(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、添付の図面および実施例と共に読まれる、以下の説明を参照することで、より容易に理解され得る。説明、図面および実施例はすべて、本開示の一部を形成する。本発明は、本明細書に記載および/または図示される特定の製品、方法、条件またはパラメータに制限されないこと、ならびに、本明細書で使用される用語は、ほんの一例として特定の実施形態を説明する目的のものであり、主張する発明を制限することは意図していないことが、理解される。同様に、特に明記されない限り、可能な機構または作用様式または改善の理由に関するあらゆる説明は、例示的であるにすぎないことが意図されており、本発明は、そのような示唆される機構または作用様式または改善の理由の正確さまたは不正確さに束縛されるものではない。本文書全体にわたり、説明は、溶液、その溶液の製造および使用方法、その溶液を用いる装置およびシステム、ならびにそのような装置およびシステムを動作させる方法に言及することが認識される。すなわち、開示が、溶液、溶液を含む組成物、組成物もしくは溶液の製造および使用方法、組成物もしくは溶液を用いる装置もしくはシステム、または、そのような装置もしくはシステムを動作させる方法に関連する特徴または実施形態を説明および/または主張する場合、そのような説明および/または主張は、これらの特徴または実施形態のすべてに言及することを意図していることが、理解される。
【0018】
本開示では、単数形「a」、「an」および「the」は、複数のものへの言及も含み、特定の数値への言及は、文脈で明らかに別のことを示していない限り、少なくともその特定の値を含む。よって、例えば、「材料(a material)」への言及は、当業者に既知のそのような材料およびそれらの等価物などのうちの少なくとも1つへの言及である。
【0019】
値が記述子「約」を用いて近似値として表わされる場合、その特定の値は、別の実施形態を形成することが理解される。概して、用語「約」の使用は、開示される主題により得ようとする所望の特性に応じて変化できる近似値を示し、その機能に基づいて、その語が使用される特定の文脈で解釈されるべきものである。当業者は、これを、いつものこととして解釈できるだろう。場合によっては、特定の値に使用される有効桁数は、単語「約」の範囲を決定する1つの非制限的方法となり得る。他の場合、一連の値において使用されるグラデーション(gradations)は、各値で用語「約」に利用可能な意図される範囲を決定するのに使用され得る。存在する場合、すべての範囲は、包括的であり、組み合わせ可能である。すなわち、範囲において述べる値への言及は、その範囲内のすべての値を含む。
【0020】
リストが提示される場合は、別段指定のない限り、そのリストの個々の要素それぞれ、およびそのリストのあらゆる組み合わせは、別の実施形態として解釈されることが、理解される。例えば、「A、B、またはC」として提示された実施形態のリストは、実施形態「A」、「B」、「C」、「AまたはB」、「AまたはC」、「BまたはC」、あるいは「A、B、またはC」を含むものとして解釈される。
【0021】
明瞭性のために別々の実施形態の文脈で本明細書に記載される、本発明のある特徴は、単一の実施形態で、組み合わせて提供され得ることが、理解される。すなわち、明らかに不適合でないか、または特に排除されていなければ、個々の実施形態はそれぞれ、任意の他の実施形態と組み合わせ可能であるとみなされ、そのような組み合わせは、別の実施形態と考えられる。逆に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈で記載される、本発明のさまざまな特徴は、別々に、または任意の部分的組み合わせで、提供されてもよい。最後に、実施形態は、一連の工程の一部またはより一般的な構造の一部として記載され得るが、各工程または部分は、それ自体、独立した実施形態と考えることもできる。
【0022】
本発明は、フェロシアニド/フェリシアニド系およびそれらの使用に関する実施形態を含む。本発明は、より広範な性質の、組成物/溶液および使用の実施形態も、包含する。発明者らは、例えば、ある混合塩類系が、それらの対応する単一塩系よりも著しく高い溶解度をもたらすことを、発見した。例えば、本発明により、目的の個々の塩類の公開された溶解限度を前提として当業者が予測し得るよりも高い、シアノメタラートイオン(cyanometallate ion)濃度を示す、金属シアニド錯体の溶液が可能となる。
【0023】
本明細書全体にわたり、単語には、当業者に理解されるような、通常の意味が与えられる。しかしながら、誤解を避けるために、特定の用語の意味を、具体的に定義または明瞭化する。
【0024】
例えば、本明細書で使用される用語「帯電した金属‐リガンド配位錯体(charged metal-ligand coordination complex)」または単に「配位錯体」とは、配位リガンドを有する、0価または0価でない遷移金属(すなわち、周期表における3〜12族の要素、ならびにランタニドおよびアクチニド系の要素を含む、満たされた、もしくは満たされていないd軌道を有する要素)を含む錯体を指し、当業者に理解されるように、金属とリガンドとの組み合わせは、非ゼロ電荷を示す。別段定めのない限り、用語「配位リガンド」は、金属の配位圏内部の任意の化学部分を指す。しかしながら、追加の独立した実施形態は、これらの配位リガンドが、個別に無機、有機、または無機/有機の混合(mixed inorganic/organic)であり、かつ一座配位性、二座配位性(bidendate)、多座配位性、またはそれらの組み合わせであるものを定めている。
【0025】
また、特に示さない限り、用語「対イオン」は、形式電荷符号が配位錯体の形式電荷符号と反対であり、そのため、金属‐リガンド配位錯体の電荷のバランスを取ることができる、種を含意することが意図されている。対イオンは、金属‐リガンド配位錯体の格子結晶(lattice crystals)の形成を安定化させるか、またはもたらすことのできる種を含む。用語「形式電荷(formal charge)」は、ある条件下で、配位錯体およびそれに付随する対イオンが、溶液中に、自由イオンではなくイオン対として存在できることを反映するよう使用されるが、このつながり(association)は、意図した意味を損なうものではない。
【0026】
さらに、本明細書で使用されるように、「安定溶液」への言及は、沈殿に対して安定している溶液を指す。当技術分野で既知のように、沈殿に安定である、溶液中の溶解種は、自然に沈殿せず、多くの試験は、沈殿物の有無を決定するのに適し得る。例えば、このような種は、0.2μmのフィルター上に収集されることはできず、典型的には、サイズ排除クロマトグラフィーのカラムを通過すると、対称的な溶出ピークを形成する。沈殿に安定でない溶液は、既知の光散乱法(例えば、ISO7027:1999)によりホルマジン濁度単位(FTU)基準または等価の基準について測定可能な濁度の、沈殿固体(settled solids)または分散体(dispersion)を備えた、全体で2つの位相系を含み得る。このような安定性の試験は、溶液の使用目的に適しているとみなされた任意の条件下で行われ得るが、本出願の目的では、特別に定めのない限り、用語「安定溶液」は、溶液が、約30日間標準の周囲温度(例えば、約20℃〜約25℃の範囲)に置かれるようにされた場合に、前述した方法のいずれかで検知可能であるような、配位錯体を含む沈殿物を形成しないことを意味するよう理解されるべきである。
