特許第6766207号(P6766207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6766207-塗料組成物 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6766207
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20200928BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20200928BHJP
【FI】
   C09D163/00
   C09D7/61
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-55329(P2019-55329)
(22)【出願日】2019年3月22日
(65)【公開番号】特開2020-152877(P2020-152877A)
(43)【公開日】2020年9月24日
【審査請求日】2020年2月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100152054
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 孝雅
(72)【発明者】
【氏名】行森 靖高
(72)【発明者】
【氏名】北山 雅彦
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−116973(JP,A)
【文献】 特開2001−040281(JP,A)
【文献】 特開平11−092711(JP,A)
【文献】 特開2000−327744(JP,A)
【文献】 特開2011−094104(JP,A)
【文献】 特開2010−043178(JP,A)
【文献】 特開平03−115318(JP,A)
【文献】 特開2011−219550(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/000979(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00
C09D 101/00−201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、アミン変性エポキシ樹脂、およびイソシアネート変性エポキシ樹脂から選択される少なくとも一種の変性エポキシ樹脂(A)、エポキシエステル樹脂(B)、顔料(C)ならびに溶剤(D)を含む塗料組成物であって、前記塗料組成物に対する前記溶剤(D)の含有量が40質量%以下である一液型エポキシ樹脂塗料組成物。
【請求項2】
前記変性エポキシ樹脂(A)/エポキシエステル樹脂(B)の質量比率が60/40〜95/5である請求項1記載の一液型エポキシ樹脂塗料組成物。
【請求項3】
前記塗料組成物の固形分に占める変性エポキシ樹脂(A)とエポキシエステル樹脂(B)の合計量が、5〜25質量%である請求項1または2記載の一液型エポキシ樹脂塗料組成物。
【請求項4】
前記塗料組成物の固形分に占める顔料(C)が、60〜90質量%である請求項1〜3いずれかに記載の一液型エポキシ樹脂塗料組成物。
【請求項5】
前記顔料(C)は、少なくとも吸油量10〜40ml/gの体質顔料(C−1)を含む請求項1〜4いずれかに記載の一液型エポキシ樹脂塗料組成物。
【請求項6】
少なくとも、アクリル変性エポキシ樹脂(A)、エポキシエステル樹脂(B)、顔料(C)ならびに溶剤(D)を含む塗料組成物であって、
前記エポキシエステル樹脂(B)がエポキシ樹脂のエポキシ基に脂肪酸のみを反応させて変性したエポキシエステル樹脂であり、
前記塗料組成物に対する前記溶剤(D)の含有量が40質量%以下である一液型エポキシ樹脂塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤の含有量の少ない一液型のエポキシ樹脂塗料組成物に関し、詳しくは鋼製建具の防錆性付与に適する一液型のエポキシ樹脂塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からエポキシ樹脂塗料は、優れた耐薬品性、耐食性、密着性を有するとして建具用の塗料として使用されてきた(特許文献1、2)。昨今では、短時間で膜厚を確保しやすいことや、地球環境への負荷を低減するため、有機溶剤の含有量の少ないハイソリッドタイプの一液型エポキシ樹脂塗料が求められている。
【0003】
