(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
微多孔膜と、微多孔膜の少なくとも片面に設けられた多孔質層とを備え、前記多孔質層はフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)と、フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)と、アクリル樹脂とを含有し、前記フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)は親水基の含有量は0.1mol%〜5mol%であり、ヘキサフルオロプロピレン単位を0.3mol%〜3mol%含有し、重量平均分子量が75万より大きく200万以下であり、前記フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)は融点が60℃以上145℃以下、重量平均分子量が10万以上75万以下である電池用セパレータ。
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)の含有量が、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)とフッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)の総重量に対して15重量%以上85重量%以下であり、アクリル樹脂の含有量が、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)、フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)及びアクリル樹脂の総重量に対して4重量%以上40重量%以下である請求項1又は2に記載の電池用セパレータ。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池、特に、リチウムイオン二次電池は携帯電話や携帯情報端末等の小型電子機器に使用されて広く普及し、円筒型電池、角型電池、ラミネート型電池等が開発されている。一般に、これら電池は正極電極と負極電極とをセパレータを介して積層した電極体(積層電極体)や渦巻き状に巻回した電極体(巻回電極体)と、非水電解液とが外装体に収納された構成を有する。
【0003】
従来の非水電解質二次電池用セパレータは主にポリオレフィン樹脂からなる微多孔膜が使用されており、電池の異常発熱時にセパレータの細孔が閉塞することで電流の流れを抑制し、発火などを防いでいる。
【0004】
近年では微多孔膜の片面または両面に多孔質層を設けることで電池特性を向上させる試みがなされている。例えば、電極接着性などの機能を付与するためにフッ素樹脂やアクリル樹脂を含有する多孔質層を設けたセパレータがある(先行文献1〜8)。また、多孔質層に無機粒子を加えると、事故などで電池に鋭利な金属が貫き、急な短絡を起こし発熱した場合でもセパレータの溶融収縮を防ぎ、電極間における短絡部の拡大を抑制することができる。
【0005】
特許文献1には、正極、負極、ポリプロピレン・ポリエチレン・ポリプロピレンからなる三層セパレータと、これら電極とセパレータとの間に配置されたポリフッ化ビニリデンとアルミナ粉末からなる接着性樹脂層とを備えた電極体が記載されている。
【0006】
特許文献2の実施例1には、第一の重合体(ポリフッ化ビニリデンホモポリマー)を含むNMP溶液と、第二の重合体(アクリロニトリル単量体、1,3−ブタジエン由来の単量体、メタクリル酸単量体、及びブチルアクリレート単量体を含む重合体)を含むNMP溶液とをプライマリーミキサーで撹拌してバインダーのNMP溶液を調整し、次いで、調整後のNMP溶液とアルミナ粒子を混合、分散させて調整したスラリーをポリプロピレン製セパレータに塗布して得られる多孔膜付有機セパレータが記載されている。
【0007】
特許文献3の実施例には、球状アルミナ粉末を分散させたNMP溶液に、フッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VdF‐HFP共重合体)とポリメタクリル酸エチルからなる配合材料を溶解したNMP溶液を添加し、ボールミルで混合して調製したスラリーを基材PETフィルムに塗布し、乾燥して得られた無機微粒子含有シート(絶縁性接着層)を介して正極と負極を熱圧着させた電極体が記載されている。
【0008】
特許文献4の実施例1には、VdF‐HFP共重合体とシアノエチルプルランをアセトンに添加し、その後、チタン酸バリウム粉末を添加し、ボールミルで分散して得たスラリーをポリエチレン多孔性膜に塗布して得られたセパレータが記載されている。
【0009】
特許文献5の実施例1には、VdF‐HFP共重合体(HFP単位0.6モル%)とVdF‐HFP共重合体(重量平均分子量47万、HFP単位4.8モル%)をジメチルアセトアミドとトリプロピレングリコール溶液に溶解し、これをポリエチレン微多孔膜に塗工して多孔質層が形成されたセパレータが記載されている。
【0010】
特許文献6の実施例1には、PVdF(重量平均分子量50万)とVdF‐HFP共重合体(重量平均分子量40万、HFP単位5モル%)をジメチルアセトアミドとトリプロピレングリコール溶液に溶解し、これをポリエチレン微多孔膜に塗工して多孔質層が形成されたセパレータが記載されている。
【0011】
特許文献7の実施例1には、PVdF(重量平均分子量70万)とVdF‐HFP共重合体(重量平均分子量47万、HFP単位4.8モル%)をジメチルアセトアミドとトリプロピレングリコール溶液に溶解し、これをポリエチレン微多孔膜に塗工して多孔質層が形成されたセパレータが記載されている。
【0012】
特許文献8の実施例1には、PVdF(重量平均分子量35万)とVdF‐HFP重合体(重量平均分子量27万、HFP共重合4.8モル%)をジメチルアセトアミドとトリプロピレングリコール溶液に溶解し、これをポリエチレン微多孔膜に塗工して多孔質層が形成されたセパレータが記載されている。
【0013】
特許文献1〜8に開示されているセパレータ及び電極とセパレータとの間に配置される層はいずれもポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
近年、非水電解質二次電池は大型タブレット、草刈り機、電動二輪車、電気自動車、ハイブリッド自動車、小型船舶などの大型用途向けの展開が期待されており、これに伴い大型電池の普及が想定される。
【0016】
巻回電極体は、正極電極と負極電極とをセパレータを介して各部材に張力をかけながら巻回して製造される。このとき、金属集電体に塗工された正極電極や負極電極は張力に対してほとんど伸び縮みしないが、セパレータは機械方向にある程度伸びながら巻回されることになる。この巻回体をしばらく放置するとセパレータ部分がゆっくりと縮んでもとの長さに戻ろうとする。この結果、電極とセパレータとの境界面において平行方向の力が発生し、巻回電極体(特に扁平に巻回した電極体)はたわみや歪みが発生しやすくなる。さらに、電池の大型化に伴うセパレータの広幅化や長尺化によりこれら問題が顕在化し、生産時の歩留り悪化が懸念される。巻回電極体のたわみや歪みが発生するのを抑制するため、セパレータには今まで以上に電極との接着性が求められることが予想される。本明細書ではこの接着性について、後述する測定方法により得られる乾燥時曲げ強さを指標とした。
【0017】
また、電極体を搬送する際、各部材が十分に接着された状態でなければ電極とセパレータが剥がれてしまい歩留りよく搬送させることができない。搬送時の接着性の問題は電池の大型化により顕在化し、歩留り悪化が懸念される。そのため、セパレータには電極から剥離しにくい、高い乾燥時剥離力が求められると予想される。
【0018】
さらに、特にラミネート型電池内においては、外装体で圧力をかけられる角型、円筒型電池に比べて、圧力をかけづらく、充放電に伴う電極の膨潤・収縮により、セパレータと電極の界面での部分的な遊離がおこりやすい。その結果、電池の膨れ、電池内部の抵抗増大、サイクル性能の低下につながる。そのため、電解液を注入後の電池内での電極との接着性がセパレータには要求されている。本明細書ではこの接着性について、後述する測定方法により得られる湿潤時曲げ強さを指標とした。この強さが大きいと充放電繰り返し後の電池の膨れ抑制などの電池特性向上が期待される。
【0019】
従来技術では、乾燥時曲げ強さ、乾燥時剥離力、湿潤時曲げ強さはトレードオフの関係があり全ての物性を満たすことが極めて困難であった。本発明は将来進むであろう電池(特にラミネート型電池)の大型化の普及に備え、乾燥時曲げ強さ、乾燥時剥離力、湿潤時曲げ強さを満たす電池用セパレータの提供を目指したものである。