【0027】
追加の個別の実施形態は、安定性が少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50もしくは約100日、または約1、2、もしくは約5年の期間にわたり、以下で論じる範囲の任意の所与の温度で定められるものも含む。例えば、追加の実施形態では、溶液は、7日間冷蔵温度(例えば、約0℃〜約4℃の範囲)に置かれるようにされた場合に、視覚的に、または光散乱により検知可能となるような、配位錯体を含む沈殿物を形成しなければ、安定と考えられる。
【0028】
次に、本明細書で使用される用語「溶液安定性」は、必ずしも、化学的に安定な溶液(すなわち、化学分解に耐性がある)を指すことを意図しているわけではないが、これは、安定溶液の好適な特徴である。
【0029】
これらの定義の範囲内で、本発明のある実施形態は、安定溶液を提供し、安定溶液はそれぞれ、(a)帯電した金属‐リガンド配位錯体と、(b)少なくとも2つの異なる対イオンとを含み(またはこれらから本質的になり)、所与の温度での、配位錯体の濃度は、配位錯体が少なくとも2つの異なる対イオンのうちの任意の1つの存在下にある場合に得ることができるものより高い。
【0030】
例えば、対イオンA、B、Cを含有するシステムでは、A、B、およびCの存在下での配位錯体の溶解度は、Aのみの存在下、Bのみの存在下、およびCのみの存在下における、配位錯体の溶解限度より大きい。明瞭化のために、「改善された溶解度(enhanced solubility)」への言及は、この条件が満たされた状態を含意することを意図している。これに関して、この改善された溶解度は、本発明の本質的特徴、すなわち基本的かつ新規な特徴である。したがって、本明細書に記載する実施形態が、制限のない(open-ended)「含む(comprising)」という語を使用して記載される場合、そのような実施形態は、基本的かつ新規な特徴としての、この改善された溶解度と共に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という語に関して記載され得る実施形態も含むものと解釈され得る。また、当業者には理解されるように、用語「溶解限度」は、錯体の沈殿が生じる前、すなわち、ある材料が溶媒中で飽和状態になるが過飽和ではない時点で、所与の温度で溶媒が保持し得る材料(この場合、配位錯体および/もしくはフェロシアニド/フェリシアニド錯体)の量を指す。
【0031】
「得ることができる(that can be obtained)」という用語の使用にかかわらず、「少なくとも2つの異なる対イオン」の存在下および「少なくとも2つの異なる対イオンのうちの任意の1つ(any single one of the at least two different)」の存在下の配位錯体の比較は、別の同一の成分(例えば添加物)を有し、別の同一の状況(例えば温度を含む)にある溶液間で行われることが、理解されるべきである。
【0032】
さらに、特定の実施形態は、対イオンが配位錯体と名目上関係し得るが、溶液に添加される、例えば添加された緩衝剤もしくは支持電解質と関係する、他の材料からのイオンも含み得る状況を含め、2つまたは3つ以上の異なる対イオンがあってもなくても、この効果が存在し得るものを含む。用語「支持電解質」は、以下に定義する。
【0033】
本明細書で使用される用語「溶液」は、当業者が理解するような、すなわち、液体に溶解した固体の均質な混合物という、通常の意味を有する。しかしながら、本明細書で使用される用語「溶液」は、他の溶解していない材料の不存在を必ず必要とするものとして、または、溶液が混合物の連続相であるとして、読まれることは意図していない。すなわち、この文脈では、「鉄ヘキサシアニドの安定水溶液」は、鉄ヘキサシアニドの安定水溶液および/または連続相もしくは不連続相が安定水溶液を構成するエマルションもしくはマイクロエマルションの中に懸濁された粒子を含む混合物中にも存在する。
【0034】
さらに、(鉄ヘキサシアニドを含む)配位錯体および少なくとも2つの対イオンに加え、安定溶液は、他のイオン化もしくは非イオン化材料をさらに含んでよく、このような材料により、意図する適用にさらに適したものとなるが、本発明の基本的かつ新規な特徴は妨げられない。イオン化材料(すなわち、溶液中にイオン対を部分的または完全にイオン化もしくは形成するもの)は、例えば、支持電解質(以下に定める)、緩衝剤、イオン性(アニオン性、カチオン性、および双性イオン性)の界面活性剤もしくは洗剤、および/または束一的性質もしくはpH調整剤を含み得る。例示的なイオン化材料は、強酸もしくは弱酸(塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、もしくはカルボン酸、例えば、酢酸、クエン酸、アミノ酸、もしくはEDTAを含む)および塩基(水酸化物、アミン、および前述した酸の共役塩基を含む);アルカリ金属、アルカリ土類金属、もしくはアンモニウム塩;ならびにカルボキシレート(酢酸、クエン酸、およびEDTAを含む)、ボレート(borates)、ハロゲン化物(臭化物、塩化物、フッ化物、およびヨウ化物を含む)、ナイトレート(nitrates)、ナイトライト(nitrites)、スルフェート(sulfates)、サルファイト(sulfites)、ホスフェート(phosphates)、リン酸水素、ホスファイト、ポリホスフェートの塩、を含むがこれらに制限されない。例示的な緩衝剤は、酢酸、ビシン、カコジラート緩衝剤(cacodylate buffer)、CHES(2−(シクロヘキシルアミノ)−エタンスルホン酸)、クエン酸、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン−エタンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸))、SSC(食塩水−クエン酸ナトリウムの緩衝剤)、TAPSO(3−[[1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−イル]アミノ]−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸)、TRIS(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−プロパン−1,3−ジオール)、およびトリシンを含む。
【0035】
溶液は、非イオン化材料、例えば、非イオン性共溶媒(C
1〜3アルコール、グリコール、もしくはポリグリコールを含む水混和性または水溶性のアルコール;ケトン;またはアルデヒドを含む)、粘度調整剤もしくはゲル化剤(シトレート(citrate)、コーンスターチ、コーンシロップ、ゼラチン、グリセロール、グアールガム、ペクチンを含む)、ならびに/または湿潤剤(非イオン性界面活性剤および/もしくは洗剤を含む)、を含有することもできる。
