特許第6766379号(P6766379)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6766379
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】乾燥装置および乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 13/10 20060101AFI20201005BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20201005BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20201005BHJP
   B05C 9/14 20060101ALN20201005BHJP
【FI】
   F26B13/10 C
   B05D3/04 Z
   B05D7/00 A
   !B05C9/14
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-42493(P2016-42493)
(22)【出願日】2016年3月4日
(65)【公開番号】特開2017-156068(P2017-156068A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】井手 敬治
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−056840(JP,A)
【文献】 特開2008−298315(JP,A)
【文献】 特開2000−329463(JP,A)
【文献】 特開2015−059734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B1/00−25/22
B05C1/00−21/00
B05D1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの一方の面に気流を吹き付けるノズルと、前記シートの端部近傍に位置し前記シートの反対面への前記気流の回り込みを低減する遮風壁と、を有し、
前記遮風壁が、開口部を有し、
前記開口部の面積が前記シートから離間する方向に漸増している
とを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記遮風壁が、前記シートの端部近傍から前記シートと離間する方向に延伸する板形状を有することを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記シートと離間する方向が、前記一方の面から前記一方の面と反対の面に向かう方向であることを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記開口部が複数に分割されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項5】
シートの第1の面に塗布膜を形成し、
前記第1の面と反対面に当たる第2の面に気流を吹き付け、
前記シートの端部近傍に前記第の面への前記気流の回り込みを低減する遮風壁を配置し、
前記遮風壁は、開口部を有し、前記開口部の面積が前記シートから離間する方向に漸増している
とを特徴とする塗布膜の乾燥方法。
【請求項6】
前記遮風壁が、前記シートの幅方向端部近傍から前記シートと離間する方向に延伸する板形状を有することを特徴とする請求項に記載の塗布膜の乾燥方法。
【請求項7】
前記シートと離間する方向が、前記第の面から前記第の面に向かう方向であることを特徴とする請求項に記載の塗布膜の乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置および乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シートに液状の塗布膜を形成し、乾燥して膜を形成する技術がある。このような成膜技術で均一な膜を得るためには、まず厚さの均一な塗布膜を形成すると同時に乾燥を均一に行うことが重要である。
【0003】
代表的な乾燥装置に、気流乾燥装置がある。気流乾燥装置には、塗布膜に直接気流を吹き付ける装置と、塗布膜の形成されていない裏面に気流を吹き付ける装置がある。ここで、前者を表面気流乾燥装置、後者を裏面気流乾燥装置と呼称することとする。
【0004】
表面気流乾燥装置には、乾燥効率が高いという利点がある。一方で、塗布膜の表面だけが乾燥して内部が乾燥していない表面皮膜の状態になりやすい、乾燥が急激なため気泡が発生しやすい、といった問題点がある。裏面気流乾燥装置は、この問題を解決する。しかしながら、裏面気流乾燥装置にも、シートの端部から気流が塗布膜形成面に回り込み、端部が速く乾燥して、均一性が悪化するという問題がある。
【0005】
上記の問題を解決する乾燥装置の技術が、例えば特許文献1に開示されている。図10は、この乾燥装置を示す断面図である。乾燥装置は、塗布膜101が形成されたシート102の裏面に温風103を吹き付ける吹き出しノズル104を有している。そして、気流をシート102の幅よりも狭い範囲に限定してシートの裏面に吹き付けるための衝立板105を、吹き出しノズル104の両端に設置している。特許文献1では、温風を吹き付ける範囲を、塗布膜の幅の80%以上、100%以下とし、シート102の中心線に対して左右対称とすることが望ましいとしている。上記の構成とすることにより、シート102の端部から塗布膜形成面へ回り込む温風がなくなるため、塗布膜の乾燥の均一性が確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−56840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術には、塗布膜の端部に歪を生じるという問題点があった。この技術では、シートの、温風吹き付け範囲内に位置する部分は温められ、温風吹き付け範囲外に位置する部分は温められない。