特許第6766306号(P6766306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6766306荷物運搬車両および荷物運搬車両用のスタンション支持部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6766306
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】荷物運搬車両および荷物運搬車両用のスタンション支持部材
(51)【国際特許分類】
   B60P 7/06 20060101AFI20201005BHJP
   B62D 33/02 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   B60P7/06 Z
   B62D33/02 B
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-209278(P2016-209278)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-69830(P2018-69830A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】501430777
【氏名又は名称】有限会社栄進ボディ工業
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】西口 眞功
【審査官】 森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−019439(JP,U)
【文献】 特開2011−093401(JP,A)
【文献】 特開平09−175263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 7/06
B62D 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台の床面に開口する支持穴にスタンションの基部が挿入されることで該スタンションが該荷台の床上に突出して立設可能とされた荷物運搬車両において、
前記荷台の床の車両前後方向の中間部分において車両幅方向に延びるベース部材が配設されており、該ベース部材の車両幅方向の両側部分に前記支持穴を有する支持部が設けられていると共に、該ベース部材の車両幅方向の中間部分には、前記床面に開口して前記スタンションを車両幅方向に倒した状態で収容する収容溝が設けられていることを特徴とする荷物運搬車両。
【請求項2】
前記荷台の床において車両前後方向に距離を隔てて複数の前記ベース部材が配設されている請求項1に記載の荷物運搬車両。
【請求項3】
前記支持穴に挿入されることで該支持穴の前記床面における開口を覆う蓋部材を備えており、該蓋部材と前記スタンションとが択一的に前記収容溝へ収容可能とされている請求項1又は2に記載の荷物運搬車両。
【請求項4】
前記収容溝に収容されて該収容溝の車両幅方向の長さを調節するスペーサ部材を備えている請求項1〜3の何れか一項に記載の荷物運搬車両。
【請求項5】
前記ベース部材における車両幅方向の中間部分にフック部材が設けられている請求項1〜4の何れか一項に記載の荷物運搬車両。
【請求項6】
荷台の床下を車両前後方向に配設された車両メインフレームに対して、前記ベース部材が載置された状態で支持されている請求項1〜5の何れか一項に記載の荷物運搬車両。
【請求項7】
荷台の床における車両前後方向の中間部分を車両幅方向に延びるように配設されるベース部材を備えており、
該ベース部材の車両幅方向の両側部分には、前記荷台の床面に開口してスタンションの基部が挿入されることにより該スタンションを該荷台の床上に突出して立設せしめる支持穴を有する支持部が設けられていると共に、
該ベース部材の車両幅方向の中間部分には、前記荷台の床面に開口して前記スタンションを車両幅方向に倒した状態で収容する収容溝が設けられていることを特徴とする荷物運搬車両用のスタンション支持部材。
【請求項8】
前記支持穴に挿入されることで、該支持穴の開口を覆う蓋部材を備えており、該蓋部材と前記スタンションとが択一的に前記収容溝へ収容可能とされている請求項7に記載のスタンション支持部材。
【請求項9】
前記収容溝に収容されて該収容溝の車両幅方向の長さを調節するスペーサ部材を備えている請求項7又は8に記載のスタンション支持部材。
【請求項10】
