特許第6766090号(P6766090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6766090
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】排熱回収ボイラ及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/56 20060101AFI20200928BHJP
   F22B 1/18 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   F22B37/56 Z
   F22B1/18 A
【請求項の数】20
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-80375(P2018-80375)
(22)【出願日】2018年4月19日
(62)【分割の表示】特願2013-248052(P2013-248052)の分割
【原出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2018-112400(P2018-112400A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2018年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】和田 貴行
(72)【発明者】
【氏名】赤嶺 博史
(72)【発明者】
【氏名】椿▲崎▼ 仙市
(72)【発明者】
【氏名】田上 直人
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−170762(JP,A)
【文献】 特開平09−079504(JP,A)
【文献】 特開平01−142092(JP,A)
【文献】 特開2013−071111(JP,A)
【文献】 特開平07−110106(JP,A)
【文献】 特開昭58−131193(JP,A)
【文献】 特開2013−194949(JP,A)
【文献】 特開平11−210410(JP,A)
【文献】 特開平11−037405(JP,A)
【文献】 特開2002−224634(JP,A)
【文献】 特開2002−180804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/22
F22B 37/52
F22B 37/56
F22B 1/18
F28G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発器と蒸気ドラムと節炭器とを有する排熱回収部を備える排熱回収ボイラであって、
前記排熱回収部内を洗浄するための洗浄部を備え、
前記洗浄部は、
中性の除錆剤を含む常温の洗浄液を貯蔵する貯留部と、前記洗浄液を前記排熱回収部に導くとともに前記排熱回収部から排出させる洗浄配管と、前記洗浄配管に前記洗浄液を流通させるポンプとを備える洗浄液送給部と
有する排熱回収ボイラ。
【請求項2】
前記排熱回収部内の常温の前記洗浄液の水位を前記洗浄配管の途中の所定の水位に調整する機構を有する請求項1に記載の排熱回収ボイラ。
【請求項3】
前記蒸気ドラム内の前記洗浄液の水位を計測する計測部と、
前記洗浄配管の途中位置に設けられ、前記計測部の計測値に基づいて、前記蒸気ドラム内で常温の前記洗浄液の所定の水位に調整するバルブと、
をさらに有する請求項1または請求項2に記載の排熱回収ボイラ。
【請求項4】
前記洗浄配管が前記洗浄液を前記節炭器に導く請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の排熱回収ボイラ。
【請求項5】
圧力の異なる蒸気を発生させる複数の前記排熱回収部を備え、前記洗浄液の最上流側の前記排熱回収部に前記洗浄液送給部が連結し、連絡管が前記複数の排熱回収部を直列に連結し、前記洗浄液の最下流側の前記排熱回収部に前記洗浄配管が連結し、
前記ポンプが、一回の洗浄で全ての前記排熱回収部に前記洗浄液を送給する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の排熱回収ボイラ。
【請求項6】
圧力の異なる蒸気を発生させる複数の前記排熱回収部を備え、前記複数の排熱回収部の各々に前記洗浄配管が並列に連結し、
前記ポンプが、一回の洗浄で全ての前記排熱回収部に前記洗浄液を送給する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の排熱回収ボイラ。
【請求項7】
圧力の異なる蒸気を発生させる複数の前記排熱回収部を備え、前記複数の排熱回収部の各々に前記洗浄配管が連結し、
前記ポンプが、一回の洗浄で、前記貯留部から前記洗浄液を一つの前記排熱回収部に送給する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の排熱回収ボイラ。
【請求項8】
前記複数の排熱回収部が鉛直方向に配列され、
第1の連絡管が鉛直方向に隣り合う前記蒸発器同士を直列的に連結し、第2の連絡管が鉛直方向に隣り合う前記蒸気ドラム同士を直列的に連結し、
洗浄が行われた前記蒸発器内の前記洗浄液が、重力により、前記第1の連絡管を介して前記洗浄が行われた蒸発器より下側に位置する前記蒸発器に送給され、
洗浄が行われた前記蒸気ドラム内の前記洗浄液が、重力により、前記第2の連絡管を介して前記洗浄が行われた蒸気ドラムより下側に位置する前記蒸気ドラムに送給される請求項に記載の排熱回収ボイラ。
【請求項9】
第1の連絡管が前記複数の排熱回収部の前記蒸発器を直列に連結し、第2の連絡管が前記複数の排熱回収部の前記蒸気ドラムを直列に連結し、前記第1の連絡管及び前記第2の連絡管の各々に移送ポンプが設置され、
前記移送ポンプが、洗浄が行われた前記蒸発器内の前記洗浄液を、前記第1の連絡管を介して別の前記蒸発器に送給するとともに、洗浄が行われた前記蒸気ドラム内の前記洗浄液を、前記第2の連絡管を介して別の前記蒸気ドラムに送給する請求項に記載の排熱回収ボイラ。
【請求項10】
前記排熱回収部が前記節炭器にボイラ給水を供給するための給水ポンプを備え、前記給水ポンプが前記洗浄液送給部の前記ポンプである請求項1乃至請求項のいずれかに記載の排熱回収ボイラ。
【請求項11】
蒸発器と蒸気ドラムと節炭器とを有する排熱回収部を備える排熱回収ボイラにおいて、前記排熱回収部内を洗浄するための洗浄方法であって、
中性の除錆剤を含む常温の洗浄液が、前記排熱回収部に供給され、
記排熱回収部への前記洗浄液の送給が停止されて、前記排熱回収部の内部が常温の前記洗浄液に所定時間浸漬され、
前記所定時間が経過した後に、洗浄が行われた前記排熱回収部から前記洗浄液が排出される洗浄方法。
【請求項12】
蒸発器と蒸気ドラムと節炭器とを有する排熱回収部を備える排熱回収ボイラにおいて、前記排熱回収部内を洗浄するための洗浄方法であって、
中性の除錆剤を含む常温の洗浄液が、前記排熱回収部に供給され、
記排熱回収部内で前記洗浄液を循環させながら、前記排熱回収部の内部が常温の前記洗浄液に所定時間浸漬され、
前記所定時間が経過した後に、洗浄が行われた前記排熱回収部から前記洗浄液が排出される洗浄方法。
【請求項13】
前記排熱回収部を流通する水の処理方法をリン酸塩水処理からHigh−AVT水処理に転換する際に、前記排熱回収部内を前記洗浄液で洗浄する請求項11または請求項12に記載の洗浄方法。
【請求項14】
前記節炭器に前記洗浄液が供給され、前記節炭器の内部が前記洗浄液に浸漬される請求項11乃至請求項13のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項15】
圧力の異なる蒸気を発生させる複数の前記排熱回収部を備え、前記複数の排熱回収部が前記洗浄液の流れに対し直列に連結される排熱回収ボイラにおいて、一回の洗浄で、前記洗浄液が、前記複数の排熱回収部に送給される請求項11乃至請求項14のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項16】
圧力の異なる蒸気を発生させる複数の前記排熱回収部を備え、前記複数の排熱回収部が前記洗浄液の流れに対し並列に連結される排熱回収ボイラにおいて、
一回の洗浄で、前記洗浄液が前記複数の排熱回収部に送給される請求項11乃至請求項14のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項17】