しかしながら、一液型エポキシ樹脂塗料では粘性の高い高分子エポキシ樹脂を使用するため、有機溶剤の含有量を減らすと高粘度となりやすく、結果的に塗装時に使用するシンナー量が増えるという問題があった。また、塗布後完全に乾燥していない状態で降雨等により水滴が付着した場合、その水滴の跡(以下ウォータースポットと言う)が乾燥後も残ってしまい、外観品質を劣化させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−164180号公報
【特許文献2】特開2004−231853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ウォータースポットが発生しにくく、高濃度であっても塗装作業性に優れ、かつ高い防錆性を有する一液型のエポキシ樹脂塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、下記によって達成された。
1.少なくとも、アミン変性エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂およびアクリル変性エポキシ樹脂から選択される少なくとも一種の変性エポキシ樹脂(A)、エポキシエステル樹脂(B)、顔料(C)ならびに溶剤(D)を含む塗料組成物であって、前記塗料組成物に対する前記溶剤(D)の含有量が40質量%以下である一液型エポキシ樹脂塗料組成物。
2.前記変性エポキシ樹脂(A)/エポキシエステル樹脂(B)の質量比率が60/40〜95/5である前記1記載の一液型エポキシ樹脂塗料組成物。
3.前記塗料組成物の固形分に占める変性エポキシ樹脂(A)とエポキシエステル樹脂(B)の合計量が、5〜25質量%である前記1または2記載の一液型エポキシ樹脂塗料組成物。
4.前記塗料組成物の固形分に占める顔料(C)が、60〜90質量%である前記1〜3いずれかに記載の一液型エポキシ樹脂塗料組成物。
5.前記顔料(C)は、少なくとも吸油量10〜40ml/gの体質顔料(C−1)を含む前記1〜4いずれかに記載の一液型エポキシ樹脂塗料組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ウォータースポットの発生を抑え、高濃度であっても塗装作業性を劣化させない一液型のエポキシ樹脂塗料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の課題であるウォータースポットの発生状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
<塗料組成物>
本発明の一液型エポキシ樹脂塗料組成物は、少なくとも、アミン変性エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂およびアクリル変性エポキシ樹脂から選択される少なくとも一種の変性エポキシ樹脂(A)、エポキシエステル樹脂(B)、顔料(C)ならびに溶剤(D)を含む塗料組成物であって、前記塗料組成物に対する前記溶剤(D)の含有量が40質量%以下であることを特徴とする。
【0011】
≪変性エポキシ樹脂(A)≫
本発明の変性エポキシ樹脂とは、硬化剤を使用することなく単独で成膜可能なエポキシ樹脂であって、アミン変性エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂およびアクリル変性エポキシ樹脂から選択される少なくとも一種である。
【0012】
本発明の変性エポキシ樹脂は、市販品として入手することが可能である。例えばEPICLONシリーズ(H−304−40、H−403−45,H−408−40、H−601−55、9052-40MT、H−360、EXA−192、EXA−123、H−353、7070−40K、7070−50M、P−439、H−301−35PX、H−303−45M、H−304−40、EXA−8403、EXA−8415、EXA−8528、EXA−8486)(以上、DIC(株)製変性エポキシ樹脂)、アラキードシリーズ(9201N、9203N、9205、9208、9212)、モデピクス408、KA−1492、KA−1494D、KA−1439A,KA−1435R、KA−1474B、KA−1433J(以上、荒川化学工業(株)製変性エポキシ樹脂)、エポキーシリーズ(810ST、811、813、814、818、861、863、864、871T、872、877、891、878、879)(以上、三井化学(株)製変性エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0013】