前記ベース部材における車両幅方向の中間部分にフック部材が設けられている請求項7〜9の何れか一項に記載のスタンション支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を運搬するための車両および当該荷物運搬車両の荷台の床上にスタンションを突出状態で支持するスタンションの支持部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、荷物運搬車両の荷台には、車両走行時などに荷物が移動して、荷崩れを起こしたり、荷物同士または荷台の壁部にぶつかるなどして破損したり、荷台から落下したりすることを防止するために、立棒、いわゆるスタンションが設けられている。すなわち、荷台の床上において、スタンションが立設されることにより、当該スタンションと荷物とが当接して、車両走行時などにおける荷物の移動が制限されるようになっている。
【0003】
ところで、一般に、荷物の運搬時などの場合には、かかるスタンションは、スタンションの支持部材に挿入されることで、荷台の床上から突出した状態で支持されるようになっている。すなわち、特開平9−175263号公報(特許文献1)に記載されているように、筒状とされたスタンションの支持部材(ハウジング5)が荷台の床に嵌め入れられるとともに、当該スタンションの支持部材に設けられた凹部にスタンションが挿入されることで、スタンションが荷台の床上から突出した状態で支持されるようになっている。
【0004】
一方、例えば荷物の積込時や荷下ろし時など、スタンションを立設する必要のない場合には、スタンションの支持部材からスタンションを引き抜いて、積込みや荷下ろしの作業を行い易くしている。
【0005】
ところが、従来では、スタンションの非使用時には、支持部材から引き抜いたスタンションを収容するスペースが別途必要であった。また、スタンションの非使用時には、支持部材から引き抜いたスタンションを荷台の床上に置いておくことも考えられるが、スタンションを単に床上に置いておくだけでは、車両走行時にスタンションが移動して、スタンション同士または荷台の壁部にぶつかるなどして、スタンションまたは荷台の壁部が損傷するおそれがあった。なお、スタンションを荷台に固定することも考えられるが、例えば長尺で重量の重いスタンションが複数ある場合などには、荷台の床上に強固に固定することは非常に手間のかかる作業であった。それ故、使用しないスタンションを安定して且つ容易に、良好なスペース効率をもって収容する手段が求められていた。
【0006】
さらに、上記特許文献1では、一本のスタンションに対して一つの支持部材(ハウジング5)が設けられており、スタンションの本数が増えると、支持部材の数が対応して増えることとなり、支持部材の荷台の床への装着も面倒になるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−175263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、非使用時におけるスタンションを安定して、且つ、容易に収容することができると共に、支持部材の取付効率の向上を図ることができる、新規な構造の荷物運搬車両および荷物運搬車両用のスタンションの支持部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0010】
本発明の第1の態様は、荷台の床面に開口する支持穴にスタンションの基部が挿入されることで該スタンションが該荷台の床上に突出して立設可能とされた荷物運搬車両において、前記荷台の床の車両前後方向の中間部分において車両幅方向に延びるベース部材が配設されており、該ベース部材の車両幅方向の両側部分に前記支持穴を有する支持部が設けられていると共に、該ベース部材の車両幅方向の中間部分には、前記床面に開口して前記スタンションを車両幅方向に倒した状態で収容する収容溝が設けられているものである。
【0011】
本態様に従う構造とされた荷物運搬車両によれば、ベース部材に設けられた支持穴にスタンションの基部が挿入されることでスタンションが突出状態で支持される一方、スタンションの非使用時には、スタンションが、ベース部材に設けられた収容溝に、車両幅方向に倒した状態で収容される。それ故、スタンションの非使用時においても、スタンションの収容スペースを別途設けることなく、スタンションが、ベース部材の収容溝に安定して、且つ容易に収容され得る。
【0012】
また、ベース部材には、二つの支持穴が設けられていることから、荷台の床へ支持穴を形成するに際して、スタンションの本数分の支持部材を配設する必要がなく、その半分の数のベース部材を配設するだけでよい。これにより、従来構造の如き一本のスタンションが一つの支持部材に挿入される場合に比べて、荷台の床への支持穴の形成効率(支持部材の取付効率)が向上され得て、ひいては、スタンションの立設および収容を容易に可能とする荷物運搬車両が効率的に製造され得る。
