(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6766435
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】鋳造型内の中子位置決め方法
(51)【国際特許分類】
B22C 9/10 20060101AFI20201005BHJP
B22C 9/02 20060101ALI20201005BHJP
F02F 1/24 20060101ALI20201005BHJP
F02F 1/36 20060101ALI20201005BHJP
B22D 29/00 20060101ALN20201005BHJP
【FI】
B22C9/10 T
B22C9/02 103F
F02F1/24 B
F02F1/36 Z
!B22D29/00 H
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-92463(P2016-92463)
(22)【出願日】2016年5月2日
(65)【公開番号】特開2017-200697(P2017-200697A)
(43)【公開日】2017年11月9日
【審査請求日】2019年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】和田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】夜久 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 仁
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−309480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/02,9/10,9/24
B22D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型の上にウォータジャケット中子を配置し、
そのウォータジャケット中子の上に、オイルハウジングを形成するオイルハウジング中子を配置し、
これら中子の外周に金型を設置し、
その金型内に溶湯を注湯してシリンダヘッドを鋳造するに際して、
前記ウォータジャケット中子の一側に位置決め用巾木を形成し、
前記位置決め用巾木は、前記ウォータジャケット中子のウォータジャケットを形成する中子本体からシリンダヘッドの下面より下向きに延びる冷却水流路部と、前記オイルハウジング中子の下方に位置する巾木部と、前記冷却水流路部と前記巾木部とを連結する連結部とを備え、
前記オイルハウジング中子は、巾木押さえ部材を備え、
前記オイルハウジング中子を配置する際に、前記巾木部を前記下型と前記巾木押さえ部材との間に挟むように前記下型の上に前記オイルハウジング中子を配置して前記ウォータジャケット中子を位置決めする
ことを特徴とする鋳造型内の中子位置決め方法。
【請求項2】
前記巾木押さえ部材は、前記巾木部と前記下型に接触するように形成される請求項1記載の鋳造型内の中子位置決め方法。
【請求項3】
前記巾木押さえ部材は、位置決め用溝を備え、前記下型は、前記位置決め用溝に嵌合する位置決め突起を備える請求項2記載の鋳造型内の中子位置決め方法。
【請求項4】
鋳造後のシリンダヘッド下面に、前記位置決め用巾木の前記冷却水流路部で形成される冷却水流路が形成される請求項1〜3のいずれか一項に記載の鋳造型内の中子位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのシリンダヘッド等を鋳造する鋳造型に係り、特に鋳造型内の中子を位置決めするための鋳造型内の中子位置決め方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンのシリンダヘッドを鋳造する際には、シリンダヘッド内にウォータジャケットやオイルハウジングを形成するための中子を、鋳造型内に配置して鋳造している。
【0003】
図4は、従来のシリンダヘッドの鋳造方法を示したものである。
【0004】
図4(a)〜(d)に示すように、鋳造型50は、下型50Lと、フロント側金型50Fと、リア側金型50Rと、左右側金型(図示せず)とからなる。この鋳造型50内には、ウォータジャケットを形成するウォータジャケット中子51と、オイルハウジングを形成するオイルハウジング中子52が配置されると共に中子51、52が鋳造型50内で位置決めされ、その状態でアルミ溶湯53が注湯されてシリンダヘッドが鋳造される。
【0005】
ウォータジャケット中子51には、位置決めのためと鋳抜き穴としての巾木52f、52rが形成される。下型50Lのフロント側とリア側とには、巾木受部54f、54rが形成される。
【0006】
図4(b)に示すようにウォータジャケット中子51が下型50L上に配置されると共に、そのフロント側とリア側の巾木52f、52rが、下型50Lの巾木受部54f、54rで支持され、フロント側金型50Fとリア側金型50Rの巾木押さえ部55f、55rで挟み込まれて、
図4(c)に示すように鋳造型50内に、ウォータジャケット中子51とオイルハウジング中子52が位置決め固定される。
【0007】
その状態で、
図4(d)に示すように鋳造型50内に、アルミ溶湯53を注湯し、冷却後は、鋳造型50から、中子51、52と共にシリンダヘッドを取り出だすと共に中子51、52の砂を鋳造品から排出することで、シリンダヘッドが鋳造される。
【0008】
この際、鋳造品には種々の穴が形成されており、その穴を通して中子51、52の砂が排出されると共に巾木52f、52rがその際の鋳抜き穴となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−312961号公報
【特許文献2】特開2011−177726号公報
【特許文献3】特開2012−035312号公報