これらの変性エポキシ樹脂は、JIS−K−5600−2−2:1999に準じて測定した25℃におけるガードナー粘度がP〜Zのものが好ましく、特にP〜Zであるものが好ましい。またガラス転移温度は、耐湿性向上の観点から20〜80℃であり、25〜80℃であることが好ましく、40〜80℃であることがさらに好ましい。変性エポキシ樹脂は、一種類以上を混合して使用することができる。
【0014】
変性エポキシ樹脂(A)は、塗料組成物の固形分(塗布、乾燥、硬化後に塗膜として機能する成分)の4〜20質量%含有され、好ましくは6〜15質量%である。
【0015】
≪エポキシエステル樹脂(B)≫
本発明のエポキシエステル樹脂(B)とは、エポキシ樹脂のエポキシ基に脂肪酸を反応させて変性したものである。
【0016】
本発明の変性エポキシ樹脂(A)とエポキシエステル樹脂(B)の合計量は、塗料組成物の固形分に対して5〜25質量%であり、10〜20質量%であることが好ましい。変性エポキシ樹脂(A)/エポキシエステル樹脂(B)の質量比率は60/40〜95/5であり、好ましくは70/30〜90/10である。この範囲とすることにより、ウォータースポットの発生を抑制しつつ、塗料固形分を増やしてハイソリッド化を可能とする。
【0017】
≪顔料(C)≫
本発明の顔料(C)としては、体質顔料(C−1)、防錆顔料、着色顔料等が挙げられる。顔料としては、公知の市販品を一種類以上併用して使用することができる。
体質顔料(C−1)としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アルミナ等が挙げられる。体質顔料の吸油量は10〜40ml/gであり、15〜30ml/gが好ましい。
【0018】
防錆顔料としては、例えば、亜鉛粉末、酸化亜鉛、メタホウ酸バリウム、珪酸カルシウム、リン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸亜鉛アルミニウム、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、バナジン酸/リン酸混合顔料等が挙げられる。
【0019】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カーボンブラック、キナクリドンレッド、ナフトールレッド、ベンズイミダゾロンイエロー、ハンザイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ及びジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0020】
本発明の顔料(C)は、顔料全体として塗料組成物の固形分の60〜90質量%含有され、65〜85質量%であることが好ましい。また顔料の各成分として体質顔料(C−1)は顔料(C)の55〜90質量%、好ましくは65〜85質量%、防錆顔料は1〜15質量%、好ましくは5〜10質量%、着色顔料は3〜30質量%、好ましくは5〜20質量%含有させることができる。この範囲とすることにより高濃度な塗料組成物であっても粘度の上昇を抑制することができる。
【0021】
≪溶剤(D)≫
本発明の溶剤(D)としては、例えば、キシレン,エチレングリコールモノ−ノルマルプロピルエーテル, トルエン, メチルイソブチルケトン, イソプロピルアルコール, ブタノール, アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、3−エトキシプロピオン酸エチル等が挙げられる。これらの溶剤としては、公知の市販品を使用できる。
【0022】
本発明の塗料組成物において、溶剤(D)は塗料組成物全体の40質量%以下であり、好ましくは30質量%以下である。
【0023】
≪その他の添加剤≫
本発明の一液型エポキシ樹脂塗料組成物には、塗料組成物として必要な添加剤を適宜使用することができる。例えば、顔料分散剤、消泡剤、タレ防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防黴剤等のような、通常、当業界において、公知慣用のものとなっているような、種々の塗料用添加剤類を、慣用量使用することができる。
【0024】
さらに、本発明の塗料組成物には、本発明の効果に影響のない範囲で性能を改良するという目的で、可塑剤類をはじめ、その他の樹脂類、たとえば、アクリル系共重合体類、繊維素系化合物類、アクリル化アルキド樹脂類、アルキド樹脂類、シリコン樹脂類、フッ素樹脂類またはエポキシ樹脂類などを、適宜、併用することもできる。