【0020】
なお、本明細書でいう湿潤時曲げ強さとはセパレータが電解液を含む状態でのセパレータと電極との接着性を表す。乾燥時曲げ強さと乾燥時剥離力はセパレータが電解液を実質的に含まない状態でのセパレータと電極との境界面に対する接着性を表す。なお、実質的に含まないとはセパレータ中の電解液が500ppm以下であることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために本発明の電池用セパレータ及びその製造方法は以下の構成を有する。すなわち、
(1)微多孔膜と、微多孔膜の少なくとも片面に設けられた多孔質層とを備え、前記多孔質層はフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)と、フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)と、アクリル樹脂とを含有し、前記フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)は親水基と、ヘキサフルオロプロピレン単位を0.3mol%〜3mol%含有し、前記フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)は融点が60℃以上145℃以下、重量平均分子量が10万以上75万以下である電池用セパレータ、である。
(2)本発明の電池用セパレータは、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)が重量平均分子量が75万より大きく200万以下であることが好ましい。
(3)本発明の電池用セパレータは、多孔質層が粒子を含むことが好ましい。
(4)本発明の電池用セパレータは、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)の含有量が、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)とフッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)の総重量に対して15重量%以上85重量%以下であり、アクリル樹脂の含有量が、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)、フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)及びアクリル樹脂の総重量に対して4重量%以上40重量%以下であることが好ましい。
(5)本発明の電池用セパレータは、アクリル樹脂が(メタ)アクリル酸エステルとシアノ基を有する単量体との共重合体であることが好ましい。
(6)本発明の電池用セパレータは、アクリル樹脂がブチルアクリレートを含む共重合体であることが好ましい。
(7)本発明の電池用セパレータは、アクリル樹脂がブチルアクリレートとアクリロニトリルとの共重合体であることが好ましい。
(8)本発明の電池用セパレータは、アクリル樹脂におけるブチルアクリレートの含有量が50mol%〜75mol%であることが好ましい。
(9)本発明の電池用セパレータは、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)の親水基の含有量が0.1mol%〜5mol%であることが好ましい。
(10)本発明の電池用セパレータは、湿潤時曲げ強さが4N以上、乾燥時曲げ強さが5N以上、かつ乾燥時剥離力が8N/mであることが好ましい。
(11)本発明の電池用セパレータは、粒子の含有量が多孔質層の総重量に対して50重量%以上90重量%以下であることが好ましい。
(12)本発明の電池用セパレータは、粒子がアルミナ、チタニア、ベーマイトからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
(13)本発明の電池用セパレータは、多孔質層の厚さが片面あたり0.5〜3μmであることが好ましい。
(14)本発明の電池用セパレータは、微多孔膜がポリオレフィン微多孔膜であることが好ましい。
上記課題を解決するために本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法は以下の構成を有する。すなわち、
(15)本発明の電池用セパレータは、
(1)フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)及びフッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)を溶媒に溶解したフッ素系樹脂溶液を得る工程と、
(2)アクリル樹脂を溶媒に溶解したアクリル樹脂溶液をフッ素系樹脂溶液に添加し、混合して塗工液を得る工程と、
(3)塗工液を微多孔膜に塗布して凝固液に浸漬し、洗浄、乾燥する工程とを順次含み、前記フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)は親水基と、ヘキサフルオロプロピレン単位を0.3mol%〜3mol%含有し、前記フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)は融点が60℃以上145℃以下、重量平均分子量が10万以上75万以下であり、前記アクリル樹脂はブチルアクリレートを含む請求項1〜14のいずれか1項に記載の電池用セパレータの製造方法、である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、将来進むであろう電池の大型化の普及に備え、乾燥時曲げ強さ、乾燥時剥離力、湿潤時曲げ強さを満たす電池用セパレータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の微多孔膜と多孔質層とを少なくとも有する電池用セパレータについて概要を説明するが、当然この代表例に限定されるものではない。
1.微多孔膜
まず、本発明の微多孔膜について説明する。
本発明において、微多孔膜とは内部に連結した空隙を有する膜を意味する。微多孔膜としては特に限定されず、不織布や微多孔膜を用いることができる。以下、微多孔膜を構成する樹脂がポリオレフィン樹脂である場合について詳細に説明するがこれに限定されるものでない。
【0025】
[1]ポリオレフィン樹脂
ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂を主成分とする。ポリエチレン樹脂の含有量はポリオレフィン樹脂の全質量を100質量%として、70質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0026】
ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル1−ペンテン、1−ヘキセンなどを重合した単独重合体、2段階重合体、共重合体またはこれらの混合物等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤、無機充填剤などの各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加しても良い。
【0027】
[2]ポリオレフィン微多孔膜の製造方法
ポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、所望の特性を有するポリオレフィン微多孔膜が製造できれば、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、日本国特許第2132327号および日本国特許第3347835号の明細書、国際公開2006/137540号等に記載された方法を用いることができる。具体的には、下記の工程(1)〜(5)を含むことが好ましい。
(1)前記ポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤とを溶融混練し、ポリオレフィン溶液を調製する工程
(2)前記ポリオレフィン溶液を押出し、冷却しゲル状シートを形成する工程
(3)前記ゲル状シートを延伸する第1の延伸工程
(4)前記延伸後のゲル状シートから成膜用溶剤を除去する工程
(5)前記成膜用溶剤除去後のシートを乾燥する工程
【0028】
以下、各工程についてそれぞれ説明する。
(1)ポリオレフィン溶液の調製工程
ポリオレフィン樹脂に、それぞれ適当な成膜用溶剤を添加した後、溶融混練し、ポリオレフィン溶液を調製する。溶融混練方法として、例えば日本国特許第2132327号および日本国特許第3347835号の明細書に記載の二軸押出機を用いる方法を利用することができる。溶融混練方法は公知であるので説明を省略する。
【0029】