圧力の異なる蒸気を発生させる複数の前記排熱回収部を備え、前記複数の排熱回収部が前記洗浄液の流れに対し並列に連結される排熱回収ボイラにおいて、
一回の洗浄で、前記洗浄液が、一つの前記排熱回収部に送給される請求項11乃至請求項14のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項18】
前記複数の排熱回収部が鉛直方向に配列された排熱回収ボイラにおいて、
洗浄が行われた前記蒸発器内の前記洗浄液が、重力により、該洗浄が行われた蒸発器より下側で隣り合う前記蒸発器に送給され、
洗浄が行われた前記蒸気ドラム内の前記洗浄液が、重力により、該洗浄が行われた蒸気ドラムより下側で隣り合う前記蒸気ドラムに送給される請求項17に記載の洗浄方法。
【請求項19】
前記複数の排熱回収部の前記蒸発器が直列に連結され、前記複数の排熱回収部の前記蒸気ドラムが直列に連結され、前記蒸発器の間及び前記蒸発ボイラの間の各々に移送ポンプが設置された排熱回収ボイラにおいて、
洗浄が行われた前記蒸発器内の前記洗浄液が、前記移送ポンプにより別の前記蒸発器に送給され、
洗浄が行われた前記蒸気ドラム内の前記洗浄液が、前記移送ポンプにより別の前記蒸気ドラムに送給される請求項17に記載の洗浄方法。
【請求項20】
前記排熱回収部が前記節炭器にボイラ給水を供給するための給水ポンプを備える排熱回収ボイラにおいて、前記給水ポンプが前記排熱回収部に前記洗浄液を供給する請求項11乃至請求項19のいずれかに記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排熱回収ボイラの内部を洗浄するための機構、及びその洗浄方法に関し、特に排熱回収ボイラの水処理方法をリン酸塩処理から高給水pH運用の揮発性物質処理(High−AVT:All Volatile Treatment)に転換する際に内部を洗浄するための機構を備える排熱回収ボイラ、及び、その洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンコンバインドサイクル発電プラントでは、ガスタービンの排熱を回収することを目的として排熱回収ボイラ(HRSG)が設置される。
従来の排熱回収ボイラでは、給水系統にアンモニアとヒドラジン、ボイラ水系統にリン酸塩を使用するリン酸塩処理が用いられていた。近年、排熱回収ボイラの入口ガスの高温化に伴い、ボイラ水処理に用いられるリン酸塩を原因とする炭素鋼製の蒸発器配管内面に酸性リン酸塩腐食やアルカリ腐食による減肉が問題となっていた。また、節炭器において、流れ加速型腐食(FAC:Flow Accelerated Corrosion)によるトラブルが発生することが知られている。これらのトラブルを回避する方法として、リンを使用しないボイラ水処理方法への転換が検討された。
【0003】
ボイラ系統にリンを用いない水処理方法として、揮発性物質処理(AVT:All Volatile Treatment)がある。AVTに比べて、アンモニアの供給量を増加させ、給水pHを高めに設定したHigh−AVT(高pH水処理)では、配管の腐食を抑制することができる(非特許文献1)。また、High−AVTでは、ヒドラジンを用いない給水処理が検討されている(非特許文献2)。また、高いpHで給水処理を行うことにより、上述のFACを抑制することが可能となる。
【0004】
リン酸塩処理時に蒸発器内面にスケールが生成した場合、化学洗浄せずにHigh−AVTに転換すると、スケールを起点として腐食が進行してしまう。
従って、リン酸塩処理からHigh−AVTへ転換するには、設備改造だけでなく、ボイラ系統の洗浄が必要である。また、High−AVTに合わせて、節炭器を含むボイラ系統を洗浄することにより、節炭器でのスケール付着による伝熱阻害を抑制することができる。
【0005】
特許文献1は、ガスタービン及び蒸気タービンの複合発電プラントにおいて、蒸気ドラムにアルカリ性の洗浄薬品を入れガスタービンを無負荷以上の負荷運転を行うことによって排熱回収ボイラの管内を洗浄する方法を開示する。特許文献2は、排熱回収ボイラの排ガス供給口及び排ガス出口を閉塞した状態で、伝熱管内に加熱された洗浄液を流通させる洗浄方法を開示する。
【0006】
また、特許文献3は、ボイラ運転中にボイラ水系にアルドン酸またはアルドン酸塩と、キレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸)とを添加することにより、スケールを除去する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−79504号公報
【特許文献2】特開平11−37405号公報
【特許文献3】特開2011−212591号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】三菱重工技報 Vol.50 No.1 (2013)
【非特許文献2】三菱重工技報 Vol.46 No.2 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
排熱回収ボイラの蒸発器には、放熱量の高いフィンチューブが採用されるのが一般的である。しかしながら、例えば特許文献2のように加熱された洗浄液を用いる洗浄方法では、フィンチューブにおいて洗浄液の温度低下が生じる。このため、洗浄効果が低下する。洗浄液の温度低下を抑制するためには、ボイラ系統に大規模な昇温設備を設置するか、ガスタービンを起動して排ガスによる昇温が必要である。
【0010】
また、排熱回収ボイラは複数のドラムと蒸発器とから構成されている。High−AVTを適用するには、全てのドラム及び蒸発器を洗浄する必要が生じる。複数のドラム及び蒸発器を洗浄するに当たっては、洗浄準備のためのコストを低減させるために洗浄系統をできる限り簡略化することが求められる。更には、洗浄に要する時間及びコスト(薬品量、人件費等)を低減させた工程で洗浄を実施する必要がある。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、水処理方法としてリン酸塩処理からHigh−AVTに転換する際に、低コスト且つ短時間に配管内部の洗浄することができる排熱回収ボイラ及びその洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、蒸発器と蒸気ドラムと節炭器とを有する排熱回収部を備える排熱回収ボイラであって、前記排熱回収部内を洗浄するための洗浄部を備え、前記洗浄部は、中性の除錆剤を含む常温の洗浄液を貯蔵する貯留部と、前記洗浄液を前記排熱回収部に導くとともに前記排熱回収部から排出させる洗浄配管と、前記洗浄配管に前記洗浄液を流通させるポンプとを備える洗浄液送給部と、前記蒸気ドラム内の前記洗浄液の水位を計測する計測部と、前記洗浄配管の途中位置に設けられ、前記計測部の計測値に基づいて、前記蒸気ドラム内の前記洗浄液の所定の水位に調整するバルブとを有する。
【0013】
本発明の第2の態様は、蒸発器と蒸気ドラムと節炭器とを有する排熱回収部を備える排熱回収ボイラにおいて、前記排熱回収部内を洗浄するための洗浄方法であって、中性の除錆剤を含む常温の洗浄液が、前記蒸気ドラムが前記洗浄液で満水になるまで前記排熱回収部に供給され、前記蒸気ドラムが前記洗浄液で満水になった後に、前記排熱回収部への前記洗浄液の送給が停止されて、前記排熱回収部の内部が常温の前記洗浄液に所定時間浸漬され、前記所定時間が経過した後に、洗浄が行われた前記排熱回収部から前記洗浄液が排出される。
【0014】
本発明の第3の態様は、蒸発器と蒸気ドラムと節炭器とを有する排熱回収部を備える排熱回収ボイラにおいて、前記排熱回収部内を洗浄するための洗浄方法であって、中性の除錆剤を含む常温の洗浄液が、前記蒸気ドラムが前記洗浄液で満水になるまで前記排熱回収部に供給され、前記蒸気ドラムが前記洗浄液で満水になった後に、前記排熱回収部内で前記洗浄液を循環させながら、前記排熱回収部の内部が常温の前記洗浄液に所定時間浸漬され、前記所定時間が経過した後に、洗浄が行われた前記排熱回収部から前記洗浄液が排出される。
【0015】
本発明の排熱回収ボイラ及び洗浄方法は、中性の除錆剤を含む常温の洗浄液を用いて配管内部が洗浄されるため、昇温設備を設置する必要が無く、洗浄液の予熱工程が不要である。また、中性の除錆剤を含む洗浄液を使用するため、洗浄のために例えばSUS製部品などの酸に弱い付属品、装置を着脱する必要が無い。従って、洗浄に要する時間及びコストが低減される。