【0036】
これらの添加材料が配位錯体の溶解度に影響を及ぼす範囲で、少なくとも2種類の対イオン、および単一の対イオンの存在下での、配位錯体の改善された溶解度間の任意の比較が、同じ組成条件下で行われるべきであることを、理解されたい。
【0037】
本発明の文脈内で、安定溶液は、水性であるのが好ましいが、必ずしも水性でなくてよい。別段定めのない限り、用語「水性」は、溶媒の総重量に対し、少なくとも約98重量%の水を含む溶媒系を指す。しかしながら、多くの適用では、溶解性、混和性、または部分的に混和性の(界面活性剤もしくは他のもので乳化された)共溶媒も、有用に存在することができ、これは、例えば、水の流動性の範囲を延ばす(例えばアルコール/グリコール)。特定される場合、追加の独立した実施形態は、「水性」溶媒系が、溶媒全体に対して、少なくとも約55%、少なくとも約60wt%、少なくとも約70wt%、少なくとも約75wt%、少なくとも約80%、少なくとも約85wt%、少なくとも約90wt%、少なくとも約95wt%、または少なくとも約98wt%の水を含むものを含む。多くの状況で、水性溶媒は、水からなってよく、また、共溶媒を実質的に含まないか、または含まなくてよい。
【0038】
本発明は、安定溶液が代わりに、アルカリ性、酸性、または実質的に中性である実施形態を含むが、(例えばフェロシアニド/フェリシアニドの溶液を含む)ある好適な実施形態では、配位錯体の安定溶液はアルカリ性である。本明細書で使用される場合、特に定めのない限り、用語「アルカリ性(alkaline)」は、約7を超える見かけのpH(apparent pH)を有する溶液を指す。用語「見かけの(apparent)」は、共溶媒を含まないか、または含有するが、(後者の場合)pH計で問い合わせられた際に(pH計は、電圧計が目的の溶液とイオン接触して保持される感知電極と基準電極との間の電位差を測定する装置により具現される)約7を超えるpHを記録する、溶媒系に対応するよう使用される。用語「アルカリ性」は、7を超える見かけのpHを有する溶液を指すが、本発明の他の実施形態は、pHもしくは見かけのpHが約7〜約14の範囲であるもの、ならびに、pHもしくは見かけのpHが名目上14より大きい(すなわち、多モル(multi-molar)(例えば2M)の水酸化物を含む、非常にアルカリ性の系)ものを含む。追加の独立した実施形態は、pHが少なくとも約7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13または約14pH単位(上限なし(upper end uncapped))である溶液、また、pHが約14、13.5、13、12.5、12、11.5または11pH単位未満である溶液も含み、例示的な範囲は、約7〜14、8〜13、9〜13、10〜13、8〜12、8〜11、および9〜12pH単位も含む。
【0039】
ある実施形態では、配位錯体と関連する非ゼロ電荷は、負であり(すなわち、配位錯体自体はアニオン性であり)、その場合、関連する少なくとも2つの対イオン(改善された溶解度をもたらす)はそれぞれ、正に帯電する(すなわちカチオン性である)。これらのカチオン性対イオンは、異なる正の電荷を有する種の混合物を含め、任意の数の形式正電荷を有する種を含み得るが、モノカチオン性およびジカチオン性の(アルカリおよびアルカリ土類金属カチオンを含む)種、またはそれらの混合物が好ましい。他の好適な実施形態では、カチオン性対イオンは、1価のカチオン、例えば、アルカリ金属またはオプションとして置換された(例えば、NH
4+もしくは混合された水素、アルキル、アリール)アンモニウムカチオンの混合物である。Na
+およびK
+を含む組み合わせは、少なくともフェロシアニド/フェリシアニド系には、最も好ましいようである。
【0040】
他の実施形態では、配位錯体と関連する非ゼロ電荷は、正である。配位錯体が正の電荷を有する場合、関連する対イオンはアニオン性である。この場合、さまざまな実施形態は、対イオンがそれぞれ、単一、二重、もしくは三重荷電アニオン種(singly, doubly, or triply charged anionic species)、またはそれらの混合物を含め、任意の数の形式負電荷を独立して有し得ることを定める。そのような種は、カルコゲニド、ハロゲン化物(F
−、Cl
−、Br
−、I
−を含む)、ヘキサアルキルもしくはヘキサアリールホスフェート、ヘキサフルオロホスフェート、ナイトレート、ナイトライト、ペルクロラート(perchlorate)、ホスフェート、リン酸水素、ホスホネート、スルフェート、サルファイト(sulfite)、テトラアルキルもしくはテトラアリールボレート(tetra-alkyl or -arylborates)、テトファルフオロボレート(tetrafluoroborates)、またはトリフラートを含み得るが、これらに制限されない。
【0041】
ある好適な実施形態では、安定溶液は、2種類のみの対イオンを含む。これらの実施形態には、これらの対イオンのうちの第1のものと第2のものとのモル比が、各対イオンの電荷と無関係に、互いに対して、約1:10〜約10:1の範囲である実施形態が含まれる。他の独立した実施形態では、この比率は、約1:8〜約8:1、約1:6〜約6:1、約1:4〜約4:1、約1:3〜約3:1、約1:2〜約2:1、約1:1.5〜約1.5:1の範囲、または実質的に1:1である(用語「実質的に」は、安定溶液の使用中に起こり得るドリフトまたは塩類を測定する際の実験誤差を考慮したものである)。安定溶液が3種類以上の対イオンを含む場合、追加の実施形態では、少なくとも一対の対イオンがこの段落に記載する基準を満たすことを定めている。
【0042】
少なくとも2つの対イオンの存在下での配位錯体の改善された安定性は、「所与の温度」に関して前述され、すなわち「所与の温度で、安定溶液中の配位錯体の濃度は、配位錯体が少なくとも2つの異なる対イオンのうちの任意の1つと共に溶解している場合に、配位錯体の溶解度より高い」。この説明は、溶解度の比較が単一の(かつ同じ)温度で行われること、および、この改善された溶解度の条件が、任意の温度で存在する場合に満たされること、の両方を含意することを意図している。多くの文脈で、この「所与の温度」の決定は、単に、溶解度を測定する際の便宜上、通常の周囲室温(すなわち、約20℃〜約25℃の範囲)で行われる。しかしながら、他の適用では、このような決定は、約−20℃〜約150℃の範囲の任意の温度で行われ得る。他の実施形態では、この温度は、約−10℃、約0℃、約10℃、約20℃、約30℃、または約40℃の温度で下限を、また、約90℃、80℃、70℃、60℃、50℃、または約40℃の温度で上限を境界された範囲の1つである。例示的な実施形態は、約−10℃〜約60℃、約40℃〜約80℃、または約10℃〜約30℃の範囲のものを含むが、これらに制限されない。
【0043】
