特許第6766076号(P6766076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6766076
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】偏平チューブ積層型の排気ガス熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/29 20160101AFI20200928BHJP
   F02M 26/28 20160101ALI20200928BHJP
   F28F 9/22 20060101ALI20200928BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20200928BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   F02M26/29 301
   F02M26/28
   F28F9/22
   F28F1/02 A
   F28D7/16 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-561213(P2017-561213)
(86)(22)【出願日】2017年1月11日
(86)【国際出願番号】JP2017001618
(87)【国際公開番号】WO2017122832
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2020年1月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-3809(P2016-3809)
(32)【優先日】2016年1月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】杉本 弘仁
(72)【発明者】
【氏名】山本 悦生
【審査官】 家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−090785(JP,A)
【文献】 特開2013−053620(JP,A)
【文献】 特開2010−048536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/29
F28F 9/22
F28F 1/02
F28D 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の偏平チューブ(4)を互いに間隔を有して多段に積層し構成したチューブ積層体(3)がケース(2)内部に配置され、排気ガスがチューブ積層体(3)のチューブ軸方向における一方の端部から流入し各偏平チューブ(4)の内部を流通して他方の端部から流出し、ケース(2)に設けた冷却水導入部から導入される冷却水が前記一方の端部に供給されて各偏平チューブ(4)の外面側を流通するように構成した偏平チューブ積層型の排気ガス熱交換器において、
ケース(2)には前記冷却水導入部(5),(6)が2箇所設けられ、各冷却水導入部(5),(6)からケース(2)内部への冷却水の導入方向は互いに対向する方向となっており、さらに該導入方向はそれぞれ前記チューブ積層体(3)における偏平チューブ(4)の偏平面(4a)に平行で且つ偏平チューブ(4)の軸方向に垂直な方向となっており、
前記2つの冷却水導入部(5),(6)にはそれぞれ切欠き部(8)を有するバッフルプレート(7)が設けられ、導入される冷却水がそれら切欠き部(8)を通って前記チューブ積層体(3)のチューブ軸方向における一方の端部に配流されるように構成されており、
前記2つのバッフルプレート(7)は、それぞれの冷却水の配流主体がチューブ積層体(3)の互いに異なる層間に向かうように構成されていることを特徴とする偏平チューブ積層型の排気ガス熱交換器。
【請求項2】
前記2つのバッフルプレート(7)は、排気ガスを流通させる開口部(10)を有する連結板(9)と一体構造であることを特徴とする請求項1に記載の偏平チューブ積層型の排気ガス熱交換器。
【請求項3】
前記2つのバッフルプレート(7)の少なくとも一方には、冷却水導入部(5),(6)に導入される冷却水を受ける受け面(11)と、受け面(11)から冷却水を前記切欠き部(8)へ導く誘導面(12)を有することを特徴とする請求項2に記載の偏平チューブ積層型の排気ガス熱交換器。
【請求項4】