【0013】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る荷物運搬車両において、前記荷台の床において車両前後方向に距離を隔てて複数の前記ベース部材が配設されているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた荷物運搬車両によれば、車両前後方向に距離を隔てて複数のベース部材が配設されていることから、多数の支持穴が、荷台の床に効率的に形成されて、これにより、荷台に多数の支持穴を有する荷物運搬車両の製造も容易とされ得る。
【0015】
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様に係る荷物運搬車両において、前記支持穴に挿入されることで該支持穴の前記床面における開口を覆う蓋部材を備えており、該蓋部材と前記スタンションとが択一的に前記収容溝へ収容可能とされているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた荷物運搬車両によれば、蓋部材とスタンションとが択一的に収容溝へ収容可能とされていることから、スタンションの使用時(立設時)には、蓋部材が収容溝に収容されるようになっている一方、スタンションの非使用時には、蓋部材が支持穴に挿入されるようになっている。これにより、スタンションの使用時と非使用時の何れにおいても支持穴と収容溝とが覆蓋されて、スタンションの使用時または非使用時に、床面の開口が閉鎖されるか、または支持穴や収容溝の開口量が小さくされる。この結果、スタンションの使用時に収容溝に荷物が入り込むことや、スタンションの非使用時に作業者が支持穴でつまづくことなどが効果的に防止されて、より荷物を安定して固定できたり作業者の安全が図られたりする荷物運搬車両が提供され得る。
【0017】
本発明の第4の態様は、前記第1〜第3の何れかの態様に係る荷物運搬車両において、前記収容溝に収容されて該収容溝の車両幅方向の長さを調節するスペーサ部材を備えているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた荷物運搬車両によれば、収容溝の車両幅方向の長さを調節するスペーサ部材が設けられていることから、スタンションの使用時や非使用時において、床面に開口が形成されることがより確実に回避、または開口量が一層小さくされた荷物運搬車両が提供され得る。
【0019】
本発明の第5の態様は、前記第1〜第4の何れかの態様に係る荷物運搬車両において、前記ベース部材における車両幅方向の中間部分にフック部材が設けられているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた荷物運搬車両によれば、ベース部材における車両幅方向の中間部分にフック部材が設けられていることから、当該フック部材にロープやワイヤを取り付けることで、これらのロープやワイヤを利用して、荷物をより安定して固定することができる。特に、フック部材がベース部材に設けられていることから、車両へのフック部材の取付作業も容易とされて、フック部材を備えた荷物運搬車両が、より容易に製造され得る。
【0021】
本発明の第6の態様は、前記第1〜第5の何れかの態様に係る荷物運搬車両において、荷台の床下を車両前後方向に配設された車両メインフレームに対して、前記ベース部材が載置された状態で支持されているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた荷物運搬車両によれば、ベース部材が、車両メインフレームに対して載置された状態で支持されていることから、例えば荷物がスタンションに大きな衝撃をもって打ち当たったとしても、車両によるベース部材の支持状態が安定して維持されて、ベース部材の脱落などが効果的に防止され得る。
【0023】
本発明の第7の態様は、荷台の床における車両前後方向の中間部分を車両幅方向に延びるように配設されるベース部材を備えており、該ベース部材の車両幅方向の両側部分には、前記荷台の床面に開口してスタンションの基部が挿入されることにより該スタンションを該荷台の床上に突出して立設せしめる支持穴を有する支持部が設けられていると共に、該ベース部材の車両幅方向の中間部分には、前記荷台の床面に開口して前記スタンションを車両幅方向に倒した状態で収容する収容溝が設けられていることを特徴とする荷物運搬車両用のスタンション支持部材である。
【0024】