ポリオレフィン溶液中、ポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤との配合割合は、特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂20〜30質量部に対して、成膜溶剤70〜80質量部であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂の割合が上記範囲内であると、ポリオレフィン溶液を押し出す際にダイ出口でスウェルやネックインが防止でき、押出し成形体(ゲル状成形体)の成形性及び自己支持性が良好となる。
【0030】
(2)ゲル状シートの形成工程
ポリオレフィン溶液を押出機からダイに送給し、シート状に押し出す。同一または異なる組成の複数のポリオレフィン溶液を、押出機から一つのダイに送給し、そこで層状に積層し、シート状に押出してもよい。
【0031】
押出方法はフラットダイ法及びインフレーション法のいずれでもよい。押出し温度は140〜250℃好ましく、押出速度は0.2〜15m/分が好ましい。ポリオレフィン溶液の各押出量を調節することにより、膜厚を調節することができる。押出方法としては、例えば日本国特許第2132327号公報および日本国特許第3347835号公報に開示の方法を利用することができる。
【0032】
得られた押出し成形体を冷却することによりゲル状シートを形成する。ゲル状シートの形成方法として、例えば日本国特許第2132327号公報および日本国特許第3347835号公報に開示の方法を利用することができる。冷却は少なくともゲル化温度までは50℃/分以上の速度で行うのが好ましい。冷却は25℃以下まで行うのが好ましい。冷却により、成膜用溶剤によって分離されたポリオレフィンのミクロ相を固定化することができる。冷却速度が上記範囲内であると結晶化度が適度な範囲に保たれ、延伸に適したゲル状シートとなる。冷却方法としては冷風、冷却水等の冷媒に接触させる方法、冷却ロールに接触させる方法等を用いることができるが、冷媒で冷却したロールに接触させて冷却させることが好ましい。
【0033】
(3)第1の延伸工程
次に、得られたゲル状シートを少なくとも一軸方向に延伸する。ゲル状シートは成膜用溶剤を含むので、均一に延伸できる。ゲル状シートは、加熱後、テンター法、ロール法、インフレーション法、又はこれらの組合せにより所定の倍率で延伸するのが好ましい。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸及び多段延伸(例えば、同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよい。
【0034】
本工程における延伸倍率(面積延伸倍率)は、9倍以上が好ましく、16倍以上がより好ましく、25倍以上が特に好ましい。また、機械方向(MD)及び幅方向(TD)での延伸倍率は、互いに同じでも異なってもよい。なお、本工程における延伸倍率とは、本工程直前の微多孔膜を基準として、次工程に供される直前の微多孔膜の面積延伸倍率のことをいう。
【0035】
本工程の延伸温度は、ポリオレフィン樹脂の結晶分散温度(Tcd)〜Tcd+30℃の範囲内にするのが好ましく、結晶分散温度(Tcd)+5℃〜結晶分散温度(Tcd)+28℃の範囲内にするのがより好ましく、Tcd+10℃〜Tcd+26℃の範囲内にするのが特に好ましい。例えば、ポリエチレンの場合は、延伸温度を90〜140℃とするのが好ましく、より好ましくは100〜130℃にする。結晶分散温度(Tcd)は、ASTM D4065による動的粘弾性の温度特性測定により求められる。
【0036】
以上のような延伸によりポリエチレンラメラ間に開裂が起こり、ポリエチレン相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を形成する。延伸により機械的強度が向上するとともに細孔が拡大するが、適切な条件で延伸を行うと、貫通孔径を制御し、さらに薄い膜厚でも高い空孔率を有する事が可能となる。
【0037】
所望の物性に応じて、膜厚方向に温度分布を設けて延伸してもよく、これにより機械的強度に優れた微多孔膜が得られる。その方法の詳細は日本国特許第3347854号に記載されている。
【0038】
(4)成膜用溶剤の除去
洗浄溶媒を用いて、成膜用溶剤の除去(洗浄)を行う。ポリオレフィン相は成膜用溶剤相と相分離しているので、成膜用溶剤を除去すると、微細な三次元網目構造を形成するフィブリルからなり、三次元的に不規則に連通する孔(空隙)を有する多孔質の膜が得られる。洗浄溶媒およびこれを用いた成膜用溶剤の除去方法は公知であるので説明を省略する。例えば日本国特許第2132327号明細書や特開2002−256099号公報に開示の方法を利用することができる。
【0039】
(5)乾燥
成膜用溶剤を除去した微多孔膜を、加熱乾燥法又は風乾法により乾燥する。乾燥温度はポリオレフィン樹脂の結晶分散温度(Tcd)以下であるのが好ましく、特にTcdより5℃以上低いのが好ましい。乾燥は、微多孔膜を100質量%(乾燥重量)として、残存洗浄溶媒が5質量%以下になるまで行うのが好ましく、3質量%以下になるまで行うのがより好ましい。残存洗浄溶媒が上記範囲内であると、後段の微多孔膜の延伸工程及び熱処理工程を行ったときに微多孔膜の空孔率が維持され、透過性の悪化が抑制される。
【0040】
2.多孔質層
本発明において、多孔質層はフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(VdF‐HFP)共重合体(A)、フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)及びアクリル樹脂を含む。各樹脂について以下に説明する。
[1]フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(VdF‐HFP)共重合体(A)
本発明に用いられるフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)は、親水基を含み、ヘキサフルオロプロピレンを0.3mol%〜3mol%含有する。共重合体(A)は非水電解液に対して親和性が高く、化学的、物理的な安定性が高く、湿潤時曲げ強さを発現し、高温下での使用にも電解液との親和性を十分維持できる。
【0041】
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)は親水基を有することで電極表面に存在する活物質や電極中のバインダー成分と強固に接着することが可能となる。このような接着力は水素結合によるものと推測される。親水基としては、ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、およびこれらの塩などが挙げられる。特に、カルボン酸基、カルボン酸エステルが好ましい。
【0042】
フッ化ビニリデンに親水基を導入する場合には、例えば、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)の合成において、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル、マレイン酸モノメチルエステル等の親水基を有する単量体を共重合させることにより主鎖に導入する方法やグラフト化により側鎖として導入する方法が挙げられる。親水基変性率はFT−IR、NMR、定量滴定などで測定できる。例えば、カルボン酸基の場合、FT−IRを用いてホモポリマーを基準としてC−H伸縮振動とカルボキシル基のC=O伸縮振動の吸収強度比から求めることができる。
【0043】
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)における親水基の含有量の下限値は0.1mol%以上が好ましく、より好ましくは0.3mol%以上であり、上限値は5mol%以下が好ましく、より好ましくは4mol%以下である。親水基の含有量が5mol%を超えるとポリマー結晶性が低くなりすぎ、電解液に対する膨潤度が高くなり湿潤時曲げ強さが悪化する。また、多孔質層に粒子が含まれる場合、親水基の含有量を上記好ましい範囲内とすることで粒子の脱落を抑制することができる。
【0044】
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)におけるヘキサフルオロプロピレンの含有量の下限値は0.3mol%以上が好ましく、より好ましくは0.5mol%以上であり、上限値は3mol%以下が好ましく、より好ましくは2.5mol%以下である。ヘキサフルオロプロピレンの含有量が0.3mol%未満であるとポリマー結晶性が高くなり、電解液に対する膨潤度が低くなるため湿潤時曲げ強さが十分に得られにくい。また、3mol%を超えると電解液に対して膨潤しすぎてしまい湿潤時曲げ強さが低下する。