本発明では、洗浄工程が簡略化されている。また、蒸気ドラム内の洗浄液量を管理して洗浄を行うので、洗浄に使用する水量及び薬品量を低減させることが可能である。
特に、第2の態様の洗浄方法では、洗浄液の循環を停止した状態で配管内部を洗浄液に浸漬するので、ポンプを作動させる分の動力が低減するので有利である。
【0016】
第2の態様及び第3の態様は、前記排熱回収部を流通する水の処理方法をリン酸塩水処理からHigh−AVT水処理に転換する際に、前記排熱回収部内を前記洗浄液で洗浄することが好ましい。
【0017】
第1の態様において、前記洗浄配管が前記洗浄液を前記節炭器に導くことが好ましい。
第2の態様及び第3の態様において、前記節炭器に前記洗浄液が供給され、前記節炭器の内部が前記洗浄液に浸漬されることが好ましい。
【0018】
上記態様では、節炭器内部を洗浄することができ、上述した伝熱阻害の抑制効果を得ることができる。
【0019】
第1の態様の排熱回収ボイラは、圧力の異なる蒸気を発生させる複数の前記排熱回収部を備え、前記洗浄液の最上流側の前記排熱回収部に前記洗浄液送給部が連結し、連絡管が前記複数の排熱回収部を直列に連結し、前記洗浄液の最下流側の前記排熱回収部に前記洗浄配管が連結し、前記ポンプが、一回の洗浄で全ての前記排熱回収部に前記洗浄液を送給しても良い。
【0020】
第2の態様及び第3の態様の洗浄方法では、圧力の異なる蒸気を発生させる複数の前記排熱回収部を備え、前記複数の排熱回収部が前記洗浄液の流れに対し直列に連結される排熱回収ボイラにおいて、一回の洗浄で、前記洗浄液が、前記複数の排熱回収部に送給されても良い。
【0021】
上記態様に依れば、洗浄系統が簡略であるので、設備コストが低減する。また、洗浄工程が簡素であり、洗浄に要する時間を短縮することが可能である。
【0022】
第1の態様の排熱回収ボイラは、圧力の異なる蒸気を発生させる複数の前記排熱回収部を備え、前記複数の排熱回収部の各々に前記洗浄配管が並列に連結し、前記ポンプが、一回の洗浄で全ての前記排熱回収部に前記洗浄液を送給しても良い。
【0023】
第2の態様及び第3の態様の洗浄方法では、圧力の異なる蒸気を発生させる複数の前記排熱回収部を備え、前記複数の排熱回収部が前記洗浄液の流れに対し並列に連結される排熱回収ボイラにおいて、一回の洗浄で、前記洗浄液が前記複数の排熱回収部に送給されても良い。
【0024】
上記態様に依れば、洗浄系統が簡略であるので、設備コストが低減する。また、洗浄工程が簡素であり、洗浄に要する時間を短縮することが可能である。
【0025】
第1の態様の排熱回収ボイラは、圧力の異なる蒸気を発生させる複数の前記排熱回収部を備え、前記複数の排熱回収部の各々に前記洗浄配管が連結し、前記ポンプが、一回の洗浄で、前記貯留部から前記洗浄液を一つの前記排熱回収部に送給しても良い。
【0026】
第2の態様及び第3の態様の洗浄方法では、圧力の異なる蒸気を発生させる複数の前記排熱回収部を備え、前記複数の排熱回収部が前記洗浄液の流れに対し並列に連結される排熱回収ボイラにおいて、一回の洗浄で、前記洗浄液が、一つの前記排熱回収部に送給されても良い。
【0027】
上記態様の排熱回収ボイラでは、1回の洗浄で送給する洗浄液を少なくすることができる。このため、洗浄に必要な水量及び薬品量を低減させることができる。更には、洗浄液を送給するポンプは容量が小さくても十分であることから、設備コストを低減させることができる。
【0028】
この場合、第1の態様の排熱回収ボイラは、前記複数の排熱回収部が鉛直方向に配列され、第1の連絡管が鉛直方向に隣り合う前記蒸発器同士を直列的に連結し、第2の連絡管が鉛直方向に隣り合う前記蒸気ドラム同士を直列的に連結し、洗浄が行われた前記蒸発器内の前記洗浄液が、重力により、前記第1の連絡管を介して前記洗浄が行われた蒸発器より下側に位置する前記蒸発器に送給され、洗浄が行われた前記蒸気ドラム内の前記洗浄液が、重力により、前記第2の連絡管を介して前記洗浄が行われた蒸気ドラムより下側に位置する前記蒸気ドラムに送給される構成とすることができる。
【0029】
第2の態様及び第3の態様の洗浄方法では、前記複数の排熱回収部が鉛直方向に配列された排熱回収ボイラにおいて、洗浄が行われた前記蒸発器内の前記洗浄液が、重力により、該洗浄が行われた蒸発器より下側で隣り合う前記蒸発器に送給され、洗浄が行われた前記蒸気ドラム内の前記洗浄液が、重力により、該洗浄が行われた蒸気ドラムより下側で隣り合う前記蒸気ドラムに送給される。
【0030】
上記の竪型排熱回収ボイラでは、各排熱回収部の鉛直方向での位置レベル差を利用して、洗浄が行われた排熱回収部内の洗浄液を別の排熱回収部に送給することが可能である。すなわち、洗浄液を移送するための動力が不要であるので、洗浄時の運転コストを更に低減させることが可能である。
【0031】
この場合、第1の態様の排熱回収ボイラは、第1の連絡管が前記複数の排熱回収部の前記蒸発器を直列に連結し、第2の連絡管が前記複数の排熱回収部の前記蒸気ドラムを直列に連結し、前記第1の連絡管及び前記第2の連絡管の各々に移送ポンプが設置され、前記移送ポンプが、洗浄が行われた前記蒸発器内の前記洗浄液を、前記第1の連絡管を介して別の前記蒸発器に送給するとともに、洗浄が行われた前記蒸気ドラム内の前記洗浄液を、前記第2の連絡管を介して別の前記蒸気ドラムに送給する構成とすることができる。
【0032】
第2の態様及び第3の態様の洗浄方法では、前記複数の排熱回収部の前記蒸発器が直列に連結され、前記複数の排熱回収部の前記蒸気ドラムが直列に連結され、前記蒸発器の間及び前記蒸発ボイラの間の各々に移送ポンプが設置された排熱回収ボイラにおいて、洗浄が行われた前記蒸発器内の前記洗浄液が、前記移送ポンプにより別の前記蒸発器に送給され、洗浄が行われた前記蒸気ドラム内の前記洗浄液が、前記移送ポンプにより別の前記蒸気ドラムに送給される。
【0033】
移送ポンプを用いて洗浄液を排熱回収部間で移送させれば、竪型の排熱回収ボイラに限定されず、横型の排熱回収ボイラにも適用可能である。移送ポンプを利用すれば移送時間を短縮でき、洗浄時間の短縮に繋がる。また、移送ポンプは小容量のポンプでも十分であるので、移送時の動力を低減させることができる。すなわち、本態様では運転コストが更に低減する。
【0034】
第1の態様において、前記排熱回収部が前記節炭器にボイラ給水を供給するための給水ポンプを備え、前記給水ポンプが前記洗浄液送給部の前記ポンプとしても良い。
【0035】
第2の態様及び第3の態様では、前記排熱回収部が前記節炭器にボイラ給水を供給するための給水ポンプを備える排熱回収ボイラにおいて、前記給水ポンプが前記排熱回収部に前記洗浄液を供給しても良い。
【0036】
本態様では、既設の給水ポンプを洗浄液の送給に利用するので、洗浄液の送給用のポンプを別途設置する必要が無い。すなわち、本態様に依れば設備コスト及び運転コストを低減させることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の排熱回収ボイラ及びその洗浄方法では、中性の除錆剤を含む洗浄液を使用して常温で洗浄を実施することから、昇温設備及び洗浄液の予熱工程が不要である。また、洗浄系統が簡略化され、蒸気ドラム内の洗浄液量を管理して洗浄を行うので、洗浄コスト及び洗浄時間を低減させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】第1実施形態の排熱回収ボイラの配管系統図である。
図2】第2実施形態の排熱回収ボイラの配管系統図である。
図3】第3実施形態の排熱回収ボイラの配管系統図である。
図4】第4実施形態の排熱回収ボイラの配管系統図である。
図5】第5実施形態の排熱回収ボイラの配管系統図である。
図6】第6実施形態の排熱回収ボイラの配管系統図である。
図7】第7実施形態の排熱回収ボイラの配管系統図である。
図8】第8実施形態の排熱回収ボイラの配管系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る排熱回収ボイラの配管系統図である。第1実施形態の排熱回収ボイラ1は、ガスタービンと蒸気タービンとを備えるコンバインドサイクル発電プラントに設置される。
第1実施形態の排熱回収ボイラ1は、複数の排熱回収部を備える。なお、排熱回収部は1つとしても良い。複数の排熱回収部を設置する場合は、排熱回収部はそれぞれ異なる圧力の蒸気を発生させる。図1では、3つの排熱回収部10a〜10cが設置され、それぞれ相対的に高圧(排熱回収部10a)、中圧(排熱回収部10b)、低圧(排熱回収部10c)の上記を発生させる。