受け面(11)における誘導面(12)と反対側の端部には、折立部(13)が設けられ、該折立部(13)により受け面(11)から冷却水が飛散してケース(2)内部に流出することを防止するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の偏平チューブ積層型の排気ガス熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却水のケース内沸騰を抑制した偏平チューブ積層型のEGRクーラ等の排気ガス熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等のエンジンから排出される排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を低減させるためや、ポンピングロスを低減させるために、車両にEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置を搭載することが一般的に行われている。多くの場合、このEGR装置には、エンジンにおける燃焼温度を低下させるため、排気ガスの一部をエンジンの吸気側に再循環させる系統に、排気ガス熱交換器の一種である、排気ガスを冷却するEGRクーラが設けられる。
一般的なEGRクーラは、ケース内部にチューブ積層体が配置され、排気ガスがチューブ積層体のチューブ軸方向における一方の端部から流入し各偏平チューブの内部を流通して他方の端部から流出し、ケースに設けられた冷却水導入部から導入される冷却水が前記一方の端部に供給されて各偏平チューブの外面側を流通するようになっている。
このように構成されるEGRクーラにおいて、チューブ積層体のチューブ軸方向における一方の端部から流入した排気ガスが、各チューブの内部を流通して他方の端部から流出する間に、チューブ外面側を排気ガスと同方向に流通する冷却水により冷却される。EGRクーラにおける排気ガスはチューブ積層体に流入する部分(上記チューブ積層体のチューブ軸方向における一方の端部)において最も高温であり、各チューブ内部を流通する間に冷却水との熱交換により次第にその温度が低下し、チューブ積層体から流出する部分(上記チューブ積層体のチューブ軸方向における他方の端部)において最も低温になる。
しかしながら通常、冷却水導入部はケースの一方の隅部に設けられ、その導入部から流入し各チューブ間の隙間を流れる冷却水は、流動抵抗の高い部分より低い部分に偏って流れる偏流が起り易く、各チューブの冷却水流入部分に均等に配流されない傾向がある。一般的にはケースの一方の隅部に設けた冷却水導入部からチューブ積層体の冷却水流入部分の各位置までの距離に長さの差があることが流動抵抗差の主たる要因になる。そしてチューブ積層体全体からみると、排気ガスの流入部に近いチューブ積層体の部分が高温化し、偏流により流量が減少した部分の冷却水において、特に局部沸騰が発生し易くなる。
このような冷却水の局部沸騰を抑制するため、チューブ積層体に対する冷却水配流を均一化させる効果を持つ冷却水供給チャンバの設置が提案されている。例えば特許文献1には、ケースの周壁の一端部に環状の冷却水供給チャンバを外嵌装着すると共に、その冷却水供給チャンバに入口管を接続し、さらに、前記冷却水供給チャンバ内のケース部分に該冷却水供給チャンバの内部と前記ケースの内部とを連通する環状スリット孔を向けた装置が開示されている。
また、特許文献2には上記特許文献1と別形態の冷却水供給チャンバを設置することが開示されている。特許文献2における冷却水供給チャンバは、その先端部が冷却水入口管に接続され、末端部がチューブ積層体を収容したケースに連通される。該冷却水供給チャンバは冷却水入口管側からケース側に向かって幅が次第に拡大され、その拡大端部はチューブ積層体を収容する部分のケース幅に一致している。それにより冷却水をケース幅全体に均一に供給できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−69064号公報
