【文献】
XIONG Zhihui、外4名,Relationship between crystallographic structure of the Ti2O3/MnS complex inclusion and microstructur,Materials Characterization,米国,2015年 8月,Vol.106,Page.232-239
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー需要が益々増加の傾向にあり、海底石油資源の探索が活発化している。これらに使用される海洋構造物として、例えば、プラットフォーム、ジャッキアップリグ等は大型化している。これに伴い、鋼板等の使用鋼材が厚肉化し、より安全性を確保することが重要な課題となっている。
【0003】
通常の海洋構造物には、降伏強度が300〜360MPa級の中強度鋼材が用いられるが、前記のような大型構造物では、降伏強度が460〜700MPa級の高強度で、かつ、板厚が100mmを超える極厚高張力鋼材が用いられることがある。
【0004】
また、海底石油資源の探索地域が、近年、寒冷地および大水深域へと移っており、それらの地域あるいは海域で稼動する海洋構造物は、極めて厳しい気象および海洋条件に晒される。このため、これらの海洋構造物に用いられる鋼材には、例えば−40℃以下という非常に厳しい低温域での靱性が要求されると共に、溶接性も当然要求される。
【0005】
さらに、安全性の面からもユーザの検査基準は厳しく、母材、溶接部ともに従来のシャルピー衝撃値の規定に加え、最低使用温度でのCTOD値も規定して、靱性を評価するようになってきている。すなわち、10mm×10mmの大きさに切断採取する微小試験片についての評価試験であるシャルピー試験で安定した特性を得た場合にも、構造物の実厚の試験片にて評価するCTOD特性では、所要特性を満足できない場合が多く発生している。また、今日ではさらに厳しいCTOD特性が求められるようになっている。
【0006】
このように、氷海域に設置される海洋構造物に使用される鋼材に限らず、これよりもマイルドな環境下で使用される寒冷地向けのラインパイプ、または、船舶およびLNGタンク等の大型溶接構造物に使用される鋼材に対しても、HAZの低温靱性を向上させる要望が強い。
【0007】
一方で、−40℃以下という低温域で高い靱性を得るためには、溶接効率の悪い低入熱量の溶接条件で溶接をせざるを得ない。海洋構造物の建造コストに占める溶接施工コストは大きい。溶接施工コストを低下させる最も直接的な方法は、大入熱溶接が可能な高能率溶接法を採用して、溶接層数を減らすことである。
【0008】
したがって、今日では、低温靱性の要求が厳しい寒冷地向けの構造物は、HAZの靱性を考慮して溶接施工コストが可及的に低い溶接を行うことが重要である。
【0009】
従来、鋼材のHAZの靱性を劇的に向上させるには、低C化が有効であることが知られており、低C化による強度低下を補うため、種々の合金添加による高強度化、および、時効析出硬化作用を利用した高強度化が図られている。例えば、ASTM規格(ASTM A710)によれば、Cuの時効析出硬化作用を利用した鋼が開示されており、このような考え方に基づいた報告がいくつかなされている。
【0010】
例えば、特許文献1〜3では、溶接部の靱性に優れたCu析出型鋼が提案されている。また、特許文献4では、溶接部低温靱性、特に、HAZ低温靱性を、Al/N比の調整により、ピン留め粒子TiNを微細分散させることで改善した鋼材が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1では、板厚30mm、溶接入熱量40kJ/cmで得た溶接継手のシャルピー特性を評価したに過ぎず、大入熱溶接に対応した材料とは考え難い。特許文献2では、Cuを0.5〜4.0%添加した引張り強さ686MPa以上の高張力鋼が提案されているが、低温靱性については、シャルピー試験の遷移温度でさえ−30℃であることから、極厚鋼板での低温CTOD特性が確保できるとは考え難い。特許文献3では、溶接部のシャルピー靱性に優れたCu析出型鋼が提案されているものの、溶接入熱量5kJ/mmで得た溶接継手のシャルピー特性を評価したに過ぎず、大入熱溶接時の構造物の安全性を充分満足できる技術とは考え難い。特許文献4に開示された鋼材は、大入熱溶接条件においてTiNのピン留め効果が消失しやすく、大入熱溶接条件での低温靱性確保が困難になる可能性が高い。
【0013】
本発明は、このような現状に鑑み、入熱量300KJ/cm以上の大入熱溶接条件において、溶接部低温靱性、特に、HAZ低温靱性を安定して得られる高張力綱、および、該高張力鋼を用いた海洋構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、下記の知見を得るに至った。