【0040】
まず、コンバインドサイクル発電プラントに既設される給水系統について説明する。
排熱回収部10a〜10cはそれぞれ、蒸気ドラム11a〜11c、蒸発器12a〜12c、節炭器13a〜13c及び過熱器20a〜20cを備える。蒸気ドラム11aと節炭器13aとが配管Lw4a〜Lw4cにより連結される。蒸気ドラム11a〜11cと蒸発器12a〜12cとが、それぞれ配管Lw5−1a〜Lw5−1c及びLw5−2a〜Lw5−2cにより連結される。
【0041】
復水器2は配管Lw1により低圧の排熱回収部10cの節炭器13cと接続する。復水器2から排出された復水(給水)は、配管Lw1の途中に設けられた復水ポンプ4によって節炭器13cに送給される。配管Lw1にバルブV3が設置される。
【0042】
配管Lw1は中途位置で分岐し、配管Lw2が連結する。配管Lw2は配管Lw1に接続する。配管Lw2の途中に節炭器循環ポンプ5が設置されており、節炭器13cから排出された給水の一部が節炭器13cに供給される構成となっている。配管Lw2には、節炭器循環ポンプ5の上流側においてバルブV4が設置される。
【0043】
配管Lw2はバルブV4の上流側の途中位置で分岐し、配管Lw3が連結する。配管Lw3にバルブV5が設置される。配管Lw3は更に途中位置でLw3−1とLw3−2とに分岐し、それぞれ節炭器13a,13bに接続する。配管Lw3−1及びLw3−2の途中に給水ポンプ14a,14bが設置され、節炭器13cから排出された給水が節炭器13a,13bに送給される。なお、上記ポンプは一体型として、1つのポンプから配管Lw3−1及び配管Lw3−2に洗浄液が送給される構成としても良い。
【0044】
蒸気系統は、蒸気ドラム11a〜11cが、それぞれ途中に過熱器20a〜20cが設置された配管Lv1a〜Lv1cにより蒸気タービン3に連結される構成となっている。なお、図1において、配管Lv1bは過熱器20bの蒸気下流側で分岐し、配管Lv2が接続する。配管Lv2を通じて蒸気が、ガスタービンの冷却用としてガスタービン(不図示)に送給される。
【0045】
図1では、節炭器13aの上流側で配管Lw3−1が分岐し、配管Lw6aが接続される。配管Lw6aは過熱器20aに連結され、過熱低減のために給水が過熱器20aに搬送されるように構成されている。また、節炭器13bの上流側で配管Lw3−2が分岐し、配管Lw6bが接続される。配管Lw6bは配管Lv1bの途中に向けられる再熱器21に連結され、過熱低減のために給水が再熱器21に搬送されるように構成されている。配管Lw6a及びLw6bにそれぞれバルブV6,V7が設置される。
【0046】
排熱回収ボイラ1の洗浄系統(洗浄部)を以下で説明する。図1は、節炭器13a〜13cも洗浄する例を示している。
第1実施形態の洗浄配管は、配管Lc1〜Lc4と、既存の給水系統のうち配管Lw4a〜Lw4c、配管Lw5−1a〜Lw5−1c、及び、配管Lw5−2a〜Lw5−2cで構成される。
【0047】
配管Lc1は、蒸気ドラム11aと配管Lw3−2とを連絡する。配管Lc2は、蒸気ドラム11bと配管Lw1とを連絡する。配管Lc3は、蒸気ドラム11cと配管Lw3−1とを連絡する。配管Lc1〜Lc3は、各蒸気ドラム11a〜11cの蒸気ドラムフランジで蒸気ドラムと接続する。蒸気ドラムは、排熱回収部10a〜10cの各々で最も機器配置レベルが高く、蒸気ドラムフランジは、蒸気ドラムの中央のレベルに設置される。
【0048】
節炭器13a〜13cの洗浄を行わない場合は、配管Lc1は、配管Lw4b、または、配管Lw5−1bに接続される。同様に、配管Lc2は配管Lw4c、または、配管Lw5−1cに接続される。配管Lc3は、配管Lw4a、または、配管Lw5−1aに接続される。
【0049】
配管Lc3の途中位置に、バルブV1,V2が設置される。バルブV1とバルブV2の間に、洗浄配管内に洗浄液を流通させるための水張ポンプ30が設置される。水張ポンプ30は、プランジャーポンプまたはダイヤフラムポンプである。
【0050】
本実施形態では、図1に示されるように、洗浄系統に洗浄液の温度を調整する手段は設置されない。
【0051】
貯留部50は、内部に洗浄液を貯蔵する。洗浄液は中性の除錆剤を含む水溶液である。洗浄液は貯留部50内にて常温(室温程度、具体的に5〜50℃、より好ましくは15℃〜30℃)で貯蔵されている。
【0052】
中性の除錆剤は、キレート剤、還元剤、またはキレート剤と還元剤の混合剤であり、配管内部に付着した除去対象物(例えば、金属酸化物や金属塩などを含むスケール、さびこぶなど)を除去可能な薬剤である。キレート剤は、例えばEDTA、BAPTA、DOTA、EDDS、INN、NTA、DTPA、HEDTA、TTHA、PDTA、DPTA-OH、HIDA、DHEG、GEDTA、CMGA、EDDSなどのアミノカルボン酸やこれらの塩などのアミノカルボン酸系キレート剤、クエン酸、グルコン酸、ヒドロキシ酢酸などのオキシカルボン酸やこれらの塩などのオキシカルボン酸系キレート剤、ATMP、HEDP、NTMP、PBTC、EDTMP等の有機リン酸やこれらの塩などの有機リン系キレート剤である。還元剤は、例えば、Fe2+、Sn2+などの各種金属イオン、亜硫酸ナトリウムなどの亜硝酸塩、シュウ酸、蟻酸、アスコルビン酸、ピロガロールなどの有機化合物、ヒドラジン、水素などである。中性の除錆剤を含む洗浄液は、pHが4〜8である。また,中性の除錆剤には腐食抑制剤が添加されていても良い。
【0053】
洗浄液は、所望の洗浄力及び洗浄時間が得られように、キレート剤、還元剤及び腐食抑制剤の濃度が適切に調整されている。
【0054】
配管Lc4は、バルブV1と水張ポンプ30との間で貯留部50と配管Lc3とを連結する。配管Lc4の途中に、バルブV8及び貯留部50内の洗浄液を配管Lc3に送給する薬注ポンプ51が設置される。
【0055】
各蒸気ドラム11a〜11cは、蒸気ドラム内の水位を計測する計測部(不図示)を備える。計測部は、各蒸気ドラム11a〜11cの蒸気ドラムフランジ近傍であることが好ましい。蒸気ドラムフランジは、排熱回収部10a〜10c内の洗浄対象部位の中で最も機器配置レベルが高い。
若しくは、蒸発器12a〜12c及び節炭器13a〜13cなどの洗浄対象部位に設置されるベント管またはドレン管を計測部として、ベント管またはドレン管に併設されているバルブを操作し、洗浄液の送給を確認することにより、水位を計測しても良い。洗浄対象部位の中で、ベント管は最も機器配置レベルが高く、ドレン管は、最も機器配置レベルが低い。
【0056】
図1の排熱回収ボイラの配管内部を洗浄する方法を以下で説明する。下記の洗浄は、1回のみ実施しても良いし、複数回実施しても良い。
洗浄液は中性である。このため、本実施形態では、洗浄前にSUS製部材を取り外す必要が無い。
【0057】
洗浄開始時に、復水ポンプ4、節炭器循環ポンプ5、薬注ポンプ51、及び、給水ポンプ14a,14bは停止されている。図1に示すようにバルブV1,3〜7が閉鎖され、バルブV2、V8が開放される。
【0058】
薬注ポンプ51が起動し、貯留部50内の洗浄液が配管Lc4を介して配管Lc3に送給される。水張ポンプ30が起動し、常温の洗浄液が配管Lc3から配管Lw3−1を介して節炭器13aに送給され、配管Lw4aを介して蒸気ドラム11aに送給される。蒸気ドラム11aに送給された洗浄液は、配管Lw5−1a及び配管Lw5−2aを通じて蒸発器12a内に充填される。
【0059】
蒸気ドラム11a内の洗浄液が蒸気ドラムフランジに到達すると、洗浄液が配管Lc1に流入する。洗浄液は、配管Lc1を介して配管Lw3−2に流入する。上記と同様にして、節炭器13b、蒸気ドラム11b及び蒸発器12bに洗浄液が送給される。蒸気ドラム11b内の洗浄液が蒸気ドラムフランジに到達すると、配管Lc2を介して節炭器13c、蒸気ドラム11c及び蒸発器12cに洗浄液が送給される。蒸気ドラム11c内の洗浄液が蒸気ドラムフランジに到達すると、洗浄液が配管Lc3に流入する。バルブV1が閉鎖されているため、各蒸気ドラム11a〜11c内の水位が上昇する。
【0060】
蒸気ドラムフランジ近傍に設置された計測部は、蒸気ドラム11a〜11c内の洗浄液の水位を計測する。各蒸気ドラム11a〜11cで洗浄液の水位が満水に到達すると、水張ポンプ30及び薬注ポンプ51が停止され、バルブV2、V8が閉鎖される。
