15/05 20060101ALI20200928BHJP
   G03B 15/02 20060101ALI20200928BHJP
   G03B 15/03 20060101ALI20200928BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20200928BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20200928BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   G01S17/87
   G01S17/89
   G01S17/931
   G03B15/05
   G03B15/02 G
   G03B15/03 W
   G03B15/03 X
   G03B15/00 V
   H04N5/225 600
   H04N5/225 800
   H04N5/232
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-557834(P2017-557834)
(86)(22)【出願日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】JP2016085812
(87)【国際公開番号】WO2017110415
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2019年9月24日
(31)【優先権主張番号】特願2015-248824(P2015-248824)
(32)【優先日】2015年12月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞野 光治
【審査官】 田中 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−011050(JP,A)
【文献】 特表2015−510586(JP,A)
【文献】 特開昭59−198377(JP,A)
【文献】 特開2010−061304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 − G01S 7/51
G01S 17/00 − G01S 17/95
G01B 11/00 − G01B 11/30
G01C 3/00 − G01C 3/32
G03B 15/00 − G03B 15/16
H04N 5/225
B60Q 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備わる左右一対の前照灯の一方に、近傍照射用の第一の光源と、近傍撮像用の第一のカメラとが搭載され、
前記左右一対の前照灯の他方に、遠方照射用の第二の光源と、遠方撮像用の第二のカメラとが搭載された、車両用センサであって、
前記第一の光源および前記第二の光源は、それぞれ、所定方向にパルス光を発光し、
前記第一のカメラおよび前記第二のカメラは、それぞれ、ターゲット距離領域に応じて設定される撮像タイミングで前記ターゲット距離領域から帰ってくる反射光を撮像することでターゲット距離領域の異なる複数の撮像画像を取得し、
前記車両用センサは、前記第一の光源および前記第二の光源から発光される前記パルス光の発光周期および前記第一のカメラおよび前記第二のカメラの前記撮像タイミングを制御するタイミング制御部をさらに備え、
前記タイミング制御部は、前記第一の光源と前記第二の光源との発光が順に切り替わるように前記発光周期を制御し、前記第一の光源から発光された光の反射光の反射時間経過後に前記第一のカメラのシャッタを開放するとともに前記第二の光源から発光された光の反射光の反射時間経過後に前記第二のカメラのシャッタを開放するように前記撮像タイミングを制御する、車両用センサ
【請求項2】
前記第一の光源は、その左右方向における照射範囲が前記第一の光源の光軸を中心に±20°以上90°以下の範囲であり、
前記第二の光源は、その左右方向における照射範囲が前記第二の光源の光軸を中心に±5°以上10°以下の範囲である、請求項1に記載の車両用センサ。
【請求項3】