【0015】
まず、Cu粒子析出について検討したところ、下記〈i〉〜〈vi〉のことが分かった。
【0016】
〈i〉降伏強度を上昇させるためには、微細Cu粒子をできるだけ多く分散させる必要がある。
【0017】
〈ii〉靱性、特に、低温CTOD特性を確保するためには、Cu粒子をある程度粗大化させ、かつ、分散量を抑制する必要がある。
【0018】
〈iii〉Cu粒子の分散状態を均一化するため、時効処理前段階でのCu粒子の生成をできるだけ抑制し、かつ、時効処理の条件制御によりCu粒子の分散状態を制御する。
【0019】
〈iv〉Cu粒子の分布状態について、TEM写真より求まる円相当径の平均値および平面換算面積率で整理することにより、強度靱性バランスが制御可能である。
【0020】
〈v〉Cu粒子は、鋼中の結晶欠陥(主に転位)上に生成しやすく、転位密度が高いとCu粒子の析出が促進される。また、転位上のCu粒子は転位の移動を阻害し、降伏強度を上昇させる。
【0021】
〈vi〉鋼中の転位密度は、圧延および水冷条件で制御可能である。また、圧延温度の低下、総圧下量の増加、水冷開始温度の上昇、冷却速度の増加、および、水冷停止温度の低下は、いずれも転位密度を増加させる。
【0022】
次に、介在物について検討を行った。
【0023】
HAZ靱性を確保する手段としては、結晶粒を微細化させることにより、破壊単位を減少させることが有効である。結晶粒を微細化させる手法として、従来、(I)旧γ粒界成長をTiN等で抑制するピン留め効果を活用する手法、および、(II)旧γ粒内に存在する介在物を起点に微細な粒内フェライトを成長させ、結晶粒微細化を図る手法が提案されている。本発明者らは、前記(II)の手法に着目した。
【0024】
溶接時に旧γ粒内にて粒内フェライトを効果的に成長させるためには、粒内フェライト生成核となる介在物の制御が必須である。特に、板厚が50mm以上の厚鋼板では、表面および内部での冷却速度の差異により、板厚方向での介在物組成および個数制御が困難であるため、これらを制御する必要がある。そこで、粒内フェライト成長のメカニズムについて解明したところ、以下のことが分かった。
【0025】
[1]溶接冷却時に、介在物周囲にMnSが複合析出する際に形成されるMn濃度傾斜により、マトリックスから介在物内部へとMnが拡散する駆動力が生じる。
【0026】
[2]Ti系酸化物内部に存在する原子空孔へ、Mnが吸収される。
【0027】
[3]介在物周囲にMn濃度が少なくなるMn欠乏層が形成され、この部分のフェライト成長開始温度が上昇する。
【0028】
[4]冷却時に、介在物からフェライトが優先成長する。
【0029】
これらを前提として、本発明者らは、粒内フェライト核となる介在物のMnS複合量が、粒内フェライト成長に影響を及ぼすという知見を得た。すなわち、複合したMnSが多いと、介在物周囲に、より大きなMn濃度勾配を形成することにより、Mn拡散駆動力を増加させ、その結果、Mn欠乏層を形成しやすくなる。一方、複合したMnSが少ないと、介在物周囲にMn濃度勾配が形成されにくくなり、その結果、Mn欠乏層が形成されにくくなる。以上のメカニズムに基づき、本発明では、介在物に複合するMnS量および個数密度を制御することにより、効果的に粒内フェライトを析出させるに至った。
【0030】
加えて、前記結晶粒微細化効果を得るためには、鋼中の介在物が以下の要件を満たす必要がある事を見出した。
【0031】
(a)鋼中に、Ti酸化物の周囲にMnSが存在する複合介在物を含み、前記複合介在物の断面における前記MnSの面積率が、10%以上90%未満であり、前記複合介在物の界面における前記MnSの割合が、10%以上である。
【0032】
(b)粒径0.5〜5.0μmの前記複合介在物の個数密度が、10〜100個/mm
2である。
【0033】
本発明は、上記の知見を基礎としてなされたものであり、その要旨は、下記に示す高張力鋼および海洋構造物にある。
【0034】
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.01〜0.10%、
Si:0.01〜0.50%、
Mn:0.80〜2.50%、
P:0.020%以下、
S:0.001〜0.010%、
Cu:0.80〜1.50%、
Ni:0.20〜1.50%、
Al:0.003%以下、
Ti:0.005〜0.030%、
N:0.003〜0.008%、
O:0.0005〜0.0050%、
Nb:0〜0.030%、
Mo:0〜0.80%、
Cr:0〜0.80%、
B:0〜0.0020%、
V:0〜0.050%、
Ca:0〜0.005%、
Mg:0〜0.01%、
REM:0〜0.01%、ならびに、
残部:Feおよび不純物であり、
下記式(i)で示すPcmが0.25以下であり、
鋼中に分散した長径が1nm以上のCu粒子における円相当径の平均値が4〜25nmであり、かつ、平面率換算分布量が3〜20%であり、