本態様に従う構造とされたスタンション支持部材によれば、スタンションの突出状態での支持とスタンションの収容とが選択的に実現される。それ故、スタンションの収容スペースを別途設けることがなく、また、スタンションを安定、且つ容易に収容することができる。さらに、従来構造のスタンション支持部材では、一本のスタンションにつき一つの支持部材が必要であったが、本態様に係るスタンション支持部材を採用することにより、支持部材の数を減少させられることから、支持部材の取付効率の向上が図られ得る。
【0025】
本発明の第8の態様は、前記第7の態様に係るスタンション支持部材において、前記支持穴に挿入されることで、該支持穴の開口を覆う蓋部材を備えており、該蓋部材と前記スタンションとが択一的に前記収容溝へ収容可能とされているものである。
【0026】
本態様に従う構造とされたスタンション支持部材によれば、スタンションの使用時には収容溝が蓋部材で覆蓋される一方、スタンションの非使用時には支持穴が蓋部材で覆蓋される。すなわち、かかる蓋部材を設けることで、スタンションの使用時や非使用時における収容溝や支持穴の開口が覆蓋されて、荷物の運搬時において荷物が収容溝に入り込むことや、荷物の非運搬時において作業者が支持穴でつまづくことなどが効果的に防止され得る。特に、蓋部材を収容溝に収容することで蓋部材の収容スペースも別途設ける必要がなく、収容溝のスペースを巧く利用することができる。
【0027】
本発明の第9の態様は、前記第7又は第8の態様に係るスタンション支持部材において、前記収容溝に収容されて該収容溝の車両幅方向の長さを調節するスペーサ部材を備えているものである。
【0028】
本態様に従う構造とされたスタンション支持部材によれば、収容溝の車両幅方向の長さを調節するスペーサ部材を備えていることから、スタンションの使用時や非使用時における収容溝の開口が覆蓋されて、荷物の運搬時において荷物が収容溝に入り込むことや、荷物の非運搬時において作業者が収容溝につまづくことなどが一層確実に防止され得る。
【0029】
本発明の第10の態様は、前記第7〜第9の何れかの態様に係るスタンション支持部材において、前記ベース部材における車両幅方向の中間部分にフック部材が設けられているものである。
【0030】
本態様に従う構造とされたスタンション支持部材によれば、ベース部材にフック部材が設けられていることから、ベース部材と共にフック部材を車両に配設することができる。そして、例えば、かかるフック部材にロープやワイヤなどを取り付けることで、荷物を一層安定して固定することも可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に従う構造とされた荷物運搬車両およびスタンション支持部材によれば、非使用時におけるスタンションをベース部材に設けられた収容溝に収容することができることから、スタンションの収容スペースを別途設ける必要がなく、スタンションを安定して、且つ容易に収容することができる。また、ベース部材の車両幅方向両側部分にスタンションの支持部が設けられることから、従来構造とされたスタンションの支持部材よりも支持部材の数を減少させることができて、スタンションの支持部材の取付効率の向上が図られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の1実施形態としての荷物運搬車両をスタンションの突出状態で示す側面図。
図2図1に示された荷物運搬車両の平面図。
図3図1に示された荷物運搬車両の荷台においてスタンション支持部材(ベース部材)が配設された状態を説明するための説明図。
図4図1に示された荷物運搬車両を構成するスタンション支持部材を説明するための斜視説明図。
図5図1に示された荷物運搬車両を構成するスタンション支持部材をスタンションの突出状態で示す縦断面図。
図6図5に示されたスタンション支持部材をスタンションの収容状態で示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0034】
先ず、図1,2には、本発明の1実施形態としてのスタンション支持部材を備えた荷物運搬車両10が示されている。この荷物運搬車両10は、荷台12を備えており、複数のスタンション14が荷台12の床面16から突出した状態で立設されることで、荷台12上に載置された荷物の移動や荷崩れが防止されるようになっている。なお、以下の説明において、車両前後方向とは、図1中の左右方向をいう一方、車両幅方向とは、図2中の上下方向をいう。
【0035】