【特許文献4】特開2011−190731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、巾木52f、52rで形成される鋳抜き穴は、ウォータジャケットに繋がっているため、鋳造後に、この鋳抜き穴をシーリングする必要がある。このため鋳抜き穴を、穴加工した後に、シーリングキャップを打ち込んでシールする後加工を必要とする問題がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、巾木を用いてウォータジャケット中子を位置決めする際に、実質的に鋳抜き穴を不要にできる鋳造型内の中子位置決め方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、下型にウォータジャケット中子を配置し、そのウォータジャケット中子の上にオイルハウジング中子を配置し、これら中子の外周に金型を設置し、その鋳造型内に溶湯を注湯してシリンダヘッドを鋳造するに際して、前記下型に配置するウォータジャケット中子の一側に位置決め用巾木を形成し、前記オイルハウジング中子を配置する際に、前記位置決め用巾木を挟んで前記下型の上にオイルハウジング中子を配置してウォータジャケット中子を位置決めすることを特徴とする鋳造型内の中子位置決め方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ウォータジャケット中子の一側に位置決め用巾木を形成することで、ウォータジャケット中子の位置決めが行えると共に鋳抜き穴を不要とすることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図1(d)の鋳造型のリア側の箇所の拡大図である。
【
図4】従来の中子位置決めと鋳造を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0016】
図1は、中子位置決めと鋳造を示す工程図を示したものである。
【0017】
先ず鋳造は、
図1(a)に示すように、下型10Lのリア側にリア側金型10Rをセットし、ウォータジャケット中子11をセットした後、下型10Lのフロント側にフロント側金型10Fをセットし、
図1(b)に示すようにオイルハウジング中子12を
図1(c)に示すようにセットし、
図1(d)に示すように鋳造型10内にアルミ溶湯19を注湯して鋳造品とする。
【0018】
本実施の形態においては、
図1(a)〜
図1(c)に示すように、ウォータジャケット中子11のリア側に位置決め用巾木20を形成し、オイルハウジング中子12のリア側に、下型10Lに接すると共に位置決め用巾木20を下型10Lとで挟み込む巾木押さえ部材21を形成して、リア側のウォータジャケット中子11の位置決めを行うようにしたものである。
【0019】
この場合、ウォータジャケット中子11の位置決めを正確に行うために、従来と同様の鋳抜き穴となる巾木22で形成し、下型10Lとフロント側金型10Fで挟み込んで、位置決めを行うようにするが、ウォータジャケット中子11のフロント側も位置決め用巾木20で形成してもよい。
【0020】
図2は、
図1(d)に示した鋳造型のリア側の箇所の詳細を示し、
図3は、そのリア側のシリンダヘッド18(鋳造品)を下から見た斜視図である。
【0021】
位置決め用巾木20は、ウォータジャケット中子11のウォータジャケットを形成する中子本体11aからシリンダヘッド18の下面18lより下向きに延びる冷却水流路部20aと、リア側金型10Rに対して間隔を置いて配置される巾木押さえ部材21の下方に位置する巾木部20cと、冷却水流路部20aと巾木部20cとを連結する連結部20bとで構成される。
【0022】
位置決め用巾木20の連結部20bは、その上面がシリンダヘッド18の下面18lと同じ高さとなるように形成され、巾木部20cは、シリンダヘッド18の下面18lに対して高くなるように形成される。
【0023】
下型10Lには、位置決め用巾木20の冷却水流路部20aの下部と連結部20bとを収容する連結部収容凹溝10bが形成される。また下型10Lには、連結部収容凹溝10bと連続し、巾木部20cを収容する巾木部収容溝10cが形成される。
【0024】
巾木押さえ部材21は、その下面が、巾木部20c上に接触し、リア側で下型10Lに接触するように形成される。巾木押さえ部材21と接触する下型10Lには、巾木押さえ部材21の位置決め用凹溝21eに嵌合する位置決め突起10eが形成される。
【0025】
巾木押さえ部材21は、リア側金型10Rと間隔を形成するよう、また左右のサイド側金型(図示せず)と間隔を形成するような大きさに形成され、鋳造後に、巾木押さえ部材21の周囲にシリンダヘッド18のギヤケース部18gを形成する。
【0026】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0027】
ウォータジャケット中子11は、リア側に位置決め用巾木20を形成することで、ウォータジャケット中子11のリア側は、位置決め用巾木20の巾木部20cが、下型10Lと、オイルハウジング中子12の巾木押さえ部材21の下面で挟み込まれると共に押さえ部材21の下面の一部が下型10Lに接触することで、ウォータジャケット中子11とオイルハウジング中子12の位置決めが行える。
【0028】
また、鋳造後に位置決め用巾木20の砂落しを行った際には、シリンダヘッド18の下面18lには、位置決め用巾木20の冷却水流路部20aによる冷却水供給路が形成されるだけである。これにより冷却水路がシリンダブロックの流路と繋がるため、従来のような鋳抜き穴が形成されることはなく、またそのシーリングも不要となる。
【0029】
また、ウォータジャケット中子11の位置決め用巾木20は、巾木押さえ部材21の下面で保持され、その巾木押さえ部材21の周囲にギヤケース部18gが形成されるが、そのギヤケース部18gのウォータジャケット側の面には鋳抜き穴が形成されることがなくなるため、そのシーリングも不要である。
【0030】
このように本実施の形態によれば、ウォータジャケット中子11に位置決め用巾木20を形成し、これを下型10Lとオイルハウジング中子12で挟み込むことで、鋳抜き穴を不要とすることができる。
【符号の説明】
【0031】
10 鋳造型
10L 下型
10F、10R 金型
11 ウォータジャケット中子
12 オイルハウジング中子
20 位置決め用巾木