安定溶液はまた、複数(「少なくとも2種類」)の対イオンの存在により生じる、溶解度の改善についても説明され得る。ある実施形態では、安定溶液は、配位錯体が少なくとも2種類の対イオンのうちの任意の1つのみの存在下で溶解している場合に、配位錯体の溶解限度より少なくとも約10%高い、配位錯体の濃度をもたらす。他の独立した実施形態では、配位錯体の濃度は、配位錯体が少なくとも2種類の対イオンのうちの任意の1つのみの存在下で溶解している場合に、配位錯体の溶解限度より少なくとも約25%高い、少なくとも約50%高い、少なくとも約75%高い、または少なくとも約100%高い。
【0044】
この点に対し、配位錯体は、配位リガンドを有する遷移金属を含む帯電錯体(charged complex)についてのみ説明されてきた。ある実施形態では、配位錯体は、レドックス活性である。すなわち、別の実施形態では、配位錯体は、電流(もしくは、電圧の、配位錯体を含む溶液と接触している適切な電極表面への)の印加、または適切な化学的酸化剤もしくは還元剤により、酸化、還元、または酸化および還元の双方を受けることができる。この文脈では、用語「レドックス活性」は、配位錯体が約−0.8V〜約1.8V vs. RHEの範囲の酸化もしくは還元電位を、水溶液中で示すことを意味する。
【0045】
鉄ヘキサシアニド系は、本発明の範囲内で特定の実施形態を提供する。すなわち、ある追加的実施形態は、配位錯体が鉄ヘキサシアニドであり、少なくとも2種類の対イオンのうちの2つがアルカリ金属カチオンであるものを含む。鉄ヘキサシアニドは、フェリシアニド、フェロシアニド、またはフェリシアニド/フェロシアニドの混合物であってよい。これらのアルカリ金属イオンは、Li
+、Na
+、K
+またはCs
+を含み得る。配位錯体を含む溶液について前述した実施形態ならびに組成およびパラメータのオプションもすべて、鉄ヘキサシアニドを含む溶液について記載したオプションおよび溶液において、独立して入手可能および使用可能と考えられる。
【0046】
鉄ヘキサシアニドを含む、ある好適な実施形態では、安定溶液は、水性であり、2種類の対イオンを含んでおり、それらの2種類の対イオンは、Na
+およびK
+であり、対イオンについて前述した範囲で存在している(すなわち、約1:10〜約10:1、約1:5〜約5:1、約1:4〜約4:1、約1:3〜約3:1、約1:2〜約2:1、約1:1.5〜約1.5:1、または実質的に1:1の範囲を含む)。鉄ヘキサシアニド(フェリシアニド、フェロシアニド、またはフェリシアニド/フェロシアニドの混合物)と、Na
+とK
+との実質的に等モルの混合物を含み、共溶媒を含まないかまたは実質的に含まない、アルカリ性水溶液が最も好ましい。
【0047】
さらなる実施形態では、配位錯体、特に鉄ヘキサシアニドは、少なくとも約0.8Mの濃度で安定溶液中に存在する。追加の独立した実施形態では、鉄ヘキサシアニドの濃度は、少なくとも約0.9M、約1M、約1.2M、約1.3M、約1.4M、または少なくとも約1.5Mであり、最大で約3M、2.5M、2M、1.75M、1.5M、または約1Mである。1つの例示的な非制限的実施形態は、鉄ヘキサシアニドが約1M〜約3Mの範囲の濃度で存在する溶液を含む。
【0048】
本発明は、改善された溶解度を有する、鉄ヘキサシアニドの安定溶液を調製する方法をさらに含む。これらの方法のうちいくつかは、以下の段落で説明する。具体的に説明する実施形態に加え、これらの教示は、本発明の範囲内とそれぞれがみなされる、追加の実施形態を提供するように組み合わせられ得ることを、理解されたい。また、明瞭にするため、以下に記載する方法から得ることのできる溶液または組成物はすべて、本発明の別々の実施形態とみなされる。例えば、鉄ヘキサシアニド塩類のモル比は、前述したものを含め、改善された溶解度の基本的かつ新規な特徴を満たすような任意の比であってよいが、およそ0.9:1〜約1.1:1または実質的に1:1を含む、中間的比率が好ましい。同様に、鉄ヘキサシアニドの改善された溶解度を有する溶液は、実質的には中性またはアルカリ性であり得る。これらのオプションのどれを好むかは、溶液の使用目的によって決まる。
【0049】
第1の戦略では、ある実施形態は、鉄ヘキサシアニド(II)、[Fe(CN)
64−]の安定水溶液を調製する方法を提供し、各方法は、十分な量のNa
4[Fe(CN)
6]およびK
4[Fe(CN)
6]を、ある量の水性溶媒(好ましくは、共溶媒を実質的に含まない水)に溶解させ、所与の温度での、その溶液中のFe(CN)
64−の濃度が、同じ温度での、Na
4[Fe(CN)
6]の飽和溶液またはK
4[Fe(CN)
6]の飽和溶液中のFe(CN)
64−の濃度を超えるようにすることを含む。この「十分な量のNa
4[Fe(CN)
6]およびK
4[Fe(CN)
6]を、ある量の水性溶媒(好ましくは、共溶媒を実質的に含まない水)に溶解させ」ることによる、溶液中でのFe(CN)
64−の溶解度の「押し上げ(boosting)」は、(a)Na
4[Fe(CN)
6]およびK
4[Fe(CN)
6]の固体塩を水性溶媒と共混合すること(co-mixing)により;(b)Na
4[Fe(CN)
6]の固体塩を、K
4[Fe(CN)
6]の(飽和溶液を含む)溶液と混ぜることにより;または(c)K
4[Fe(CN)
6]の固体塩を、Na
4[Fe(CN)
6]の(飽和溶液を含む)溶液と混ぜることにより、達成され得る。Na
4[Fe(CN)
6]およびK
4[Fe(CN)
6]の固体塩は、無水形態およびそれらの任意の水和物または溶媒和物を含むが、Na
4Fe(CN)
6・10H
2OおよびK
4Fe(CN)
6・3H
2Oが、これらの方法の、好ましい出発原料である。この「押し上げ」手順は、以下の方法にも適用することができる。
【0050】
アルカリ性溶液が望ましい場合、これらの方法の追加的実施形態は、十分な量の適切な塩基を加えて(すなわち、改善された溶解度を維持するように)所望のpHまたはpH範囲をもたらし維持することをさらに含む。
【0051】
このように、この戦略、または本明細書に記載するその他の戦略により利用可能となる、改善された溶解度は、出発原料自体の塩により提供されるような、Na
+/K
+対イオンの存在により実現され得る。しかし、改善された溶解度は、結果として得られる溶液中の対イオンの総数に起因する(attributable by)と思われるので、これは、他の溶解塩の添加/存在によっても実現可能である。例えば、関連する実施形態では、鉄ヘキサシアニド(II)、[Fe(CN)
64−]の安定水溶液は、十分な量のNa
4[Fe(CN)
6]および/またはK
4[Fe(CN)
6]を、Na
+/K
+含有塩を含む、ある量の溶媒に溶かすことにより調製されることができ、Na
+/K
+の組み合わせは、改善された溶解度を生じる必要な複数の対イオンを、溶液環境におてもたらす。例示的なNa
+/K
+含有塩は、塩化ナトリウムおよび/もしくはカリウム、炭酸ナトリウムおよび/もしくはカリウム、水酸化ナトリウムおよび/もしくはカリウム、リン酸水素ナトリウムおよび/もしくはカリウム、硝酸ナトリウムおよび/もしくはカリウム、または硫酸ナトリウムおよび/もしくはカリウム、を含むがこれらに制限されない。
【0052】
第2の戦略では、塩基性Na
+/K
+塩の混合物は、H
4[Fe(CN)
6]と反応し、溶液pHの変化を伴って、[Fe(CN)