鋼中に、Ti酸化物の周囲にMnSが存在する複合介在物を含み、
前記複合介在物の断面における前記MnSの面積率が、10%以上90%未満であり、
前記複合介在物の界面における前記MnSの割合が、10%以上であり、
粒径0.5〜5.0μmの前記複合介在物の個数密度が、10〜100個/mm
2である、高張力鋼。
Pcm=C+(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)+5B ・・・(i)
ただし、(i)式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
【0035】
(2)前記化学組成が、質量%で、
Nb:0.003〜0.030%、
を含有する、前記(1)に記載の高張力鋼。
【0036】
(3)前記化学組成が、質量%で、
Mo:0.10〜0.80%、
を含有する、前記(1)または(2)に記載の高張力鋼。
【0037】
(4)前記化学組成が、質量%で、
Cr:0.03〜0.80%、および/または、
B:0.0002〜0.0020%、
を含有する、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の高張力鋼。
【0038】
(5)前記化学組成が、質量%で、
V:0.001〜0.050%、
を含有する、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の高張力鋼。
【0039】
(6)前記化学組成が、質量%で、
Ca:0.0005〜0.005%、
Mg:0.0001〜0.01%、および、
REM:0.0001〜0.01%、
から選択される1種以上を含有する、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の高張力鋼。
【0040】
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の高張力鋼を用いた、海洋構造物。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、入熱量300KJ/cm以上の大入熱溶接条件において、溶接部低温靱性、特に、HAZ低温靱性を安定して得られる高張力綱、および、該高張力鋼を用いた海洋構造物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
【0043】
(A)化学組成について
各元素の作用効果と、含有量の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
【0044】
C:0.01〜0.10%
Cは、母材の強度を高める作用を有する元素である。また、Cは、Nb、V等の添加時に組織微細化の効果を生じさせる。これらの効果を得るため、C含有量は、0.01%以上とする。一方、Cを過剰に含有させると、溶接部に島状マルテンサイト(M−A:martensite−austenite constituent)と呼ばれる硬化組織を生成して、HAZ靱性を悪化させるとともに、母材の靱性および溶接性にも悪影響を及ぼす。したがって、C含有量は0.10%以下とする。なお、C含有量は、0.02%以上であることが好ましく、0.03%以上であることがより好ましい。また、C含有量は、0.08%以下であることが好ましく、0.05%以下であることがより好ましい。
【0045】
Si:0.01〜0.50%
Siは、溶鋼の予備脱酸に有効な元素である。前記効果を得るため、Si含有量は0.01%以上とする。一方、Siを過剰に含有させると、Siがセメンタイト中に固溶しないため、未変態オーステナイト粒がフェライト粒およびセメンタイトに分解するのを阻害する。その結果、島状マルテンサイトの生成を助長する。したがって、Si含有量は0.50%以下とする。なお、Si含有量は、0.20%以下であることが好ましく、0.15%以下であることがより好ましい。
【0046】
Mn:0.80〜2.50%
Mnは、強度確保に必要な元素であるとともに、HAZにおいて、粒界における粗大なフェライトの成長を抑制する元素である。これらの効果を得るため、Mn含有量は、0.80%以上とする。一方、Mnを過剰に含有させると、焼入れ性を過剰に増加させることにより、溶接性およびHAZ靱性を劣化させる。さらに、Mnは、中心偏析を助長する元素である。そのため、中心偏析抑制の観点から、Mn含有量は2.50%以下とする。なお、Mn含有量は、1.40%以上であることが好ましく、2.10%以下であることが好ましい。
【0047】
P:0.020%以下
Pは、不純物元素である。Pは、粒界偏析元素であるため、HAZにおける粒界割れの原因となる。母材靱性、ならびに、溶接金属部およびHAZの靱性を向上させ、かつ、スラブ中心偏析を低減させるため、P含有量は、0.020%以下とする。なお、P含有量は、0.015%以下であることが好ましく、0.010%以下であることがより好ましい。