このため、両部分の間には、温度差に応じた膨張量もしくは収縮量の差を生じる。この差は、両者の境界に位置する塗布膜の端部近傍に歪を生じさせる。すなわち、乾燥後の塗布膜には歪が固定化されることとなる。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、塗布膜を歪なく均一に乾燥する乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の乾燥装置は、シートの一方の面に気流を吹き付けるノズルと、シートの端部近傍に位置し、シートの反対面への気流の回り込みを低減する遮風壁とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果は、塗布膜を歪なく均一に乾燥する乾燥装置を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態を示す断面図である。
図2】第1の実施形態を示す側面図である。
図3】第2の実施形態を示す断面図である。
図4】一般的な乾燥装置を示す断面図である。
図5】第3の実施形態を示す断面図である。
図6】第4の実施形態を示す断面図である。
図7】第5の実施形態の一例を示す断面図である。
図8】第5の実施形態の別の例を示す断面図である。
図9】第6の実施形態を示す断面図である。
図10】第6の実施形態の遮風壁の具体例を示す平面図である。
図11】特許文献1の乾燥装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお各図面の同様の構成要素には同じ番号を付し、説明を省略する場合がある。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態を示す断面図である。乾燥装置は、シート1の一方の面に気流2を吹き付ける吹き出しノズル3と、シート1の両側端部近傍に位置し、シートの反対面への気流2の回り込みを低減する遮風壁4とを有する。ここで、回り込みを低減するとは、回り込んだ気流が乾燥に影響を与えない程度まで、気流2の回りこみ風量を減少させることであるとする。
【0014】
図2は、図1の乾燥装置でシート1が紙面に垂直な方向に進行する場合に、シート進行方向5に対し垂直な方向、すなわち横方向から乾燥装置を見たときの側面図である。遮風壁4は、少なくとも吹き出しノズル3の気流吹き出し範囲をカバーする幅を持つようにする。例えば、遮風壁4を吹き出しノズル3よりも少し大きめにしておく。なお図2では、ロール・ツー・ロール方式を用いた場合の、送り出しロール6と巻き取りロール7の配置も例示している。
【0015】
上記の構成とすることにより、気流をシートの一面に均一に吹き付けつつ、回りこみ風量を低減することができる。このため、シートを歪無く均一に乾燥する乾燥装置を提供することができる。
【0016】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態を示す断面図である。乾燥装置は、シート10の片面に気流20を吹き付ける吹き出しノズル30と、シート10の端部近傍からノズルと反対の方向に延伸する板形状の遮風壁40とを有している。シート10の片面には塗布膜50が形成されている。ロール・ツー・ロール方式を用いる場合、シート10は紙面と垂直な方向に進行するものとする。すなわちロール・ツー・ロール方式の場合、図3はシートの幅方向の断面図を表している。なお、図示はしていないが、紙面と垂直な方向では、遮風壁40は吹き出しノズル30の気流吹き出し範囲をカバーする幅を持っている。
【0017】
乾燥装置は、塗布膜形成面(以降、表面とも呼称する)と反対の面(以降、裏面とも呼称する)に気流20を吹き付けて、塗布膜50を乾燥する。塗布膜50が例えば有機溶媒を含む樹脂や熱硬化性樹脂であれば、気流20として、室温より温度の高い熱風を用いることができる。このような場合、熱風によりシート10が加熱され、シート10の熱が塗布膜50に伝播し塗布膜50が乾燥する。ただし、本実施形態では気流20の温度は任意である。
【0018】
ここで比較のため、遮風壁40のない乾燥装置、すなわち一般的な乾燥装置を用いた乾燥について説明する。図4は、上記の一般的な乾燥装置を示す断面図である。乾燥装置は吹き出しノズル30から吹き出した気流20を、塗布膜50が形成されたシート10の裏面に吹き付ける。気流20は、シート10の幅方向端部近傍では、図4に20aの矢印で示すように、シート10の表面に回り込む。このように回り込む気流20aの作用により、塗布膜50の幅方向端部近傍は、幅方向中央部よりも早く乾燥する。
【0019】
一方、図3に示す本実施形態の乾燥装置では、遮風壁40によりシート10の幅方向端部に吹き付けられた気流の大部分が、遮風壁40の外側に誘導され、気流20のシート10表面への回り込みが抑制される。そのために、遮風壁40は、シート10には接触しない範囲で、シート10の幅方向端部の近傍に配置する。具体的には、シート10と遮風壁40の間に、例えば1から10mm程度の間隔ができるようにする。このような間隔を設けるのは、シート10が走行したときに、遮風壁40とシート10とが接触しないようにするためである。したがって、シート10のブレ幅に応じて調整すればよい。
【0020】
このような配置にすると、一部の気流20はシート10と遮風壁40との隙間から表面側に抜ける。図2ではこれを点線矢印で示している。しかしながら、この気流は遮風壁40が無い場合に比べ風量が大幅に減少する。またコアンダ効果により、遮風壁40に沿って進む成分も生じる。その結果、気流20の回り込みよる塗布膜50端部の過剰な乾燥が抑制され、均一性が確保される。また、シート10全体に均一に気流が吹き付けられるため、乾燥後の塗布膜50に特許文献1のような歪が発生しない。
【0021】
以上説明したように、本実施形態によれば、塗布膜を歪なく均一に乾燥する乾燥装置を構成することができる。
【0022】