【0025】
本発明においては、密着性を向上させるためにエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有させることが好ましい。このエポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等を挙げることができる。このエポキシ樹脂は、本発明の塗料組成物の固形分の2〜7質量%含有させる。
【0026】
<用途>
本発明の一液型エポキシ樹脂塗料組成物は、一般の金属基材に防食性(防錆性)を付与するために用いることもできる。金属基材としては、特に限定されるものではないが、その形状は、例えば板状、シート状、箔状等である。また、該基材を構成する金属としては、鉄鋼、亜鉛めっき鋼、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられ、中でも、鉄鋼が好ましい。
【0027】
更に、上記金属基材としては、各種表面処理、例えば酸化処理が施されてもよい。一例として、アルマイト処理、リン酸塩処理、クロメート処理、ノンクロメート処理等の方法でアルミニウムに酸化処理を施した基材を用いることができる。なお、金属基材には、金属薄膜を表面に備える各種プラスチック基材(その形状は、例えば3次元の構造を持つ筐体及びフィルム等がある)も含まれる。金属の成膜には、蒸着、スパッタ、メッキ法等が利用できる。金属薄膜としては、アルミニウム、錫、亜鉛、金、銀、白金、ニッケル等の金属の薄膜が挙げられる。
【0028】
本発明の一液型エポキシ樹脂塗料組成物から形成される塗膜には、さらに表面性を改善するための塗膜を設けることができる。表面性を改善する塗膜を設けるための塗料としては、例えば、ポリイソシアネートを硬化剤とする2液型ウレタン樹脂塗料やアルキド樹脂塗料等が挙げられる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明について、実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
<1.エポキシエステル樹脂の調製(合成例1)>
【0030】
攪拌機、温度計、還流冷却器、脱水装置及び窒素ガス導入管を備えた反応容器にエポキシ樹脂(jER1001、三菱ケミカル社製)36質量部、大豆油 24質量部、酢酸ブチル 15質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル 12質量部を仕込み、窒素雰囲気下で加熱攪拌し、250℃で酸価が3mgKOH/g以下に達するまで反応を行った後、冷却した。次に、イプゾール100(炭化水素系溶剤混合物、出光興産社製)13質量部を仕込み、目的とするエポキシエステル樹脂溶液(B−1)(不揮発分60質量%)を得た。
【0031】
<2.変性エポキシ樹脂塗料(実施例1)の調製>
容器に、変性エポキシ樹脂溶液(A−1)17.5質量部、エポキシエステル樹脂溶液(B−1)5質量部、エポキシ樹脂溶液(E−1)4質量部、着色顔料6質量部、体質顔料(C−1a)31質量部、体質顔料(C−1b)7質量部、体質顔料(C−1c)5質量部、防錆顔料5質量部、沈降防止剤、消泡剤、表面調整剤 、キシレン14.5質量部、イプゾール100−2質量部を順次仕込み、公知の製造方法により、実施例1の変性エポキシ樹脂塗料1を調製した。
【0032】
<3.変性エポキシ樹脂塗料(実施例2〜4、比較例2,3)の調製>
実施例1の原料配合を、表1の配合に変更する以外は、実施例1と同様の製造方法により、実施例2〜4、比較例2、3の変性エポキシ樹脂塗料(塗料2〜4、6、7)を調製した。
【0033】
<4.エポキシ樹脂塗料(比較例1)の調製>
実施例1の原料配合を、表1の配合に変更する以外は、実施例1と同様の製造方法により、比較例1のエポキシ樹脂塗料(塗料5)を調製した。
【0034】
表1に記載の原料は次の通りである。
1)変性エポキシ樹脂溶液(A−1)(商品名:アラキード9212、荒川化学工業社製、不揮発分40質量%、溶剤成分:キシレン50質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20質量%、シクロヘキサノン20質量%、nブタノール10質量%)
2)変性エポキシ樹脂溶液(A−2)(商品名:KA−1439A、荒川化学工業社製、不揮発分40質量%、溶剤成分:キシレン50質量%、シクロヘキサノン50質量%)