【0048】
S:0.001〜0.010%
Sは、MnSを複合析出させるための元素である。そのため、S含有量は、0.001%以上とする。一方、Sを過剰に含有させると、溶接割れの起点となる粗大な単体MnSが析出するため、HAZの靱性が低下する。そのため、S含有量は、0.010%以下とする。なお、HAZの低温靱性を確保する観点から、S含有量は、0.002%以上であることが好ましく、0.005%以下であることが好ましい。
【0049】
Cu:0.80〜1.50%
Cuは、鋼材の強度および靱性を高める作用があり、HAZの靱性に対する悪影響も小さい。特に、時効処理時のε−Cu析出による強度を上昇させる観点から、Cu含有量は0.80%以上とする。しかしながら、Cuを過剰に含有させると、溶接高温割れ感受性が高くなり、予熱等の溶接施工が複雑になる。したがって、Cu含有量は、1.50%以下とする。なお、Cu含有量は、0.90%以上であることが好ましく、1.10%以下であることが好ましい。
【0050】
Ni:0.20〜1.50%
Niは、鋼材の強度および靱性を高め、さらに、HAZ靱性を高めるための元素である。これらの効果を得るため、Ni含有量は、0.20%以上とする。しかしながら、Ni含有量が1.50%を超えると、コストアップに見合うだけの効果を得ることができない。そのため、Ni含有量は、1.50%以下とする。なお、Ni含有量は、0.40%以上であることが好ましく、1.20%以下であることが好ましい。
【0051】
Al:0.003%以下
Alは、不純物元素である。Al含有量が増加することにより、Ti系酸化物の生成が抑制される。そのため、Al含有量は、0.003%以下とする。
【0052】
Ti:0.005〜0.030%
Tiは、窒化物を生成して結晶粒の粗大化を抑制するとともに、粒内変態核となる介在物の生成に必要な元素である。これらの効果を得るため、Ti含有量は、0.005%以上とする。一方、Tiを過剰に含有させると、母材靱性および溶接部靱性に悪影響を及ぼす。そのため、Ti含有量を0.030%以下とする。なお、Ti含有量は、0.007%以上であることが好ましく、0.015%以下であることが好ましい。
【0053】
N:0.003〜0.008%
Nは、窒化物を形成することで組織の細粒化に寄与する元素である。前記効果を得るため、N含有量は0.003%以上とする。一方、Nを過剰に含有させると、窒化物の凝集によって靱性を劣化させる。そのため、N含有量は、0.008%以下とする。なお、N含有量は、0.0035%以上であることが好ましく、0.0065%以下であることが好ましい。
【0054】
O:0.0005〜0.0050%
Oは、フェライト生成核となる酸化物生成に有効な元素である。前記効果を得るため、O含有量は0.0005%以上とする。一方、Oを過剰に含有させると、清浄度の劣化が著しくなる。その結果、母材、溶接金属部およびHAZは、実用的な靱性確保が困難となる。そのため、O含有量は、0.0050%以下とする。なお、O含有量は、0.0008%以上であることが好ましく、0.0035%以下であることが好ましい。
【0055】
Nb:0〜0.030%
Nbは、細粒化および炭化物析出により、母材の強度および靱性を向上させるため、含有させてもよい。しかしながら、Nbを過剰に含有させると、母材の性能を向上させる効果が飽和するとともに、HAZの靱性を著しく損なう。したがって、Nb含有量は0.030%以下とする。なお、Nb含有量は0.015%以下であることが好ましい。一方、母材の強度および靱性を向上させるため、Nb含有量は0.003%以上であることが好ましい。
【0056】
Mo:0〜0.80%
Moは、焼入れ性を確保し、かつ、HAZ靱性を向上させる効果があるため、含有させてもよい。しかしながら、Moを過剰に含有させると、HAZが硬化することにより靱性が著しく低下する。したがって、Mo含有量は0.80%以下とする。なお、Mo含有量は0.50%以下であることが好ましい。一方、焼入れ性およびHAZ靱性を向上させるため、Mo含有量は0.10%以上であることが好ましい。
【0057】
Cr:0〜0.80%
Crは、鋼材の焼入れ性を向上させることにより、強度を高める作用があるため、含有させてもよい。しかしながら、Crを過剰に含有させると、溶接金属部およびHAZの硬化促進および溶接低温割れ感受性を増大させる傾向にある。したがって、Cr含有量は0.80%以下とする。なお、Cr含有量は0.60%以下であることが好ましい。一方、Cr含有量は、強度を高めるため、0.03%以上であることが好ましく、0.05%以上であることがより好ましい。
【0058】
B:0〜0.0020%