前記第一のカメラは前記第一の光源の照射範囲を撮像可能である一方、前記第二のカメラは前記第二の光源の照射範囲を撮像可能である、請求項1または2に記載の車両用センサ。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の車両用センサを備えている、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用センサおよびそれを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えば対向車や前走車等の前方車両の存在を自車両のバックミラー裏のガラス面等に配置された認識カメラにより検知し、前方車両の領域を照射しないような前照灯の配光制御を行うことより前方車両の運転者へのグレアを低減するための車両用前照灯制御システム(いわゆるADB(Adaptive Driving Beam)システム)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2012−180051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のようなシステムでは、認識カメラと左右前照灯との搭載位置が異なることから光軸のずれが発生し、認識カメラにより検知された前方車両の位置と前照灯の配光制御において非照射とすべき位置とに誤差が生じる可能性がある。そのため、照射しない範囲(前方車両領域)を小さくすることができない。また、単一の認識カメラについて近傍から遠方までの広範囲における高精度な検知性能を得ようとすると、カメラレンズの構造が複雑化しコスト増となる。
【0005】
本開示の目的は、低コストで、自車両の近傍から遠方までの広範囲における高精度な検知性能を達成することが可能であるとともに、照射しない範囲をできるだけ小さくすることができる車両用センサおよびそれを備えた車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の車両用センサは、
車両に備わる左右一対の前照灯の一方に、近傍照射用の第一の光源と、近傍撮像用の第一のカメラとが搭載され、
前記左右一対の前照灯の他方に、遠方照射用の第二の光源と、遠方撮像用の第二のカメラとが搭載されている。
【0007】
上記構成によれば、自車両の近傍から遠方までの広範囲における高精度な検知性能を達成することが可能であり、装置コストを抑えることができる。また、各前照灯内に光源およびカメラがそれぞれ一組ずつ搭載されるため、光源とカメラとの光軸ずれが最小限となり、前照灯の配光制御においてカメラによる検知結果に基づく照射しない範囲をできるだけ小さくすることができる。
【0008】
前記第一の光源は、その左右方向における照射範囲が前記第一の光源の光軸を中心に±20°以上90°以下の範囲であり、
前記第二の光源は、その左右方向における照射範囲が前記第二の光源の光軸を中心に±5°以上10°以下の範囲であっても良い。
【0009】
上記構成によれば、近傍範囲および遠方範囲のいずれも高精度に撮像することができる。
【0010】
前記第一のカメラは前記第一の光源の照射範囲を撮像可能である一方、前記第二のカメラは前記第二の光源の照射範囲を撮像可能であっても良い。
【0011】
上記構成によれば、近距離用光学系(第一の光源および第一のカメラ)と遠距離用光学系(第二の光源および第二のカメラ)でそれぞれ独立して制御を行うため、画像処理アルゴリズムを簡易化することができる。
【0012】
上記に記載の車両用センサであって、
前記第一の光源および前記第二の光源は、それぞれ、所定方向にパルス光を発光し、
前記第一のカメラおよび前記第二のカメラは、それぞれ、ターゲット距離領域に応じて設定される撮像タイミングで前記ターゲット距離領域から帰ってくる反射光を撮像することでターゲット距離領域の異なる複数の撮像画像を取得し、
さらに、
前記第一の光源および前記第二の光源から発光される前記パルス光の発光周期および前記第一のカメラおよび前記第二のカメラの前記撮像タイミングを制御するタイミング制御部を備えていても良い。
【0013】
上記構成によれば、簡易な構成により近傍から遠方までの広範囲の撮像画像を網羅的に取得することができる。
【0014】
前記タイミング制御部は、前記第一の光源と前記第二の光源との発光が順に切り替わるように前記発光周期を制御し、前記第一の光源から発光された光の反射光の反射時間経過後に前記第一のカメラのシャッタを開放するとともに前記第二の光源から発光された光の反射光の反射時間経過後に前記第二のカメラのシャッタを開放するように前記撮像タイミングを制御しても良い。
【0015】