【0061】
ベント管またはドレン管を計測部とする場合は、計測部はベント管またはドレン管からの洗浄液の出水の有無を判断する。出水した時に各蒸気ドラム11a〜11c内の洗浄液が満水になったと判断され、水張ポンプ30及び薬注ポンプ51が停止され、バルブV2、V8が閉鎖される。
【0062】
バルブV1及びバルブV2が閉鎖されることにより、各排熱回収部10a〜10cの節炭器、蒸気ドラム及び蒸発器が洗浄液に浸漬される。この状態で所定時間放置されて、漬け置き洗浄が行われる。漬け置き時間は、洗浄液中の中性の除錆剤の濃度、還元剤、腐食抑制剤などの濃度、洗浄回数等を考慮して設定される。
【0063】
所定時間経過後、バルブV1,V2が開放され、水張ポンプ30が起動する。洗浄に使用された洗浄液は、配管Lc3の中途位置に設けられるブローライン(不図示)から系外に排出される。
【0064】
本実施形態の洗浄方法では、洗浄系統にヒータ等の加熱器が設けられていないため、常温(室温、具体的に5〜50℃)で洗浄が実施される。
【0065】
図1の排熱回収ボイラの配管内部を洗浄する方法の別の例として、洗浄液に浸漬させる間に洗浄液が配管Lc1〜Lc3内で循環されても良い。この場合、浸漬の間バルブV1,V2を開放されるとともに水張ポンプ30を作動させる。
【0066】
本実施形態では、中性の除錆剤を含む常温の洗浄液を用いて配管内部が洗浄されるため、昇温設備を設置する必要が無く、洗浄液の予熱工程が不要である。また、中性の除錆剤を含む洗浄液を使用するため、洗浄のために例えばSUSやAl製部品などの酸に弱い付属品、装置を着脱する必要が無い。従って、洗浄に要する時間及びコストが低減される。
また、本実施形態に依れば、洗浄系統にヒータ等の加熱器が設けられていないため、常温で洗浄が実施される。本実施形態の洗浄系統は簡略である上、計測部により薬液量が管理されて洗浄が実施される。このため、洗浄液の使用量を抑えることができ、洗浄コストが低減する。また、洗浄に要する時間を削減することが可能である。
【0067】
[第2実施形態]
図2は、第2実施形態に係る排熱回収ボイラの配管系統図である。図2において、図1と同じ構成には同じ符号を付す。
【0068】
第2実施形態の排熱回収ボイラ101もコンバインドサイクル発電プラントに設置される。図2の排熱回収ボイラ101は、異なる圧力の上記を発生させる複数の排熱回収部を有している。
【0069】
第2実施形態の排熱回収ボイラ101は、図1と同じ給水系統及び蒸気系統を有するが、洗浄系統が異なっている。図2は、節炭器13a〜13cも洗浄する例を示している。
【0070】
第2実施形態の洗浄配管は、配管Lc4,Lc11〜Lc15と、既存の給水系統のうち配管Lw3−1,Lw3−2、配管Lw4a〜Lw4c、配管Lw5−1a〜Lw5−1c、及び、配管Lw5−2a〜Lw5−2cで構成される。
【0071】
貯留部50、配管Lc4、バルブV8及び薬注ポンプ51は、第1実施形態と同じ構成である。貯留部50には、第1実施形態で説明した洗浄液が貯留される。
【0072】
配管Lc11は、蒸発器12aと配管Lw3−1とを連絡する。配管Lc11にはバルブV11及びバルブV14が設置される。水張ポンプ30は、バルブV11とV14との間の配管Lc11に設置される。
【0073】
配管Lc11のバルブV14と水張ポンプ30との間に、フィルタ(不図示)が設置されることが好ましい。
【0074】
水張ポンプ30とバルブV11との間で、配管Lc11に配管Lc12が連結する。配管Lc12の一端は配管Lw3−2に連結する。配管Lc12の途中位置にバルブV12が設置される。
【0075】
配管Lc11への接続位置とバルブV12との間で、配管Lc12に配管Lc13が連結する。配管L13の一端は配管Lw1に連結する。配管Lc13の途中位置にバルブV13が設置される。
【0076】
配管Lc14は蒸発器12bに接続し、バルブV14と水張ポンプ30との間で配管Lc11に接続する。配管Lc14の途中位置にバルブV15が設置される。
【0077】
配管Lc15は蒸発器12cに接続し、バルブV15と配管Lc11への接続位置との間で、配管Lc14に接続する。配管Lc15の途中位置にバルブV16が設置される。
【0078】
配管Lc11,Lc14,Lc15は、機器配置レベルが低い蒸発器12a〜12cの入口管寄せに連結することが好ましい。入口管寄せに代えて、配管Lc11,Lc14,Lc15は各蒸発器12a〜12cの入口管寄せに設置されるドラムレベル低減管やドレン管に連結していても良い。
【0079】
節炭器13a〜13cの洗浄を行わない場合、配管Lc11〜Lc13は節炭器13a〜13cの下流側に位置する配管Lw4a〜Lw4c、または、Lw5−1a〜Lw5−1cに接続される。
【0080】
計測部は蒸気ドラム11a〜11cに設置される。あるいは、計測部は蒸発器12a〜12cに設置されるベント管またはドレン管を使用しても良い。
【0081】
本実施形態において、配管Lc11〜Lc15の途中に、流通する液体の温度を調整する手段は設置されない。
【0082】
図2の排熱回収ボイラの配管内部を洗浄する方法を以下で説明する。
洗浄開始時に、復水ポンプ4、節炭器循環ポンプ5、及び、給水ポンプ14a,14bは停止されている。図2に示すようにバルブV12〜V16が閉鎖され、バルブV8、V11が開放される。また、バルブV3〜V7が閉鎖される。
【0083】
薬注ポンプ51が起動し、貯留部50内の洗浄液が配管Lc4を介して配管Lc11に送給される。水張ポンプ30が起動し、常温の洗浄液が配管Lc11から配管Lw3−1、Lw4aを介して節炭器13a及び蒸気ドラム11aに送給される。蒸気ドラム11aに送給された洗浄液は、配管Lw5−1a及び配管Lw5−2aを介して蒸発器12a内に充填される。
【0084】
蒸気ドラム11aに設置された計測部は、蒸気ドラム11a内の洗浄液の水位を計測する。蒸気ドラム11aで洗浄液の水位が満水に到達すると、水張ポンプ30及び薬注ポンプ51が停止され、バルブV8、V11が閉鎖される。
【0085】
ベント管またはドレン管を計測部とする場合は、計測部はベント管またはドレン管からの洗浄液の出水の有無を判断する。出水した時に蒸気ドラム11a内の洗浄液が満水になったと判断され、水張ポンプ30及び薬注ポンプ51が停止され、バルブV8、V11が閉鎖される。
【0086】
バルブV11,V14が閉鎖されることにより、節炭器13a、蒸気ドラム11a及び蒸発器12aが洗浄液に浸漬される。この状態で所定時間放置されて、漬け置き洗浄が行われる。漬け置き時間は、洗浄液中の中性の除錆剤の濃度、防錆剤の濃度、洗浄回数等を考慮して設定される。
【0087】
所定時間経過後、バルブV12及びバルブ14が開放され、水張ポンプ30が起動する。洗浄に使用された洗浄液は、蒸発器12aから配管Lc11,Lc12、Lw3−2,Lw4b,Lw5−1b,Lw5−2bを介して節炭器13b、蒸気ドラム11b及び蒸発器12bに搬送される。計測部は蒸気ドラム11b内の水位を計測する。蒸気ドラム11bが満水に到達しない場合は、薬注ポンプ51が起動し、バルブV8が開放され、貯留部50内の洗浄液が節炭器13b、蒸気ドラム11b及び蒸発器12bに搬送される。配管Lc11に設置されたフィルタは、洗浄に使用された洗浄液が排熱回収部10bに送給される際に、洗浄液中に含まれる固形物を捕集する。
【0088】
蒸気ドラム11bが満水に到達すると、水張ポンプ30及び薬注ポンプ51が停止され、バルブV8、V12,V14が閉鎖される。これにより、節炭器13b、蒸気ドラム11b及び蒸発器12bが漬け置き洗浄される。
【0089】
排熱回収部10cも、同様の工程で洗浄液の移送及び洗浄が実施される。
【0090】
洗浄の順番は上述に限られず、任意の順番で実施することができる。各排熱回収部10a〜10cの洗浄は1回でも良いし、複数回実施されても良い。
【0091】
洗浄を繰り返すと洗浄液の洗浄能力が低下する。そこで第2実施形態では、所定回数の洗浄後、あるいは、洗浄液の成分をモニタリングし中性の除錆剤などの濃度が所定値以下になった場合や洗浄液に溶解したスケール成分濃度が所定値を超えた場合に、使用済みの洗浄液が配管Lc11の途中位置に設けられるブローライン(不図示)から系外に排出される。洗浄液の排出後は、貯留部50から新規の洗浄液が送給される。
【0092】