Bは、鋼材の焼入れ性を向上させることにより、強度を高める作用があるため、含有させてもよい。しかしながら、Bを過剰に含有させると、強度を高める効果が飽和するとともに、母材およびHAZの靱性が著しく劣化する。そのため、B含有量は0.0020%以下とする。なお、B含有量は、0.0015%以下であることが好ましい。一方、焼入れ性および強度を高めるため、B含有量は0.0002%以上であることが好ましく、0.0003%以上であることがより好ましい。
【0059】
V:0〜0.050%
Vは、炭窒化物を生成して結晶粒の粗大化を抑制するとともに、変態組織を微細化する作用を有するため、含有させてもよい。しかしながら、Vを過剰に含有させると、母材靱性および溶接部靱性に悪影響を及ぼす。したがって、V含有量は、0.050%以下とする。なお、V含有量は0.040%以下であることが好ましい。一方、結晶粒の粗大化を抑制し、かつ、変態組織を微細化するため、V含有量は0.001%以上であることが好ましく、0.005%以上であることがより好ましい。
【0060】
Ca:0〜0.005%
Mg:0〜0.01%
REM:0〜0.01%
Ca、MgおよびREMは、粒内フェライトの析出核となる酸化物または硫化物を生成する元素である。また、硫化物の形態を制御し、低温靱性を向上させるため、含有させてもよい。これらの効果を得るため、Ca含有量は0.0005%以上、MgおよびREM含有量は、それぞれ0.0001%以上であることが好ましい。一方、Ca、MgおよびREMを過剰に含有させると、CaおよびMg系の大型介在物またはクラスターを生成して鋼の清浄度を劣化させる。したがって、Ca含有量は0.005%以下、MgおよびREM含有量は、それぞれ0.01%以下とする。
【0061】
本発明の高張力鋼は、上記の元素を含有し、残部はFeおよび不純物である化学組成を有する。「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
【0062】
Pcm:0.25以下
本発明の高張力鋼は、下記式(i)で示すPcmが0.25以下である。Pcmは、溶接割れ感受性を表す指数である。Pcmが0.25以下であると、通常の溶接施工条件で溶接割れが生じない。したがって、Pcmは0.25以下とする。さらに、溶接時の予熱を省略するため、Pcmは、0.22以下であることが好ましく、0.20以下であることがより好ましい。
【0063】
Pcm=C+(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)+5B ・・・(i)
ただし、(i)式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
【0064】
(B)Cu析出物について
本発明の高張力鋼は、鋼中に分散した長径が1nm以上のCu粒子における円相当径の平均値が4〜25nmであり、かつ、平面率換算分布量が3〜20%である。
【0065】
長径が1nm以上のCu粒子における円相当径の平均値:4〜25nm
長径1nm以上のCu粒子を対象とする理由は、長径が1nmよりも小さい粒子は、強度を高める寄与が小さいためである。Cu粒子の長径の上限については、特に定めないが、円相当径の平均値が4〜25nmの範囲では、100nmを超える粒子は出現しない。なお、Cu粒子の析出形態はおよそ球状であるが、立体形状を計測するのは容易ではない。そのため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行い、立体形状が平面投影された形状を計測する。
【0066】
ここで、円相当径とは、粒子の投影面積と同じ面積を持つ円の直径であり、具体的には下記(ii)式によって求める。
d=√(4a/pai) ・・・(ii)
なお、(ii)式中の各記号の意味は、以下の通りである。
a:投影面積(nm
2)
d:円相当径(nm)
pai:3.14
【0067】
長径が1nm以上のCu粒子における平面率換算分布量:3〜20%
平面率換算分布量は、鋼材を薄膜状に加工し、約0.2μmの厚みを有する部分について倍率100,000倍でTEM観察を行い、薄膜状試験片中に立体的に分布したCu粒子を平面投影した場合の面積率を算出することにより求める。
【0068】
ここで、円相当径および平面率換算分布量を前記のように規定した理由について、さらに詳しく述べる。
【0069】
海洋構造物に用いられる鋼には、嵐の波浪による外力に耐えるため、最大板厚100mm近くの極厚高張力鋼を用いる場合が多い。また、今後、より厳しい状況で使用されることから、さらに高いCTOD値を満たすことが要求される。Cuが析出することにより強度が高くなりすぎると、CTOD値が低くなる。一方、Cuの析出が不足すると、CTOD値が高くても強度が不足することになる。従来のCu添加鋼においては、海洋構造物に用いられる例がほとんどなく、高いCTOD値を要求されることがなかった。そのため、このようなCu析出粒子の平均径および分布量を厳密に制御する必要がなかった。そこで、本発明では、Cu析出による強度アップとCTOD値の低下とのバランスをとるために、Cu析出粒子の平均径および分布量を以上のように規定した。なお、円相当径を4〜25nmに規定、かつ、平面率換算分布量を3〜20%に規定するのは、強度と靱性とのバランスをとるためである。