【0045】
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)の含有量は、共重合体(A)と重合体(B)の総重量に対して、下限値は15重量%以上が好ましく、より好ましくは25重量%以上であり、上限値は85重量%以下が好ましく、より好ましくは25重量%以下である。
【0046】
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)の重量平均分子量の下限値は75万より大きく、好ましくは90万以上であり、上限値は200万以下が好ましく、より好ましくは150万以下である。共重合体(A)の重量平均分子量を上記好ましい範囲内にすることで共重合体(A)を溶媒に溶解させる時間が極端に長くならず、生産効率を上げることができる。また、電解液に膨潤した際に適度なゲル強度を維持でき、湿潤時曲げ強さが向上する。なお、本発明でいう重量平均分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによるポリスチレン換算値である。
【0047】
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)は公知の重合方法で得ることができる。公知の重合方法としては、例えば、特開平11−130821に例示されている方法が挙げられる。イオン交換水、マレイン酸モノメチルエステル、フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンをオートクレーブに入れ、懸濁重合をおこない、その後、重合体スラリーを脱水、水洗した後、乾燥させて重合体粉末を得る方法である。このとき懸濁剤としてメチルセルロースや、ラジカル開始剤としてジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどを適宜使用することができる。
【0048】
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)は、特性を損なわない範囲で親水基を有する単量体以外の他の単量体をさらに重合した共重合体であってもよい。親水基を有する単量体以外の他の単量体として、例えば、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、トリクロロエチレン、フッ化ビニル等の単量体が挙げられる。
【0049】
[2]フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)
本発明に用いられるフッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)は、融点60℃以上145℃以下で、重量平均分子量が10万以上75万以下であり、非水電解液に対して親和性が高く、化学的、物理的な安定性が高く、乾燥時曲げ強さおよび乾燥時剥離力が得られる。これについてメカニズムは明らかでないが乾燥時曲げ強さおよび乾燥時剥離力を発現するような加熱及び加圧条件下で重合体(B)は流動性を帯び、電極の多孔質層に入り込むことでアンカーとなり、これにより多孔質層と電極との間は強固な接着性を有するためと発明者らは推測している。重合体(B)は乾燥時曲げ強さや乾燥時剥離力に寄与し、巻回電極体や積層電極体のたわみ、歪み防止や搬送性の改善に寄与することができる。なお、フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)はフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)と異なる樹脂である。
【0050】
フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)の融点の下限値は60℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上であり、上限値は145℃以下が好ましく、より好ましくは140℃以下である。なお、ここでいう融点とは、示差走査熱量測定(DSC)法で測定された昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度である。
【0051】
フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)は、ポリフッ化ビニリデン又はフッ化ビニリデン単位を有する共重合体からなる樹脂である。重合体(B)は共重合体(A)と同様の懸濁重合法などで得ることができる。重合体(B)の融点は、フッ化ビニリデン単位からなる部位の結晶性を制御することで調整することができる。例えば、重合体(B)にフッ化ビニリデン単位以外の単量体が含まれる場合、フッ化ビニリデン単位の割合を制御することで融点を調整できる。フッ化ビニリデン単位以外の単量体は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、トリクロロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル、マレイン酸モノメチルエステル等を1種類又は2種以上有してもよい。重合体(B)を重合するときに上記単量体を添加して、共重合により主鎖に導入する方法やグラフト化により側鎖として導入する方法が挙げられる。また、フッ化ビニリデン単位のHead−to−Head結合(−CH
2−CF
2−CF
2−CH
2−)の割合を制御することで融点を調整してもよい。
【0052】
フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)の重量平均分子量の下限値は10万以上が好ましく、より好ましくは15万以上であり、上限値は75万以下が好ましく、より好ましくは70万以下である。
【0053】
フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)の融点及び重量平均分子量を上記好ましい範囲内にすることで、加熱及び加圧条件下で重合体(B)は流動しやすくなり、十分な乾燥時曲げ強さ、乾燥時剥離力が得られる。重合体(B)の融点が上記好ましい範囲の上限値を超えると、乾燥時曲げ強さ、乾燥時剥離力を得るために、捲回体の製造工程におけるプレス温度を高くする必要がある。そうするとポリオレフィンを主成分とする微多孔膜は収縮するおそれがある。また、重合体(B)の重量平均分子量が上記好ましい範囲の上限値を超えると、分子鎖の絡み合い量が増加し、プレス条件下で十分に流動できなくなるおそれがある。重合体(B)の重量平均分子量が上記好ましい範囲の下限値を下回る場合は、分子鎖の絡み合い量が少なすぎるため樹脂強度が弱くなり、多孔質層の凝集破壊がおこりやすくなる。
【0054】
[3]アクリル樹脂
さらに、多孔質層はアクリル樹脂を含むことで、乾燥時曲げ強さと乾燥時剥離力を向上させることができる。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(VdF‐HFP)共重合体(A)及びフッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)だけでは乾燥時曲げ強さ、湿潤時曲げ強さ及び乾燥時剥離力を満たすセパレータを得ることができない。
【0055】
アクリル樹脂は(メタ)アクリル酸エステル重合体又はその共重合体が好ましい。本発明において(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル(アクリレート)とメタクリル酸エステル(メタクリレート)をあらわす。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどが挙げられる。特に、ブチルアクリレートを含むことが好ましい。ブチルアクリレートは塗膜の柔軟性を上げ、粒子の脱落を抑制する効果も期待できる。
【0056】
電極との接着性の観点から、アクリル樹脂は(メタ)アクリル酸エステルとシアノ基を有する単量体との共重合体がより好ましい。シアノ基を有する単量体としては、シアノ基を有するα,β−エチレン性不飽和単量体が挙げられ、例えば、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルが好ましい。さらに、アクリル樹脂はブチルアクリレートとアクリロニトリルとの共重合体が特に好ましく、モル比を制御することで電解液に対する膨潤度を調整し、さらに樹脂にほどよい柔軟性を持たせることができ、湿潤時曲げ強さも向上させることが可能になる。アクリル樹脂におけるブチルアクリレート単位の含有量の下限値は50mol%以上が好ましく、より好ましくは55mol%以上であり、上限値は75mol%以下が好ましく、より好ましくは70mol%以下である。アクリル樹脂におけるブチルアクリレート単位の含有量の下限値を上記好ましい範囲にすることで、多孔質層に適度な柔軟性を持たせることができ、多孔膜の脱落を抑制することができる。また、アクリル樹脂におけるブチルアクリレート単位の含有量を上記好ましい範囲内にすることで、乾燥時曲げ強さと湿潤時曲げ強さと、乾燥時剥離力のバランスが良好となる。