【特許文献2】特開2007−154683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような冷却水供給チャンバのシステムを設置することにより、EGRクーラのケース内部における冷却水沸騰を抑制するという効果は充分に期待できる。しかし冷却水供給チャンバのシステムをEGRクーラのケース外部に設置することにより、EGRクーラの全体構成がそれに応じて複雑化する上に、スペース制限の厳しい車両の搭載容量が増大し、コストもアップするという新たな問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の問題を解決するため、次のように構成されている。すなわち、本発明の第1の発明は、複数の偏平チューブを互いに間隔を有して多段に積層し構成したチューブ積層体がケース内部に配置され、排気ガスがチューブ積層体のチューブ軸方向における一方の端部から流入し各偏平チューブの内部を流通して他方の端部から流出し、ケースに設けた冷却水導入部から導入される冷却水が前記一方の端部に供給されて各偏平チューブの外面側を流通するように構成した偏平チューブ積層型の排気ガス熱交換器において、ケースには前記冷却水導入部が2箇所設けられ、各冷却水導入部からケース内部への冷却水の導入方向は互いに対向する方向となっており、さらに該導入方向はそれぞれ前記チューブ積層体における偏平チューブの偏平面に平行で且つ偏平チューブの軸方向に垂直な方向となっており、
前記2つの冷却水導入部にはそれぞれ切欠き部を有するバッフルプレートが設けられ、導入される冷却水がそれら切欠き部を通って前記チューブ積層体のチューブ軸方向における一方の端部に配流されるように構成されており、
前記2つのバッフルプレートは、それぞれの冷却水の配流主体がチューブ積層体の互いに異なる層間に向かうように構成されていることを特徴とする(請求項1)

本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記2つのバッフルプレートは、排気ガスを流通させる開口部を有する連結板と一体構造であることを特徴とする(請求項2)。

本発明の第3の発明は、第2の発明において、前記2つのバッフルプレートの少なくとも一方には、冷却水導入部に導入される冷却水を受ける受け面と、受け面から冷却水を前記切欠き部へ導く誘導面を有することを特徴とする(請求項3)。

本発明の第4の発明は、第3の発明において、受け面における誘導面と反対側の端部に、折立部が設けられ、該折立部により受け面から冷却水が飛散してケース内部に流出することを防止するように構成されていることを特徴とする(請求項4)。
【発明の効果】
【0006】
第1の発明は、ケースに前記冷却水導入部が2箇所設けられ、各冷却水導入部からケース内部への冷却水の導入方向は互いに対向する方向となっており、さらに該導入方向はそれぞれ前記チューブ積層体における偏平チューブの偏平面に平行で且つ偏平チューブの軸方向に垂直な方向となっていることを特徴とする。
このように構成すると、チューブ積層体における偏平チューブの偏平面に平行な方向で且つ、排気ガスの流通方向と同軸なチューブ積層体の軸方向に垂直な両方向(左右方向)から冷却水が対向して導入されるので、冷却水がチューブ積層体の上記左右の一方に偏流することなく、チューブ積層体における前記一方の端部全体に亘って均一に配流(流量配分)される。その結果、冷却水の局部沸騰を効果的に抑制することができる。さらに、従来のようにケース外側に冷却水供給チャンバのシステムを設置する必要が無いので、排気ガス熱交換器の全体構成の複雑化、搭載容量の増大、コストアップなどの問題も生じない。
また、前記2つの冷却水導入部にはそれぞれ切欠き部を有するバッフルプレートが設けられ、導入される冷却水がそれら切欠き部を通って前記チューブ積層体のチューブ軸方向における一方の端部に配流されるように構成すると、バッフルプレートの切欠き部の形状や位置などを任意に設定することにより、排気ガス熱交換器の特性や構造に適合した最適な冷却水の配流設定ができる。その結果、切欠き部からチューブ積層体側への冷却水の流れに起こりがちな偏流をできるだけ抑制し、チューブ積層体における前記一方の端部に均一且つ充分な量の冷却水の供給ができる最適設定が可能になり、それによって局所的な沸騰現象も抑制される。
さらに、前記2つのバッフルプレートにおける冷却水の配流主体(配分割合の多い部分)がチューブ積層体の互いに異なる層間に向かうように構成すると、2つのバッフルプレートの切欠き部から互いに対向するように流出する冷却水は、前記チューブ積層体の軸方向の一方の端部の中央部で互いに干渉せず、干渉により発生する冷却水流速の低下現象を防止することができる。その結果、流速減少に起因する冷却水の局部沸騰も回避される。

本発明の第2の発明は、前記2つのバッフルプレートが連結板と一体構造であることを特徴とする。このように構成すると、排気ガス熱交換器の組立時に、バッフルプレートの位置決めおよび仮固定が不要になり、簡便かつ精度良く、バッフルプレートを設置することが可能になる。