上記構成によれば、近距離用光学系(第一の光源および第一のカメラ)と遠距離用光学系(第二の光源および第二のカメラ)でそれぞれ独立して発光/露光制御を行うため、制御処理を簡素化することができる。
【0016】
前記タイミング制御部は、前記第一の光源と前記第二の光源とが同時に発光されるように前記発光周期を制御し、前記第一の光源から発光された光の反射光の反射時間経過後に前記第一のカメラのシャッタを開放するとともに前記第二の光源から発光された光の反射光の反射時間経過後に前記第二のカメラのシャッタを開放するように前記撮像タイミングを制御しても良い。
【0017】
上記構成によれば、広範囲の撮像画像を短時間で取得することができる。
【0018】
上記目的を達成するため、本開示の車両は、上記に記載の車両用センサを備えている。
【0019】
上記構成によれば、例えば自動運転システムを搭載した車両における安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、低コストで、自車両の近傍から遠方までの広範囲における高精度な検知性能を達成することが可能であるとともに、照射しない範囲をできるだけ小さくすることができる車両用センサおよびそれを備えた車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態の車両用センサの構成を示すブロック図である。
図2図1の車両用センサが備える各ランプによる照射範囲および各カメラによる撮影範囲を示す図である。
図3】実施例2の車両用センサの構成を示すブロック図である。
図4】各ターゲット距離領域を撮像する際の、発光部の動作(発光動作)とゲートの動作(カメラゲート動作)との時間的な関係を示す図である。
図5】自車両前方の異なる位置に4つの異なる物体が存在している状況を示す図である。
図6】各物体に対応する画素の時間的な輝度変化を示す模式図である。
図7】実施例2に係る画像取得処理を示す図である。
図8】実施例2の別の例に係る画像取得処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態の一例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
[実施例1]
図1は、本実施形態の実施例1に係る車両用センサの構成を示すブロック図である。図2は、図1の車両用センサが備える各ランプによる照射範囲および各カメラによる撮影範囲を示す図である。
【0024】
図1に示されるように、車両V(自車両)に設けられる車両用センサ1は、近傍照射用ランプ2A(第一の光源)と、遠方照射用ランプ2B(第二の光源)と、ランプECU3と、近傍撮像用カメラ4A(第一のカメラ)と、遠方撮像用カメラ4B(第二のカメラ)と、タイミングコントローラ(タイミング制御部)5と、画像処理部6と、物体認識処理部7と、配光制御部8と、を備えている。
【0025】
近傍照射用ランプ2Aは、例えば、タイミングコントローラ5からランプECU3を介して送信される指令信号に応じて光を出射する近赤外線LEDであり、車両Vの前端部の右側前照灯HA内に搭載される。図2に示すように、近傍照射用ランプ2Aは、その左右方向における照射範囲20Aが近傍照射用ランプ2Aの光軸を中心に例えば±20°以上90°以下の範囲である。
遠方照射用ランプ2Bは、例えば、タイミングコントローラ5からランプECU3を介して送信される指令信号に応じて光を出射する近赤外線LEDであり、車両Vの前端部の左側前照灯HB内に搭載される。図2に示すように、遠方照射用ランプ2Bは、その左右方向における照射範囲20Bが遠方照射用ランプ2Bの光軸を中心に例えば±5°以上10°以下の範囲である。
なお、図示は省略するが、前照灯HA,HBには、近傍照射用ランプ2Aおよび遠方照射用ランプ2Bとは別に、ロービームおよびハイビーム照射用ランプとしてハロゲンランプまたはLEDランプ等がそれぞれ搭載されている。
【0026】
また、近傍撮像用カメラ4Aは、タイミングコントローラ5からの指令信号に応じて近傍照射用ランプ2Aから照射された光の反射光を撮像し、撮像画像を画像処理部6へ出力する。近傍撮像用カメラ4Aは、右側前照灯HA内に搭載されている。近傍撮像用カメラ4Aは、近傍照射用ランプ2Aの照射範囲20Aとほぼ同じ領域である撮影範囲40Aからの反射光を撮像可能である。