【0070】
Cu粒子径および分布量を制御する因子としては、次のものが考えられる。
【0071】
[i]Cu含有量が多いほど、分布量は多くなる。Cu粒子径は、Cu含有量が適正範囲内であれば、主に時効処理前の組織、時効処理の温度および時間によって決まる。Cu含有量が適正範囲よりも小さいと、Cu粒子の析出が不充分となるため、Cu粒子径は小さくなる傾向にある。一方、Cu含有量が適正範囲よりも大きいと、Cu粒子が多く析出するため、Cu粒子径は大きくなる傾向にある。
【0072】
[ii]時効前組織の影響は大きく、時効前組織としては、フェライトおよびベイナイト主体の微細な組織とするのが好ましい。転位または結晶粒界等がCu粒子の析出サイトになるので、このような析出サイトを多く含む組織とすることが、Cu粒子径を細かくし、その結果、分布量を大きくする。このためには、鋼の成分を適切に制御するとともに、圧延条件を適切に制御し、さらに、その後の水冷条件をフェライトおよびベイナイト主体の微細組織となるように選ぶ必要がある。
【0073】
[iii]時効処理温度および時間は、重要な因子である。Cuの拡散速度および粒子の成長速度を、時効処理条件により厳密に調整することで、目的の粒子分散状態に制御する。
【0074】
(B)複合介在物
本発明の高張力鋼は、鋼中に、Ti酸化物の周囲にMnSが存在する複合介在物を含む。
【0075】
複合介在物の断面におけるMnSの面積率:10%以上90%未満
本発明では、任意の切断面に現出した複合介在物を分析し、その複合介在物の断面積におけるMnSの面積率を測定することにより、複合介在物中のMnS量を規定している。複合介在物の断面におけるMnSの面積率が10%未満であると、複合介在物中のMnS量が少なく、充分なMn欠乏層を形成できない。その結果、粒内フェライトの生成が困難となる。一方、複合介在物の断面におけるMnSの割合が90%以上であると、複合介在物がMnS主体となり、Ti系酸化物の占める割合が低下する。その結果、Mn吸収能が低下し、充分なMn欠乏層を形成できないため、粒内フェライトの生成が困難となる。
【0076】
複合介在物の界面におけるMnSの割合:10%以上
MnSは、複合介在物の周囲からMnを吸収する必要があるため、複合介在物の界面に存在する必要がある。複合介在物の界面におけるMnSの割合が10%未満であると、複合介在物の周囲から充分にMnを吸収できないため、Mn欠乏層を形成できない。その結果、粒内フェライトの生成が困難となる。
【0077】
複合介在物の粒径:0.5〜5.0μm
複合介在物の粒径が0.5μm未満では、複合介在物の周囲から吸収できるMn量が少なく、その結果、粒内フェライトの生成に必要なMn欠乏層の形成が困難となる。一方、複合介在物の粒径が5.0μmより大きいと、複合介在物が破壊の起点となる。
【0078】
複合介在物の個数密度:10〜100個/mm
2
安定した粒内フェライトを生成させるためには、各複合介在物が旧γ内に少なくとも1つ程度含まれる必要がある。そのため、複合介在物の個数密度は、10個/mm
2以上とする。一方、複合介在物が過剰に多い場合は、破壊起点となりやすい。そのため、複合介在物の個数密度は、100個/mm
2以下とする。
【0079】
(C)製造方法
次に、本発明に係る高張力鋼の製造方法について説明する。前記のような鋼成分組成であっても、Cuの析出硬化を充分に発揮させるとともに、鋼中の介在物を制御し、さらに、厚さ50mm以上の厚肉材の板厚方向における各位置の強度および靱性を均一に高め、かつ、降伏強度を向上させるためには、製造方法が適切でなければならない。
【0080】
本発明に係る高張力鋼の製造では、鋼中の介在物を制御するため、RH前にArガスを上部より溶鋼内に吹き込み、溶鋼表面のスラグと溶鋼とを反応させることにより、スラグ内のトータルFe量を調整し、溶鋼内の酸素ポテンシャルOxpを10〜30ppmの範囲に制御した。なお、Arガスの流量は100〜200L/min、吹き込み時間は5〜15minの間に調節する。その後、RHにて各元素を添加して成分調整を行い、連続鋳造にて厚さ300mmのスラブを鋳造する。
【0081】