より詳細には、荷物運搬車両10は、車両シャシーを構成する、車両前後方向に延びる一対の車両メインフレーム18,18を備えており、これら車両メインフレーム18,18が車両幅方向で相互に離隔して設けられている。そして、これら車両メインフレーム18,18上には、車両幅方向に延びる複数の横根太20が溶接やボルトなどにより固定的に取り付けられており、これら複数の横根太20が、車両前後方向で相互に離隔して設けられている。さらに、これらの横根太20上には、車両前後方向に延びる1枚または複数枚の床板22が張り渡されており、当該床板22により荷台12の床が構成されるとともに、床板22の上面により前述の荷台12の床面16が構成されている。換言すれば、荷台12の床下に、車両メインフレーム18,18および横根太20が配設されている。
【0036】
また、荷台12の車両幅方向両側には、荷台12の端縁部分を車両前後方向に延びる側あおり24,24が上方への突出状態で設けられており、本実施形態では、車両幅方向両側のそれぞれにおいて、複数枚の側あおり24が連結部26により連結されている。一方、荷台12の車両後方には、後あおり28が上方への突出状態で設けられている。そして、これら床板22、側あおり24、後あおり28を含んで荷台12が構成されている。即ち、荷台12は、フロントパネル30と左右の側あおり24,24と後あおり28で外周を囲まれた矩形の床構造とされている。なお、これら側あおり24,24および後あおり28は、下端縁部において蝶番構造で横根太20へ連結されて、積荷や荷下ろし等の荷役作業に際して、床の端縁から下方へ垂れ下がるようにして回動可能とされており、荷役作業時に下方へ回動させることでスムーズな荷役作業が実現可能となっている。
【0037】
ここにおいて、床板22には、上下方向に貫通する矩形の貫通孔32が設けられている。かかる貫通孔32は、荷台12の車両前後方向中間部分における車両幅方向中央部分において、即ち車両幅方向両端縁部から幅方向中央に向かって所定距離離れた位置において、車両幅方向に延びて形成されており、本実施形態では複数(8つ)の貫通孔32が、車両前後方向で相互に離隔して形成されている。
【0038】
図3に示されるように、これらの貫通孔32には、図4,5に示されるスタンション支持部材34が嵌め込まれている。このスタンション支持部材34は、平面視において貫通孔32と略同じ大きさの矩形状とされたベース部材36を含んで構成されている。なお、本実施形態では、ベース部材36の長さ方向寸法(車両幅方向寸法)がおよそ1064mm、幅方向寸法(車両前後方向寸法)がおよそ111mmとされている。
【0039】
なお、ベース部材36の長さ方向両端部分(車両への装着状態では車両幅方向両側部分)には、スタンション14の基部(長さ方向一方の端部)38が挿入される支持穴40,40を有する支持部42,42が設けられており、図5では、支持穴40,40にスタンション14,14の基部38,38が挿入されて、スタンション14,14が上方へ突出せしめられた状態が示されている。
【0040】
この支持部42,42は、有底筒形状とされており、長さおよび幅方向寸法よりも高さ寸法が大きくされた縦長の形状とされている。本実施形態では、支持部42,42の高さ寸法が、およそ176mmとされている。また、本実施形態では、スタンション14,14の断面形状が100mm×100mmの略正方形状とされており、支持穴40,40の形状もスタンション14,14の断面形状に対応する大きさの、略正方形状とされている。さらに、支持穴40,40の深さ寸法はおよそ170mmとされている。
【0041】
一方、ベース部材36の長さ方向中間部分(車両幅方向中間部分)には、支持部42,42を相互に接続する接続部44が設けられている。この接続部44は、上方に開口する凹溝状とされており、車両幅方向に延びる底壁部46と、当該底壁部46の幅方向両側(車両前後方向両側)から上方に突出する一対の側壁部48,48を備えている。そして、これら底壁部46と一対の側壁部48,48とにより、ベース部材36には、両端の支持部42,42を除く全長に亘って延びる凹溝50が形成されている。かかる凹溝50の断面寸法は、開口幅がスタンション14,14や支持穴40,40の幅寸法と等しく100mmとされており、深さ寸法がおよそ123mmとされている。また、接続部44の底壁部46には、上下方向で貫通する貫通孔52が1つまたは複数設けられており、本実施形態では、3つの貫通孔52が、底壁部46の長さ方向で相互に離隔して形成されている。かかる貫通孔52を設けることにより、荷台12やスタンション支持部材34に浸水した水が効果的に排出され得る。
【0042】
なお、これら支持部42,42は、鉄やアルミニウム合金などの金属や硬質の合成樹脂などにより形成されることが好適であり、例えばスタンション14,14の挿入時にスタンション14,14が下方に抜け落ちないように下側開口部の少なくとも一部を閉塞したパイプ鋼材などが好適に採用され得る。また、接続部44も、鉄やアルミニウム合金などの金属や硬質の合成樹脂などにより形成されることが好適であり、例えばチャンネル鋼などの鋼材が好適に採用され得る。そして、これら支持部42,42と接続部44とは、上面が揃えられた状態で、即ち支持部42,42の下端が接続部44よりも下方に突出した状態で、例えば溶接や接着などによって好適に固定され得る。