遠方撮像用カメラ4Bは、タイミングコントローラ5からの指令信号に応じて遠方照射用ランプ2Bから照射された光の反射光を撮像し、撮像画像を画像処理部6へ出力する。遠方撮像用カメラ4Bは、左側前照灯HB内に搭載されている。遠方撮像用カメラ4Bは、遠方照射用ランプ2Bの照射範囲20Bとほぼ同じ領域である撮影範囲40Bからの反射光を撮像可能である。
【0027】
画像処理部6は、近傍撮像用カメラ4Aおよび遠方撮像用カメラ4Bにより撮像された撮像画像データを物体認識処理部7へ出力する。物体認識処理部7は、撮像画像データに含まれる物体を特定する。物体の特定方法は、パターンマッチング等、周知の技術を用いることができる。配光制御部8は、物体認識処理部7により特定された物体(人、自動車(対向車)、標識等)に応じて、例えば、当該物体の存在する領域以外をロービームまたはハイビームにより照射するように前照灯HA,HBに搭載されたロービームおよびハイビーム照射用ランプの配光を制御する。
【0028】
以上説明した実施例1における車両用センサ1によれば、以下に列挙する効果を奏する。
【0029】
(1)車両用センサ1は、左右一対の前照灯HA,HBのうち右側前照灯HAに搭載される近傍照射用ランプ2Aおよび近傍撮像用カメラ4Aと、左側前照灯HBに搭載される遠方照射用ランプ2Bおよび遠方撮像用カメラ4Bとを備えている。この構成によれば、車両Vの近傍から遠方までの広範囲における高精度な検知性能を達成することが可能であり、装置コストを抑えることができる。また、各前照灯HA,HB内にランプおよびカメラがそれぞれ一組ずつ搭載されるため、近傍照射用ランプ2Aと近傍撮像用カメラ4Aとの光軸ずれおよび遠方照射用ランプ2Bと遠方撮像用カメラ4Bとの光軸ずれが最小限となる。そのため、例えばADBシステムにおける前照灯HA,HBの配光制御において、各カメラ4A,4Bによる検知結果に基づいて前照灯HA,HB(のロービームおよびハイビーム照射用ランプ)により照射しない範囲をできるだけ小さくすることができる。
【0030】
(2)実施例1においては、近傍撮像用カメラ4Aは近傍照射用ランプ2Aの照射範囲20Aを撮像可能である一方、遠方撮像用カメラ4Bは遠方照射用ランプ2Bの照射範囲20Bを撮像可能である。この構成によれば、近距離用光学系(近傍照射用ランプ2Aおよび近傍撮像用カメラ4A)と遠距離用光学系(遠方照射用ランプ2Bおよび遠方撮像用カメラ4B)でそれぞれ独立して制御を行うため、画像処理部6における画像処理アルゴリズムを簡易化することができる。
【0031】
[実施例2]
図3は、本実施形態の実施例2に係る車両用センサの構成を示すブロック図である。図4は、各ターゲット距離領域を撮像する際の、発光部の動作(発光動作)とゲートの動作(カメラゲート動作)との時間的な関係を示す図である。
図3に示されるように、車両Vに設けられる車両用センサ(障害物検出装置)101は、画像取得装置102と、画像処理部(距離画像データ生成部)103と、物体認識処理部104と、判断部111とを備えている。
【0032】
画像取得装置102は、近傍照射用ランプ105Aと、遠方照射用ランプ105Bと、近傍撮像用カメラ106Aと、遠方撮像用カメラ106Bとタイミングコントローラ(タイミング制御部)110とを備えている。
【0033】
近傍照射用ランプ105Aは、例えば、車両Vの右側前照灯HAに搭載された近赤外線LEDである。図4に示されるように、近傍照射用ランプ105Aは、タイミングコントローラ110から出力されるパルス信号に応じて、所定の発光時間tL(例えば、5ns)の間、所定方向(例えば、車両V前方)にパルス光を出射する。近傍照射用ランプ105Aから照射されるパルス信号の発光周期tPは、例えば、10μs以下の間隔とする。近傍照射用ランプ105Aの照射範囲は、図2に示される実施例1の近傍照射用ランプ2Aと同等の範囲である。
【0034】
遠方照射用ランプ105Bは、例えば、車両Vの左側前照灯HBに搭載された近赤外線LEDである。図4に示されるように、遠方照射用ランプ105Bは、タイミングコントローラ110から出力されるパルス信号に応じて、所定の発光時間tL(例えば、5ns)の間、所定方向(例えば、車両V前方)にパルス光を出射する。遠方照射用ランプ105Bから照射されるパルス信号の発光周期tPは、例えば、10μs以下の間隔とする。遠方照射用ランプ105Bの照射範囲は、図2に示される実施例1の遠方照射用ランプ2Bと同等の範囲である。
【0035】