本発明の第3の発明は、前記2つのバッフルプレートの少なくとも一方に、冷却水導入部に導入される冷却水を受ける受け面と、受け面から冷却水を前記切欠き部へ導く誘導面を有することを特徴とする。このように構成すると、冷却水導入部から導入された冷却水は、受け面で受け止められスムーズに誘導面を経て確実に切欠き部に導かれ、前記チューブ積層体の軸方向の一方の端部(排気ガス上流側)に配流される。

本発明の第4の発明は、前記受け面における誘導面と反対側の端部に折立部が設けられ、該折立部により受け面から冷却水が飛散してケース内部に流出することを防止するように構成されている。このように構成することにより、冷却水導入部から導入された冷却水の一部がバッフルプレートから切り欠き部を経ずにケース内に流出することが抑制され、流入した冷却水の全てが確実に切欠き部に導かれ、そこから前記チューブ積層体の軸方向の一方の端部に配流される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は本発明の排気ガス熱交換器の一種であるEGRクーラにおけるチューブ積層体の軸方向の一方の端部の内部を示す部分斜視図。
図2図1に示すチューブ積層体の軸方向の一方の端部を分解した部分斜視図。
図3図1のEGRクーラの全体を示す平面外観図。
図4図1のEGRクーラの全体を示す側面外観図
図5図3の内部を示す平断面図。
図6図5のVI−VI矢視図。
図7図5のVII−VII矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は本発明の排気ガス熱交換器の一種であるEGRクーラにおけるチューブ積層体の軸方向の一方の端部の内部を示す部分斜視図で、図2図1に示すチューブ積層体の軸方向の一方の端部を分解した部分斜視図である。これらの図において、EGRクーラ1は断面が略方形な細長いケース2と、ケース2の内部に収容した断面が略方形な細長いチューブ積層体3を備えている。
チューブ積層体3は複数の偏平チューブ4を互いに間隔を有して多段に積層し構成される。各偏平チューブ4は図1の上下方向に互いに所定の間隔をもって多段に積層され、各偏平チューブ4の上下面はそれぞれ偏平面4aとなっている。
高温の排気ガスAは矢印方向からケース2の軸方向に供給されてチューブ積層体3の軸方向に流入する。具体的には、排気ガスAは細長いチューブ積層体3の軸方向における一方の端部から流入し、各偏平チューブ4の内部を軸方向に流通して他方の端部から流出する。チューブ積層体3の軸方向における一方の端部、すなわち高温の排気ガスAが流入する側の端部におけるケース2には、2つの冷却水導入部5、6から導入される冷却水Bが配流されるようになっている。
冷却水導入部5はケース2の図1における右側側壁に設けられ、冷却水導入部6はケース2の図1における左側側壁に設けられる。冷却水導入部5,6から導入される冷却水の導入方向は、互いに対向する方向で、さらに該導入方向はそれぞれ前記チューブ積層体3における偏平チューブ4の偏平面4aに平行で且つ偏平チューブ4の軸方向に垂直な方向となっている。図1では、右側の冷却水導入部5から図1の左方向に水平に冷却水が導入され、左側の冷却水導入部6から図1の右方向に水平に冷却水が導入される。そして細長いチューブ積層体3の軸方向における一方の端部に配流された冷却水は、各偏平チューブ4の外面側を軸方向に流通し、他方の端部から流出する。
本実施形態における冷却水導入部5,6は、それぞれ切欠き部8を有するバッフルプレート7が設けられる。図2に示すように、2つのバッフルプレート7は板状に形成され、その内部に複数の切欠き部8(その詳細な作用は後述する)が形成されている。そして冷却水導入部5,6はその板面で互いに対向するように、連結板9で一体的に連結されおり、連結板9には排気ガスAを通過させる開口部10が設けられている。なお、連結板9で一体的に連結された2つバッフルプレート7はろう付等により、ケース2と一体に接合される。
図2に示すように、バッフルプレート7には冷却水導入部5,6に導入される冷却水を受ける受け面11と、受け面11で受けた冷却水を前記切欠き部8へ導く誘導面12が形成されている。受け面11は冷却水の導入方向に対して垂直な面で形成され、誘導面12は受け面11から鈍角な方向に傾斜する緩やかな傾斜面で形成されている。さらに受け面11における誘導面12と反対側の端部には、直線状の細長い先端縁が前記ケース2の内面に密着する折立部13が設けられ、該折立部13により受け面11から冷却水が飛散してケース2内部に流出することを防止している。なお折立部13は受け面11の端部を折り曲げることにより形成される。