図2の排熱回収ボイラの配管内部を洗浄する別の方法として、配管内部を洗浄液に浸漬させる間に洗浄液が配管内で循環されても良い。具体的に、洗浄の間、水張ポンプ30が作動する。排熱回収部10aが洗浄される間はバルブV11,V14が開放され、排熱回収部10bが洗浄される間はバルブV12,V15が開放され、排熱回収部10cが洗浄される間はバルブV13,V16が開放される。
【0093】
本実施形態の洗浄方法では、洗浄系統にヒータ等の加熱器が設けられていないため、常温で洗浄が実施される。また、本実施形態では水張ポンプ30は各排熱回収部に洗浄液を供給できれば良い。このため、第1実施形態よりも小容量のポンプとすることができ、動力を低減することが可能である。また、第1実施形態と比較して洗浄に要する洗浄液の容積を低減(図2では1/3程度)することが可能である。
【0094】
[第3実施形態]
図3は、第3実施形態に係る排熱回収ボイラの配管系統図である。図3において、図2と同じ構成には同じ符号を付す。
【0095】
第3実施形態の排熱回収ボイラ201もコンバインドサイクル発電プラントに設置される。第3実施形態の排熱回収ボイラ201は、竪型の排熱回収ボイラ(特開平11−37405号公報に例示される排熱回収ボイラ)である。すなわち、排熱回収ボイラ201は、圧力の異なる蒸気が発生する複数の排熱回収部が鉛直方向に配列される。
【0096】
第3実施形態の排熱回収ボイラ201は、図2と同じ給水系統及び蒸気系統を有するが、洗浄系統が異なっている。図3は、節炭器13a〜13cも洗浄する例を示している。
【0097】
第3実施形態では、第2実施形態の洗浄配管に加え、配管Lc21〜Lc24が設置される。貯留部50、配管Lc4、バルブV8及び薬注ポンプ51は第2実施形態と同じ構成である。貯留部50には、第1実施形態で説明した洗浄液が貯留される。
【0098】
配管Lc21及び配管Lc22(第1の連絡管)は、鉛直方向に隣り合う蒸発器同士を連結する。図3では鉛直方向の上側から蒸発器12a、蒸発器12b、蒸発器12cの順で並んでいる例である。配管Lc21は蒸発器12aと蒸発器12bとを連結する。配管Lc22は蒸発器12bと蒸発器12cとを連結する。連結位置は、各蒸発器12a〜12cの入口管寄せに設けられるドラムレベル低減管60a〜60cであることが好ましい。配管Lc21及び配管Lc22により、蒸発器12a〜12cは洗浄液の流れに対して直列に連結されている。
【0099】
配管Lc23及び配管Lc24(第2の連絡管)は、鉛直方向に隣り合う蒸気ドラム同士を連結する。図3では鉛直方向の上側から蒸気ドラム11a、蒸気ドラム11b、蒸気ドラム11cの順で並んでいる例である。配管Lc23は蒸気ドラム11aと蒸気ドラム11bとを連結する。配管Lc24は蒸気ドラム11bと蒸気ドラム11cとを連結する。連結位置は、各蒸気ドラム11a〜11cのドラムブロー管61a〜61cであることが好ましい。配管Lc23及び配管Lc24により、蒸気ドラム11a〜11cは洗浄液の流れに対して直列に連結されている。
【0100】
配管Lc21〜Lc24には、途中位置にそれぞれバルブV21〜V24が設置される。
なお、蒸発器及び蒸気ドラムの鉛直方向の配列は上記に限定されない。
【0101】
図3の排熱回収ボイラの配管内部を洗浄する方法を以下で説明する。ここでは配管内部を漬け置き洗浄する方法を例に挙げて説明する。
【0102】
洗浄開始時に、復水ポンプ4、節炭器循環ポンプ5、及び、給水ポンプ14a,14bは停止されている。バルブV12〜V16、V21〜V24が閉鎖され、バルブV8、V11が開放される。また、バルブV3〜V7が閉鎖される。
【0103】
まず、第2実施形態で説明したように排熱回収部10aに洗浄液が送給され、排熱回収部10aの洗浄が行われる。
【0104】
排熱回収部10aの洗浄後、水張ポンプ30が起動するとともにバルブV12,V14が開放され、洗浄液が配管Lc11,Lc12を介して節炭器13b、蒸気ドラム11b及び蒸発器12bに搬送される。
【0105】
蒸発器12aは蒸発器12bよりも高い位置に配置される。蒸気ドラム11aは蒸気ドラム11bよりも高い位置に配置される。排熱回収部10aの洗浄後、バルブV21,V23が開放されると、重力により、洗浄液が配管Lc21,Lc23を介して蒸発器12b及び蒸気ドラム11bに搬送される。計測部で計測される蒸気ドラム11b内の水位が満水に到達しない場合は、薬注ポンプ51が起動し、バルブV8が開放され、貯留部50内の洗浄液が節炭器13b、蒸気ドラム11b及び蒸発器12bに搬送される。配管Lc11に設置されたフィルタは、洗浄に使用された洗浄液が排熱回収部10bに送給される際に、洗浄液中に含まれる固形物を捕集する。
【0106】
蒸気ドラム11bが満水に到達すると、水張ポンプ30及び薬注ポンプ51が停止され、バルブV8、V12,V14,V21,V23が閉鎖される。これにより、節炭器13b、蒸気ドラム11b及び蒸発器12bが漬け置き洗浄される。
【0107】
排熱回収部10cも、同様の工程で洗浄液の移送及び洗浄が実施される。洗浄は任意の順番で実施することができる。各排熱回収部10a〜10cの洗浄は1回でも良いし、複数回実施されても良い。
【0108】
第3実施形態でも、配管内部を洗浄液に浸漬させる間に、水張ポンプ30を作動させておいて、洗浄液が配管内で循環されても良い。
【0109】
本実施形態の洗浄方法は、第2実施形態と比較して洗浄液の移送に要する時間を削減することができ、洗浄時間を短縮することが可能である。また、水張ポンプ30の容積を更に低減させるとともに、洗浄液の移送に要する動力も低減させることが可能である。
【0110】
[第4実施形態]
図4は、第4実施形態に係る排熱回収ボイラの配管系統図である。図4において、図3と同じ構成には同じ符号を付す。
【0111】
第4実施形態の排熱回収ボイラ301は、竪型に限定されず横型の場合でも適用可能である。第4実施形態の排熱回収ボイラ301は、配管Lc21〜Lc24にバルブは設置されず、移送ポンプ71a〜71dが設置される点で第3実施形態と異なる。第4実施形態では配管Lc21〜Lc24の接続に関し、竪型の排熱回収ボイラであっても各蒸発器及び蒸気ドラムの鉛直方向の配列を考慮する必要はない。
【0112】
第4実施形態の排熱回収ボイラ301を用いた洗浄方法は、洗浄液の移送に関して第3実施形態と異なる。第4実施形態では、排熱回収部10aの洗浄後、移送ポンプ71a,71cが起動する。これにより、蒸発器12a内部の洗浄液が配管Lc21を介して蒸発器12bに搬送され、蒸気ドラム11a内部の洗浄液が配管Lc23を介して蒸気ドラム11bに搬送される。また、水張ポンプ30が起動するとともにバルブV12,V14が開放され、洗浄液が配管Lc11,Lc12を介して節炭器13b、蒸気ドラム11b及び蒸発器12bに搬送される。計測部で計測される蒸気ドラム11b内の水位が満水に到達しない場合は、薬注ポンプ51が起動し、バルブV8が開放され、貯留部50内の洗浄液が節炭器13b、蒸気ドラム11b及び蒸発器12bに搬送される。蒸気ドラム11bが満水に到達すると、移送ポンプ71a,71c、水張ポンプ30及び薬注ポンプ51が停止され、バルブV8、V12,V14が閉鎖される。これにより、節炭器13b、蒸気ドラム11b及び蒸発器12bが漬け置き洗浄される。排熱回収部10cも、同様の工程で洗浄液の移送及び洗浄が実施される。
【0113】
第4実施形態でも、配管内部を洗浄液に浸漬させる間に洗浄液が配管内で循環されても良い。
【0114】
本実施形態の洗浄方法は、第2実施形態及び第3実施形態と比較して洗浄液の移送に要する時間を削減することができ、洗浄時間を短縮することが可能である。また、第2実施形態と比較して水張ポンプ30の容積を更に低減させるとともに、洗浄液の移送に要する動力も低減させることが可能である。
【0115】
第1実施形態〜第4実施形態では、洗浄液の供給及び移送時、または、洗浄中の洗浄液の循環時において、水張ポンプ(プランジャーポンプまたはダイヤフラムポンプ)30の動作周期を制御して、洗浄液の流れに強弱を与え(流速を短周期で変動させ)ても良い。こうすることにより洗浄効果を向上させることが可能である。
【0116】
プランジャーポンプ及びダイヤフラムポンプでは、その動作において洗浄液を吸引しているときは洗浄液が水張ポンプ30から送給されていない。そこで、第1実施形態〜第4実施形態の排熱回収ボイラでは、洗浄配管に自動弁(図1図4では図示されていない)を設ける。この自動弁はプランジャーポンプまたはダイヤフラムポンプの動作に連動する。自動弁は洗浄配管から洗浄液を抜きだし、水張ポンプ30が洗浄液を送給しないタイミングで、洗浄液の流通方向と逆の方向に抜きだした洗浄液を送給する。このような自動弁を設けることにより、洗浄効果を向上させることが可能である。