近傍撮像用カメラ106Aは、車両Vの右側前照灯HAに搭載されたカメラであって、対物レンズ107Aと、光増倍部108Aと、イメージセンサ109Aとを備えている。また、遠方撮像用カメラ106Bは、車両Vの左側前照灯HBに搭載されたカメラであって、対物レンズ107Bと、光増倍部108Bと、イメージセンサ109Bとを備えている。
【0036】
対物レンズ107A,107Bは、例えば、車両V前方の所定範囲を撮像できる画角とするように設定された光学系であって、物体からの反射光を受光する。対物レンズ107Aは近傍照射用ランプ105Aの照射範囲を撮像可能な画角を有し、対物レンズ107Bは遠方照射用ランプ105Bの照射範囲を撮像可能な画角を有している。
【0037】
光増倍部108A,108Bは、ゲート108Aa,108Baとイメージインテンシファイア108Ab,108Bbとをそれぞれ備えている。
ゲート108Aa,108Baは、タイミングコントローラ110からの開閉指令信号に応じて開閉する。本実施例では、ゲート108Aa,108Bの開放時間(ゲート時間)tGを、発光時間tLと同じ5nsとしている。ゲート時間tGは、領域1から領域nまでの全撮像領域における各領域(ターゲット距離領域)の撮像対象長さ(撮像対象深さ)に比例する。ゲート時間tGを長くするほど各領域の撮像対象長さは長くなる。撮像対象長さは、光速度×ゲート時間tGから求められる。撮像対象長さは、光速度×ゲート時間tGから求められ、本実施例では、ゲート時間tG=5nsとしているため、撮像対象長さは、「光速度(約3×10m/s)×ゲート時間(5ns)」より、1.5mとなる。
イメージインテンシファイア108Ab,108Bbは、極微弱な光(物体からの反射光等)を一旦電子に変換して電気的に増幅し、再度蛍光像に戻すことで光量を倍増してコントラストのついた像を見るためのデバイスである。イメージインテンシファイア108Ab,108Bbにより増幅された光はイメージセンサ109A,109Bに導かれる。
【0038】
イメージセンサ109A,109Bは、タイミングコントローラ110からの指令信号に応じて、光増倍部108A,108Bから発せられた像を撮像し、撮像画像を画像処理部103へ出力する。本実施例では、例えば、解像度640×480(横:縦)、輝度値1〜255(256段階)、100fps以上のイメージセンサを用いている。
【0039】
タイミングコントローラ110は、イメージセンサ109A,109Bにより撮像される撮像画像が、狙った撮像領域であるターゲット距離領域から帰ってくる反射光のタイミングとなるように、近傍照射用ランプ105Aおよび遠方照射用ランプ105Bの発光開始時点から近傍撮像用カメラ106Aおよび遠方撮像用カメラ106Bのゲート108Aa,108Baを開くまでの時間であるディレイ時間tD(図4では、tD,tDn+1)を設定し、ディレイ時間tDに応じた開閉指令信号を出力することで、撮像タイミングを制御する。つまり、ディレイ時間tDは、車両Vからターゲット距離領域までの距離(撮像対象距離)を決める値である。ディレイ時間tDと撮像対象距離との関係は、以下の式(1)から求められる。
撮像対象距離=光速度(約3×10m/s)×ディレイ時間tD/2 ・・・式(1)
【0040】
タイミングコントローラ110は、ターゲット距離領域が車両Vの前方(遠方)へと連続的に離れるように、ディレイ時間tDを所定間隔(例えば、10ns)ずつ長くすることで、近傍撮像用カメラ106Aおよび遠方撮像用カメラ106Bの撮像範囲を車両V前方側へ変化させる。なお、タイミングコントローラ110は、ゲート108Aa,108Abが開く直前に近傍撮像用カメラ106Aおよび遠方撮像用カメラ106Bの撮像動作を開始させ、ゲート108Aa,108Baが完全に閉じた後に撮像動作を終了させる。
【0041】
タイミングコントローラ110は、設定された所定のターゲット距離領域(領域1、領域2、…、領域nの各領域)毎に複数回の発光および露光を行うよう近傍照射用ランプ105Aおよび遠方照射用ランプ105B、および近傍撮像用カメラ106Aおよび遠方撮像用カメラ106Bのゲート108Aa,108Baを制御する。近傍撮像用カメラ106Aおよび遠方撮像用カメラ106Bがそれぞれ受光した光は電荷に変換され、複数回の発光および露光を繰り返すことで蓄積される。所定の電荷蓄積時間ごとに得られる1枚の撮像画像をフレームと呼ぶ。なお、近傍撮像用カメラ106Aおよび遠方撮像用カメラ106Bは、ターゲット距離領域ごとに1枚(1フレーム)ずつ撮像画像を取得しても良く、あるいは各ターゲット距離領域において複数の撮像画像(数フレーム)を取得しても良い。このようにして、近傍撮像用カメラ106Aおよび遠方撮像用カメラ106Bは、ターゲット距離領域の異なる複数の撮像画像を取得し、取得した複数の撮像画像を画像処理部103へ出力する。