【0057】
アクリル樹脂は公知の重合方法、例えば、特開2013−206846号公報に例示されている方法で得ることができる。撹拌機付きのオートクレーブにイオン交換水、n−ブチルアクリレート、アクリロニトリルを仕込んで乳化重合によって得られる重合体粒子が水に分散した分散液の水をN−メチル−2−ピロリドンに置換し、アクリル樹脂溶液を得る方法などが挙げられる。重合反応の際にラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム、分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタンなどを適宜使用してもよい。
【0058】
アクリル樹脂の含有量は、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)、フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)及びアクリル樹脂の総重量に対して、下限値は4重量%以上が好ましく、より好ましくは5重量%以上であり、上限値は40重量%以下が好ましく、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。アクリル樹脂の含有量を上記好ましい範囲内とすることで、共重合体(A)の含有量と重合体(B)の含有量の総量を一定以上とし、多孔質層の耐酸化性を維持することができる。
【0059】
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)の含有量及びアクリル樹脂の含有量を上記好ましい範囲内とすることで、多孔質層は乾燥時曲げ強さ、湿潤時曲げ強さと乾燥時剥離力が得られる。
【0060】
[4]粒子
本発明における多孔質層は粒子を含んでもよい。多孔質層に粒子を含むことで正極と負極との間のショートが起きる確率を下げることができ、安全性の向上が期待できる。粒子としては無機粒子あるいは有機粒子が挙げられる。
【0061】
無機粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラス粒子、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカ−アルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカ、ベーマイト、酸化マグネシウムなどが挙げられる。特に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の結晶成長性、コスト、入手のしやすさから二酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、硫酸バリウムが好適である。
【0062】
有機粒子としては、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系粒子などが挙げられる。
【0063】
多孔質層に含まれる粒子の含有量は、多孔質層の総重量に対して、上限値は90重量%以下が好ましく、より好ましくは85重量%以下であり、下限値は50重量%以上が好ましく、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは65重量%以上である。粒子の含有量を上記好ましい範囲内にすることで、透気抵抗度の良好なバランスが得られやすい。
【0064】
多孔質層に接着性を持たない粒子が含まれると湿潤時曲げ強さ、乾燥時曲げ強さや乾燥時剥離力は低下する傾向にある。しかし、本発明の樹脂組成により得られる多孔質層は粒子を上記好ましい範囲で含有しても電極に対する湿潤時曲げ強さ、乾燥時曲げ強さと乾燥時剥離力のバランスが良好である。
【0065】
粒子脱落の観点から、粒子の平均粒径は微多孔膜の平均流量細孔径の1.5倍以上、50倍以下であることが好ましく、より好ましくは2.0倍以上、20倍以下である。平均流量細孔径は、JIS K3832やASTM F316−86にならって測定され、例えば、パームポロメーター(PMI社製、CFP−1500A)を用いて、Dry−up、Wet−upの順で測定した。Wet−upには表面張力が既知のPMI社製Galwick(商品名)で十分に浸した微多孔質膜に圧力をかけ、空気が貫通し始める圧力から換算される孔径を最大孔径とした。平均流量細孔径については、Dry−up測定で圧力、流量曲線の1/2の傾きを示す曲線と、Wet−up測定の曲線が交わる点の圧力から孔径を換算した。圧力と孔径の換算は下記の数式を用いた。
d=C・γ/P(上記式中、「d(μm)」は微多孔質膜の孔径、「γ(mN/m)」は液体の表面張力、「P(Pa)」は圧力、「C」は定数とした。)
【0066】
セル巻回時の巻き取芯とのすべり性や粒子脱落の観点から、粒子の平均粒径は0.3μm〜1.8μmが好ましく、より好ましくは0.5μm〜1.5μm、さらに好ましくは0.9μm〜1.3μmである。粒子の平均粒径はレーザー回折方式や動的光散乱方式の測定装置を使用して測定できる。例えば、超音波プローブを用いて界面活性剤入り水溶液に分散させた粒子を粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラックHRA)で測定し、体積換算での小粒子側から50%累積された時の粒子径(D50)の値を平均粒径とするのが好ましい。粒子の形状は真球形状、略球形状、板状、針状が挙げられるが特に限定されない。
【0067】
[5]多孔質層の物性
多孔質層の膜厚は、片面当たり0.5〜3μmが好ましく、より好ましくは1〜2.5μm、さらに好ましくは1〜2μmである。片面あたり膜厚が0.5μm以上であれば、湿潤時曲げ強さ、乾燥時曲げ強さと乾燥時剥離力が確保できる。片面あたり膜厚が3μm以下であれば巻き嵩を抑えることができ、今後、進むであろう電池の高容量化に適する。
【0068】
多孔質層の空孔率は、30〜90%が好ましく、より好ましくは40〜70%である。多孔質層の空孔率を上記好ましい範囲内とすることでセパレータの電気抵抗の上昇を防ぎ、大電流を流すことができ、かつ膜強度を維持できる。
【0069】
[6]電池用セパレータの製造方法
本発明の電池用セパレータの製造方法は以下の工程(1)〜(3)を順次含む。
(1)フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)及びフッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)を溶媒に溶解したフッ素樹脂溶液を得る工程
(2)フッ素系樹脂溶液にアクリル樹脂溶液を添加し、混合して塗工液を得る工程
(3)塗工液を微多孔膜に塗布して凝固液に浸漬し、洗浄、乾燥する工程
【0070】
(1)フッ素系樹脂溶液を得る工程
溶媒はフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)及びフッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)を溶解でき、アクリル樹脂を溶解または分散させることができて、かつ、凝固液と混和しうるものであれば特に限定されない。溶解性、低揮発性の観点から、溶媒はN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0071】
粒子を含む多孔質層を設ける場合には、予め粒子を分散させたフッ素樹脂溶液(分散液ともいう)を調整することが重要である。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)及びフッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)を溶媒に溶解し、そこに撹拌しながら粒子を添加して一定の時間(例えば、約1時間)ディスパーなどで撹拌することで予備分散し、さらにビーズミルやペイントシェーカーを用いて粒子を分散させる工程(分散工程)を経て、粒子の凝集を減らしたフッ素樹脂溶液を得る。
【0072】
(2)塗工液を得る工程
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)及びフッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)を含むフッ素樹脂溶液にアクリル樹脂溶液を添加し、例えば、撹拌羽根のついたスリーワンモータで混合して塗工液を調製する。