【0043】
さらに、凹溝50の内部には、一対の蓋部材54,54が車両幅方向に倒した状態で収容されている。蓋部材54,54は、スタンション14,14および支持穴40,40と同じ正方形状の断面を有する直方体形状とされている。また、蓋部材54,54の長さ方向寸法(凹溝50への収容状態では、車両幅方向寸法)は、支持穴40,40の深さ寸法と等しくおよそ170mmとされている。
【0044】
更にまた、凹溝50の内部には、凹溝50の長さ方向寸法(車両幅方向寸法)を調節するスペーサ部材56,56が収容されている。当該スペーサ部材56,56は、スタンション14,14や蓋部材54,54と同じ100mm×100mm正方形状の断面を有すると共におよそ49mmの高さ寸法を有する直方体形状とされている。
【0045】
なお、これらスタンション14,14や蓋部材54,54、スペーサ部材56,56は、それぞれ鉄やアルミニウム合金などの金属製または硬質の合成樹脂製とされており、例えば中空の直方体状とされている。具体的には、押出型材である中空の角パイプを適切な長さで切断して、その少なくとも一端に対して板状体を固着した中空構造体とされている。そして、これらスタンション14,14や蓋部材54,54、スペーサ部材56,56の長さ方向端面や側面の何れか少なくとも1つの面に、外部と内部を連通する1つまたは複数の貫通孔58が形成されている。
【0046】
さらに、本実施形態では、ベース部材36の長さ方向(車両幅方向)中央部分にフック部材60が設けられている。このフック部材60はチャンネル鋼などからなる保持部62にフック本体64が取り付けられた構造とされている。すなわち、フック本体64は、中実のロッド形状を曲げ成形して略門形状とされており、フック本体64の両脚部分が、チャンネル鋼(保持部62)の上底壁66に設けられた貫通孔68,68に対して、チャンネル鋼の外部から内部へと挿入されている。そして、チャンネル鋼(保持部62)の内部において、フック本体64の両脚部分の各先端近くに対して貫通孔68,68より大きいナット70,70が螺着されることで、保持部62からのフック本体64の抜出しが防止されているとともに、フック本体64が保持部62に対して上下方向で移動可能とされている。
【0047】
かかるフック部材60の長さ方向寸法(チャンネル鋼の凹溝の延びる方向の寸法であって、車両前後方向寸法)は、凹溝50の幅寸法と等しくおよそ100mmとされており、チャンネル鋼の上底壁66が凹溝50の開口部を覆蓋するように、フック部材60が凹溝50の長さ方向中央部分に嵌め入れられて、保持部62と接続部44とが溶接などにより固定されている。なお、フック部材60の幅方向寸法(車両幅方向寸法)はおよそ136mmとされている。
【0048】
このように、凹溝50の長さ方向中央部分にフック部材60が固着されることにより、凹溝50がフック部材60を挟んだ両側で分断されている。すなわち、凹溝50の長さ方向(車両幅方向)両側縁部から中央部分に向かっては、所定の長さで車両幅方向に延びて、非使用時のスタンション14,14などが収容される収容溝72,72が形成されている。なお、図5に示されるスタンション14,14の突出支持状態では、一対の蓋部材54,54および一対のスペーサ部材56,56が、凹溝50における収容溝72,72に収容されている。特に、スペーサ部材56,56が収容溝72,72に収容されることで、スペーサ部材56,56が、凹溝50における収容溝72,72の長さ方向(車両幅方向)の寸法を調節するようになっている。
【0049】
なお、凹溝50においてフック部材60を挟んだ長さ方向両側部分に位置する収容溝72,72には、高さ寸法調節部材74,74が、接続部44の底壁部46上に載置されている。この高さ寸法調節部材74,74は、シート状または板状とされており、ゴムや発泡性の合成樹脂などにより好適に形成され得る。本実施形態では、廃プラスチック(ハイプラ)から成形されたすのこ状の構造とされており、荷台12や収容溝72,72に浸水した水の排水が促進されるようになっている。なお、本実施形態では、かかる高さ寸法調節部材74の厚さ寸法がおよそ20mmとされている。
【0050】