【0042】
画像処理部103は、近傍撮像用カメラ106Aおよび遠方撮像用カメラ106Bにより撮像された全撮像領域の撮像画像における同一画素の輝度に基づいて、画素毎の物体(対象物)までの距離を表す距離画像データを生成し、生成した距離画像データを物体認識処理部104へ出力する。
【0043】
物体認識処理部104は、距離画像データに含まれる物体を特定する。物体の特定方法は、パターンマッチング等、周知の技術を用いることができる。
【0044】
判断部111は、物体認識処理部104により特定された物体(人、自動車、標識等)と自車両との関係(距離、相対速度等)に基づいて、警報等による運転者への情報提示、自動ブレーキ等の車両制御の要否を判断する。
【0045】
図5は、車両Vの前方の異なる位置に4つの物体A〜Dが存在している状況を示している。物体Aは傘をさした人物であり、物体Bは対向車線側のバイクであり、物体Cは歩道側の樹木であり、物体Dは対向車線側の車両(対向車)である。車両Vと各物体との距離の関係は、A<B<C<Dとする。
【0046】
図6は、各物体に対応する画素の時間的な輝度変化を示している。
撮像領域の一部をオーバーラップさせることで、図6に示されるように、連続する複数の撮像画像における同一画素の輝度値は、徐々に増加し、各物体A〜Dの位置でピークとなった後は徐々に小さくなる三角波状の特性を示す。このように、1つの物体からの反射光が複数の撮像画像に含まれるようにすることで、画素の時間的な輝度変化が三角波状となるため、当該三角波状のピークと対応する撮像領域を当該画素における車両Vから各物体(被写体)A〜Dまでの距離とすることで、検出精度を高めることができる。
【0047】
図7は、実施例2に係る画像取得処理を示す図である。
まず、処理fにおいて、タイミングコントローラ110は、遠方照射用ランプ105Bを発光させ、遠方照射用ランプ105Bの照射範囲(図2の照射範囲20Bと同等の範囲)に含まれる遠方領域(例えば、100〜200mの領域における所定の距離領域)からの反射光の反射時間tD経過後に遠方撮像用カメラ106Bのシャッタ(ゲート)を開閉する。この処理fにおいては、車両Vの遠方にある物体(例えば、歩行者M2)からの反射光L2が遠方撮像用カメラ106Bにより受光される一方、車両Vの近傍にある物体(例えば、歩行者M1)に反射した光L1は遠方撮像用カメラ106Bのシャッタが開放された時には遠方撮像用カメラ106Bを通り過ぎているため受光されない。
【0048】
次に、処理f+1において、タイミングコントローラ110は、近傍照射用ランプ105Aを発光させ、近傍照射用ランプ105Aの照射範囲(図2の照射範囲20Aと同等の範囲)に含まれる近傍領域(例えば、0〜100mの領域における所定の距離領域)からの反射光の反射時間tD経過後に近傍撮像用カメラ106Aのシャッタを開閉する。この処理f+1においては、近傍の歩行者M1からの反射光L1が近傍撮像用カメラ106Aにより受光される一方、遠方の歩行者M2に反射した光L2は近傍撮像用カメラ106Aのシャッタが開放された時には近傍撮像用カメラ106Aに到達していないため受光されない。
【0049】
次に、処理f+2において、タイミングコントローラ110は、遠方照射用ランプ105Bを再び発光させ、遠方領域からの反射光の反射時間tD2+1経過後に遠方撮像用カメラ106Bのシャッタ(ゲート)を開閉する。処理fと同様に、処理f+2では、遠方の歩行者M2からの反射光L2が受光される一方、近傍の歩行者M1からの反射光L1は受光されない。
【0050】
次に、処理f+3において、タイミングコントローラ110は、近傍照射用ランプ105Aを再び発光させ、近傍領域からの反射光の反射時間tD1+1経過後に近傍撮像用カメラ106Aのシャッタ(ゲート)を開閉する。処理f+1と同様に、処理f+3においては、近傍の歩行者M1からの反射光L1が受光される一方、遠方の歩行者M2からの反射光L2は受光されない。
【0051】