64−]の溶解度が改善された溶液を生じることができる。例えば、他の実施形態は、鉄ヘキサシアニド(II)、(Fe(CN)
64−)の安定水溶液を調製する方法を提供し、各方法は、十分な量のH
4[Fe(CN)
6]、NaOH、KOHを、十分な水の中で混合し、所与の温度での、その溶液中のFe(CN)
64−の濃度が、同じ温度での、Na
4[Fe(CN)
6]の飽和溶液またはK
4[Fe(CN)
6]の飽和溶液中のFe(CN)
64−の濃度を超えるようにすることを含む。この戦略を用いたさらなる実施形態は、他の塩基性Na
+/K
+塩、例えば炭酸塩または重炭酸塩、が、全体的または部分的に、水酸化物と置換されるものを含む。
【0053】
第3の戦略では、鉄ヘキサシアニド(II)[Fe(CN)
64−]の十分な量のカルシウム塩が、不溶性カルシウム塩の沈殿(およびその後の除去)を伴って、[Fe(CN)
64−]溶解度が改善された溶液をもたらす条件下で塩基性Na
+/K
+塩の混合物と反応する。例えば、1つのこのような一連の実施形態は、鉄ヘキサシアニド(II)(Fe(CN)
64−)の安定水溶液を調製する方法を提供し、各方法は、(a)十分な量のCa
2[Fe(CN)
6]、NaOH、KOHを、ある量の水の中で混合し、所与の温度での、その溶液中のFe(CN)
64−の濃度が、同じ温度での、Na
4[Fe(CN)
6]の飽和溶液またはK
4[Fe(CN)
6]の飽和溶液中のFe(CN)
64−の濃度を超えるようにすることと、(b)沈殿したCa(OH)
2を除去することと、を含む。この戦略を用いるさらなる実施形態は、混合カルシウム塩、例えばCaNa
2[Fe(CN)
6]またはCaK
2[Fe(CN)
6]が、全体的または部分的にCa
2[Fe(CN)
6]と置き換えられるもの、他の塩基性Na
+/K
+塩、例えば炭酸塩または重炭酸塩が、全体的または部分的に水酸化物と置き換わるもの、ならびに、沈殿したカルシウム塩(炭酸カルシウムであれ水酸化カルシウムであれ)が除去されるもの、を含む。
【0054】
他の実施形態を使用することもできるが、沈殿したカルシウム塩を除去する工程は、例えば、遠心分離および/または(限外)濾過技術を使用して、達成することができる。
【0055】
特定の追加的実施形態は、溶液を提供し、各溶液は、鉄ヘキサシアニド(II)(Fe(CN)
64−)を含むアルカリ性安定水溶液を含み(またはこれから本質的になり)、所与の温度およびpHでの、その溶液中におけるFe(CN)
64−の濃度は、同じ温度およびpHでの、Na
4[Fe(CN)
6]のアルカリ性飽和水溶液またはK
4[Fe(CN)
6]のアルカリ性飽和水溶液中のFe(CN)
64−の濃度を超える。
【0056】
鉄ヘキサシアニド(II)[Fe(CN)
64−]の溶液の調製について前述した説明は、鉄ヘキサシアニド(III)[Fe(CN)
63−]の、溶解度が改善された溶液を調製するための類似方法も提供することを理解されたい。これは、例えば、前述した鉄ヘキサシアニド(II)[Fe(CN)
64−]の代わりに、対応する鉄ヘキサシアニド(III)[Fe(CN)
63−]前駆体を用いることによって、達成され得る。例示的であるが、非限定的な類似において、ある実施形態は、鉄ヘキサシアニド(III)[Fe(CN)
63−]の安定水溶液を調製する方法を提供し、各方法は、十分な量のNa
3[Fe(CN)
6]およびK
3[Fe(CN)
6]を、ある量の水に溶かし、改善された溶解度の基準を満たす、その溶液中のFe(CN)
63−の濃度(すなわち、Na
3[Fe(CN)
6]およびK
3[Fe(CN)
6]自体の溶解限度により許容されるより大きい、Fe(CN)
63−の濃度)を提供することを含む。これらの方法は、鉄(II)系について前述したような「押し上げ」の類似方法も含んでよく、Na
3[Fe(CN)
6]およびK
3[Fe(CN)
6]の固体塩は、無水形態およびそれらの任意の水和物もしくは溶媒和物を含み得る。
【0057】
別のアプローチでは、鉄ヘキサシアニド(III)[Fe(CN)
63−]の溶液は、当技術分野で既知の適切な試薬を使用して、電気化学的または化学的に、鉄ヘキサシアニド(II)[Fe(CN)
64−]の溶液を酸化させることで、調製され得る。同様に、鉄ヘキサシアニド(II)[Fe(CN)
64−]の溶液は、鉄ヘキサシアニド(III)[Fe(CN)
63−]の溶液を化学的または電気化学的に還元することによって、調製され得る。このように調製されると、対応する前駆体(すなわち混合鉄(II/III)系)の完全もしくは部分的酸化/還元から結果として生じるか、またはそれと組成的に等価である溶液も、本発明の範囲内と考えられる。
【0058】
本明細書に記載される原理、ならびにこれらの原理から得られ、一般には帯電した金属‐リガンド配位錯体を、具体的には鉄ヘキサシアニドを含む、溶液は、広範な適用において使用されることができ、この適用には、エネルギー貯蔵;エネルギー変換;鉱石もしくは他のマトリックスからの金属抽出;電気めっきおよび無電解めっき;シアニドもしくは一酸化窒素の可溶物源(soluble sources)の供給;電気化学センサテクノロジー;電気化学的、分光学的、もしくは磁気的手段による装置較正;安全な紙および他のインク、染料、もしくは染料調剤品の製造;動物飼料サプリメント;エレクトロクロミック物質;ならびに固化防止剤が含まれるが、これらに制限されない。本発明は、可溶性シアノメタラートを伴うプロセス、およびコロイド、薄膜、非晶質もしくは結晶質材料といった、溶液に基づかない使用を伴うプロセスに関連する。これらの適用それぞれにおける、このような溶液の使用は、本発明の範囲内と考えられる。
【0059】
さらに、各適用の特定の要件は、追加の添加物もしくは成分を必要とするか、または好み得る。例えば、エネルギー貯蔵および電気/無電解めっきに有用な溶液は、典型的には、追加の緩衝剤、支持電解質、粘度調整剤、湿潤剤等を必要とする。
【0060】
ある実施形態は、電解質として有用な溶液を提供し、各溶液は、本明細書に記載の安定溶液のいずれかを含み(またはこれから本質的になり)、支持電解質をさらに含む。用語「支持電解質」は、電気化学およびエネルギー貯蔵の分野では周知であり、目的の電位窓でレドックス不活性であり、かつ電荷およびイオン伝導性を支援するのを助ける、任意の種を指すことが意図されている。本発明の場合、支持電解質は、(鉄ヘキサシアニド錯体を含む)配位錯体の溶解度を実質的に損なわない。例としては、アルカリ金属、アルキルもしくはアリール基で部分的もしくは完全に置換されたアンモニウムイオンを含むアンモニウムイオン、ハロゲン化物(例えばCl
−、Br
−、I
−)、カルコゲニド、リン酸塩、リン酸水素、ホスホン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、またはそれらの混合物、および当技術分野で既知の他のものを含む、塩が含まれる。フェロシアニド/フェリシアニドの化学的性質の場合、ナトリウムカリウムリン酸水素(sodium potassium hydrogen phosphate)が、特に有用な支持電解質である。
【0061】