【0117】
第1実施形態〜第4実施形態では、洗浄配管の内側にらせん状の溝が形成されていても良い。洗浄液は、このらせん状の溝によって撹拌されながら洗浄配管及び各機器内を流通することになる。あるいは、第1実施形態〜第4実施形態の洗浄配管の途中位置に撹拌装置が設置されても良い。このような構成とすることによっても、洗浄効果を向上させることが可能である。
【0118】
[第5実施形態]
図5は、第5実施形態に係る排熱回収ボイラの配管系統図である。図5において、図1と同じ構成には同じ符号を付す。
【0119】
第5実施形態の排熱回収ボイラ401もコンバインドサイクル発電プラントに設置される。図5の排熱回収ボイラ401は、異なる圧力の上記を発生させる複数の排熱回収部を有している。
【0120】
第5実施形態の排熱回収ボイラ401は、図1と同じ給水系統及び蒸気系統を有するが、洗浄系統が異なっている。図5は、節炭器13a〜13cも洗浄する例を示している。
【0121】
第5実施形態の洗浄配管は、配管Lc4,Lc31〜Lc33と、既存の給水系統のうち、配管Lw1〜Lw3,Lw3−1,Lw3−2,Lw4a〜Lw4c,Lw5−1a〜Lw5−1c,Lw5−2a〜Lw5−2cで構成される。
【0122】
貯留部50には第1実施形態と同様の洗浄液が貯留されている。
【0123】
配管Lc31は、蒸発器12aと配管Lw2とを連結する。配管Lw2での連結位置は、バルブV4と節炭器循環ポンプ5との間である。配管Lc31の途中位置にバルブV31,V32が設置される。バルブV31とV32との間で、配管Lc4が配管Lc31に接続する。
【0124】
配管Lc32は、バルブV31とV32との間の配管Lc31と蒸発器12bとを連結する。配管Lc32の途中位置にバルブV33が設置される。
【0125】
配管Lc33は、配管Lc32と蒸発器12cとを連結する。配管Lc32との連結位置は、配管Lc32が配管Lc31に連結する位置とバルブV33との間である。配管Lc33の途中位置にバルブV34が設置される。
【0126】
第5実施形態では、第1実施形態〜第4実施形態のように水張ポンプは設置されていない。また、洗浄系統に洗浄液の温度を調整する手段は設置されない。
【0127】
図5の排熱回収ボイラ401の配管内部を洗浄する方法を以下で説明する。
洗浄開始時に、復水ポンプ4、節炭器循環ポンプ5、薬注ポンプ51及び、給水ポンプ14a,14bは停止されている。図5に示すようにバルブV3,V4,V6,V7,V31,33,34が閉鎖され、バルブV5,V8、V32が開放される。
【0128】
薬注ポンプ51が起動し、貯留部50内の洗浄液が配管Lc4を介して配管Lc31に送給される。節炭器循環ポンプ5が起動し、常温の洗浄液が配管Lc31から節炭器13cに送給される。節炭器13cに送給された洗浄液の一部は、配管Lw4c,L5−1wc,Lw5−2cを介して洗浄液が蒸気ドラム11c及び蒸発器12cに送給される。節炭器13cに送給された洗浄液の残りは、配管Lw2,Lw3,Lw3−1,Lw4a、Lw5−1a,Lw5−2aを介して排熱回収部10aに送給される。また、洗浄液は、配管Lw2,Lw3,Lw3−2,Lw4b、Lw5−1b,Lw5−2bを介して排熱回収部10bに送給される。
【0129】
節炭器循環ポンプ5が無い場合または使用できない場合には、貯留部50、バルブV8及び薬注ポンプ51を接続する配管Lc4と、復水器2または復水器2と復水ポンプ4の間の配管Lw1とを連結する配管が設置される。そして、復水ポンプ4を起動するとともにバルブV3を開放して、復水ポンプ4により洗浄水を各排熱回収部10a〜10cに送給する。
【0130】
計測部は、蒸気ドラム11a〜11c内の洗浄液の水位を計測する。各蒸気ドラム11a〜11cで洗浄液の水位が満水に到達すると、節炭器循環ポンプ5及び薬注ポンプ51が停止され、バルブV32が閉鎖される。これにより、排熱回収部10a〜10cの節炭器、蒸気ドラム及び蒸発器の洗浄が開始される。
【0131】
所定時間経過後、バルブV5,V31〜V34が開放され、節炭器循環ポンプ5が起動する。洗浄に使用された洗浄液は、配管Lc31の中途位置に設けられるブローライン(不図示)から系外に排出される。
【0132】
本実施形態の洗浄方法では、洗浄系統にヒータ等の加熱器が設けられていないため、常温で洗浄が実施される。また本実施形態では、節炭器にボイラ給水を送給するための節炭器循環ポンプ5(場合によっては更に復水ポンプ4)を利用して洗浄液の送給を行っている。すなわち、既存の給水系統の給水ポンプを洗浄にも利用しているため、設備設置コスト及び運転コストを低減することが可能である。
【0133】
[第6実施形態]
図6は、第6実施形態に係る排熱回収ボイラの配管系統図である。図6において、図5と同じ構成には同じ符号を付す。
【0134】
第6実施形態の排熱回収ボイラ501は、配管Lc41〜Lc43が設置される点で第5実施形態と異なる。配管Lc41は、給水ポンプ14aと節炭器13aとの間で、配管Lw3−1と蒸発器12aとを連結する。配管Lc42は、給水ポンプ14bと節炭器13bとの間で、配管Lw3−2と蒸発器12bとを連結する。配管Lc43は、節炭器13cの上流側の配管Lw1と蒸発器12cとを連結する。
【0135】
第6実施形態では、第1実施形態〜第4実施形態のように水張ポンプは設置されていない。また、洗浄系統に洗浄液の温度を調整する手段は設置されない。
【0136】
図6の排熱回収ボイラ501の配管内部を洗浄する方法を以下で説明する。
洗浄開始時に、復水ポンプ4、節炭器循環ポンプ5、薬注ポンプ51及び、給水ポンプ14a,14bは停止されている。図6に示すようにバルブV3,V4,V6,V7が閉鎖され、バルブV5,V8,V31〜V34が開放される。
【0137】
薬注ポンプ51が起動し、貯留部50内の洗浄液が第5実施形態で説明した経路を通って各排熱回収部10a〜10cに送給される。本実施形態では、洗浄液は更に配管Lc41〜Lc43と通じて蒸発器12a〜12cに送給される。
【0138】
計測部は、蒸気ドラム11a〜11c内の洗浄液の水位を計測する。各蒸気ドラム11a〜11cで洗浄液の水位が満水に到達すると、バルブV8が閉鎖され、薬注ポンプ51が停止される。本実施形態では節炭器循環ポンプ5、給水ポンプ14a、14bは停止されない。このため、洗浄液が循環されながら、節炭器、蒸気ドラム及び蒸発器が洗浄液に浸漬されて洗浄される。この時の循環量は、各ポンプのミニマムフロー(ポンプ定格容量の25%〜30%程度)とすることが好ましい。
【0139】
所定時間経過後、洗浄液は、配管Lc31の中途位置に設けられるブローライン(不図示)から系外に排出される。
【0140】
本実施形態は、洗浄液を循環させながら洗浄を実施するので、スケール等の除去率が向上するという効果を奏する。
【0141】
[第7実施形態]
図7は、第7実施形態に係る排熱回収ボイラの配管系統図である。図7において、図5と同じ構成には同じ符号を付す。
【0142】
第7実施形態の排熱回収ボイラ601では、配管Lc31と配管Lw3−1とを連結する配管Lc51、及び、配管Lc31と配管Lw3とを連結する配管Lc52とが設置される点で、第5実施形態と異なる。なお、配管Lc52は、配管Lw3−2に連結していても良い。配管Lc51,Lc52にはそれぞれ、バルブV51,V52が設置される。
【0143】
第7実施形態では、第1実施形態〜第4実施形態のように水張ポンプは設置されていない。また、洗浄系統に洗浄液の温度を調整する手段は設置されない。
【0144】
図7の排熱回収ボイラ601の配管内部を洗浄する方法を以下で説明する。
洗浄開始時に、復水ポンプ4、節炭器循環ポンプ5、薬注ポンプ51及び、給水ポンプ14a,14bは停止されている。図5に示すようにバルブV3〜V7,V31〜34,V52が閉鎖され、バルブV8,V51が開放される。
【0145】
薬注ポンプ51が起動し、貯留部50内の洗浄液が配管Lc4を介して配管Lc31に送給される。給水ポンプ14aが起動し、常温の洗浄液が配管Lc31から配管Lw3−1を通り節炭器13aに送給される。節炭器13aに送給された洗浄液は、配管Lw4a,Lw5−1a,Lw5−2aを介して蒸気ドラム11a及び蒸発器12aに送給される。
【0146】