【0073】
アクリル樹脂溶液はアクリル樹脂を溶媒に溶解または分散させた溶液であり、ここで用いる溶媒は工程(1)と同一の溶媒が好ましい。特に、溶解性、低揮発性の観点からN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。アクリル樹脂溶液はアクリル樹脂を重合した後、N−メチル−2−ピロリドンを加えて蒸留するなどして溶媒を置換して得るのが操作性の観点から好ましい。
【0074】
粒子を含む多孔質層を設ける場合には、粒子を分散させたフッ素樹脂溶液(分散液)にアクリル樹脂溶液を添加することが重要である。つまり、分散工程においてアクリル樹脂が入らないことが重要となる。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)、フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)、アクリル樹脂と、粒子を同時に溶媒に添加して塗工液を作製すると、共重合体(A)に含まれる親水基とアクリル樹脂(特にブチルアクリレートを含む場合)とが分散時の熱およびせん断により、塗工液が徐々にゲル化し始めることが推測され、工業的に不適である。さらに、増粘の影響で多孔質層の厚さを片面あたり3μm以下とする薄膜塗工が困難となる。本発明の製造方法における工程(1)、(2)により塗工液のゲル化を抑制し、薄膜塗工が可能となり、塗工液の保存安定性も向上する。
【0075】
(3)塗工液を微多孔膜に塗布し、凝固液に浸漬し、洗浄、乾燥する工程
微多孔膜に塗工液を塗布し、塗布した微多孔膜を凝固液に浸漬してフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)、フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)及びアクリル樹脂を相分離させ、三次元網目構造を有する状態で凝固させ、洗浄、乾燥する。これにより微多孔膜と、微多孔膜の表面に多孔質層を備えた電池用セパレータが得られる。
【0076】
塗工液を微多孔膜に塗布する方法は、公知の方法でもよく、例えば、ディップ・コート法、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、マイヤーバーコート法、パイプドクター法、ブレードコート法およびダイコート法などが挙げられ、これらの方法を単独あるいは組み合わせることができる。
【0077】
凝固液は水であることが好ましく、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(A)、フッ化ビニリデン単位を含む重合体(B)、及びアクリル樹脂に対する良溶媒を1〜20重量%含む水溶液が好ましく、より好ましくは5〜15重量%含有する水溶液である。良溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。凝固液内での浸漬時間は3秒以上とすることが好ましい。上限は制限されないが、10秒もあれば十分である。
【0078】
洗浄には水を用いることができる。乾燥は、例えば100℃以下の熱風を用いた乾燥することができる。
【0079】
本発明の電池用セパレータは、ニッケル−水素電池、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、銀−亜鉛電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、リチウム−硫黄電池等の二次電池などの電池用セパレータとして用いることができる。特に、リチウムイオン二次電池のセパレータとして用いるのが好ましい。
【0080】
[7]電池用セパレータの物性
電池用セパレータの湿潤時曲げ強さは4N以上が好ましい。湿潤時曲げ強さの上限値は特に定めないが、15Nあれば十分である。上記好ましい範囲内にすることで、セパレータと電極との界面での部分的な遊離を抑制し、電池内部抵抗の増大、電池特性の低下を抑制できる。
【0081】
電池用セパレータの乾燥時曲げ強さは好ましくは5N以上である。乾燥時曲げ強さの上限値は特に定めないが25Nあれば十分である。上記好ましい範囲内にすることで、巻回電極体のたわみ、歪みを抑制することが期待できる。
【0082】
電池用セパレータの乾燥時剥離力は好ましくは8N/m以上である。乾燥時剥離力の上限値は特に定めないが40N/mあれば十分である。上記好ましい範囲内にすることで、巻回電極体又は積層電極体を電極体がばらけることなく搬送できることが期待される。
【0083】
電池用セパレータは湿潤時曲げ強さと乾燥時曲げ強さと乾燥時剥離力を両立し、具体的には下記に示す測定方法にて湿潤時曲げ強さが4N以上、乾燥時曲げ強さが5N以上かつ乾燥時剥離力が8N/m以上を満たす。
【0084】
以下、実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法で測定した値である。
【0085】
1.湿潤時曲げ強さ
一般に、正極にはフッ素樹脂のバインダーが用いられ、フッ素樹脂を含む多孔質層がセパレータ上に備えられている場合、フッ素樹脂同士の相互拡散により接着性が担保されやすい。一方、負極にはフッ素樹脂以外のバインダーが用いられ、フッ素系樹脂の拡散が起きにくいため正極に比べ負極はセパレータとの接着性が得られにくい。そこで、本測定ではセパレータと負極との間の接着性を、以下に述べる曲げ強さを指標として評価した。
(1)負極の作製
カルボキシメチルセルロースを1.5質量部含む水溶液を人造黒鉛96.5質量部に加えて混合し、さらに固形分として2質量部のスチレンブタジエンラテックスを加えて混合して負極合剤含有スラリーとした。この負極合剤含有スラリーを、厚みが8μmの銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗付して乾燥して負極層を形成し、その後、ロールプレス機により圧縮成形して集電体を除いた負極層の密度を1.5g/cm
3にして、負極を作製した。
(2)試験用巻回体の作製
上記で作成された負極(機械方向161mm×幅方向30mm)と、実施例および比較例で作成したセパレータ(機械方向160mm×幅方向34mm)とを重ね、金属板(長さ300mm、幅25mm、厚さ1mm)を巻き芯としてセパレータが内側になるようにセパレータと負極を巻き取り、金属板を引き抜いて試験用巻回体を得た。試験用巻回体は長さ約34mm×幅約28mmとなった。
(3)湿潤時曲げ強さの測定方法
ポリプロピレンからなるラミネートフィルム(長さ70mm、幅65mm、厚さ0.07mm)2枚を重ね、4辺のうち3辺を溶着した袋状のラミネートフィルム内に試験用巻回体を入れた。エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比3:7で混合した溶媒にLiPF
6を1mol/Lの割合で溶解させた電解液500μLをグローブボックス中でラミネートフィルムの開口部から注入し、試験用巻回体に含浸させ、真空シーラーで開口部の一辺を封止した。
次に、ラミネートフィルムに封入した試験用巻回体を2枚のガスケット(厚さ1mm、5cm×5cm)で挟み込み、精密加熱加圧装置(新東工業株式会社製、CYPT−10)にて98℃、0.6MPaで2分間加圧し、室温で放冷した。ラミネートフィルムに封入したまま、加圧後の試験用巻回体について、万能試験機(株式会社島津製作所製、AGS−J)を用いて湿潤時曲げ強さを測定した。以下、詳細を記載する。
2本のアルミニウム製L字アングル(厚さ1mm、10mm×10mm、長さ5cm)を90°部分が上になるように平行に、端部をそろえて配置し、90°部分を支点として支点間距離が15mmとなるよう固定した。2本のアルミニウム製L字アングルの支点間距離の中間である7.5mm地点に試験用巻回体の幅方向の辺(約28mm)の中点を合わせてL字アングルの長さ方向の辺からはみ出さないように試験用巻回体を配置した。
次に、圧子としてアルミニウム製L字アングル(厚さ1mm、10mm×10mm、長さ4cm)の長さ方向の辺から試験用巻回体の長さ方向の辺(約34mm)がはみ出さないようにかつ平行にして、試験用巻回体の幅方向の辺の中点にアルミニウム製L字アングルの90°部分を合わせ、90°部分が下になるようにアルミニウム製L字アングルを万能試験機のロードセル(ロードセル容量50N)に固定した。3個の試験用巻回体を負荷速度0.5mm/minにて測定し得られた最大試験力の平均値を湿潤時曲げ強度とした。
【0086】
2.乾燥時曲げ強さ
(1)負極の作製
上記1.湿潤時曲げ強さと同一の負極を用いた。