次に、鋼片の加熱、熱間圧延、冷却および焼戻し条件について説明する。まず、前記成分組成の鋼片を、900〜1120℃に加熱して熱間圧延を行う。本発明では、高靱性を得るため、厚肉材の板厚中心部において、上部ベイナイト組織が生成しても充分な程度にオーステナイト粒を細粒化する必要があり、加熱段階で鋼片厚肉内のオーステナイト粒を細粒化することが重要である。加熱温度が900℃未満であると、この固溶化作用が充分でなく、焼戻し処理において充分な析出硬化が期待できない場合がある。一方、加熱温度が1120℃を超えると、圧延前のオーステナイト粒を細粒かつ整粒に保つことができなくなる。その結果、その後の圧延においてもオーステナイト粒が均一細粒化されない。したがって、鋼片の加熱温度を900〜1120℃とした。鋼片の加熱温度は、900〜1050℃であることが好ましく、900〜1000℃であることがより好ましい。
【0082】
圧延においては、900℃以下における総圧下量を50%以上とすることが好ましい。熱間圧延後、Ar
1点以上の温度から水冷を開始し、600℃以下の温度で停止する焼入れ処理を行なう。これは、組織微細化を図り、かつ、時効処理前段階におけるCu粒子析出をできる限り抑制するためである。Ar
1点未満の温度からの水冷または空冷では、加工歪みの消失が起こり、強度および靱性低下の原因となる場合がある。なお、Ar
1点は、微小試験片の体積変化を測定する方法で求められる。
【0083】
圧延仕上げ温度は700℃以上、冷却開始温度は680〜750℃、冷却停止温度までの冷却速度は1〜50℃/sであることが好ましい。冷却停止温度が600℃を超えると、焼戻し処理における析出強化作用が不充分となる場合がある。
【0084】
熱間圧延後、水冷された鋼は、その後、必要により加熱を行って、540℃以上Ac
1点以下の温度で時効処理を行い、次いで冷却する。
【0085】
ここで、時効温度まで加熱を行う場合、時効温度−100℃までの平均加熱速度、および、500℃までの平均冷却速度の制御を行う。この時効処理は、Cuの析出物を充分に析出硬化させるための処理であり、Cu粒子の分散を均一化させるため、加熱および冷却速度の制御を行う。したがって、加熱速度は時効温度−100℃までの平均加熱速度が5〜50℃/min、保持時間は1h以上、冷却速度は500℃までの平均冷却速度が5〜60℃/min以上であることが好ましい。
【0086】
なお、本明細書における加熱温度は炉内雰囲気温度とし、加熱後保持時間は炉内雰囲気温度での保持温度とし、圧延終了温度、ならびに、水冷開始および停止温度は鋼材の表層温度とする。また、再加熱時の加熱および冷却平均速度については、鋼材の厚さをtとするときの1/2t部での温度計算より算出するものとする。
【0087】
本発明にかかる高張力鋼から大型海洋構造物を構成するには、板材、管材または形材等の鋼材を溶接により組み立てるが、一般には鋼板として使用される。
【0088】
なお、本明細書で「溶接性」に優れたと言った場合、通常は、溶接入熱量300kJ/cm以上のアーク溶接が可能であることを意味するが、溶接法はサブマージアーク溶接、被覆アーク溶接等であってもよい。
【0089】
ここに、海洋構造物としては、海底に敷設されるプラットフォーム、または、ジャッキアップリグだけでなく、セミサブリグ(半潜水式石油掘削リグ)等も包含され、溶接性と低温靱性とが要求される海洋構造物であれば、特に制限はない。なお、海洋構造物が「大型」である場合、それに使用される鋼材の厚さが50mm以上であることを意味する。
【0090】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0091】
<母材の製造>
表1に示す試験No.1〜40の化学組成を有する300mm厚の鋼片を連続鋳造法にて作製した。各鋼片の製鋼条件を表2に示す。連続鋳造過程においては、板厚中心位置の介在物を制御する観点から、溶鋼の温度を過度に高くせず、溶鋼組成から決まる凝固温度に対し、その差が50℃以内になるように管理し、さらに、凝固直前の電磁攪拌および凝固時の圧下を行った。
【0092】
連続鋳造法により得られた各鋼片を表2に示す条件で加工し、各鋼材を得た。
【0093】
300mm厚のスラブは、各加熱温度、各加熱時間で加熱後、熱間圧延を行った後、水冷開始温度から水冷停止温度まで平均冷却速度5℃/sで冷却し、板厚77mmの鋼板とした。これらの条件については、表2に初期加熱および圧延条件と表記した。
【0094】
その後、各時効温度まで再加熱し、各保持時間で保持した。ここで、加熱速度は、時効温度−100℃までの平均加熱速度が10℃/minとなるように制御し、冷却速度は、500℃までの平均冷却速度が10℃/minとなるよう制御した。これらの条件については、表2に時効処理条件と表記した。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
<Cu粒子の円相当径の算出>
Cu粒子の円相当径は、前記各鋼材の板厚1/4t部において、倍率100,000倍で透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行い、長径が1nm以上の各析出物の投影面積を測定することにより求めた。なお、TEM観察における1視野は900nm×700nmの長方形とし、合計10視野においてTEM観察を行った。各視野におけるCu粒子の円相当径の平均値を算出し、さらに、前記平均値を用いて、全10視野におけるCu粒子の円相当径の平均値を求めた。結果を表3に示す。