これらの実施形態では、配位錯体(鉄ヘキサシアニド錯体を含む)は、動作している目的の電位窓(operating window of electric potential of interest)内でレドックス活性であってよい。このような実施形態では、配位/鉄ヘキサシアニド錯体は、エネルギー貯蔵媒体として作用するか、または作用することができる。
【0062】
本発明の溶液、特に、本発明の鉄ヘキサシアニド錯体溶液の改善された溶解度は、鉄ヘキサシアニドでこれまで利用可能であったものと比べ、フロー電池を含むエネルギー貯蔵装置のための、実質的により高い理論上の充電/放電密度を可能にする。本発明は、高濃度の金属シアニド錯体の溶液を製造および使用することを可能にし、この錯体は、アルカリ金属塩の溶解度と比べて高い溶解度のアルカリ土類金属塩を使用するものでは利用できないpH範囲で安定している。後者の対イオンは、アルカリ性安定溶液を可能にするが、当技術分野で既知の方法を用いて、約0.8M超の濃度を可能にはできず、周囲温度で0.5〜0.6Mの報告が標準(norm)である。これは、より高い濃度が有益となり得る適用において限定的なものである。これらの適用は、エネルギー貯蔵を含み、[Fe(CN)
6]
4−の0.8M溶液は、わずか21.4A・h/Lの理論上の充電/放電密度を表わすが、本明細書に記載の1.5M溶液は、40.2A・h/Lを可能にする。用語「理論上の充電密度」は、1電子活性種(1 electron active species)の1M溶液が26.8A−h/Lをもたらし、濃度に直接対応するという関係に基づいて、所与のシステムの理論上の最大充電/放電密度を説明するのに使用される。このような説明は、実験的に導出された「実際的な(practical)」充電密度の問題に反映されるであろう、他の手段に由来する装置非効率性の問題を回避するものである。したがって、本発明のある独立した実施形態は、少なくとも約20A‐h/L、少なくとも約25A‐h/L、少なくとも約30A‐h/L、少なくとも約35A‐h/L、少なくとも約40A‐h/L、少なくとも約45A‐h/L、または少なくとも約50A‐h/Lの理論上の充電/放電密度を示すことができる、鉄ヘキサシアニド(II)、鉄ヘキサシアニド(III)、または鉄ヘキサシアニド(II)と鉄ヘキサシアニド(III)との混合物を含む安定溶液または電解質を提供する。説明した倍率を用いると、これは、少なくとも約0.8M、1M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.75M、または約2Mの、鉄ヘキサシアニド濃度に対応する。
【0063】
本明細書に記載するような、配位/鉄ヘキサシアニド錯体の改善された溶解度は、錯体が示すかもしくは示さない、または示すことができるかもしくは示すことができない、任意のレドックス特徴に関係なく、本発明により利用可能となる高いイオン伝導率に単に有用である、溶液を提供することができる。例えば、フェロシアニド自体は、本発明により利用可能となる高い濃度で特に、極めて伝導性がある。例えば、pH11では、[Fe(CN)
6]の濃縮ナトリウム/カリウム水溶液(例えば、>1M)は、少なくとも、対応する硫酸ナトリウム溶液と同じくらい伝導性がある。その結果、ユーザーは、動作する目的の電位窓が、配位/鉄ヘキサシアニド錯体カップルの電位外である条件を選ぶことを望むことができる。このような場合、動作する目的の窓内でレドックス活性である種を加えることが、有用となり得る。
【0064】
したがって、いくつかの実施形態では、電解質は、既に論じた溶液のいずれか1つを含んでよく、また、追加のレドックス活性種をさらに含んでよい。追加のレドックス活性「種」は、遷移金属を含んでも含まなくてもよい(例えば、完全に有機的であってよい)。用語「追加の」レドックス活性種の使用は、安定溶液中の配位錯体が既にレドックス活性であってもなくてもよく、あるいは、電解質が曝露される、動作する電位窓外であるレドックス電位を有しても有していなくてもよいという事実を認めるものである。すなわち、これらの実施形態は、約−0.8V〜約1.8V vs. RHEの範囲でそれぞれが動作可能である2つのレドックス活性カップル(配位錯体/鉄ヘキサシアニド錯体が第1のものであり、「追加の」レドックス活性種が第2のものである)を実際に含み得る溶液を記載するが、「追加の」種は、配位錯体/鉄ヘキサシアニド錯体とは異なる電位で動作可能であり、ある動作条件下では、改善された溶解度の配位/鉄ヘキサシアニド錯体は、単に支持電解質として作用でき、「追加の」レドックス活性種は、レドックス活性カップルの一部として作用している。
【0065】
本発明はまた、本発明のこれらの溶液により提供される、改善された溶解度を利用する、装置、システム、および適用も企図している。例えば、本発明の独立した実施形態は、本明細書に記載の溶液のうちの1つを使用するか、または組み込む、フロー電池と関連付けられたものを含む電気化学的セルまたは半電池を含む。例えば、フェロシアニド/フェリシアニドカップルに基づく溶液は、フェロシアン化亜鉛/フェリシアン化亜鉛系で使用されるのに有用であることが知られているが、それらの歴史上の有用性(historic utility)は、フェロシアン化ナトリウム/フェリシアン化ナトリウムの限られた溶解度により制限されてきた。例えば、Hollandsworth, R. P., et al., “Zinc/Ferrocyanide Battery Development Phase IV” Lockheed Missiles and Space Company, Inc., contractor report, Sandia Contract DE-AC04-76DP00789, 1985;および米国特許出願公開第2011/0244277号(Gordonら)を参照のこと。これらはそれぞれ、あらゆる目的で、参照により全体として本明細書に組み込まれる。これらの2つの参考文献は、そのようなフェロシアン化亜鉛/フェリシアン化亜鉛系の性能を改善するよう意図された一連のテクノロジーおよび戦略を記載しており、これらのテクノロジーおよび戦略はそれぞれ、本発明により入手可能な高濃度のフェロシアニド/フェリシアニド溶液を組み込むと、利益を得る。HollandsworthおよびGordonの参考文献の教示を、本開示と組み合わせることで入手可能となる、任意のデザイン、装置、および/もしくは動作条件は、本発明の範囲内であり、かつ本発明の実施形態とみなされる。
【0066】
フロー電池セルとして動作し、一般には配位錯体の、具体的にはフェロ−フェリシアニド錯体の、改善された溶解度を利用する電気化学的セルを含む、本発明の電気化学的セルは、例えばセルスタック構成を用いて、より大きいシステムに構成されることもできる。本明細書に記載するような少なくとも1つの電気化学的/フロー電池セルを含む、このようなシステムは、本発明の追加的実施形態とみなされる。
【0067】