(2)試験用巻回体の作製
上記1.湿潤時曲げ強さと同一の試験用巻回体を用いた。
(3)乾燥時曲げ強さの測定方法
準備した試験用巻回体を2枚のガスケット(厚さ1mm、5cm×5cm)で挟み込み、精密加熱加圧装置(新東工業株式会社製、CYPT−10)にて70℃、0.6MPaで2分間加圧し、室温で放冷した。試験用巻回体について、上記1.湿潤時曲げ強さの測定方法と同様に配置して万能試験機(株式会社島津製作所製、AGS−J)を用いて、以下の条件で3個の試験用巻回体を測定して得られた最大試験力の平均値を乾燥時曲げ強度とした。
支点間距離 : 15mm
ロードセル容量: 50N
負荷速度 : 0.5mm/min
【0087】
3.乾燥時剥離力
(1)負極の作製
上記1.湿潤時曲げ強さと同一の負極を用いた。
(2)剥離試験片の作成
上記で作成された負極(70mm×15mm)と、実施例および比較例で作成したセパレータ(機械方向90mm×幅方向20mm)とを重ね、これを2枚のガスケット(厚さ0.5mm、95mm×27mm)で挟み込み、精密加熱加圧装置(新東工業株式会社製、CYPT−10)にて90℃、8MPaで2分間加圧し、室温で放冷した。この負極とセパレータとの積層体の負極側に幅1cmからなる両面テープを貼りつけ、両面テープのもう一方の面をSUS板(厚さ3mm、長さ150mm×幅50mm)に、セパレータの機械方向とSUS板長さ方向が平行になるよう貼り付けた。これを剥離試験片とした。
(3)乾燥時剥離力の測定方法
万能試験機(株式会社島津製作所製、AGS−J)を用いてセパレータをロードセル側チャックに挟み込み、試験速度300mm/分にて180度剥離試験を実施した。剥離試験中のストローク20mmから70mmまでの測定値を平均化した値を剥離試験片の剥離力とした。計3個の剥離試験片を測定し、剥離力の平均値を幅換算した値を乾燥時剥離力(N/m)とした。
【0088】
4.融点測定
示差走査熱量分析装置(株式会社パーキンエルマー製DSC)にて、測定パンに7mgの樹脂を入れ測定用試料とし、以下の条件にて測定した。初めに昇温、冷却した後、第2回目の昇温時の吸熱ピークのピークトップを融点とした。
昇温、冷却速度 : ±10℃/min
測定温度範囲 : 30〜230℃
【0089】
5.膜厚
接触式膜厚計(株式会社ミツトヨ製“ライトマチック”(登録商標)series318)を使用して、超硬球面測定子φ9.5mmを用い、加重0.01Nの条件で20点を測定し、得られた測定値の平均値を膜厚とした。
【実施例】
【0090】
実施例1
[共重合体(a)]
共重合体(A)として、以下のように共重合体(a)を合成した。フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン及びマレイン酸モノメチルエステルを出発原料として懸濁重合法にてフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(a)を合成した。得られた共重合体(a)は重量平均分子量が150万、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/マレイン酸モノメチルエステルのモル比が98.0/1.5/0.5であることをNMR測定で確認した。
[共重合体(b1)]
重合体(B)として、以下のように共重合体(b1)を合成した。フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンを出発原料として懸濁重合法にてフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(b1)を合成した。得られた共重合体(b1)は重量平均分子量が30万、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンのモル比が93/7であることをNMR測定で確認した。
[アクリル樹脂]
アクリロニトリル、n−ブチルアクリレートを出発原料として乳化重合法にてアクリル樹脂を合成し、その後、水をN−メチル−2−ピロリドンに置換し、固形分濃度が5質量%のアクリル樹脂溶液を得た。得られたアクリル樹脂はTgが−5℃、アクリロニトリル単位/アクリル酸エステル単位のモル比が38/62であることをNMR測定で確認した。
[電池用セパレータの作製]
共重合体(a)7.1質量部、共重合体(b1)21.4質量部と、NMP359.3質量部を混合し、その後ディスパーで撹拌しながらアルミナ粒子(平均粒径1.1μm)を70質量部加えて、さらに、ディスパーで1時間、2000rpmで予備攪拌した。次いで、ダイノーミル(シンマルエンタープライゼス製ダイノーミルマルチラボ(1.46L容器、充填率80%、φ0.5mmアルミナビーズ))を用いて、流量11kg/hr、周速10m/sの条件下で3回処理し、分散液を得た。分散液にアクリル樹脂溶液を混合して、撹拌羽根のついたスリーワンモータで500rpm、30分間攪拌し、濾過して固形分濃度20.5質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が70:7.1:21.4:1.5の塗工液を得た。厚さ7μmのポリエチレン微多孔膜の両面にディップコート法にて塗工液を塗布し、水溶液中に浸漬させ、純水で洗浄した後、50℃で乾燥し、厚み11μmの電池用セパレータを得た。
【0091】
実施例2
固形分濃度が18.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が70:14.3:14.2:1.5の塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0092】
実施例3
固形分濃度が15.5質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が70:21.4:7.1:1.5の塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0093】
実施例4
固形分濃度が20.5質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が70:6.8:20.2:3.0の塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0094】
実施例5
固形分濃度が18.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が70:13.5:13.5:3.0の塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0095】
実施例6
固形分濃度が15.5質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が70:20.2:6.8:3.0の塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0096】
実施例7
固形分濃度が20.5質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が70:6.4:19.1:4.5の塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0097】
実施例8
固形分濃度が18.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が70:12.8:12.7:4.5の塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0098】
実施例9
固形分濃度が19.5質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が70:19.1:6.4:4.5の塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0099】
実施例10
固形分濃度が20.5質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が70:6.0:18.0:6.0の塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0100】
実施例11
固形分濃度が18.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が70:12.0:12.0:6.0の塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0101】
実施例12