同様に、処理f+4〜f+nにおいても、タイミングコントローラ110は、遠方照射用ランプ105Bと近傍照射用ランプ105Aとからの照射を順次切り替えつつ、反射時間tDおよびtDを徐々に長くするような撮像タイミングで遠方撮像用カメラ106Bおよび近傍撮像用カメラ106Aによりそれぞれ撮像を行う。このように、遠方撮像用カメラ106Bおよび近傍撮像用カメラ106Aにより、ターゲット距離領域の全範囲の撮像画像を網羅的に取得することができる。なお、画像処理部103は、これら全範囲の撮像画像を合成することで距離画像データを生成する。
【0052】
以上説明した実施例2の画像取得装置102によれば、以下に列挙する効果を奏する。
【0053】
(3)実施例2の車両用センサ(障害物検出装置)101においては、近傍照射用ランプ105Aおよび遠方照射用ランプ105Bは、それぞれ、所定方向にパルス光を発光し、近傍撮像用カメラ106Aおよび遠方撮像用カメラ106Bはそれぞれ、ターゲット距離領域に応じて設定される撮像タイミングでターゲット距離領域から帰ってくる反射光を撮像することでターゲット距離領域の異なる撮像画像を取得している。さらに、画像取得装置102は、近傍照射用ランプ105Aおよび遠方照射用ランプ105Bから発光されるパルス光の発光周期と、近傍撮像用カメラ106Aおよび遠方撮像用カメラ106Bの撮像タイミングとを制御するタイミングコントローラ110を備えている。この構成によれば、簡易な構成により近傍から遠方までの広範囲の撮像画像を網羅的に取得することができる。
【0054】
(4)タイミングコントローラ110は、近傍照射用ランプ105Aと遠方照射用ランプ105Bとの発光が順に切り替わるように発光周期を制御し、近傍照射用ランプ105Aから発光された光の反射光の反射時間経過後に近傍撮像用カメラ106Aのシャッタを開放するとともに遠方照射用ランプ105Bから発光された光の反射光の反射時間経過後に遠方撮像用カメラ106Bのシャッタを開放するように撮像タイミングを制御することが好ましい。この構成によれば、近距離用光学系(近傍照射用ランプ105Aおよび近傍撮像用カメラ106A)と遠距離用光学系(遠方照射用ランプ105Bおよび遠方撮像用カメラ106B)でそれぞれ独立して発光/露光制御を行うため、制御処理を簡素化することができる。
【0055】
なお、実施例2に係る画像取得処理は図7に示される例に限られない。図8は、実施例2の別の例に係る画像取得処理を示す図である。
図8に示されるように、各処理f〜f+nにおいて、タイミングコントローラ110は、近傍照射用ランプ105Aと遠方照射用ランプ105Bとが同時に発光されるように発光周期を制御し、近傍照射用ランプ105Aから発光された光の反射光の反射時間tD〜tD1+n経過後に近傍撮像用カメラ106Aのシャッタを開放するとともに遠方照射用ランプ105Bから発光された光の反射光の反射時間tD〜tD2+n経過後に遠方撮像用カメラ106Bのシャッタを開放するように撮像タイミングを制御するようにしても良い。この構成によれば、車両V前方の近傍および遠方の撮像画像を短時間で取得することができる。
【0056】
以上、本開示を実施するための形態を、実施例に基づき説明したが、本開示の具体的な構成については、実施例の構成に限らず、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計変更や追加等は許容される。
【0057】
例えば、撮像対象長さ、撮像対象距離の変化量、ターゲット距離領域ごとのフレーム数などは、カメラや画像処理部の性能に応じて適宜設定することができる。
【0058】
上記実施の形態では、カメラが画像取得部として機能する構成としているが、この例に限られない。例えば、画像取得部としての機能を画像処理部が有していても良く、あるいはカメラと画像処理部との間に画像取得部として撮像画像を格納する別個のメモリが設けられても良い。
【0059】
上記実施の形態では、図7に示されるように、対物レンズ107A,107Bとカメラ106A,106Bとの間に光増倍部108A,108Bが設けられた構成としているが、この例に限られない。例えば、光増倍部を設けず、カメラ106A,106B内で所定の撮像タイミングでゲーティングを行って複数の撮像画像を取得することも可能である。
【0060】
上記実施の形態では、画像処理部により距離画像データを生成することで物体認識を行う構成としているが、カメラで撮像された個々のターゲット距離の撮像画像から物体認識を行っても良い。
【0061】
本出願は、2015年12月21日出願の日本特許出願・出願番号2015−248824に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8