このような電気化学的/フロー電池セルもしくはエネルギー貯蔵システムを動作させるのに有用な方法も、本発明の範囲内と考えられる。例えば、さまざまな実施形態は、本明細書に記載する溶液を含む、電気化学的/フロー電池セルもしくはエネルギー貯蔵システムを動作させる方法を提供し、各方法は、配位錯体の酸化状態の変化を引き起こすように、溶液に電流を流すことを含む。追加の実施形態は、本明細書に記載する溶液を含む電気化学的/フロー電池セルもしくはエネルギー貯蔵システムを動作させる方法を提供し、各方法は、鉄ヘキサシアニド錯体の酸化状態の変化を引き起こすように、溶液に電流を流すことを含む。
【0068】
〔実施例〕
実施例1:サンプルの準備
例示的な実施形態では、固体のNa
4Fe(CN)
6・10H
2O(33.89g、0.070モル)およびK
4Fe(CN)
6・3H
2O(29.57g、0.070モル)を、80mLの脱イオン水中でかき混ぜた。固体を溶かすために、その後、十分な水をゆっくりと加えて、およそ1.5MのFe(CN)
64−を含有するサンプルを得た。この溶解度は、Na
4Fe(CN)
6・10H
2OおよびK
4Fe(CN)
6・3H
2Oの溶解度がそれぞれ、同じ周囲温度で0.7M未満であることが当技術分野で知られていることを考慮して、予想外であった。このサンプル中の溶解したFe(CN)
64−イオンの濃度は、以下のように、UV/可視光分光法により確認された。一定分量(aliquot)の1.5M Fe(CN)
64−溶液(20μL)が2.0mLの脱イオン水に加えられ、101の希釈係数を結果として得た。結果として得られた溶液は、同様に、101倍で水で希釈され、およそ1.5×10
−4MのFe(CN)
64−濃度を有する溶液をもたらし(総希釈は1/101×1/101〜1/10200)、これは、1cmの経路長の石英キュベットを用いて、UV/可視光分光法により分析された。
図1は、100.0mLの0.10M溶液を生じるよう十分な量のNa
4Fe(CN)
6・10H
2Oを溶かし、分光光度分析のために適切に希釈することにより調製された、フェロシアニドアニオンのモル吸光係数によりプロットされた、基準スペクトルを示す。
図2は、濃縮Fe(CN)
64−溶液の10200倍希釈(すなわち、1:101の倍率の希釈を2回続ける(two series dilutions))について得られたスペクトルを示す。希釈されたサンプルのスペクトルは、320nmで0.046AUの吸光度を生じ、これは、この波長での、およそ315M
−1cm
−1のモル吸光係数に対応し、基準スペクトルから得られた値および文献の値とよく一致している(例えば、Cohen, S. R., Plane, R. A., J. Phys. Chem., 1957, 61, 1096-1100を参照)。
【0069】
濃縮混合カチオンFe(CN)
64−は、良好な溶液安定性を示し、4週間周囲室温(およそ20℃〜約25℃)に、または1週間冷蔵状態(およそ0〜4℃)置かれた後で、沈殿した固体または色の変化の兆候を示さなかった。
【0070】
実施例2:サイクリックボルタンメトリー
実施例1に記載した1.5M [Fe(CN)
6]
4−溶液は、ガラス状炭素作用電極を用いて、サイクリックボルタンメトリーにより調べられた(interrogated)(
図3)。これらの実験では、十分な固体のナトリウムカリウムリン酸水素、NaOHおよびKOHが、1.5M [Fe(CN)
6]
4−溶液に加えられて、11.1のpHを有し(N
+/K
+の比率は〜1)1.5M [Fe(CN)
6]
4−および0.1M ホスフェートを含有する、希釈標準溶液(working solution)を生じた。これらの結果は、[Fe(CN)
6]
4−の、より多くの希薄溶液(more dilute solutions)で得られたサイクリックボルタモグラムと一致する。例えば、Pharr, C. et al., Anal. Chem. 1997, 69, 4673-4679を参照(
図5、10mM フェロシアニド/フェリシアニド溶液からのCV結果を示す)。
【0071】
別の実験では、Na
4Fe(CN)
6・10H
2O(3.39g、0.0070モル)およびK
4Fe(CN)
6・3H
2O(2.96g、0.0070モル)が、NaOH中では1M、KOH中では1Mであった10mLの水の中で撹拌された。数時間撹拌した後、残っていた少量の固体が、ろ過により除去された。前記に概要を述べたものに類似した処置において、UV/可視光分光法で分析されると、すべての[Fe(CN)
64−]は、1.0Mと判断され、これは、Na
4Fe(CN)
6・10H
2Oで2M NaOHを飽和させた際に報告される〜0.6Mの濃度より著しく高かった。電気化学的活性は、
図4に示すように、高度に伝導性がある、高度にアルカリ性の溶液中で維持された。
【0072】
実施例3:エネルギー貯蔵能力
濃度が高められた鉄ヘキサシアニドを有する溶液のエネルギー貯蔵能力は、5cm
2の活性面積を有する電気化学的セルを用いて、標準的方法により研究された。
図5に示す結果は、Na
4Fe(CN)
6の0.43M溶液を含むpH11の正の電解質の貯蔵能力を、Na
4Fe(CN)
6およびK
4Fe(CN)
6を溶かすことで調製された1.41M溶液と比較しており、これは、後者が系の能力を制限しないように、いずれについても適切な量の負の電解質が使用された場合のものである。0.43M フェロシアニド溶液は、11.5A・h/Lの理論上の充電/放電密度を生じ、1.41M溶液は、37.8A・h/Lの値を生じた。1.5Mのフェロシアニドの溶液は、40.2A・h/Lの理論上の充電/放電密度を生じる。
【0073】
当業者は認識するであろうが、これらの教示を踏まえると、本発明の多くの改変およびバリエーションが可能であり、そのようなものすべてが、これにより企図される。例えば、本明細書に記載した実施形態に加えて、本発明は、本明細書で引用した発明の特徴、および本発明の特徴を実装する引用先行技術文献の特徴の組み合わせにより生じる発明を企図し、主張する。同様に、説明した任意の材料、特徴、または物品は、任意の他の材料、特徴、または物品と組み合わせて使用されてよく、そのような組み合わせは、本発明の範囲内とみなされることが、理解されるであろう。本明細書で引用もしくは説明された各特許、特許出願、および刊行物の開示は、参照によりあらゆる目的で全体として本明細書に組み込まれる。
【0074】
〔実施の態様〕
(1) 安定水溶液において、
(a)鉄ヘキサシアニド錯体と、
(b)少なくとも2つの異なるアルカリ金属対イオンと、
を含み、
所与の温度での、前記鉄ヘキサシアニド錯体の濃度は、前記配位錯体が前記少なくとも2つの異なるアルカリ金属対イオンのうちのいずれか1つの存在下にある場合に得ることができるものより高い、安定水溶液。
(2) 実施態様1に記載の溶液において、
前記溶液は、約−10℃〜約60℃の範囲の温度である、溶液。
(3) 実施態様1または2に記載の溶液において、
前記少なくとも2つの異なるアルカリ金属対イオンは、Na
+およびK
+を含む、溶液。
(4) 実施態様1〜3のいずれかに記載の溶液において、
前記少なくとも2つの異なるアルカリ金属対イオンのうちの2つは、互いに対して、約1:10〜約10:1の範囲のモル比で存在する、溶液。
(5) 実施態様4に記載の溶液において、
前記異なるアルカリ金属カチオンは、約1:5〜約5:1の範囲、好ましくは1:1のNa
+/K
+比率で存在する、Na
+およびK