固形分濃度が15.5質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が70:18.0:6.0:6.0の塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0102】
実施例13
固形分濃度が21.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が78.8:9.0:9.0:3.2の塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0103】
実施例14
固形分濃度が25.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が85.2:6.3:6.3:2.2の塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0104】
実施例15
[共重合体(b2)]
重合体(B)として、以下のように共重合体(b2)を合成した。フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンを出発原料として懸濁重合法にてフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(b2)を合成した。得られたフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(b2)は重量平均分子量が28万、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンのモル比が90/10であることをNMR測定で確認した。
[電池用セパレータの作製]
共重合体(b1)の代わりに共重合体(b2)を用いて、固形分濃度が18.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b2):アクリル樹脂の重量比が70:13.5:13.5:3.0となるように調製した塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0105】
実施例16
共重合体(a)45質量部、共重合体(b1)45質量部と、NMP1329質量部を混合し溶解させた。この液にアクリル樹脂溶液を混合して、撹拌羽根のついたスリーワンモータで500rpm、30分間攪拌し、濾過して固形分濃度6.6質量%、共重合体(a):共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が45.0:45.0:10.0の塗工液を得た。厚さ7μmのポリエチレン微多孔膜の両面にディップコート法にて塗工液を塗布し、水溶液中に浸漬させ、純水で洗浄した後、50℃で乾燥し、厚み11μmの電池用セパレータを得た。
【0106】
比較例1
共重合体(b1)30.0質量部と、NMP334.8質量部を混合し、その後ディスパーで撹拌しながらアルミナ粒子(平均粒径1.1μm)を70質量部加えて、さらに、ディスパーで1時間、2000rpmで予備攪拌した。次いで、ダイノーミル(シンマルエンタープライゼス製ダイノーミルマルチラボ(1.46L容器、充填率80%、φ0.5mmアルミナビーズ))を用いて、流量11kg/hr、周速10m/sの条件下で3回処理し、分散液を得た。これを濾過して固形分濃度23.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(b1)の重量比が70:30.0の塗工液を得た。厚さ7μmのポリエチレン微多孔膜の両面にディップコート法にて塗工液を塗布し、水溶液中に浸漬させ、純水で洗浄した後、50℃で乾燥し、厚み11μmの電池用セパレータを得た。
【0107】
比較例2
共重合体(a)7.5質量部、共重合体(b1)22.5質量部と、NMP387.8質量部を混合した以外は、比較例1と同様に調製、濾過して固形分濃度が20.5質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1)の重量比が70:7.5:22.5となるように調製した塗工液を得た。これを比較例1と同様にして塗工して電池用セパレータを得た。
【0108】
比較例3
固形分濃度が18.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1)の重量比が70:15.0:15.0となるように調製した塗工液を用いた以外は比較例2と同様にして電池用セパレータを得た。
【0109】
比較例4
固形分濃度が15.5質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b1)の重量比が70:22.5:7.5となるように調製した塗工液を用いた以外は比較例2と同様にして電池用セパレータを得た。
【0110】
比較例5
共重合体(a)30質量部と、NMP669.2質量部を混合した以外は、比較例1と同様に調製、濾過して固形分濃度が13.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(a)の重量比が70:30.0となるように調製した塗工液を得た。これを比較例1と同様にして塗工して電池用セパレータを得た。
【0111】
比較例6
固形分濃度が23.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が70:28.5:1.5となるように調製した塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0112】
比較例7
固形分濃度が13.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):アクリル樹脂の重量比が70:28.5:1.5となるように調製した塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0113】
比較例8
固形分濃度が23.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が70:27.0:3.0となるように調製した塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0114】
比較例9
固形分濃度が13.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):アクリル樹脂の重量比が70:27.0:3.0となるように調製した塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0115】
比較例10
固形分濃度が23.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が70:25.5:4.5となるように調製した塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0116】
比較例11
固形分濃度が23.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(b1):アクリル樹脂の重量比が70:24.0:6.0となるように調製した塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0117】
比較例12
[共重合体(b3)]
フッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレンを出発原料として懸濁重合法にてフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体を合成した。得られたフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体は重量平均分子量が95万、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンのモル比が95/5であることをNMR測定で確認した。
[電池用セパレータの作製]
共重合体(b1)の代わりに共重合体(b3)を用いて、固形分濃度が18.0質量%、アルミナ粒子:共重合体(a):共重合体(b3):アクリル樹脂の重量比が70:13.5:13.5:3.0となるように調製した塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0118】
実施例1〜16、比較例1〜12で得られた電池用セパレータの特性を表1に示す。
【0119】
【表1】
共重合体(A)の含有量(%)
*:共重合体(A)と重合体(B)の総重量に対する共重合体(A)の重量%を表す。
アクリル樹脂の含有量(%)
**:共重合体(A)、重合体(B)及びアクリル樹脂の総重量に対するアクリル樹脂の重量%を表す。