3)変性エポキシ樹脂溶液(A−3)(商品名:KA−1433J、荒川化学工業社、不揮発分40質量%、溶剤成分:キシレン70質量%、シクロヘキサノン30質量%)
4)エポキシエステル樹脂溶液(B−1)(合成例1より調製)
5)エポキシ樹脂溶液(E−1)(三菱化学社製エポキシ樹脂jER834(重量平均分子量530)をキシレンで希釈したもの。キシレン含有量10質量%。)
6)着色顔料(商品名:TITONE R−5N、堺化学工業社製酸化チタン、吸油量20ml/100g)
7)体質顔料(C−1a)(商品名:TF重炭、丸尾カルシウム社製)、炭酸カルシウム、吸油量23ml/100g)、
8)体質顔料(C−1b)(商品名:沈降性硫酸バリウム、堺化学工業社製、吸油量20ml/100g)、
9)体質顔料(C−1c)(商品名:タルクS、日本滑石精錬社製、タルク、吸油量25ml/100g)
10)防錆顔料(商品名:ジンクホスフェートPZ20、SNCZ社製、リン酸亜鉛)
11)沈殿防止剤(商品名:ディスパロン4200−20、楠本化成社製、酸化ポリオレフィン沈殿防止剤、不揮発分20質量%)
12)消泡剤(商品名:フローレンAC300、共栄社化学社製、アクリル系消泡剤、不揮発分77質量%)
13)表面調整剤(商品名:KF−69、信越シリコーン社製、シリコーンオイル系表面調整剤、不揮発分1質量%)
【0035】
<5.塗膜の形成>
ノンクロメート処理を施した亜鉛めっき鋼板上に、上記調製した一液型エポキシ樹脂塗料組成物を、エアースプレーを用いて、乾燥膜厚が25〜35μmとなるように塗装し、80℃で30分間乾燥させて、試験塗膜を形成した。
【0036】
<6.性能評価>
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた樹脂組成物、試験塗膜について、塗装作業性、ウォータースポット性、防錆性、および耐ブロッキング性を次の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0037】
≪塗装作業性の評価≫
専用シンナー(酢酸エチル:トルエン:酢酸ブチル:イソブタノール=25:55:10:10(質量比)の混合溶剤)を用いて、良好に塗装できるよう粘度調整し、乾燥後膜厚が25〜35μmとなるようエアースプレーを用いて塗装を行った場合の塗装作業性を評価した。
○:不揮発分が55質量%を超える状態で粘度調整できた。
△:不揮発分が50〜55質量%の状態で粘度調整できた。
×:不揮発分が50質量%未満の状態で粘度調整できた。
【0038】
≪ウォータースポット性の評価≫
専用シンナーを用いて規定の希釈量に調整し、乾燥後膜厚が25〜35μmとなるようエアースプレーを用いて塗装を行った。塗装後、23℃, 50%RH環境下で5時間静置する。その後塗膜表面にスポイトを用いて1mlのイオン交換水を滴下し、蒸発を防ぐため50ml容量程度のポリカップをかぶせる。滴下して18時間経過後、水滴を除去し塗膜表面に白化等の変色跡が見られるかどうかを確認し、以下の基準で評価した。
○:ウォータースポット跡が全く残らない。
△:ウォータースポット跡がわずかに残る。
×:ウォータースポット跡が著しく残る。
【0039】
≪防錆性の評価≫
耐塩水性試験:試験塗板の表面にカッターナイフでクロスカットを入れた。該試験塗板を35℃で240時間塩水噴霧試験に供し、錆の発生を観察し、カット部からの異常幅を次の基準で評価した。
◎:クロスカット部以外に錆、膨れが認められず、錆はカット部より1mm未満。
○:クロスカット部以外に錆、膨れが認められず、錆はカット部より1〜3mm以内。
×:塗膜全体に錆・フクレが認められる。
【0040】
≪耐ブロッキング性≫
100×100×0.3mmのブリキ板2枚に、専用シンナーを用いて規定の希釈量に調整した塗料組成物を乾燥後膜厚が25〜35μmとなるようエアースプレーを用いて塗装を行った。23℃, 50%RH環境下で30分静置後、2枚の塗装面同士を重ね合わせ、均等になるようにして20kgの荷重(0.2kg/cm)を30分かけた。その後塗板同士をはがし、表面の塗膜の剥がれ、粘着の有無を以下の基準で評価した。
○:剥がれ、粘着なく塗膜表面に跡が残らない。
△:一部に塗膜の剥がれが認められる。
×:塗膜表面の大部分で塗膜の剥がれが認められる。
【0041】
【表1】
【0042】
表1から明らかなように、本発明の一液型エポキシ樹脂塗料組成物では、ウォータースポットが発生しにくく、高濃度であっても塗装作業性に優れ、かつ高い防錆性を有することがわかる。
図1