計測部は、蒸気ドラム11a内の洗浄液の水位を計測する。蒸気ドラム11aで洗浄液の水位が満水に到達すると、給水ポンプ14a及び薬注ポンプ51が停止され、バルブV8,V51が閉鎖される。これにより、節炭器13a、蒸気ドラム11a及び蒸発器12aの洗浄が開始される。
【0147】
所定時間経過後、バルブV31,V52が開放され、給水ポンプ14bが起動する。排熱回収部10aの洗浄に使用された洗浄液は、配管Lc31,Lc52,Lw3−2を介して節炭器13bに送給される。その後、配管Lw4b,Lw5−1b,Lw5−2bを介して蒸気ドラム11b及び蒸発器12bに送給される。計測部は蒸気ドラム11b内の水位を計測する。蒸気ドラム11bが満水に到達しない場合は、薬注ポンプ51が起動し、バルブV8が開放され、貯留部50内の洗浄液が節炭器13b、蒸気ドラム11b及び蒸発器12bに搬送される。
【0148】
蒸気ドラム11bが満水に到達すると、給水ポンプ14b及び薬注ポンプ51が停止され、バルブV8,V31,V52が閉鎖される。これにより、節炭器13b、蒸気ドラム11b及び蒸発器12bが漬け置き洗浄される。
【0149】
所定時間経過後、バルブV32,V33が開放され、節炭器循環ポンプ5が起動する。排熱回収部10bの洗浄に使用された洗浄液は、Lc32,Lc31,Lw1を介して節炭器13cに送給される。その後、配管Lw4c,Lw5−1c,Lw5−2cを介して蒸気ドラム11c及び蒸発器12cに送給される。計測部は蒸気ドラム11c内の水位を計測する。蒸気ドラム11cが満水に到達しない場合は、薬注ポンプ51が起動し、バルブV8が開放され、貯留部50内の洗浄液が節炭器13c、蒸気ドラム11c及び蒸発器12cに搬送される。
【0150】
蒸気ドラム11cが満水に到達すると、節炭器循環ポンプ5及び薬注ポンプ51が停止され、バルブV8,V32,V33が閉鎖される。これにより、節炭器13c、蒸気ドラム11c及び蒸発器12cが漬け置き洗浄される。
【0151】
洗浄の順番は上述に限られず、任意の順番で実施することができる。各排熱回収部10a〜10cの洗浄は1回でも良いし、複数回実施されても良い。また、所定回数の洗浄に使用された洗浄液は、配管Lc31の途中位置に設けられるブローライン(不図示)から系外に排出される。洗浄液の排出後は、貯留部50から新規の洗浄液が送給される。
【0152】
本実施形態の洗浄方法では、洗浄系統にヒータ等の加熱器が設けられていないため、常温で洗浄が実施される。第5実施形態と比較して洗浄に要する洗浄液の容積を低減することが可能である。また、本実施形態では節炭器に給水を送給する給水ポンプ14a,14b及び節炭器循環ポンプ5を利用して洗浄液の送給を行っている。すなわち、既存の給水系統のポンプを洗浄にも利用しているため、設備設置コスト及び運転コストを低減することが可能である。
【0153】
本実施形態の変形例では、第3実施形態で説明したように、竪型の排熱回収ボイラとして、鉛直方向に隣り合う蒸発ボイラ及び蒸発器同士を直列的に連結する配管が設置されていても良い。この変形例では、洗浄後に上述の配管を介して洗浄液が重力を利用して移送される。このため、洗浄時間を短縮することが可能である。
【0154】
本実施形態の別の変形例では、第4実施形態で説明したように、蒸発ボイラ及び蒸発器同士を直列的に連結する配管と、移送ポンプとが設置される。この変形例では、洗浄液の移送にポンプが使用されるため、洗浄時間を短縮することが可能である。
【0155】
[第8実施形態]
図8は、第8実施形態に係る排熱回収ボイラの配管系統図である。図8において、図6図7と同じ構成には同じ符号を付す。
【0156】
第8実施形態の排熱回収ボイラ701は、第7実施形態と同様に配管Lc51,Lc52が設置される点で第6実施形態と異なる。
【0157】
第8実施形態では、第1実施形態〜第4実施形態のように水張ポンプは設置されていない。また、洗浄系統に洗浄液の温度を調整する手段は設置されない。
【0158】
図8の排熱回収ボイラ701の配管内部を洗浄する方法を以下で説明する。
洗浄開始時に、復水ポンプ4、節炭器循環ポンプ5、薬注ポンプ51及び、給水ポンプ14a,14bは停止されている。図8に示すようにバルブV3〜V7,V32〜34,V52が閉鎖され、バルブV8,V31,V51が開放される。
【0159】
薬注ポンプ51が起動し、貯留部50内の洗浄液が配管Lc4を介して配管Lc31に送給される。給水ポンプ14aが起動し、常温の洗浄液が配管Lc31から配管Lc51,Lw3−1を通り節炭器13aに送給される。節炭器13aに送給された洗浄液は、配管Lw4a,Lw5−1a,Lw5−2a,Lc41を介して蒸気ドラム11a及び蒸発器12aに送給される。
【0160】
計測部は、蒸気ドラム11a内の洗浄液の水位を計測する。蒸気ドラム11aで洗浄液の水位が満水に到達すると、バルブV8が閉鎖され、薬注ポンプ51が停止される。給水ポンプ14aが作動した状態で、節炭器13a、蒸気ドラム11a及び蒸発器12aの洗浄が開始される。
【0161】
所定時間経過後、バルブV51が閉鎖され、バルブV52が開放される。給水ポンプ14aが停止し、給水ポンプ14bが起動する。排熱回収部10aの洗浄に使用された洗浄液は、配管Lc31,Lc52,Lw3−2を介して節炭器13bに送給される。その後、配管Lw4b,Lw5−1b,Lw5−2b,Lc42を介して蒸気ドラム11b及び蒸発器12bに送給される。計測部は蒸気ドラム11b内の水位を計測する。蒸気ドラム11bが満水に到達しない場合は、薬注ポンプ51が起動し、バルブV8が開放され、貯留部50内の洗浄液が節炭器13b、蒸気ドラム11b及び蒸発器12bに搬送される。
【0162】
蒸気ドラム11bが満水に到達すると、バルブV8、V31が閉鎖され、薬注ポンプ51が停止される。給水ポンプ14bが作動した状態で、節炭器13b、蒸気ドラム11b及び蒸発器12bの洗浄が開始される。
【0163】
所定時間経過後、バルブV52が閉鎖され、バルブV32,V34が開放され、節炭器循環ポンプ5が起動する。排熱回収部10bの洗浄に使用された洗浄液は、Lc32,Lc31,Lw2を介して節炭器13cに送給される。その後、配管Lw4c,Lw5−1c,Lw5−2c,Lc43を介して蒸気ドラム11c及び蒸発器12cに送給される。計測部は蒸気ドラム11c内の水位を計測する。蒸気ドラム11cが満水に到達しない場合は、薬注ポンプ51が起動し、バルブV8が開放され、貯留部50内の洗浄液が節炭器13c、蒸気ドラム11c及び蒸発器12cに搬送される。
【0164】
蒸気ドラム11cが満水に到達すると、バルブV8、V33が閉鎖され、薬注ポンプ51が停止される。節炭器循環ポンプ5が起動した状態で、節炭器13c、蒸気ドラム11c及び蒸発器12cの洗浄が開始される。
【0165】
洗浄の順番は上述に限られず、任意の順番で実施することができる。各排熱回収部10a〜10cの洗浄は1回でも良いし、複数回実施されても良い。また、所定回数の洗浄に使用された洗浄液は、配管Lc31の途中位置に設けられるブローライン(不図示)から系外に排出される。洗浄液の排出後は、貯留部50から新規の洗浄液が送給される。
【0166】
本実施形態の洗浄方法では、洗浄系統にヒータ等の加熱器が設けられていないため、常温で洗浄が実施される。第7実施形態と比較して洗浄に要する洗浄液の容積を低減することが可能である。また、本実施形態では既存の給水系統のポンプを洗浄にも利用しているため、設備設置コスト及び運転コストを低減することが可能である。
【0167】
本実施形態の変形例では、第3実施形態で説明したように、竪型の排熱回収ボイラとして、鉛直方向に隣り合う蒸発ボイラ及び蒸発器同士を直列的に連結する配管が設置されていても良い。本実施形態の別の変形例では、第4実施形態で説明したように、蒸発ボイラ及び蒸発器同士を直列的に連結する配管と、移送ポンプとが設置されても良い。
【符号の説明】
【0168】
1,101,201,301,401,501,601,701 排熱回収ボイラ
2 復水器
3 蒸気タービン
4 復水ポンプ
5 節炭器循環ポンプ
10a〜10c 排熱回収部
11a〜11c 蒸気ドラム
12a〜12c 蒸発器
13a〜13c 節炭器
14a,14b 給水ポンプ
20a〜20c 過熱器
21 再熱器
30 水張ポンプ
50 貯留部
51 薬注ポンプ
60 ドラムレベル低減管
61 ドラムブロー管
71a〜71d 移送ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8