以上の如き構造とされたスタンション支持部材34が、一対の車両メインフレーム18,18上に載置されて固定的に支持されている。具体的には、ベース部材36の接続部44が、一対の車両メインフレーム18,18上に位置しており、両側の支持部42,42が、車両メインフレーム18,18よりも車両幅方向外方に位置している。そして、かかるスタンション支持部材34が、車両幅方向に延びる横根太20に対して、車両前後方向で隣接して配設されており、これら車両メインフレーム18,18および横根太20に対して固定されている。なお、固定手段は限定されるものではなく、溶接により固定されることが好適であるが、ボルト固定やリベットによる固定であってもよい。
【0051】
さらに、かかるスタンション支持部材34は、荷台12の床(床板)22に形成された貫通孔32と位置合わせされており、当該貫通孔32に嵌め入れられている。そして、荷台12の床面16とスタンション支持部材34の上面とが同一平面上に位置しており、支持穴40,40および凹溝50(収容溝72,72)が荷台12の床面16に開口している。
【0052】
そして、支持穴40,40にスタンション14,14の基部38,38が挿入されることで、図5に示されるように、スタンション14,14が床面16からの突出状態で支持されるようになっている。なお、本実施形態では、スタンション14の長さ寸法が300mmとされており、支持穴40,40に挿入されることで、スタンション14,14が床面16から130mm突出するようになっている。
【0053】
このように、スタンション14,14を床面16からの突出状態で支持することにより、荷台12上に載置した荷物の移動や荷崩れが効果的に防止され得る。特に、本実施形態では、スタンション支持部材34(ベース部材36)の長さ方向(車両幅方向)中間部分にフック部材60が設けられており、フック本体64にロープやワイヤを取り付けることも可能であり、これらロープやワイヤを利用することにより、荷物を一層安定して荷台12上に固定することができる。なお、フック本体64を保持部62の上底壁66から引き出さない状態では、フック本体64の上面が荷台12の床面16と略同じ位置にあるか僅かに下方に位置しており、フック部材60上にも荷物を載置することが可能である。
【0054】
また、かかるスタンション14,14の突出状態では、収容溝72,72内の高さ寸法調節部材74上に、蓋部材54,54とスペーサ部材56,56が収容載置されている。このように、高さ寸法調節部材74上に蓋部材54,54やスペーサ部材56,56を載置することで、これら蓋部材54,54やスペーサ部材56,56の上面が荷台12の床面16と揃えられることから、収容溝72,72による開口面積が小さくされて、収容溝72,72上にも安定して荷物を載置することができる。尤も、スタンション14,14を立設させた状態では、積荷が荷台12に載荷されており、かかる積荷によって荷台12の床面16に開口した収容溝72,72が略覆われることから、収容溝72,72において蓋部材54,54とスペーサ部材56,56を入れた残りの部分が開口して残っていても、それが大きな問題になることはない。すなわち、例えばスペーサ部材56,56は、図5に示されるように、倒した状態で収容溝72,72内に収容されてもよい。
【0055】
一方、荷下ろし後は、スタンション14,14を支持穴40,40から引き抜くとともに、蓋部材54,54を収容溝72,72から取り出す。そして、図6に示されるように、支持穴40,40に蓋部材54,54を挿入することで支持穴40,40の床面16における開口が覆蓋されるとともに、収容溝72,72にスタンション14,14を車両幅方向に倒した状態で収容することで収容溝72,72の床面16における開口が覆蓋される。すなわち、スタンション14,14の使用と非使用に応じて、スタンション14,14の何れか一方が支持穴40,40へ挿入されるとともに、何れか他方が収容溝72,72へ収容されるようになっている。
【0056】
特に、スタンション14,14の非使用時には、収容溝72,72が、一対のスタンション14,14と一対のスペーサ部材56,56とで収容溝72,72の長さ方向(車両幅方向)で略隙間なく覆蓋されるとともに、支持穴40,40が一対の蓋部材54,54で覆蓋される。したがって、スタンション14,14や蓋部材54,54が収容溝72,72や支持穴40,40から突出することがないことから、荷台12の床面16が略全面に亘って平坦面とされて、スタンション14,14の非使用時において、作業者が隙間や突出部分でつまづくなどのおそれが回避され得る。なお、スタンション14,14や蓋部材54,54の収容溝72,72や支持穴40,40からの取出しは、スタンション14,14や蓋部材54,54の上底面や側壁面などに設けられた貫通孔58に、手指などを引っ掛けることで容易に実現され得る。
【0057】