+カチオンである、溶液。
【0075】
(6) 実施態様1〜5のいずれかに記載の溶液において、
前記溶液は、アルカリ性である、溶液。
(7) 実施態様1〜6のいずれかに記載の溶液において、
前記配位錯体の濃度は、少なくとも約0.8Mである、溶液
(8) 実施態様1〜7のいずれかに記載の溶液において、
前記溶液中の前記配位錯体の濃度は、前記配位錯体が前記少なくとも2つの異なる対イオンのうちのいずれか1つの存在下にある場合に得ることができるものより、少なくとも25%高い、溶液。
(9) 鉄ヘキサシアニド(II)(Fe(CN)
64−)の安定水溶液を調製する方法において、
十分な量のNa
4[Fe(CN)
6]およびK
4[Fe(CN)
6]を、ある量の水性溶媒に溶かして、所与の温度での、前記溶液中のFe(CN)
64−の濃度が、同じ温度での、Na
4[Fe(CN)
6]の飽和溶液またはK
4[Fe(CN)
6]の飽和溶液中のFe(CN)
64−の濃度を超えるようにすることを含む、方法。
(10) 鉄ヘキサシアニド(II)[Fe(CN)
64−]の安定水溶液を調製する方法において、
十分な量のH
4[Fe(CN)
6]、NaOH、およびKOHを、十分な量の水性溶媒中で混合し、所与の温度での、前記溶液中のFe(CN)
64−の濃度が、同じ温度での、Na
4[Fe(CN)
6]の飽和溶液またはK
4[Fe(CN)
6]の飽和溶液中のFe(CN)
64−の濃度を超えるようにすることを含む、方法。
【0076】
(11) 鉄ヘキサシアニド(II)[Fe(CN)
64−]の安定水溶液を調製する方法において、
(a)十分な量のCa
2[Fe(CN)
6]、NaOH、およびKOHを、ある量の水性溶媒中で混合し、所与の温度での、前記溶液中のFe(CN)
64−の濃度が、同じ温度での、Na
4[Fe(CN)
6]の飽和溶液またはK
4[Fe(CN)
6]の飽和溶液中のFe(CN)
64−の濃度を超えるようにすることと、
(b)オプションとして、沈殿したCa(OH)
2を除去することと、
を含む、方法。
(12) 安定水溶液であって、
実施態様9、10、または11に記載の方法に従って調製された鉄ヘキサシアニド(II)(Fe(CN)
64−)を含む、安定水溶液。
(13) アルカリ性安定水溶液において、
鉄ヘキサシアニド(II)[Fe(CN)
64−]を含み、
所与の温度およびpHでの、前記溶液中のFe(CN)
64−の濃度が、同じ温度およびpHでの、Na
4[Fe(CN)
6]のアルカリ性飽和水溶液またはK
4[Fe(CN)
6]のアルカリ性飽和水溶液中のFe(CN)
64−の濃度より高い、アルカリ性安定水溶液。
(14) 実施態様1〜8または12〜13のいずれかに記載の溶液において、
粘度調整剤または湿潤剤をさらに含む、溶液。
(15) 実施態様1〜8または12〜14のいずれかに記載の溶液において、
緩衝剤および/または支持電解質をさらに含む、溶液。
【0077】
(16) 実施態様1〜8または12〜15のいずれかに記載の溶液において、
約−0.8V〜約1.8V vs. RHEの範囲にわたりレドックス活性である、別の種をさらに含む、溶液。
(17) 溶液において、
少なくとも約20A−h/Lの理論上の充電/放電密度を示すことのできる、鉄ヘキサシアニド(II)、鉄ヘキサシアニド(III)、または鉄ヘキサシアニド(II)と鉄ヘキサシアニド(III)との混合物から本質的になる、溶液。
(18) 安定溶液において、
(a)帯電した金属‐リガンド配位錯体と、
(b)少なくとも2つの異なる対イオンと、
を含み、
所与の温度での、前記配位錯体の濃度は、前記配位錯体が前記少なくとも2つの異なる対イオンのうちのいずれか1つの存在下にある場合に得ることができるものより高い、安定溶液。
(19) 実施態様18に記載の溶液において、
前記溶液は、水性である、溶液。
(20) 実施態様18または19に記載の溶液において、
前記配位錯体は、正味の負の電荷を有する、溶液。
【0078】
(21) 実施態様20に記載の溶液において、
前記少なくとも2つの異なる対イオンは、1価のカチオンである、溶液。
(22) 実施態様21に記載の溶液において、
前記少なくとも2つの異なる対イオンは、アルカリ金属カチオンである、溶液。
(23) 実施態様18または19に記載の溶液において、
前記配位錯体は、正味の正の電荷を有する、溶液。
(24) 実施態様23に記載の溶液において、
前記少なくとも2つの異なる対イオンはそれぞれ、単一、二重、もしくは三重荷電アニオンである、溶液。
(25) 実施態様18〜24のいずれかに記載の溶液において、
前記溶液は、約−10℃〜約60℃の範囲の温度である、溶液。
【0079】
(26) 実施態様18〜25のいずれかに記載の溶液において、
前記少なくとも2つの異なる対イオンのうちの2つは、互いに対して、約1:9〜約9:1の範囲のモル比で存在する、溶液。
(27) 実施態様18〜26のいずれかに記載の溶液において、
前記溶液中の前記配位錯体の濃度は、前記配位錯体が前記少なくとも2つの異なる対イオンのうちのいずれか1つの存在下にある場合に得ることができるものよりも、少なくとも25%高い、溶液。
(28) 実施態様18〜27のいずれかに記載の溶液において、
前記配位錯体は、約−0.8V〜約1.8V vs. RHEの酸化または還元電位を示す、溶液。
(29) 実施態様18〜28のいずれかに記載の溶液において、
粘度調整剤または湿潤剤をさらに含む、溶液。
(30) 実施態様18〜29のいずれかに記載の溶液において、
緩衝剤および/または支持電解質をさらに含む、溶液。
【0080】
(31) 実施態様18〜30のいずれかに記載の溶液において、
−0.8V〜約1.8V vs. RHEの範囲の酸化または還元電位を有する第2の種をさらに含む、溶液。
(32) 電気化学的セルにおいて、
実施態様1〜8、12〜17、または18〜31のいずれかに記載の溶液を含む少なくとも1つの半電池を有する、電気化学的セル。
(33) 実施態様32に記載の電気化学的セルにおいて、
前記セルは、フロー電池セルである、電気化学的セル。
(34) エネルギー貯蔵システムにおいて、
電気化学的セルの一連のアレイを含み、
少なくとも1つの電気化学的セルが、実施態様32または33に記載の電気化学的セルである、エネルギー貯蔵システム。
(35) 実施態様32または33に記載の電気化学的セルあるいは実施態様34に記載のエネルギー貯蔵システムを動作させる方法において、
前記金属‐リガンド配位錯体の酸化状態の変化を引き起こすように、前記溶液に電流を流すことを含む、方法。
【0081】
(36) 実施態様32または33に記載の電気化学的セルあるいは実施態様34に記載のエネルギー貯蔵システムを動作させる方法において、
前記鉄ヘキサシアニドの酸化状態の変化を引き起こすように、前記溶液に電流を流すことを含む、方法。
(37) 電気化学センサーにおいて、
実施態様1〜8、12〜17、または18〜31のいずれかに記載の溶液を含む、電気化学センサー。
(38) 実施態様11〜16、20、または21〜24のいずれかに記載の溶液の使用において、
エネルギー貯蔵、エネルギー変換、電気めっきもしくは無電解めっきにおける、または、染料としての、使用。