一方、図2に示すように、バッフルプレート7に対向するケース2において冷却水導入部5,6と重なる部分には、外側へ膨出する膨出部14が形成され、この膨出部14に冷却水が垂直に導入され、前記バッフルプレート7に形成された受け面11の面に垂直に突き当たる。冷却水は受け面11から誘導面12に沿ってスムーズに切欠き部8に導かれ、切欠き部8を通して前記細長いチューブ積層体3の軸方向における一方の端部に配流される。
図1図2には、EGRクーラにおけるチューブ積層体の軸方向の一方の端部だけが示されているが、図3図1のEGRクーラの全体を示す平面外観図が示され、図4にその側面外観図が示されている。更に図5図3の内部を示す平断面が示されている。
図3図5において、EGRクーラ1に設けたケース2の軸方向の一方の端部に排気ガスAの供給部15が設けられ、他方の端部にチューブ積層体3を流通した排気ガスAの排出部16が設けられる。排気ガスAの供給部15の近くに冷却水供給部5,6が図3,5の左右方向に対向して設けられ、排気ガスAの排出部16の近くにチューブ積層体3の外周を通過した冷却水の排出部17が設けられている。
図5はケース2の内部を示すため、ケース2が一点鎖線で示されている。図5にはチューブ積層体3を構成する偏平チューブ4の偏平面4aの表面が示されている。積層された各偏平チューブ4の一方の端部および他方の端部にそれぞれ細長い直線状のリブ4bが図5の上下方向(図1の左右方向に相当)に形成されている。これらのリブ4bは従来から採用されているものであるが、特に排気ガスAが流入する一方の端部の偏平面4aの表面に形成されたリブ4bは、一方の先端部に配流された冷却水を矢印のように偏平面4aの表面に配流し、その部分の流速を高めて局部沸騰を低減化している。なお、リブ4bの突出高さは流路高さより低く設定されており、冷却水の一部はリブ4bを乗り越えて流れる。リブ4bによる冷却水の配流の様子は図1にも矢印で示されている。
図6図5のVI−VI矢視図で、図7図5のVII−VII矢視図である。図6に示すバッフルプレート7の切欠き部8は図6の上方にくしの歯状で比較的開口面積の大きい切欠き部8が形成され、下方に長円型で開口面積の小さい切欠き部8が形成されている。開口面積の大きい切欠き部8は主に配流のためのものであり、大部分の冷却水は流動抵抗の少ないここを通ってチューブ積層体3に配流される。一方、開口面積の小さい切欠き部8は主にチューブ積層体3にろう材を塗布するためのものであり、流動抵抗が大きいので、ここには微量の冷却水しか流れない。すなわち図6のバッフルプレート7はチューブ積層体3における図6上方の偏平チューブ4群が下方の偏平チューブ4群より多くの冷却水が配流されるように設定されるので、その配流主体はチューブ層間の上方になる。
また、図7に示すバッフルプレート7の切欠き部8は図中下方にくしの歯状で比較的開口面積の大きい切欠き部8が形成され、上方に長円型で開口面積の小さい切欠き部8が形成されている。すなわち図7のバッフルプレート7はチューブ積層体3における図7下方の偏平チューブ4群が上方の偏平チューブ4群より多くの冷却水が配流されるように設定されているので、その配流主体はチューブ層間の下方になる。
このように、それぞれの冷却水の配流主体がチューブ積層体の互いに異なる層間に向かうように構成することにより、前記のように2つのバッフルプレート7の切欠き部8から互いに対向するように流出する冷却水がチューブ積層体3の軸方向の一方の端部の中央部で互いに干渉せず、前記のように、干渉により発生する可能性がある冷却水の流速低下現象を予防することができ、結果として流速減少に起因する冷却水の局部的沸騰が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明の排気ガス熱交換器は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンにおける、排ガス再循環系のクーラや、排ガスの熱を回収するための熱交換器として利用される。
【符号の説明】
【0010】
1 EGRクーラ
2 ケース
3 チューブ積層体
4 偏平チューブ
4a 偏平面
4b リブ
5,6 冷却水導入部
7 バッフルプレート
8 切欠き部
9 連結板
10 開口部
11 受け面
12 誘導面
13 折立部
14 膨出部
15 供給部
16,17 排出部
A 排気ガス
B 冷却水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7