以上の如きスタンション支持部材34を備えた荷物運搬車両10によれば、スタンション14,14の非使用時に、スタンション14,14を荷台12の床面16に開口した収容溝72,72に収容できることから、スタンション14,14の収容スペースを別途設けることがなく、スタンション14,14を安定して、且つ容易に収容することができる。
【0058】
また、一つのスタンション支持部材34を配設することで、二本のスタンション14,14を支持することが可能となり、従来構造に比べて、スタンションの支持部材の数を減少させることができて、スタンション支持部材34の取付効率の向上が図られ得る。特に、本実施形態のように、多数本のスタンション14を設ける場合には、取付効率向上の効果がより有利に享受され得る。
【0059】
さらに、スタンション14,14の使用時には、蓋部材54,54が収容溝72,72に収容されることから、収容溝72,72上にも荷物を載置することができて、荷物の収容溝72,72への入り込みが防止され得る。一方、スタンション14,14の非使用時には、蓋部材54,54が支持穴40,40へ挿入されて支持穴40,40が覆蓋されることから、作業者が支持穴40,40でつまづくなどのおそれも効果的に低減され得る。
【0060】
特に、スペーサ部材56,56を設けることで、スタンション14,14の非使用時における収容溝72,72の開口を略全長に亘って覆蓋することができて、収容溝72,72の開口で作業者がつまづくなどのおそれが一層低減され得る。
【0061】
また、スタンション支持部材34の中間部分には、フック部材60が設けられており、フック本体64にロープやワイヤを取り付けることで、当該ロープやワイヤにより、荷物をより安定して固定することも可能となる。
【0062】
更にまた、スタンション支持部材34が、車両メインフレーム18,18および横根太20に溶接により強固に固定されていることから、例えば荷物がスタンション14に打ち当たる衝撃がスタンション支持部材34に及ぼされたとしても、車両からスタンション支持部材34が脱落することが効果的に防止され得る。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0064】
たとえば、前記実施形態では、凹溝50の長さ方向(車両幅方向)中央部分にフック部材60が設けられることで、凹溝50が二分されて、凹溝50においてフック部材60を挟んだ両側が収容溝72,72とされていたが、かかる態様に限定されるものではない。たとえば、フック部材を設けなかったり、フック部材を凹溝の長さ方向端部に設けることで、凹溝が分割されることなく、収容溝を連続した長い一つの溝形状とすることができる。それ故、前記実施形態では、スタンション14,14や蓋部材54,54が、両側の収容溝72,72に一つずつ収容されていたが、長い一つの収容溝に対して、スタンションや蓋部材を直列的に並べて収容してもよい。
【0065】
それに加えて、前記実施形態では、ベース部材36における接続部44の長さ方向(車両幅方向)の全長に亘って凹溝50が形成されていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、接続部において全長に延びる凹溝は必須なものではなく、非使用時におけるスタンションを収容するための収容溝があればよい。
【0066】
また、スタンションや蓋部材の断面形状は矩形に限定されるものではなく、例えば円形などであってもよい。さらに、支持穴や収容溝の断面形状は、スタンションや蓋部材に合わせて、または合わせることなく、円形などであってもよい。
【0067】
なお、本発明において、蓋部材、スペーサ部材、フック部材は必須なものではない。
【0068】
また、前記実施形態中に記載した各部材の寸法は、車両の大きさや構造、積荷なども考慮して、例えば要求されるスタンションの高さや強度、大きさ、数などは適宜に設定することが可能であり、その他のベース部材の各部位の寸法も含めて、各部材の寸法は何等限定されるものではない。
【0069】
さらに、スタンションの立設時において、例えば凹溝や収容溝の開口の全体を覆う蓋体を別途準備してもよい。かかる蓋体は薄肉のプレートで構成されることから、スタンションの収容溝への収容時であっても、蓋体の収容スペースを大きく確保する必要がなく、また、例えば荷台への固定も容易とされ得る。
【符号の説明】
【0070】
10:荷物運搬車両、12:荷台、14:スタンション、16:床面、18:車両メインフレーム、22:床板(床)、34:スタンション支持部材、36:ベース部材、38:基部、40:支持穴、42:支持部、54:蓋部材、56:スペーサ部材、60:フック部材、72:収容溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6