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、遮風壁をシートの端部近傍から吹き出しノズルと反対側に延伸した形状としたが、違う向きに延伸しても同様の効果を得ることができる。図5はそれを実現する乾燥装置の一例を示す断面図である。図5の例では、遮風壁41が、シート10の端部近傍からシート10の面と略平行となる方向に延伸した形状を有している。
【0023】
遮風壁41をこのような形状と配置とすると、シート10の端部に吹き付けられた気流20は、その大部分が遮風壁41の外側端を通り、遮風壁41の表面に回りこむように進行する。この様子を、図5では20bの矢印で示している。この場合、一般的な乾燥装置と同様に、表面側への気流の回り込みが生じているが、塗布膜50の端部から距離が離れているため、塗布膜50の乾燥には影響しない。また、気流20の一部は、シート10と遮風壁41との隙間を通過する。図5では、この気流を点線矢印で示している。しかしながら、この気流は遮風壁40が無い場合に比べ風量が大幅に減少する、このため気流20の回り込みによる塗布膜50端部の過剰な乾燥を抑制することができる。
【0024】
次に遮風壁のサイズについての具体例を説明する。例えば、乾燥条件として気流20の温度を80℃、風速を25m/sとした場合、遮風壁41のシート10の外側方向に延伸する長さは、10cm程度にすれば、気流20の回り込みが、塗布膜50の乾燥に影響を及ぼさないようにすることができる。そして、これより風速が小さい場合は、遮風壁41の長さは、より短くてよく、風速が大きければ、遮風壁41の長さを長くするように調整すればよい。またシート10と遮風壁41との間隔は、シート10が遮風壁41に接触しない程度にする。具体的には、通常の精度を持つ装置であれば、1から10mm程度などとすることができる。なお上記の説明では、遮風壁の延伸方向をシートの面と略平行とし、第2の実施形態ではシートの面と略垂直としたが、これ以外の方向としても同様の効果を得ることが可能である。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、第2の実施形態と同様に、塗布膜を歪なく均一に乾燥する乾燥装置を構成することができる。
【0026】
(第4の実施形態)
遮風壁を吹き出しノズル側のシートの端部近傍からシートの外方向に延伸する形とすることも可能である。図6にその一例を示す。遮風壁42を吹き出しノズル30側のシート10の幅方向端部近傍から、シート10から離れる方向に延伸した形状としている。この場合、図5の例と同様に、シート10の幅方向端部に向かう気流20は、大部分が20cの矢印で示すように遮風壁42の外側に沿って、遮風壁42の表面側に回り込む。この気流は、遮風壁42によって、塗布膜50の端部から距離を離されているため、塗布膜50端部の乾燥には寄与しない。このため、第3の実施形態と同様な効果を得ることができる。なお、この例の場合も、図6に点線矢印で示すシート10と遮風壁42の隙間から一部の気流が通過するが、風量が大幅に低減されているため、それが塗布膜50端部の乾燥に与える影響は小さくなっている。
【0027】
以上説明したように、本実施形態によっても、第3の実施形態と同様に、塗布膜を歪なく均一に乾燥する乾燥装置を構成することができる。
【0028】
(第5の実施形態)
第1から第4の実施形態では、遮風壁が開口部を持たない固体である例について説明したが、遮風壁が開口部を有していても良い。図7は、第2の実施形態と同じ構成で、遮風壁として開口を有する遮風壁43を用いる例を示している。その他の構成は第2の実施形態と同様である。遮風壁43が、例えば図6のような複数の貫通口を有する板状体であっても、開口部を介して塗布膜50の表面に回りこむ気流20はわずかであるため、ほぼ同様の効果が得られる。
【0029】
また、第3の実施形態の構成においても開口部を有する遮風壁を用いることが可能である。そのような構成の一例を図8に示す。図8は、遮風壁として複数の貫通口を有する遮風壁44を用いた場合の断面図である。この構成では、第3の実施形態に比べ、図中に点線矢印で示す貫通口を介して遮風壁44の表面側に抜ける気流20が増加する。しかしながら、遮風壁が無い場合に比べ、回り込む気流の風量が大幅に減少しているため、その影響は小さい。
【0030】
以上説明したように、開口部を有する遮風壁を用いても、気流のシート表面側への回り込みを低減し、塗布膜を歪なく均一に乾燥する乾燥装置を構成することができる。
【0031】
(第6の実施形態)
図9は、第6の実施形態の乾燥装置を示す断面図である。本実施形態は、第5の実施形態の図7に示した例とほぼ同様な構成であるが、遮風壁の構造に違いがある。本実施形態の遮風壁45は、シートから離れるにしたがって、開口部の面積比率が漸増する形状となっている。遮風壁が開口部を持たない場合、シート10から遠い側の遮風壁先端部では、急に遮風壁が無くなることにより、気流の乱れを生じる。一方、本実施形態では、開口が漸増することにより、この乱れを低減することができる。
【0032】
図10に遮風壁45の具体的な形状例を示す。それぞれの図で、紙面上方がシートから離れる方向である。図10(a)の遮風壁45aは、同じ大きさの円形の開口部46aがシートから離れるほど高い密度で形成されている。図9(b)の遮風壁45bは、シートから離れるほど面積が大きくなる開口部46bを有している。図9(c)の遮風壁45cは、シートから離れるほど面積が大きくなるスリット状の開口部46cを有している。図9(d)の遮風壁45dはシートから離れるほど幅が広くなる波型の開口部46dを有している。なおこれらは、あくまで例であり、様々な形状とすることができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、気流の乱れを低減する乾燥装置を構成することができる。
【0034】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1、10、102 シート
2、20 気流
3、30、104 吹き出しノズル
4、40、41、42、43、44、45 遮風壁
46 開口部
50、101 塗布膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11