【0098】
<平面率換算分布量の算出>
Cu粒子の平面率換算分布量は、各鋼材を薄膜状に加工し、約0.2μmの厚みを有する部分について倍率100,000倍でTEM観察を行い、薄膜状試験片中に立体的に分布したCu粒子を平面投影した場合の面積率を算出することにより求めた。なお、TEM観察における1視野は900nm×700nmの長方形とし、合計10視野においてTEM観察を行った。各視野におけるCu粒子の平面率換算分布量の平均値を算出し、さらに、前記平均値を用いて、全10視野におけるCu粒子の平面率換算分布量の平均値を求めた。結果を表3に示す。
【0099】
<複合介在物の断面におけるMnS面積率の算出>
<複合介在物の界面におけるMnS割合の算出>
複合介在物分析用の試験片は、前記供試材の板厚1/4t部より採取したものを用いた。複合介在物は、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用い、複合介在物を面分析したマッピング画像から、MnS面積率および複合介在物の界面におけるMnSの割合を測定した。より具体的には、MnS面積率は、複合介在物全体の断面積と複合介在物全体に占めるMnS部分の断面積とを画像から測定することにより算出した。複合介在物の界面におけるMnS割合は、複合介在物中のTi酸化物の周長とそのTi酸化物に接するMnS界面の長さとを画像から測定することにより算出した。なお、測定のばらつきを少なくするため、MnS面積率および複合介在物の界面におけるMnSの割合は、各供試材につき20個ずつEPMAによる分析を行い、平均値を算出することにより求めた。結果を表3に示す。
【0100】
<複合介在物の個数密度の算出>
複合介在物の個数密度は、SEM−EDXを組み合わせた自動介在物分析装置により行い、検出された複合介在物の形状測定データから、粒径が0.5〜5.0μmの範囲である複合介在物の個数を算出することにより算出した。結果を表3に示す。
【0101】
<引張試験>
各鋼材の圧延方向に垂直な方向の板厚中央部から、ASTM規格に準拠し、平行部12.5mm直径の引張試験片を採取し、引張試験を実施し、母材の降伏強度(YS)および引張強度(TS)を測定した。結果を表3に示す。なお、降伏強度(YS)は、420〜630MPaを合格と判定した。また、引張強度(TS)は、500〜700MPaを合格と判定した。
【0102】
<CTOD試験>
母材のCTOD試験は、BS7448規格に準拠し、各鋼材の圧延方向に垂直な方向から、全厚の3点曲げ試験片を採取し、−40℃で実施した。結果を表3に示す。なお、CTOD値は、0.40mm以上を合格と判定した。
【0103】
小入熱溶接における溶接継手のCTOD試験では、BS7448規格に準拠し、各鋼材をK開先加工した鋼板突き合わせ部に、10.0kJ/cmのFCAW溶接(Flux Cored Arc Welding)を実施することにより溶接継手を得た。続いて、前記溶接継手に、CTOD試験片の疲労ノッチがV型開先のストレート部側の溶接線となるように加工を行うことにより試験片を得て、−40℃にてCTOD試験を実施した。結果を表3に示す。なお、CTOD値は、0.40mm以上を合格と判定した。
【0104】
大入熱溶接における溶接継手のCTOD試験では、各鋼材の端部を20°V型開先に加工して突き合わせ、入熱量が350kJ/cmのエレクトロガスアーク溶接(EGW)を行うことにより、溶接継手を作製した。続いて、前記溶接継手を用いて、ASTM E1290に準じて、−10℃にてCTOD試験を実施した。結果を表3に示す。なお、CTOD値は、0.30mm以上を合格と判定した。また、CTOD試験片は、疲労ノッチが溶接線となるよう加工した。
【0105】
【表3】
【0106】
試験No.1〜29は、本発明で規定される要件をすべて満たすため、母材の強度および靱性、ならびに、溶接継手の靱性が良好であった。
【0107】
試験No.30は、本発明で規定される化学組成を満足するが、Cu粒子の分散状態が本発明で規定される範囲を満足しないため、母材強度が低い値となった。したがって、大入熱溶接特性および母材強度を両立させるためには、本発明で規定するCu粒子の分散状態を満足する必要がある。
【0108】
試験No.31および32は、本発明で規定される化学組成を満足するが、複合介在物が本発明で規定される範囲を満足しないめ、継手CTOD特性が劣った。
【0109】
試験No.33〜40は、本発明で規定される化学組成を満足しないため、母材強度、母材CTOD特性、継手CTOD特性(−40℃および−10℃)を同時に満足することができなかった。